(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】高層建物およびプレキャストプレストレストコンクリート柱
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20221115BHJP
E04C 3/34 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04H9/02 351
E04C3/34
(21)【出願番号】P 2018135983
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2017139836
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大庭 正俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
(72)【発明者】
【氏名】高森 直樹
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-197324(JP,A)
【文献】特開2015-218475(JP,A)
【文献】実開平03-037117(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
E04C 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート柱体
の緊張材挿通孔に緊張材が鉛直方向に挿通された複数のプレキャストプレストレストコンクリート柱と、建物の揺れを抑制する複数の制振装置とを備
え、前記複数のプレキャストプレストレストコンクリート柱は上下方向に隣り合って設けられた高層建物であって、
前記プレキャストプレストレストコンクリート柱は、前記緊張材がアンボンド状態で前記コンクリート柱体に配設され
ると共に上下方向において隣り合う前記プレキャストプレストレストコンクリート柱の前記緊張材は連続して連結され、
前記制振装置は、前記高層建物の揺れによる前記緊張材の変形が前記緊張材の弾性範囲内に収まるように前記高層建物の揺れを抑制する、
ことを特徴とする高層建物。
【請求項2】
前記制振装置は、前記高層建物の揺れを1/120~1/150の範囲に抑制するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の高層建物。
【請求項3】
前記制振装置は、前記プレキャストプレストレストコンクリート柱の部材角が前記プレキャストプレストレストコンクリート柱の最大せん断力時部材角を超えないように前記高層建物の揺れを抑制するよう構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の高層建物。
【請求項4】
コンクリート柱体と、前記コンクリート柱体に
鉛直方向に挿通され引張力が掛けられた緊張材とを含んで構成されたプレキャストプレストレストコンクリート柱であって、
前記コンクリート柱体は、断面が矩形を呈し、柱主筋とフープ筋が埋設されると共に、複数の緊張材挿通孔が鉛直方向に貫通形成され、
前記複数の緊張材挿通孔は、前記フープ筋の内側で、前記コンクリート柱体の矩形の輪郭に沿って配置され、
前記緊張材は、
前記複数の緊張材挿通孔それぞれに挿通され、前記コンクリート柱体に対してアンボンド状態で配設されている、
ことを特徴とするプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項5】
前記緊張材挿通孔の内径は前記緊張材の外径よりも大きい寸法で形成され、
前記アンボンド状態は、前記緊張材の外周面と前記緊張材挿通孔の内周面との間の環状の隙間を介して形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の高層建物または請求項4記載のプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項6】
前記緊張材の外周面にグリスが塗られ、そのグリスの周囲を覆うカバーが設けられ、
前記グリスおよび前記カバーは前記環状の隙間に収納されている、
ことを特徴とする請求項5記載の高層建物または請求項5記載のプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストプレストレストコンクリート柱と制振装置とを備えた高層建物およびプレキャストプレストレストコンクリート柱に関する。
【背景技術】
【0002】
引張力を付与したプレキャストプレストレストコンクリート柱は、通常のプレキャストコンクリート柱に比べ残留変形がなく、したがって、高層建物では、柱としてプレキャストプレストレストコンクリート柱を用いることが望ましい。
また、高層建物には、その揺れを抑制するための各種の制振装置が用いられている。
従来のプレキャストプレストレストコンクリート柱は、コンクリート柱体に形成された複数の緊張材挿通孔にそれぞれ緊張材が挿通され、緊張材に引張力が掛けられた状態で、コンクリート柱体の緊張材挿通孔の内周面と緊張材の外周面との間にグラウトが充填され、引張力が掛けられた状態の緊張材とコンクリート柱体とを一体化することで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のプレキャストプレストレストコンクリート柱では、緊張材挿通孔にグラウトを充填する作業が必要で、また、グラウトの充填後グラウトが硬化するまでの養生期間を待つ必要があり、それらは各階毎に必要となるため工期の短縮を図る上で改善の余地があった。
また、従来のプレキャストプレストレストコンクリート柱では、緊張材とコンクリート柱体とがグラウトを介して一体化されているため、高層建物が揺れた際に、緊張材がコンクリート柱体に拘束を受けつつ変形し、緊張材に局所的な応力が掛かり,緊張材の耐久性を高める上で不利となり、改善の余地があった。
本発明はこのような緊張材の耐久性に着目して案出されたものであり、本発明の目的は、高層建物の工期の短縮化を図り、緊張材の耐久性の向上を図る上で有利な高層建物およびプレキャストプレストレストコンクリート柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明は、コンクリート柱体の緊張材挿通孔に緊張材が鉛直方向に挿通された複数のプレキャストプレストレストコンクリート柱と、建物の揺れを抑制する複数の制振装置とを備え、前記複数のプレキャストプレストレストコンクリート柱は上下方向に隣り合って設けられた高層建物であって、前記プレキャストプレストレストコンクリート柱は、前記緊張材がアンボンド状態で前記コンクリート柱体に配設されると共に上下方向において隣り合う前記プレキャストプレストレストコンクリート柱の前記緊張材は連続して連結され、前記制振装置は、前記高層建物の揺れによる前記緊張材の変形が前記緊張材の弾性範囲内に収まるように前記高層建物の揺れを抑制することを特徴とする。
また、本発明は、コンクリート柱体と、前記コンクリート柱体に鉛直方向に挿通され引張力が掛けられた緊張材とを含んで構成されたプレキャストプレストレストコンクリート柱であって、前記コンクリート柱体は、断面が矩形を呈し、柱主筋とフープ筋が埋設されると共に、複数の緊張材挿通孔が鉛直方向に貫通形成され、前記複数の緊張材挿通孔は、前記フープ筋の内側で、前記コンクリート柱体の矩形の輪郭に沿って配置され、前記緊張材は、前記複数の緊張材挿通孔それぞれに挿通され、前記コンクリート柱体に対してアンボンド状態で配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高層建物によれば、従来各階毎の複数箇所で行なっていた、緊張材が挿通されたコンクリート柱体の緊張材挿通孔にグラウトを充填する作業を省け、また、グラウトの養生期間を待つ必要がないので、工期を大幅に短縮できる。
また、高層建物が揺れた際に、緊張材がコンクリート柱体の拘束を受けずにその長手方向に自由に変形でき、緊張材に局所的な応力が掛かることもないので、緊張材の耐久性を高める上で有利となる。
さらに、制振装置は、高層建物の揺れによる緊張材の変形が緊張材の弾性範囲内に収まるように高層建物の揺れを抑制するので、緊張材の耐久性を高める上でより有利となる。
本発明のプレキャストプレストレストコンクリート柱によれば、建物の揺れを抑制する上で有利となり、また、建物を構築する際に、緊張材が挿通されたコンクリート柱体の緊張材挿通孔にグラウトを充填する作業を省け、また、グラウトの養生期間を待つ必要がないので、工期を大幅に短縮できる。
また、建物が揺れた際に、緊張材がコンクリート柱体の拘束を受けずにその長手方向に自由に変形でき、緊張材に局所的な応力が掛かることもないので、緊張材の耐久性を高める上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】プレキャストプレストレストコンクリート柱の断面図である。
【
図3】プレキャストプレストレストコンクリート柱の断面図である。
【
図4】緊張材部分のプレキャストプレストレストコンクリート柱の断面図である。
【
図9】各試験体におけるせん断力と部材角との関係を示すグラフである。
【
図10】緊張材引張応力と部材角の関係を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の高層建物およびプレキャストプレストレストコンクリート柱の実施形態を説明する。
まず、
図1~
図4を参照して第1の実施の形態について説明する。
実施の形態に係る高層建物10は、例えば高さが60m以上の超高層建物である。
高層建物10は、各階毎に設けられた複数のプレキャストプレストレストコンクリート柱12と、建物の揺れを抑制する複数の制振装置30とを備えている。
【0009】
プレキャストプレストレストコンクリート柱12は、上下階のスラブ14を連結し、詳細には、鉛直方向に延在して上下階のスラブ14を構成する梁どうしを連結している。
プレキャストプレストレストコンクリート柱12は、
図2に示すように、コンクリート柱体16と緊張材18とを含んで構成されている。
コンクリート柱体16は、本実施の形態では断面が矩形を呈し、柱主筋1602とフープ筋1604が埋設されると共に複数の緊張材挿通孔1606がその長手方向に貫通形成されている。
緊張材挿通孔1606は、フープ筋1604の内側で矩形の輪郭に沿って配置され、本実施の形態では、緊張材挿通孔1606は、フープ筋1604の内側の矩形の各角部と、矩形の各辺の中央部との計8か所に貫通形成されている。なお、本実施の形態では矩形は正方形であるが長方形であってもよいことは無論のことである。
【0010】
緊張材18は、各緊張材挿通孔1606に挿通され、コンクリート柱体16に鉛直方向にアンボンド状態で配置されている。
緊張材18としてPC鋼棒やPCケーブルなど従来公知の様々な部材が採用可能である。
緊張材挿通孔1606の内径は緊張材18の外径よりも大きい寸法で形成され、緊張材18のコンクリート柱体16に対するアンボンド状態は、緊張材18の外周面と緊張材挿通孔1606の内周面との間の環状の隙間を介して形成される。
各緊張材18は、例えば、高層建物10の最下端の階層を構成するプレキャストプレストレストコンクリート柱12から最上端の階層を構成するプレキャストプレストレストコンクリート柱12まで連続して連結され、あたかも一本の緊張材18が鉛直方向に挿通されるように配置される。
【0011】
なお、本発明においてアンボンド状態とは、上述のように緊張材18が当初からコンクリート柱体16に接合されていない状態のほか、例えば、緊張材18の外周面が鏡面のように滑らかに加工され、緊張材18の外周面と緊張材挿通孔1606の内周面との間の環状の隙間にグラウトが充填され、建物に揺れが生じない状態で緊張材18の外周面がグラウトを介して緊張材挿通孔1606の内周面に接合され一体化されていても、建物に揺れが生じた際に、その接合が解除され緊張材18が緊張材挿通孔1606内でその長手方向に自由に変形できる状態になる場合も広く含み、要するに、本発明においてアンボンド状態とは、建物に揺れが生じた際に、コンクリート柱体16の内部において緊張材18がその長手方向に自由に変形できる状態をいう。
【0012】
このような上下に隣り合う階層の緊張材18の連結は従来公知の様々の手法が採用可能である。
例えば、緊張材18がPC鋼棒である場合、
図4に示すように、下層階のコンクリート柱体16の上端の凹部1610内に配置したプレート1612から緊張材18の上部を突出させ、ジャッキにより緊張材18を上方に引張り、その状態でナット1614をプレート1612上で締め付け、その後ジャッキを緊張材18から離し、下層階のコンクリート柱体16から突出する緊張材18の上端と、上層階のコンクリート柱体16に配設された緊張材18の下端とを継手1616を介して連結する。
そして、下層階の緊張材18の上部にグラウト1620が流れ込まないように、緊張材18の周囲にカバー1622を設けておき、上層階のコンクリート柱体16を下降させ、グラウト1620を介して下層階のコンクリート柱体16の上端と上層階のコンクリート柱体16の下端とを接合することで行なわれる。
【0013】
制振装置30は各階毎に設けられている。
制振装置30は、建物に入力される外力を減衰し建物の振動を抑制するものであり、パッシブ型などの従来公知の様々な形式が採用可能であるが、本実施の形態では、上下の階層を連結する層間ダンパーが用いられている。この場合、ダンパーとしてオイルダンパや粘弾性体、金属が利用可能であり、また、設置様式としてブレース型、壁型などが採用可能である。
制振装置30は、高層建物10の揺れによる緊張材18の変形が緊張材18の弾性範囲内に収まるように高層建物10の揺れを抑制するように設定されている。
本実施の形態では、制振装置30は、高層建物10の揺れ、すなわち層間変形角を、1/120~1/150の範囲に抑制するように設定されている。
【0014】
本実施の形態によれば次の効果が奏される。
従来各階毎の複数箇所で行なっていた、緊張材18が挿通されたコンクリート柱体16の緊張材挿通孔1606にグラウトを充填する作業を省け、また、従来各階毎の複数箇所で行なっていた、グラウトの養生期間を待つ必要がないので工期を大幅に短縮できる。
また、緊張材18はコンクリート柱体16に対してアンボンド状態で配設されているため、高層建物10が揺れた際に、緊張材18がコンクリート柱体16の拘束を受けずにその長手方向に自由に変形でき、緊張材18に局所的な応力が掛かることもなく、緊張材18の耐久性を高める上で有利となる。
さらに、制振装置30は、高層建物10の揺れによる緊張材18の変形が緊張材18の弾性範囲内に収まるように高層建物10の揺れを抑制するように設定されているので、緊張材18の耐久性を高める上でより有利となる。
【0015】
次に、
図5を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、異なった箇所を重点的に説明する。
第2の実施の形態では、緊張材18の外周面にグリス20が塗られ、そのグリス20の周囲を覆うカバー22が設けられている。
緊張材18が緊張材挿通孔1606に挿入される前にグリス20が緊張材18に塗られ、また、グリス20が塗られた緊張材18を覆うようにカバー22が設けられ、グリス20、カバー22は緊張材18と共に緊張材挿通孔1606に挿入される。
カバー22としては合成樹脂製やゴム製の筒状体など従来公知の様々な市販品が使用可能である。
このような第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な効果が得られるほか、グリス20により緊張材18の錆の発生を抑制でき、緊張材18の耐久性を高める上でより一層有利となる。
【0016】
なお、第1、第2の実施の形態では、建物が高層建物10である場合について説明したが、本発明のプレキャストプレストレストコンクリート柱12は高層建物10に限定されず、低層建物、中層建物などにも広く適用可能である。
すなわち、高層建物10に限らず低層建物、中層建物など建物を構築する際に本発明のプレキャストプレストレストコンクリート柱12を用いれば、建物の揺れを抑制する上で有利となり、緊張材18が挿通されたコンクリート柱体16の緊張材挿通孔1606にグラウトを充填する作業を省け、また、グラウトの養生期間を待つ必要がないので、工期を大幅に短縮できる。
また、建物が揺れた際に、緊張材18がコンクリート柱体16の拘束を受けずにその長手方向に自由に変形でき、緊張材18に局所的な応力が掛かることもないので、緊張材18の耐久性を高める上で有利となる。
この場合、建物の揺れによる緊張材18の変形が緊張材18の弾性範囲内に収まるように建物の揺れを抑制する制振装置30を設けると、緊張材18の耐久性を高める上でより有利となる。
【0017】
(実施例)
以下、プレキャストプレストレストコンクリート柱12の構造性能について検討する。
上述のように、本発明では高層建物10の揺れによる緊張材18の変形が緊張材18の弾性範囲内に収まるように高層建物10の揺れを抑制するように制振装置30を設置する。高層建物10の揺れを表す指標として、例えば層間変形角が用いられるが、層間変形角は例えばプレキャストプレストレストコンクリート柱12の部材角などの要素を含んだパラメータである。
そこで、本実施例では、プレキャストプレストレストコンクリート柱12を試験体として逆対称加力による曲げせん断実験を行い、その部材角を測定した。
【0018】
表1に、試験体40の構成を示す。本実施例ではコンクリート基準強度を実験パラメータとし、Fc=80N/mm2の試験体A、Fc=120N/mm2の試験体Bの2種類を用いた。このコンクリート基準強度値は、30階~50階の超高層建物を想定している。軸圧縮力比(軸力比)は、試験体A,Bともに0.15とした。
【0019】
【0020】
図6に、試験体40の配筋図(
図6Aは柱の延在方向に対して垂直方向の断面図、
図6Bは柱の延在方向に沿った断面図)を示す。
試験体40のサイズは、超高層建物の下層階を想定した1/3縮尺である。試験体40は、断面が350×350mmで内法長さ2100mm(M/QD=3)の柱とした。試験体40の両端に配置されるスタブ42の断面は900×600mmとし、試験体40とスタブ42を別々に打設した後、25mm厚の高強度無収縮モルタル(グラウト材)を介して両者をプレストレスにより圧着接合した。また、全ての試験体40をアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱とした。試験区間の組立筋はD10(SD295A)の異形普通強度鉄筋、せん断補強筋はS10(KSS785)の高強度せん断補強筋を使用し50mm間隔(Pw=1.63%)で配筋した。緊張材はφ17PC鋼棒(C種1号)を4本、定着端間の距離は7300mmとした。目標導入プレストレス力のPC鋼棒規格降伏耐力に対する比率は0.68とした。シースの内径は30mm(外径34mm)とし、シースによる断面欠損は全断面積に対して2.31%である。
【0021】
表2および表3に、試験体40に用いた各種材料の試験結果を示す。表2はコンクリートおよび目地モルタルの試験結果であり、表3は緊張材の試験結果である。
コンクリート(表2参照)については、本実施例では縮小試験体を用いたため、骨材径13mmの粗骨材を用いた超高強度コンクリートとした。
なお、コンクリートおよびモルタルの圧縮試験はJIS A 1108、割裂引張試験はJIS A 1113、鉄筋およびPC鋼棒の試験はJIS Z 2241に基づいて行った。
【0022】
【0023】
【0024】
図7に、試験体40の載荷装置(試験装置)50の構成図を示す。
試験は、載荷装置50を用いて、試験体40の両端にジャッキで一定軸力を加えながら、逆対称加力を正負交番繰返しで付加することによって行った。載荷はスタブ42間で計測した柱部材角(Rc)で制御し、Rcが1/800で1回、1/400,1/200,1/133,1/100,1/66.7,1/50,1/33,1/25で,それぞれ正負各2回、1/16.7で1回の交番載荷を行った。
【0025】
図8に、試験体40の最大耐力時のひび割れ状況を示す。
軸力比0.15の試験体である試験体A、試験体Bは、目地部に離間と思われるひび割れが発生(Rc:0.116%および0.126%時)し、その後試験体に曲げひび割れが発生(Rc:0.134%および0.267%時)した。曲げひび割れ発生本数が増えた後、最大耐力(Rc:0.861%および0.753%時)に達した。最大耐力に達した後、試験体端部にコンクリートの圧壊による縦ひび割れが発生しせん断力は徐々に低下した。
【0026】
図9に各試験体におけるせん断力と部材角との関係を示すグラフを示す。
図9において、○は初曲げひび割れ発生時、▲は最大耐力を示す。
また、表4に初曲げひび割れ時せん断力および部材角、表5に最大せん断力および最大せん断力時部材角をそれぞれ示す。
特に最大せん断力について検討すると、試験体Aにおける最大せん断力は、正側264kN、負側-263kN、平均263.5kNであり、最大せん断力時部材角は、正側0.981%、負側-0.861%、平均0.921%(1/109)であった。また、試験体Bにおける最大せん断力は、正側376kN、負側-366kN、平均371kNであり、最大せん断力時部材角は、正側0.753%、負側-0.754%、平均0.754%(1/133)であった。
【0027】
【0028】
【0029】
図10に緊張材引張応力と部材角の関係を示すグラフを示す。降伏応力はJIS規格により定められている値であり、降伏応力よりも緊張材引張応力が低く、弾性範囲内であった。以上のことから、緊張材が降伏するよりもコンクリートの方が先に圧壊することがわかった。
【0030】
本実施例では、部材角を1/133以下に抑制するように構成すれば、試験体A、Bは曲げ降伏せず、試験体A、Bの緊張材も降伏しないことがわかった。
すなわち、制振装置を、高層建物の揺れを1/120~1/150の範囲に抑制するように構成すれば、緊張材は降伏しない。
【0031】
10 高層建物
12 プレキャストプレストレストコンクリート柱
14 スラブ
16 コンクリート柱体
1606 緊張材挿通孔
1616 継手
18 緊張材
30 制振装置