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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】不燃性バックアップ材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20221115BHJP
   E06B 3/54 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/54 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018178042
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020051030
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501130475
【氏名又は名称】竜田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】木原 規浩
(72)【発明者】
【氏名】福原 一人
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 太一
(72)【発明者】
【氏名】立石 萌
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-170383(JP,A)
【文献】特開2013-234410(JP,A)
【文献】特許第5634637(JP,B1)
【文献】特開2017-025458(JP,A)
【文献】特開2016-141598(JP,A)
【文献】特開2007-197264(JP,A)
【文献】アルカリアースシリケートウールの開発,ニチアス技術時報,2016年3号 No.374,日本,ニチアス株式会社,2016年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54- 3/64
E06B 5/16
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス戸のサッシの内周溝に装填される不燃性バックアップ材であって、
ポリエステル不織布層と、ガラス繊維及びアルカリアースシリケートウールを含む無機繊維層とが少なくとも1層ずつ積層されてフェルト化されたものであり、
前記不燃性バックアップ材全体に繊維間結合材が含浸されているものであり、かつ、
前記無機繊維層が、前記ガラス繊維と前記アルカリアースシリケートウールの含有量の合計を100質量%としたときに、
前記ガラス繊維が80質量%以上98質量%以下、及び
前記アルカリアースシリケートウールが2質量%以上20質量%以下、
の比率で配合されたものであることを特徴とする不燃性バックアップ材。
【請求項2】
前記ポリエステル不織布層が1層と、前記無機繊維層が1層とが積層されてフェルト化されたものであることを特徴とする請求項1に記載の不燃性バックアップ材。
【請求項3】
前記繊維間結合材が澱粉であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の不燃性バックアップ材。
【請求項4】
前記アルカリアースシリケートウールが、SiO、MgO、及びCaOの3成分を主成分とし、かつ以下の組成を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の不燃性バックアップ材。
SiO:73.6質量%~85.9質量%
MgO:9.0質量%~15.0質量%
CaO:5.1質量%~12.4質量%
Al:0質量%以上2.3質量%未満
Fe:0質量%~0.50質量%
SrO:0.1質量%未満
【請求項5】
前記アルカリアースシリケートウールの平均繊維径が、3~5μmであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の不燃性バックアップ材。
【請求項6】
前記ガラス繊維がEガラスからなるものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の不燃性バックアップ材。
【請求項7】
前記ガラス繊維の平均繊維径が、6~13μmであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の不燃性バックアップ材。
【請求項8】
(1)ポリエステル不織布層に、ガラス繊維及びアルカリアースシリケートウールを含む無機繊維層を積層した後、ニードルパンチによって前記ポリエステル不織布層と前記無機繊維層を接合してフェルト化したマットを作製する工程、
(2)前記マットを、繊維間結合材を含む溶液に浸漬し、前記繊維間結合材を前記マット全体に含浸させる工程、
(3)前記繊維間結合材が含浸した前記マットを熱プレス成型する工程、及び
(4)熱プレス成型した前記マットを加熱乾燥させる工程、
を含み、かつ、
前記無機繊維層を、前記ガラス繊維と前記アルカリアースシリケートウールの含有量の合計を100質量%としたときに、
前記ガラス繊維が80質量%以上98質量%以下、及び
前記アルカリアースシリケートウールが2質量%以上20質量%以下、
の比率で配合されたものとすることを特徴とする不燃性バックアップ材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性バックアップ材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル用の防火ガラス戸には、そのガラスを火災時においても窓枠内に保持できるように、サッシに不燃性のバックアップ材の使用が義務付けられている。このようなバックアップ材としては、現在、有機系の発砲樹脂を用いたものが主流であるが、近年は、火災時により高い保持力を発揮する無機系の不燃性バックアップ材が求められるようになっている。
【0003】
無機繊維を主成分とするバックアップ材としては、例えば、特許文献1に、ガラス繊維を主体する防火ガラス戸用不燃性バックアップ材が開示されている。このバックアップ材は、ガラス繊維を主成分とする無機繊維ニードルマットに、繊維間結合材として水溶性アクリル樹脂を含浸させたものである。しかし、このような不燃性バックアップ材のもつ耐熱性は十分なものではない。さらに、バックアップ材を工場にて切削加工する際に、飛散した粉末を吸引した場合の人体への悪影響が考えられる。
【0004】
無機繊維を主成分とする不燃性バックアップ材としては、ガラス繊維よりも高い耐熱性を有するリフラクトリーセラミックファイバー(RCF)を配合したものが知られている。このような不燃性バックアップ材は、それゆえに特許文献1のバックアップ材よりも高い耐熱性が得られる。しかし、RCFは、特定化学物質障害予防規則の対象物質に指定されたため、公定の防塵マスクの着用や、公定の局所排気装置の設置等が義務化する等、その使用に際して多くの規制が行われるようになった。このため、RCFを配合した場合と同等以上の性能を有し、かつ、上記のような法規制の影響を受けない不燃性バックアップ材が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-170383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、RCFを用いた場合と同等以上の性能を有するものでありながら、その一方でRCFのように特定化学物質障害予防規則の制限を受けず、さらに、人体への悪影響を低減するために、切削加工時に繊維の飛散を抑制できる不燃性バックアップ材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明では、ガラス戸のサッシの内周溝に装填される不燃性バックアップ材であって、ポリエステル不織布層と、ガラス繊維及びアルカリアースシリケートウールを含む無機繊維層とが少なくとも1層ずつ積層されてフェルト化されたものであり、前記不燃性バックアップ材全体に繊維間結合材が含浸されているものである不燃性バックアップ材を提供する。
【0008】
このような不燃性バックアップ材であれば、RCFを用いた場合と同等以上の性能、具体的には高い不燃性、高い弾力性、十分な圧縮後の復元性、及び適度の圧縮強度を有するものでありながら、その一方でRCFのように特定化学物質障害予防規則の制限を受けず、さらに、人体への悪影響を低減するために、切削加工時に繊維の飛散を抑制できる不燃性バックアップ材とすることができる。
【0009】
また、前記ポリエステル不織布層が1層と、前記無機繊維層が1層とが積層されてフェルト化されたものであることが好ましい。
【0010】
このようなものであれば、不燃性バックアップ材としての性能を十分に発揮するものとなり、かつ、容易に製造できるものとなる。
【0011】
また、前記無機繊維層が、前記ガラス繊維と前記アルカリアースシリケートウールの含有量の合計を100質量%としたときに、
前記ガラス繊維が30質量%以上98質量%以下、及び
前記アルカリアースシリケートウールが2質量%以上70質量%以下、
の比率で配合されたものであることが好ましい。
【0012】
このような無機繊維層であれば、耐熱性、弾力性、圧縮復元性、及び圧縮強度等の物性を十分に兼ね備えた不燃性バックアップ材とすることができる。
【0013】
また、前記繊維間結合材が澱粉であることが好ましい。
【0014】
このような繊維間結合材であれば、工場で不燃性バックアップ材を切削加工した場合に飛散する粉末が、人体への悪影響のより少ないものとなる。
【0015】
また、前記アルカリアースシリケートウールが、SiO、MgO、及びCaOの3成分を主成分とし、かつ以下の組成を有するものであることが好ましい。
SiO:73.6質量%~85.9質量%
MgO:9.0質量%~15.0質量%
CaO:5.1質量%~12.4質量%
Al:0質量%以上2.3質量%未満
Fe:0質量%~0.50質量%
SrO:0.1質量%未満
【0016】
このようなアルカリアースシリケートウールは、生体溶解性、耐熱性、及び耐アルミナ反応性に優れたものであるので、本発明の不燃性バックアップ材にも好適に用いることができる。
【0017】
また、前記アルカリアースシリケートウールの平均繊維径が、3~5μmであることが好ましい。
【0018】
このような平均繊維径であれば、繊維径が小さいために、繊維間の交点(接点)の数が多くなり、したがって、含浸させる繊維間結合材が少なくても所要の物理的特性を得ることができる。
【0019】
また、前記ガラス繊維がEガラスからなるものであることが好ましい。
【0020】
このようなガラス繊維であれば、耐熱性に優れるだけでなく、安価であるため入手しやすい。
【0021】
また、前記ガラス繊維の平均繊維径が、6~13μmであることが好ましい。
【0022】
このような平均繊維径であれば、繊維径がある程度小さいために、繊維間の交点(接点)の数が多くなり、したがって、含浸させる繊維間結合材が少なくても所要の物理的特性を得ることができると同時に、一定の太さをもつために反発力を発揮し、本発明の不燃性バックアップ材により適した圧縮復元性を付与することができる。
【0023】
また、本発明では、
(1)ポリエステル不織布層に、ガラス繊維及びアルカリアースシリケートウールを含む無機繊維層を積層した後、ニードルパンチによって前記ポリエステル不織布層と前記無機繊維層を接合してフェルト化したマットを作製する工程、
(2)前記マットを、繊維間結合材を含む溶液に浸漬し、前記繊維間結合材を前記マット全体に含浸させる工程、
(3)前記繊維間結合材が含浸した前記マットを熱プレス成型する工程、及び
(4)熱プレス成型した前記マットを加熱乾燥させる工程、
を含む不燃性バックアップ材の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の不燃性バックアップ材は、このような方法で製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の不燃性バックアップ材であれば、RCFを用いた場合と同等以上の耐熱性を有し、かつ、特定化学物質障害予防規則の制限を受けない不燃性バックアップ材とすることができる。また、繊維間結合材をバックアップ材全体に含侵させることで、工場にて切削加工する際に繊維の飛散がなくなり、さらに、繊維間結合材をより生分解性の高い材料や、生体への悪影響の少ない材料とすることで、飛散した粉末を吸引した場合の人体への悪影響の少ない不燃性バックアップ材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の不燃性バックアップ材の態様の一例(2層構造)を示す模式図である。
図2】本発明の不燃性バックアップ材の別の態様の一例(交互に積層された複数層構造)を示す模式図である。
図3】本発明の不燃性バックアップ材の他の態様の一例(無機繊維層が連続して積層された複数層構造)を示す模式図である。
図4】本発明の不燃性バックアップ材が使用される態様の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述のように、RCFを用いた場合と同等以上の性能、具体的には高い不燃性、高い弾力性、十分な圧縮後の復元性、及び適度の圧縮強度等を有するものでありながら、その一方でRCFのように特定化学物質障害予防規則の制限を受けず、さらに、人体への悪影響を低減するために、切削加工時に繊維の飛散を抑制できる不燃性バックアップ材の開発が求められていた。
【0028】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、RCFをアルカリアースシリケートウール(AES)に代替することによって、RCFを用いた場合と同等以上の耐熱性を有し、かつ、特化則の規制を受けない不燃性バックアップ材を作製できること、及び不燃性バックアップ材の表面だけではなく全体に繊維間結合材を含浸させることによって繊維の飛散を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
即ち、本発明は、ガラス戸のサッシの内周溝に装填される不燃性バックアップ材であって、ポリエステル不織布層と、ガラス繊維及びアルカリアースシリケートウールを含む無機繊維層とが少なくとも1層ずつ積層されてフェルト化されたものであり、前記不燃性バックアップ材全体に繊維間結合材が含浸されているものである不燃性バックアップ材である。
【0030】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[不燃性バックアップ材]
図1に示すように、本発明の不燃性バックアップ材1は、例えば、無機繊維層2とポリエステル不織布層3とが一層ずつ積層されてフェルト化された2層構造を有し、バックアップ材1の全体に繊維間結合材(不図示)が含浸されたものである。他にも、1層の無機繊維層を、両側からポリエステル不織布層ではさんでフェルト化した構造のものとしてもよい。これら以外にも、本発明の不燃性バックアップ材1は、例えば、図2のように、複数の無機繊維層2及びポリエステル不織布層3が交互に積層されてフェルト化したものとすることもできるし、図3のように、無機繊維層2が複数層にわたって連続して積層され、これがポリエステル不織布層3と積層されてフェルト化した構造を含むものとすることもできる。
【0032】
無機繊維層2の一層あたりの厚さは特に限定はされないが、例えば、1mm~20mmとすることができ、より好ましくは2mm~15mmであり、さらに好ましくは3mm~12mmである。ポリエステル不織布層の一層あたりの厚さは特に限定はされないが、例えば、0.05mm~2mmとすることができ、より好ましくは0.1mm~0.5mmである。
【0033】
本発明の不燃性バックアップ材には、不燃性バックアップ材全体に繊維間結合材が含浸されており、これによって弾力性や復元性に富む性質が付与されるため、下記のように、ガラス戸を保持するための部材として好適に用いられる。特に、大型の窓枠に合わせて加工した際に、良好な施工性を有するための剛性(高い曲げ強度)を付与することができる。さらに、工場での切削加工時における繊維の飛散を防止することができる。
【0034】
上記のような本発明の不燃性バックアップ材1は、図4に示すように、ガラス戸(特に、防火ガラス戸)のサッシの内周溝4に装填され、シーリング材5とともに、セッティングブロック6を介してサッシに取り付けられた板ガラス7(窓ガラスのことであり、例えば、網入り板ガラス、耐熱板ガラスである)を保持する。
【0035】
火災が起こった場合、仮にシーリング材5が焼失したとしても、本発明の不燃性バックアップ材1は耐熱性が高く、それゆえ焼失せずに残り、ガラス戸を保持し続けるとともに炎が内周溝を通過するのを防止する効果を有する。
【0036】
[無機繊維層]
本発明の不燃性バックアップ材の無機繊維層は、ガラス繊維及びアルカリアースシリケートウールを含むものである。
【0037】
無機繊維層は、ガラス繊維とアルカリアースシリケートウール(AES)の含有量の合計を100質量%としたときに、ガラス繊維が30質量%以上98質量%以下、及びアルカリアースシリケートウールが2質量%以上70質量%以下、の比率で配合されたものであることが好ましいが、より好ましくはガラス繊維が80質量%以上98質量%以下、及びアルカリアースシリケートウールが2質量%以上20質量%以下、の比率、さらに好ましくはガラス繊維が90質量%以上95質量%以下、及びアルカリアースシリケートウールが5質量%以上10質量%以下の比率である。ガラス繊維が30質量%以上であれば、十分な圧縮復元性を有するものとなる。AESが2質量%以上であれば、良好な耐熱性を有するものとなる。
【0038】
このような無機繊維層であれば、耐熱性、弾力性、圧縮復元性、及び圧縮強度等の物性を十分に兼ね備えた不燃性バックアップ材とすることができる。
【0039】
<アルカリアースシリケートウール(AES)>
無機繊維層は、耐熱性の高い、アルカリアースシリケートウール(以下、AES)を含むものである。既存の不燃性バックアップ材のようにRCFを用いた場合には、作業者の健康への悪影響、特に呼吸器の疾病が懸念され、既存設備への局所排気装置の設置等、企業側への負担が大きくなる。これに対し、AESを用いることでこれらの健康への悪影響が軽減される。特に、AESは、RCFとは異なり、特定化学物質障害予防規則の規制を受けないため、本発明の不燃性バックアップ材に必須に用いられる。
【0040】
AESとしては特に限定されず、AESであれば、いかなるものであっても用いることができるが、例えば、特許第5634637号に開示されたものが好ましい。
【0041】
そのようなAESとしては、例えば、SiO、MgO、及びCaOの3成分を主成分とし、かつ以下の組成を有するものであることが好ましい。
SiO:73.6質量%~85.9質量%
MgO:9.0質量%~15.0質量%
CaO:5.1質量%~12.4質量%
Al:0質量%以上2.3質量%未満
Fe:0質量%~0.50質量%
SrO:0.1質量%未満
【0042】
このようなAESは、生体溶解性、耐熱性、及び耐アルミナ反応性に優れたものであるので、本発明の不燃性バックアップ材にも好適に用いることができる。
【0043】
また、アルカリアースシリケートウールの平均繊維径が、3~5μmであることが好ましく、より好ましくは4μmである。
【0044】
このような平均繊維径であれば、繊維径が小さいために、繊維間の交点(接点)の数が多くなり、したがって、含浸させる繊維間結合材が少なくても所要の物理的特性を得ることができる。
【0045】
なお、アルカリアースシリケートウールの平均繊維径の測定方法としては、特に限定されないが、例えば、試料(AES)を加圧粉砕してふるいを通過させた後、電子顕微鏡用試料台上に貼った両面テープに上記試料を均一に付着させることによって試験体を作製し、該試験体を電子顕微鏡観察することによって平均繊維径を求める方法が挙げられる。この方法以外にも、JIS R 3420に記載されているA法(ガラスとは異なる屈折率をもつ媒体中に置いたフィラメントを顕微鏡で輪郭観察し、直径を測定する)、又はB法(樹脂を含浸させて硬化させたストランドの横断面を顕微鏡で観察し、ストランド中のフィラメントの直径を測定する)を用いてもよい。
【0046】
また、アルカリアースシリケートウールの繊維長については特に限定はされないが、20~600mmが好ましく、30~400mmがより好ましく、50~200mmがさらに好ましい。20mm以上であれば、火災時においてもより確実に保持力を保つことができる。600mm以下であれば、製造時の取り扱い性により優れたものとなる。
【0047】
<ガラス繊維>
ガラス繊維としては特に限定はされないが、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Dガラスとすることができる。その中でも特に、耐熱性や、価格等の観点からEガラスとすることが好ましい。
【0048】
また、ガラス繊維の平均繊維径が、6~13μmであることが好ましく、より好ましくは8~11μm、さらに好ましくは9~10μmである。
【0049】
このような平均繊維径であれば、繊維径がある程度小さいために、繊維間の交点(接点)の数が多くなり、したがって、含浸させる繊維間結合材が少なくても所要の物理的特性を得ることができると同時に、一定の太さをもつために反発力を発揮し、本発明の不燃性バックアップ材により適した圧縮復元性を付与することができる。
【0050】
なお、ガラス繊維の平均繊維径の測定方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS R 3420に記載されているA法(ガラスとは異なる屈折率をもつ媒体中に置いたフィラメントを顕微鏡で輪郭観察し、直径を測定する)、又はB法(樹脂を含浸させて硬化させたストランドの横断面を顕微鏡で観察し、ストランド中のフィラメントの直径を測定する)が挙げられる。
【0051】
また、ガラス繊維の繊維長については特に限定はされないが、20~600mmが好ましく、30~400mmがより好ましく、50~200mmがさらに好ましい。20mm以上であれば、火災時においてもより確実に保持力を保つことができる。600mm以下であれば、製造時の取り扱い性により優れたものとなる。
【0052】
<その他の繊維>
また、本発明の不燃性バックアップ材の無機繊維層には、AESとガラス繊維に加えて、その他の繊維も配合することができる。その他の繊維としては特に限定はされない。その他の繊維が無機繊維の場合には、例えば、セラミック繊維、ロックウール、シリカ繊維、スラグウール等が挙げられる。その他の繊維が有機繊維の場合には、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、PVA繊維、ポリアクリル繊維、レーヨン繊維、綿花等が挙げられる。その他の繊維が熱融着性繊維の場合には、例えば、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、低融点ポリエステル繊維等が挙げられる。これらは一種類単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0053】
[ポリエステル不織布層]
ポリエステル不織布層は、無機繊維層を保持するための、いわゆる保持材として用いられるものである。ポリエステル不織布としては特に限定はされず、種々のポリエステル不織布が用いられるが、例えば、ポリエステルスパンボンド不織布(東洋紡(株)製、商品名「ボランス」、「エクーレ」、「ハイム」)等を用いることができる。
【0054】
[繊維間結合材]
繊維間結合材としては、特に限定されず、種々の樹脂成分を用いることができるが、工場での切削加工時に飛散した粉末を吸引した場合の人体への悪影響が少ないものであることが好ましい。そのような樹脂成分としては、例えば澱粉が挙げられる。澱粉としては特に限定はされないが、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、ばれいしょ澱粉、かんしょ澱粉、タピオカ澱粉、マイロスターチ、サゴ澱粉、葛澱粉、わらび澱粉、蓮根澱粉、又は緑豆澱粉等が挙げられる。これらは一種類単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。中でも特に、高い生分解性を有すること、及び安価であることから、コーンスターチとすることが好ましい。
【0055】
澱粉以外の樹脂成分であっても、生分解性を有するもの(生分解性樹脂)であれば本発明の不燃性バックアップ材には好適に用いられ、そのような生分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート等の脂肪族ポリエステル、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース及びこれらを変性させたポリマー等が挙げられる。
【0056】
また、繊維間結合材としては、上記のような樹脂成分以外にも、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスジエン樹脂、BTレジン、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ふっ素樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルベンゼン樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、クロマン・インデン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリヒドロキシオレフィン樹脂、ポリサルフォン樹脂、石油樹脂等の熱可塑性樹脂、天然ゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体ゴム、ブチルゴム、ポリサルファイドゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、四ふっ化エチレンプロピレンゴム、クロロスルフォーネートポリエチレン、ウレタンエラストマー、ふっ素系エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合物、ハロゲン化ブチルゴム、イソプレンゴム、エビクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、フルオロシリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム又はエラストマーを用いてもよい。
【0057】
繊維間結合材としては、上記の樹脂成分を一種類単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0058】
さらに、繊維間結合材としては、上記のような樹脂成分のみではなく、必要に応じて、樹脂成分に種々の添加剤を配合したものとすることもできる。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、消泡材、増粘材、防腐剤等が挙げられる。
【0059】
[不燃性バックアップ材の製造方法]
また、本発明では、
(1)ポリエステル不織布層に、ガラス繊維及びアルカリアースシリケートウールを含む無機繊維層を積層した後、ニードルパンチによって前記ポリエステル不織布層と前記無機繊維層を接合してフェルト化したマットを作製する工程、
(2)前記マットを、繊維間結合材を含む溶液に浸漬し、前記繊維間結合材を前記マット全体に含浸させる工程、
(3)前記繊維間結合材が含浸した前記マットを熱プレス成型する工程、及び
(4)熱プレス成型した前記マットを加熱乾燥させる工程、
を含む不燃性バックアップ材の製造方法を提供する。
【0060】
<工程(1)>
工程(1)では、ポリエステル不織布層に、ガラス繊維及びアルカリアースシリケートウールを含む無機繊維層を積層した後、ニードルパンチによってポリエステル不織布層と無機繊維層を接合してフェルト化したマットを作製する。マットを作製した後、該マットを、適当な幅にカットする工程をさらに行うこともできる。ここで用いるポリエステル不織布層、無機繊維層は前述のものを用いることができ、ニードルパンチによるフェルト化は、一般的に行われている方法をいずれも採用することができる。
【0061】
<工程(2)>
工程(2)は、マットを、繊維間結合材を含む溶液に浸漬し、繊維間結合材をマット全体に含浸させる工程である。繊維間結合材としては、前述のものを用いることができる。繊維間結合材を含む溶液としては特に限定されないが、例えば、1~10%の澱粉水溶液をすることができる。
【0062】
<工程(3)>
工程(3)は、繊維間結合材が含浸したマットを熱プレス成型する工程である。熱プレス成型時の温度は、例えば100℃~300℃とすることができる。また、熱プレス成形において、プレス成型物が所定の厚みとなるように、スペーサーを使用することが好ましい。用いるスペーサーの厚みを変更することで、必要に応じた所望の厚さを有するマットを作製することができる。
【0063】
<工程(4)>
工程(4)は、熱プレス成型したマットを加熱乾燥させる工程である。乾燥条件は特に限定されないが、例えば、100~200℃で5分から10時間とすることができる。
【0064】
本発明の不燃性バックアップ材は、このような方法で製造することができる。その後、適切な寸法となるように切断加工してもよい。
【実施例
【0065】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
EガラスとAESを、Eガラス:AES=92.3:7.7の比率で混綿して無機繊維層を作製した。これをポリエステル不織布(ポリエステル不織布層)の上に積層し、ニードルパンチにより無機繊維層とポリエステル不織布層とを接合し、フェルト化してマットを作製した。このマットを900mm幅にカットした後、3%澱粉(コーンスターチ)水溶液に浸漬し、澱粉をマット内部まで浸透させた。その後、澱粉を含浸させたマットを、所要の厚さのスペーサーを使用して180℃・10分間プレスしてから、150℃で60分間乾燥させて、厚さ5mm、6mm、及び8mmの不燃性バックアップ材をそれぞれ作製した。
【0067】
[比較例1]
AESをRCF(新日本サーマルセラミック株式会社製、商品名:SCバルク1260)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で、各厚さの比較不燃性バックアップ材をそれぞれ作製した。
【0068】
上記実施例1、及び比較例1で得られた不燃性バックアップ材、比較不燃性バックアップ材について、以下の試験を行い、性能の評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
<かさ密度測定>
作製した不燃性バックアップ材からサンプルを切断し、寸法計測装置(例えばノギス)を用いて、サンプルの縦、横、高さの寸法を計測した。次に、サンプルの重量を計測し、以下の式によりかさ密度を測定した。
かさ密度(g/cm)=重量÷縦寸法÷横寸法÷高さ
【0070】
<強熱減量測定>
強熱減量(質量%)は、質量W(g)のルツボ中に試験片を入れ、20℃の温度下において相対湿度65%で24時間保持したときの試験片を含むルツボの質量をW(g)とし、この試験片を含むルツボを625℃で30分加熱し、放冷したときの試験片を含むルツボの質量をW(g)とし、下記式により算出した。
強熱減量(質量%)={(W-W)/(W-W)}×100
【0071】
<圧縮復元率測定>
50%圧縮時の復元率(圧縮復元率)は、サンプルの厚さを100%として圧縮率を50%に設定して、材料試験機(オートグラフ、島津製作所)を用いて所定厚さまで圧縮(2mm/min)した。試験終了後のサンプルの厚さを計測し、以下の式から圧縮復元率(%)を算出した。
圧縮復元率(%)=圧縮試験後の厚さ÷試験前の厚さ×100
【0072】
<圧縮応力測定>
10%圧縮時の応力(圧縮応力)は、試験時のサンプル圧縮時の荷重値をサンプル寸法計測により求めた面積(縦寸法と横寸法)で除算して算出した。圧縮時の荷重は、サンプル寸法を計測し、このサンプルの厚さを100%として圧縮率を10%に設定して、材料試験機(オートグラフ、島津製作所)を用いて所定厚さまで圧縮(2mm/min)した際の荷重値とした。
圧縮応力(Mpa)=測定荷重(N)÷サンプル面積(mm
【0073】
【表1】
【0074】
表1の結果から、実施例1のAESを用いた本発明の不燃性バックアップ材は、従来技術である比較例1のRCFを用いた比較不燃性バックアップ材と同等のかさ密度、強熱減量、及び同等以上の圧縮復元率、圧縮強度を示した。従って、本発明の不燃性バックアップ材であれば、RCFを用いた場合と同程度の耐熱性、及び柔軟性、施工性等を有する不燃性バックアップ材になるとともに、特定化学物質障害予防規則の制限も受けないものであることが明らかになった。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0076】
1…不燃性バックアップ材、 2…無機繊維層、 3…ポリエステル不織布層、
4…サッシの内周溝、 5…シーリング材、 6…セッティングブロック、
7…板ガラス。
図1
図2
図3
図4