IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋アルミニウム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-包装シート及びそれを用いた包装体 図1
  • 特許-包装シート及びそれを用いた包装体 図2
  • 特許-包装シート及びそれを用いた包装体 図3
  • 特許-包装シート及びそれを用いた包装体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】包装シート及びそれを用いた包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20221115BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20221115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221115BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B3/30
B32B27/00 H
B32B27/20 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018147294
(22)【出願日】2018-08-04
(65)【公開番号】P2020019564
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】粟田 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩之
(72)【発明者】
【氏名】関口 朋伸
(72)【発明者】
【氏名】麻植 啓司
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003978(WO,A1)
【文献】特開2016-043990(JP,A)
【文献】特開2014-046983(JP,A)
【文献】特開2007-153385(JP,A)
【文献】特開2017-226472(JP,A)
【文献】特開2018-058369(JP,A)
【文献】特開2003-025524(JP,A)
【文献】特開2006-095954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 3/30
B32B 27/00
B32B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に積層されているシーラント層とを含む包装シートであって、
(1)シーラント層の少なくとも1層は露出した付着防止表面を有し、当該表面の表面粗さRaが2~12μmであり、
(2)前記付着防止表面を有するシーラント層は、熱可塑性樹脂及び凹凸形成用粒子を含む延伸フィルムから構成されており、
(3)シーラント層は、包装シート単位面積当たりの熱可塑性樹脂の付与量が10~55g/mである、
ことを特徴とする包装シート。
【請求項2】
凹凸付与形成用粒子の平均粒径D50が8~100μmである、請求項1に記載の包装シート。
【請求項3】
前記付着防止表面を有するシーラント層が、凹凸付与形成用粒子を当該シーラント層中に3~50重量%含む、請求項1又は2に記載の包装シート。
【請求項4】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の包装シート。
【請求項5】
付着防止面を有するシーラント層の厚みが10~100μmである、請求項1~3のいずれかに記載の包装シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の包装シートにより形成される包装体であって、
(1)包装シートの付着防止面が被包装物に接触するように配置されており、
(2)包装シートのシーラント層どうしが少なくとも一部で接合されている、ことを特徴とする包装体。
【請求項7】
請求項6に記載の包装体の内部に被包装物が収容されており、当該包装シートのシーラント層どうしが少なくとも一部で接合されることにより前記被包装物が包装体中で密閉されていることを特徴とする包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な包装シート及びそれを用いた包装体に関する。特に、本発明は、流動性のある内容物(被包装物)に対する付着防止性能にも優れた包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば化粧品、医薬品分野等の製品において、流動性のある内容物(例えば化粧水、ジェル、シャンプー、リンス等)は、流動性を有するものの、粘度が高いため、包装体から取り出し辛く、全て出し切るのに時間が掛かり、あるいは全てを出しきれずロスが出るという問題がある。
【0003】
また、食品分野の製品において、例えばカステラ、スポンジケーキ、パンケーキ等の洋菓子、団子、饅頭等の和菓子等に代表されるように、表面の柔らかい食品は、包装体(内面)に接触すると、包装体内面に食品が付着しやすい性質を持っている。内容物の一部が包装体に付着すると、内容物の外観が悪くなるほか、包装体の開封時、破棄時等の作業性が悪くなるという問題を引き起こすおそれがある。
【0004】
以上のような見地より、特に付着性を有する内容物を包装体に装填される製品においては、包装材料自体の内容物に対する非付着性能が求められている。
【0005】
包装体又は包装材料の付着防止性能を高めるために、内容物への接触面積を低下させるため、包装材料の内容物と接触する面にエンボス加工を施し、表面を粗くする検討が行われている。例えば、少なくとも被包装物側にエンボス面を有するエンボスフィルムで、型崩れしやすい食品、表面粘着性があり表面部分が身離れしやすい食品、表面付着物が剥れやすい食品から選ばれる被包装物が、含気状態で包装されていることを特徴とする食品包装体が知られている(特許文献1)。
【0006】
また例えば、ガスバリア層と、ヒートシール層とを配設した、2層以上からなる共押出多層フィルムであって、前記ヒートシール層がポリオレフィン樹脂又はポリオレフィン樹脂を主成分とする樹脂組成物で構成され、前記ヒートシール層表面の6700μm当たりの3次元表面粗さRaが300nm以上1000nm以下であり、かつ、前記フィルムを用いて内容物を充填するための包装体を作製した際に、前記ヒートシール層が内容物側に配置されることを特徴とする共押出多層フィルムが提案されている(特許文献2)。
【0007】
その他にも、特定の微粒子により形成された付着防止層によって内容物の付着防止性能を高める方法もある。例えば、基材と、シーラント層と、平均粒子径が5~1000ナノメートルの微粒子と、前記微粒子を前記シーラント層に固着するためのバインダーを含有する付着防止層とを有する蓋材が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-308191
【文献】特開2017-13479
【文献】国際公開W02014/038701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら従来の包装体では、特に付着防止性能の耐久性という点で改善の余地がある。
【0010】
すなわち、エンボス加工による凹凸形成で付着防止性能を発現させる包装体の場合、包装体に内容物を装填して製品化した後、その製品の輸送中、保存中等の一定期間内に内容物の自重又は強い接触によって凹凸が次第になくなり、それに従って付着防止効果が低下するという問題がある。
【0011】
また、付着防止効果のある粒子を用いる包装体においても、製品の輸送中、保存中等の一定期間内に受ける圧力、摩擦等によって当該粒子が脱落することによって、付着防止効果が低下するおそれがある。
【0012】
よって、本発明の主な目的は、圧力、摩擦等によっても付着防止効果が低下しにくい包装シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造・物性を有する材料を包装シートとして採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記の包装シート及びそれを用いた包装体に係る。
1. 基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に積層されているシーラント層とを含む包装シートであって、
(1)シーラント層の少なくとも1層は露出した付着防止表面を有し、当該表面の表面粗さRaが2~12μmであり、
(2)前記付着防止表面を有するシーラント層は、熱可塑性樹脂及び凹凸形成用粒子を含む延伸フィルムから構成されており、
(3)シーラント層は、包装シート単位面積当たりの熱可塑性樹脂の付与量が10~55g/mである、
ことを特徴とする包装シート。
2. 凹凸付与形成用粒子の平均粒径D50が8~100μmである、前記項1に記載の包装シート。
3. 前記付着防止表面を有するシーラント層が、凹凸付与形成用粒子を当該シーラント層中に3~50重量%含む、前記項1又は2に記載の包装シート。
4. 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である、前記項1~3のいずれかに記載の包装シート。
5. 付着防止面を有するシーラント層の厚みが10~100μmである、前記項1~3のいずれかに記載の包装シート。
6. 前記項1~5のいずれかに記載の包装シートにより形成される包装体であって、
(1)包装シートの付着防止面が被包装物に接触するように配置されており、
(2)包装シートのシーラント層どうしが少なくとも一部で接合されている、ことを特徴とする包装体。
7. 前記項6に記載の包装体の内部に被包装物が収容されており、当該包装シートのシーラント層どうしが少なくとも一部で接合されることにより前記被包装物が包装体中で密閉されていることを特徴とする包装製品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧力、摩擦等によっても付着防止効果が低下しにくい包装シートを提供することができる。すなわち、被包装物(包装体中の内容物)に対する付着防止効果をより確実に維持できる包装シートを提供することができる。より具体的には、摩擦、圧力等に対する抵抗力が高いゆえに被包装物に対して高い付着防止効果を維持できる包装シートを提供することができる。
【0016】
特に、本発明の包装シートは、シーラント層の少なくとも1つが延伸フィルムから構成されており、かつ、延伸フィルムに凹凸形成用粒子が強固に固定されることによって、その表面が特定の表面粗さをもつ付着防止表面となっているので、そのような付着防止表面は摩擦、圧力等に対して高い抵抗性を備えている。その結果、付着防止効果を従来技術よりも長期にわたって維持することもできる包装体を提供することが可能となる。
【0017】
また、本発明シートのシーラント層は、付着防止表面とヒートシール性とを兼ね備えた構造を有するため、包装シート及び包装体の形状が制約されない。従って、例えば、袋体のほか、立体成型物(例えばトレー、ボトル、チューブ等)の包装体を形成することもできる。
【0018】
また同時に、付着防止表面とヒートシール性とを兼ね備えていることから、特に面々ヒートシール性(一定の面積をもつ面どうしをヒートシールにより接合できる性能)に優れる。一般に、一定の面積をもつ面どうしをヒートシールする場合は、単位面積当たりにかかる圧力が小さくなるため、ヒートシール性(接合力)も低くなりがちであるが、本発明の包装シートでは、付着防止表面自体がヒートシール性を有するので、高い面々ヒートシール性を得ることができる。その結果、その包装体に被包装物を密閉してなる包装製品においては、高い密閉性を得ることができる。
【0019】
このような特徴を有する本発明の包装シート及び包装体は、例えば食品、医薬品、化粧品等の様々な製品の包装に幅広く用いることができる。特に、本発明の包装シート及び包装体は、液体又は液体を含む材料に対しても高い付着防止効果を発揮できるので、液体又は液体を含む材料の包装に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の包装シートの層構造の一例を示す図である。
図2】本発明の包装シートの層構造の一例を示す図である。
図3】本発明の包装シートを用いてヒートシールする状態を示す図である。図3(a)は、ヒートシール前において、包装シートの付着防止表面どうしを対向させた状態を示す。図3(b)は、ヒートシール部Hで付着防止表面どうしをヒートシール(熱接合)する状態を示す。
図4】本発明の包装体(袋体)の実施形態例を示す図である。図4(a)は平面図、図4(b)は、図4(a)を矢印方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.包装シート
本発明の包装シート(本発明シート)は、基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に積層されているシーラント層とを含む包装シートであって、
(1)シーラント層の少なくとも1層は露出した付着防止表面を有し、当該表面の表面粗さRaが2~12μmであり、
(2)前記付着防止表面を有するシーラント層は、熱可塑性樹脂及び凹凸形成用粒子を含む延伸フィルムから構成されており、
(3)シーラント層は、包装シート単位面積当たりの熱可塑性樹脂の付与量が10~55g/mである、
ことを特徴とする。
【0022】
図1には、本発明シートの実施形態の一例(断面構成)を示す。本発明シート10は、基材フィルム11上の一方の面上にシーラント層12が積層されている。図1のように、シーラント層12は、基材フィルム11に直に接するように積層されていても良いし、あるいは別のシーラント層(図示せず)を介して基材フィルム11上に積層されていても良い。シーラント層12は、熱可塑性樹脂を含むマトリックス14中に複数の凹凸形成用粒子15が分散した構造を有している。これにより、シーラント層12の表面に所定の表面粗さRaを有する付着防止表面が形成される。このように、本発明シートは、付着防止表面が露出した面を構成しているので、高い付着防止効果を得ることができる。
【0023】
図2には、本発明シートの別の実施形態の一例(断面構成)を示す。図2のシート10は、シーラント層12が多層(2層の多層シーラント層)で構成されている点が図1と異なる。図2では、シーラント層12は2層のシーラント層12a,12bから形成されており、そのうちのシーラント層12aが露出した凹凸表面(付着防止表面)を有し、当該表面の表面粗さRaが2~12μmとなっている。すなわち、シーラント層12aは、熱可塑性樹脂及び凹凸形成用粒子を含む延伸フィルムから構成されている。また、下方のシーラント層12bは、凹凸形成用粒子を含まない層となっており、ヒートシール層として機能する。そして、図2の実施形態では、シーラント層12a,12bの包装シート単位面積当たりの熱可塑性樹脂の付与量(両層の合計)が10~55g/mに制御されている。本発明シートでは、図2のようにシーラント層が2層構造となっている場合のほか、3層以上の構造となっている場合も包含される。シーラント層が2層又はそれ以上の多層構造とすることによって、基材フィルムの表面と接するシーラント層表面との接合部分をより高い平滑面とすることができる結果、両層の接合性をよりいっそう高めることができる。また、シートラント層が多層構造(多層シーラント層)である場合、例えば各層を構成する材質(特に熱可塑性樹脂)が同じであると各層の境界が不明確となったり、各層が一体化されることがあるが、いずれの場合も本発明に包含される。また、多層シーラント層とする場合、各シーラント層は、必ずしも全てが延伸フィルム層でなくても良いが、付着防止効果の耐久性という点ではシーラント層のいずれもが延伸フィルム層であることが望ましい。
【0024】
以下においては、本発明における包装シートを構成する各層等についてより具体的に説明する。
【0025】
基材フィルム
基材フィルムとしては、特に限定されず、例えば、合成樹脂(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、繊維質材料(紙、合成紙、不織布、織布、木材等)、金属(アルミニウム、アルミニウム系合金等)、ガラス等のほか、これらの複合材料を用いることができる。また、これらのフィルム、箔等が複数積層してなる積層体を基材フィルムとして用いることもできる。特に、本発明では、例えばポリプロピレン系フィルム、ポリエチレン系フィルム及びポリエステル系フィルムの少なくとも1種を基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0026】
また、基材フィルムは、延伸フィルム又は未延伸フィルムのいずれであっても良い。さらに、延伸フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれも使用することができる。本発明では、例えば基材フィルムとして延伸フィルムを好適に用いることができる。従って、例えばインフレーション法延伸フィルムも好適に用いることができる。これにより、例えばシーラント層の形成と同時に基材フィルムも形成することができるとともに、両層が一体的に積層された積層体を得ることができる。その他にも、延伸フィルムとしては、二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPP)も用いることができる。また、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムとしては、例えばコロナ処理等の表面処理が施された各種のタイプのフィルムも基材フィルムとして使用することができる。延伸フィルムを用いることにより、優れた耐久性等をより確実に得ることができる。
【0027】
基材フィルムの厚みは、限定的ではないが、包装シートの用途、被包装物の種類等に応じて適宜設定することができる。一般的には20~80μm程度の範囲内で適宜設定することができる。基材フィルムの厚みが20μm未満であると、包装シートの乾燥熱によって幅方向又は流れ方向に対して大きく伸縮してしまい、加工適性に影響を及ぼすおそれがある。基材フィルムの厚みが80μmを超えると、引き裂き性等が低下する場合がある。
【0028】
シーラント層
シーラント層の少なくとも1層(例えば図2のシーラント層12a)は露出した付着防止表面を有し、当該表面の表面粗さRaが2~12μmである。そして、この付着防止表面を有するシーラント層(特にことわりのない限り「表面シーラント層」ともいう。)は、熱可塑性樹脂及び凹凸形成用粒子を含む延伸フィルムから構成されている。本発明シートにおいて、表面シーラント層は、付着防止層として機能すると同時に、ヒートシール層としても機能する。
【0029】
表面シーラント層の基本構成としては、熱可塑性樹脂を含むマトリックス中に凹凸形成用粒子(粉末)が分散した構造を有することが望ましい。これにより、表面シーラント層において、効果的に付着防止性とヒートシール性とを同時に機能させることができる。シーラント層が2層以上から構成される多層シーラント層である場合は、表面シーラント層の下層となるシーラント層(「下地シーラント層」ともいう。)は、a)凹凸形成用粒子を含まず、かつ、熱可塑性樹脂を含む層とすることができるほか、b)凹凸形成用粒子を含まず、かつ、熱可塑性樹脂を含む層等とすることができる。例えば、図2に示すシーラント層12bが下地シーラント層に該当し、その構成は上記a)のタイプの層である。下地シーラント層は、1層又は2層以上でも良いが、通常は1~3層程度とすれば良い。
【0030】
シーラント層の厚みは、特に限定されないが、通常は10~100μm程度とし、特に20~80μmとすることが好ましい。これにより、付着防止効果を維持しつつ、高いヒートシール性を得ることができる。従って、表面シーラント層の単層の厚みは、例えば10~60μm程度とすることもできる。シーラント層の厚みは、光学顕微鏡を用いて、断面観察を行い、一視野における平均厚さとして算出した。なお、上記厚みは、多層シーラント層である場合はその合計厚みとする。また、基材フィルムの両面にシーラント層がそれぞれ形成されている場合は、片面に形成されているシーラント層の合計厚みとする。
【0031】
1)延伸フィルム
シーラント層を構成する延伸フィルムとしては、特に限定的ではなく、例えばフラット法延伸フィルム(一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム)、インフレーション法延伸フィルム等が挙げられる。延伸フィルムをシーラント層として用いることにより、凹凸形成用粒子により所定の付着防止表面を効果的に形成することができるとともに、優れた耐久性を得ることができる。
【0032】
2)付着防止表面
シーラント層は、図1又は図2で説明したように、基材フィルムの両面又は片面に形成されているが、その少なくとも1層(表面シーラント層)は露出した付着防止表面を有し、当該表面の表面粗さRaが2~12μm(好ましくは3~7μm)である。このような表面粗さに設定することにより、付着防止表面どうしの熱接着性(特に面々ヒートシール性)を確保するとともに、優れた付着防止効果を得ることができる。表面粗さRaが2μm未満の場合は、所望の付着防止効果が得られなくなる。一方、表面粗さRaが12μmを超える場合は、所望のヒートシール性が得られなくなる。上記のような表面粗さは、特に熱可塑性樹脂を含むマトリックス中に凹凸形成用粒子を分散させることによって適宜調整することができる。
【0033】
3)シーラント層を構成する成分
シーラント層を構成する成分として熱可塑性樹脂を含む。これにより、シーラント層にヒートシール性を付与することができる。表面シーラント層は、熱可塑性樹脂のほか、凹凸形成用粒子を含む。この場合、表面シーラント層においては、基本的に、熱可塑性樹脂を含むマトリックス中に凹凸形成用粒子(粉末)が分散した構造であることが望ましい。
【0034】
熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、ヒートシール性を有する樹脂を好適に用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン等を含む。)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン-6、ナイロン-12、ナイロン-66、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等のほか、これらのブレンド樹脂を用いることができる。その中でもヒートシール強度を十分得るために、低密度ポリエチレン(特に直鎖状(線状)低密度ポリエチレン)の少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、シーラント層が多層シーラント層である場合、各シーラント層に含まれる熱可塑性樹脂は、互いに同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。従って、後記の実施例のように、各シーラント層に含まれる熱可塑性樹脂は、いずれもポリエチレンとすることもできる。
【0035】
シーラント層中に占める熱可塑性樹脂の割合は、特に制限されず、所望のヒートシール性等に応じて適宜設定できる。特に、表面シーラント層の場合は、一般的には45~97重量%程度とすれば良く、特に70~90重量%とすることが好ましい。それ以外のシーラント層の場合は、通常45~100重量%とすることができる。
【0036】
また、シーラント層における熱可塑性樹脂の包装シート単位面積当たりの付与量は、通常10~55g/m程度であり、特に15~25g/mとすることが好ましい。これにより、より優れたヒートシール性、耐久性等を得ることができる。多層シーラント層の場合、上記付与量は各シーラント層の合計量とする。また、基材フィルムの両面にシーラント層がそれぞれ形成されている場合は、片面に形成されているシーラント層の合計厚みとする。
【0037】
凹凸形成用粒子
凹凸形成用粒子は、特に表面シーラント層の露出する面(表面)に所定の凹凸を付与することを目的として用いられる。その限りにおいて、凹凸形成用粒子の材質は、限定的でなく、有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む粒子を採用することができる。なお、本発明の効果を妨げない範囲内において、下地シーラント層には凹凸形成用粒子が含まれていても良いし、凹凸形成用粒子が含まれていなくても良い。
【0038】
無機成分としては、例えばアルミニウム、銅、鉄、チタン、銀、カルシウム等の金属又はこれらを含む合金又は金属化合物、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化チタン等の酸化物、ガラス、窒化アルミニウム、窒化珪素等のセラミック等を好適に用いることができる。
【0039】
有機成分としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。
【0040】
有機高分子成分の中でも、耐熱温度が、シーラント層のマトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂よりも高いものを好適に用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、通常は耐熱温度が230℃以上(例えば230~300℃)の有機高分子成分(又は樹脂成分)からなる凹凸形成用粒子を好適に用いることができる。
【0041】
これら凹凸形成用粒子の中でも、製膜時においてシーラント層のマトリックス主成分である熱可塑性樹脂を溶融する温度に凹凸付与粒子が耐えることができるとともに、熱可塑性樹脂への混和性、粒子の均一性という見地より、アクリル系樹脂粒子を用いることがより好ましい。
【0042】
凹凸形成用粒子の平均粒子径D50は、所望の表面粗さの程度等に応じて適宜設定することができるが、通常は8~60μmが好ましく、特に20μm~50μmがより好ましい。平均粒子径D50が8μm未満の場合、凹凸形成されず付着防止効果が低下する。また、平均粒子径D50が60μm以上の場合、凹凸付与粒子がヒートシールを阻害し、ヒートシール強度が低下するおそれがある。また、熱可塑性樹脂へ凹凸形成用粒子を添加して製膜する際も、樹脂押出口のダイに前記粒子が詰まるおそれがある。
【0043】
また、凹凸成用粒子の形状は限定的ではなく、例えば、真球状、球状、中空状、不定形状等のいずれであっても良い。
【0044】
シーラント層(特に表面シーラント層)中における凹凸形成用粒子の含有量は、限定的でなく、通常は3~50重量%程度とし、特に10~30重量%とすることが好ましい。これにより、より確実に前記所定の表面粗さを得ることができる。従って、例えば12~20重量%とすることもできる。下地シーラント層における上記含有量は、通常は0~50重量%程度とし、特に0~30重量%とすることが好ましい。従って、下地シーラント層中における凹凸形成用粒子の含有量を0~3重量%、あるいは0~1重量%程度とすることができる。
【0045】
その他の成分
本発明のシーラント層は、本発明の効果を妨げない範囲内において、他の成分(着色料等)を適宜配合することもできる。
【0046】
その他の層
本発明シートでは、必要に応じて他の層が積層されていても良い。例えば、印刷層(文字・絵柄層)、保護層、プライマー層等のような公知又は市販の包装シートで採用されている各層が挙げられる。但し、本発明では、特に表面シーラント層の付着防止表面上には他の層は積層されないことが望ましい。
【0047】
2.包装シートの製造方法
本発明の包装シートの製造方法としては、限定的ではないが、特に、熱可塑性樹脂及び凹凸形成用粒子を含む出発原料を延伸することによりシーラント層用フィルムを形成する工程(シーラント層形成工程)を含む製造方法を好適に採用することができる。
【0048】
熱可塑性樹脂及び凹凸形成用粒子としては、前記「1.包装シート」で説明したものを採用することができる。また、その他の成分、条件等についても、前記「1.包装シート」で説明したものと同様のものを採用することができる。
【0049】
これらの成分を含む出発原料を延伸する。これによって、シーラント層(特に表面シーラント層)を形成するためのシーラント層用フィルムを得ることができる。出発原料の形態は、例えば溶融混練物、未延伸成形体(未延伸積層体)等のいずれであっても良い。延伸方法は、特に限定されず、上記で述べたように、例えばフラット法延伸(一軸延伸、二軸延伸)、インフレーション法(チューブラー法)延伸等が挙げられる。特に、本発明では、所望の付着防止表面を効果的に形成できるという点でインフレーション法延伸によることが好ましい。これらの延伸処理自体は、公知又は市販の延伸装置を用いて実施することができる。
【0050】
延伸温度は、用いる出発原料の組成等に応じて適宜変更することができるが、通常は150~250℃程度とし、特に160~230℃とすることが好ましい。上記のような温度範囲において、インフレーション法等で効果的に延伸することができる。
【0051】
また、延伸倍率は、一般的には、得られるシーラント層用フィルムの厚みが10~100μm(特に20~80μm)程度の範囲内となるような倍率で延伸すれば良いが、これに限定されない。なお、上記厚みは、多層シーラント層である場合はその合計厚みとする。従って、表面シーラント層の単層の厚みは、例えば10~60μm程度とすることもできる。
【0052】
シーラント層形成工程により得られたシーラント層用フィルムは、特に表面シーラント層を形成するためのフィルムとして基材フィルムの片面上又は両面上に積層することができる。積層方法は、特に限定されず、例えば接着剤による積層等に従って実施することができる。接着剤は、ドライラミネート接着剤等のように公知又は市販の接着剤を使用すれば良い。
【0053】
表面シーラント層を形成するためのシーラント層用フィルムを基材フィルム上に積層する場合、当該フィルムが基材フィルムに直に接するように積層しても良いし、あるいは当該フィルムと基材フィルムとの間に下地シーラント層(好ましくは、凹凸形成用粒子を含まず、かつ、熱可塑性樹脂を含むシーラント層)を介在させた状態で積層しても良い。このような下地シーラント層を介在させることにより、当該下地シーラント層が表面シーラント層表面の凹凸を吸収することができる結果、互いに強く接合された基材フィルム/下地シーラント層/表面シーラント層という積層フィルムを得ることができる。
【0054】
この場合、下地シーラント層を積層する場合、下地シーラント層は1層又は2層以上から構成されていても良い。これにより、本発明シートを用いて包装体又は包装製品を作製する場合の接合性、密封性等をより高めることができる。かかる見地より、多層シーラント層を採用する場合は、各シーラント層は直に接して積層されていることが望ましい。
【0055】
また、シーラント層をインフレーション法延伸により形成する場合、上記のシーラント層形成工程では、例えばa)多層シーラント層(特に表面シーラント層及び下地シーラント層からなる層)を形成するためのフィルム、b)シーラント層と基材フィルムとを含む積層フィルム、c)表面シーラント層、下地シーラント層及び基材フィルムを順に含む積層フィルム等を得ることもできる。これらも、例えば公知又は市販の多層インフレーション成形機等を用いて実施することができる。これにより、1層ずつ積層する場合に比して製造工程を簡略化することができる。また、各層を同時に延伸することが可能となる。これにより、基材フィルム及びシーラント層ともに延伸フィルム層とすることができる。また、多層シーラント層を形成する場合も、表面シーラント層及び下地シーラント層ともに延伸することができる。
【0056】
3.包装体及び包装製品
本発明シートは、包装材料として各種の包装体及び包装製品に用いることができる。特に、包装体としては、包装シートのシーラント層どうしが接合されていても良いし、あるいは包装シートのシーラント層どうしが接合されていないもの(例えばトレー容器等)でも良い。本発明では、特に、本発明の包装シートにより形成される包装体であって、(1)包装シートの付着防止面が被包装物に接触するように配置されており、(2)包装シートのシーラント層どうしが少なくとも一部で接合されている、ことを特徴とする包装体が好ましい。
【0057】
また、本発明は、前記の本発明の包装体の内部に被包装物が収容されており、当該包装シートのシーラント層どうしが少なくとも一部で接合されることにより前記被包装物が包装体中で密閉されていることを特徴とする包装製品も包含する。
【0058】
図3には、本発明の包装体(袋体)を製造するに際し、本発明シートを面々ヒートシールにより接合する状態を示す。図3(A)に示すように、包装シート10,10どうしのシーラント層12の付着防止表面どうしを対向させる。次いで、図3(b)に示すように、予め設定されたヒートシール部Hで付着防止表面どうしを接触させた状態でヒートシールを行う。これにより、包装シートどうしの端部が接合される。他のヒートシール部も同様にして接合することにより、包装シートの付着防止面が被包装物に接触するように配置された所定の包装体を作製することができる。
【0059】
本発明の包装体は、例えばa)本発明の包装シートを2枚用意し、互いに付着防止表面どうしが対向するように配置し、所定のヒートシール部で面々ヒートシールすることにより包装体を製造する方法、b)本発明の包装シートを1枚用意し、これを付着防止表面が被包装物と接触するように(内面になるように)筒状に成形し、所定のヒートシール部で面々ヒートシールすることにより包装体を製造する方法等のいずれも包含される。
【0060】
本発明の包装体は、被包装物を収容した後にヒートシールにより密閉された状態における包装体であっても良いが、内容物を収容する前の包装体も本発明に包含される。従って、例えば被包装物を収容するための開口部を残し、それ以外の部分をヒートシールされた包装体(半製品)も、本発明に包含される。一例として、開口部を有する袋体も本発明の包装体に該当する。
【0061】
本発明の包装製品は、本発明の包装体の内部に被包装物が収容されており、当該包装シートのシーラント層どうしが少なくとも一部で接合されることにより前記被包装物が包装体中で密閉されている。
【0062】
なお、本発明における「密閉」とは、包装体の内部と外部とが実質的に遮断された状態をいう。従って、例えば、内容物が外部へ出ない限り、微量の気体等の出入りは許容される。
【0063】
被包装物としては、特に限定されず、食品をはじめとして、医薬、化粧品等の各種製品の包装に好適に用いることができる。特に、水分含有量が多いがゆえに表面が包装シートに付着しやすく、また柔らかくて剥離・損傷しやすい食品(例えば、洋生菓子、洋半生菓子、和生菓子、和半生菓子等)を包装するための包装シート、あるいは前記食品を収容するための包装体として有効に利用することができる。特に、例えば生菓子又は半生菓子のように水分を比較的多量に含むことから表面が柔らかく付着しやすい食品の場合は、従来技術による一般的な包装シートに食品の表面が粘着・貼着しやすくなる性質が高くなるが、本発明の包装シートでは、内面が付着防止表面により形成されているため、そのような生菓子又は半生菓子であってもその付着を効果的に抑制ないしは防止することができる。
【0064】
また、包装体としての形状は、特に限定されず、例えば成形包装体、帯状サイドカバー、包み紙、トレー、チューブ、並びに各種の袋体に好適に適用することができる。袋体としても、特にその形態に制限はなく、例えばボトムシール袋、サイドシール袋、ピロー袋(合掌袋)、ガゼット袋、パウチ(スタンディングパウチ)等のいずれのタイプにも好適に用いることができる。
【0065】
前記の包装体又は包装製品は、所定の包装形態となるように本発明シートの所定箇所をヒートシールすることにより得ることができる。例えば、図4に示すように、本発明シートを用いてピロー袋20を作製する場合は、略矩形の本発明シート10を筒状体に成形し、筒状体の長手方向の本発明シートの縁端部の付着防止表面どうしを重ね合わせた部分をヒートシール部H2としてヒートシールを行う。その筒状体の上底端部及び下底端部のいずれか一方についても、本発明シートの付着防止表面どうしを重ね合わせた部分をヒートシール部H1としてヒートシールを行う。まだヒートシールされていないヒートシール部H1’の部分を開口部としてそこから被包装物(図示せず)を装填した後、ヒートシール部H1’をヒートシールすることにより、被包装物が密閉される。これらの手順等については、作製する包装体の形態等に応じて適宜設定することができる。このようにして本発明の包装製品を得ることができる。
【実施例
【0066】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0067】
実施例1
シーラント層のマトリックス用の熱可塑性樹脂として市販の低密度ポリエチレン(MFR:2g/10min、密度:924kg/m、軟化温度:112℃)(LDPE)と、凹凸を付与するための微粒子に市販の架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(PMMA粒子)(平均粒径D50:30μm、軟化点(耐熱温度):255℃、比重:1.2)とをそれぞれ用意した。
低密度ポリエチレン100重量部に架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子20重量部をドライブレンドし、二軸押出機を用いてコンパウンド樹脂を作製した。押出時の樹脂溶融温度は180~200℃で行った。このコンパウンド樹脂をインフレーション法の製膜機を使用し、表面に凹凸を付与したフィルムを製膜した。製膜時の温度は180~220℃で行った。製膜フィルムの厚みは50μmとした。このようにして凹凸表面(付着防止表面)をもつシーラント層用フィルムを作製した。
上記シーラント層用フィルムの片面と、基材層として二軸延伸ポリエステル樹脂(膜圧:25μm)とをポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量:3.5g/m)を用いて張り合わせることにより包装シートを得た。得られた包装シートを背貼り三方シールとした包装体(ピロー袋)を作製した。得られた包装体は、その内面が凹凸表面となっていた。
【0068】
実施例2
PMMA粒子の添加量を10重量部に代えたほかは、実施例1と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0069】
実施例3
PMMA粒子の添加量を30重量部に代えたほかは、実施例1と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0070】
実施例4
PMMA粒子として平均粒径D50が50μmのものを使用したほかは、実施例1と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0071】
実施例5
PMMA粒子を炭酸カルシウム粒子(平均粒径D50:11μm、形状:不定形、比重:2.94)に代えたほかは、実施例1と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0072】
実施例6
炭酸カルシウム粒子として平均粒径D50が27μmのものを使用したほかは、実施例5と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0073】
実施例7
PMMA粒子として平均粒径D50が80μmのものを使用したほかは、実施例1と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0074】
実施例8
1層目:20μmのLDPE、2層目:20μmのLDPE、3層目:20μmのLDPE100重量部に市販の架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(平均粒径D50:30μm、軟化点:255℃、比重:1.2)を20重量部添加した混合物を原料として用い、多層インフレーション成形機により3層からなるシーラント層用フィルムを作製した。
上記シーラント層用フィルムの1層目と、基材層として二軸延伸ポリエステル樹脂(膜圧:25μm)とをポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量:3.5g/m)を用いて張り合わせることにより包装シート(基材フィルム/下地シーラント層(1層目)/下地シーラント層(2層目)/表面シーラント層(3層目)からなる積層体)を得た。得られた包装シートを背貼り三方シールとした包装体(ピロー袋)を作製した。得られた包装体は、その内面が凹凸表面となっていた。
【0075】
実施例9
1層目:20μmのLDPE、2層目:20μmのLDPE、3層目:20μmのLDPE100重量部に市販の架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(平均粒径D50:50μm、軟化点:255℃、比重:1.2)を20重量部添加した混合物を原料として用い、多層インフレーション成形機により3層からなるシーラント層用フィルムを作製した。
上記シーラント層用フィルムの1層目と、基材層として二軸延伸ポリエステル樹脂(膜圧:25μm)とをポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量:3.5g/m)を用いて張り合わせることにより包装シート(基材フィルム/下地シーラント層(1層目)/下地シーラント層(2層目)/表面シーラント層(3層目)からなる積層体)を得た。得られた包装シートを背貼り三方シールとした包装体(ピロー袋)を作製した。得られた包装体は、その内面が凹凸表面となっていた。
【0076】
実施例10
実施例1で用いたシーラント層と二軸延伸ポリエステル樹脂(膜圧:150μm)とをポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量:3.5g/m)を用いて貼り合わせ、包装シートを作製した。その後、圧空成型法(成形温度:150℃)を用いて底面積:10cm×15cm=150cm、高さ:3cm、テーパー角度:5度のトレーを作製した。得られたトレーは、その内面が凹凸表面となっていた。
【0077】
比較例1
PMMA粒子として平均粒径D50が5μmである粒子を使用したほかは、実施例1と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0078】
比較例2
低密度ポリエチレン(LDPE)を用いて60μmに製膜したシーラントフィルムを、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(厚み16μm)と貼り合わせを行い、シーラントフィルム面をエンボスロールを温度60℃、圧力100kgf/cmの条件でエンボス柄を転写させ、凹凸を付与した。エンボス柄に絹目の40メッシュを使用した。このようにして得られたフィルムを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。得られた包装体は、その内面が凹凸表面となっていた。
【0079】
比較例3
エンボスの柄を絹目の175メッシュを使用した以外は、比較例2と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0080】
比較例4
ブラスト加工したエンボス柄を使用した以外は、比較例3と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0081】
比較例5
上記エンボスの柄を亀甲の151メッシュを使用した以外は、比較例3と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0082】
比較例6
比較例4で用いたエンボスフィルムと二軸延伸ポリエステル樹脂(膜圧:150μm)とをポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量:3.5g/m)を用いて張り合わせ、包装シートを作製した。その後、圧空成型法(成形温度:150℃)を用いて底面積:10cm×15cm=150cm、高さ:3cm、テーパー角度:5度のトレーを作製した。得られたトレーは、その内面が凹凸表面となっていた。
【0083】
比較例7
低密度ポリエチレン(LDPE)を用いて60μmに製膜したシーラントフィルムを、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(厚み16μm)と貼り合わせを行って包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。得られた包装体は、その内面が凹凸表面となっていた。
【0084】
比較例8
平均粒子径D50が30μmの市販のポリエチレン系粒子と、市販のポリオレフィン系樹脂を主体とするコート剤(ヒートシールコート剤、固形分含有量20%)とを用意した。このコート剤90重量部に市販のポリエチレン系粒子10重量部を混合分散し、これを市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(厚み16μm)にバーコーターによって塗工し、80℃×10秒の条件で乾燥することによりヒートシール層を形成した。このときの乾燥後のヒートシールコート剤の樹脂量は3.0g/mであった。これにより包装シートが得られた。次いで、得られた包装シートを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。得られた包装体は、その内面が凹凸表面となっていた。
【0085】
比較例9
市販のポリオレフィン系樹脂を主体とするコート剤(ヒートシールコート剤、固形分含有量20%)90重量部に市販のポリエチレン系粒子10重量部を混合分散し、乾燥後のヒートシール剤の樹脂量を10.0g/mとしたほかは、比較例8と同様にして包装シートを作製し、この包装シートを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0086】
比較例10
シーラント層の1層目の厚みを10μmにして製膜したほかは、実施例8と同様にして包装シートを作製し、これを背貼り三方シールして包装体(ピロー袋)を作製した。
【0087】
試験例1(付着性試験その1)
市販の洋菓子(カステラ)を用意し、その内容物であるカステラを包装体の上に載せてシールし、室温20℃及び湿度25%にて4日間静置した。4日後にカステラを包装体から剥がし、フィルム上に付着している量(接触面に対する面積割合)を目視で確認して評価した。付着量が10%未満の場合は「〇」、10%以上30%未満の場合は「△」、30%以上の場合は「×」と表記した。その結果を表1に示す。
【0088】
試験例2(付着性試験その2)
化粧品の滑落試験にグリセリンを用意し、傾斜20度の斜面に包装体を載せ、グリセリンを1ml滴下し、距離150mmを滑落する時間を測定した。150mmを滑落するのに掛かる時間が1分未満の場合は「〇」、1分以上の場合は「△」、グリセリンが50%以上包装体上に残ってしまった場合は「×」と表記した。その結果を表1に示す。
【0089】
試験例3(表面粗さRa評価)
各サンプルを150mm×150mmの大きさに切り、その凹凸表面を表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製 Surftest SV9634・3D)で算術平均粗さRa(μm)をJIS B0601(2001)の規格に沿って測定した。具体的には、測定長さ:17.5mm、評価長さ:12.5mm、速度:0.2mm/s、測定点数:17500、基準長さ:2.5mmを条件として測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
試験例4(面々ヒートシール強度)
付着防止表面どうしを20mm×60mmの熱板を使用して160℃×3kg/cm×1秒の条件でヒートシールを行い、その後シール幅が15mmとなるように短冊状にスリットして試験片を各3点作製した。それらの試験片のヒートシール強度をオートグラフ試験機(株式会社島津製作所製EZ-LX)で測定した。具体的には、シール強度(N)は、100mm/minの速度でT剥離試験とし、上記のように各サンプルについて3点測定し、その平均過重強度(N)を求めた。実用上の包装材料のヒートシール強度を考慮し、3N/15mm以上を「〇」、1N/15mm以上3N/15mm未満を「△」、1N/15mm未満のサンプルを「×」とした。ヒートシール強度の結果を表1に示す
【0091】
試験例5(耐久性)
耐久性評価には学振形染色摩擦堅ろう度試験機(株式会社安田精機製作所)を用いた。各サンプルを15mm×150mmの大きさに切り、ウレタンゴムをサンプルに接触させ、荷重:4.9N、摩擦距離:100mm、速度:30往復/minの条件で耐久性試験を実施した。30往復後の表面粗さRa’の値が評価前Raと比較して70%以上である場合を「〇」、50%以上70%未満の場合を「△」、50%未満の場合を「×」として判断した。耐久性の結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の結果からも明らかなように、比較例1~5、比較例7~11のいずれも、耐久性において満足できる性能が得られないことがわかる。また、比較例6では、所望の耐久性が得られるものの、付着防止性能が得られないことがわかる。
【0094】
これに対し、実施例1~10の包装シートでは、凹凸形成用粒子及び熱可塑性樹脂のコンパウンドを延伸することによって所定の表面粗さが付与された付着防止表面をもつシーラント層が形成されているため、いずれの試験でも優れた性能を発揮していることがわかる。特に、耐久性試験においても、初期の付着防止表面が効果的に維持されていることから、優れた付着防止性能が持続し得ることがわかる。
図1
図2
図3
図4