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特許7176914充電制御装置、作業機械及び充電制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】充電制御装置、作業機械及び充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221115BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 P
H02H7/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018184734
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020054209
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広田 崇
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮太
(72)【発明者】
【氏名】水野 冬彦
(72)【発明者】
【氏名】長野 隆生
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505101(JP,A)
【文献】特開2000-125477(JP,A)
【文献】特開平03-141589(JP,A)
【文献】特開2008-312442(JP,A)
【文献】特開2009-197514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J1/00-1/16
H01M10/42-10/48
H02H7/00
H02H7/10-7/20
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60R16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力に関する入力電力情報と、所定の判定閾値とに基づいて、入力電力の異常の有無を判定する判定部と、
前記入力電力の入力が開始された時点から出力される所定信号の有無の判定に基づいて、前記時点で電源が供給されていない状態にある前記判定部に対し電源を供給して起動させる起動部と、
を備え、
前記起動部は、前記所定信号の有無の判定を、前記入力電力の入力が開始されてから所定時間経過後に行う、
充電制御装置。
【請求項2】
前記入力電力情報は、前記入力電力の電圧実効値である、
請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記入力電力情報と前記判定閾値との関係が所定の条件を満たしたときから所定時間を経過するまでの前記入力電力情報の変化に基づき、前記判定を行う
請求項1または請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の充電制御装置を備える
作業機械。
【請求項5】
充電制御装置の判定部が、入力電力に関する入力電力情報と、所定の判定閾値とに基づいて、入力電力の異常の有無を判定するステップと、
前記充電制御装置の起動部が、前記入力電力の入力が開始された時点から出力される所定信号の有無の判定の結果に基づいて、前記時点で電源が供給されていない状態にある前記判定部に対し電源を供給して起動させるステップと、
を有し、
前記起動させるステップにおいて前記起動部は、前記所定信号の有無の判定を、前記入力電力の入力が開始されてから所定時間経過後に行う、
充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置、作業機械及び充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市街地等における建設作業においては、ゼロエミッション、かつ、騒音が少ない電動作業機械が利用されることがある。電動作業機械は、エンジンや燃料タンクを具備しない代わりに、油圧ポンプ等を駆動させる電動モータ、及び、当該電動モータに電力を供給するバッテリ等の蓄電装置を具備している。
バッテリを充電する場合、オペレータは、所定の充電設備の充電コネクタを電動作業機械の差込口に差し込んで接続する。これにより、充電コネクタ及び差込口を介して、充電設備から電動作業機械に向けて充電用の電力が供給される。
【0003】
特許文献1には、バッテリの充電時において、交流電力源から異常な電圧が入力された場合に、交流電力源から入力される電流を抑制する受電装置及び充電方法が開示されている。
【0004】
上述の充電制御装置は、充電設備からの入力電圧を監視する機能を有している。充電制御装置は、入力電圧の異常を検知した場合、例えば、充電制御装置は、電力供給の遮断等を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-136271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
充電設備の充電コネクタを電動作業機械の差込口に接続した瞬間、回路上に存在するインダクタ成分、キャパシタ成分に起因して瞬間的に大きな電流(以下、「突入電流」とも表記する。)が流れる。上述の充電制御装置が、突入電流に起因して生じる瞬間的な大電圧を「入力電圧の異常」として誤検知してしまう場合がある。
【0007】
上述の課題に鑑みて、本発明は、充電設備から供給される入力電圧の異常の有無を適切に判別可能な充電制御装置及び作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、充電制御装置は、入力電力に関する入力電力情報と、所定の判定閾値とに基づいて、入力電力の異常の有無を判定する判定部を備える。前記判定部は、前記入力電力が入力されてから所定時間経過後の入力電力情報に基づき、前記判定を行う。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、充電設備から供給される入力電圧の異常の有無を適切に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る充電設備及び電動ショベルの全体構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る電動ショベルのシステムブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る充電制御装置の処理フローを示す図である。
図4】第1の実施形態に係る充電制御装置による作用、効果を説明するための図である。
図5】第2の実施形態に係る充電制御装置の処理フローを示す図である。
図6】第2の実施形態に係る充電制御装置による作用、効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る充電制御装置及びこれを搭載する電動作業機械の一例である電動ショベルについて、図1図4を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(充電設備及び電動ショベルの全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る充電設備及び電動ショベルの全体構成を示す図である。
電動ショベル1は、電動作業機械の一態様であり、バッテリの電力に基づいて動作する作業機械である。なお、本実施形態は、電動作業機械が電動ショベルである例で説明するが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。他の実施形態においては電動作業機械がホイールローダ等の他の作業機械であってもよい。
図1に示すように、電動ショベル1は、油圧ポンプを駆動させる電動モータに電力を供給するバッテリBT1と、当該バッテリBT1の充電動作を制御する充電制御装置1Aを備えている。また、電動ショベル1の背面には、充電設備2の充電コネクタ20を接続する差込口SCが設けられている。また、電動ショベル1の運転室には、オペレータに向けて入力電圧の異常の有無等の充電状態を通知するモニタMONが設けられている。なお、バッテリBT1の出力電圧は300Vに設定されていてもよい。
【0013】
充電制御装置1Aは、電気コントローラ10と、電力供給ユニット11とを有している。
電気コントローラ10は、電動ショベル1における電源及び電気系統に関する制御全体を司る。電気コントローラ10は、後述する電力供給ユニット11の上位装置である。具体的には、電気コントローラ10は、差込口SCに充電コネクタ20が接続された場合に、OFF状態にある電力供給ユニット11を起動させる。そして、電気コントローラ10は、起動させた電力供給ユニット11に対して充電指令を出力し、所望の充電制御を実行させる。
【0014】
電力供給ユニット11は、電気コントローラ10からの充電指令に応じて、バッテリBT1に対する充電制御を行う。例えば、電力供給ユニット11は、充電設備2より供給される交流電力から、電気コントローラ10からの充電指令に示される指令電圧(V)、指令電流(A)に応じた直流電力を生成し、これをバッテリBT1に供給する。
【0015】
充電設備2は、送電線を介して例えば、単相200Vの交流電力を出力する。バッテリBT1の充電を行うオペレータは、充電設備2の充電コネクタ20を、電動ショベル1の差込口SCに差し込む。
【0016】
(電動ショベルの機能ブロック図)
図2は、第1の実施形態に係る電動ショベルのシステムブロック図を示す図である。
なお、図2において、電力源Pは、充電設備2における単相200Vの交流電圧を供給する電力供給源である。
【0017】
図2に示す電動モータMTRは、バッテリBT1から供給される電力に基づいて駆動される。電動モータMTRは、回転軸SHを介して連結された油圧ポンプHPを回転駆動させる。油圧ポンプHPが回転駆動することで、油圧ポンプHPから各作業機シリンダH1、旋回油圧モータH2及び走行油圧モータH3へ作動油が供給される。このように、電動ショベル1の動作は、バッテリBT1から電動モータMTRへの電力供給により実行される。
【0018】
電気コントローラ10の機能について詳しく説明する。
【0019】
図2に示すように、電気コントローラ10は、自己起動部100と、充電器コントローラ起動部101と、制限処理部102と、充電指令部103としての機能を有している。
【0020】
自己起動部100は、後述する起動信号が入力されたことをトリガにして、電気コントローラ10自身に電力を供給する動作を行う。ここで、本実施形態においては、起動信号はワンショットパルスであるものとする。なお、起動信号は、パルス状の信号や、アナログ信号であってもよい。具体的には、自己起動部100は、ワンショットパルスの入力を受け付けた場合に、スイッチR1をオンするように構成されたディスクリート回路により構成されている。これにより、電気コントローラ10が常用電源BT2に接続され、OFF状態にあった電気コントローラ10が起動する。ここで常用電源BT2の出力電圧は、バッテリBT1より低い24Vとしてもよい。
【0021】
充電器コントローラ起動部101は、電力供給ユニット11の充電器コントローラ110を起動させる。具体的には、充電器コントローラ起動部101は、電気コントローラ10自身の起動完了後、所定の条件を満たした場合にスイッチR2をオンする。これにより、充電器コントローラ110が常用電源BT2に接続され、充電器コントローラ110が起動する。
【0022】
制限処理部102は、充電中における電動ショベル1の所定の動作を制限する。例えば、電力供給ユニット11がバッテリBT1を充電している間は、制限処理部102は、他のコントローラによるスイッチR3のオン動作を制限する。そうすると、インバータINV及び油圧ポンプ駆動用の電動モータMTRに対して電力が供給されることがなくなり、油圧ポンプHPの動作が制限される。そうすると、電動ショベル1の各作業機シリンダ、旋回油圧モータ、走行油圧モータの動作が制限されるため、電動ショベル1の動作全体が制限される。また、制限処理部102は、電力供給ユニット11が充電している最中には旋回駐車ブレーキをかける。これにより、電動ショベル1の旋回動作が制限される。以上のように、充電設備2を用いてバッテリBT1を充電している間は電動ショベル1の所定の動作を制限することで充電中の安全を確保する。
【0023】
充電指令部103は、バッテリBT1の充電状態に応じた充電指令を、電力供給ユニット11の充電器コントローラ110に向けて出力する。
【0024】
電力供給ユニット11の機能について詳しく説明する。
【0025】
図2に示すように、電力供給ユニット11は、充電器コントローラ110と、電力変換回路111と、ワンショットパルス生成回路112と、電圧センサ113とを備えている。
【0026】
充電器コントローラ110は、電力供給ユニット11全体の制御を司る。特に、充電器コントローラ110は、PWM(Pulse Width Modulation)信号を電力変換回路111に出力して制御することで、所望の直流電圧をバッテリBT1に印加させることができる。
充電器コントローラ110の他の機能については後述する。
【0027】
電力変換回路111は、充電設備2の電力源Pから供給される交流電圧を、バッテリBT1を充電するための直流電圧に変換する回路である。電力変換回路111は、トランス、リアクトルなどの磁気部品およびパワー半導体によって構成され、これらが充電器コントローラ110からのPWM信号に基づいてスイッチングすることで、交流電圧が直流電圧に変換される。
【0028】
ワンショットパルス生成回路112は、充電コネクタ20が差込口SCに接続されたことを検知する接続検知部の一態様である。ワンショットパルス生成回路112は、接続された充電コネクタ20を介して供給される交流電圧を受け付けると、直ちにワンショットパルスを生成し、電気コントローラ10に向けて出力する。このワンショットパルスを受け付けた電気コントローラ10は、自己起動部100の機能により、電気コントローラ10自身の起動を開始する。
【0029】
電圧センサ113は、電力源Pから供給される入力電圧を計測するためのセンサである。
【0030】
次に、充電器コントローラ110が有する機能について説明する。
【0031】
図2に示すように、充電器コントローラ110は、判定値算出部1100、判定部1101、通知部1102を有している。
【0032】
判定値算出部1100は、充電コネクタ20を介して電力源Pから供給される入力電圧を取得して、入力電力情報の一例である入力電圧の実効値を算出する。
判定部1101は、入力電力に関する入力電力情報と、所定の判定閾値とに基づいて、入力電力の異常の有無を判定する。本実施形態において具体的には、判定部1101は、判定値算出部1100によって算出された入力電圧の実効値と所定の判定閾値との対比に基づいて、充電コネクタ20を介して入力される入力電圧が異常である否かを判定する。
通知部1102は、判定部1101により入力電圧が異常であると判定された場合に、当該異常が発生した旨をモニタMONへ表示してオペレータに通知する。
【0033】
(充電制御装置の処理フロー)
図3は、第1の実施形態に係る充電制御装置の処理フローを示す図である。
以下、図3を参照しながら、充電制御装置1A全体の処理の流れについて説明する。
【0034】
まず、電気コントローラ10の処理の流れについて説明する。図3に示すステップS10~S16の処理フローは、電気コントローラ10が実行する処理フローであり、初期状態では、電気コントローラはOFF状態である。また、イグニッションキーもOFF状態である。
【0035】
図3に示すように、まず、電気コントローラ10の自己起動部100は、ワンショットパルスの入力、または、イグニッションキーのON状態への遷移、を待ち受けている状態にある。
【0036】
オペレータにより充電コネクタ20が差込口SCに接続されて、自己起動部100に、ワンショットパルス生成回路112からワンショットパルスが入力された場合、またはイグニッションキーがON状態となった場合(ステップS10;YES)、自己起動部100は、スイッチR1をオンして常用電源BT2を接続する。これにより、電気コントローラ10自身が常用電源BT2に接続され、電力が供給される。常用電源BT2から電力が供給されると、電気コントローラ10は直ちに起動処理を開始する(ステップS11)。
【0037】
電気コントローラ10の起動が完了すると、電気コントローラ10の充電器コントローラ起動部101は、起動が完了してから、予め定められた遅延時間待機する(ステップS12)。
【0038】
ステップS12において遅延時間の待機が完了すると、続いて、充電器コントローラ起動部101は、ワンショットパルス生成回路112からワンショットパルスを受け付けているか否か、すなわち、ワンショットパルスの入力レベルが“HI”となっているか否かを判定する(ステップS13)。
【0039】
ワンショットパルスの入力レベルが“HI”となっていなかった場合(ステップS13;NO)、電気コントローラ10は“キーオンモード”へ移行する(ステップS14)。キーオンモードへ移行した後、電気コントローラ10はスイッチR2をオフ状態に維持し、充電器コントローラを起動しないようにする(ステップS15)。また、制限処理部102はスイッチR3をオンにし、電動モータMTRへ電力供給できる状態にする(ステップS16)。
【0040】
ワンショットパルスの入力レベルが“HI”となっていた場合(ステップS13;YES)、電気コントローラ10は“充電モード”へ移行する(ステップS17)。充電モードへ移行後、充電器コントローラ起動部101は、スイッチR2をオンにして、充電器コントローラ110を起動する(ステップS18)。これにより、充電器コントローラ110が常用電源BT2に接続され、充電器コントローラ110に電力が供給される。充電器コントローラ110は、電力の供給により起動すると、直ちに後述する処理(図4参照)を実行する。
充電モードへ移行した場合、制限処理部102はスイッチR3をオフに維持し、電動モータMTRへ電力供給できない状態にする(ステップS19)。これにより、電動ショベル1の動作が制限され、充電中の安全を確保することが出来る。
【0041】
なお、電気コントローラ10は、“キーオンモード”または“充電モード”へ移行してから、電源が切れるまで、移行したモードを維持するように構成されている。例えば、イグニッションキーをオンにして、電気コントローラが“キーオンモード”へ移行した後に、充電コネクタ20が差込口SCに差し込まれたとしても、電気コントローラ10のモードが“充電モード”に移行し、充電器コントローラ110がONになることはない。逆に、充電コネクタ20を差込口SCに差し込んで、電気コントローラ10を“充電モード”へ移行した後に、イグニッションキーをオンにしたとしても、電気コントローラ10のモードが“キーオンモード”に移行し、電動モータMTRが動き出すことがない。これにより、充電中にもかかわらず、誤って電動ショベル1を操作しようとしても、電動ショベル1の動作が制限されるため、充電中の安全を確保することが出来る。
【0042】
続いて、電気コントローラ10の充電指令部103は、バッテリBT1の充電状態に応じた直流電力を示す充電指令を充電器コントローラ110に出力し、充電を開始させる(ステップS20)。
【0043】
次に、充電器コントローラ110の処理の流れについて説明する。図3に示すステップS21~S23の処理フローは、充電器コントローラ110が有する機能のうち入力電圧の異常検知に関する処理フローであって、電気コントローラ10によって起動された直後から実行される。
【0044】
充電器コントローラ110の判定値算出部1100は、電圧センサ113を通じて1周期分の入力電圧の実測値を取得する。そして、判定値算出部1100は、当該1周期分の入力電圧の実効値を演算する(ステップS21)。
続いて、充電器コントローラ110の判定部1101は、ステップS21で取得された入力電圧の実効値が所定の判定閾値を上回っているか否かを判定する(ステップS22)。
入力電圧の実効値が判定閾値を上回っていない場合(ステップS22;NO)、入力電圧は正常であるとの判断に基づき、充電器コントローラ110は、特段の処理を行うことなくステップS21の処理に戻る。
入力電圧の実効値が判定閾値を上回っていた場合(ステップS22;YES)、判定部1101は、入力電圧が異常であると判定する。判定部1101による判定結果を受け、充電器コントローラ110の通知部1102は、モニタMONを通じて異常通知を行う(ステップS23)。なお異常通知は、警報ランプを点灯させる、警告音を発するという方法をとることができる。
また、入力電圧の実効値が判定閾値を上回っていた場合(ステップS22;YES)、充電器コントローラは差込口SCから電力変換回路111の間に設けられた、図示しないスイッチをオフにして、供給される交流電圧を遮断し、バッテリBT1の充電を停止する。
【0045】
(作用、効果)
図4は、第1の実施形態に係る充電制御装置による作用、効果を説明するための図である。
次に、図4を参照しながら、図3図4に示した充電制御装置1Aの処理によって得られる作用、効果について説明する。
【0046】
図4に示すタイミングチャートは、充電コネクタ20を介して入力される入力電圧、充電器コントローラ110(判定値算出部1100)が演算する入力電圧の実効値、ワンショットパルス生成回路112が出力するワンショットパルス波形、電気コントローラ10のON/OFFの推移、及び、充電器コントローラ110のON/OFFの推移を同一の時系列で示している。
【0047】
図4に示すタイミングチャートは、電気コントローラ10及び充電器コントローラ110が共にOFF状態にあり、充電コネクタ20が差込口SCに接続されていない状態から開始される。図4に示すように、ある時刻t0において、オペレータが充電コネクタ20を差込口SCに接続したとする。
【0048】
時刻t0では、突入電流の発生に起因して、入力電圧が一時的に上昇している。その直後、入力電圧は直ちに整定し、安定した単相200Vの交流電圧となっている。
【0049】
また、時刻t0では、ワンショットパルス生成回路112を通じて、ワンショットパルスがLOレベルからHIレベルに遷移する。HIレベルのワンショットパルスが電気コントローラ10に入力されることで、OFF状態にあった電気コントローラ10がON状態となる(ステップS11)。なお、ワンショットパルスが入力されてから電気コントローラ10の起動が完了するまで、実際には若干のタイムラグが存在するが、図示の簡略化のため、図4では同時刻の時刻t0に起動するものとして示している。
【0050】
時刻t0で起動した電気コントローラ10は、遅延時間Δta待機する(ステップS12)。電気コントローラ10は、時刻t2においてワンショットパルスの確認を行い(ステップS13)、続く時刻t3において、ワンショットパルスの入力レベルがHIレベルである場合、充電器コントローラ110を起動させる(ステップS14)。これにより、時刻t3で、OFF状態にあった充電器コントローラ110がON状態となる。
【0051】
時刻t3においてON状態となった充電器コントローラ110は、直ちに、図4に示す処理フローである入力電圧の異常検知処理を開始する。その結果、入力電圧の実効値が取得されるのは時刻t3よりも後の時刻t4となる。即ち、充電器コントローラ110の起動完了後、最初に入力電圧実効値を取得する時刻は、突入電流によって発生した大電圧が十分に整定した後となる。したがって、充電器コントローラ110は、入力電圧の異常検知処理において、突入電流に起因する誤検知を防止することができる。
【0052】
本実施例の効果を説明するために、仮に、時刻t0で起動した電気コントローラ10が、遅延時間Δtaの待機(ステップS12)を行わずに、直ちに充電器コントローラ110を起動した場合について説明する。この場合、電気コントローラ10の起動直後に起動した充電器コントローラ110は、入力電圧が整定していない段階、即ち、時刻t1よりも前の段階で入力電圧の実効値を演算する(図4のステップS17’参照)。そのため、入力電圧の実効値が判定閾値Vthを上回っており(図4のステップS18’参照)、充電器コントローラ110は入力電圧の異常を誤検知する。
【0053】
以上のように、第1の実施形態に係る充電制御装置1Aによれば、電気コントローラ10は、自身の起動完了後、遅延時間Δta遅れて充電器コントローラ110を起動させる。即ち、判定部1101は、入力電力が入力されてから所定時間経過後に、起動する。これにより、充電器コントローラ110は、充電コネクタ20の接続時に生じた一時的な大電圧が十分に整定してから異常検知処理を開始する。したがって、突入電流に起因する入力電圧の異常の誤検知が抑制される。
【0054】
以上、第1の実施形態に係る充電制御装置1Aによれば、充電設備2から供給される入力電圧の異常の有無を適切に判別することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る充電制御装置及びこれを搭載する電動ショベルについて、図5図6を参照しながら詳細に説明する。
なお、第2の実施形態に係る電気コントローラ10及び充電器コントローラ110の機能構成は、図2に示す第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
(充電制御装置の処理フロー)
図5は、第2の実施形態に係る充電制御装置の処理フローを示す図である。
以下、図5を参照しながら、第2の実施形態に係る充電器コントローラ110の処理の流れについて説明する。図5に示す処理フローは、充電器コントローラ110が有する機能のうち入力電圧の異常検知に関する処理フローであって、電気コントローラ10によって起動された直後から実行される。
【0057】
充電器コントローラ110の判定値算出部1100は、電圧センサ113を通じて1周期分の入力電圧の実測値を取得する。そして、判定値算出部1100は、当該1周期分の入力電圧の実効値を演算する(ステップS30)。
続いて、充電器コントローラ110の判定部1101は、検出フラグがONとなっているか否かを判定する(ステップS31)。ここで「検出フラグ」とは、判定閾値を上回る入力電圧の実効値を検出した場合にONとなるフラグである。
検出フラグがOFFであった場合(ステップS31;NO)、判定部1101は、ステップS30で取得された入力電圧の実効値が所定の判定閾値を上回っているか否かを判定する(ステップS32)。入力電圧の実効値が判定閾値を上回っていない場合(ステップS32;NO)、入力電圧は正常であるとの判断に基づき、充電器コントローラ110は、特段の処理を行うことなくステップS30の処理に戻る。
他方、入力電圧の実効値が判定閾値を上回っていた場合(ステップS32;YES)、判定部1101は、検出フラグをONにして(ステップS33)再びステップS30の処理を行う。
【0058】
検出フラグがONとなっている場合(ステップS31;YES)、判定部1101は、最初に判定閾値を上回った後のステップS30で取得された入力電圧の実効値が、再び判定閾値を上回っているか否かを判定する(ステップS34)。
入力電圧の実効値が判定閾値を上回っていない場合(ステップS34;NO)、判定部1101は、一度は判定閾値を上回ったがその後すぐに整定したとの判断に基づき、検出フラグをOFFに戻して(ステップS35)、ステップS30の処理に戻る。
【0059】
入力電圧の実効値が判定閾値を上回っていた場合(ステップS34;YES)、判定部1101は、最初に判定閾値を上回ってから予め定められた時間(以下、所定時間とも表記する。)が経過したか否かを判定する(ステップS36)。最初に判定閾値を上回ってから所定時間が経過していない場合(ステップS36;NO)、判定部1101は、検出フラグをONに維持したままステップS30の処理に戻る。
検出フラグON、かつ、入力電圧の実効値が判定閾値を上回り、かつ、所定時間を経過した場合(ステップS36;YES)、入力電圧の実効値が、所定時間連続して判定閾値を上回っていたということである。したがって、この場合は、判定部1101は、入力電圧に異常が生じていると判定する。そして、充電器コントローラ110の通知部1102は、判定部1101の判定結果に基づき、モニタMONを通じた異常通知を行う(ステップS37)。また、充電器コントローラ110は、バッテリBT1の充電を停止する。
【0060】
(作用、効果)
次に、図6を参照しながら、図5に示した充電制御装置1Aの処理によって得られる作用、効果について説明する。
図6に示すタイミングチャートは、第1の実施形態(図4)と同様に、充電コネクタ20を介して入力される入力電圧、充電器コントローラ110(判定値算出部1100)が演算する入力電圧の実効値、ワンショットパルス生成回路112が出力するワンショットパルス波形、電気コントローラ10のON/OFFの推移、及び、充電器コントローラ110のON/OFFの推移を同一の時系列で示している。
【0061】
図6に示すタイミングチャートは、充電コネクタ20が差込口SCに接続されてから十分な時間が経過し、電気コントローラ10及び充電器コントローラ110が共に電源ONの状態から開始されるものとする。ここで、オペレータの操作等に起因して充電コネクタ20と差込口SCとの間で接触不良が生じ、時刻t5から時刻t6までの間、一時的に充電コネクタ20が切断されたとする。
【0062】
図6に示すように、時刻t5から時刻t6までの間、充電コネクタ20の切断により入力電圧がゼロとなっている。また、接続が復帰した時刻t6では、再び突入電流が発生し、これに起因して入力電圧が一時的に上昇している。
なお、時刻t5から時刻t6までの期間が十分に短いため、同期間の間、電気コントローラ10及び充電器コントローラ110はON状態を維持している。
【0063】
充電器コントローラ110は、突入電流が発生した時刻t6においてON状態にあるため、その直後の時刻t7で入力電圧実効値を演算して取得した結果(ステップS30)、当該入力電圧実効値が判定閾値Vthを上回ったと判定する(ステップS32)。しかし、本実施形態に係る充電器コントローラ110は、この時点では「入力電圧の異常が発生した」とは判定しない。この後、充電器コントローラ110は、更に、時刻t7から所定の所定時間Δtbが経過するまで、即ち、時刻t8を経過するまで、連続して入力電圧実効値を取得し、当該入力電圧実効値が判定閾値Vthを上回っているか否かを判定する(ステップS34)。そして、時刻t7から所定時間Δtbが経過する前に入力電圧実効値が判定閾値Vth以下に収まって整定した場合には(ステップS34;NO)、入力電圧を異常と判定しない。
【0064】
以上のように、第2の実施形態に係る充電制御装置1Aによれば、充電器コントローラ110の判定部1101は、第1の時刻である時刻t7において、入力電圧実効値が判定閾値Vthを上回っていると判定した場合に、当該第1の時刻から所定時間Δtb連続して入力電圧実効値が判定閾値Vthを上回っているか否かを繰り返し判定する。即ち、判定部1101は、入力電力が入力されてから所定時間を経過するまでの入力電力情報の変化に基づき、入力電圧に異常が発生したか否かの判定を行う。そして、第1の時刻から所定時間Δtb連続して入力電圧実効値が判定閾値Vthを上回っていた場合、入力電圧の異常を検知する。
このようにすることで、突入電流に起因する入力電圧異常の誤検知を一層抑制することができる。特に、図6に示したように、電気コントローラ10及び充電器コントローラ110がON状態で突入電流が入力された場合であっても、当該突入電流に起因する入力電圧異常の誤検知を抑制することができる。
なお、上記の説明では、第2の実施形態に係る充電制御装置1Aは、電気コントローラ10及び充電器コントローラ110がともにON状態となっているものとして説明したが、この態様に限られない。例えば、第2の実施形態に係る充電制御装置1Aは、電気コントローラ10及び充電器コントローラ110がOFF状態からON状態に移行する際にも用いることができる。
【0065】
(変形例)
以上、第1、第2の実施形態に係る充電制御装置1Aについて詳細に説明したが、充電制御装置1Aの具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0066】
例えば、第2の実施形態に係る充電制御装置1Aは、電気コントローラ10及び充電器コントローラ110の各々が起動して動作するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。他の実施形態に係る充電制御装置1Aは、電気コントローラ10及び充電器コントローラ110が一体に形成されたものであってもよい。
【0067】
また、第2の実施形態においては、電気コントローラ10は、第1の実施形態と同様に、自身が起動してから、所定の期間として遅延時間Δta、充電器コントローラ110の起動を遅らせるものとして説明したが、この態様に限定されない。
即ち、他の実施形態に係る電気コントローラ10は、充電器コントローラ110の起動を遅らせる機能を具備しなくともよい。このような態様であっても、第2の実施形態に係る充電器コントローラ110の機能(図5に示す処理フロー)に基づいて、突入電流に起因する入力電圧の異常の誤検知を抑制することができる。
【0068】
また、第2の実施形態の変形例に係る充電器コントローラ110は、電圧実効値が判定閾値を上回った後、所定時間が経過するまでの間、電圧実効値が判定閾値を上回るか否かに関わらず、入力電圧の状態に異常が生じていないと判定してもよい。
また、第2の実施形態の他の変形例に係る充電器コントローラ110は、電圧実効値が判定閾値を上回った後、所定時間が経過するまでの間、電圧実効値が判定閾値を上回るか否かの判定を中断し、所定時間経過後に判定を再開してもよい。
【0069】
なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る充電制御装置1Aは、充電コネクタ20を介して入力される入力電圧の異常を検知するものとして説明したが、他の実施形態においてはこれに限られない。他の実施形態に係る充電制御装置1Aは、充電コネクタ20を介して入力される入力電流の異常を検知するものであってもよい。即ち、入力電力情報とは、入力電圧の実効値に限られず、例えば入力電流の実効値であってもよい。更に、入力電力情報とは、入力電圧又は入力電流の実効値に限られず、入力電圧又は入力電流の振幅値や平均値などであってもよい。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 電動ショベル(電動作業機械)、1A 充電制御装置、10 電気コントローラ、100 自己起動部、101 充電器コントローラ起動部、102 制限処理部、103 充電指令部、11 電力供給ユニット、110 充電器コントローラ、1100 判定値算出部、1101 判定部、1102 通知部、111 電力変換回路、112 ワンショットパルス生成回路(接続検知部)、113 電圧センサ、2 充電設備、20 充電コネクタ、BT1 バッテリ、BT2 常用電源、P 電力源、MON モニタ、INV インバータ、MTR 電動モータ、SC 差込口
図1
図2
図3
図4
図5
図6