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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】異物検知方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/20 20060101AFI20221115BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20221115BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20221115BHJP
   G01S 13/91 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
G01V8/20 Q
G08B21/00 U
G08B21/24
G01S13/91
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018202157
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020067437
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 京雨
(72)【発明者】
【氏名】濱口 謙一
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080735(JP,A)
【文献】特開2013-096092(JP,A)
【文献】特開平09-062842(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108132032(CN,A)
【文献】特開2014-164538(JP,A)
【文献】特開平09-228679(JP,A)
【文献】特開2009-167645(JP,A)
【文献】特開2011-164665(JP,A)
【文献】特開2012-059211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G08B 19/00-21/24
E04H 6/00-6/44
G01S 5/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進入する対象領域内を測定する測域センサを対象領域に対して配置し、
対象領域の停止位置に車両が停止しており、且つ対象領域内に異物のない状態で、前記測域センサにより被検出点データを基準データとして取得するステップと、
対象領域の停止位置に車両が停止している任意の時点において前記測域センサにより被検出点データを取得するステップと、
前記任意の時点に取得した車両の停止した領域の被検出点を含む被検出点データを、車両の停止した領域の被検出点を含む前記基準データと比較するステップと、
該ステップにおいてデータ間に所定以上の差分が見られた場合に、前記任意の時点において対象領域内に異物が存在すると判定するステップと
を含む異物検知工程を実行する異物検知方法。
【請求項2】
前記基準データは、対象領域に車両が進入し、対象領域内の停止位置に停止した時に取得される被検出点データである、請求項1に記載の異物検知方法。
【請求項3】
前記異物検知工程に加え、
対象領域内への車両の進入に伴い、前記測域センサを作動させて対象領域内の測定を時々刻々実行するステップと、
直近の時点に取得された被検出点データと、その前の時点に取得された被検出点データとを比較するステップと、
被検出点データ同士の差分が所定値以下である状態が所定時間以上継続した場合に、車両が停止したと判定するステップと
を含む車両の停止判定工程を実行する、請求項1または2に記載の異物検知方法。
【請求項4】
前記基準データとして、
前記車両の停止判定工程で、車両の停止が判定される直前において被検出点データ同士の差分が所定値以下である状態が継続している途中に取得した被検出点データ、または、
前記車両の停止判定工程で、車両の停止が判定された直後に取得した被検出点データ
を使用する、請求項3に記載の異物検知方法。
【請求項5】
車両の進入する対象領域内を測定する測域センサを備え、
対象領域の停止位置に車両が停止しており、且つ対象領域内に異物のない状態で前記測域センサにより被検出点データを基準データとして取得すると共に、
対象領域の停止位置に車両が停止している任意の時点において前記測域センサにより被検出点データを取得し、
前記任意の時点に取得した車両の停止した領域の被検出点を含む被検出点データを、車両の停止した領域の被検出点を含む前記基準データと比較し、データ間に所定以上の差分が見られた場合に、前記任意の時点において対象領域内に異物が存在すると判定するよう構成された異物検知システム。
【請求項6】
前記測域センサは、対象領域に対して2個以上が設置され、平面視で車両の停止位置の全周を測定範囲に含むように配置される、請求項5に記載の異物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駐車場等、車両の停止する領域内において、車両以外の異物を検知する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が進入し、停止する空間、例えば機械式駐車場の入出庫スペース等においては、出入口の扉を開閉したり、車両を載せたパレットを運搬するといった操作を行うにあたり、車両の他に運転者や乗員、手荷物といった異物が存在しないことを確認する必要がある。こうした異物不在の確認作業は、運転者や施設の係員等が目視で行うことができるが、人力のみに頼った場合、不注意等により確認が徹底されない可能性がある。そこで、近年では、異物の不在確認を確実に行うよう、人力のみに頼ることなく、対象領域内の異物を自動で検出する技術が要請されている。
【0003】
また、現在、各国で開発が進められている自動運転技術が本格的に実用化されれば、車両の運転のみならず、上述の如き扉の開閉やパレットの運搬といった、車両周辺において行われる種々の操作についても自動化が進められることが想定できる。例えば、自動運転により車両が乗員を目的地に送り届けた後、自動で近傍の機械式駐車場へ移動し、格納スペースに格納されるといったケースが考えられるが、この場合、車両は乗員が不在の状態で移動し、入出庫スペースに停止することになる。このとき、扉の開閉、パレットの移動の開始といった操作は、係員が異物の不在を目視で確認し、操作ボタンを入力することで実行されるようにしても良いが、異物の不在を自動で確認し、操作を開始する仕組みがあればよりスムーズである。
【0004】
このような異物の検知を行う仕組みは、機械式駐車場だけでなく、例えば電気自動車の給電設備等、停止した車両の周辺で何らかの操作を行う場所において広く必要とされ得る。
【0005】
車両の進入する対象領域内の異物を自動的に検知するための技術としては、例えば下記特許文献1に記載の如き技術が挙げられる。特許文献1には、立体駐車場において、パレット以外の外部連通部の床面全体に、圧電シートにより構成されたマットスイッチを敷設し、人の存在を検出する技術が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の技術の場合、マットスイッチの設置されていないパレット等については、人や異物を検出することができない。
【0006】
そこで、マットスイッチ等を敷設できる領域以外についても異物を検出し得る技術として、例えば下記特許文献2、3に記載の如き技術が提案されている。特許文献2には、機械式駐車設備の入庫部に測域センサを備え、該測域センサの走査情報から床面上の物体を検出する入庫部検知装置が記載されている。該入庫部検知装置では、前記測域センサの検出データのうち所定サイズ以上のものを候補データとし、そのうち自動車のタイヤとして認識したもの以外を残留物として認識する。
【0007】
特許文献3には、測域センサー(検知手段)と、制御装置(制御手段)を備えたエリア検知装置が記載されている。測域センサーは、機械式駐車設備の乗降エリアに入庫した車両の位置、大きさ、形状を検知し、車両輪郭データを取得する。制御装置は、乗降エリアのうち、前記車両輪郭データの範囲を除いた居残り検出範囲の状態を入庫初期データとして記憶し、リアルタイムデータと比較して相違の有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平06-173483号公報
【文献】特開2015-161080号公報
【文献】特開2014-80735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2、3に記載の如き技術では、異物の検知にあたってデータに対し高度な演算処理を施すことが要求される。特許文献2に記載の入庫部検知装置の場合、まず検出データから所定サイズ以上の物を候補データとして選出し、さらに候補データの中から重心位置の近いものを同一物体として関連付け、タイヤと認識する。検出データから物体のサイズを検出したり、候補データから物体の重心位置を特定して関連付ける工程に複雑な演算が必要である。
【0010】
また、特許文献3に記載のエリア検知装置の場合、測域センサーによる走査に基づき、車両の二次元あるいは三次元における輪郭を取得する。車両の表面は複雑な形状であることがほとんどであり、測域センサーのデータから車両輪郭データを作成するには、やはり複雑な演算が必要である。
【0011】
このように、異物を自動的に検知する技術は、高度な演算を要することが一般的である。このため、機械式駐車設備等において入出庫の際にデータの演算に時間がかかるなど、円滑な稼働が妨げられてしまう可能性がある。
【0012】
そこで、本開示においては、対象領域内の異物を簡便に検知し得る異物検知方法およびシステムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、車両の進入する対象領域内を測定する測域センサを対象領域に対して配置し、対象領域の停止位置に車両が停止しており、且つ対象領域内に異物のない状態で、前記測域センサにより被検出点データを基準データとして取得するステップと、対象領域の停止位置に車両が停止している任意の時点において前記測域センサにより被検出点データを取得するステップと、前記任意の時点に取得した車両の停止した領域の被検出点を含む被検出点データを、車両の停止した領域の被検出点を含む前記基準データと比較するステップと、該ステップにおいてデータ間に所定以上の差分が見られた場合に、前記任意の時点において対象領域内に異物が存在すると判定するステップとを含む異物検知工程を実行する異物検知方法にかかるものである。
【0014】
上述の異物検知方法において、前記基準データは、対象領域に車両が進入し、対象領域内の停止位置に停止した時に取得される被検出点データとすることができる。
【0015】
上述の異物検知方法においては、前記異物検知工程に加え、対象領域内への車両の進入に伴い、前記測域センサを作動させて対象領域内の測定を時々刻々実行するステップと、直近の時点に取得された被検出点データと、その前の時点に取得された被検出点データとを比較するステップと、被検出点データ同士の差分が所定値以下である状態が所定時間以上継続した場合に、車両が停止したと判定するステップとを含む車両の停止判定工程を実行しても良い。
【0016】
上述の異物検知方法においては、前記基準データとして、前記車両の停止判定工程で、車両の停止が判定される直前において被検出点データ同士の差分が所定値以下である状態が継続している途中に取得した被検出点データ、または、前記車両の停止判定工程で、車両の停止が判定された直後に取得した被検出点データを使用することができる。
【0017】
また、本開示は、車両の進入する対象領域内を測定する測域センサを備え、対象領域の停止位置に車両が停止しており、且つ対象領域内に異物のない状態で前記測域センサにより被検出点データを基準データとして取得すると共に、対象領域の停止位置に車両が停止している任意の時点において前記測域センサにより被検出点データを取得し、前記任意の時点に取得した車両の停止した領域の被検出点を含む被検出点データを、車両の停止した領域の被検出点を含む前記基準データと比較し、データ間に所定以上の差分が見られた場合に、前記任意の時点において対象領域内に異物が存在すると判定するよう構成された異物検知システムにかかるものである。
【0018】
上述の異物検知システムにおいて、前記測域センサは、対象領域に対して2個以上が設置され、平面視で車両の停止位置の全周を測定範囲に含むように配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の異物検知方法およびシステムによれば、対象領域内の異物を簡便に検知し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の実施例による異物検知システムの全体構成を説明する概要平面図である。
図2】本実施例における車両の停止判定の手順の一例を説明するフローチャートである。
図3】本実施例における異物検知工程の手順の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示における実施例の形態を添付図面を参照して説明する。図1に示す本実施例の異物検知システムは、対象領域Aとして機械式駐車設備の入出庫スペースを想定している。対象領域A内には、車両1を運搬するパレット2が出入りするようになっており、このパレット2上にあたる領域が車両1の停止位置Pに設定されている。そして、対象領域A内において、停止位置Pに停止した車両1以外に物体(異物)Oが存在する場合に、該異物Oを検知するようになっている。尚、「異物」とは、対象領域内に存在する車両以外の物体であって、対象領域にもとより設置された物体以外の物体、例えば、車両の運転者、乗員、設備の係員等の人、また、手荷物等を指す。図1には、一例として対象領域A内に2つの異物Oを図示している。
【0022】
入出庫スペースである対象領域Aは、四方を壁で囲まれた空間であり、奥側(図中上側)に搬送口3が、手前側(図中下側)に入出庫口4が設けられている。車両1を搬送するパレット2は、対象領域A外の格納スペース(図示せず)から搬送口3を通じて入出庫スペースである対象領域Aに出入りする。対象領域Aにおけるパレット2の定位置は、対象領域Aの中央部である。入庫時において、車両1は、入出庫口4を通じて対象領域A内に進入し、パレット2上の停止位置Pに停止し、パレット2と共に搬送口3から前記格納スペースへ搬送され、格納される。出庫時には、車両1はパレット2と共に前記格納スペースから搬送口3を通じて対象領域A内に搬送された後、入出庫口4から対象領域A外へ退出する。
【0023】
対象領域Aには、該対象領域A内の測定を行う測域センサ5が配置されている。測域センサ5は、図1に矢印で示す如く、レーザ光や超音波等を照射波として周囲の空間に照射し、反射波を検出する装置である。測域センサ5からの照射波が周囲の物体、あるいは壁、床、柱といった構造物に到達して反射し、その反射波が測域センサ5に検出されると、反射した点の測域センサ5からの距離、および測域センサ5に対する角度がデータとして取得される(以下、測域センサ5によって反射波を検出された対象領域A内の点を、被検出点と称する)。
【0024】
本実施例では、2個の測域センサ5を、平面視で長方形状をなす対象領域Aに対し、互いに対角線をなす角部に配置している。このように、一対の測域センサ5を、車両1の停止位置Pを挟むように配置することで、停止位置Pの平面視における全周を、測域センサ5の測定範囲に含むことができる。照射波は原則として直進するので、仮に対象領域Aに対して測域センサ5を1個だけ配置した場合、測域センサ5から見て停止位置Pに停止した車両1の反対側については測定範囲外となってしまう。そこで、図1に示す如く測域センサ5を配置すれば、車両1の周辺の領域全体について漏れなく異物検知を行うことができるのである。尚、ここに示した測域センサ5の数および配置は一例であって、測定の精度を高めたり、測定可能な範囲を広く確保するよう、3個以上の測域センサ5を対象領域Aに対し配置しても良い。
【0025】
測域センサ5により取得された各被検出点のデータ(以下、「被検出点データ」と称する)は、測定信号5aとして制御装置6に入力される。制御装置6は、入出庫スペースである対象領域Aを含む機械式駐車場全体を監視し、各部の運転を行う装置であり、搬送口3および入出庫口4の開閉、パレット2の搬送、各測域センサ5の作動等を制御する。
【0026】
入出庫口4近傍の外壁には、入庫スイッチ7が備えられている。入庫スイッチ7を操作すると、入庫信号7aが制御装置6に入力される。制御装置6では、入庫信号7aの入力を条件として、車両1の入庫に係る各工程、すなわちパレット2の搬送、入出庫口4の開放、さらに後述する停止判定の工程、等が実行されるようになっている。尚、入庫スイッチ7の設置位置は、ここに示した例に限らず、入出庫口4の動作等に好適な適宜位置を選択することができる。
【0027】
また、対象領域Aの内外の各所には、警報装置8が備えられている。警報装置8は、制御装置6の管理する領域(対象領域Aを含む)において、人員に対して注意を促すべき何らかの事態が生じた場合に警報を発する装置であり、制御装置6からの警報信号8aの入力により作動する。「人員に対して注意を促すべき何らかの事態」とは、例えば車両1を対象領域A外の格納スペースへ移動させるにあたり、後述する異物検知の工程を実行した結果、対象領域Aに車両1以外の異物Oが検知された場合などである。警報の内容は、アラーム音、警告灯の点灯、警告メッセージの表示など、人員に対して注意を喚起できればどのようなものであっても良く、適当な形式を選択することができる。
【0028】
ここに示した例では、警報装置8を対象領域Aの内壁、および入出庫口4近傍の外壁に図示しているが、この他の箇所にも必要に応じて警報装置8を設けても良い。例えば、図示しない機械式駐車場の管理室等に警報装置8を備えることもできる。
【0029】
測定信号5a、入庫信号7a、警報信号8aといった各種の信号のやり取りは、有線または無線いずれの形式で行っても良い。一例としては、Ethernet(登録商標)等により、制御装置6と測域センサ5、入庫スイッチ7、警報装置8といった装置を接続し、相互に通信を行うように構成することができる。
【0030】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
【0031】
図1に示す本実施例の異物検知システムでは、対象領域A内の異物Oの検知は勿論であるが、車両1が停止位置Pに停止したか否かも判定することができる。まず、この車両1の停止判定について説明する。
【0032】
停止判定は、入庫信号7aの入力を条件として、制御装置6にて行われる。ここに示した例では、入庫信号7aの入力は、入庫スイッチ7の操作により行われるようになっている。すなわち、車両1が入出庫口4の手前に停止したら、車両1の運転者、あるいは機械式駐車場の係員等である乗員が入庫スイッチ7を操作し、これにより入庫信号7aが入力されるのである。ただし、これはあくまで一例であって、入庫信号7aの入力は、他の方式により実行されても良い。例えば、自動運転車である車両1が無人の状態で入出庫スペースである対象領域Aの入出庫口4の前に移動し、自動で入庫する場合、入庫スイッチ7を操作する人員がいない状況も想定される。そのような場合、例えば車両1を入出庫口4の前に検出するセンサを別途設け、該センサにより車両1が検知されたら、その検知信号を入庫信号として扱うようにすれば良い。あるいは、車両1から何らかの信号を出力し、該信号を制御装置6が入庫信号として認識するようにしても良い。
【0033】
入庫信号7aが入力されたら、制御装置6は、入出庫口4を開放する。入庫の開始にあたっては、空のパレット2が対象領域A内の定位置である中央部に配備された状態で入出庫口4を開放する。仮に、入庫の開始が指示された時点で対象領域A内に空のパレット2が存在しない場合には、搬送口3を開放して空のパレット2を対象領域Aへ搬送し、中央部に配備してから、入出庫口4を開放する。そして、図2に示す停止判定工程を開始する。
【0034】
車両1は、入出庫口4が開放されると、徐行運転にて対象領域A内のパレット2に向かって移動する。制御装置6では、各測域センサ5を作動させ、それぞれの測域センサ5にて対象領域A内の測定を行う(ステップS1)。各測域センサ5では、反射波から被検出点データを取得する。この被検出点データは、ある時点において、対象領域A内の構造物や物体表面にて照射波が反射された多数の点の各測域センサ5からの距離、および各測域センサ5に対する角度である。被検出点データは、測定信号5aとして制御装置6に入力される。
【0035】
ステップS2においては、先のステップS1同様、測域センサ5による対象領域A内の測定を行う。ステップS1以降、ステップS2の測定は、繰り返し時々刻々実行する。
【0036】
そして、ステップS3,S4において、直近のステップS2で取得された被検出点データと、その前のステップS1で取得された被検出点データの比較を行う。ステップS3では、両データの差分を計算する。この差分データは、各測域センサ5毎に、取得した被検出点データに関して算出される。そして、ダウンサンプリングやノイズ除去といった処理を経たうえで、次のステップS4において、それぞれの測域センサ5に関し、差分データに残った被検出点の数が閾値未満であるか否かを判定する。
【0037】
ある時点と、別の時点との間で、対象領域A内における物体の有無、位置、角度等に差がない場合、前記ある時点に取得された被検出点データと、前記別の時点に取得された被検出点データとは、ノイズ等を考慮しない限り一致する。すなわち、両時点における被検出点データの差分はゼロとなるので、差分データには被検出点が残らない。一方、対象領域A内で物体の移動があった場合には、両時点間で被検出点データに差が生じるので、差分データに被検出点が残ることになる。つまり、ステップS4では、各測域センサ5において測定された前後の被検出点データに、所定以上の差があるか否かを判定し、これにより、対象領域A内に動きがあったか否かを判定するのである。無論、ここで想定される対象領域A内の動きとは、車両1が停止位置Pへ移動する動きである。
【0038】
一つ以上の測域センサ5において、差分データに残った被検出点の数が閾値以上であった場合は、ステップS4からステップS2に戻り、再度測域センサ5による測定を行う。そして、ここで取得した被検出点データを、次のステップS3,S4において、前回取得した被検出点データと比較する。すなわち、ステップS3で、直前のステップS2で取得した被検出点データと、その前のステップS2で取得した被検出点データの差分を算出し、その差分データを続くステップS4で判定する。差分データに残った被検出点の数が閾値未満になるまで、このステップS2~S4を繰り返す。差分データに閾値以上の数の被検出点が残っている間は、車両1が静止せずに移動していると考えられるので、差分データに残る被検出点が閾値未満となり、車両1が静止したと判断できるまで、測定を繰り返すのである。
【0039】
ステップS4において、直前のステップS3で算出された差分データに残った被検出点の数が全ての測域センサ5において閾値未満であると判定された場合には、ステップS5に移る。ステップS5では、ステップS4においてYESと判定された状態、すなわち「差分データに残った被検出点の数が全ての測域センサ5において閾値未満である状態」が所定の時間以上、継続しているか否かを判定する。つまり、直近のステップS2と、その前のステップS2またはステップS1にて取得された被検出点データ同士の差分が所定値以下である状態の継続時間を判定するのである。
【0040】
この状態の継続時間が所定値未満であった場合には、再度ステップS2へ戻り、前記状態の継続が所定の時間以上となるまでステップS2~S5を繰り返す。そして、ステップS5において前記状態の継続時間が所定値以上であると判定されたら、車両1が停止位置Pに停止したと判断する(ステップS6)。車両1をパレット2上の停止位置Pまで移動させる際には、途中で一旦停止して移動を再開するような場合も想定できるため、車両1が静止している状態が一定時間以上継続していることをもって、車両1が目的の停止位置Pに確実に停止したと判断するのである。
【0041】
停止の判定自体はステップS6までで完了するが、本実施例では、後の異物検知工程(図3参照)において使用する被検出点データを、続いて取得する。車両1が停止位置Pに停止したと判定されたらステップS7に進み、測域センサ5を作動させ、車両1が停止したと判定された直後の時点における被検出点データを取得する。ステップS8において、ステップS7で取得した被検出点データを車両1停止時の基準データとして記憶し、工程を終了する。
【0042】
尚、ここではステップS2~ステップS3を繰り返す前に、初回の被検出点データを取得する工程としてステップS1を実行しているが、このステップS1は必ずしも必要ではない。例えば、ステップS1を省略し、停止判定工程における最初のステップS3では、直前のステップS2で取得した被検出点データをNullデータと比較するようにしても良い。その場合、最初のステップS3で算出される差分データは必ず閾値以上の被検出点データとなり、車両1は動いていると判定されるので、停止判定にあたって特に支障はない。
【0043】
また、基準データとして使用する被検出点データを取得するタイミングは、ここに述べた例に限定されない。対象領域A内の停止位置P内に車両1が停止しており、対象領域A内に異物Oが存在しないと考えられる状態で測域センサ5において取得された被検出点データであれば、基準データとして利用することができる。例えば、図2に示す車両1の停止判定工程において、ステップS5で車両1の停止が判定される直前、被検出点データ同士の差分が所定値以下である状態が継続している途中にステップS2で取得された被検出点データを、基準データとしても良い。
【0044】
図2に示す工程では、ステップS5で所定の状態の継続時間が所定値以上となったと判定されるまでの間、ステップS2~S4を繰り返すが、この間は、ステップS4における判定がYESである状態が継続している。つまり、この間にステップS2で取得される被検出点データは、「対象領域A内の停止位置P内に車両1が停止しており、対象領域A内に異物Oの存在しない状態の被検出点データ」と考えることができる。そこで、ステップS5においてYESの判定が行われたら、そのステップS5の判定に至るまでステップS4のYES判定が継続していた間にステップS2で取得された被検出点データを、基準データとして記憶するのである。このようにしても、「車両1が対象領域A内の停止位置Pに停止した時の被検出点データ」であり、「対象領域A内に異物Oがない状態で取得された」と考えることができる被検出点データを、基準データとして取得することができる。
【0045】
尚、ここでは図1に示す如き異物検知のための本システムを車両1の停止判定に利用する場合を例示したが、機械式駐車場等に本開示の如き異物検知システムを設置するにあたり、必ずしも同システムに停止判定と異物検知の両方の機能を兼ねる必要はない。後述する異物検知の工程は図1に示す如きシステムで行う一方、停止判定に関しては、例えばパレット2に対する車両1の位置を検知するようなセンサ等を別途設置して行っても良い。ただし、対象領域Aにおける車両1の移動や停止と、車両1周辺での各種の操作とをスムーズに連携させるためには、本実施例のように、異物検知のためのシステムにより車両1の停止をも判定できるようにした方が、システム構成の単純化や動作の高速化の面で有利である。あるいは、本実施例の如きシステムで停止判定を行いつつ、別途設置したセンサ等によっても停止判定を行うといったように、複数のシステムを併用しても良い。
【0046】
次に、異物検知工程について、図3を参照しながら説明する。
【0047】
異物検知工程は、対象領域A内の状態を確認したい任意のタイミングで開始することができる。例えば、入庫時に車両1内に運転者や乗員がいたり、対象領域A内に係員等がいたりする場合には、停止位置Pに車両1が停止した後、パレット2による車両1の搬送を開始する前に、対象領域Aが無人であることを確認する必要があることが想定できる。その場合は、図2に示す一連の工程が終了した直後に異物検知工程を自動的に開始し、異物Oが検知されなかったことを条件としてパレット2の移動を実行すれば良い。あるいは、図示しないスイッチ等の操作により車両1の搬送が指示された時点で異物検知工程を開始し、異物Oが検知されなかった場合に搬送を行い、検知されたら搬送を停止するようにしても良い。また、入出庫口4を閉鎖する際にも、異物検知工程を実行して異物Oの不在を確認してから扉の動作を行う、といった態様が想定できる。
【0048】
異物検知工程では、まず、異物検知をしたい任意の時点における被検出点データを取得する(ステップS11)。リアルタイムの異物検知を行う場合、この時点で測域センサ5を作動させ、対象領域A内の測定を行えば良い。次のステップS12,S13で、ステップS11にて取得した被検出点データと、基準データとを比較する。ステップS12では、両データの差分を測域センサ5毎に算出する。基準データとしては、例えば上に説明したように、車両1の入庫時、車両1が停止位置Pに停止した際に取得した被検出点データを使用することができる(図2、ステップS7,S8参照)。
【0049】
差分データについて、ダウンサンプリングやノイズ除去といった処理を行い、残った被検出点データについてラベリング処理を行う(ステップS13)。このステップS13では、例えば差分として残った被検出点データのうち、複数の被検出点が互いに近い座標に存在していた場合、それらの被検出点に同じ標識を付し、それらは同一の異物Oに属すると見なす処理を行う。
【0050】
続くステップS14~S16では、ステップS12,S13で行った比較の結果、データ間に所定以上の差分が見られるか否かを判定し、これに基づき、ステップS11にて被検出点データを取得した時点において対象領域Aに異物Oが存在するか否かを判定する。ステップS14では、ラベリングされた各測域センサ5の差分データに関し、異物Oの個数をカウントする。一つ以上の測域センサ5において、差分データに一個以上の異物Oと見られる被検出点データが認められたら、検知フラグを立て(ステップS15)、異物検知工程は終了する。いずれの測域センサ5の差分データにも異物Oと見られる被検出点データがなければ、検知フラグを立てずに(ステップS16)、異物検知工程は終了する。
【0051】
以上の異物検知工程において検知フラグが立った場合には、例えばパレット2の移動、あるいは入出庫口4の開閉といった動作を停止したり、操作を禁止するなどの処置を行う。また、必要に応じて警報装置8から警報を発報する。そして、例えば係員等により対象領域A内に異物Oが無いことが確認され、警報が解除されたら、再度上記の異物検知工程を実行する。異物検知工程を再実行し、検知フラグが立った場合には、パレット2、入出庫口4等の操作を禁止したままとし、検知フラグが立たなければ、操作の禁止を解除すれば良い。
【0052】
このような異物検知システムおよび方法によれば、対象領域Aに対して測域センサ5を配置した簡単な構成により、対象領域A内の異物Oを検知することができる。上記特許文献1に記載の技術のように床面で異物を検知するシステムとは異なり、測域センサ5の照射波により空間を走査するので、パレット2上の異物Oをも検知することが可能である。また、取得した被検出点データから異物Oの存在を検知するにあたっては、任意の時点に取得した被検出点データを、別の時点に取得した基準データと直接比較するだけで済む。つまり、上記特許文献2、3に記載の技術のように、物体のサイズを特定したり、重心位置を算出したり、あるいは車両輪郭データを取得するといった複雑な演算を必要としない。両データの差分を取るなど、データ同士を直接比較することで異物Oを検知することができるので、異物検知にあたってはごく単純な演算を行えば良く、高速且つ信頼性の高い検知が可能である。
【0053】
また、本実施例の異物検知システムでは、図2に示す如き車両1の停止判定をも行うことができる。このようにすると、停止判定のための装置等を別途設置することなく、異物検知システムのみによって車両1の停止判定から異物Oの検知までの工程を実行することができる。例えば、上記特許文献3に記載の如き技術では、車両がパレット上の定位置に停止したことを、測域センサーとは別に設置された位置センサーにより判定し、それを条件としてトリガー信号が発信され、車両輪郭データの取得が開始されるようになっている。このようなシステムでは、例えば前記位置センサーに何らかの不具合が生じた場合に、異物検知を実行できなくなることが考えられる。本実施例のように、異物検知工程(図3参照)に加え、同じシステムにより車両1の停止判定工程(図2参照)を実行するようにすれば、仮に車両1の停止判定のために別途設置した装置等に不具合が生じたとしても、それを原因として異物検知工程までもが適切に実施できなくなるようなことはない。また、例えば上に説明したように、停止判定の工程中に、または該工程に前後して取得した被検出点データを、後述する異物検知の工程に利用するといったことも容易にできる。
【0054】
尚、ここでは、対象領域Aの例として、車両1の搬送のための装置としてパレット2のみを備えた入出庫スペースを説明したが、対象領域Aの形式はこれに限定されない。例えば、パレットの手前にターンテーブルを備えた形式の入出庫スペースにおいて、前記ターンテーブルおよびその周辺と、前記パレットおよびその周辺に、それぞれ本開示における異物検知システムと同様のシステムを備えることもできる。あるいは、機械式駐車場に限らず、例えば電気自動車の給電設備など、車両の周辺で何らかの操作を行う設備一般に広く適用し得る。
【0055】
以上のように、上記本実施例の異物検知方法においては、車両1の進入する対象領域A内を測定する測域センサ5を対象領域Aに対して配置し、対象領域A内に異物Oのない状態で、測域センサ5により被検出点データを基準データとして取得するステップS7,S8と、任意の時点において測域センサ5により被検出点データを取得するステップS11と、前記任意の時点に取得した被検出点データを前記基準データと比較するステップS12,S13と、該ステップS12,S13においてデータ間に所定以上の差分が見られた場合に、前記任意の時点において対象領域A内に異物Oが存在すると判定するステップS14~S16とを含む異物検知工程を実行するようにしている。このようにすると、対象領域Aに対して測域センサ5を配置した簡単な構成により、対象領域A内の異物Oを検知することができる。異物検知にあたっては、データに対しごく単純な演算を行えば良く、高速且つ信頼性の高い検知が可能である。
【0056】
本実施例の異物検知方法において、前記基準データは、対象領域Aに車両1が進入し、対象領域A内の停止位置Pに停止した時に取得される被検出点データとすることができる。
【0057】
本実施例の異物検知方法においては、前記異物検知工程に加え、対象領域A内への車両1の進入に伴い、測域センサ5を作動させて対象領域A内の測定を時々刻々実行するステップS1,S2と、直近の時点に取得された被検出点データと、その前の時点に取得された被検出点データとを比較するステップS3,S4と、被検出点データ同士の差分が所定値以下である状態が所定時間以上継続した場合に、車両1が停止したと判定するステップS5,S6とを含む車両の停止判定工程を実行するようにしている。このようにすると、対象領域Aにおける車両1の移動や停止と、車両1周辺での各種の操作とをスムーズに連携させることができる。
【0058】
本実施例の異物検知方法においては、前記基準データとして、前記車両1の停止判定工程で、車両1の停止が判定される直前において被検出点データ同士の差分が所定値以下である状態が継続している途中に取得した被検出点データ、または、前記車両1の停止判定工程で、車両1の停止が判定された直後に取得した被検出点データを使用することができる。
【0059】
また、本実施例の異物検知システムは、車両1の進入する対象領域A内を測定する測域センサ5を備え、対象領域A内に異物Oのない状態で測域センサ5により被検出点データを基準データとして取得すると共に、任意の時点において測域センサ5により被検出点データを取得し、前記任意の時点に取得した被検出点データを前記基準データと比較し、データ間に所定以上の差分が見られた場合に、前記任意の時点において対象領域A内に異物Oが存在すると判定するよう構成されている。このようにすると、対象領域Aに対して測域センサ5を配置した簡単な構成により、対象領域A内の異物Oを好適に検知することができる。
【0060】
本実施例の異物検知システムにおいて、測域センサ5は、対象領域Aに対して2個以上が設置され、平面視で車両1の停止位置Pの全周を測定範囲に含むように配置されているので、車両1の周辺の領域全体について漏れなく異物検知を行うことができる。
【0061】
したがって、上記本実施例によれば、対象領域内の異物を簡便に検知し得る。
【0062】
尚、本開示において説明した本発明の異物検知方法およびシステムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
2 パレット
3 搬送口
4 入出庫口
5 測域センサ
5a 測定信号
6 制御装置
7 入庫スイッチ
7a 入庫信号
8 警報装置
8a 警報信号
A 対象領域
O 物体(異物)
P 停止位置
図1
図2
図3