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  • 特許-化粧料用組成物とそれを使用した化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】化粧料用組成物とそれを使用した化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20221115BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A61K8/42
A61Q1/14
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/33
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018181268
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020050607
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】李 京蘭
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542230(JP,A)
【文献】国際公開第2002/055033(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/108611(WO,A1)
【文献】特表2003-535879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 式(I)で表される少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド、
【化1】
[式中、Rは炭素原子数6~22の直鎖状のまたは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1~3のアルキル- またはヒドロキシアルキル基でありそしてZは炭素原子数3~12でそしてヒドロキシル基数3~10の直鎖状のまたは枝分かれしたポリヒドロキシアルキル基である。]
(B)アクリルアミドアルキルスルホン酸またはその塩から誘導される構造単位を含む少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
(C)脂肪酸エステル及び脂肪族エーテルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物、
を少なくとも含むクレンジング化粧料用組成物。
【請求項2】
上記少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド(A)として、脂肪酸N-メチルグルカミド類を含む、請求項1に記載の化粧料用組成物。
【請求項3】
上記少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド(A)として、Rが炭素原子数12~20の直鎖状のまたは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基であり、かつRがメチルである次式(II)で表される脂肪酸N-メチルグルカミド類を含む、請求項1または2に記載の化粧料用組成物。
【化2】
【請求項4】
上記少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド(A)中の脂肪酸部分(RCO-)が、炭素原子数及び/または二重結合数が異なる飽和または不飽和の二種以上のアルキル基を有する脂肪酸部分の混合物である請求項1~3のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項5】
上記少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド(A)中の脂肪酸部分(RCO-)が植物から誘導されたものである、請求項1~4のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項6】
上記少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド(A)中の脂肪酸部分(RCO-)が、ひまわり油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、ヤシ油、大豆油、及び/またはオリーブ油から誘導された脂肪酸部分である請求項1~5のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項7】
成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計重量を基準として、成分(A)を0.5~50重量%の量で含有する、請求項1~6のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項8】
上記アクリルアミドアルキルスルホン酸またはその塩がアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)塩である請求項1~7のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項9】
成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計重量を基準として、成分(B)を0.3~30重量%の量で含有する請求項1~8のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項10】
成分(C)のI/O値(IOB値)が、0.05~2.0である請求項1~9のいずれか一つに化粧料用組成物。
【請求項11】
成分(C)としての脂肪酸エステルが、炭素数が10以上の脂肪酸のエステルである請求項1~10のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項12】
成分(C)としての上記脂肪酸エステル中の脂肪酸部分がカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはこれらの二種以上のものの混合物である、請求項1~11のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項13】
成分(C)としての上記脂肪酸エステルが、炭素数1~8の一価アルコールとのエステルである、請求項1~12のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項14】
成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計重量を基準として、成分(C)を、0.5~80重量%の量で含有する、請求項1~13のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項15】
成分(A):成分(B)の重量比が、10:0.01~10:10である、請求項1~14のいずれか一つに記載の化粧料用組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一つに記載の組成物を含むクレンジング化粧料。
【請求項17】
更に水を含む請求項16に記載の化粧料。
【請求項18】
pH調整剤及び/または多価アルコールを更に含む、請求項17に記載の化粧料。
【請求項19】
低分子硫酸塩を含まない請求項17または18に記載の化粧料。
【請求項20】
次の成分(A)、(B)及び(C)の組み合わせの、クレンジング化粧料中での使用。
(A) 式(I)で表される少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド、
【化3】
[式中、Rは炭素原子数6~22の直鎖状のまたは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1~3のアルキル-またはヒドロキシアルキル基でありそしてZは炭素原子数3~12でそしてヒドロキシル基数3~10の直鎖状のまたは枝分かれしたポリヒドロキシアルキル基である。]
(B)アクリルアミドアルキルスルホン酸またはその塩から誘導される構造単位を含む少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
(C)脂肪酸エステル及び脂肪族エーテルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成分の組合せを含む化粧料用組成物、特に皮膚に適用するための化粧料のための組成物、及びそれを使用するクレンジング化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の一般的な目的は、顔、手足の皮膚などを健康的に保護すると共に、美しく装うことにある。そのためにスキンクリーム、リップスティックなどの化粧品中には、皮膚のための栄養補助剤、白色顔料、有彩色顔料、それらを保持するための結合剤成分など、その目的にあった多様な成分が含まれており、そしてそれらの成分の多くは油溶性素材である。これらの素材を、通常は水を主成分とする媒体中に分散、もしくは溶解し、それが人の手などにより皮膚にコートされる。
【0003】
皮膚に塗られた化粧品は、多くの場合毎日水、もしくは洗浄剤で清浄化(クレンジング)される。皮膚をクレンジングすることは、例えば顔のケアのために非常に重要である。これは、できる限り効果的でなければならず、その理由は、脂性残留物、例えば過剰な皮脂、日常的に使用される化粧料の残存物、及びメイクアップ製品、特にウォータープルーフ製品は、皮膚のひだに蓄積し、皮膚の毛穴を塞ぎ、しみの出現をもたらしうるからである。
【0004】
化粧品用のクレンジング剤に求められる代表的な性能としては以下のものがある。
(1)皮膚に塗られた化粧品成分、皮脂などの多種多様な物質を少量のクレンジング剤により短時間で除去、清浄化できること。
(2)皮膚から必要以上の物質を除去して皮膚がカサカサとならないように、皮膚、眼球への刺激がすくないこと。
(3)クレンジング作用を有する水を主成分とする溶媒中に溶解、もしくは分散可能なこと。
(4)皮膚に載せて指で扱うため、垂れ落ちることがないような適度な粘度を有すること。
(5)肌触りがよく、使用後の感触がよいこと。
(6)化粧品のための成分が入手しやすく、安全性が高く、低価格であること。
(7)皮膚への刺激性、生分解性など安全性の問題点をクリアーするためには、界面活性剤中の脂肪酸部分としては、特に好ましくは天然物由来の油脂から得た脂肪酸を成分毎に分離せずに、そのまま使用できること。
【0005】
上記のような多くの課題に対して、従来から多くの改良が続けられてきている。例えば特許文献1には、ラウレス硫酸ナトリウム、N-アルキルグルカミド、食塩を併用する皮膚洗浄剤が示されている。ラウレス硫酸ナトリウムに食塩を組み合わせることにより500mPasの高粘度が得られ、グルカミドを使用することにより、皮膚感覚の良好な洗浄剤が得られるという。また特許文献2には、スキンクリームなどへのアルキルグルカミドの使用が述べられている。
【0006】
しかしながら文献1で用いられているラウレス硫酸ナトリウムは、皮膚への浸透性が高く、皮膚や眼球への刺激性が高いとされている。その主な理由は、ラウレス硫酸ナトリウムの比較的小さな分子量が挙げられる。
【0007】
特許文献3には、ラウリン酸系界面活性剤の問題を解決するために、界面活性剤不使用を目的とする化粧料が開示されている。アクリルアミドアルキルスルホン酸をモノマー単位として含むポリマーと油脂類などを組み合わせることにより、ラウリン酸系界面活性剤を使用せずに、高粘度のローション、クリームなどが得られるという。しかしながら、後述の実施例で示されるように、この方法では、高粘度は得られても、クレンジング用に適する洗浄効果を得ることはできていない。
【0008】
以上述べた如く、個々の性能について性能の向上はみられるものの、前述の(1)~(7)すべての要求を満たす手段は見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2016-528188公報
【文献】特開2000-297028公報
【文献】特開2002-293717公報
【文献】特開2002-212025公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第一の目的は、適度に高い粘度により流れ落ちにくく、そのため手や指で取扱が容易であり、且つ皮膚や眼球への刺激性が低く、そして清浄化作用に優れた化粧料の調製を可能にする組成物(化粧料成分)を提供することである。
【0011】
本発明の第二の課題は、上記の特性の他、環境適性が高く、また安価な化粧料の提供を可能にする化粧成分を提供することである。
【0012】
本発明の第三の目的は、上記の特性を持った化粧料、特にクレンジング化粧料を提供することである。
【0013】
本発明の更なる他の目的は、以下の記載から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記の実状に鑑み、従来技術の欠点を解決するべく、鋭意研究を行った。その結果、本発明の課題を解決するための考えとして、以下のような知見、指針を得た。
(1)ラウリン酸系スルホン酸塩系界面活性剤を用いた系は、食塩を併用することにより洗浄能力と増粘効果を得ることはできるが、低い皮膚刺激性を含めた三つの要求の全てを同時に満たすことはできない。そのため、増粘効果を得るための低分子スルホン酸アニオン系界面活性剤と食塩の併用は困難と判断した。
(2)そこで増粘効果を得るために、文献3に示されるアクリルアミドアルキルスルホン酸構造を有するアニオン性ポリマーをテストしたところ、高い増粘効果は得られるが、リップクリームのような強い親油性の汚れを落とすことは難しい。
(3)そのため、文献1、2のアルキルアミド化合物をノニオン性界面活性剤として選択し、アクリルアミドアルキルスルホン酸構造を有するアニオン性ポリマーと組み合わせてテストしたが、洗浄効果が不十分なばかりか、増粘効果も著しく低下するという現象が発生した。
(4)上記の(3)の粘度が低下する明確な理由は不明であるが、増粘効果を発現するアクリルアミドアルキルスルホン酸構造とアルキルアミドの相互作用により増粘構造が破壊されるためであり、その作用はアルキルアミドの水酸基が原因となっているのではないかと推測された。
(5)本発明者らは、アルキルアミドによる増粘抑止作用を防ぐための方法として第三物質を添加する方法を選び、各種素材をテストした。その結果、特定構造の脂肪酸エステル類または脂肪族エーテル類を添加することにより、アルキルアミドの添加により低下する粘度がリカバーされると同時に、洗浄効果も著しく改良される結果を得た。
(6)上記結果は、アクリルアミドアルキルスルホン酸構造を有するポリマー、アルキルアミド、及び脂肪酸エステル類もしくは脂肪族エーテル類の間の相互作用によるものであり、脂肪酸エステル類及び/または脂肪族エーテル類がアクリルアミドアルキルスルホン酸系ポリマーの増粘構造を維持しつつ、一方でその親油的性質が親油性の汚れの清浄化を促進する役割を果たしているものと推測された。
(7)上記の知見を基に、更に、アクリルアミドアルキルスルホン酸構造を有するポリマー、アクリルアミド、脂肪酸エステル、脂肪族エーテルのそれぞれについてより好ましい化学構造、組成を探索し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
(1)指先での扱いが容易で垂れ落ちしにくく、口紅のような強く付着した汚れが落ちやすく、泡立ち、使用感に優れたクレンジングが得られる。
(2)スルホン酸系界面活性剤を一切使用しないため、皮膚や眼球への刺激が少なく、毎日使用しても安全性が高い。
(3)上記方策は、クレンジング剤としての使用ばかりでなく、他の化粧用組成物としても好ましい特性を与えることができる。油溶性物質を水系溶媒中に高濃度で溶解、もしくは分散でき、高粘度でかつ安全性の良好な化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】リップスティックを塗布した皮膚上のサンプルの様子を写真撮影した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
即ち本発明は、化粧料用組成物であって、(A)特定構造のアルキルアミド類、(B)特定構造のアクリルアミド類、(C)脂肪酸エステル類及び/または脂肪族エーテル類を少なくとも含む化粧料用組成物である。これらの成分の相乗効果により、高い増粘効果を維持しつつ、洗浄効果、安全性に優れた化粧料を提供することが可能となる。
【0018】
本発明の成分(A)としてのアルキルアミド類は、次の一般式(1)で示される。
式(I)
【0019】
【化1】
【0020】
[式中、Rは炭素原子数6~22、好ましくは12~20、特に14~18の直鎖状のまたは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1~3、好ましくは1~2、特に1のアルキル- またはヒドロキシアルキル基でありそしてZは炭素原子数3~12、好ましくは5~10、特に5~8でそしてヒドロキシル基数3~10、好ましくは3~8、特に3~6の直鎖状のまたは枝分かれしたポリヒドロキシアルキル基である。]で表される脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミドである。
【0021】
本発明で言う「化粧料用組成物」とは、化粧料、特に皮膚や毛髪に触れる化粧料の調製のために使用される成分(化粧成分(cosmetic ingredient))を指すものであり、各々の具体的な最終用途にそれぞれ通例の他の必要成分と組み合わせて、最終用途の通例の調合プロセスにおいて該組成物を構成する成分(A)、(B)及び(C)が一緒にまたは異なるステップで適宜導入されて化粧料とされるものである。ここで「化粧料」(化粧品、化粧製品とも言う)とは、消費者がそのまま使用できる状態の完成した化粧製品のことである。
【0022】
本発明に用いられる一般式(1)で示される成分(A)としては、特にZとしてグルコース基を使用するアミド化合物II(以下グルカミドと略)が特に好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
上記式(II)において、Rは、炭素原子数6~22、好ましくは12~20、特に14~18の直鎖状のまたはまたは枝分かれした飽和または不飽和アルキル基であり、Rは炭素原子数1~3、好ましくは1~2、特に1のアルキル-またはヒドロキシアルキル基、就中メチルである。
【0025】
本発明に従い成分(A)として使用される上記式(I)または(II)のアルキルアミド類は、それの総量に基づいて一種または複数種のC18脂肪酸残基RCO-を有する化合物を少なくとも8重量%の割合で含むことが好ましい。
【0026】
本発明の成分(A)の脂肪酸部分(RCO-)としては、植物由来の油脂を原料とするものが特に好ましい。その理由の一つとして、植物由来の油脂を原料とすることにより、生分解性など環境適性に優れると共に、植物油を鹸化して得られる脂肪酸を使用するため安価に本発明のアルキルアミドを製造することができることが挙げられる。そのような天然物由来の油脂としてはヒマワリ油、サフラワー油、ヤシ油、大豆油、コーン油、綿実油などが挙げられる。その中でもヒマワリ油、サフラワー油、特にこれらのハイオレイックタイプの油など、オレイン酸、リノール酸を多く含む油脂を原料として得た脂肪酸が特に好ましい。
【0027】
本発明の組成物中の成分(A)の量は、その目的により多少変化するが、成分(A)、(B)、(C)の合計重量を基準として、一般的には0.5~50重量%、好ましくは10~40重量%、特に好ましくは20~35重量%の量であることができる。これより低い場合には、親油物質の除去性、清浄化力が低下し、これらの範囲より高いと、成分Aの沈降、相分離など安定性が低下する虞がある。
【0028】
本発明の化粧料用組成物の成分(B)は、アクリルアミドアルキルスルホン酸またはその塩から誘導される構造単位を含む少なくとも一種のアニオン性ポリマーであり、好ましくは次式式(III)のモノマー単位を含むポリマーであることができる。
【0029】
【化3】
【0030】
(式中、Rは水素原子、メチルまたはエチルであり、Yは炭素数1~9のアルキレン基であり、そしてXはアンモニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンである。)
成分(B)は、式(III)のアクリルアミドアルキルスルホン酸塩モノマー単位と他のモノマー単位を共重合したコポリマーとすることにより、水溶性、粘度その他の特性を制御する上で好ましい。例えばアクリルアミドアルキルスルホン酸塩モノマーとN-ビニルピロリドンとのコポリマーは、水溶性が高く、且つ増粘効果が大きいことで知られている。
【0031】
アクリルアミドアルキルスルホン酸塩の具体的な化合物としては特許文献3に数多く示されているが、特許文献3に記載されているアクリルアミドアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩から誘導された単位を含むポリマーが好ましく、特にこのような単位とN-ビニルピロリドンとの共重合体が好ましい。それらの中でも、前記式(III)中で、特にRがHであり、YがC(CHCHであり、Xがナトリウムである単位を含むポリマーを成分(B)として使用することが好ましい。
【0032】
本発明の組成物中の成分(B)の量は、その目的により多少変化するが、成分(A)、(B)、(C)の合計重量を基準として、一般的には0.3~30重量%、好ましくは1~20重量%、特に好ましくは2~10重量%の量であることができる。これより低い場合には、必要とする増粘効果が得られず、これらの範囲より高いと、経時安定性が低下してクレンジング剤成分の沈降、相分離などが起きやすくなる虞がある。
成分(A):成分(B)の好ましい重量比は、10:0.01~10:10、より好ましくは10:0.05~10:7、特に好ましくは10:0.5~10:3である。
【0033】
本発明の成分(C)である脂肪酸エステル類、脂肪族エーテル類は、成分(A)と成分(B)との相互作用により増粘効果、洗浄効果の両方を向上させる目的で添加される。一般的にクレンジング剤中で使用されるエステルは、油性成分を除去することが一つの役割であるが、本発明における脂肪酸エステル類及び脂肪族エーテル類は、油性成分の除去に加え、増粘効果をアシストする点が、従来技術とは大きく異なる点である。
【0034】
本発明の成分(C)は、低分子脂肪酸エステル類から選択することができる。これらのエステル類のアルコール部分は、好ましくは炭素原子数1~25、より好ましくは1~20、特に好ましくは1~8、就中1~5の直鎖または分枝鎖状の飽和または不飽和アルコールであることができる。前記エステル類の脂肪酸部分は、炭素原子数2以上、好ましくは2~22、より好ましくは6~20、特に10~18、就中12~16の直鎖または分枝鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪酸であることができる。該脂肪酸エステル類は、モノエステルまたはジエステルであることができる。
【0035】
好ましくは、上記脂肪酸エステル類(エステル油とも言う)は、不飽和結合を含まない及び/またはエーテルまたは及び/もしくはヒドロキシル基を含まないエステル類の群から選択される。さらに有利には、メークアップ落とし油としての当該エステル油は、エーテル及び/またはヒドロキシル基を含まない、好ましくはこれらのいずれも含まない飽和エステルである。
【0036】
本発明の成分(C)は脂肪族エーテル類からも選択することができる。これらは、アルコール同士の縮合によるエーテル化合物を指し、その中でもグリコール類のエーテル化合物、グリコール類のエーテル化合物の水酸基を更に有機基でエステル化した化合物などが挙げられる。これらは、例えば、次の式で表すことができるものである。
O-(AO)-R
Aは、炭素原子数2~4のアルキレン基であり、R及びRは、水素、炭素原子数1~4のアルキルまたはアルカノイル基であり、但し、R及びRのいずれか一方はアルキル基であり、そしてnは1~4の数である。
【0037】
成分(C)による油性物質の除去効果、及び増粘効果のアシスト効果は、成分(C)中の親油性部分と疎水性部分が作用し、そして成分(C)中の適切な親水性基及び疎水性基が作用していると考えられる。そのため、適切な無機性I/O値(IOB値とも云う)のエステル類及びエーテル類から選択される1種以上のエステル類及び/またはエーテル類の使用が好ましい。I/O値は、好ましくは0.05~2.0、より好ましくは0.07~1.0、特に好ましくは0.1~0.5である。
【0038】
したがって、本発明の組成物中の成分(C)としての脂肪酸エステル類は、特に、2-エチルヘキシルパルミテート(またはオクチルパルミテート)、2-エチルヘキシルミリステート(またはオクチルミリステート)、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート(I/O=0.28)、ジイソプロピルアジペート、ジオクチルアジペート、2-エチルヘキシルヘキサノエート、エチルラウレート、メチルミリステート、オクチルドデシルオクタノエート、イソデシルネオペンタノエート、エチルミリステート、ミリスチルプロピオネート、2-エチルヘキシル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルオクタノエート、2-エチルヘキシルカプレート/カプリレート、メチルパルミテート、ブチルミリステート、イソブチルミリステート、エチルパルミテート、イソヘキシルラウレート、ヘキシルラウレート及びイソプロピルイソステアレート、及びそれらの混合物を含む群から選択されることができる。前記脂肪族エーテル類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテルなどを挙げることができる。
【0039】
本発明の組成物中の成分(C)の量は、その目的により多少変化するが、成分(A)、(B)、(C)の合計重量を基準として、一般的には0.5~80重量%、好ましくは40~75重量%、特に好ましくは55~70重量%の量であることができる。これより低い場合には、必要とする油性成分の除去性能が得られないばかりか、増粘効果が得られず、これらの範囲より高いと、成分(A)の沈降、相分離などが起きやすく、経時安定性が低下する。
【0040】
本発明の化粧料用組成物は、後述の実施例で示されるように、(A)特定構造のアルキルアミド類、(B)アクリルアミドアルキルスルホン酸構造をモノマー単位として有するアニオン性ポリマー、(C)脂肪酸エステル類及び/または脂肪族エーテル類を備えることにより、成分(B)の増粘効果が、成分(B)の添加により低下する現象を抑止し、増粘効果を復活させると共に、成分(A)と成分(B)だけでは不足する油性物質の除去、溶解力を著しく高めることができる。
【0041】
特定構造のアルキルアミド化合物(A)とアクリルアミドアルキルスルホン酸構造をモノマー単位として含むアニオン性ポリマー(B)は、それぞれ単独で高い機能を有することから従来から広く知られた素材であるが、それら成分(A)と(B)とを組み合わせた化粧料用組成物は従来知られていない。その理由として仮に成分(A)と(B)との組み合わせを着想したとしても、期待した増粘効果と洗浄効果が得られないばかりか、逆に粘度が低下する現象を起こすことから、一般に知られていないと推測される。
【0042】
本発明の組成物中で成分(C)として使用される脂肪酸エステル類及び脂肪族エーテル類は、成分(A)のみでは不足している親油性物質の溶解力を補強するだけでなく、成分(A)の粘度低下作用を阻止して、目標とする増粘効果を達成する効果を有するものである。
【0043】
上述したように、成分(A)と成分(B)との組み合わせは従来知られておらず、従って成分(A)、(B)、(C)を組み合わせた組成物、及びその機能についても従来知られていない。上記脂肪酸エステル類及び脂肪族エーテル類(C)はその性質から、油性物質の溶解性を向上させることが理解されるが、成分(A)の添加によって失われた成分(B)の増粘効果を復活させる現象の詳しいメカニズムについては不明である。成分(B)の増粘効果は、水媒体中でのポリマー間の相互作用、及び/またはポリマーと水との間の相互作用により粘性が向上すると理解されるが、その相互作用が成分(A)(アルキルアミド)と成分(B)のアニオン性ポリマーの間の相互作用により低下するため、成分(A)による粘度低下が生じていると考えられる。後述の実施例で示されるように、成分(B)単独による増粘効果が、成分(A)または(C)をそれぞれ単独で添加すると低下するが、成分(A)、(B)、(C)の組み合わせにより、成分(B)の増粘効果が復活する。このような現象から、脂肪酸エステル類及び脂肪族エーテル類は、成分(B)と(A)との相互作用を低下させ、成分(B)の本来の増粘効果を復活させるものと推測される。
【0044】
本発明の化粧料用組成物中、もしくはそれを使用した化粧料製品中には、その機能を発揮するために追加の添加剤を加えることができる。そのような追加の添加剤としては、(D)溶剤、(E)追加の界面活性剤、(F)pH調整剤、(G)染顔料、(H)香料、(I)防腐剤、(J)安定化剤、(K)美白、アンチエイジング、毛穴引き締めなどを目的とする生理活性成分、(L)植物エキスなどが挙げられる。
【0045】
本発明の組成物に加える追加の添加剤としては(D)溶剤が先ず挙げられる。本発明の組成物を溶解、もしくは分散するための媒体としての役割であり、一般的に化粧料用には水、特に軟水が好ましいとされている。加えるべき溶剤の量は、製品、使用条件などに合わせて適宜調整される。
【0046】
追加の界面活性剤(E)は、上記成分(A)~(C)では不足する機能を補助する役割であり、例えば安定性の向上と気泡力の向上などがあり、使用する素材としては例えばベタインなどの第4級アンモニウム塩化合物などが挙げられる。本発明の組成物を用いたクレンジング剤の場合には、前記界面活性剤(E)の量は、クレンジング剤の総重量に基づいて、一般に20~80重量%であることができる。
【0047】
本化粧料用組成物を例えばクレンジング剤として使用する場合、クレンジング剤は弱酸性が好ましいとされ、そのためのpH調整剤(F)として例えば酢酸、クエン酸、琥珀酸、酒石酸などの有機酸、リン酸などの無機酸を、pHが4~7、特に好ましくは5~6.5となるように追加的に適宜加えることができる。
【0048】
本発明の組成物を用いたクレンジング剤の場合には、前記pH調節剤の割合は、クレンジング剤の総重量に基づいて、一般に2.0~20重量%であることができる。pH値が高すぎる場合には皮膚刺激を引き起こし、他方、pH値が低すぎる場合には皮膚刺激を引き起こす上、組成物安定性が低下する虞がある
本発明の組成物中に存在する(G)染顔料(有機染料及び無機染料の両方)は、化粧品規制または化粧品着色剤のECリストにおける対応するポジティブリストから選択することができる。また、有利に使用されるのは、例えば、真珠光沢顔料、例えば、パールエッセンス(魚の鱗からのグアニン/ヒポキサンチン混合結晶)及び真珠層(粉末二枚貝殻)、単結晶真珠光沢顔料、例えばオキシ塩化ビスマス(BiOCl)、層/基材顔料、例えばマイカ/金属酸化物、TiO2 からなるシルバーホワイト真珠光沢顔料、干渉顔料(TiO2、異なる層の厚さ)、カラー光沢顔料(Fe2O3)、及び組み合わせ顔料(TiO2/Fe2O3、TiO2/Cr2O3、TiO2/プルシアンブルー、TiO2/カルミン)である。本発明の組成物における染料及び顔料の量は、完成したクレンジング剤総重量に基づいて、一般に0.5~10重量%であることができる。
【0049】
また、使用される香料(H)は、植物または動物源から得られるような天然の香気物質混合物、例えば松根油、柑橘油、ジャスミン油、百合油、ローズ油またはイランイラン油であることができる。また芳香成分として通常使用される比較的低揮発性の精油、例えば、セージ油、カモミール油、チョウジ油、メリッサ油、ミント油、シナモン葉油、リンデン花油、ジュニパーベリー油、ベチバー油、オリバナム油、ガルバナム油、及びラブダナム油も、香油として好適である。本香料(H)の量は、完成したクレンジング剤組成物の総重量に基づいて、一般に0~2重量%であることができる。
【0050】
好適な防腐剤(I)は、欧州化粧品法令の該当する附属書に列挙されている防腐剤、例えばフェノキシエタノール、ベンジルアルコール、パラベン、安息香酸及びソルビン酸である。特に好適な例は、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(Nipaguard(登録商標)D M D M H)である。完成したクレンジング剤組成物の総重量に基づいて、一般に0.1重量%~2.0重量%であることができる。
【0051】
本発明を使用する製品にとって好ましい安定化剤(J)としては、その目的にあった各種素材が使用されるが、例えばエチルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコールを製品中、0.1~5.0重量%程度添加することも行われる。
【0052】
本発明の化粧料組成物は、成分(A)、(B)及び(C)を、必要に応じて先に記載したような他の成分と一緒に、慣用の混合機等を用いて混合することによって、例えばエマルションの形で調製することができる。また本発明の化粧料用組成物を用いた化粧料の製造には、従来から使用されている方法を使用することができる。例えば、クレンジング化粧料の場合には、所定量の水に、成分(B)のアニオン性ポリマーを所定量溶解した後、成分(A)のアルキルアミド類を所定量添加、次いで成分(C)としての脂肪酸エステル類及び/または脂肪族エーテル類を添加し、その後十分に攪拌、乳化する方法が行われる。または、それぞれ所定量の成分(B)と(C)を水中に分散してから成分(A)を所定量加えて十分に攪拌、乳化して調製することもできる。本発明の化粧料用組成物は、用途に依存するが、一般的に2~30重量%、好ましくは3~20重量%の割合で化粧料中に使用することができる。
【0053】
上述の好ましい実施態様は、クレンジング剤を中心に説明した。本発明の化粧料用組成物はクレンジング剤以外にローション、シャンプーなどの皮膚・毛髪用清浄化剤、更には食器洗浄用にも使用できる。
【0054】
本発明の化粧料用組成物は、皮脂などの油性物質を分散、もしくは溶解し、皮膚への刺激性が低く、増粘効果が大きい特徴を有する。そのような特徴を生かす用途としては上記のような清浄化剤、洗浄剤に限定されず、より広い用途の化粧料にも広く使用できる。例えば、スキンケアクリーム、日焼け止めクリーム、シェービングソープなどの用途にも好適に使用できる。
【0055】
従って、本発明の更なる対象は、
(A) 式(I)で表される少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド、
【0056】
【化4】
【0057】
[式中、Rは炭素原子数6~22の直鎖状のまたは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1~3のアルキル- またはヒドロキシアルキル基でありそしてZは炭素原子数3~12でそしてヒドロキシル基数3~10の直鎖状のまたは枝分かれしたポリヒドロキシアルキル基である。]
(B)アクリルアミドアルキルスルホン酸またはその塩から誘導される構造単位を含む少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
(C)脂肪酸エステル及び脂肪族エーテルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物、
を含む化粧料、特にクレンジング化粧料である。
【0058】
本発明の更に別の対象は、次の成分(A)、(B)及び(C)、すなわち
(A) 式(I)で表される少なくとも一種の脂肪酸-N-アルキルポリヒドロキシアルキルアミド、
【0059】
【化5】
【0060】
[式中、Rは炭素原子数6~22の直鎖状のまたは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1~3のアルキル- またはヒドロキシアルキル基でありそしてZは炭素原子数3~12でそしてヒドロキシル基数3~10の直鎖状のまたは枝分かれしたポリヒドロキシアルキル基である。]
(B)アクリルアミドアルキルスルホン酸またはその塩から誘導される構造単位を含む少なくとも一種のアニオン性ポリマー、
(C)脂肪酸エステル及び脂肪族エーテルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物、
の組み合わせの、化粧料中、特にクレンジング化粧料中での使用である。
【0061】
上記の本発明による化粧料用組成物について記載した好ましい形態などの態様は、これらの化粧料及び使用についても全て該当する。
【0062】
本発明を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例
【0063】
使用素材
表1に実施例、比較例で使用した素材を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
評価方法は以下のようである。
1)粘度測定:
ブルックフィールド粘度計RV型を用いて、25℃で、50回転/分で、5分後の粘度を測定する。
2)清浄化度:
市販のリップスティックを人の前腕1.5cm×1.5cmのエリアに塗布し20分間放置する。そこに実施例及び比較例の処方をそれぞれのエリアに1.5gずつ塗布し指で30回マッサージするように優しく擦る。水道水で十分洗い流した後、ペーパータオルで軽く水気を拭きとる。目視で清浄化状態を観察する。
3)乳濁度:
肌に塗布して目視で観察する。
【0066】
比較例1
成分(B)(Aristoflex(登録商標)Silk)を水に滴下して撹拌機で撹拌する。きれいに分散してから溶剤(ジプロピレングリコール)を入れて撹拌した後、成分(F)(クエン酸)でpH調整を行う。
【0067】
比較例2
成分(B)(Aristoflex(登録商標)Silk)を水に滴下して撹拌機で撹拌する。きれいに分散してから成分(A)(GlucoTain(登録商標)sense)と溶剤(ジプロピレングリコール)を入れて撹拌した後、成分(F)(クエン酸)でpH調整を行う。
【0068】
比較例3
成分(C)(ミリスチン酸イソプロピル)と成分(B)(Aristoflex(登録商標)Silk)を混ぜて水に滴下して撹拌機で撹拌する。均一に分散してから溶剤(ジプロピレングリコール)を入れて撹拌した後、成分(F)(クエン酸)でpH調整を行う。
【0069】
実施例1
成分(C)(ミリスチン酸イソプロピル)と成分(B)(Aristoflex(登録商標)Silk)を混ぜ、そしてこの混合物を水に滴下して撹拌機で撹拌する。きれいに分散してから成分(A)(GlucoTain(登録商標)sense)と溶剤(ジプロピレングリコール)を入れて撹拌した後、成分(F)(クエン酸)でpH調整を行う。
【0070】
比較例1~3、実施例1の処方、その評価結果を表2に示した。なお性能に関する評価結果は、成績の良い順に1、2、3、4の評点を示している。
【0071】
また図1には、リップスティックを塗布した皮膚上のサンプルの様子を写真撮影した結果を示す。図中のそれぞれのステップは次のことを示している。
ステップ1:市販のリップスティックを人の前腕1.5cm×1.5cmのエリアにに塗布し20分間放置した様子を示す。
ステップ2:実施例及び比較例の処方をそれぞれのエリアに1.5gずつ塗布した時の様子を示す。
ステップ3:指で30回マッサージするように優しく擦った時の様子を示す。実施例の処方が比較例の処方より塗布されたリップスティックとの親和性がよいことが分かる。
ステップ4:水道水で十分洗い流した後、ペーパータオルで軽く水気を拭き取った時の様子を示す。実施例1で処理した部位が一番きれいにリップスティックを落とすことができている。
【0072】
【表2】
【0073】
表2、図1から、以下のことが言える。
(1)成分(A)、(B)、(C)を含む実施例1は、高い増粘効果を維持したまま、最も高い清浄化能力を示す。
(2)成分(B)のみでは増粘効果は大きいが、清浄化は不十分であり(比較例1)、それに対して界面活性効果を有する成分(A)を加えると(比較例2)、清浄化能力は改良されるが、粘度低下が著しい。
(3)成分(B)と成分(C)の組み合わせ(比較例3)により同様に清浄化能力は向上するが、粘度低下は大きい。
(4)上記の現象は、成分(B)の高い粘度を維持している分子間相互作用が、成分(A)または成分(C)の添加により低下するためと理解される。
(5)成分(B)に、成分(A)、(C)の両方を添加することにより粘度が大幅に向上するが、これは成分(B)の粘度維持構造が、成分(A)、(C)の添加により復活するためと推定される。
(6)実施例1は、比較例と比べると乳濁化の度合いが大きい。これは成分(A)、(B)、(C)の相互作用によりミセル構造が形成され、それにより清浄化能力が向上すると共に、高粘度を維持するための分子間相互作用が大きくなっていることを示唆しているように思われる。
図1