(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20221115BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20221115BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221115BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221115BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/40
B32B27/00 M
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2018178636
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楠田 光陽
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083908(JP,A)
【文献】特開2009-269945(JP,A)
【文献】特開2017-049481(JP,A)
【文献】特開昭57-069091(JP,A)
【文献】特開平06-212131(JP,A)
【文献】特開2008-138066(JP,A)
【文献】特開2003-033389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層、コート層、基材層、粘着剤層、および、当該粘着剤層に隣接する面に凹凸が形成された剥離ライナーを、積層方向にこの順序で有し、
前記積層方向における前記保護層側および前記剥離ライナー側の両面のうち、
前記保護層側の一方の面は、前記剥離ライナー側の他方の面よりも大きな振幅のうねりを含んだ荒れた状態であり、
前記保護層が工程フィルムであり、
前記剥離ライナー側の前記他方の面は、前記一方の面よりもうねりの振幅が抑制された平滑な状態である、粘着シート。
【請求項2】
前記剥離ライナーは、前記凹凸が形成された第1のポリオレフィン系樹脂層、支持基材、および第2のポリオレフィン系樹脂層を、積層方向にこの順序で有する、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記剥離ライナー側の前記他方の面において、JIS B0601:2013(ISO 4287:1997)に規定されるうねり曲線の最大断面高さWtが、0.1μm以下である、請求項1または請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記保護層側の前記一方の面において、JIS B0601:2013(ISO 4287:1997)に規定されるうねり曲線要素の平均高さWcが、5μm以上である、請求項1~請求項3のうちのいずれか1つに記載の粘着シート。
【請求項5】
工程フィルム、コート層、基材層、粘着剤層、および、当該粘着剤層に隣接する面に凹凸が形成された剥離ライナーを、積層方向にこの順序で有した積層体を形成し、
この際、前記積層方向における前記工程フィルム側および前記剥離ライナー側の両面のうち、
前記工程フィルム側の一方の面は、前記剥離ライナー側の他方の面よりも大きな振幅のうねりを含んだ荒れた状態であり、かつ、前記剥離ライナー側の前記他方の面は、前記一方の面よりもうねりの振幅が抑制された平滑な状態であり、
次いで前記積層体から前記工程フィルムを除去することを有する、粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に粘着剤層を介して貼付される粘着シートでは、例えば特許文献1および特許文献2で開示されているように、貼付前に粘着剤層に配置されている剥離シート(剥離ライナー)にエンボスパターンが設けられていることがある。
【0003】
このようなエンボスパターンは、反転されて粘着剤層に例えば溝を形成するため、粘着シートが被着体に貼付された際、それらの間に入り込んだ空気が、粘着剤層の溝を通じて排出され、粘着シートのふくれが抑制される。
【0004】
ふくれの抑制は、粘着シートのきれいな貼付を可能にすることから、例えば車体の窓枠等に貼付されるブラックアウトテープ等、意匠性が重視される加飾シートにとって特に好ましい。
【0005】
また、粘着シートを被着体にきれいに貼付するには、ふくれの抑制とともに被着体への位置合わせが重要であり、被着体への粘着シートの位置合わせは、剥離ライナーを部分的に剥がし、露出した一部の粘着剤層を介して仮止めすることによって行い易くなる。
【0006】
その場合、剥離ライナーは、部分的に剥がせるよう、粘着シートの剥離ライナー面に刃を押し当てて切れ込みが入れられる。ここで、刃が押し当てられる剥離ライナーの面は、粘着剤層に隣接する面とは反対面であり、粘着シートがロール状にされたり複数重ね合わされたりした際、隣接する粘着シート同士が密着して分離し難くなるブロッキングが生じないよう、通常、荒らされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】再表2003/025078号公報
【文献】特開2010-180271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、剥離ライナーが、粘着剤層に隣接する面に上記従来技術のエンボスパターンのような凹凸を有しており、かつ、その反対面が荒らされて大きな振幅のうねりを含むと、場所によって厚みの違いが大きくなり、剥離ライナーに適切な深さで切れ込みが入りづらくなる虞がある。
【0009】
切れ込みが誤って深く入り過ぎてしまうと、その痕によって粘着シートの外観が損なわれることがあり、逆に、切れ込みが浅過ぎると、剥離ライナーが切断されず部分的な剥離が難しくなることがあるため、好ましくない。
【0010】
そこで、本発明は、剥離ライナーに適切な深さで切れ込みを入れ易い粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の粘着シートは、保護層、コート層、基材層、粘着剤層、および、当該粘着剤層に隣接する面に凹凸が形成された剥離ライナーを、積層方向にこの順序で有する。本発明の粘着シートでは、前記積層方向における前記保護層側および前記剥離ライナー側の両面のうち、前記保護層側の一方の面が、前記剥離ライナー側の他方の面よりも大きな振幅のうねりを含んだ荒れた状態であり、前記剥離ライナー側の前記他方の面が、前記一方の面よりもうねりの振幅が抑制された平滑な状態である。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を有する粘着シートにあっては、その両面のうち、剥離ライナー側が保護層側に比べうねりの抑制された平滑な状態であるため、剥離ライナーは、粘着剤層に隣接する面に凹凸が形成されていても、場所による厚みの違いが小さく、適切な深さで切れ込みを入れ易い。
【0013】
また、上記構成を有する粘着シートによれば、粘着シート同士が重ね合わされた際、一の粘着シートにおける剥離ライナー側の平滑な面が、他の粘着シートにおける保護層側の面と隣接したとしても、この保護層側の面が荒れた状態であるため、粘着シート同士が密着してくっつき難く、ブロッキングが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】うねりを含む粘着シートの表面の例を示す部分拡大図である。
【
図3】重ね合わされる実施形態の粘着シートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0016】
図1に示すように、実施形態の粘着シート100は、工程フィルム110(保護層)、コート層120、基材層130、粘着剤層140、および剥離ライナー150を積層方向にこの順序で有する。粘着シート100は、特に限定されないが、例えば、車体の窓枠等に貼付されるブラックアウトテープ等の加飾シートである。
【0017】
粘着シート100では、積層方向における工程フィルム110側および剥離ライナー150側の両面111、151のうち、工程フィルム110側の一方の面111が、剥離ライナー150側の他方の面151よりも荒れた状態である。逆に、剥離ライナー150側の他方の面151は、工程フィルム110側の一方の面111よりも平滑な状態である。
【0018】
図2を参照しつつ説明すると、荒れた面111は、平滑な面151よりも振幅Aの大きなうねりを含んでおり、一方、平滑な面151では、荒れた面111よりもうねりの振幅Aが抑制されている。表面のうねりは、例えば、JIS B0601:2013(ISO 4287:1997)に規定されるうねり曲線によって表される。また、うねりの振幅Aは、例えば、同規格に規定されるうねり曲線要素の平均高さWcとして表される。
【0019】
荒れた面111において、うねり曲線要素の平均高さWcは、例えば5μm以上であり、好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上10μm以下である。
【0020】
一方、平滑な面151においては、うねり曲線の最大断面高さWtが、例えば0.1μm以下であり、面151におけるうねり曲線要素の平均高さWcは、例えば0.01μm以上0.1μm以下である。
【0021】
面111、151のそれぞれのうねり曲線は、例えば、株式会社ミツトヨ製表面粗さ測定機サーフテストSV-3000によって、カットオフ値0.8mm、評価長さ10mmの条件で測定できる。
【0022】
粘着シート100は、例えば、工程フィルム110にコート層120および基材層130を形成し、これらの積層体と、粘着剤層140および剥離ライナー150の積層体とを貼り合わせて作製される。
【0023】
工程フィルム110は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)によって形成されるが、これに限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、およびポリ塩化ビニル(PVC)からなる群から選択される少なくとも1種によって形成される。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリブタジエン(PBD)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
工程フィルム110では、面111は荒らされてマットな状態であるが、それと反対のコート層120側の面は、面111よりもうねりの振幅が小さく、平滑であることが好ましい。
【0025】
コート層120は、例えば、樹脂および場合により添加剤を溶媒に分散させた分散液を、工程フィルム110に対し、面111とは反対の平滑な面に塗工し、これを乾燥することによって得られる。工程フィルム110は、粘着シート100が実際に被着体に貼付される際には、コート層120から除去されるが、それまでコート層120を保護し、例えば、コート層120が未硬化の柔らかい塗膜の状態のとき、その表面が凸凹になったり、塗膜の一部が他所に付着して失われたりするのを防止する。
【0026】
コート層120が、粘着シート100においてどのような機能を有する構成要素であるかは、粘着シート100の用途に応じて適宜設計でき特に限定されないが、例えば、粘着シート100が加飾シートである場合、コート層120は、光沢性を調整するのに設けられる。
【0027】
コート層120は、工程フィルム110に対し、面111とは反対の平滑な面に形成されることによって、表面が平滑となり、光沢性が損なわれ難くなるため、工程フィルム110が面111の反対側に平滑な面を有することは、加飾シートにとって好適である。
【0028】
コート層120を構成する樹脂としては、例えば、ポリウレタン;アクリル系ポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;オレフィン系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー;アイオノマーなどの樹脂を主成分とすることができる。また、コート層120は、顔料、無機フィラー、有機フィラー、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0029】
基材層130は、コート層120の形成に次いでコート層120に積層される。基材層130は、好ましくは、着色剤、およびバインダー樹脂を含む。基材層130は、例えば、着色剤、樹脂、必要に応じて分散剤や溶剤等を含むインク組成物を、コート層120に塗工し、これを乾燥、硬化させて形成される。
【0030】
基材層130に含まれる着色剤としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、松煙等)、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素等などが用いられる。
【0031】
基材層130に含まれる樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0032】
粘着剤層140は、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の粘着剤によって形成される。これらの粘着剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。また、粘着剤は、架橋剤を含んでもよい。粘着剤層140は、例えば、粘着剤組成物を剥離ライナー150に塗工し、その後、乾燥することによって得られる。粘着剤層140の厚みは、例えば10μm以上100μm以下であるが、これに限定されない。
【0033】
剥離ライナー150は、粘着剤層140に隣接する面に、凹凸152を有する。剥離ライナー150は、凹凸152が形成された第1のポリオレフィン系樹脂層153、支持基材154、および第2のポリオレフィン系樹脂層155を、積層方向にこの順序で有する。
【0034】
第1のポリオレフィン系樹脂層153の厚みは、例えば10μm以上50μm以下であるが、これに限定されない。支持基材154の厚みは、例えば10μm以上250μm以下であるが、これに限定されない。第2のポリオレフィン系樹脂層155の厚みは、例えば10μm以上50μm以下であるが、これに限定されない。
【0035】
凹凸152は、例えば、剥離ライナー150の面に沿って線状に延びる複数の突条部によって構成され、突条部は凸となり、突条部と突条部との間が凹となる。凹凸152において、凸となった部分の高さおよび凹となった部分の深さは、例えば5μm以上20μm以下であるが、これに限定されない。
【0036】
凸となる突条部は、剥離ライナー150の面に沿って延びている方向に垂直な断面において、例えば、三角形、矩形、台形、これら多角形の頂点が丸みを帯びた形状、または、略半円形状等の断面形状を有するが、同断面における断面形状はこれらに限定されず、適宜設計できる。
【0037】
また、突条部が、剥離ライナー150の面に垂直な方向から見た平面視において、どのように延びているかも特に限定されず、例えば、直線状に延びていてもよいし、曲線状に曲がって延びていてもよい。また、線状に延びる突条部の端部は、好ましくは剥離ライナー150の縁に達している。
【0038】
また、同平面視において、複数の突条部は、平行であってもよいし、互いに交差していてもよく、それらは、例えば格子状等の幾何学的模様を呈するが、規則的なパターンを呈する形態に限定されず、不規則に設けられている形態であってもよい。
【0039】
ここで述べてきた凹凸152の形状が、隣接する粘着剤層140に反転して転写される結果、粘着剤層140に溝が形成される。この溝が、貼付の際に被着体と粘着剤層140との間に入り込む空気を排出するため、ふくれが抑制される。
【0040】
なお、凹凸152は、上で述べたような線状に延びた突条部によって構成される形態に限定されず、例えば、島状に点在する複数の突部によって構成されてもよいし、深さや開口の大きさ等の異なる大小のくぼみが無秩序に連なって構成されていてもよい。あるいは、線状に延びる突条部、島状に点在する突部、およびくぼみ等の異なる構成要素の少なくとも2つを組み合わせて凹凸152を構成してもよい。
【0041】
凹凸152をどのような形態で構成するかは、粘着剤層140にどのような機能を主として付与するかによって異なり、例えば、空気の排出機能を粘着剤層140に主として付与したいのであれば、溝が形成されるよう、凹凸152は、上述のように線状に延びる突条部を含むことが好ましい。
【0042】
一方、例えば、位置合わせの際の被着体に対する接触面積を抑えるべく、主に粘着剤層140の表面粗さを大きくしたいのであれば、凹凸152を、無秩序に連なった大小のくぼみによって構成するようにしてもよい。
【0043】
凹凸152は、第1のポリオレフィン系樹脂層153の表面を、例えばエンボス加工することによって形成されるが、これに限定されず、例えばスクリーン印刷等の印刷技術によって形成されてもよい。
【0044】
第1のポリオレフィン系樹脂層153は、層中の樹脂の主成分として、ポリオレフィン樹脂を含む。ここで主成分とは、樹脂に対して60質量%以上(上限100質量%)含まれる樹脂を指し、75質量%以上(上限100質量%)含まれることが好ましく、85質量%以上(上限100質量%)含まれることがより好ましく、95質量%以上(上限100質量%)含まれることが最も好ましい。
【0045】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が挙げられるが、エンボス加工性の観点から、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。
【0046】
ポリエチレン樹脂は、(分岐状)低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、極低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)のいずれであってもよい。また、上記ポリエチレン樹脂の混合物であってもよい。
【0047】
第1のポリオレフィン系樹脂層153においては、粘着剤層140側の表面に剥離剤処理が施されていてもよい。当該剥離剤として、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、長鎖アルキルアクリレート系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0048】
支持基材154は、特に限定されないが、平滑性の観点から、プラスチックフィルムであることが好ましい。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、曲げ剛性が高いことから、支持基材154は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、収縮しにくく、曲げ剛性が高いことから、二軸延伸されていることが好ましい。
【0049】
第2のポリオレフィン系樹脂層155は、第1のポリオレフィン系樹脂層153と同様、層中の樹脂の主成分として、ポリオレフィン樹脂を含む。第2のポリオレフィン系樹脂層155は、第1のポリオレフィン系樹脂層153と同じ組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。
【0050】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0051】
本実施形態の粘着シート100は、被着体への貼付の際、位置合わせし易いように、剥離ライナー150が部分的に剥がされ、露出した一部の粘着剤層140で被着体に仮止めされる。そのため、剥離ライナー150には、部分的に剥がせるよう、切れ込みが入れられる。
【0052】
切れ込みは、剥離ライナー150の面151に刃を押し当てて入れられるが、本実施形態と異なり、面151が平滑でなく、面111のように荒らされて大きな振幅のうねりを含んでいると、そのうねりに起因して、剥離ライナー150では場所によって厚みの違いが大きくなり、適切な深さで切れ込みが入りづらくなる虞がある。
【0053】
例えば、剥離ライナー150の厚みが比較的大きい箇所を基準として、切れ込みの深さが設定されている場合に、実際の切れ込み箇所が厚みの比較的小さい箇所であると、切れ込みが深く入り過ぎてしまい、刃の跡が粘着剤層140や基材層130に残り、それが粘着シート100の表面から視認される結果、外観が損なわれる虞がある。
【0054】
また、剥離ライナー150の厚みが比較的小さい箇所を基準として、切れ込みの深さが設定されている場合に、実際の切れ込み箇所が厚みの比較的大きい箇所であると、切れ込みが浅くなってしまい、剥離ライナー150が切断されず部分的な剥離が難しくなる虞がある。
【0055】
一方、本実施形態の粘着シート100にあっては、面151が面111に比べうねりの抑制された平滑な状態であるため、剥離ライナー150は、場所による厚みの違いが小さく、適切な深さで切れ込みを入れ易い。
【0056】
作業者は、切れ込みが入れられて分割された剥離ライナー150の一部を剥がして被着体に粘着シート100を仮止めし、位置合わせ後、残りの剥離ライナー150を剥がして被着体に粘着シート100の全体を貼付する。
【0057】
貼付前、例えば、粘着シート100の輸送や保管にあたり、粘着シート100が、長尺な状態からロール状に巻回されたり、シート状に複数積層されたりすると、粘着シート100同士が重なり合う。
【0058】
その際、
図3に示すように、粘着シート100同士は、一の粘着シート100における平滑な面151が、他の粘着シート100における面111と隣接するように重ね合わされるが、本実施形態と異なり、面111も面151と同様に平滑であると、粘着シート100同士が密着して分離し難くなるブロッキングが生じる虞がある。
【0059】
これに対し、本実施形態では、面111が荒れた状態であるため、面151が平滑であったとしても、粘着シート100同士が密着してくっつき難く、ブロッキングが防止される。
【0060】
本実施形態と異なり、剥離ライナー150は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂によって、単層に形成されてもよい。しかしながら、剥離ライナー150が、第1のポリオレフィン系樹脂層153、支持基材154、および第2のポリオレフィン系樹脂層155をこの順序で積層した構成を有することによって、凹凸152を形成し易く、剥離ライナー150のカールを抑制できる。
【0061】
具体的に、第1のポリオレフィン系樹脂層153は、ポリオレフィン樹脂を主成分としており、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂に比べ、加工性に優れるため、凹凸152を形成し易い。
【0062】
また、第2のポリオレフィン系樹脂層155が、支持基材154に対し、第1のポリオレフィン系樹脂層153と反対側に配置されているため、剥離ライナー150のカールが抑制され易い。剥離ライナー150のカール抑制という観点からは、第2のポリオレフィン系樹脂層155は、第1のポリオレフィン系樹脂層153と同じ組成であることが好ましい。
【0063】
また、第2のポリオレフィン系樹脂層155は、第1のポリオレフィン系樹脂層153と同様、加工性に優れるため、面151を平滑にし易く好ましい。
【0064】
面151において、JIS B0601:2013(ISO 4287:1997)に規定されるうねり曲線の最大断面高さWtが、0.1μm以下であれば、剥離ライナー150は、場所による厚みの違いが特に効果的に抑制されるため、切れ込みをより適切な深さで入れ易い。
【0065】
また、面111において、JIS B0601:2013(ISO 4287:1997)に規定されるうねり曲線要素の平均高さWcが、5μm以上であれば、重なり合う粘着シート100同士の密着が特に効果的に抑制されるため、ブロッキングがより防止され易い。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【0067】
例えば、粘着シートの形状は、特に限定されず、長尺であってもよいし、裁断されて被着体に対応した形状であってもよい。また、粘着シートは、上記実施形態で開示された構成要素以外にも、他の層状の構成要素を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100 粘着シート、
110 工程フィルム(保護層)、
111 工程フィルム側の一方の面(保護層側の一方の面)、
120 コート層、
130 基材層、
140 粘着剤層、
150 剥離ライナー、
151 剥離ライナー側の他方の面、
152 凹凸、
153 第1のポリオレフィン系樹脂層、
154 支持基材、
155 第2のポリオレフィン系樹脂層、
A うねりの振幅。