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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/17 20060101AFI20221115BHJP
   B63J 3/02 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B63H21/17
B63J3/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018156564
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020029204
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-02-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大和 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】磨田 徹
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-43715(JP,A)
【文献】特開2009-161032(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0064983(KR,A)
【文献】特開2014-108672(JP,A)
【文献】日本舶用機関学会 機関第一研究委員会、非常用発電機関とその補機器のあり方、日本舶用機関学会誌、平成3年3月、第26巻、第3号、p.942-945
【文献】2017年海上人命安全条約、初版、海文堂出版株式会社、2017年9月30日、p.229、235
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H21/17
B63J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船幅方向両側に舷側を有する船体と、
前記船体に設けられて、前記船体を推進させる推進器と、
前記推進器を駆動可能な電動機と、
前記船体内に設けられた非常用機器と、
前記船体内において前記船体の損傷時における最終平衡状態の喫水線よりも上方に区画された室に設けられ、前記電動機に電力を供給可能であるとともに、前記非常用機器に電力を供給可能な蓄電池と、
を備え
前記蓄電池は、複数組が設けられ、
複数組の前記蓄電池のうち一つの組は、前記船体の上部構造に設けられた前記室に設置され、複数組の前記蓄電池のうち他の組は、複数組が設けられて、前記船体の乾舷甲板上に設けられた複数の前記室にそれぞれ設置され、
前記乾舷甲板上に設けられた複数の前記室は、前記船体の船首尾方向と船幅方向との双方向において、互いに離間して設けられている船舶。
【請求項2】
前記蓄電池のみにより、前記非常用機器に電力が供給される請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記蓄電池のみにより、前記電動機に電力が供給される請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
少なくとも前記電動機に電力を供給する発電機をさらに備える請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項5】
前記発電機は、前記蓄電池が設けられた前記室とは異なる第2の室に設けられている請求項4に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リチウムイオン電池等の蓄電池を用いた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、動力源としてのリチウムイオン電池を、船体後部に設けられた動力室に配置した船舶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-108672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、船舶は、船体が損傷して船体内に浸水し、リチウムイオン電池に水が到達すると、船舶の推進器や船内への電力供給が行えなくなってしまう場合がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、船体内に浸水が生じた場合であっても、電力供給を継続することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、船舶は、船幅方向両側に舷側を有する船体と、前記船体に設けられて、前記船体を推進させる推進器と、前記推進器を駆動可能な電動機と、前記船体内に設けられた非常用機器と、前記船体内において前記船体の損傷時における最終平衡状態の喫水線よりも上方に区画された室に設けられ、前記電動機に電力を供給可能であるとともに、前記非常用機器に電力を供給可能な蓄電池と、を備え、前記蓄電池は、複数組が設けられ、複数組の前記蓄電池のうち一つの組は、前記船体の上部構造に設けられた前記室に設置され、複数組の前記蓄電池のうち他の組は、複数組が設けられて、前記船体の乾舷甲板上に設けられた複数の前記室にそれぞれ設置され、前記乾舷甲板上に設けられた複数の前記室は、前記船体の船首尾方向と船幅方向との双方向において、互いに離間して設けられている。
【0006】
このように構成することで、電動機、非常用機器に電力を供給可能な蓄電池が、船体の喫水線よりも上方に区画された室に設けられているので、船体内に浸水が生じた場合であっても、蓄電池は浸水され難い。これにより、浸水発生時であっても、蓄電池から電動機や非常用機器への電力供給を継続することができる。
また、複数組のうちの一部の蓄電池が、何らかの原因によって機能しなくなった場合であっても、他の蓄電池から電力の供給を継続することができる。
さらに、船体の重量バランスを良好なものとすることができる。また、万が一、喫水線以上まで浸水した場合であっても、全ての蓄電池が浸水する可能性を抑えることができる。
【0007】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る船舶は、前記蓄電池のみにより、前記非常用機器に電力が供給されるようにしてもよい。
このように構成することで、非常用機器への電力の供給のために、非常発電機を備える必要がなくなる。したがって、浸水によって非常発電機が影響を受けることもなく、非常用機器への電力供給を安定して継続することができる。また、非常発電機や、非常発電機の燃料タンク、燃料供給パイプ、その補機類等も不要となる。その結果、船体内のスペースの有効利用を図ることが可能となる。
【0008】
この発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係る船舶は、前記蓄電池のみにより、前記電動機に電力が供給されるようにしてもよい。
このように、推進器を駆動する電動機は、蓄電池のみにより電力が供給される。つまり、電動機に電力を供給するために発電機を備える必要がなくなる。したがって、浸水によって発電機が影響を受けることもなく、電動機への電力供給を安定して継続することができる。また、発電機や、発電機の燃料タンク、燃料供給パイプ、その補機類等も不要となる。その結果、船体内のスペースの有効利用を図ることが可能となる。
【0009】
この発明の第四態様によれば、第一又は第二態様に係る船舶は、少なくとも前記電動機に電力を供給する発電機をさらに備えるようにしてもよい。
これにより、船舶は、発電機と蓄電池とを併用して電動機に電力を供給し、いわゆるハイブリッド航行が可能となる。また、発電機を停止しても、蓄電池から電動機に電力を供給して航行を行うことができる。
【0010】
この発明の第五態様によれば、第四態様に係る前記発電機は、前記蓄電池が設けられた前記室とは異なる第2の室に設けられているようにしてもよい。
このように、蓄電池が設けられた室とは異なる第2の室に発電機が設けられることで、第2の室に設けられた発電機が浸水しても、蓄電池が浸水の影響を受けることを抑える。
【発明の効果】
【0013】
上記船舶によれば、船体内に浸水が生じた場合であっても、電力供給を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の第一実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。
図2】上記船舶の第一実施形態における機関室の構成を示す平面図である。
図3】上記船舶の第一実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。
図4】上記船舶の第一実施形態における蓄電池が設けられた機器室の構成を示す平面図である。
図5】上記船舶の第二実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。
図6】上記船舶の第二実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。
図7】上記船舶の第二実施形態における蓄電池が設けられた機器室の構成を示す平面図である。
図8】上記船舶の第三実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。
図9】上記船舶の第三実施形態における機関室の構成を示す平面図である。
図10】上記船舶の第三実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。
図11】上記船舶の第四実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。
図12】上記船舶の第四実施形態における蓄電池が設けられた機器室の構成を示す平面図である。
図13】上記船舶の第四実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。
図14】上記船舶の第五実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。
図15】上記船舶の第五実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態における船舶を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この発明の第一実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。図2は、上記船舶の第一実施形態における機関室の構成を示す平面図である。図3は、上記船舶の第一実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。図4は、上記船舶の第一実施形態における蓄電池が設けられた機器室の構成を示す平面図である。
図1に示すように、この実施形態の船舶1Aは、船体2と、スクリュー(推進器)7と、電動機11と、主発電機(発電機)10と、非常発電機20と、蓄電池30と、を主に備える。
【0016】
船体2は、船幅方向両側に設けられた一対の舷側2sと、船底2bと、を有する。船体2は、船底2bの上方に間隔をあけて設けられた乾舷甲板3を備える。船体2は、船底2bと乾舷甲板3との間に設けられて二重底を形成する船底甲板4をさらに備える。
乾舷甲板3上には、上部構造5が設けられている。上部構造5は、上下方向に間隔をあけて複数の上部甲板6を備える。
【0017】
図1図2に示すように、スクリュー7は、船尾部2Aの船底2bの下方に設けられている。スクリュー7は、スクリュー軸8の一端に一体に設けられている。スクリュー軸8は、船体2内で電動機11に接続されている。
電動機11は、スクリュー軸8及びスクリュー7を、その中心軸回りに回転駆動する。この電動機11によってスクリュー軸8を回転させることで、スクリュー7が回転して船体2の推進力を発生する。電動機11は、船底甲板4上に設けられた機関室(第2の室)102に設置されている。本実施形態では、上記スクリュー7、スクリュー軸8、電動機11を、2組備えている。
【0018】
主発電機10は、燃料タンク(図示無し)から供給される燃料を燃焼させる燃焼機関(エンジン)を備える。主発電機10は、燃焼機関の作動によって、発電を行う。主発電機10は、複数台を並列に備えていてもよい。図3に示すように、主発電機10で発生した電力は、主配電盤12を介し、電動機11や一般用機器13に供給される。ここで、一般用機器13は、通常航行時に、船体2内の各部で使用される各種の機器である。
図1図2に示すように、主発電機10及び主配電盤12は、電動機11とともに、機関室102に設置されている。
【0019】
非常発電機20は、燃料タンク(図示無し)から供給される燃料を燃焼させる燃焼機関(エンジン)を備える。非常発電機20は、燃焼機関の作動によって、発電を行う。図3に示すように、非常発電機20で発生した電力は、非常配電盤22を介し、非常用機器23に供給可能である。また、非常発電機20で発生した電力は、非常配電盤22、主配電盤12を介し、電動機11に供給可能とすることもできる。
非常用機器23は、船体2内への浸水、船体2内での火災等が発生した場合に、電力が供給される機器である。このような非常用機器23としては、例えば、操舵システム、通信設備、レーダー設備、消火用ポンプ、非常照明設備等がある。
図1図4に示すように、非常発電機20及び非常配電盤22は、上部構造5の上部甲板6に形成された機器室(室)101内に設置されている。
【0020】
蓄電池30としては、例えば、リチウムイオン電池が用いられる。図3に示すように、蓄電池30は、充放電盤32、非常配電盤22、及び主配電盤12を介して、電動機11に電力を供給可能である。また、蓄電池30は、充放電盤32、非常配電盤22を介して、非常用機器23に電力を供給可能である。さらに、蓄電池30は、充放電盤32を介して、直流で作動する直流機器33に電力を供給可能である。蓄電池30は、主発電機10から、主配電盤12、非常配電盤22、充放電盤32を介して電力が供給されることで、充電がなされる。
図1図4に示すように、蓄電池30及び充放電盤32は、上部構造5の上部甲板6に形成された機器室101内に設置されている。
【0021】
図1に示すように、機器室101は、船体2の損傷時における最終平衡状態の喫水線KL(想定される損傷区画の浸水後の喫水線を指し、ここでは、それぞれの区画損傷後の喫水を結んだ線を最終平衡状態の喫水線としている。以下、単に喫水線KLと称する)よりも上方に区画して設けられている。ここで、最終平衡状態とは、損傷後に船舶1Aが浮いている状態である。喫水線KLは、最終平衡状態となったときの喫水レベルを意味する。この実施形態における喫水線KLは、通常航行時における満載喫水線WLよりも上方に設定されている。したがって、機器室101は、船体2内に浸水が生じて最終平衡状態になったとしても、水が浸入しない位置に設けられている。蓄電池30、充放電盤32、非常発電機20、及び非常配電盤22は、機器室101に設けられることで、船体2内に浸水が生じた場合であっても、浸水の影響が及び難い。
【0022】
上記船舶1Aは、通常航行時には、主発電機10から電動機11、一般用機器13、直流機器33に電力を供給する。また、船舶1Aは、通常航行時に、蓄電池30から電動機11、一般用機器13、直流機器33に電力を供給することもできる。さらに、船舶1Aは、主発電機10及び蓄電池30を併用し、蓄電池30の残量、主発電機10における発電量等に応じ、電動機11、一般用機器13、直流機器33に対し、電力をハイブリッド的に供給することもできる。
【0023】
船舶1Aは、船体2の損傷、船体2(特に機関室102)内での火災等が発生した場合、主発電機10を停止させる。この場合、非常発電機20、蓄電池30から、非常用機器23、直流機器33に電力を供給する。
【0024】
上述した第一実施形態の船舶1Aによれば、電動機11、非常用機器23に電力を供給可能な蓄電池30が、船体2の喫水線KLよりも上方に区画された機器室101に設けられている。これにより、船体2内に浸水が生じた場合であっても、蓄電池30は浸水され難い。そのため、浸水発生時であっても、蓄電池30から、非常用機器23への電力供給を継続することができる。その結果、浸水発生時においても、船舶1Aの航行、運用を安定して行うことができる。
【0025】
さらに、船舶1Aは、主発電機10を備えている。これにより、船舶1Aは、主発電機10と、蓄電池30とを併用して電動機11に電力を供給し、いわゆるハイブリッド航行が可能となる。また、主発電機10を停止しても、蓄電池30から電動機11に電力を供給して船舶1Aの航行を行うことができる。
【0026】
さらに、蓄電池30が設けられた機器室101とは異なる機関室102に主発電機10が設けられることで、機関室102に設けられた主発電機10が浸水しても、蓄電池30が浸水の影響を受けることを抑制できる。
【0027】
さらに、船舶1Aは、非常発電機20を備えている。このように、非常発電機20を備える構成において、蓄電池30で非常用電力の少なくとも一部を担うことによって、非常発電機20で供給する電力を少なくすることができる。これにより、非常発電機20の出力を下げることができ、非常発電機20の小型化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0028】
また、非常発電機20が、船体2の喫水線KLよりも上方に区画された機器室101に設けられている。これにより、船体2内に浸水が生じた場合であっても、非常発電機20は浸水され難い。そのため、浸水発生時であっても、非常発電機20から、非常用機器23への電力供給を継続することができる。
【0029】
(第二実施形態)
次に、この発明に係る船舶の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と非常発電機20を備えない点のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図5は、上記船舶の第二実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。図6は、上記船舶の第二実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。図7は、上記船舶の第二実施形態における蓄電池が設けられた機器室の構成を示す平面図である。
図5に示すように、この実施形態の船舶1Bは、船体2と、スクリュー7と、電動機11と、主発電機10と、蓄電池30と、を主に備える。すなわち、本実施形態の船舶1Bは、第一実施形態で示した非常発電機20を備えていない。
【0030】
図6に示すように、主発電機10は、主配電盤12を介し、電動機11、一般用機器13、非常用機器23に電力を供給する。図5に示すように、主発電機10及び主配電盤12は、電動機11とともに、機関室102に設置されている。
【0031】
図6に示すように、蓄電池30は、主配電盤12を介し、電動機11、一般用機器13、非常用機器23に電力を供給可能である。蓄電池30は、変換装置35を介して、主配電盤12に接続されている。変換装置35は、蓄電池30の直流を交流に変換する逆変換の機能と、主配電盤12の交流を直流に変換する順変換の機能とを有している。蓄電池30は、変換装置35を介して交流の電力を主配電盤12に供給する。一方で、蓄電池30は、主配電盤12から変換装置35を介して供給された直流の電力により充電される。
【0032】
主配電盤12には、直流給電盤34が接続されている。直流給電盤34は、主配電盤12から供給される交流を直流変換する整流回路(図示せず)を備えている。つまり、主発電機10、及び蓄電池30は、主配電盤12、直流給電盤34を介し、直流機器33に電力を供給可能である。
【0033】
図5図7に示すように、蓄電池30、直流給電盤34、変換装置35は、船体2の喫水線KLよりも上方に区画して設けられた機器室101内に設置されている。蓄電池30、直流給電盤34は、機器室101に設けられることで、船体2内に浸水が生じた場合であっても、浸水の影響が及び難い。
【0034】
上記船舶1Bは、通常航行時には、主発電機10から電動機11、一般用機器13、直流機器33に電力を供給する。また、船舶1Bは、通常航行時に、蓄電池30から電動機11、一般用機器13、直流機器33に電力を供給することもできる。さらに、船舶1Bは、主発電機10及び蓄電池30を併用し、電動機11、一般用機器13、直流機器33に、電力をハイブリッド的に供給することもできる。
【0035】
船舶1Bは、船体2の損傷、船体2内での火災等が発生した場合、主発電機10を停止させる。この場合、蓄電池30のみから、非常用機器23、直流機器33に、電力を供給する。
【0036】
したがって、上述した第二実施形態の船舶1Bによれば、蓄電池30のみによって、非常用機器23に電力を供給できる。
このように構成することで、非常用機器23への電力の供給のために、上記第一実施形態の船舶1Aのように、非常発電機20を設ける必要がなくなる。その結果、浸水によって非常発電機20が影響を受けることもなく、非常用機器23への電力供給を安定して継続することができる。また、非常発電機20や、非常発電機20の燃料タンク、燃料供給パイプ、その補機類等も不要となる。その結果、船体2の機器室101内のスペースの有効利用を図ることが可能となる。
【0037】
また、上記第一実施形態と同様、非常用機器23に電力を供給可能な蓄電池30が、船体2の喫水線KLよりも上方に区画された機器室101に設けられている。これにより、船体2内に浸水が生じた場合であっても、蓄電池30は浸水され難い。そのため、浸水発生時であっても、蓄電池30から、非常用機器23への電力供給を継続することができる。
【0038】
(第三実施形態)
次に、この発明に係る船舶の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第二実施形態と主発電機10を備えない構成のみが異なるので、第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0039】
図8は、上記船舶の第三実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。図9は、上記船舶の第三実施形態における機関室の構成を示す平面図である。図10は、上記船舶の第三実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。
図8図9に示すように、この実施形態の船舶1Cは、船体2と、スクリュー7と、電動機11と、蓄電池30(図8参照)と、を主に備える。すなわち、この第三実施形態の船舶1Cは、主発電機10、及び非常発電機20を備えていない。
【0040】
図10に示すように、蓄電池30は、第一実施形態と同様に、交流から直流への変換、及び直流から交流への変換が可能な変換装置35を介して、主配電盤12に接続されている。蓄電池30は、主配電盤12を介し、電動機11、一般用機器13、非常用機器23に電力を供給可能である。
【0041】
主配電盤12には、整流回路(図示せず)を有する直流給電盤34が接続されている。蓄電池30は、主配電盤12、直流給電盤34を介し、直流機器33に給電可能になっている。
蓄電池30、直流給電盤34は、船体2の喫水線KLよりも上方に区画して設けられた機器室101内に設置されている。
【0042】
上記船舶1Cは、通常航行時には、蓄電池30から電動機11、一般用機器13、直流機器33に電力を供給する。
船舶1Cは、船体2の損傷、船体2内での火災等が発生した場合、蓄電池30のみから、非常用機器23、直流機器33に、電力を供給することができる。
【0043】
したがって、上述した第三実施形態の船舶1Cによれば、蓄電池30のみによって、電動機11に電力を供給できる。
このようにスクリュー7を駆動する電動機11は、蓄電池30のみにより電力が供給される。これにより、電動機11に電力を供給するために主発電機10を備える必要がなくなる。また、主発電機10や、主発電機10の燃料タンク、燃料供給パイプ、その補機類等も不要となる。その結果、船体2の機関室102内のスペースの有効利用を図ることが可能となる。
【0044】
さらに、船舶1Cは、第二実施形態と同様に、蓄電池30のみによって、非常用機器23に電力を供給できるので、非常用機器23への電力の供給のために、上記第一実施形態の船舶1Aのように、非常発電機20を備える必要がなくなる。その結果、浸水によって非常発電機20が影響を受けることもなく、非常用機器23への電力供給を安定して継続することができる。また、非常発電機20や、非常発電機20の燃料タンク、燃料供給パイプ、その補機類等も不要となる。その結果、船体2の機器室101内のスペースの有効利用を図ることが可能となる。
【0045】
さらに、非常用機器23に電力を供給可能な蓄電池30は、第一実施形態と同様に、船体2の喫水線KLよりも上方に区画された機器室101に設けられている。これにより、船体2内に浸水が生じた場合であっても、蓄電池30は浸水され難い。そのため、浸水発生時であっても、蓄電池30から、非常用機器23への電力供給を継続することができる。
【0046】
(第四実施形態)
次に、この発明に係る船舶の第四実施形態について説明する。以下に説明する第四実施形態においては、第三実施形態と蓄電池30の設置数の構成のみが異なるので、第一から第三実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図11は、上記船舶の第四実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。図12は、上記船舶の第四実施形態における蓄電池が設けられた機器室の構成を示す平面図である。図13は、上記船舶の第四実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。
図11図12に示すように、この実施形態の船舶1Dは、船体2と、スクリュー7と、電動機11と、複数組の蓄電池30と、を主に備える。
【0047】
複数組の蓄電池30は、船体2内において、船首尾方向FA及び船幅方向において、互いに離間する複数個所に配置されている。本実施形態では、図11に示すように、上記第三実施形態と同様、一つの組の蓄電池30は、上部構造5の上部甲板6に形成された機器室101内に設置されている。
さらに、図11図12に示すように、他の組の蓄電池30は、乾舷甲板3上に形成された機器室(室)103、104内にそれぞれ設置されている。機器室103、104には、それぞれの蓄電池30とともに、交流から直流への変換、及び直流から交流への変換を行う変換装置35が設置されている。ここで、乾舷甲板3上の機器室103と機器室104とは、船首尾方向FAと船幅方向との双方向において、互いに離間して設けられている。
【0048】
機器室101,103,104は、それぞれ、船体2の喫水線KLよりも上方に区画して設けられている。
【0049】
図13に示すように、各組の蓄電池30は、それぞれ、主配電盤12を介し、電動機11、一般用機器13、非常用機器23に電力を供給する。
【0050】
したがって、上述した第四実施形態の船舶1Dによれば、蓄電池30は、複数組が設けられている。このように構成することで、複数組のうちの一部の蓄電池30が、何らかの原因によって機能しなくなった場合であっても、他の組の蓄電池30から電力の供給を継続することができる。
【0051】
また、複数組の蓄電池30は、船体2内において、船首尾方向FA及び船幅方向において、互いに離間して配置されている。このように構成することで、船体2の重量バランスを良好なものとすることができる。また、万が一、喫水線KL以上まで浸水した場合であっても、全ての蓄電池30が浸水する確率を低減することができる。
【0052】
さらに、非常用機器23に電力を供給可能な蓄電池30が、第三実施形態と同様に、船体2の喫水線KLよりも上方に区画された機器室101,103,104に設けられている。これにより、船体2内に浸水が生じた場合であっても、蓄電池30は浸水され難い。そのため、浸水発生時であっても、蓄電池30から、非常用機器23への電力供給を継続することができる。
【0053】
(第四実施形態の変形例)
複数組の蓄電池30を備える場合、複数組の蓄電池30のそれぞれは、電動機11に電力を供給する個別の系統をそれぞれ有するようにしてもよい。このように、複数組の蓄電池30のそれぞれが、電動機11に電力を供給する個別の系統を有することで、複数組のうちの一部の蓄電池30が、何らかの原因によって機能しなくなった場合であっても、その影響を受けることなく、他の組の蓄電池30から電力の供給を継続することができる。
【0054】
また、上記第四実施形態、及びその変形例で示した構成、すなわち複数組の蓄電池30を備える構成は、第一から第三実施形態についても、同様に適用することが可能である。
【0055】
(第五実施形態)
次に、この発明に係る船舶の第五実施形態について説明する。以下に説明する第五実施形態においては、第二実施形態に対し、主機50を備える構成のみが異なるので、第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図14は、上記船舶の第五実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。図15は、上記船舶の第五実施形態における電力系統の機能的な構成を示すブロック図である。 図14図15に示すように、この実施形態の船舶1Eは、スクリュー7のスクリュー軸8を駆動する主機50を備える。主機50は、例えば、ディーゼルエンジン等の燃焼機関からなる。
【0056】
主機50とスクリュー軸8との間には、クラッチ機構(図示無し)等を設け、主機50とスクリュー軸8とを断続できるようにしてもよい。この構成では、主機50でスクリュー軸8を駆動するときには、クラッチ機構により、主機50とスクリュー軸8とを接続する。一方で、電動機11でスクリュー軸8を駆動するときには、クラッチ機構により、主機50とスクリュー軸8とを切り離す。
【0057】
このような船舶1Eによれば、上記第一実施形態と同様、電動機11、非常用機器23に電力を供給可能な蓄電池30が、船体2の喫水線KLよりも上方に区画された機器室101に設けられている。これにより、船体2内に浸水が生じた場合であっても、蓄電池30は浸水され難い。そのため、浸水発生時であっても、蓄電池30から、非常用機器23への電力供給を継続することができる。
【0058】
なお、図14図15で示した船舶1Eは、上記第二実施形態で示した船舶1Bと同様、蓄電池30のみによって、非常用機器23に電力が供給可能となっている。
このように構成することで、非常用機器23への電力の供給のために、上記第一実施形態の船舶1Aのように、非常発電機20を備える必要がなくなる。そのため、浸水によって非常発電機20が影響を受けること自体が生じなくなる。また、非常発電機20や、非常発電機20の燃料タンク、燃料供給パイプ、その補機類等も不要となる。その結果、船体2の機器室101内のスペースの有効利用を図ることが可能となる。
【0059】
(第五実施形態の変形例)
上記第五実施形態で示したように、主機50を組み合わせる構成において、上記第三、第四実施形態のように、主発電機10を備えない構成、複数組の蓄電池30を備える構成とすることも可能である。
【0060】
さらに、主機50によって、主発電機10を駆動することも可能である。
【0061】
(その他の変形例)
この発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、推進器として、スクリュー7を用いたが、スクリュー7以外のものを推進器としてもよい。
例えば、船舶1A~1Eの船種は特定のものに限られず、例えば、湾内や河川等、比較的短距離で運行される船舶や、フェリー、RORO船(Roll-on/Roll-off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)、海洋調査船、作業船等、種々の船種を採用できる。
【符号の説明】
【0062】
1A~1E 船舶
2 船体
2A 船尾部
2b 船底
2s 舷側
3 乾舷甲板
4 船底甲板
5 上部構造
6 上部甲板
7 スクリュー(推進器)
8 スクリュー軸
10 主発電機(発電機)
11 電動機
12 主配電盤
13 一般用機器
20 非常発電機
22 非常配電盤
23 非常用機器
30 蓄電池
32 充放電盤
33 直流機器
34 直流給電盤
35 変換装置
50 主機
101、103、104 機器室(室)
102 機関室(第2の室)
FA 船首尾方向
KL 喫水線
WL 満載喫水線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15