(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】空気用ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20221115BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20221115BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
F16L11/11
F02M35/10 101E
F02M35/10 101H
F24F13/02 A
(21)【出願番号】P 2018154757
(22)【出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康晴
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 純平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美津代
(72)【発明者】
【氏名】天野 宏之
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078379(JP,A)
【文献】特開2007-010063(JP,A)
【文献】特開2003-274720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0261842(US,A1)
【文献】特開2013-060821(JP,A)
【文献】国際公開第2012/093542(WO,A1)
【文献】実開昭54-137920(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/11
F02M 35/10
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に空気を流す空気用ホースであって、
内径が大きい山部と内径が小さい谷部とが流れ方向に向かって交互に繰り返し形成されている蛇腹部を含み、
前記蛇腹部において、上流側では前記谷部の内径が下流に向かうにつれて大きくなる一方、下流側では前記谷部の内径が一定であること、
を特徴とする空気用ホース。
【請求項2】
請求項1に記載の空気用ホースであって、
前記空気用ホースのうち前記蛇腹部ではない部分では、内径が下流に向かうにつれて小さくなること、
を特徴とする空気用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気用ホースの蛇腹部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気等を流すホースにおいて、振動の伝達を抑制する目的やアライメント調整の目的で蛇腹部を設ける場合が多い。しかし、蛇腹部は内径が大きい山部と内径が小さい谷部とが交互に繰り返し形成される構造のため、蛇腹部の各山谷部分で乱流や渦流が発生する。これにより、主流がスムーズに流れる有効流路が狭まり圧力損失が増大する場合がある。このため、蛇腹部をスパイラル構造として圧力損失の低減を図ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された従来技術の蛇腹ダクトでは、圧力損失の低減が十分ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、空気用ホースの太さが大きくなることを抑制しつつ、蛇腹部を有する空気用ホースの圧力損失を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気用ホースは、内側に空気を流す空気用ホースであって、内径が大きい山部と内径が小さい谷部とが流れ方向に向かって交互に繰り返し形成されている蛇腹部を含み、前記蛇腹部において、上流側では前記谷部の内径が下流に向かうにつれて大きくなる一方、下流側では前記谷部の内径が一定であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、蛇腹部の谷部の内径が下流に向かうにつれて大きくなることにより、乱流や渦流の発生による有効流路の狭まりを拡径により抑制できるため、蛇腹部を有する空気用ホースの圧力損失を低減することができる。そして、本発明は、蛇腹部の下流側の谷部の内径が一定であることにより、空気用ホースの太さが大きくなることを抑制することができる。そのため、本発明は、空気用ホースの太さが大きくなることを抑制しつつ、空気用ホースの圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態である空気用ホースである吸気ホースを含むエンジン吸気系の概略図である。
【
図3】本実施形態の吸気ホースの蛇腹部における有効流路の狭まりを説明する図である。
【
図4】比較例1の吸気ホースの蛇腹部における有効流路の狭まりを説明する図である。
【
図5】蛇腹部の谷部内径を拡大する角度と圧力損失との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態の空気用ホースである吸気ホース5について説明する。
図1に示したエンジン1は不図示の車両に走行用動力源として搭載される。
図1に示すように、エンジン1には吸気通路2が接続されている。吸気通路2は、吸気ダクト3、エアクリーナ4、吸気ホース5及びスロットルバルブ6を備えている。吸気ダクト3から吸入されエアクリーナ4で濾過された空気は、吸気ホース5及びスロットルバルブ6を介してエンジン1に送り込まれる。エンジン1の振動がエアクリーナ4を固定している不図示のボデーに伝達することを抑制するために、吸気ホース5には、内径が大きくなって吸気ホース5の径方向外側に突出している山部51aと、内径が小さい谷部51bとが流れ方向に向かって交互に繰り返し形成されている蛇腹部51が設けられている。
【0010】
図2に示すように、蛇腹部51の谷部51bの内径は一定の角度θで下流に向かうにつれて大きくなり、蛇腹部51より上流側の吸気ホース5の内径φ1よりも蛇腹部51における下流側の谷部51bの内径φ2の方が大きい。
【0011】
図3に示すように、蛇腹部51では内径が大きい山部51aと内径が小さい谷部51bとが交互に繰り返し形成されているため、空気の流れが蛇腹部51の径方向内側に突出している谷部51bに当たる度に渦を巻き、谷部51bの付近の内側では乱流や渦流が発生する。そのため、主流がスムーズに流れる有効流路の径φ3が蛇腹部51より上流側の吸気ホース5の内径φ1よりも小さくなる。しかし、下流に向かうにつれて谷部51bの内径が大きくなるため、乱流や渦流の層の厚さD1の一部は谷部51bの内径が拡大した分に吸収される。そのため、後で
図4を参照して説明する谷部151bの内径が一定である比較例1の蛇腹構造よりも乱流や渦流の発生による有効流路の径φ3の狭まりを抑制でき、吸気ホース5の圧力損失を低減できる。
【0012】
図4は、谷部151bの内径φ1が一定である比較例1の吸気ホース15の蛇腹部151の断面図である。蛇腹部151の谷部151bの内径φ1は、
図2及び
図3の内径φ1と同一である。また、蛇腹部151の山部151a及び谷部151bの幅と深さは、本実施形態の蛇腹部51と同一である。先に説明した本実施形態の蛇腹部51と同様、谷部151bの内側に厚さD2の乱流や渦流の層が生じ、主流がスムーズに流れる有効流路の径φ5は谷部151bの内径φ1よりも厚さD2の2倍の分だけ小さくなる。比較例1では谷部151bの内径φ1が一定のため、本実施形態の吸気ホース5の蛇腹部51とは異なり厚さD2が谷部151bの拡大した分に吸収されることはない。また、谷部151bの内径φ1が一定のため、谷部51bの内径が下流に向かうにつれて大きくなる場合と比較して、谷部151bに当たって生じた渦流や乱流が、次の下流側の谷部151bに当たって生じた渦流や乱流と干渉することも多くなる。そのため、乱流や渦流の層の厚さD2は
図3の厚さD1と比較して大きくなる傾向にある。以上の理由により、比較例1では本実施形態の吸気ホース5の蛇腹部51のように、有効流路の径φ5の狭まりを抑制することができず、圧力損失が大きくなる。
【0013】
実施形態の蛇腹部51の圧力損失の比較例1の圧力損失に対する低減量は、
図2に示す拡大角度θを大きくするほど大きくなる。
図5は、
図2に示す拡大角度θが0度の比較例1、θが1.5度の実施例1及び、θが3.0度の実施例2の圧力損失の変化を示す。
図5の点Aが比較例1であり、点Bが実施例1であり、点Cが実施例2である。
図5に示すように、拡大角度θが大きくなるほど圧力損失は低減し、実施例2のように拡大角度θを3.0度とした場合には、比較例1と比較して圧力損失を約25パーセント低減できる。圧力損失低減の効果や吸気ホース5の径拡大を考慮すると、好ましい拡大角度θは0.5度から5.0度までであり、より好ましい拡大角度θは1.0度から3.0度までである。
【0014】
しかし、
図2に示すように蛇腹部51の谷部51bの内径を下流に向かうにつれて大きくし続けると、吸気ホース5の太さが大きくなってしまうという弊害が生じる。そこで、吸気ホース5が太くなることを抑制するため、蛇腹部51において、上流側では谷部51bの内径が下流に向かうにつれて大きくする一方、下流側では谷部51bの内径を一定とする。また
、吸気ホース5において、蛇腹部51ではない部分の内径を下流に向かうにつれて徐々に縮小させることによって、吸気ホース5が太くなることを抑制してもよい。なお、本開示の吸気ホース5は上述した形態に限定されず、本開示の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、蛇腹部51の谷部51bの内径は一定の角度θで拡大し続ける必要はない。蛇腹部51における上流側では拡大角度θを大きくして、蛇腹部51における下流側では拡大角度θを小さくしてもよい。また、本実施形態は車両用のエンジン1の吸気通路2に用いる吸気ホース5であるが、空調用など他の用途に用いる空気用ホースにも本実施形態の構成を適用できる。
【符号の説明】
【0015】
1 エンジン、2 吸気通路、3 吸気ダクト、4 エアクリーナ、5、15 吸気ホース、6 スロットルバルブ、51、151 蛇腹部、51a、151a 山部、51b、151b 谷部。