(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】粘着剤及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 133/16 20060101AFI20221115BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20221115BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221115BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221115BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20221115BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C09J133/16
C09J133/04
C09J11/06
C09J7/38
C09J7/26
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2018167815
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2017172408
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-065775(JP,A)
【文献】特開2012-209001(JP,A)
【文献】特開2018-119028(JP,A)
【文献】特開2018-044140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体を含有する粘着剤であって、
前記アクリル共重合体は、
炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有し、炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30~80重量%含有し、更に、炭素数が8以上のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を
25重量%以上含有する
ことを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
アクリル共重合体を含有する粘着剤であって、
前記アクリル共重合体は、炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を
50~80重量%含有し、
前記炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートは、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート及び2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記粘着剤は、更に、シランカップリング剤を含有し、
前記粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率が40重量%以下である
ことを特徴とする粘着剤。
【請求項3】
アクリル共重合体を含有する粘着剤であって、
前記アクリル共重合体は、炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有し、炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30~80重量%含有し、
前記炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートは、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート及び2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記粘着剤は、更に、シランカップリング剤を含有し、
前記粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率が40重量%以下である
ことを特徴とする粘着剤。
【請求項4】
炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートは、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート及び2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項
1記載の粘着剤。
【請求項5】
アクリル共重合体は、更に、炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することを特徴とする請求項
2記載の粘着剤。
【請求項6】
更に、シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項
1又は4記載の粘着剤。
【請求項7】
更に、イソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の粘着剤。
【請求項8】
前記炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、メチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位であることを特徴とする請求項1、3、4、5、6又は7記載の粘着剤。
【請求項9】
基材と、請求項
1、2、3、4、5、6、7又は8記載の粘着剤からなる粘着剤層とを有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項10】
基材は、発泡体シート、又は、エラストマーを含有する層を有するシートであることを特徴とする請求項
9記載の粘着テープ。
【請求項11】
電子機器の部品を固定するために用いられることを特徴とする請求項
9又は10記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤に関する。また、本発明は、該粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器において部品を固定する際、粘着テープが広く用いられている。具体的には、例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために粘着テープが用いられている。このような電子機器部品の固定に用いられる粘着テープは高い粘着性に加え、使用される部位の環境に応じて、耐熱性や熱伝導性、耐衝撃性といった機能が要求されている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-052050号公報
【文献】特開2015-021067号公報
【文献】特開2015-120876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び低コスト化によって、携帯電話、スマートフォン、ウェアラブル端末等の常に身に着けたり、手元に置いたりするタイプの携帯型の電子機器が広く普及している。携帯型の電子機器は、頻繁に使用され、また、タッチパネル等により素手で操作が行われることから、粘着テープには、頻繁に手が触れる部分に用いられていても皮脂によって劣化しない性能が望まれる。
一方、携帯型の電子機器には落下等の衝撃が加わることが想定されるため、粘着テープの性能としては、衝撃が加わった場合であっても剥がれることがなく、かつ、他の部品に強い衝撃が加わらない耐衝撃性も重要である。また、粘着テープは、例えば額縁状等の形状で表示画面の周辺に配置されるようにして用いられることがあり、特に近年では狭幅化が進んでいる。このため、粘着テープには小さい面積でも剥がれないことが望まれるなど、要求される性能の水準が高くなってきている。
しかしながら、従来の粘着剤を用いた粘着テープにおいては、皮脂への耐性に着目しつつ、かつ、耐衝撃性と両立させることについては考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、皮脂への耐性に優れ、耐衝撃性にも優れた粘着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アクリル共重合体を含有する粘着剤であって、前記アクリル共重合体は、炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30~80重量%含有し、更に、炭素数が8以上のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有する粘着剤(「第1の本発明の粘着剤」ともいう)である。
また、本発明は、アクリル共重合体を含有する粘着剤であって、前記アクリル共重合体は、炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30~80重量%含有し、前記粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率が40重量%以下である粘着剤(「第2の本発明の粘着剤」ともいう)である。
以下、本発明を詳述する。
【0007】
粘着剤の皮脂への耐性を向上させるためには、例えば、ガラス転移温度(Tg)を上げたり、ゲル分率を上げたり、粘着剤の主成分となるポリマー(例えば、アクリル共重合体)の分子量を上げたりすることが考えられる。しかしながら、このような粘着剤は、耐衝撃性が低下するという問題があった。即ち、皮脂への耐性と耐衝撃性との両方を向上させることは困難であった。
これに対して、本発明者は、アクリル共重合体を含有する粘着剤において、アクリル共重合体にフッ素含有(メタ)アクリレートを用いることを検討した。その結果本発明者らは、種々のフッ素含有(メタ)アクリレートのなかでも特に、炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートを用いたうえで、更に特定のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を用いることにより、皮脂への耐性と耐衝撃性との両方を向上できることを見出した。また、本発明者らは、上記炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレートを用いたうえで、粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率を特定範囲に調整することによっても、皮脂への耐性と耐衝撃性との両方を向上できることを見出した。これにより、本発明を完成させるに至った。
【0008】
まず、第1の本発明の粘着剤について説明する。第1の本発明の粘着剤は、アクリル共重合体を含有する。上記アクリル共重合体は、炭素数が5以上、フッ素数が3以上のフッ素含有基をエステル末端に有するフッ素含有(メタ)アクリレート(以下、単に「フッ素含有(メタ)アクリレート」ともいう)に由来する構成単位を30~80重量%含有する。
上記アクリル共重合体が上記フッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、フッ素自身の高い撥水撥油性と、フッ素原子の密なパッキングとにより、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのオレイン酸(皮脂の主成分)の浸入が抑えられる。また、上記アクリル共重合体が上記フッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、粘着剤の凝集力が高くなる。これらの結果、粘着剤の皮脂への耐性が向上する。
また、上記アクリル共重合体が上記フッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、フッ素含有基の炭素数が5未満である場合と比べて、粘着剤の耐衝撃性が向上する。この理由としては、フッ素含有基の炭素数が5以上であれば、フッ素含有基の炭素鎖が長くなり、上記アクリル共重合体の分子鎖間の自由空間が大きくなることから、粘着剤に衝撃が加わった場合にも衝撃を緩和しやすいためと推測できる。
【0009】
上記フッ素含有基は、炭素数が5以上、フッ素数が3以上であれば特に限定されず、炭素及びフッ素のみからなるフルオロアルキル基であってもよいし、炭素及びフッ素に加えて別の元素(例えば、酸素)を含んでいてもよい。上記炭素及びフッ素に加えて別の元素を含むフッ素含有基として、例えば、水酸基を含むフッ素含有基、エーテル結合を含むフッ素含有基等が挙げられる。
上記フッ素含有基の炭素数は5以上であればよいが、6以上が好ましく、8以上がより好ましい。
【0010】
上記フッ素含有(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートであってもメタクリレートであってもよいことを意味する。これらのフッ素含有(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート及び2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、これらのアクリレートがより好ましい。特に、ホモポリマーのガラス転移温度が10℃以下であるフッ素含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。上記ホモポリマーのガラス転移温度が10℃以下であるフッ素含有(メタ)アクリレートを用いることで、粘着剤に加わった衝撃を緩和しやすくなり、粘着剤の耐衝撃性が向上する。ホモポリマーのガラス転移温度が10℃以下であるフッ素含有(メタ)アクリレートとしては、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート及び2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレートが挙げられる。皮脂への耐性及び耐衝撃性が特に高いことから、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートが特に好ましい。なお、フッ素含有基の炭素数が5より小さいフッ素含有(メタ)アクリレートのみしか含まない場合は、当該フッ素含有(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度が10℃以下であったとしても、被着体や基材に対する濡れ性に劣り、衝撃が加わった際に界面で剥離が起きることがある。
【0011】
上記アクリル共重合体において、上記フッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の下限は30重量%、上限は80重量%である。上記含有量が30重量%以上であれば、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのオレイン酸の浸入が抑えられるとともに粘着剤の凝集力が高くなり、粘着剤の皮脂への耐性が向上する。また、粘着剤の耐衝撃性が向上する。上記含有量が80重量%以下であれば、粘着剤が固くなり過ぎず、充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は70重量%であり、より好ましい下限は45重量%、より好ましい上限は60重量%である。
【0012】
第1の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体は、更に、炭素数が8以上のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有する。
上記アクリル共重合体が、上記炭素数が8以上のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、上記アクリル共重合体の分子鎖間の自由空間が更に大きくなり、粘着剤の耐衝撃性が向上する。
【0013】
上記炭素数8以上のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートとして、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノルマルノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、ノルマルデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。これらの炭素数8以上のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、ガラス転移温度が低く、被着体に対する密着性が良好な粘着剤となることから、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0014】
上記アクリル共重合体において、上記炭素数が8以上のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は15重量%、好ましい上限は50重量%である。上記含有量が15重量%以上であれば、粘着剤の耐衝撃性がより向上する。上記含有量が50重量%以下であれば、粘着剤の皮脂への耐性が損なわれにくい。上記含有量のより好ましい下限は25重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0015】
第1の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体は、更に、炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が上記炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、粘着剤の極性、被着体に対する密着性及び凝集力がより高くなり、皮脂への耐性がより向上する。
【0016】
上記炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、より充分な粘着力を発揮できることから、メチルアクリレートが好ましい。
【0017】
上記アクリル共重合体において、上記炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は40重量%である。上記含有量が5重量%以上であれば、粘着剤の極性、被着体に対する密着性及び凝集力がより高くなり、皮脂への耐性がより向上する。上記含有量が40重量%以下であれば、粘着剤が固くなり過ぎず、充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0018】
第1の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することにより、架橋剤を併用したときに上記アクリル共重合体の鎖間が架橋される。その際、架橋度を調整することにより、粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率を調整することができる。
【0019】
上記架橋性官能基として、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。なかでも、粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率の調整が容易であることから、水酸基又はカルボキシル基が好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。上記グリシジル基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。上記アミド基を有するモノマーとして、例えば、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。上記ニトリル基を有するモノマーとして、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。これらの架橋性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0020】
上記アクリル共重合体において、上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は10重量%であり、より好ましい下限は2重量%、より好ましい上限は5重量%である。上記含有量が上記範囲内であることで、粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率を調整しやすくなる。
【0021】
第1の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0022】
また、上記アクリル共重合体を紫外線重合法により調製する場合には、上記アクリル共重合体は、更に、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0023】
第1の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限が30万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が30万以上であれば、粘着剤にせん断方向の荷重がかかった際のずれ量が抑制される。また、粘着剤の皮脂への耐性及び耐衝撃性がより向上する。上記アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は40万、更に好ましい下限は50万、特に好ましい下限は60万である。
上記アクリル共重合体の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は200万、より好ましい上限は120万である。
なお、重量平均分子量は、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。
【0024】
第1の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体を合成するには、上記構成単位の由来となるモノマーを重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、合成が簡便であることから、溶液重合が好ましい。
【0025】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0026】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0027】
第1の本発明の粘着剤は、上記アクリル共重合体に加えて、架橋剤を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記架橋剤によって上記アクリル共重合体の鎖間に架橋構造を構築することができる。その際、架橋度を調整することにより、粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率を調整することができる。
【0028】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましい。
第1の本発明の粘着剤において、上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部であり、より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0029】
第1の本発明の粘着剤は、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
上記シランカップリング剤を含有することにより、粘着剤の被着体に対する密着性が向上するため、皮脂への耐性がより向上する。
【0030】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0031】
第1の本発明の粘着剤において、上記シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記シランカップリング剤の含有量が0.1重量部以上であれば、粘着剤の被着体に対する密着性がより向上し、皮脂への耐性がより向上する。上記シランカップリング剤の含有量が5重量部以下であれば、粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープを剥離した際の糊残りを抑えることができ、粘着テープのリワーク性が向上する。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0032】
第1の本発明の粘着剤は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0033】
第1の本発明の粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率は特に限定されないが、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が70重量%である。上記ゲル分率が5重量%以上であれば、粘着剤からなる粘着剤層をオレイン酸に浸漬した際にも粘着剤層が膨潤しにくく、皮脂への耐性がより向上する。上記ゲル分率が70重量%以下であれば、粘着剤の凝集力が適度な範囲となるとともに被着体に対する密着性がより向上し、皮脂への耐性がより向上する。また、粘着剤の耐衝撃性がより向上する。上記ゲル分率のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は50重量%であり、更に好ましい下限は25重量%、更に好ましい上限は40重量%であり、特に好ましい下限は30重量%である。
なお、本明細書における「ゲル分率」とは、下記式(1)のように酢酸エチルに浸漬する前の粘着剤層の重量に対する酢酸エチルに浸漬し、乾燥した後の粘着剤層の重量の割合を百分率で表した値である。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープ試験片の酢酸エチル浸漬前の重量、W2:粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープ試験片の酢酸エチル浸漬、乾燥後の重量)
【0034】
第1の本発明の粘着剤からなる粘着剤層は、60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率(「オレイン酸膨潤率」ともいう)が100重量%以上、130重量%以下であることが好ましい。上記オレイン酸膨潤率のより好ましい上限は120重量%、更に好ましい上限は115重量%である。
なお、本明細書における「オレイン酸膨潤率」とは、下記式(2)のようにオレイン酸に浸漬する前の粘着剤層の重量に対するオレイン酸に浸漬し、乾燥した後の粘着剤層の重量の割合を百分率で表した値である。オレイン酸への粘着剤成分の溶出がある場合、オレイン酸膨潤率は100重量%を下回る。
オレイン酸膨潤率(重量%)=100×(W5-W3)/(W4-W3) (2)
(W3:基材の重量、W4:粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープ試験片のオレイン酸浸漬前の重量、W5:粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープ試験片のオレイン酸浸漬、乾燥後の重量)
【0035】
次いで、第2の本発明の粘着剤について説明する。第2の本発明の粘着剤は、アクリル共重合体を含有する。上記アクリル共重合体は、第1の本発明の粘着剤と同様に、上記フッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30~80重量%含有する。
上記アクリル共重合体が上記フッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、フッ素自身の高い撥水撥油性と、フッ素原子の密なパッキングとにより、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのオレイン酸(皮脂の主成分)の浸入が抑えられる。また、上記アクリル共重合体が上記フッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、粘着剤の凝集力が高くなる。これらの結果、粘着剤の皮脂への耐性が向上する。
また、上記アクリル共重合体が上記フッ素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、フッ素含有基の炭素数が5未満である場合と比べて、粘着剤の耐衝撃性が向上する。この理由としては、フッ素含有基の炭素数が5以上であれば、フッ素含有基の炭素鎖が長くなり、上記アクリル共重合体の分子鎖間の自由空間が大きくなることから、粘着剤に衝撃が加わった場合にも衝撃を緩和しやすいためと推測できる。
【0036】
上記フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、第1の本発明の粘着剤において用いられるものと同様のものを用いることができ、その詳細については第1の本発明の粘着剤において詳述したとおりである。
【0037】
第2の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体は、更に、炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が上記炭素数が2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有することにより、粘着剤の極性、被着体に対する密着性及び凝集力がより高くなり、皮脂への耐性がより向上する。
【0038】
上記炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、第1の本発明の粘着剤において用いられるものと同様のものを用いることができ、その詳細については第1の本発明の粘着剤において詳述したとおりである。
【0039】
第2の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することにより、架橋剤を併用したときに上記アクリル共重合体の鎖間が架橋される。その際、架橋度を調整することにより、粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率を後述するような特定範囲に調整することができる。
【0040】
上記架橋性官能基を有するモノマーとしては、第1の本発明の粘着剤において用いられるものと同様のものを用いることができ、その詳細については第1の本発明の粘着剤において詳述したとおりである。
【0041】
第2の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0042】
また、上記アクリル共重合体を紫外線重合法により調製する場合には、上記アクリル共重合体は、更に、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0043】
第2の本発明の粘着剤において、上記アクリル共重合体の重量平均分子量及び上記アクリル共重合体を合成する方法は特に限定されず、第1の本発明の粘着剤において用いられるものと同様のものを用いることができ、その詳細については第1の本発明の粘着剤において詳述したとおりである。
【0044】
第2の本発明の粘着剤は、上記アクリル共重合体に加えて、架橋剤を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記架橋剤によって上記アクリル共重合体の鎖間に架橋構造を構築することができる。その際、架橋度を調整することにより、粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率を後述するような特定範囲に調整することができる。
【0045】
上記架橋剤としては、第1の本発明の粘着剤において用いられるものと同様のものを用いることができ、その詳細については第1の本発明の粘着剤において詳述したとおりである。
【0046】
第2の本発明の粘着剤は、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
上記シランカップリング剤を含有することにより、粘着剤の被着体に対する密着性が向上するため、皮脂への耐性がより向上する。
【0047】
上記シランカップリング剤としては、第1の本発明の粘着剤において用いられるものと同様のものを用いることができ、その詳細については第1の本発明の粘着剤において詳述したとおりである。
【0048】
第2の本発明の粘着剤は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0049】
第2の本発明の粘着剤からなる粘着剤層のゲル分率は、上限が40重量%である。
上記ゲル分率が40重量%以下であれば、粘着剤に衝撃が加わった場合にも衝撃を緩和しやすくなり、粘着剤の耐衝撃性が向上する。上記ゲル分率の好ましい上限は35重量%、より好ましい上限は30重量%である。
上記ゲル分率の下限は特に限定されないが、好ましい下限は5重量%である。上記ゲル分率が5重量%以上であれば、粘着剤からなる粘着剤層をオレイン酸に浸漬した際にも粘着剤層が膨潤しにくく、皮脂への耐性がより向上する。上記ゲル分率のより好ましい下限は10重量%、更に好ましい下限は20重量%、特に好ましい下限は25重量%である。
【0050】
第2の本発明の粘着剤からなる粘着剤層は、60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率(「オレイン酸膨潤率」ともいう)が100重量%以上、130重量%以下であることが好ましい。上記オレイン酸膨潤率のより好ましい上限は120重量%、更に好ましい上限は115重量%である。
【0051】
基材と、第1又は第2の本発明の粘着剤からなる粘着剤層とを有する粘着テープもまた、本発明の1つである。なお、基材の片面に粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に粘着剤層が形成されていてもよい。
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は50μmである。上記粘着剤層の厚みが5μm以上であれば、粘着テープの粘着力が向上する。上記粘着剤層の厚みが50μm以下であれば、粘着テープの加工性が向上する。
【0052】
上記基材は特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム等が挙げられる。更に、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、発泡体シート、エラストマーを含有する層を有するシート等が挙げられる。なかでも、PETフィルムが好ましい。また、耐衝撃性の観点からは発泡体シート、又は、エラストマーを含有する層を有するシートが好ましい。
また、上記基材として、光透過防止のために黒色印刷された基材、光反射性向上のために白色印刷された基材、金属蒸着された基材等も用いることができる。
【0053】
上記発泡体シートは特に限定されないが、ポリエチレン発泡体シート、ポリプロピレン発泡体シート等のポリオレフィン発泡体シート、又は、ポリウレタン発泡体シートが好ましい。
【0054】
上記エラストマーを含有する層を有するシートは、エラストマーを含有する層を少なくとも1層以上有していれば、更に、他の層を有していてもよい。
上記エラストマーを含有する層を有するシートにおけるエラストマーは特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、アミド系エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なかでも、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマー又はウレタン系エラストマーが好ましく、オレフィン系エラストマーがより好ましい。
【0055】
上記スチレン系エラストマーは、室温でゴム弾性(rubber elasticity)を有するものであれば特に限定されないが、ハードセグメントと呼ばれるポリスチレン層と、ソフトセグメントとのジブロック又はトリブロック構造を有するスチレン系エラストマーがより好ましい。
上記ソフトセグメントとして、例えば、エチレン-ブチレン、エチレン-プロピレン、エチレン-ブタジエン等が挙げられる。
上記スチレン系エラストマーとして、具体的には例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン(SBBS)ブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、水添スチレン-ブチレンゴム(HSBR)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロックコポリマー、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)ブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマー等が挙げられる。なかでも、分子構造の中に2重結合をもたず、熱及び光に比較的安定であることから、SEBS、SEPSがより好ましい。
【0056】
上記オレフィン系エラストマーとして、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、PP、PE)のマトリックスにオレフィン系ゴム(例えば、EPR、EPDM)を微分散させたポリマーアロイ等が挙げられる。また、オレフィン結晶-エチレン-ブチレン-オレフィン結晶(CEBC)ブロックポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-オレフィン結晶(SEBC)ブロックポリマー等が挙げられる。架橋タイプのオレフィン系エラストマーは柔軟性が発現しにくいため、非架橋タイプのオレフィン系エラストマーが好ましい。
【0057】
上記アクリル系エラストマーとして、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)とのブロック共重合体が挙げられる。このようなブロック共重合体は、共重合可能な他の重合性アクリルモノマーが共重合されていてもよい。
【0058】
上記ウレタン系エラストマーには、分子内に部分架橋を有する不完全熱可塑性タイプと、完全に線状の高分子体である完全熱可塑性タイプとの2種類がある。
上記不完全熱可塑性タイプのウレタン系エラストマーは、耐熱性、耐薬品性、機械的強度等に優れている。
上記ウレタン系エラストマーとして、例えば、(1)カプロラクトンを開環して得られたポリラクトンエステルポリオールに、短鎖ポリオールの存在下、ポリソシアネートを付加重合させたカプロラクトン型のエステル系のウレタン系エラストマーが挙げられる。また、(2)アジピン酸とグリコールとのアジピン酸エステルポリオールに、短鎖ポリオールの存在下、ポリソシアネートを付加重合させたアジピン酸型(アジペート型)のエステル系のウレタン系エラストマーが挙げられる。また、(3)テトラヒドロフランの開環重合で得たポリテトラメチレングリコール(PTMG)に、短鎖ポリオールの存在下、ポリソシアネートを付加重合させたPTMG型(エーテル型)のウレタン系エラストマーが挙げられる。
【0059】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は400μmである。上記基材の厚みが50μm以上であれば、粘着テープの耐衝撃性が向上する。上記基材の厚みが400μm以下であれば、電子機器の部品を固定する用途に適した粘着テープとなる。
【0060】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の粘着テープが基材を有する両面粘着テープである場合は以下のような方法が挙げられる。
まず、アクリル共重合体、必要に応じて架橋剤及びシランカップリング剤等に溶剤を加えてアクリル粘着剤aの溶液を作製する。得られたアクリル粘着剤aの溶液を基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層aを形成する。次に、形成された粘着剤層aの上に離型フィルムをその離型処理面が粘着剤層aに対向した状態に重ね合わせる。次いで、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面にアクリル粘着剤bの溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面に粘着剤層bが形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムを粘着剤層aが形成された基材の裏面に、粘着剤層bが基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。そして、上記積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得ることができる。
【0061】
また、同様の要領で積層フィルムを2組作製し、これらの積層フィルムを基材の両面のそれぞれに、積層フィルムの粘着剤層を基材に対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製し、この積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得てもよい。
【0062】
第1及び第2の本発明の粘着剤、並びに、本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、皮脂への耐性に優れているため、人の手が頻繁に触れる電子機器の部品を固定するために特に好ましく用いることができる。また、耐衝撃性に優れているため、落下等の衝撃が加わることが想定される電子機器の部品を固定するために特に好ましく用いることができる。具体的には、スマートフォンやタブレット端末等の携帯電子機器のタッチパネル部分を固定したり、カーナビ等の車載電子機器のディスプレイパネル部分を固定したりするのに第1及び第2の本発明の粘着剤、並びに、本発明の粘着テープを好ましく用いることができる。
また、第1及び第2の本発明の粘着剤、並びに、本発明の粘着テープは、光学用透明粘着剤及び光学用透明粘着テープとしても好ましく用いることができる。このような光学用途として、例えば、偏光板等を製造する際の構成部材の貼り合わせや、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の画像表示装置を製造する際における画像表示装置の表面を保護するための保護板とディスプレイパネルとの貼り合わせ等が挙げられる。更に、タッチパネルのガラス板、ポリカーボネート板又はアクリル板と、ディスプレイパネルとの貼り合わせ等も挙げられる。
【0063】
本発明の粘着テープの形状は特に限定されず、長方形等であってもよいし、シート状であってもよい。上述のようにタッチパネル部分又はディスプレイパネル部分の固定に好適であることから、額縁状が好ましい。本発明の粘着テープは、皮脂への耐性及び耐衝撃性に優れるため、粘着テープの幅が狭くても好ましく用いることができ、粘着テープの幅が5mm以下の場合に特に好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、皮脂への耐性に優れ、耐衝撃性にも優れた粘着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】両面粘着テープの落下衝撃試験を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0067】
(実施例1)
(1)アクリル共重合体の製造
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチル加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入した。続いて、2-エチルヘキシルアクリレート(エステル末端のアルキル基の炭素数=8)47重量部、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(エステル末端のフッ素含有基の炭素数=8、フッ素数=13)50重量部、アクリル酸3重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、固形分30%のアクリル共重合体含有溶液を得た。
【0068】
(2)アクリル共重合体の重量平均分子量測定
得られたアクリル共重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、測定サンプルを調製した。この測定サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、アクリル共重合体のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)を求めた。カラムとしてはGPC LF-804(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0069】
(3)両面粘着テープの製造
得られたアクリル共重合体含有溶液に、アクリル共重合体100重量部に対して架橋剤(イソシアネート系架橋剤、コロネートL-45、東ソー社製)を1.5重量部、シランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製)を3重量部加え、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムに、乾燥後の粘着剤層の厚みが35μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させた。この粘着剤層を、基材となる厚み50μmのコロナ処理したPETフィルムに転着させた。更にPETフィルムのもう一方の面に同様の粘着剤層を転着させ、40℃で48時間養生し、両面粘着テープを得た。
【0070】
(4)ゲル分率の測定
得られた両面粘着テープを20mm×40mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、重量を測定した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:酢酸エチル浸漬前の試験片の重量、W2:酢酸エチル浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0071】
(実施例2~22、比較例1~8)
アクリル共重合体の組成、架橋剤の量、シランカップリング剤の量を表1~3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、両面粘着テープを得た。
【0072】
<評価>
実施例及び比較例で得られた両面粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0073】
(1)180°引きはがし粘着力の測定
得られた両面粘着テープを10mm幅の短冊状に裁断して試験片を作製し、一方の離型フィルムを剥離除去して粘着剤層を露出させた。この試験片をステンレス板に、その粘着剤層がステンレス板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより、試験片とステンレス板とを貼り合わせ、その後、23℃で24時間静置して試験サンプルを作製した。
【0074】
この試験サンプルを60℃、湿度90%のオーブンで100時間加熱し、23℃で24時間静置した後に、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、オレイン酸浸漬前の180°引きはがし粘着力(N/mm)を測定した。なお、180°引きはがし粘着力が機器の測定限界値未満であった場合は0とした。
【0075】
上記試験サンプルをオレイン酸のバスに60℃、湿度90%の条件で100時間浸漬し、取り出した後水で洗浄し、24時間静置した。その後、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、オレイン酸浸漬後の180°引きはがし粘着力(N/mm)を測定した。
オレイン酸浸漬前の180°引きはがし粘着力(N/mm)に対するオレイン酸浸漬後の180°引きはがし粘着力(N/mm)の割合の百分率として、残留粘着力比率を算出した。
(判定基準)
残留粘着力比率が10%未満であった場合を×、10%以上50%未満であった場合を○、50%以上であった場合を◎とした。
【0076】
(2)耐衝撃性の評価(落下衝撃試験)
図1に、実施例及び比較例で得られた両面粘着テープの落下衝撃試験の模式図を示す。得られた両面粘着テープを外径が幅46mm、長さ61mm、内径が幅42mm、長さ57mmに打ち抜き、幅2mmの枠状の試験片を作製した。次いで、
図1(a)に示すように、中央部分に幅38mm、長さ50mmの四角い穴のあいた厚さ2mmのポリカーボネート板43に対して離型フィルムを剥がした試験片41を四角い穴がほぼ中央に位置するように貼り付けた。その後、試験片41の上面から幅55mm、長さ65mm、厚さ1mmのポリカーボネート板42を試験片41がほぼ中央に位置するように貼り付け、試験装置を組み立てた。その後、試験装置の上面に位置するポリカーボネート板側から5kgfの圧力を10秒間加えて上下に位置するポリカーボネート板と試験片とを圧着し、常温で24時間放置した。
【0077】
図1(b)に示すように、作製した試験装置を裏返して支持台に固定し、四角い穴を通過する大きさの300gの重さの鉄球44を四角い穴を通過するように落とした。鉄球を落とす高さを徐々に高くしていき、鉄球の落下により加わった衝撃により試験片とポリカーボネート板が剥がれた時の鉄球を落した高さを計測した。
(判定基準)
測定結果が30cm未満であった場合を×、30cm以上35cm未満であった場合を○、35cm以上であった場合を◎とした。
【0078】
【0079】
【0080】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、皮脂への耐性に優れ、耐衝撃性にも優れた粘着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0082】
41 試験片(枠状)
42 ポリカーボネート板(厚さ1mm)
43 ポリカーボネート板(厚さ2mm)
44 鉄球(300g)