(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】平面アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20221115BHJP
H01P 1/26 20060101ALI20221115BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20221115BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20221115BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01P1/26
H01Q17/00
H05K9/00 M
H05K1/02 N
(21)【出願番号】P 2018131230
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生野 雅義
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 弘晃
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-213927(JP,A)
【文献】特開2005-197782(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119223(WO,A1)
【文献】特開2013-088364(JP,A)
【文献】特開2014-197811(JP,A)
【文献】特開平10-135114(JP,A)
【文献】特開2005-277373(JP,A)
【文献】特開2015-167293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
H01P 1/22- 1/397
H05K 1/00- 1/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1層、第2層にアンテナパターン、グランドパターンを形成して構成される平面アンテナ装置において、
前記グランドパターンは、前記第1層及び前記第2層間の基板層を介して前記アンテナパターンに対向する位置であって且つ前記第2層の一部の領域に形成され、前記アンテナパターンの外形を包含する形状を有
し、
前記基板は、前記第1層及び前記第2層に加えて第3層を含む多層構造を有し、
前記第2層は前記第1層と前記第3層との間に位置し、
前記第3層に所定の回路が設けられ、
前記所定の回路に含まれる特定回路に対向する位置には、前記グランドパターンが形成されない
、平面アンテナ装置。
【請求項2】
前記第2層において、前記特定回路に対向する位置に抵抗膜を形成した
、請求項
1に記載の平面アンテナ装置。
【請求項3】
前記第2層と前記第3層との間に、抵抗膜を有する層が介在する
、請求項
1に記載の平面アンテナ装置。
【請求項4】
前記第2層と前記第3層との間に、所定の電波吸収材料を用いて形成された層が介在する
、請求項
1に記載の平面アンテナ装置。
【請求項5】
前記基板層の一部は所定の電波吸収材料を用いて形成された電波吸収部であり、
前記基板層において、前記特定回路に対向する位置には前記電波吸収部が配置される
、請求項
1に記載の平面アンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナパターン及び前記グランドパターンの対が複数設けられて、各アンテナパ
ターンに対し個別に前記グランドパターンが設けられ、
各グランドパターンは、前記基板層を介して対応するアンテナパターンに対向する位置
に形成され、対応するアンテナパターンの外形を包含する形状を有する
、請求項1~
5の何れかに記載の平面アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のレーダ装置等に用いられる平面アンテナ装置では、アンテナパターンとグランドパターンとでマイクロストリップアンテナを構成し、当該マイクロストリップアンテナを送信アンテナ又は受信アンテナとして利用する。グランドパターンは内層グランドパターンとして構成されることが多く、層全体に亘ってグランドパターンを形成する金属膜が配置される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような平面アンテナ装置において、グランドパターンが不要電波の放射源として機能することがある。不要電波によりビームパターンに歪を生じる等、望ましくない影響が生じることがある。
【0005】
本発明は、不要電波の抑制に寄与する平面アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る平面アンテナ装置は、基板の第1層、第2層にアンテナパターン、グランドパターンを形成して構成される平面アンテナ装置において、前記グランドパターンは、前記第1層及び前記第2層間の基板層を介して前記アンテナパターンに対向する位置であって且つ前記第2層の一部の領域に形成され、前記アンテナパターンの外形を包含する形状を有する構成(第1の構成)である。
【0007】
上記第1の構成に係るレーダ装置において、前記基板は、前記第1層及び前記第2層に加えて第3層を含む多層構造を有し、前記第2層は前記第1層と前記第3層との間に位置し、前記第3層に所定の回路が設けられ、前記所定の回路に含まれる特定回路に対向する位置には、前記グランドパターンが形成されない構成(第2の構成)であっても良い。
【0008】
上記第2の構成に係るレーダ装置に関し、前記第2層において、前記特定回路に対向する位置に抵抗膜を形成した構成(第3の構成)であっても良い。
【0009】
上記第2の構成に係るレーダ装置において、前記第2層と前記第3層との間に、抵抗膜を有する層が介在する構成(第4の構成)であっても良い。
【0010】
上記第2の構成に係るレーダ装置おいて、前記第2層と前記第3層との間に、所定の電波吸収材料を用いて形成された層が介在する構成(第5の構成)であっても良い。
【0011】
上記第2の構成に係るレーダ装置において、前記基板層の一部は所定の電波吸収材料を用いて形成された電波吸収部であり、前記基板層において、前記特定回路に対向する位置には前記電波吸収部が配置される構成(第6の構成)であっても良い。
【0012】
上記第1~第6の構成の何れかに係るレーダ装置において、前記アンテナパターン及び前記グランドパターンの対が複数設けられて、各アンテナパターンに対し個別に前記グランドパターンが設けられ、各グランドパターンは、前記基板層を介して対応するアンテナパターンに対向する位置に形成され、対応するアンテナパターンの外形を包含する形状を有する構成(第7の構成)であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不要電波の抑制に寄与する平面アンテナ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るレーダ装置及び車両の模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るレーダ装置の構成ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る平面アンテナ装置を構成するプリント基板の部分断面図である。
【
図4】参考実施例に係るレーダ装置の概略的な外観斜視図である。
【
図5】参考実施例に係り、アンテナパターン及びグランドパターン間の電界の様子を示す図(a)と、グランドパターンによる電波反射の様子を示す図(b)である。
【
図6】参考実施例に係る平面アンテナ装置のビームパターンを示す図である。
【
図7】参考実施例に係る平面アンテナ装置にて生じる位相誤差を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施例に係るレーダ装置の概略的な外観斜視図である。
【
図9】本発明の第1実施例に係るアンテナパターンの平面図である。
【
図10】本発明の第1実施例に係るプリント基板の部分断面図である。
【
図11】本発明の第2実施例に係るプリント基板の部分断面図である。
【
図12】本発明の第3実施例に係るプリント基板の部分断面図である。
【
図13】本発明の第4実施例に係るプリント基板の部分断面図である。
【
図14】本発明の第5実施例に係るプリント基板の部分断面図である。
【
図15】本発明の第6実施例に係るアンテナパターンの平面図である。
【
図16】本発明の第6実施例に係るアンテナパターン領域とグランドパターン領域との関係図である。
【
図17】本発明の第7実施例に係るプリント基板の平面図である。
【
図18】本発明の第7実施例に係り、レーダ装置を基準とする物標の方位の説明図である。
【
図19】本発明の第7実施例に係り、複数の受信アンテナにて反射波が受信される様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“100”によって参照されるアンテナパターンは、アンテナパターン100と表記されることもあるし、パターン100と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るレーダ装置及び車両の模式図である。自動車などの車両CRの所定位置にレーダ装置1が搭載される。
図1では、レーダ装置1が車両CRの前部に搭載されているが、レーダ装置1は車両CRの任意の箇所に設置され得る。
【0017】
図2に示す如く、レーダ装置1には平面アンテナ装置2及び電子回路3が設けられる。平面アンテナ装置2は、電子回路3から供給される送信信号に基づきミリ波帯の送信波を車両CRの周囲(例えば前方や斜め前方)に向けて送信する。この送信波は、車両CRの周辺に位置する物標(先行車、対向車、路側設置物など)によって反射され、平面アンテナ装置2は、その反射による反射波を受信する。反射波の受信信号は電子回路3に送られる。電子回路3は、反射波の受信信号に対して所定の信号処理を施すことで物標に関わる物標データを生成する。物標データは複数のパラメータを含み、当該複数のパラメータには、物標からの反射による反射波がレーダ装置1の受信アンテナに受信されるまでの距離(即ち、レーダ装置1及び物標間の距離)、車両CRに対する物標の相対速度、車両CRが前進する際の車両CRの進行方向に対する物標の存在位置の方位、車両CRの前後方向に沿った車両CR及び物標間の距離、車両CRの左右方向に沿った車両CR及び物標間の距離などが含まれていて良い。
【0018】
図3は、レーダ装置1に設けられるプリント基板10の部分断面図である。プリント基板10は合成樹脂等を材料にして板状に形成される。電子基板10は多層基板であり、基板層とパターン層とを交互に積み重ねた多層構造を有する。パターン層の総数は任意であるが、ここではパターン層の総数が4であるとする。即ち、電子基板10は4層基板であるとする。パターン層はパターン層L1~L4から成り、基板層は基板層SUB1~SUB3から成る。
【0019】
基板層SUB1~SUB3は絶縁体材料にて構成される(故に、基板層を絶縁層と称しても良い)。具体的には例えば、基板層SUB1~SUB3は、ガラスエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの合成樹脂にて構成される。基板層SUB1~SUB3は誘電体材料にて構成されるため、誘電体層とも言える。パターン層L1~L4は、銅箔などの金属にて構成される。
【0020】
プリント基板10の構造を明確に説明するために、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸から成る三次元直交座標系を以下のように定義する。X軸、Y軸及びZ軸は原点Oにて互いに直交する(
図3において原点Oは図示せず)。パターン層L1~L4はZ軸に沿って並んでいる。パターン層L1~L4の内、パターン層L1及びL4は最外層に位置していて露出している。Z軸の正側から負側に向かう向きに沿って、パターン層L1からパターン層L4に向かい、パターン層L1、L2、L3、L4の順に並んでいる。そして、パターン層L1とパターン層L2との間に基板層SUB1が位置し、パターン層L2とパターン層L3との間に基板層SUB2が位置し、且つ、パターン層L3とパターン層L4との間に基板層SUB3が位置するものとする。
【0021】
各パターン層及び各基板層は、Z軸方向において厚みを有し、且つ、X軸及びY軸に平行な面を形成する薄膜形状を有している。Z軸方向に沿って各パターン層及び各基板層を見たとき、各パターン層及び各基板層の形状は大きさを含めて互いに一致している。但し、各パターン層では、プリント基板10の製造工程において不必要な金属が除去され、必要な部分だけ金属によるパターンが形成されることになる。尚、以下では、X軸及びY軸に平行な平面をXY面と称することがある。また、以下では、基板として、厚みを有していて全体として略平面の形状、いわゆる板状の形状を持つ基板を、例にして説明する。但し、以下に示す内容は、フレキシブル基板のように可撓性のフィルムを用いて作製した基板や、曲面や折れ面を有する基板に対しても適用できる。
【0022】
以下の複数の実施例の中で、レーダ装置1(特に平面アンテナ装置2)に関わる具体的な構成や変形技術などを説明する。特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、上述した事項が後述の各実施例に適用される。後述の各実施例において、上述の内容と矛盾する事項については、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に述べる複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0023】
<<参考実施例>>
まず、後述の各実施例との比較に供される参考実施例を説明する。
図4は、参考実施例に係るレーダ装置1REFの概略的な外観斜視図である。レーダ装置1REFでは、パターン層L1に形成されたアンテナパターン901と、パターン層L2に形成されたグランドパターン902とで、送信波を送信する又は反射波を受信するマイクロストリップアンテナが構成される(パターン層L1及びL2の定義については
図3を参照)。また、
図4のMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)903は、高周波信号の発振、増幅、変調及び周波数変換といった信号処理を行う高周波集積回路であり、アンテナパターン901が設けられる面(即ち、パターン層L1が形成されている面)と同一面に配置されて、アンテナパターン901の一端に電気的に接続される。パターン層L3及びL4に、様々な他の回路パターンが形成され得るが、
図4では、そのような他の回路パターンの図示が省略されている。尚、ここでは、MMIC(
図4ではMMIC903)とアンテナパターン(
図4ではアンテナパターン901)とを共通のパターン層に設置することを想定しているが、MMICとアンテナパターンを互いに異なるパターン層に設置するようにしても良い(後述の各実施例においても同様)。例えば、参考実施例及び後述の各実施例において、アンテナパターンをパターン層L1に設置する一方でMMICをパターン層L4に設置した上で、それらを互いに接続するようにしても良い。
【0024】
グランドパターン902は固定された所定のグランド電位を有し、アンテナパターン901及びグランドパターン902間に送信信号又は受信信号に応じた電界が形成される。アンテナパターン901はパターン層L1において送信波の送信又は反射波の反射に適した所定のパターン形状を有するのに対し、グランドパターン902はパターン層L2の全てを満たす金属の層(所謂ベタグランドパターン)として構成されている。
【0025】
今、パターン901及び902にて送信アンテナが形成される場合を考える。尚、受信アンテナの形成においても同様の考え方を用いることができる。この場合、アンテナパターン901は、送信信号を伝播する給電線路のパターンと送信波を空間に向けて送信(放射)する放射素子のパターンとを含むことになる。
【0026】
図5(a)に、アンテナパターン901中の放射素子901Rとグランドパターン902との間に形成される電界の様子を示す。この電界はグランドパターン902の全体に亘って広がることになるが、そのような広がりは放射素子901Rとは別の放射源を生み出すことがある。即ち、
図5(b)に示す如く、アンテナパターン901中の放射素子901Rから空間に向けて放射された送信波の一部が上記電界に沿ってグランドパターン902に向かい、グランドパターン902上の点で反射してから物標に向かうことがある。このとき、グランドパターン902上の反射点が不要電波の放射源として機能する。送信波は放射素子901Rのみから放射されることが理想的であるので、このような不要電波は送信アンテナの特性に悪影響を与えうる。
【0027】
図6に、パターン901及び902にて構成される送信アンテナの水平方向のビームパターン(放射パターン)910を示す。ビームパターン910において、広角側の領域(アンテナ正面からの角度が比較的大きい領域)にゲインの歪(
図6の破線楕円912及び913内のパターンに対応)が生じており、この歪の主たる原因は、上記不要電波の存在と考えられる。ゲインの歪はレーダ装置1の検知性能を劣化させる。
【0028】
パターン901及び902にて受信アンテナを形成する場合も同様である。即ち、レーダ装置1REFにおける受信アンテナでは、物標からの反射波の一部がグランドパターン902にて反射してからアンテナパターン901にて受信されるといったことが生じ得る。グランドパターン902にて反射した電波が不要電波として機能するため、ビームパターンの広角側の角度範囲に歪が生じる。
【0029】
更に、パターン層L1にアンテナパターン901を並列配置することで複数の受信アンテナを形成し、複数の受信アンテナの受信信号を用いて方位演算を行う場合にあっては、広角側の角度範囲において位相誤差が大きくなる。
【0030】
図7に、レーダ装置1REFにおける、注目した或る1つの受信アンテナの位相誤差のパターン920を示す。位相誤差のパターン920において、広角側の角度範囲(アンテナ正面からの角度が比較的大きい範囲)にて大きな位相誤差が発生しており(
図7の破線楕円922及び923内のパターンに対応)、位相誤差の主たる原因も上記不要電波の存在と考えられる。
図7では、1つの受信アンテナの位相誤差のみが示されているが、他の受信アンテナの位相誤差も同様に発生する。方位演算は複数の受信アンテナの受信信号間の位相差に基づいて行われるが、検出される位相差の理想値からの誤差が位相誤差に相当する。位相誤差は方位演算の結果に誤差を生じさせ、結果、物標の計測位置に誤差を与える。尚、位相誤差については、後にも説明される。
【0031】
広角側の角度範囲におけるビームパターンの歪や位相誤差は、レーダ装置の広角側の角度範囲における検知性能を劣化させる。比較的長い検知距離を有し且つ比較的狭い角度範囲内の領域を監視する用途(車両前方監視用のロングレンジレーダ装置の用途)では、広角範囲の特性は重要視されない又は重要視されないことが多い。但し、比較的広い角度範囲内の領域を監視する周辺監視用途では、広角範囲の特性も重要となる。
【0032】
<<第1実施例>>
次に、第1実施例を説明する。
図8は、第1実施例に係るレーダ装置1の概略的な外観斜視図である。レーダ装置1では、パターン層L1に形成されたアンテナパターン100と、パターン層L2に形成されたグランドパターン110とで、送信波を送信する又は反射波を受信するマイクロストリップアンテナが構成される。パターン層L2は内層の一つであるので、グランドパターン110は内層グランドパターンとなる。また、
図8のMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)120は、高周波信号の発振、増幅、変調及び周波数変換といった信号処理を行う高周波集積回路であり、アンテナパターン100が設けられる面(即ち、パターン層L1が形成されている面)と同一面に配置されて、アンテナパターン100の一端に電気的に接続される。MMIC120は
図2の電子回路3の構成要素に含まれる。パターン層L3及びL4に、様々な他の回路パターンが形成され得るが、
図8では、レーダ装置1における他の回路パターンの図示を省略している。尚、
図8では、アンテナパターン100が模式的に簡素化した態様で示されており、実際のアンテナパターン100の形状は
図8とは異なり得る(後述の
図9についても同様)。
【0033】
アンテナパターン100及びグランドパターン110は、銅などの金属の薄膜パターンとして形成されて良い(後述する他の任意のアンテナパターン及びグランドパターンについても同様)。MMIC120は、例えばアンテナパターン100が設けられる面においてフリップチップ実装される。アンテナパターン100及びグランドパターン110間に送信信号又は受信信号に応じた電界が形成されることになる。
【0034】
アンテナパターン100は、送信信号又は受信信号を伝送するための伝送線路101のパターンと、送信波を送信(放射する)又は反射波を受信するアンテナ素子102のパターンと、を有する。伝送線路101はX軸方向に沿って伸びる概略直線状のパターンであり、伝送線路101の一端がMMIC120に接続される。アンテナパターン100において伝送線路101の他端には反射抑制用の終端素子103が設けられる。終端素子103は設けられない場合もある。
【0035】
アンテナ素子102は伝送線路101の側辺に接続される。例えば、アンテナ素子102は、矩形形状を有し、伝送線路101の直線部に対し45°傾けて接続される。アンテナ素子102はX軸方向に沿って複数並べて設けられ、複数のアンテナ素子102よりアレーアンテナが形成される。ここでは、伝送線路101の直線部における両方の側辺の夫々に対し、複数のアンテナ素子102が配列されているものとする。但し、伝送線路101の直線部における一方の側辺にのみアンテナ素子102が配列されるようにしても良い。アンテナパターン100における複数のアンテナ素子102は互いに同相で励振される。アンテナ素子102の個数は任意である。
【0036】
送信波を送信する送信アンテナとしてアンテナパターン100を機能させる場合、伝送線路101は電力を各アンテナ素子102に供給する給電線路として機能すると共にアンテナ素子102は送信波を空間に対して放射する放射素子として機能する。この際、アンテナパターン100に接続されたMMIC120は、ミリ波帯の送信信号を発生させる発振部及び送信信号を増幅する増幅部などを備えていて良い。反射波を受信するする受信アンテナとしてアンテナパターン100を機能させる場合、アンテナ素子102は反射波を受信する受信素子として機能すると共に伝送線路101は受信素子による受信信号を伝送する受電線路として機能する。この際、アンテナパターン100に接続されたMMIC120は、受信信号を増幅する増幅部、受信信号をダウンコンバートする周波数変換部、及び、ダウンコンバートにより得られたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部などを備えていて良い。
【0037】
ここで特筆すべき点は、グランドパターン110がパターン層L2の一部の領域においてのみ形成される点である。
【0038】
図9を参照し、アンテナパターン100の形状との関係において、グランドパターン110の形状について説明する。
図9は、Z軸方向に沿って見たときの、アンテナパターン100の模式的な平面図である。グランドパターン110は、基板層SUB1を介してアンテナパターン100に対向する位置に配置され、且つ、アンテナパターン100の外形を包含する所定の形状を有する(
図10も参照)。即ち、グランドパターン110は、アンテナパターン100と同一の形状を有し且つアンテナパターン100に対向する位置に配置される、或いは、アンテナパターン100よりも若干大きな形状を有し且つアンテナパターン100に対向する位置に配置される。本実施形態において、グランドパターン及びアンテナパターンを含むパターンの形状とは、大きさを含む概念であるとする。
【0039】
実際には例えば、以下のような形状をグランドパターン110に持たせることができる。即ち、パターン層L1においてアンテナパターン(ここではアンテナパターン100)が形成される領域を包含する最小の矩形領域をアンテナパターン領域と称する。そして、パターン層L2において、グランドパターン(ここではグランドパターン110)を形成する金属が配置された領域をグランドパターン領域と称する。この際、アンテナパターン領域の形状及びグランドパターン領域の形状をXY面に平行な平面に投影したとき、グランドパターン領域の形状内にアンテナパターン領域の形状が包含されるよう(それらの形状が完全に一致することを含む)、且つ、パターン層L2の一部の領域においてのみグランドパターン(ここではグランドパターン110)が存在するよう、アンテナパターン(ここではアンテナパターン100)の形状及び設置位置に応じてグランドパターンが形成される。グランドパターン領域の形状は矩形でも良く、アンテナパターン領域の形状とグランドパターン領域の形状は互いに完全に一致していても良い(上述したように形状の一致は大きさの一致も含む)。
図9の例において、アンテナパターン領域及びグランドパターン領域の夫々は、X軸に平行な2辺とY軸に平行な2辺を有する矩形領域となっており、XY面におけるアンテナパターン領域及びグランドパターン領域の中心位置は互いに一致しているが、それらは不一致でも良い。上述のような第1実施例に係るパターン100及び110の構造を、便宜上、第1パターン構造と称する。
【0040】
図10に、第1パターン構造が採用されたプリント基板10(特にプリント基板10Aと称され得る)の部分断面図を示す。
図10は、Y軸に平行なA-A’線(
図8参照)に沿った、Z軸に平行な断面による部分断面図である。アンテナパターン100を形成する金属薄膜の存在領域のY軸方向の幅は、X軸方向の位置によって様々に変化するが、A-A線’は、その幅が最大となる部分を通る。パターン層L3及びL4に様々な他の回路パターンが形成され得るが、
図10では、パターン層L1及びL2並びに基板層SUB1及びSUB2の構造のみを図示している。また、
図10では、パターン層L2において、グランドパターン110が形成されない空間が特に何も存在しない空間であるかのように示されているが、実際には当該空間には基板層SUB1及びSUB2を接合する接着剤等が充填されることになる(グランドパターン110が示される他の任意の図面においても同様)。
【0041】
グランドパターン110は、プリント基板10に設けられた層間接続ビア(貫通ビアやブラインドビアを含む;
図10において不図示)を介して接地される、即ち例えば、パターン層L1又はL4の一部に設けられたグランド電位を有する金属部に接続される(後述の他の実施例についても同様)。
【0042】
第1パターン構造によれば、アンテナパターン及びグランドパターン間の電界が必要以上に広がることが抑制され、結果、
図5(b)に示したようなグランドパターンでの電波の反射による不要電波が抑制される。不要電波の抑制によりレーダ装置1の検知性能の向上が期待される。このような不要電波の抑制は、特に、広角側の角度範囲におけるビームパターンの歪や位相誤差の低減に寄与し、結果、レーダ装置1の広角側の角度範囲における検知性能の向上が図られる。レーダ装置1の検知結果を用いて車両CRの制御(自動運転制御や運転支援制御)を行う場合などにあっては、当該制御の安全性を高めることが可能となる。
【0043】
アンテナパターン100にて送信アンテナが形成される場合、アンテナパターン100の放射素子からの放射電波であって且つパターン層L2側に向かう放射電波の内、グランドパターン110の非存在領域を通過する電波は、プリント基板10Aの裏面(パターン層L4が形成される面)に抜けていくことになる。そのような電波の存在は、上記検知性能に悪影響を及ぼさない。アンテナパターン100にて受信アンテナを形成する場合も同様である。
【0044】
尚、第1パターン構造を実現する場合にあっては、プリント基板10Aは、パターン層L1及びL2並び基板層SUB1のみにて構成される両面基板であっても良い。
【0045】
<<第2実施例>>
次に、第2実施例を説明する。第2実施例及び後述の各実施例は、第1実施例を基礎とする実施例であり、第2実施例及び後述の各実施例において特に記述無き事項については、第1実施例の記載が第2実施例及び後述の各実施例にも適用される。
【0046】
プリント基板10にアンテナ形成用のパターンだけでなく、レーダ装置1の形成に必要な他の回路パターンも形成した方が、レーダ装置1全体の小型化や低廉化が図られる。他の回路パターンをパターン層L3又はL4に設けることができる。但し、そのような他の回路パターンの形成により、アンテナパターン100からの電界が他の回路パターンに向けて広がったり、他の回路パターンにて電波が反射したりすると、参考実施例と類似する不都合が生じる。第2実施例及び後述の幾つかの実施例では、他の回路パターンの配置を許容しつつ、そのような不都合の発生を抑止する方法を説明する。
【0047】
今、上述の他の回路パターンに対応するものとして、パターン層L3又はL4に所定のレーダ機能回路が設けられているものとする。レーダ機能回路は、アンテナパターン100及びグランドパターン110と異なる任意の回路であって良いが、レーダ装置1の形成に必要な回路であると良い。即ち例えば、送信アンテナに供給すべき送信信号を生成するための回路がレーダ機能回路に含まれていても良いし、受信アンテナの受信信号に対して所定の信号処理を施す回路(例えば受信アンテナの受信信号から物標データを生成するための回路)がレーダ機能回路に含まれていても良い。レーダ機能回路は、
図2に示した電子回路3を構成すると考えても良い。レーダ機能回路はパターン層L3又はL4に設けられた回路パターンを含んでいて良い。レーダ機能回路が最外層であるパターン層L4に設けられる場合、レーダ機能回路は、パターン層L4に実装された電子部品内の回路(集積回路を含む)であっても良く、MMIC120と同等のMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)であっても良い。
【0048】
図11に、第2実施例に係るプリント基板10(特にプリント基板10Bと称され得る)の部分断面図を示す。
図11は、Y軸に平行なA-A’線(
図8参照)に沿った、Z軸に平行な断面による部分断面図である。プリント基板10Bに採用された構造を含む、第2実施例に係る構造を第2パターン構造と称する。第2パターン構造は第1実施例に係る第1パターン構造を有し、従って、プリント基板10Bにおいてパターン100及び110の形状及び位置関係は第1実施例で示したものと同様である。
【0049】
図11において、符号“130”にて参照される斜線領域は特定回路が設けられた領域を表している。特定回路はレーダ機能回路の構成要素である。ここでは、特定回路130がパターン層L3に設けられているが、特定回路130はパターン層L4に設けられていても良い。第2パターン構造の説明にあたり、Z軸に平行であって且つパターン層L4からパターン層L1に向かう方向を上方向と考え、その逆方向を下方向と考える。パターン層L3の領域の内、グランドパターン110の下方に位置する領域140においてもレーダ機能回路が設けられうるが、特定回路130は、領域140と重ならない領域に設けられた、レーダ機能回路の一部であると考える。故に、パターン層L2において、特定回路130に対向する位置にはグランドパターン110が形成されないことになる。
【0050】
図11では、パターン層L3において、特定回路130が形成されない空間が、特に何も存在しない空間であるかのように示されているが、実際には当該空間には基板層SUB2及びSUB3を接合する接着剤等が充填されることになる、或いは、図示していないが、当該空間にレーダ機能回路を構成する他の回路が設けられていても良い(パターン層L3内に特定回路130が示される他の任意の図面においても同様)。
【0051】
図11において、符号“150”にて参照されるドット領域は抵抗膜が設けられた領域を表している。抵抗膜150は、所定の電気抵抗率を有するよう、プリント基板10Bの製造プロセスにてパターン層L2内に形成された抵抗体である。パターン層L2の領域の内、グランドパターン110が形成されていない領域の全部又は一部に抵抗膜150が形成される。
図11では、パターン層L2において、抵抗膜150及びグランドパターン110間に隙間が存在しているが、その隙間には実際には基板層SUB1及びSUB2を接合する接着剤等が充填される。或いは、その隙間自体が存在しないように抵抗膜150とグランドパターン110とが接合されていても良い。抵抗膜150は、グランドパターン110を含む、レーダ装置1を形成する回路パターンの何れとも電気的に接続されていなくても良い。
【0052】
抵抗膜150は特定回路130に対向する位置に形成される。詳細には例えば、特定回路領域130が設けられる領域をZ軸に沿ってパターン層L2内の領域に平行移動したときの平行移動後の領域に、抵抗膜150が設けられる。但し、
図11に示すように、その平行移動後の領域以外の領域(
図11においてグランドパターン110の右側に示された領域)にも、抵抗膜150は設けられうる。
【0053】
上述の如く、第2パターン構造において、特定回路130に対向する位置にはグランドパターン110が形成されない。これは、逆に考えれば、不要電波の抑止を狙ってグランドパターン110の形成領域をパターン層L2の全体領域からパターン層L2の一部領域に狭めたとき、パターン層L3及びL4において、グランドパターン110に対向しない領域が生まれるが、その領域に特定回路130が配置されるということである。特定回路130が配置されない場合、グランドパターン110に対向しない部分が無駄なスペースとなり得るが、特定回路130の配置によりプリント基板の全体が有効活用され、レーダ装置1全体の小型化や低廉化が図られる。
【0054】
但し、アンテナパターン100にて送信アンテナが形成される場合、アンテナパターン100の放射素子からの放射電波であって且つパターン層L2側に向かう放射電波の内、グランドパターン110の非存在領域を通過する電波が、特定回路130にて反射され、結果、不要電波が生じるおそれがある(アンテナパターン100にて受信アンテナを形成する場合も同様)。これを考慮し、第2パターン構造では、アンテナパターン100が形成されるパターン層L1と特定回路130が形成されるパターン層L3との間のパターン層L2内の位置であって且つ特定回路130に対向する位置に、抵抗膜150を形成している。抵抗膜150は、導電性電波吸収体として機能し、自身に入射してきた電波(電磁波)を反射せずに内部に取り込み、導電損失を利用して入射電波のエネルギーを熱に変える。このため、特定回路130への電波(送信波又は反射波)の到達が抑制されて特定回路130が不要電波の放射源となることが抑制される。不要電波の抑制による効果は上述した通りである。
【0055】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第2実施例において、グランドパターン110が設けられるパターン層L1とは別の層に抵抗膜を設けるようにしても良い。これについて説明する。
【0056】
図12に、第3実施例に係るプリント基板10(特にプリント基板10Cと称され得る)の部分断面図を示す。
図12は、Y軸に平行なA-A’線(
図8参照)に沿った、Z軸に平行な断面による部分断面図である。プリント基板10Cに採用された構造を含む、第3実施例に係る構造を第3パターン構造と称する。第3パターン構造は第1実施例に係る第1パターン構造を有し、従って、プリント基板10Cにおいてパターン100及び110の形状及び位置関係は第1実施例で示したものと同様である。
【0057】
プリント基板10Cでは、特定回路130がパターン層L3ではなくパターン層L4に設けられている。第3パターン構造の説明にあたり、Z軸に平行であって且つパターン層L4からパターン層L1に向かう方向を上方向と考え、その逆方向を下方向と考える。パターン層L4の領域の内、グランドパターン110の下方に位置する領域141においてもレーダ機能回路が設けられうるが、特定回路130は、領域141と重ならない領域に設けられた、レーダ機能回路の一部であると考える。即ち、
図11の第2パターン構造と同様、パターン層L2において、特定回路130に対向する位置にはグランドパターン110が形成されないことになる。尚、領域141に限らず、パターン層L4の領域の全体に亘って、レーダ機能回路を構成する各回路が形成され得る。
【0058】
図12において、符号“150a”にて参照されるドット領域は抵抗膜が設けられた領域を表している。抵抗膜150aは、所定の電気抵抗率を有するよう、プリント基板10Cの製造プロセスにてパターン層L3内に形成された抵抗体である。抵抗膜150aは、グランドパターン110を含む、レーダ装置1を形成する回路パターンの何れとも電気的に接続されていなくて良い。但し、層間接続ビアなどを利用して、抵抗膜150aが他の回路パターン(例えばグランドパターン110)と接続されていても構わない。
【0059】
図12においては、パターン層L3の領域内における、グランドパターン110に対向する位置152にも特定回路130に対向する位置153にも抵抗膜150aが形成されており、抵抗膜150aはパターン層L3の全体に亘って形成されていても良い。但し、抵抗膜150aは、特定回路130に対向する位置153に配置されていれば足り、それ以外の位置に抵抗膜150aが存在していなくても構わない。即ち例えば、特定回路130が設けられる領域を、Z軸に沿ってパターン層L3内の領域に平行移動したときの平行移動後の領域に、抵抗膜150aが設けられていれば足る。但し、レーダ機能回路がパターン層L4の領域の全体に亘って形成され得ることを考慮すれば、抵抗膜150aをパターン層L3の全体に亘って形成することが妥当であるとも言える。
【0060】
図12の第3パターン構造においても、
図11の第2パターン構造に類似して、アンテナパターン100が形成されるパターン層L1と特定回路130が形成されるパターン層L4との間のパターン層L3内の位置であって且つ特定回路130に対向する位置に、抵抗膜150aを形成している。抵抗膜150aは、導電性電波吸収体として機能し、自身に入射してきた電波(電磁波)を反射せずに内部に取り込み、導電損失を利用して入射電波のエネルギーを熱に変える。このため、特定回路130への電波(送信波又は反射波)の到達が抑制されて特定回路130が不要電波の放射源となることが抑制される。不要電波の抑制による効果は上述した通りである。
【0061】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第2実施例において、グランドパターン110及び特定回路130間に位置する基板層を電波吸収材料にて構成するようにしても良い。これについて説明する。
【0062】
図13に、第4実施例に係るプリント基板10(特にプリント基板10Dと称され得る)の部分断面図を示す。
図13は、Y軸に平行なA-A’線(
図8参照)に沿った、Z軸に平行な断面による部分断面図である。プリント基板10Dに採用された構造を含む、第4実施例に係る構造を第4パターン構造と称する。第4パターン構造は第1実施例に係る第1パターン構造を有し、従って、プリント基板10Dにおいてパターン100及び110の形状及び位置関係は第1実施例で示したものと同様である。
【0063】
図13において、符号“130”にて参照される斜線領域は特定回路が設けられた領域を表している。ここでは、特定回路130がパターン層L3に設けられているが、特定回路130はパターン層L4に設けられていても良い。第4パターン構造の説明にあたり、Z軸に平行であって且つパターン層L4からパターン層L1に向かう方向を上方向と考え、その逆方向を下方向と考える。パターン層L3の領域の内、グランドパターン110の下方に位置する領域140においてもレーダ機能回路が設けられうるが、特定回路130は、領域140と重ならない領域に設けられた、レーダ機能回路の一部であると考える。故に、パターン層L2において、特定回路130に対向する位置にはグランドパターン110が形成されないことになる。
【0064】
図13のプリント基板10Dにおいて、基板層SUB2は、基板層SUB1及びSUB3とは異なり、電波吸収体として機能するよう電波吸収材料を用いて構成される。このため、プリント基板10Dでは基板層SUB2を電波吸収層170と称することもできる。例えば、ガラスエポキシ樹脂などの合成樹脂に対し磁性材料を混入することで基板層SUB2を形成する。これにより、基板層SUB2は、磁性電波吸収体として機能し、自身に入射してきた電波(電磁波)を反射せずに内部に取り込み、磁気損失を利用して入射電波のエネルギーを熱に変える。このため、特定回路130への電波(送信波又は反射波)の到達が抑制されて特定回路130が不要電波の放射源となることが抑制される。不要電波の抑制による効果は上述した通りである。
【0065】
尚、第4パターン構造において、特定回路130がパターン層L4に存在するのであれば、基板層SUB2に代えて基板層SUB3を電波吸収材料を用いて構成しても良い、或いは、基板層SUB2及びSUB3を共に電波吸収材料を用いて構成しても良い。何れにせよ、グランドパターン110が形成されるパターン層と、特定回路130が形成されるパターン層との間に介在する1以上の基板層を、電波吸収材料を用いて構成すると良い。
【0066】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。第4実施例において、電波吸収の機能を基板層SUB1に担わせても良い。
【0067】
図14に、第5実施例に係るプリント基板10(特にプリント基板10Eと称され得る)の部分断面図を示す。
図14は、Y軸に平行なA-A’線(
図8参照)に沿った、Z軸に平行な断面による部分断面図である。プリント基板10Eに採用された構造を含む、第5実施例に係る構造を第5パターン構造と称する。第5パターン構造は第1実施例に係る第1パターン構造を有し、従って、プリント基板10Eにおいてパターン100及び110の形状及び位置関係は第1実施例で示したものと同様である。
【0068】
図14において、符号“130”にて参照される斜線領域は特定回路が設けられた領域を表している。ここでは、特定回路130がパターン層L3に設けられているが、特定回路130はパターン層L4に設けられていても良い。第5パターン構造の説明にあたり、Z軸に平行であって且つパターン層L4からパターン層L1に向かう方向を上方向と考え、その逆方向を下方向と考える。パターン層L3の領域の内、グランドパターン110の下方に位置する領域140においてもレーダ機能回路が設けられうるが、特定回路130は、領域140と重ならない領域に設けられた、レーダ機能回路の一部であると考える。故に、パターン層L2において、特定回路130に対向する位置にはグランドパターン110が形成されないことになる。
【0069】
図14のプリント基板10Eにおいて、基板層SUB1は、所定の誘電体材料を用いて形成される誘電体部181と、所定の電波吸収材料を用いて形成される電波吸収部182とを、共通の平面上で結合した構成を有する。例えば、ガラスエポキシ樹脂などの所定の誘電体材料を用いて誘電体部181を形成する一方で、その誘電体材料を対し磁性材料を混入することで電波吸収部182を形成する(誘電体部181に対して磁性材料の混入は成されない)。そして、基板層SUB1において、グランドパターン110に対向する位置には誘電体部181が配置され、特定回路130に対向する位置には電波吸収部182が配置される。
【0070】
これにより、基板層SUB1における電波吸収部182は、磁性電波吸収体として機能し、自身に入射してきた電波(電磁波)を反射せずに内部に取り込み、磁気損失を利用して入射電波のエネルギーを熱に変える。このため、特定回路130への電波(送信波又は反射波)の到達が抑制されて特定回路130が不要電波の放射源となることが抑制される。不要電波の抑制による効果は上述した通りである。
【0071】
誘電体部181及び電波吸収部182から成る基板層SUB1の製造方法は任意である。例えば、必要な形状を有する誘電体部181及び電波吸収部182を別々に用意して、それらを共通の平面上にて接着剤で結合すれば良い。より具体的な1つの例としては、基板層SUB1の外形形状と同一の外形形状を有する板状の電波吸収基材を用意し、その電波吸収基材の所定領域にZ軸方向に沿って貫通する穴部を形成する。この穴部が形成された電波吸収基材が電波吸収部182に相当する。一方で、XY面においてグランドパターン110と同一の形状を有する板状の誘電体部181を用意し、誘電体部181を電波吸収部182の穴部に挿入して、それらを接着剤で結合すれば良い。ここで、電波吸収部182の穴部は誘電体部181の形状にあわせた形状を有するものとする。
【0072】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。レーダ装置1において、送信アンテナ又は受信アンテナを形成するアンテナパターンの具体的構成は任意である。
【0073】
例えば、
図15に示すようなアンテナパターン100aが、送信アンテナ又は受信アンテナを形成するアンテナパターンとして用いられても良い。アンテナパターン100aでは、いわゆる中央給電方式が採用されている。アンテナパターン100aは、
図8及び
図9に示すアンテナパターン100と同等の構造を相当するアンテナパターン100’を、結合部105を境界にして2つ設けた構成を有する(但し、図示の便宜上、
図9のアンテナパターン100と
図15のアンテナパターン100’とでは、図示されるアンテナ素子102の個数等が異なっている)。より具体的には、第1のアンテナパターン100’と第2のアンテナパターン100’との間に結合部105が配置される。そして、第1のアンテナパターン100’において、伝送電路101の一端は結合部105に接続されて、その一端から伝送線路101がX軸の正側に向けて伸びる。第2のアンテナパターン100’において、伝送電路101の一端は結合部105に接続されて、その一端から伝送線路101がX軸の負側に向けて伸びる。各アンテナパターン100’において、伝送線路101、アンテナ素子102及び終端端子103間の関係は、上述のアンテナパターン100におけるものと同様である。第1及び第2のアンテナパターン100’はアンテナパターン100aの構成要素に含まれるが、結合器105はアンテナパターン100aの構成要素に含まれない(但し含まれると解釈することも可能である)。
【0074】
アンテナパターン100aはパターン層L1に形成される。送信波を送信する送信アンテナとしてアンテナパターン100aを機能させる場合、送信信号がパターン層L4に形成された送信用回路からパターン層L1及びL4間に形成された導波管を通じて結合器105に伝搬され、結合器105から各伝送線路101を介して各アンテナ素子102に送信信号が伝搬される(送信波の放射用の電力が供給される)。反射波を受信する受信アンテナとしてアンテナパターン100aを機能させる場合、各アンテナ素子102による反射波の受信信号は各伝送線路101を介して結合器105に伝搬され、結合器105からパターン層L1及びL4間に形成された導波管を通じ、受信信号を処理する受信用回路に対して受信信号が伝搬される。
【0075】
図15において、結合部105内に示された斜線領域は導波管の伝送路を表している。
図15では示されないが、導波管の伝送路はパターン層L1及びL4間に設けられることになる。導波管は中空導波管であっても良いが、導波管の伝送路はプリント基板10を構成する誘電体などで満たされていても良い。但し、何れにせよ、導波管の伝送路の部分にはグランドパターンが設けられない。
【0076】
アンテナパターン100aが用いられる場合にも、グランドパターン110は、基板層SUB1を介してアンテナパターン100aに対向する位置に配置され、且つ、アンテナパターン100aの外形を包含する所定の形状を有する。即ち、グランドパターン110は、アンテナパターン100aと同一の形状を有し且つアンテナパターン100aに対向する位置に配置される、或いは、アンテナパターン100aよりも若干大きな形状を有し且つアンテナパターン100aに対向する位置に配置される。
【0077】
図16を参照する。既に述べたように、パターン層L1においてアンテナパターン(ここではアンテナパターン100a)が形成される領域を包含する最小の矩形領域はアンテナパターン領域と称され、パターン層L2においてグランドパターン(ここではグランドパターン110)を形成する金属が配置された領域はグランドパターン領域と称される。アンテナパターン100aが用いられる場合にも、アンテナパターン領域とグランドパターン領域との関係は
図9を参照して上述した通りである。即ち、アンテナパターン領域の形状及びグランドパターン領域の形状をXY面に平行な平面に投影したとき、グランドパターン領域の形状内にアンテナパターン領域の形状が包含されるよう(それらの形状が完全に一致することを含む)、且つ、パターン層L2の一部の領域においてのみグランドパターン(ここではグランドパターン110)が存在するよう、アンテナパターン(ここではアンテナパターン100a)の形状及び設置位置に応じてグランドパターンが形成される。グランドパターン領域の形状は矩形でも良く、アンテナパターン領域の形状とグランドパターン領域の形状は互いに完全に一致していても良い(上述したように形状の一致は大きさの一致も含む)。
図16の例において、アンテナパターン領域及びグランドパターン領域の夫々は、X軸に平行な2辺とY軸に平行な2辺を有する矩形領域となっており、XY面におけるアンテナパターン領域及びグランドパターン領域の中心位置は互いに一致しているが、それらは不一致でも良い。
【0078】
<<第7実施例>>
第7実施例を説明する。ここまでは、基本的に、
図2の平面アンテナ装置2に設けられる1つのアンテナパターンに注目したが、平面アンテナ装置2には互いに分離した複数のアンテナパターンが設けられて良い。この際、アンテナパターンごとにグランドパターンが設けられ、アンテナパターンとグランドパターンの対ごとに、上述の第1~第5パターン構造の何れかが採用されると良い。これについて、具体的に説明する。
【0079】
図17は、第7実施例に係るプリント基板10(以下、特にプリント基板10Fと称され得る)をZ軸の正側から見た平面図である。Z軸の正側からプリント基板10Fを見たとき、パターン層L1に設けられた複数のアンテナパターンが観測される。平面アンテナ装置2に設けられるアンテナパターンの総数は2以上であれば任意であるが、ここではアンテナパターンの総数が6であるとし、プリント基板10Fのパターン層L1に設けられる6つのアンテナパターンをAT[1]~AT[6]にて参照する。アンテナパターンAT[1]~AT[6]の夫々は、アンテナパターン100又は100aと同一の構成を持つ。アンテナパターンAT[1]~AT[6]に含まれる任意の2以上のアンテナパターンの形状は互いに一致していても良いし、不一致であっても良い。
【0080】
アンテナパターンAT[1]~AT[6]は、パターン層L1において、互いに分離して並べられており、
図17ではY軸方向に沿って並べられている。例えば、Y軸及びZ軸は水平面に対して平行とされ、X軸は鉛直線に平行とされる。そうすると、アンテナパターンAT[1]~AT[6]は鉛直面に沿って並ぶことになる。プリント基板10Fにおいて、パターン層L2にはグランドパターンG[1]~G[6]が設けられており、
図17では、グランドパターンG[1]~G[6]の各外形が破線矩形として示されている。グランドパターンG[1]~G[6]に含まれる任意の2以上のグランドパターンの形状は互いに一致していても良いし、不一致であっても良い。
【0081】
任意の整数iについてアンテナパターンAT[i]とグランドパターンG[i]とで対が形成される。つまり、アンテナパターンとグランドパターンの対ごとにマイクロストリップアンテナが構成される。そして、アンテナパターン及びグランドパターンの対ごとに、第1~第6実施例に示した構造が採用されて良い。
【0082】
即ち、アンテナパターン及びグランドパターンの各対において、グランドパターンG[i]は、基板層SUB1を介してアンテナパターンAT[i]に対向する位置に配置され、且つ、アンテナパターンAT[i]の外形を包含する所定の形状を有する。より具体的には、各対において、グランドパターンG[i]は、アンテナパターンAT[i]と同一の形状を有し且つアンテナパターンAT[i]に対向する位置に配置される、或いは、アンテナパターンAT[i]よりも若干大きな形状を有し且つアンテナパターンAT[i]に対向する位置に配置される。
【0083】
パターン層L2においてグランドパターンG[1]~G[6]は互いに分離したパターンとして形成されている。グランドパターンG[1]~G[6]の夫々は、プリント基板10Fに設けられた層間接続ビア(貫通ビアやブラインドビアを含む;
図17において不図示)を介して接地される、即ち例えば、パターン層L1又はL4の一部に設けられたグランド電位を有する金属部に接続される。
【0084】
アンテナパターン及びグランドパターンの各対において、アンテナパターンAT[i]及びグランドパターンG[i]は第1パターン構造を有し、特定回路130が存在する場合には第2~第5パターン構造の何れかが採用されて良い。
【0085】
これにより、アンテナパターンが複数設けられる場合にあっても、上述の各実施例で示した効果が奏される。レーダ装置1を実際に形成する場合、通常は複数のアンテナパターンが必要となるため、上述の各実施例で示した効果が、実際のレーダ装置1に即した有益な効果として得られる。
【0086】
ここでは、アンテナパターンAT[1]及びAT[2]により2本の送信アンテナが構成され、アンテナパターンAT[3]~AT[6]により4本の受信アンテナが構成されることを想定する。この場合、アンテナパターンAT[1]及びAT[2]からの各送信波が空間に向けて放射され、それらの送信波は空間において合成された形態で伝搬される。合成された送信波は、車両CRの周辺に位置する物標(先行車、対向車、路側設置物など)によって反射され、その反射による反射波をアンテナパターンAT[3]~AT[6]の夫々において受信する。アンテナパターンAT[3]~AT[6]の受信信号は夫々に
図2の電子回路3に送られる。電子回路3は上述のMMIC120等にて構成され、アンテナパターンAT[3]~AT[6]の各受信信号に基づき物標データを生成する。
【0087】
図18を参照し、今、単一の微小な物標TGからの反射波RWがレーダ装置1にて受信されることを考える。レーダ装置1及び物標TG間を結ぶ直線とZ軸とが成す角度θは、レーダ装置1から見た物標TGの存在位置の方位を表している。レーダ装置1では、その方位を示す情報も導出されて物標データに含められうる。尚、物標TGがZ軸の正側に位置するときの角度θを0°としたとき、角度θには正の角度と負の角度がある。
【0088】
図19は、物標TGからの反射波RWがアンテナパターンAT[3]~AT[6]にて共通して受信される様子を示した図である。アンテナパターンAT[3]~AT[6]の受信信号間には角度θに応じた位相差が生じ、レーダ装置1の電子回路3では、この位相差を検出することで物標TGの方位(即ち角度θ)を導出する。
【0089】
しかし、電子回路3で実際に検出される位相差は、上記不要電波や、アンテナパターンAT[3]~AT[6]間のアイソレーションの不完全さの影響を受けて誤差を含み得る。この誤差が上述の位相誤差に相当する。角度θが比較的小さな物標TGからの反射波RWを受けるとき、ビームパターンにおいて相対的に大きなゲインが得られ、ゲインが相対的に大きな角度範囲では、不要電波等の影響は小さいものとして無視できる(即ち位相誤差は軽微である)。但し、ゲインが相対的に小さくなる広角側の角度範囲では、不要電波等の影響が相対的に大きくなって、大きな位相誤差が生じ得る(参考実施例のレーダ装置1REFに関する
図7を参照)。
【0090】
第1~第5パターン構造の何れかが採用された平面アンテナ装置2を用いれば、不要電波を抑制することが可能となるため、このような位相誤差を低減することが可能となる。
【0091】
<<本発明の考察>>
上述の実施形態にて具体化された本発明について考察する。
【0092】
本発明の一側面に係る平面アンテナ装置は、基板(10)の第1層(L1)、第2層(L2)にアンテナパターン(100)、グランドパターン(110)を形成して構成される平面アンテナ装置であって、前記グランドパターンは、前記第1層及び前記第2層間の基板層(SUB1)を介して前記アンテナパターンに対向する位置であって且つ前記第2層の一部の領域に形成され、前記アンテナパターンの外形を包含する形状を有することを特徴とする。
【0093】
前記平面アンテナ装置において、例えば、前記基板は、前記第1層及び前記第2層に加えて第3層(L3又はL4)を含む多層構造を有し、前記第2層は前記第1層と前記第3層との間に位置し、前記第3層に所定の回路(レーダ機能回路)が設けられ、前記所定の回路に含まれる特定回路(130)に対向する位置には、前記グランドパターンが形成されないと良い。
【0094】
この際例えば、前記第2層において前記特定回路に対向する位置に抵抗膜(150)を形成しても良いし(
図11参照)、前記第2層(L2)と前記第3層(L4)との間に抵抗膜(150a)を有する層(L3)を介在させても良いし(
図12参照)、前記第2層(L2)と前記第3層(L3又はL4)との間に所定の電波吸収材料を用いて形成された層(SUB2,170)を介在させても良い(
図13参照)。
【0095】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 レーダ装置
2 平面アンテナ装置
10 プリント基板
100、100a、AT[1]~AT[6] アンテナパターン
110、G[1]~G[6] グランドパターン
130 特定回路
150、150a 抵抗膜
170 電波吸収層
181 誘電体部
182 電波吸収部
L1~L4 パターン層
SUB1~SUB3 基板層