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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】アクリル粘着剤及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20221115BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20221115BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221115BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J133/06
C09J7/38
C09J11/06
B32B27/00 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018167818
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2019048975
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2017172407
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】木村 元美
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-065775(JP,A)
【文献】特開2004-292529(JP,A)
【文献】特開2018-044140(JP,A)
【文献】特開2018-119028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体を含有するアクリル粘着剤であって、
前記アクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位と、炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位とを含有し、
前記アクリル共重合体における前記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量が30~70重量%であり、
前記アクリル共重合体の重量平均分子量が30万~150万であり、
前記アクリル粘着剤は、更に、架橋剤を含有し、
前記架橋剤は、イソシアネート系架橋剤を含み、
前記アクリル粘着剤のゲル分率が5~55重量%である
ことを特徴とするアクリル粘着剤。
【請求項2】
前記架橋剤は、イソシアネート系架橋剤のみからなることを特徴とする請求項1記載のアクリル粘着剤。
【請求項3】
アクリル粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’をX(Pa)、ゲル分率をY(重量%)としたとき、下記式(2-1)を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載のアクリル粘着剤。
Y≦0.0001X+9.84 (2-1)
【請求項4】
アクリル共重合体における炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位の含有量が20~50重量%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のアクリル粘着剤。
【請求項5】
前記アクリル共重合体における炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位の含有量が20~40重量%であることを特徴とする請求項4記載のアクリル粘着剤。
【請求項6】
前記アクリル共重合体は、更に、炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のアクリル粘着剤。
【請求項7】
少なくとも一方の面に請求項1、2、3、4、5又は6記載のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項8】
電子機器の部品を固定するために用いられることを特徴とする請求項記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル粘着剤に関する。また、本発明は、該アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器において部品を固定する際、粘着テープが広く用いられている。具体的には、例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために粘着テープが用いられている。このような電子機器部品の固定に用いられる粘着テープは、例えばアクリル粘着剤を含有する粘着剤層等を有しており、高い粘着性に加え、使用される部位の環境に応じて、耐熱性、熱伝導性、耐衝撃性等の機能が要求されている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-052050号公報
【文献】特開2015-021067号公報
【文献】特開2015-120876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び低コスト化によって、携帯電話、スマートフォン、ウェアラブル端末等の常に身に着けたり、手元に置いたりするタイプの電子機器が広く普及している。このような携帯型の電子機器は、日常的に使用される消毒液、洗浄液、アルコール飲料等に触れる機会が多いことから、粘着テープには、これら消毒液等が電子機器に付着し、仮に粘着テープに付着しても、消毒液等に含まれるアルコールによって劣化しない性能が望まれている。
【0005】
本発明は、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持することができるアクリル粘着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アクリル共重合体を含有するアクリル粘着剤であって、前記アクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位と、炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位とを含有し、前記アクリル共重合体における前記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量が30~70重量%であり、前記アクリル共重合体の重量平均分子量が30万~150万であり、前記アクリル粘着剤は、更に、架橋剤を含有し、前記架橋剤は、イソシアネート系架橋剤を含み、前記アクリル粘着剤のゲル分率が5~55重量%であるアクリル粘着剤である。
以下、本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、アクリル共重合体を含有するアクリル粘着剤について検討した。その結果、本発明者らは、アクリル共重合体にフッ素含有モノマーに由来する構成単位と、炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位とを含有させ、アクリル共重合体の重量平均分子量及びアクリル粘着剤のゲル分率を特定範囲に調整することにより、アクリル粘着剤のアルコール耐性を向上できることを見出した。これにより、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明のアクリル粘着剤は、アクリル共重合体を含有する。
上記アクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位と、炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位とを含有する。上記アクリル共重合体にこれらの構成単位を含有させることにより、アクリル粘着剤のアルコール耐性を高めることができ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等がアクリル粘着剤に付着した場合であってもアクリル粘着剤の粘着力を維持することができる。
【0009】
上記フッ素含有モノマーは特に限定されず、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、アルコール耐性が高いことから、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのフッ素含有モノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートであってもメタクリレートであってもよいこと意味する。上記アクリル共重合体のガラス転移点を下げて粘着力を調整しやすいという観点からは、アクリレートが好ましい。
【0010】
上記アクリル共重合体における上記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量は、下限が30重量%、上限が70重量%である。上記含有量が30重量%以上であれば、フッ素自身の高い撥水撥油性と、フッ素原子の密なパッキングとにより、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのアルコールの浸入が抑えられる。このため、上記アクリル共重合体のアルコールに対する膨潤率が低くなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記含有量が70重量%以下であれば、アクリル粘着剤が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は60重量%であり、より好ましい下限は50重量%である。
【0011】
上記炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーは特に限定されず、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、好適な粘着力を発揮できることから、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はオクチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0012】
上記アクリル共重合体における上記炭素数6以上のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位の含有量は、好ましい下限が20重量%、好ましい上限が50重量%である。上記含有量が20重量%以上であれば、アクリル粘着剤が固くなり過ぎず、剥離力が加わった際に変形することができるため、充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量が50重量%以下であれば、アクリル粘着剤が柔らかくなり過ぎず、充分な凝集力を維持することができ、充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量のより好ましい上限は45重量%である。
【0013】
上記アクリル共重合体は、更に、炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体に炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、ポリマー間の絡み合いが増加して、アクリル粘着剤の密着性及び凝集力が向上する。これにより、アクリル粘着剤が剥離しにくくなり、アルコール耐性が向上する。更に、上記アクリル共重合体に炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、アクリル粘着剤のオレイン酸に対する耐性を高めることもできる。これにより、アクリル粘着剤は、オレイン酸を主成分とする皮脂に対して耐性が高くなり、アルコール耐性に加えて、人の手が頻繁に触れる部分に用いられても剥離しにくくなる性能を両立しやすくなる。
【0014】
上記炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するモノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、アクリル粘着剤が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、充分な粘着力を発揮することができること、また、オレイン酸に対する耐性にも優れることから、エチルアクリレート、メチルアクリレートが好ましい。
【0015】
上記アクリル共重合体における上記炭素数2以下のアルキル基をエステル末端に有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。上記含有量が上記範囲であることにより、上記アクリル共重合体の極性が高くなりすぎることを避けることができ、アクリル粘着剤へのアルコールの浸入が抑えられ、アルコール耐性が向上する。上記含有量のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0016】
上記アクリル共重合体は、更に、極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。
上記アクリル共重合体に極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、アクリル粘着剤の凝集力を高め、粘着力を高めることができる。
【0017】
上記極性官能基は、架橋反応等の反応性を有するものであり、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つが好ましい。なかでも、粘着力の向上に寄与できることから、水酸基又はカルボキシル基がより好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。上記エポキシ基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの極性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0018】
上記アクリル共重合体における上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は5重量%である。上記含有量が上記範囲であることにより、アクリル粘着剤の凝集力をより高めることができる。また、アクリル粘着剤のゲル分率及び膨潤率を調整しやすくなる。
【0019】
上記アクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、酢酸ビニル等に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0020】
上記アクリル共重合体は、重量平均分子量の下限が30万、上限が150万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が30万以上であれば、アクリル粘着剤の凝集力が向上し、アルコール耐性が向上する。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が150万以下であれば、アクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度が高くなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記重量平均分子量の好ましい下限は40万、好ましい上限は120万であり、より好ましい下限は50万、より好ましい上限は110万である。
なお、重量平均分子量は、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。
【0021】
上記アクリル共重合体を合成するには、上記構成単位の由来となるアクリルモノマーを重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、合成が簡便であることから、溶液重合が好ましい。また、特にアクリロニトリルに由来する構成単位の含有量を多くする場合には、エマルジョン重合が好ましい。
【0022】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0023】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0024】
本発明のアクリル粘着剤は、架橋剤を含有することが好ましい。
本発明のアクリル粘着剤に架橋剤を添加することにより、上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の極性官能基を架橋し、架橋構造を構築することができる。これにより、アクリル粘着剤のゲル分率及び膨潤率を調整しやすくなる。
【0025】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、架橋反応後に形成される結合が分極しており、アクリル粘着剤が各種被着体と相互作用しやすく界面接着力が強固になることから、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が20重量部であり、より好ましい下限が0.005重量部、より好ましい上限が10重量部であり、更に好ましい下限が0.01重量部、更に好ましい上限が5重量部である。
【0026】
本発明のアクリル粘着剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
本発明のアクリル粘着剤にシランカップリング剤を添加することにより、アクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度を高めることができる。
【0027】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0028】
上記シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記含有量が0.1重量部以上であれば、アクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度が高くなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記含有量が5重量部以下であれば、アクリル粘着剤を剥離した際の糊残りを抑えることができ、アクリル粘着剤を用いて粘着テープとしたときのリワーク性が向上する。上記含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は4重量部であり、更に好ましい下限は1重量部、更に好ましい上限は3重量部である。
【0029】
本発明のアクリル粘着剤は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0030】
本発明のアクリル粘着剤は、ゲル分率の下限が5重量%、上限が55重量%である。上記ゲル分率が5重量%以上であれば、アクリル粘着剤の凝集力が向上し、アルコール耐性が向上する。上記ゲル分率が55重量%以下であれば、アクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度が高くなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。また、アクリル粘着剤が固くなり過ぎず、剥離力が加わった際に変形することができるため、充分な粘着力を発揮することができる。上記ゲル分率の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は50重量%であり、より好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は40重量%である。
なお、ゲル分率は、例えば、架橋剤の含有量、上記アクリル共重合体への架橋基モノマーの導入量等の変更によって調整できる。
なお、本明細書における「ゲル分率」とは、下記式(1)のように酢酸エチルに浸漬する前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量に対する、酢酸エチルに浸漬し、乾燥した後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量の割合を百分率で表した値である。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (1)
(W:基材の重量、W:酢酸エチル浸漬前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量、W:酢酸エチル浸漬、乾燥後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量)
【0031】
図1に、本発明で規定するアクリル共重合体の重量平均分子量及びアクリル粘着剤のゲル分率の範囲(図1中、網掛け部分)を表したグラフを示す。
本発明で規定するアクリル共重合体の重量平均分子量及びアクリル粘着剤のゲル分率の範囲(図1中、網掛け部分)は、実施例1~22及び比較例1~5、9において測定したアルコールへの浸漬後のアクリル粘着剤の粘着力から導かれたものである。即ち、本発明者らは、アクリル共重合体の重量平均分子量及びアクリル粘着剤のゲル分率が特定範囲内(図1中、網掛け部分)にあるアクリル粘着剤(実施例1~22)であれば、アルコールへの浸漬後の粘着力が充分に高くなることを見出した(0.2N/mm以上)。なお、図1においては、アルコールへの浸漬後の粘着力が0.4N/mm以上であったアクリル粘着剤を菱形、0.3N/mm以上、0.4N/mm未満であったアクリル粘着剤を四角、0.2N/mm以上、0.3N/mm未満であったアクリル粘着剤を三角、0.2N/mm未満であったアクリル粘着剤を×印でプロットしている。
より詳細には、上記アクリル粘着剤のゲル分率の範囲は、上記アクリル共重合体の重量平均分子量の範囲に応じてそれぞれ好適な範囲がある。
上記アクリル共重合体の重量平均分子量が30万以上55万以下である場合は、上記ゲル分率の好ましい下限は30%、より好ましい下限は40%である。このように分子量が比較的小さい場合は、ゲル分率を比較的高い範囲に調整することで、凝集破壊に要するエネルギーを大きくすることができ、アルコールへの浸漬後の粘着力を高めることができる。
上記アクリル共重合体の重量平均分子量が110万以上150万以下である場合は、上記ゲル分率の好ましい上限は30%、より好ましい上限は20%である。このように分子量が比較的大きい場合は、ゲル分率を比較的低い範囲に調整することで、界面で剥離してしまうことを防止することができ、アルコールへの浸漬後の粘着力を高めることができる。
【0032】
本発明のアクリル粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率G’の好ましい下限が5.0×10Pa、好ましい上限が1.0×10である。上記23℃における貯蔵弾性率G’が5.0×10Pa以上であれば、アクリル粘着剤は、剥離力が加わった際の抵抗力が向上し、充分な粘着力を発揮することができる。上記23℃における貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以下であれば、アクリル粘着剤が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、充分な粘着力を発揮することができる。上記23℃における貯蔵弾性率G’のより好ましい下限は1.0×10Pa、より好ましい上限は6.0×10Paである。
なお、23℃における貯蔵弾性率G’は、例えば、アクリル粘着剤を折り重ねて厚さ1mmのシート状のサンプルを作製し、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御社製のDVA-200)を用いて、上記サンプルを周波数10Hz、昇温速度5℃/分にて測定することで得られる。
【0033】
本発明のアクリル粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率G’をX(Pa)、ゲル分率をY(重量%)としたとき、下記式(2-1)を満たすことが好ましい。
Y≦0.0001X+9.84 (2-1)
上記式(2-1)を満たすことにより、アクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度が高くなり、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。
なお、本発明者らは、上記式(2-1)を満たさない場合にはアクリル粘着剤の剥離モードが変化し、剥離力が加わった際には界面剥離することを見出した。一方、上記式(2-1)を満たす場合にはアクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度が高くなり、剥離力が加わった際のアクリル粘着剤の剥離モードは凝集破壊となる。上記式(2-1)を満たし剥離モードが凝集破壊になることで、界面剥離を防いで、アクリル粘着剤のバルクの凝集力を発揮させることができ、ピール値(引きはがし粘着力)を高めることができる。
なお、アクリル粘着剤の剥離モードは、例えば、ピール試験後の被着体を目視で観察し、糊残りの有無を確認することにより判断することができる。より具体的には、目視で確認できるレベルの糊残りがある場合を凝集破壊と判断することができる。
【0034】
本発明のアクリル粘着剤は、下記式(2-2)を満たすことがより好ましい。
Y≦0.0001X+2.90 (2-2)
【0035】
図2に、本発明における式(2-1)(図2中、実線)を表したグラフを示す。
本発明における式(2-1)(図2中、実線)は、実施例1~22において測定したアルコールへの浸漬後のアクリル粘着剤の粘着力から導かれたものである。即ち、本発明者らは、23℃における貯蔵弾性率G’(X(Pa))及びゲル分率(Y(重量%))が特定の関係(式(2-1))を満たすアクリル粘着剤であれば、アルコールへの浸漬後の粘着力が更に高くなることを見出した。この場合、剥離力が加わった際のアクリル粘着剤の剥離モードは凝集破壊となる。なお、図2においては、アルコールへの浸漬後の粘着力が0.4N/mm以上であったアクリル粘着剤を菱形、0.3N/mm以上、0.4N/mm未満であったアクリル粘着剤を四角、0.2N/mm以上、0.3N/mm未満であったアクリル粘着剤を三角でプロットしている。
なお、上述のような式(2-1)、(2-2)を満たすためには、アクリル共重合体に用いるモノマーの種類の選択や量の増減によって調整することができる。より詳しくは、ホモポリマーのガラス転移点が相対的に高いモノマーを使用して貯蔵弾性率G’を高めたり、架橋性官能基の量を増加させることでグル分率を高めたりして調整することができる。
【0036】
本発明のアクリル粘着剤は、60℃、湿度90%の条件でエタノール75重量%と水25重量%との混合液に24時間浸漬した後の膨潤率が100重量%以上、150重量%以下であることが好ましい。上記膨潤率が100重量%以上であれば、上記混合液への粘着剤成分の溶出がないことを意味しており、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記膨潤率が150重量%以下であれば、アクリル粘着剤のアルコール耐性が向上する。上記膨潤率のより好ましい上限は140重量%であり、更に好ましい上限は130重量%である。
なお、本明細書における「膨潤率」とは、下記式(3)により表される値である。即ち、「膨潤率」とは、エタノール75重量%と水25重量%との混合液に浸漬する前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量に対する、エタノール75重量%と水25重量%との混合液に浸漬し、乾燥した後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量の割合を百分率で表した値である。混合液への粘着剤成分の溶出がある場合、膨潤率は100重量%を下回る。
膨潤率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (3)
(W:基材の重量、W:エタノール75重量%と水25重量%との混合液浸漬前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量、W:エタノール75重量%と水25重量%との混合液浸漬、乾燥後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量)
【0037】
少なくとも一方の面に本発明のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープもまた、本発明の1つである。
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。上記粘着剤層の厚みが5μm以上であれば、粘着テープの粘着力が向上する。上記粘着剤層の厚みが100μm以下であれば、粘着テープの加工性が向上する。
【0038】
本発明の粘着テープは、少なくとも一方の面に上記粘着剤層を有していれば、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の片面に上記粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に上記粘着剤層が形成されていてもよい。
【0039】
上記基材は特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルムが挙げられる。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエチレン発泡体シート、ポリプロピレン発泡体シート等のポリオレフィン発泡体シート、ポリウレタン発泡体シート等が挙げられる。なかでも、PETフィルムが好ましい。また、耐衝撃性の観点からはポリオレフィン発泡体シートが好ましい。
また、上記基材として、光透過防止のために黒色印刷された基材、光反射性向上のために白色印刷された基材、金属蒸着された基材等も用いることができる。
【0040】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の粘着テープが基材を有する両面粘着テープである場合は以下のような方法が挙げられる。
まず、アクリル共重合体及び必要に応じて添加剤等に溶剤を加えてアクリル粘着剤aの溶液を作製して、このアクリル粘着剤aの溶液を基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層aを形成する。次に、形成された粘着剤層aの上に離型フィルムをその離型処理面が粘着剤層aに対向した状態に重ね合わせる。
次いで、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面にアクリル粘着剤bの溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面に粘着剤層bが形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムを粘着剤層aが形成された基材の裏面に、粘着剤層bが基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。そして、上記積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得ることができる。
【0041】
また、同様の要領で積層フィルムを2組作製し、これらの積層フィルムを基材の両面のそれぞれに、積層フィルムの粘着剤層を基材に対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製し、この積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得てもよい。
【0042】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、アルコール耐性に優れているため、日常的に使用される消毒液、洗浄液、アルコール飲料等に触れる機会が多い電子機器の部品を固定するために特に好ましく用いることができる。具体的には、スマートフォンやタブレット端末等の携帯電子機器のタッチパネル部分を固定したり、カーナビ等の車載電子機器のディスプレイパネル部分を固定したりするのに本発明の粘着テープを好ましく用いることができる。
【0043】
本発明の粘着テープの形状は特に限定されず、長方形等であってもよいが、上述のようにタッチパネル部分又はディスプレイパネル部分の固定に好適であることから、額縁状が好ましい。また、本発明の粘着テープは、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持できるため、粘着テープの幅が狭くても好ましく用いることができ、粘着テープの幅が5mm以下の場合に特に好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持することができるアクリル粘着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明で規定するアクリル共重合体の重量平均分子量及びアクリル粘着剤のゲル分率の範囲(図1中、網掛け部分)を表したグラフを示す。
図2】本発明における式(2-1)(図2中、実線)を表したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0047】
(実施例1)
(1)アクリル共重合体の製造
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入した。続いて、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13F)50重量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)28重量部、メチルアクリレート(MA)19重量部、アクリル酸(AAc)3重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、アクリル共重合体含有溶液を得た。
【0048】
(2)アクリル共重合体の分子量測定
得られたアクリル共重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、測定サンプルを調製した。この測定サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1mL/分、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、アクリル共重合体のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)を求めた。カラムとしてはGPC LF-804(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0049】
(3)粘着テープの製造
得られたアクリル共重合体含有溶液に、アクリル共重合体100重量部に対して、架橋剤としてコロネートL(日本ポリウレタン工業社製)を5重量部(固体成分比率)加え、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルム上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが35μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させて粘着剤層を形成させた。この粘着剤層を、基材となる厚み50μmのコロナ処理したPETフィルムに転着させ、40℃で48時間養生し、両面粘着テープを得た。
【0050】
(4)ゲル分率の測定
得られた両面粘着テープを20mm×40mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、重量を測定した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (1)
(W:基材の重量、W:酢酸エチル浸漬前の試験片の重量、W:酢酸エチル浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0051】
(5)23℃における貯蔵弾性率G’の測定
得られた両面粘着テープと同じ組成の粘着剤を折り重ねて厚さ1mmのシート状のサンプルを作製し、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製のDVA-200)を用いて、上記サンプルを周波数10Hz、昇温速度5℃/分にて測定することにより23℃における貯蔵弾性率G’を得た。
得られた23℃における貯蔵弾性率G’をX(Pa)、上記で得られたゲル分率をY(重量%)としたとき、下記式(2-1)を満たすか否かを判定した。
Y≦0.0001X+9.84 (2-1)
【0052】
(実施例2~22、比較例1~9)
重合条件並びに使用するモノマー及び添加剤の種類及び量を、表1~3に記載のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、両面粘着テープを得た。なお、表1~3中のCHMAとはシクロヘキシルメタクリレートであり、INAとはイソノニルアクリレートであり、BAとはブチルアクリレートである。
【0053】
<評価>
実施例及び比較例で得られた両面粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表1~3に示した。
(1)180°引きはがし粘着力(180°ピール試験)
得られた両面粘着テープを5mm幅の短冊状に裁断して試験片を作製し、片面の離型フィルムを剥離除去して粘着剤層を露出させた。この試験片をステンレス板に、その粘着剤層がステンレス板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより、試験片とステンレス板とを貼り合わせ、その後、23℃で24時間静置して試験サンプルを作製した。
JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°引きはがし粘着力(N/mm)(エタノール/水溶液浸漬前)を測定した。なお、180°引きはがし粘着力が機器の測定限界値未満であった場合は0とした。
その後、試験サンプルをエタノール75重量%と水25重量%との混合液(アルコール)のバスに60℃、湿度90%の条件で24時間浸漬し、取り出した後、付着した液体を軽くふき取り、24時間静置した。その後、180°引きはがし粘着力(N/mm)(エタノール/水溶液浸漬前)と同様にして180°引きはがし粘着力(N/mm)を測定した。アルコールへの浸漬後の粘着力が0.4N/mm以上であった場合を◎、0.3N/mm以上、0.4N/mm未満であった場合を〇、0.2N/mm以上、0.3N/mm未満であった場合を△、0.2N/mm未満であった場合を×とした。
また、混合液(アルコール)のバスに浸漬した前後での残留粘着比率(混合液浸漬後の180°引きはがし粘着力/混合液浸漬前の180°引きはがし粘着力)を算出した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、アルコール耐性に優れ、消毒液、洗浄液、アルコール飲料等が付着した場合であっても粘着力を維持することができるアクリル粘着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することができる。
図1
図2