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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】吸着装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
B25J5/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018189841
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020059065
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003388
【氏名又は名称】東京計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】村越 尊雄
(72)【発明者】
【氏名】土屋 憲司
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-004594(JP,A)
【文献】特開平06-072365(JP,A)
【文献】特開平04-166480(JP,A)
【文献】特開平05-263817(JP,A)
【文献】特開平10-264032(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0888861(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00-15/06
B62D 57/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面との間に負圧となる減圧空間を画成して前記壁面に吸着する吸着装置であって、
前記壁面に対向するように該壁面から離間して設けられる基台であって、該基台と前記壁面との間に生じる前記減圧空間の減圧を行う減圧装置と接続される基台と、
前記基台の周縁に設けられ、前記減圧空間の周壁における基台側部分を弾性部材により形成する第1仕切部と、
前記第1仕切部よりも前記壁面側に設けられ、該壁面側の一端部が前記壁面に接触するように、前記減圧空間の周壁における壁面側部分を弾性部材により形成する第2仕切部と、
前記第2仕切部より高い剛性を有する部材により前記第2仕切部に対応する枠状に形成され、前記減圧空間が負圧となることにより前記第2仕切部の前記基台側の他端部が前記減圧空間に引き込まれるように変形することを規制するように前記第2仕切部に設けられる第1規制部材と
前記減圧空間を横断するように延在して長尺に形成され、両端部が前記第1規制部材に連結される横梁部材と
を備える吸着装置。
【請求項2】
前記第1仕切部と前記第2仕切部との間に設けられ、前記減圧空間の周壁を弾性部材により形成する少なくとも1つ以上の第3仕切部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の吸着装置。
【請求項3】
前記第3仕切部より高い剛性を有する部材により前記第3仕切部に対応する枠状に形成され、前記減圧空間が負圧となることにより前記第3仕切部の前記基台側の他端部が前記減圧空間に引き込まれるように変形することを規制するように前記少なくとも1つ以上の第3仕切部のそれぞれに設けられる第2規制部材を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の吸着装置。
【請求項4】
前記減圧空間を横断するように延在して長尺に形成され、両端部が前記第2規制部材に連結される横梁部材を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の吸着装置。
【請求項5】
前記第2仕切部は、前記減圧空間を包囲する内部空間を画成するようにシート状の弾性部材により形成されることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の吸着装置。
【請求項6】
前記第2仕切部における前記壁面との接地部分は、前記壁面側に突出する曲面として形成されることを特徴とする請求項5に記載の吸着装置。
【請求項7】
前記第2仕切部における内部空間には、弾性部材である充填部材が充填されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の吸着装置。
【請求項8】
前記減圧空間における前記基台と前記横梁部材との間に設けられ、前記基台と前記横梁部材とを離間させる弾性力を有する第1調節部材を更に備えることを特徴とする請求項に記載の吸着装置。
【請求項9】
前記第1仕切部は、前記減圧空間を包囲する内部空間を画成するようにシート状の弾性部材により形成されるとともに、該内部間を画成するように設けられた連結部材を介して前記基台と連結され、
前記第1仕切部における内部空間において、前記連結部材と前記第1仕切部の底部との間に設けられ、該底部と前記連結部材とを離間させる弾性力を有する第2調節部材を更に備えることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に吸着する吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の検査を行うための移動装置として、壁面を走行するロボットが知られている。この種のロボットとしては、本体に設けられた吸着装置が壁面に吸着することにより壁面を走行可能としたものが提案されており、その吸着方式としては、プロペラによる壁面への押し付け、真空ポンプやファンによる減圧吸着、磁力による吸着、また、静電力や分子間力を用いた壁面への吸着などがある。
【0003】
橋梁の橋脚、箱桁、建物外壁などの構造物の壁面、即ち、コンクリートのような絶縁性の物体に吸着して安定してロボットを移動させる場合、上述の吸着方式のうち、真空ポンプやファンによる減圧吸着が有効である。この減圧吸着は、ロボットと吸着対象の壁面と間において画成された空間の空気を外部へ排出することによって空間を減圧し、この空間内の気圧と大気圧との差圧によりロボットを壁面に吸着させるものである。
【0004】
このような減圧吸着により壁面を走行する装置として、車両の左右両側に各1式の駆動走行手段を備える走行車両であって、剛性乃至剛性材料から形成された受圧本体と、受圧本体及び走行面と協働して減圧領域を規定する仕切壁と、減圧領域から流体を排出して減圧領域内を減圧するための減圧生成手段とを具備する走行車両、が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-62659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、減圧吸着において吸着対象とする壁面には、多くの場合、隙間や凹凸などが存在し、このような壁面に対しては、吸着力が極端に減少して壁面に安定して吸着することができない。これに対し、吸着に際して減圧される減圧空間を包囲するように形成され、壁面に接する仕切部を剛性の低い部材により形成することにより、凹凸に対応することができるが、減圧空間へ仕切部が引き込まれてしまい、安定して吸着することができない、という問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、より安定して壁面に吸着することができる吸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本実施形態に係る吸着装置は、壁面との間に負圧となる減圧空間を画成して前記壁面に吸着する吸着装置であって、前記壁面に対向するように該壁面から離間して設けられる基台であって、該基台と前記壁面との間に生じる前記減圧空間の減圧を行う減圧装置と接続される基台と、前記基台の周縁に設けられ、前記減圧空間の周壁における前記基台側部分を弾性部材により形成する第1仕切部と、前記第1仕切部よりも前記壁面側に設けられ、該壁面側の一端部が前記壁面に接触するように、前記減圧空間の周壁における前記壁面側部分を弾性部材により形成する第2仕切部と、前記第2仕切部より高い剛性を有する部材により前記第2仕切部に対応する枠状に形成され、前記減圧空間が負圧となることにより前記第2仕切部の前記基台側の他端部が前記減圧空間に引き込まれるように変形することを規制するように前記第2仕切部に設けられる第1規制部材とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より安定して壁面に吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る移動装置の構成を示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る吸着装置の構成を示す斜視図である。
図3】第1仕切部の構成を示す斜視図である。
図4】仕切部の構成を示す断面図である。
図5】第2仕切部の構成を示す斜視図である。
図6】規制部材の構成を示す斜視図である。
図7】第1仕切部と第2仕切部との連結を示す断面図である。
図8】凹部を通過する仕切部を示す断面図である。
図9】凸部を通過する仕切部を示す断面図である。
図10】第2の実施形態に係る仕切部の構成を示す斜視図である。
図11】横梁部材の構成を示す断面図である。
図12】第3の実施形態に係る仕切部の構成を示す断面図である。
図13】第4の実施形態に係る仕切部の構成を示す断面図である。
図14】第5の実施形態に係る吸着装置の構成を示す斜視図である。
図15】第6の実施形態に係る仕切部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
(移動装置の構成)
本実施形態に係る移動装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る移動装置の構成を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る移動装置1は、吸着装置10と走行装置20とを備える。走行装置20は、本体部21と2つの車輪22a,22bとを備え、2つの車輪22a,22bのそれぞれは、軸方向が平行するとともに軸心位置が一致する回転軸221a,221bを介して回転可能に本体部21に設けられる。なお、この走行装置20においては、回転軸221a,221bを回転駆動させる駆動装置が備えられるものとするが、図1においては駆動装置を省略した移動装置1が示される。この走行装置20によれば、移動装置1は、回転軸221a,221b周りに2つの車輪22a,22bが回転されることによって壁面を走行することができる。
【0014】
なお、以降の説明において、移動装置1の直進方向を前後方向、回転軸221a,221bの軸方向を側方向、前後方向及び側方向に直交する方向、即ち、2つの車輪22a,22bの接地面としての壁面の面内方向に略垂直する方向を垂直方向と称する。また、この垂直方向における接地面側を下側、その逆方側を上側と称する。また、前後方向及び側方向を、垂直方向に直交する方向として直交方向と総称する。
【0015】
走行装置20の本体部21には、吸着装置10が本体部21の下方に位置するように取り付けられており、吸着装置10が壁面に吸着した状態で走行装置20が走行することによって、移動装置1は壁面を移動することができる。
【0016】
(吸着装置の構成)
本実施形態に係る吸着装置の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る吸着装置の構成を示す斜視図である。
【0017】
図2に示すように、吸着装置10は、基台11と、第1仕切部12と、第2仕切部13と、減圧装置14とを備え、基台11、第1仕切部12及び第2仕切部13によって壁面と協働して垂直方向に所定の大きさに形成された減圧空間が画成され、吸着装置10は、減圧装置14により減圧空間が減圧され負圧となることにより壁面に吸着可能に構成される。
【0018】
基台11は、減圧空間を挟んで壁面と垂直方向に対向して離間するように設けられて減圧空間を上方から閉鎖する部材であり、直交方向に延在する略平板上の底面部110と、この底面部110の周縁の全域に渡って形成され、周縁から上方に延在する周壁部111とを備え、全体として、上方が開口した箱状に形成される。底面部110には、減圧空間と外部と連通させる排気孔(不図示)が形成され、この排気孔を介して減圧空間内を減圧させるように減圧装置14が設けられる。周壁部111には側方に互いに対向するように設けられ、それぞれ上方に延在する2つの取付部112a,112bが形成され、2つの取付部112a,112bを介して、吸着装置10が走行装置20に取り付けられる。
【0019】
第1仕切部12と第2仕切部13は、減圧空間を直交方向から全周に亘って、即ち前後方向及び側方向から包囲して減圧空間と外部とを仕切る仕切部を構成する部材であり、第1仕切部12は周壁部111を包囲するように周壁部111に連結される、第2仕切部13は第1仕切部12の下方に連結される。また、第1仕切部12は減圧空間の周壁における基台11側部分を形成し、第2仕切部13は減圧空間の周壁における壁面側部分を形成する。
【0020】
減圧装置14は、上述したように、排気孔を介して減圧空間内を減圧可能に基台11の底面部110に設けられる。本実施形態において、減圧装置14は、排気ファンとして構成されるが、減圧空間を減圧可能であればいかなる装置であっても良く、例えば真空ポンプとして構成しても良い。
【0021】
(第1仕切部の構成)
第1仕切部の構成について説明する。図3は、第1仕切部の構成を示す斜視図である。図4は、仕切部の構成を示す断面図である。
【0022】
図3に示すように、第1仕切部12は、減圧空間を直交方向から全周に亘って包囲するように全体として枠状に形成されるとともに、図4に示すように、横断面が上方に開いた略U字状に形成される。ここで、横断面とは、第1仕切部12において前後方向または側方向に延在する部分を、その延在方向に直交する平面により切断した面を意味する。第1仕切部12は、直交方向内方において、減圧空間を直交方向から包囲するように垂直方向に所定距離だけ延在する内方壁部121と、直交方向外方において、内方壁部121を直交方向から包囲するように垂直方向に所定距離だけ延在する外方壁部122と、直交方向に延在して内方壁121と外方壁122とを下方で接続する底壁部123を有する。また、本明細書において、枠状とは、環状の枠状や矩形状の枠状など、所定の空間を取り囲む形状を意味するものとする。
【0023】
内方壁部121、外方壁部122及び底壁部123は、シート状の弾性部材を折り曲げることにより形成され、本実施形態において、この弾性部材は、0.2mm厚の薄膜状に形成されたウレタンゴムシートとする。また、第1仕切部12は、連結部材129を介して基台11に連結される。この連結部材129は、図3に示すように、全体として枠状に形成されるとともに、図4に示すように、断面が上方に開口した略U字状に形成される。
【0024】
第1仕切部12は、内方壁部121が連結部材129と基台11の周壁部111との間に挟まれ、外方壁部122が連結部材129と長尺の板状に形成された連結プレート153(図2参照)との間に挟まれた状態において、円筒状に形成されたスペーサ20を介してボルト15により締結される。このボルト15は、円筒状に形成され、一端に頭部152が形成されるとともに他端にねじ部(不図示)が形成され、このねじ部にナット151が締め付けられることで、周壁部111と第1仕切部12とが連結される。この連結状態において、第1仕切部12と周壁部111との連結に係る各部材は、直交方向外方(図4においては左側)から頭部152、連結プレート153、外方壁部122、連結部材129、内方壁部121、周壁部111、ナット151の順に位置付けられる。
【0025】
このような第1仕切部12によれば、弾性部材により形成されているため、垂直方向の剛性を低くすることができ、また、内方壁部121、外方壁部122が基台11に連結されることから直交方向の移動が規制されるため、図4に示すような、減圧空間D内への第1仕切部12の過度の引き込みを低減することができ、延いては、第1仕切部12の、特にその内方壁部121の減圧空間D内に配設される部材(不図示)への当接を防ぐことができる。
【0026】
(第2仕切部の構成)
第2仕切部の構成について説明する。図5は、第2仕切部の構成を示す斜視図である。図6は、規制部材の構成を示す斜視図である。図7は、第1仕切部と第2仕切部との連結を示す断面図である。
【0027】
図5に示すように、第2仕切部13は、第1仕切部12と同様に、減圧空間を直交方向から全周に亘って包囲するように全体として枠状に形成されるとともに、図4に示すように、その横断面が筒状に形成される。第2仕切部13は、直交方向内方において、減圧空間を直交方向から包囲するように延在する内方壁部131と、直交方向外方において、内方壁部131を直交方向から包囲するように延在する外方壁部132と、直交方向に離間する内方壁131と外方壁部132とを下方で接続する底壁部133と、内方壁131と外方壁132とを上方で接続する上壁部134とを有する。
【0028】
第2仕切部13の底壁部133は、下方に突出する曲面として形成されており、これによって、第2仕切部13の壁面に対する接地面積を狭めることができ、延いては、移動装置1の移動において第2仕切部13に掛かる摩擦力を低減させることができる。
【0029】
内方壁部131、外方壁部132、底壁部133、上壁部134は、シート状の弾性部材を筒状に折り曲げることにより形成され、本実施形態においては、第1仕切部12と同様に0.2mm厚のウレタンゴムシートにより形成されるものとする。内方壁部131、外方壁部132、底壁部133、上壁部134により画成される内部空間には、図6に示すような規制部材16が収容される。
【0030】
規制部材16は、図6に示すように、全体として第2仕切部13の内部空間に収容可能な枠体として形成され、直交方向に平行する平面を有する板状に形成された部材であり、その上面において所定の間隔で複数の突出部161が設けられる。複数の突出部161のそれぞれは、上方に突出する円柱状に形成されてその側面にねじ部が設けられる。
【0031】
図7には、横断面として、規制部材16における前後方向または側方向に延在する部分において、突出部161が形成された箇所を通り、延在方向に直交する平面により切断した面が示される。この図7に示すように、第1仕切部12と第2仕切部13との連結は、規制部材16の突出部161により第2仕切部13の上壁部134と第1仕切部12の底壁部123とを第2仕切部13の内部空間から貫通させ、ワッシャ163と規制部材16との間に第1仕切部12の底壁部123と第2仕切部13の上壁部134とを挟み込んだ状態で、突出部161にナット162が締め付けられることによってなされる。この連結状態において、第1仕切部12と第2仕切部13との連結に係る各部材は、上方から、ナット162、ワッシャ163、底壁部123、上壁部134、規制部材16の順に位置付けられる。
【0032】
なお、第1仕切部12と第2仕切部13との連結は、他の部材によってなされても良く、規制部材16は、第2仕切部13の直交方向への移動を規制するように、第2仕切部13の上壁部134の少なくとも一部と連結されるものであれば良い。このため、規制部材16は、少なくとも第2仕切部13よりも剛性が高い材料により形成され、移動装置1の重量を低減させるため、剛性が高く、且つ軽量な材料により形成されることが望ましい。
【0033】
このような第2仕切部13によれば、弾性部材により形成されているため、垂直方向の剛性を低くすることができ、また、規制部材16により第2仕切部13の直交方向の移動が規制されるとともに、第2仕切部13の固定位置をより下方に位置付けることができるため、図4に示すような、減圧空間D内への第2仕切部13の過度の引き込みを低減することができ、延いては、第2仕切部13の底壁部133が壁面Wから離間して吸着装置10による吸着力の低減を防ぐことができる。
【0034】
(仕切部の挙動)
壁面における凹凸部分を通過する際の仕切部の挙動について説明する。図8は、凹部を通過する仕切部を示す断面図である。図9は、凸部を通過する仕切部を示す断面図である。
【0035】
図8に示すように、仕切部が壁面Wにおける凹部W1を通過する場合、第1仕切部12及び第2仕切部13の垂直方向の弾性力と負圧とによって、第1仕切部12、第2仕切部13が下方に伸びるように変形して第2仕切部13の底壁部133が凹部W1に当接し、吸着装置10による吸着力が保たれる。
【0036】
また、図9に示すように、仕切部が壁面Wにおける凸部W2を通過する場合、凸部W2に対応して第1仕切部12、第2仕切部13が垂直方向に縮小し、これによって、吸着装置10による吸着力が保たれたまま、移動装置1が凸部W2を乗り越えることができる。
【0037】
また、このように、仕切部が凹部W1や凸部W2を通過して仕切部が伸縮した場合であっても、基台11、規制部材16によって、第1仕切部12、第2仕切部13の減圧空間への過度の引き込みが防止される。
【0038】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る吸着装置について説明する。図10は、本実施形態に係る仕切部の構成を示す斜視図である。図11は、横梁部材の構成を示す断面図である。
【0039】
本実施形態に係る吸着装置10aは、横梁部材17を更に備える点、また横梁部材17に対応して一部が変形された第1仕切部12aを備える点が、第1の実施形態とは異なる。この横梁部材17は、図10に示すように、減圧空間を横断するように直交方向における一方向、望ましくは、前後方向または側方向に延在する長尺の板状部材であり、一端が所定の突出部161に連結されるとともに、この所定の突出部161に対して横梁部材17の延在方向に対向する突出部161に他端が連結される。この横梁部材17は、規制部材16と同様に、少なくとも第2仕切部13よりも剛性が高い材料により形成され、剛性が高く、且つ軽量な材料により形成されることが望ましい。
【0040】
図11には、横断面として、規制部材16における前後方向または側方向に延在する部分において、横梁部材17が連結される突出部161が形成された箇所を通り、延在方向に直交する平面により切断した面が示される。この図11に示すように、第1仕切部12aには、横梁部材17を直交方向に挿通可能に形成された挿通部123aが形成される。この挿通部123aは、底壁部123において、横梁部材17の両端部が連結される2つの突出部161のそれぞれに対応して設けられ、横梁部材17の垂直方向の厚み、短手方向の幅に合わせて上方に窪んだ凹部として形成される。このため、第1仕切部12aは、横梁部材17が配される部分において他の部分よりも底壁部123が高く形成されることとなる。
【0041】
このように形成された挿通部123aによれば、第2仕切部13の上壁部134と協働して、横梁部材17が挿通可能な挿通孔が形成され、この挿通孔に横梁部材17が挿通された状態において規制部材16と横梁部材17との連結がなされる。規制部材16と横梁部材17との連結は、第1仕切部12aと第2仕切部13との連結と併せてなされ、規制部材16の突出部161により第2仕切部13の上壁部134と、横梁部材17の両端部のそれぞれに形成された連結孔171と、第1仕切部12の底壁部123とを第2仕切部13の内部空間から貫通させ、ワッシャ163と規制部材16との間に底壁部123と横梁部材17と上壁部134とを挟み込んだ状態で、突出部161にナット162が締め付けられることによってなされる。この連結状態において、規制部材16と横梁部材17との連結、第1仕切部12と第2仕切部13との連結に係る各部材は、上方から、ナット162、ワッシャ163、底壁部123、横梁部材17、上壁部134、規制部材16の順に位置付けられる。
【0042】
このように、横梁部材17を更に設けることによって、規制部材16の剛性を高めることができ、延いては、第2仕切部13の減圧空間への過度の引き込みをより防止することができる。なお、本実施形態においては、1つの横梁部材17が設けられるものとしたが、互いに平行する複数の横梁部材17を設けるようにしても良い。
【0043】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る吸着装置について説明する。図12は、本実施形態に係る仕切部の構成を示す断面図である。
【0044】
本実施形態に係る吸着装置10bは、図12に示すように、仕切部を構成する部材として、第3仕切部18を更に備える点、これに対応して2つの規制部材16a,16bを備える点が第1の実施形態とは異なる。この第3仕切部18は、第1仕切部12と第2仕切部13との間に位置するように第1仕切部12、第2仕切部13とに連結される。第3仕切部18は、第2仕切部13と略同様に、減圧空間を直交方向から全周に亘って、即ち前後方向及び側方向から包囲するように全体として枠状に形成されるとともに、その横断面が筒状に形成される。
【0045】
具体的には、第3仕切部18は、直交方向内方において、減圧空間を直交方向から包囲するように延在する内方壁部181と、直交方向外方において、内方壁部181を直交方向から包囲するように延在する外方壁部182と、直交方向に離間する内方壁部181と外方壁部182とを下方で接続する底壁部183と、内方壁181と外方壁182とを上方で接続する上壁部184とを有する。また、第3仕切部18は、第1仕切部12、第2仕切部13と同様に0.2mm厚のウレタンゴムシートにより形成されるものとする。
【0046】
第3仕切部18は、その底壁部183が第2仕切部13の上壁部134と規制部材16aによって連結され、その上壁部184が第1仕切部12の底壁部123と規制部材16aによって連結される。規制部材16a,16bのそれぞれによる連結方法は、第1の実施形態における規制部材16による連結と同様であるため説明を省略する。
【0047】
このように、第1仕切部12と第2仕切部13との間に第3仕切部18を設けることによって、垂直方向の剛性を更に低減させることができ、延いては移動装置1が凹部や凸部を走行する際の抗力を低減することができる。また、第3仕切部18が、第1仕切部12、第2仕切部13のそれぞれと、規制部材16a,16bによって連結されることにより、横方向の剛性を更に高めることができ、また、減圧空間への仕切部の引き込みによって掛かる力を分散することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、第3仕切部18を1つ設けるものとしたが、第3仕切部18を2つ以上設けるようにしても良い。
【0049】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る吸着装置について説明する。図13は、本実施形態に係る仕切部の構成を示す断面図である。
【0050】
本実施形態に掛かる吸着装置10cは、図13に示すように、第1仕切部12、第2仕切部13のそれぞれにより形成される内部空間に、充填部材19が充填される点が、第1の実施形態とは異なる。ここで、第2仕切部13の内部空間は、上述したように、内方壁部131、外方壁部132、底壁部133、上壁部134により画成される空間であり、第1仕切部12の内部空間は、内方壁部121、外方壁部122、底壁部123、連結部材129の底面により画成される空間である。
【0051】
充填部材19は、上述したような内部空間のそれぞれに充填可能な弾性部材であり、望ましくは、第1仕切部12及び第2仕切部13以上の弾性を有する部材とすると良く、本実施形態においては、充填部材19としてスポンジが内部空間に充填されるものとする。
【0052】
このように内部空間に充填部材19を充填することによって、移動装置1が運用される壁面における凹凸の程度に応じて、仕切部の垂直方向の剛性を調節することが可能となる。例えば、大きな凹凸がある壁面に対しては充填部材19の充填量を小さくし、大きな凹凸がない壁面に対しては充填部材19の充填量を大きくすることによって、仕切部を壁面の状態に対応した抗力とすることができる。
【0053】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る吸着装置について説明する。図14は、本実施形態に係る吸着装置の構成を示す斜視図である。なお、図14においては、説明上、基台の底面部の一部を透過させて示している。
【0054】
本実施形態に係る吸着装置10dは、図14に示すように、第1調節部材20を更に備える点が、第2の実施形態に係る吸着装置10aとは異なる。この第1調節部材20は、減圧空間において、横梁部材17と基台11の底面部110との間に設けられ、横梁部材17と底面部110とを垂直方向に離間させる弾性力を有し、例えば、押しばねやスポンジ状のゴムにより形成される。
【0055】
このように、減圧空間内に第1調節部材20を設けることによって、第1仕切部12や第2仕切部13の内部に弾性部材を設けるのと比較して、容易に仕切部の垂直方向の剛性を調節することが可能となる。
【0056】
<第6の実施形態>
第6の実施形態に係る吸着装置について説明する。図15は、本実施形態に係る仕切部の構成を示す断面図である。
【0057】
本実施形態に係る吸着装置10eは、図15に示すように、第2調節部材21を更に備える点が、第2の実施形態に係る吸着装置10aとは異なる。この第2調節部材21は、連結部材129、上方仕切部12の内方壁部121、外方壁部122、底壁部123により画成される内部空間内において、連結部材129と底壁部123との間に設けられる。また、第2調節部材21は、連結部材129と底壁部123とを垂直方向に離間させる弾性力を有し、例えば、押しばねややスポンジ状のゴムにより形成される。この第2調節部材21は、下端が規制部材16の突出部161に接続されるとともに、上端が取付具22を介して連結部材129に接続される。
【0058】
このように、第1仕切部12における内部空間内に第2調節部材21を設けることによって、第5の実施形態に係る吸着装置10dのように減圧空間内に第1調節部材20を設けるのに比較して、より省スペースに仕切部の垂直方向の剛性を調節することが可能となり、また、第2調節部材21が内部空間の外部の異物に晒されることがないため、耐環境性を向上させることができる。
【0059】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 吸着装置
11 基台
12 第1仕切部
13 第2仕切部
14 減圧装置
16 規制部材(第1規制部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15