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特許7176932ガスタービンの制御装置、ガスタービン設備、ガスタービンの制御方法、及びガスタービンの制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ガスタービンの制御装置、ガスタービン設備、ガスタービンの制御方法、及びガスタービンの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/057 20060101AFI20221115BHJP
   F02C 9/28 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
F02C7/057
F02C9/28 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018210553
(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2020076377
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤冨 陽介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 司
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-241062(JP,A)
【文献】特開2016-142212(JP,A)
【文献】特開2017-096155(JP,A)
【文献】特開平05-171957(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3056950(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0031238(US,A1)
【文献】米国特許第3973391(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/057
F02C 9/20
F02C 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、
前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する燃料調節弁と、
を備え、
前記圧縮機は、回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機車室と、前記圧縮機車室内に流入する前記空気の流量である吸気量を調節する吸気量調節器と、を有する、
ガスタービンの制御装置において、
前記ガスタービンの実際の出力である実出力と、前記ガスタービンに要求される要求出力とを受け付け、前記実出力と前記要求出力との偏差である出力偏差に応じて定まる負荷燃料量を求める負荷燃料量演算部と、
前記ガスタービンを損傷から保護するために必要なパラメータを受け付け、前記パラメータを用いて、前記ガスタービンを保護可能な許容燃料量を求める許容燃料量演算部と、
前記負荷燃料量演算部と前記許容燃料量演算部とが求めた燃料量のうち、最小の燃料量である最小燃料量を選択する流量低値選択部と、
前記流量低値選択部で選択された前記最小燃料量に応じた前記燃料調節弁の開度を求め、前記開度を示す弁指令値を前記燃料調節弁に出力する弁指令出力部と、
前記実出力を受け付け、前記実出力に応じて定まる前記吸気量調節器の駆動量である基本駆動量を求める基本駆動量演算部と、
前記許容燃料量と前記最小燃料量との偏差である燃料偏差を求める燃料偏差演算部と、
前記燃料偏差演算部が求めた前記燃料偏差に応じた前記基本駆動量の補正値を求める補正値演算部と、
前記基本駆動量を前記補正値で補正する補正部と、
前記補正部で補正された前記基本駆動量である調節器駆動量を示す調節器指令を前記吸気量調節器に出力する調節器指令出力部と、
を備えるガスタービンの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンの制御装置において、
前記燃料偏差が第一偏差であるときの前記補正値は、前記燃料偏差が前記第一偏差より小さい第二偏差であるときの前記補正値以下である、
ガスタービンの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービンの制御装置において、
前記補正部は、前記補正値であるメイン補正値を補正するためのサブ補正値を求めるサブ補正値演算部と、前記サブ補正値で前記メイン補正値を補正するサブ補正部と、前記サブ補正部で補正された前記メイン補正値で前記基本駆動量を補正して、前記調節器駆動量を求めるメイン補正部と、を有し、
前記サブ補正値演算部は、前記実出力を受け付け、前記実出力に応じた前記サブ補正値を求める、
ガスタービンの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガスタービンの制御装置において、
前記実出力が第一値のときの前記サブ補正値は、前記実出力が前記第一値より小さい第二値のときの前記サブ補正値以上であり、
前記サブ補正部は、前記サブ補正値が第一値のときに補正した前記メイン補正値が、前記サブ補正値が前記第一値より小さい第二値のときに補正した前記メイン補正値より大きくなるよう、前記メイン補正値を補正する、
ガスタービンの制御装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のガスタービンの制御装置において、
前記補正部は、前記サブ補正部で補正された前記メイン補正値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定められた制限値以内に制限する変化率制限部を有し、
前記基本駆動量を大きくして前記吸気量を多くするときの前記変化率に対する前記制限値は、前記基本駆動量を小さくして前記吸気量を少なくするときの前記変化率に対する前記制限値より大きく、
前記メイン補正部は、前記変化率制限部で前記変化率が制限された前記メイン補正値で前記基本駆動量を補正する、
ガスタービンの制御装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のガスタービンの制御装置において、
前記補正部は、前記補正値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定められた制限値以内に制限する変化率制限部と、前記変化率制限部で前記変化率が制限された前記補正値で前記基本駆動量を補正するメイン補正部と、を有し、
前記基本駆動量を大きくして前記吸気量を多くするときの前記変化率に対する前記制限値は、前記基本駆動量を小さくして前記吸気量を少なくするときの前記変化率に対する前記制限値より大きい、
ガスタービンの制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のガスタービンの制御装置において、
前記許容燃料量演算部は、複数種類の許容燃料量を求め、
前記燃料偏差演算部は、
複数種類の許容燃料量毎に前記最小燃料量との偏差を求めるサブ偏差演算部と、
前記サブ偏差演算部が求めた複数種類の許容燃料量毎の偏差のうち、最小の偏差である最小偏差を選択する偏差低値選択部と、
を有し、
前記補正値演算部は、前記最小偏差に応じた前記補正値を求める、
ガスタービンの制御装置。
【請求項8】
請求項1から6に記載のガスタービンの制御装置において、
前記タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービン車室と、を有し、
前記タービンロータは、前記軸線を中心として回転するロータ軸部と、前記軸線が延びる軸線方向に並んで前記ロータ軸部に固定されている複数の動翼列と、を有し、
前記ガスタービンは、前記タービン車室に接続され、複数の動翼列のうち最終段動翼列を通過した燃焼ガスである排気ガスが流れる排気ダクトを有し、
前記許容燃料量演算部は、
前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度を求める許容温度演算部と、
前記排気ガスの温度を受け付け、前記排気ガスの温度と前記排気ガス許容温度との偏差に応じて定まる許容温度燃料量を求める許容温度燃料量演算部と、
を有し、
前記流量低値選択部及び前記燃料偏差演算部は、それぞれ、前記許容温度燃料量を前記許容燃料量演算部が求めた前記許容燃料量として処理する、
ガスタービンの制御装置。
【請求項9】
請求項7に記載のガスタービンの制御装置において、
前記タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービン車室と、を有し、
前記タービンロータは、前記軸線を中心として回転するロータ軸部と、前記軸線が延びる軸線方向に並んで前記ロータ軸部に固定されている複数の動翼列と、を有し、
前記ガスタービンは、前記タービン車室に接続され、複数の動翼列のうち最終段動翼列を通過した燃焼ガスである排気ガスが流れる排気ダクトを有し、
前記許容燃料量演算部は、
前記タービン車室又は前記排気ダクト内で前記最終段動翼列よりも下流側の第一位置における前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度である第一許容温度を求める第一許容温度演算部と、
前記排気ダクト内で前記第一位置よりも下流側の第二位置における前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度である第二許容温度を求める第二許容温度演算部と、
前記第一位置における前記排気ガスの温度を受け付け、前記第一位置における前記排気ガスの温度と前記第一許容温度との偏差に応じて定まる第一許容温度燃料量を求める第一許容温度燃料量演算部と、
前記第二位置における前記排気ガスの温度を受け付け、前記第二位置における前記排気ガスの温度と前記第二許容温度との偏差に応じて定まる第二許容温度燃料量を求める第二許容温度燃料量演算部と、
を有し、
前記流量低値選択部は、前記第一許容温度燃料量及び前記第二許容温度燃料量のそれぞれを前記許容燃料量演算部が求めた燃料量の一つとして処理し、
前記サブ偏差演算部は、複数種類の許容燃料量の一種類の許容燃料量として前記第一許容温度燃料量を用い、他の一種類の許容燃料量として前記第二許容温度燃料量を用いる、
ガスタービンの制御装置。
【請求項10】
請求項7又は9に記載のガスタービンの制御装置において、
前記許容燃料量演算部は、
前記ガスタービンの状態に応じて、前記タービンの入口における前記燃焼ガスの温度と正の相関関係を有する入口温度相関値を求める相関値演算器と、
前記入口温度相関値に応じた変化率制限燃料量を求める変化率制限燃料量算出器と、
を有し、
変化率制限燃料量算出器は、前記最小燃料量が増加する過程で、前記入口温度相関値が予め定められた値以下のときの前記変化率制限燃料量と、前記入口温度相関値が前記予め定められた値より大きいときの前記変化率制限燃料量とを求め、
前記入口温度相関値が前記予め定められた値以下のときの前記変化率制限燃料量は、前記最小燃料量に予め定められたバイアス燃料量を加え、前記バイアス燃料量が加わった値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定めた第一制限値以内にした値であり、
前記入口温度相関値が前記予め定められた値より大きいときの前記変化率制限燃料量は、前記前記入口温度相関値が前記予め定められた値のときの前記変化率制限燃料量から、前記第一制限値より小さい第二制限値以下の変化率で増加する値であり、
前記流量低値選択部は、前記変化率制限燃料量を前記許容燃料量演算部が求めた燃料量の一つとして処理し、
前記サブ偏差演算部は、複数種類の許容燃料量の一種類の許容燃料量として前記変化率制限燃料量を用いる、
ガスタービンの制御装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のガスタービンの制御装置と、
前記ガスタービンと、
を備えるガスタービン設備。
【請求項12】
空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、
前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する燃料調節弁と、
を備え、
前記圧縮機は、回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機車室と、前記圧縮機車室内に流入する前記空気の流量である吸気量を調節する吸気量調節器と、を有する、
ガスタービンの制御方法において、
前記ガスタービンの実際の出力である実出力と、前記ガスタービンに要求される要求出力とを受け付け、前記実出力と前記要求出力との偏差である出力偏差に応じて定まる負荷燃料量を求める負荷燃料量演算工程と、
前記ガスタービンを損傷から保護するために必要なパラメータを受け付け、前記パラメータを用いて、前記ガスタービンを保護可能な許容燃料量を求める許容燃料量演算工程と、
前記負荷燃料量演算工程と前記許容燃料量演算工程とで求められた燃料量のうち、最小の燃料量である最小燃料量を選択する流量低値選択工程と、
前記流量低値選択工程で選択された前記最小燃料量に応じた前記燃料調節弁の開度を求め、前記開度を示す弁指令値を前記燃料調節弁に出力する弁指令出力工程と、
前記実出力を受け付け、前記実出力に応じて定まる前記吸気量調節器の駆動量である基本駆動量を求める基本駆動量演算工程と、
前記許容燃料量と前記最小燃料量との偏差である燃料偏差を求める燃料偏差演算工程と、
前記燃料偏差演算工程で求められた前記燃料偏差に応じた前記基本駆動量の補正値を求める補正値演算工程と、
前記基本駆動量を前記補正値で補正する補正工程と、
前記補正工程で補正された前記基本駆動量である調節器駆動量を示す調節器指令を前記吸気量調節器に出力する調節器指令出力工程と、
を実行するガスタービンの制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載のガスタービンの制御方法において、
前記補正工程は、前記補正値であるメイン補正値を補正するためのサブ補正値を求めるサブ補正値演算工程と、前記サブ補正値で前記メイン補正値を補正するサブ補正工程と、前記サブ補正工程で補正された前記メイン補正値で前記基本駆動量を補正して、前記調節器駆動量を求めるメイン補正工程と、を含み、
前記サブ補正値演算工程では、前記実出力を受け付け、前記実出力に応じた前記サブ補正値を求める、
ガスタービンの制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載のガスタービンの制御方法において、
前記補正工程は、前記サブ補正工程で補正された前記メイン補正値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定められた制限値以内に制限する変化率制限工程を含み、
前記基本駆動量を大きくして、前記吸気量を多くするときの前記変化率に対する前記制限値は、前記基本駆動量を小さくして、前記吸気量を少なくするときの前記変化率に対する前記制限値より大きく、
前記メイン補正工程では、前記変化率制限工程で前記変化率が制限された前記メイン補正値で前記基本駆動量を補正する、
ガスタービンの制御方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載のガスタービンの制御方法において、
前記許容燃料量演算工程では、複数種類の許容燃料量を求め、
前記燃料偏差演算工程は、
複数種類の許容燃料量毎に前記最小燃料量との偏差を求めるサブ偏差演算工程と、
前記サブ偏差演算工程が求めた複数種類の許容燃料量毎の偏差のうち、最小の偏差である最小偏差を選択する偏差低値選択工程と、
を含み、
前記補正値演算工程では、前記最小偏差に応じた前記基本駆動量の補正値を求める、
ガスタービンの制御方法。
【請求項16】
空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、
前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する燃料調節弁と、
を備え、
前記圧縮機は、回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機車室と、前記圧縮機車室内に流入する前記空気の流量である吸気量を調節する吸気量調節器と、を有する、
ガスタービンの制御プログラムにおいて、
前記ガスタービンの実際の出力である実出力と、前記ガスタービンに要求される要求出力とを受け付け、前記実出力と前記要求出力との偏差である出力偏差に応じて定まる負荷燃料量を求める負荷燃料量演算工程と、
前記ガスタービンを損傷から保護するために必要なパラメータを受け付け、前記パラメータを用いて、前記ガスタービンを保護可能な許容燃料量を求める許容燃料量演算工程と、
前記負荷燃料量演算工程と前記許容燃料量演算工程とで求められた燃料量のうち、最小の燃料量である最小燃料量を選択する流量低値選択工程と、
前記流量低値選択工程で選択された前記最小燃料量に応じた前記燃料調節弁の開度を求め、前記開度を示す弁指令値を前記燃料調節弁に出力する弁指令出力工程と、
前記実出力を受け付け、前記実出力に応じて定まる前記吸気量調節器の駆動量である基本駆動量を求める基本駆動量演算工程と、
前記許容燃料量と前記最小燃料量との偏差である燃料偏差を求める燃料偏差演算工程と、
前記燃料偏差演算工程で求められた前記燃料偏差に応じた前記基本駆動量の補正値を求める補正値演算工程と、
前記基本駆動量を前記補正値で補正する補正工程と、
前記補正工程で補正された前記基本駆動量である調節器駆動量を示す調節器指令を前記吸気量調節器に出力する調節器指令出力工程と、
をコンピュータに実行させるガスタービンの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、この圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスにより駆動されるタービンと、を備える。圧縮機は、軸線を中心として回転する圧縮機ロータと、これを回転可能に覆う圧縮機ケーシングと、ケーシング内に流入する空気である吸気量を調節するIGV(inlet guide vane)と、を有する。燃焼器には、燃料ラインが接続されている。この燃料ラインには、燃焼器に供給される燃料の流量を調節する燃料調節弁が設けられている。
【0003】
ガスタービンの出力を増減させる場合、燃料調節弁の開度を大きくして、燃焼器に供給される燃料の流量を多くする。燃料調節弁の開度は、例えば、外部からの負荷指令等により定められる。IGV開度は、基本的にガスタービンの出力が大きくなるに連れて次第に大きくなるよう調節される。
【0004】
以下の特許文献1には、以上で説明したガスタービンの制御方法が記載されている。この制御方法では、ガスタービンの出力が大きくなるに連れて次第に大きくなる基本IGV開度に、第一補正値及び第二補正値を加算して、IGV開度を求め、このIGV開度を示す開度指令値をIGVに送る。第一補正値は、ガスタービンから排気された排気ガスの温度とこの温度に対する許容温度との偏差に応じて定まる値である。また、第二補正値は、ガスタービンに対する要求出力が大きくなっているときに、この要求出力の単位時間当たりの変化量である要求出力変化率に応じて定まる値である。この第二補正値は、要求出力変化率が大きくなるに連れて大きくなる値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-075578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の制御方法では、要求出力の増減が短時間のうちに多数回繰り返されると、第二補正値の影響で、この間にIGV開度が大きくなる。このIGV開度が大きくなると、圧縮機が吸い込む空気の流量である吸気量が増加し、タービンの入口における燃焼ガスの温度が低下するため、ガスタービンの損傷を抑えることができる。一方で、このIGV開度が必要以上に大きくなると、タービン単独での出力エネルギーに対して圧縮機における消費エネルギーが増加するため、ガスタービン効率が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、ガスタービンの損傷を抑えつつ、ガスタービン効率の低下を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービンの制御装置は、以下のガスタービンに対する制御装置である。
このガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する燃料調節弁と、を備える。前記圧縮機は、回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機車室と、前記圧縮機車室内に流入する前記空気の流量である吸気量を調節する吸気量調節器と、を有する。
本態様の制御装置は、前記ガスタービンの実際の出力である実出力と、前記ガスタービンに要求される要求出力とを受け付け、前記実出力と前記要求出力との偏差である出力偏差に応じて定まる負荷燃料量を求める負荷燃料量演算部と、前記ガスタービンを損傷から保護するために必要なパラメータを受け付け、前記パラメータを用いて、前記ガスタービンを保護可能な許容燃料量を求める許容燃料量演算部と、前記負荷燃料量演算部と前記許容燃料量演算部とが求めた燃料量のうち、最小の燃料量である最小燃料量を選択する流量低値選択部と、前記流量低値選択部で選択された前記最小燃料量に応じた前記燃料調節弁の開度を求め、前記開度を示す弁指令値を前記燃料調節弁に出力する弁指令出力部と、前記実出力を受け付け、前記実出力に応じて定まる前記吸気量調節器の駆動量である基本駆動量を求める基本駆動量演算部と、前記許容燃料量と前記最小燃料量との偏差である燃料偏差を求める燃料偏差演算部と、前記燃料偏差演算部が求めた前記燃料偏差に応じた前記基本駆動量の補正値を求める補正値演算部と、前記基本駆動量を前記補正値で補正する補正部と、前記補正部で補正された前記基本駆動量である調節器駆動量を示す調節器指令を前記吸気量調節器に出力する調節器指令出力部と、を備える。
【0009】
本態様の燃料偏差演算部が求める燃料偏差は、ガスタービン損傷の可能性が高まっていることを示すパラメータの一つである。本態様では、この燃料偏差の大きさに応じて、調節器駆動量の基本駆動量が補正される。このため、本態様では、ガスタービン損傷の可能性が高まっているときに基本駆動量が補正され、ガスタービンに流入する空気の流量が調節される。この結果、本態様では、ガスタービン損傷の可能性が高まっているときに、燃焼ガスのタービン入口温度や排気ダクト内の排気ガスの温度が調節され、ガスタービンの損傷を抑えることができる。さらに、本態様では、ガスタービン損傷の可能性が高まっていないときには、基本駆動量が補正されず、叉は基本駆動量の補正値が小さく、ガスタービンに流入する空気の流量が実質的に調節されない。つまり、ガスタービン損傷の可能性が高まっていないときに、ガスタービンに流入する空気の流量は、基本駆動量に対応する空気の流量より実質的に大きくならない。この結果、本態様では、ガスタービン損傷の可能性が高まっていないときに、タービン単独での出力エネルギーに対して圧縮機における消費エネルギーは増加せず、ガスタービン効率の低下を抑制することができる。
【0010】
ここで、前記態様のガスタービンの制御装置において、前記燃料偏差が第一偏差であるときの前記補正値は、前記燃料偏差が前記第一偏差より小さい第二偏差であるときの前記補正値以下であってもよい。
【0011】
また、以上のいずれかの態様のガスタービンの制御装置において、前記補正部は、前記補正値であるメイン補正値を補正するためのサブ補正値を求めるサブ補正値演算部と、前記サブ補正値で前記メイン補正値を補正するサブ補正部と、前記サブ補正部で補正された前記メイン補正値で前記基本駆動量を補正して、前記調節器駆動量を求めるメイン補正部と、を有してもよい。この場合、前記サブ補正値演算部は、前記実出力を受け付け、前記実出力に応じた前記サブ補正値を求める。
【0012】
ガスタービンは、実出力が小さいときより実出力が大きいときの方が損傷の可能性が高い。本態様では、実出力に応じたサブ補正値でメイン補正値を補正し、補正後のメイン補正値で基本駆動量を補正する。すなわち、本態様では、実出力が大きくてガスタービン損傷の可能性が高いときにメイン補正値が補正される。よって、本態様では、この観点からも、ガスタービンの損傷を抑えることができる。
【0013】
前記サブ補正値演算部を有する前記態様のガスタービンの制御装置において、前記実出力が第一値のときの前記サブ補正値は、前記実出力が前記第一値より小さい第二値のときの前記サブ補正値以上であってもよい。この場合、前記サブ補正部は、前記サブ補正値が第一値のときに補正した前記メイン補正値が、前記サブ補正値が前記第一値より小さい第二値のときに補正した前記メイン補正値より大きくなるよう、前記メイン補正値を補正する。
【0014】
前記サブ補正値演算部を有する、以上のいずれかの前記態様のガスタービンの制御装置において、前記補正部は、前記サブ補正部で補正された前記メイン補正値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定められた制限値以内に制限する変化率制限部を有してもよい。この場合、前記基本駆動量を大きくして前記吸気量を多くするときの前記変化率に対する前記制限値は、前記基本駆動量を小さくして前記吸気量を少なくするときの前記変化率に対する前記制限値より大きい。また、前記メイン補正部は、前記変化率制限部で前記変化率が制限された前記メイン補正値で前記基本駆動量を補正する。
【0015】
ガスタービンは、基本駆動量が大きくなっているとき、つまり吸気量が多くなっているとき、燃焼器に供給される燃料量も多くなる。このため、ガスタービンは、基本駆動量が小さくなっているときより、この基本駆動量が大きくなっているときの方が損傷の可能性が高い。本態様では、基本駆動量を大きくして吸気量を多くするときの補正値変化率に関する制限値が、基本駆動量を小さくして吸気量を少なくするときの補正値変化率に関する制限値より大きい。このため、本態様では、基本駆動量を大きくして吸気量を多くするときの補正値変化率が、基本的に、基本駆動量を小さくして吸気量を少なくするときの補正値変化率より大きくなる。よって、本態様では、この観点からも、ガスタービンの損傷を抑えることができる。
【0016】
以上のいずれかの前記態様のガスタービンの制御装置において、前記補正部は、前記補正値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定められた制限値以内に制限する変化率制限部と、前記変化率制限部で前記変化率が制限された前記補正値で前記基本駆動量を補正するメイン補正部と、を有してもよい。この場合、前記基本駆動量を大きくして前記吸気量を多くするときの前記変化率に対する前記制限値は、前記基本駆動量を小さくして前記吸気量を少なくするときの前記変化率に対する前記制限値より大きい。
【0017】
以上のいずれかの前記態様のガスタービンの制御装置において、前記許容燃料量演算部は、複数種類の許容燃料量を求めてもよい。この場合、前記燃料偏差演算部は、複数種類の許容燃料量毎に前記最小燃料量との偏差を求めるサブ偏差演算部と、前記サブ偏差演算部が求めた複数種類の許容燃料量毎の偏差のうち、最小の偏差である最小偏差を選択する偏差低値選択部と、を有する。また、前記補正値演算部は、前記最小偏差に応じた前記補正値を求める。
【0018】
以上のいずれかの前記態様のガスタービンの制御装置において、前記タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービン車室と、を有し、前記タービンロータは、前記軸線を中心として回転するロータ軸部と、前記軸線が延びる軸線方向に並んで前記ロータ軸部に固定されている複数の動翼列と、を有し、前記ガスタービンは、前記タービン車室に接続され、複数の動翼列のうち最終段動翼列を通過した燃焼ガスである排気ガスが流れる排気ダクトを有してもよい。この場合、前記許容燃料量演算部は、前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度を求める許容温度演算部と、前記排気ガスの温度を受け付け、前記排気ガスの温度と前記排気ガス許容温度との偏差に応じて定まる許容温度燃料量を求める許容温度燃料量演算部と、を有してもよい。この場合、前記流量低値選択部及び前記燃料偏差演算部は、それぞれ、前記許容温度燃料量を前記許容燃料量演算部が求めた前記許容燃料量として処理する。
【0019】
以上のいずれかの前記態様のガスタービンの制御装置において、前記タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービン車室と、を有し、前記タービンロータは、前記軸線を中心として回転するロータ軸部と、前記軸線が延びる軸線方向に並んで前記ロータ軸部に固定されている複数の動翼列と、を有し、前記ガスタービンは、前記タービン車室に接続され、複数の動翼列のうち最終段動翼列を通過した燃焼ガスである排気ガスが流れる排気ダクトを有してもよい。この場合、前記許容燃料量演算部は、前記タービン車室又は前記排気ダクト内で前記最終段動翼列よりも下流側の第一位置における前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度である第一許容温度を求める第一許容温度演算部と、前記排気ダクト内で前記第一位置よりも下流側の第二位置における前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度である第二許容温度を求める第二許容温度演算部と、前記第一位置における前記排気ガスの温度を受け付け、前記第一位置における前記排気ガスの温度と前記第一許容温度との偏差に応じて定まる第一許容温度燃料量を求める第一許容温度燃料量演算部と、前記第二位置における前記排気ガスの温度を受け付け、前記第二位置における前記排気ガスの温度と前記第二許容温度との偏差に応じて定まる第二許容温度燃料量を求める第二許容温度燃料量演算部と、を有してもよい。この場合、前記流量低値選択部は、前記第一許容温度燃料量及び前記第二許容温度燃料量のそれぞれを前記許容燃料量演算部が求めた燃料量の一つとして処理する。また、前記サブ偏差演算部は、複数種類の許容燃料量の一種類の許容燃料量として前記第一許容温度燃料量を用い、他の一種類の許容燃料量として前記第二許容温度燃料量を用いる。
【0020】
複数種類の許容燃焼量を求める前記態様のガスタービンの制御装置において、前記許容燃料量演算部は、前記ガスタービンの状態に応じて、前記タービンの入口における前記燃焼ガスの温度と正の相関関係を有する入口温度相関値を求める相関値演算器と、前記入口温度相関値に応じた変化率制限燃料量を求める変化率制限燃料量算出器と、を有してもよい。この場合、変化率制限燃料量算出器は、前記最小燃料量が増加する過程で、前記入口温度相関値が予め定められた値以下のときの前記変化率制限燃料量と、前記入口温度相関値が前記予め定められた値より大きいときの前記変化率制限燃料量とを求める。前記入口温度相関値が前記予め定められた値以下のときの前記変化率制限燃料量は、前記最小燃料量に予め定められたバイアス燃料量を加え、前記バイアス燃料量が加わった値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定めた第一制限値以内にした値である。前記入口温度相関値が前記予め定められた値より大きいときの前記変化率制限燃料量は、前記前記入口温度相関値が前記予め定められた値のときの前記変化率制限燃料量から、前記第一制限値より小さい第二制限値以下の変化率で増加する値である。前記流量低値選択部は、前記変化率制限燃料量を前記許容燃料量演算部が求めた燃料量の一つとして処理する。前記サブ偏差演算部は、複数種類の許容燃料量の一種類の許容燃料量として前記変化率制限燃料量を用いる。
【0021】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービン設備は、
以上のいずれかの態様の制御装置と、ガスタービンと、を備える。
【0022】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービンの制御方法は、以下のガスタービンに対する制御方法である。
このガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する燃料調節弁と、を備える。前記圧縮機は、回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機車室と、前記圧縮機車室内に流入する前記空気の流量である吸気量を調節する吸気量調節器と、を有する。
本態様の制御方法は、前記ガスタービンの実際の出力である実出力と、前記ガスタービンに要求される要求出力とを受け付け、前記実出力と前記要求出力との偏差である出力偏差に応じて定まる負荷燃料量を求める負荷燃料量演算工程と、前記ガスタービンを損傷から保護するために必要なパラメータを受け付け、前記パラメータを用いて、前記ガスタービンを保護可能な許容燃料量を求める許容燃料量演算工程と、前記負荷燃料量演算工程と前記許容燃料量演算工程とで求められた燃料量のうち、最小の燃料量である最小燃料量を選択する流量低値選択工程と、前記流量低値選択工程で選択された前記最小燃料量に応じた前記燃料調節弁の開度を求め、前記開度を示す弁指令値を前記燃料調節弁に出力する弁指令出力工程と、前記実出力を受け付け、前記実出力に応じて定まる前記吸気量調節器の駆動量である基本駆動量を求める基本駆動量演算工程と、前記許容燃料量と前記最小燃料量との偏差である燃料偏差を求める燃料偏差演算工程と、前記燃料偏差演算工程で求められた前記燃料偏差に応じた前記基本駆動量の補正値を求める補正値演算工程と、前記基本駆動量を前記補正値で補正する補正工程と、前記補正工程で補正された前記基本駆動量である調節器駆動量を示す調節器指令を前記吸気量調節器に出力する調節器指令出力工程と、を実行する。
【0023】
ここで、前記態様のガスタービンの制御方法において、前記補正工程は、前記補正値であるメイン補正値を補正するためのサブ補正値を求めるサブ補正値演算工程と、前記サブ補正値で前記メイン補正値を補正するサブ補正工程と、前記サブ補正工程で補正された前記メイン補正値で前記基本駆動量を補正して、前記調節器駆動量を求めるメイン補正工程と、を含んでもよい。この場合、前記サブ補正値演算工程では、前記実出力を受け付け、前記実出力に応じた前記サブ補正値を求める。
【0024】
前記サブ補正値演算工程を実行する前記態様のガスタービンの制御方法において、前記補正工程は、前記サブ補正工程で補正された前記メイン補正値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定められた制限値以内に制限する変化率制限工程を含んでもよい。この場合、前記基本駆動量を大きくして、前記吸気量を多くするときの前記変化率に対する前記制限値は、前記基本駆動量を小さくして、前記吸気量を少なくするときの前記変化率に対する前記制限値より大きい。前記メイン補正工程では、前記変化率制限工程で前記変化率が制限された前記メイン補正値で前記基本駆動量を補正する。
【0025】
以上のいずれかの前記態様のガスタービンの制御方法において、前記許容燃料量演算工程では、複数種類の許容燃料量を求めてもよい。この場合、前記燃料偏差演算工程は、複数種類の許容燃料量毎に前記最小燃料量との偏差を求めるサブ偏差演算工程と、前記サブ偏差演算工程が求めた複数種類の許容燃料量毎の偏差のうち、最小の偏差である最小偏差を選択する偏差低値選択工程と、を含む。前記補正値演算工程では、前記最小偏差に応じた前記基本駆動量の補正値を求める。
【0026】
以上のいずれかの前記態様のガスタービンの制御方法において、前記タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービン車室と、を有し、前記タービンロータは、前記軸線を中心として回転するロータ軸部と、前記軸線が延びる軸線方向に並んで前記ロータ軸部に固定されている複数の動翼列と、を有し、前記ガスタービンは、前記タービン車室に接続され、複数の動翼列のうち最終段動翼列を通過した燃焼ガスである排気ガスが流れる排気ダクトを有してもよい。この場合、前記許容燃料量演算工程は、前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度を求める許容温度演算工程と、前記排気ガスの温度を受け付け、前記排気ガスの温度と前記排気ガス許容温度との偏差に応じて定まる許容温度燃料量を求める許容温度燃料量演算工程と、を含んでもよい。前記流量低値選択工程及び前記燃料偏差演算工程では、それぞれ、前記許容温度燃料量を前記許容燃料量演算工程が求めた前記許容燃料量として処理する。
【0027】
複数種類の許容燃料量を求める前記態様のガスタービンの制御方法において、前記タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービン車室と、を有し、前記タービンロータは、前記軸線を中心として回転するロータ軸部と、前記軸線が延びる軸線方向に並んで前記ロータ軸部に固定されている複数の動翼列と、を有し、前記ガスタービンは、前記タービン車室に接続され、複数の動翼列のうち最終段動翼列を通過した燃焼ガスである排気ガスが流れる排気ダクトを有してもよい。この場合、前記許容燃料量演算工程は、前記タービン車室又は前記排気ダクト内で前記最終段動翼列よりも下流側の第一位置における前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度である第一許容温度を求める第一許容温度演算工程と、前記排気ダクト内で前記第一位置よりも下流側の第二位置における前記排気ガスの温度に関する、前記ガスタービンの状態に応じた排気ガス許容温度である第二許容温度を求める第二許容温度演算工程と、前記第一位置における前記排気ガスの温度を受け付け、前記第一位置における前記排気ガスの温度と前記第一許容温度との偏差に応じて定まる第一許容温度燃料量を求める第一許容温度燃料量演算工程と、前記第二位置における前記排気ガスの温度を受け付け、前記第二位置における前記排気ガスの温度と前記第二許容温度との偏差に応じて定まる第二許容温度燃料量を求める第二許容温度燃料量演算工程と、を含んでもよい。前記流量低値選択工程では、前記第一許容温度燃料量及び前記第二許容温度燃料量のそれぞれを前記許容燃料量演算工程が求めた燃料量の一つとして処理する。前記サブ偏差演算工程では、複数種類の許容燃料量の一種類の許容燃料量として前記第一許容温度燃料量を用い、他の一種類の許容燃料量として前記第二許容温度燃料量を用いる。
【0028】
複数種類の許容燃料量を求める前記態様のガスタービンの制御方法において、前記許容燃料量演算工程は、前記ガスタービンの状態に応じて、前記タービンの入口における前記燃焼ガスの温度と正の相関関係を有する入口温度相関値を求める相関値演算工程と、前記入口温度相関値に応じた変化率制限燃料量を求める変化率制限燃料量算出工程と、を含んでもよい。変化率制限燃料量算出工程では、前記最小燃料量が増加する過程で、前記入口温度相関値が予め定められた値以下のときの前記変化率制限燃料量と、前記入口温度相関値が前記予め定められた値より大きいときの前記変化率制限燃料量を求める。前記入口温度相関値が前記予め定められた値以下のときの前記変化率制限燃料量は、前記最小燃料量に予め定められたバイアス燃料量を加え、前記バイアス燃料量が加わった値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定めた第一制限値以内にした値である。前記入口温度相関値が前記予め定められた値より大きいときの前記変化率制限燃料量は、前記前記入口温度相関値が前記予め定められた値のときの前記変化率制限燃料量から、前記第一制限値より小さい第二制限値以下の変化率で増加する値である。前記流量低値選択工程では、前記変化率制限燃料量を前記許容燃料量演算工程が求めた燃料量の一つとして処理する。前記サブ偏差演算工程では、複数種類の許容燃料量の一種類の許容燃料量として前記変化率制限燃料量を用いる。
【0029】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービンの制御プログラムは、以下のガスタービンに対する制御プログラムである。
このガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記燃焼器に供給する前記燃料の流量を調節する燃料調節弁と、を備える。前記圧縮機は、回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機車室と、前記圧縮機車室内に流入する前記空気の流量である吸気量を調節する吸気量調節器と、を有する。
本態様の制御プログラムは、前記ガスタービンの実際の出力である実出力と、前記ガスタービンに要求される要求出力とを受け付け、前記実出力と前記要求出力との偏差である出力偏差に応じて定まる負荷燃料量を求める負荷燃料量演算工程と、前記ガスタービンを保護するために必要なパラメータを受け付け、前記パラメータを用いて、前記ガスタービンを損傷から保護可能な許容燃料量を求める許容燃料量演算工程と、前記負荷燃料量演算工程と前記許容燃料量演算工程とで求められた燃料量のうち、最小の燃料量である最小燃料量を選択する流量低値選択工程と、前記流量低値選択工程で選択された前記最小燃料量に応じた前記燃料調節弁の開度を求め、前記開度を示す弁指令値を前記燃料調節弁に出力する弁指令出力工程と、前記実出力を受け付け、前記実出力に応じて定まる前記吸気量調節器の駆動量である基本駆動量を求める基本駆動量演算工程と、前記許容燃料量と前記最小燃料量との偏差である燃料偏差を求める燃料偏差演算工程と、前記燃料偏差演算工程で求められた前記燃料偏差に応じた前記基本駆動量の補正値を求める補正値演算工程と、前記基本駆動量を前記補正値で補正する補正工程と、前記補正工程で補正された前記基本駆動量である調節器駆動量を示す調節器指令を前記吸気量調節器に出力する調節器指令出力工程と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様によれば、ガスタービンの損傷を抑えつつ、ガスタービン効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る一実施形態におけるガスタービン設備の模式的断面図である。
図2】本発明に係る一実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
図3】本発明に係る一実施形態における燃料制御部の機能ブロック図である。
図4】車室圧力と排気ガス許容温度との関係を示すグラフである。
図5】本発明に係る一実施形態で、時間変化に伴う最小燃料量の変化を示すグラフである。
図6】本発明に係る一実施形態で、実出力とIGV基本開度(基本駆動量)との関係を示すグラフである。
図7】本発明に係る一実施形態で、最小偏差とメイン補正値との関係を示すグラフである。
図8】本発明に係る一実施形態で、実出力とサブ補正値との関係を示すグラフである。
図9】本発明に係る一実施形態における制御装置のハードウェア構成を示す回路ブロック図である。
図10】本発明に係る一実施形態における制御装置の動作を示すフローチャートである。
図11】本発明に係る一実施形態における許容燃料量演算工程での詳細工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るガスタービン設備の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
本実施形態のガスタービン設備は、図1に示すように、ガスタービン1と、ガスタービン1の駆動で発電する発電機9と、ガスタービン1の各種状態量等を検知する検知器と、制御装置100と、を備える。
【0034】
ガスタービン1は、空気Aを圧縮する圧縮機10と、圧縮機10で圧縮された空気中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器30と、燃焼ガスにより駆動されるタービン40と、排気ダクト50と、を備える。
【0035】
圧縮機10は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を覆う圧縮機車室18と、複数の静翼列14と、圧縮機車室18内に流入する空気Aの流量を調節するIGV(inlet guide vane)装置(吸気量調節器)21と、を有する。
【0036】
なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、他方側を軸線下流側Dadとする。軸線上流側Dauは、圧縮機10内の空気の流れの上流側であると共に、タービン40内の燃焼ガスの流れの上流側でもある。軸線下流側Dadは、圧縮機10内の空気の流れの下流側であると共に、タービン40内の燃焼ガスの流れの下流側でもある。また、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。
【0037】
圧縮機ロータ11は、その軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸部12と、このロータ軸部12に取り付けられている複数の動翼列13と、を有する。複数の動翼列13は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列13は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列13のそれぞれの軸線下流側Dadには、静翼列14が配置されている。各静翼列14は、圧縮機車室18の内側に設けられている。各静翼列14は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0038】
IGV装置(吸気量調節器)21は、圧縮機車室18に設けられている。IGV装置21は、複数の可動翼22と、複数の可動翼22の角度を変える駆動器23と、を有する。複数の可動翼22は、複数の動翼列13のうちで最も軸線上流側Dauの動翼列13よりも軸線上流側Dauに配置されている。
【0039】
タービン40は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ41と、タービンロータ41を覆うタービン車室48と、複数の静翼列44と、を有する。タービンロータ41は、その軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸部42と、このロータ軸部42に取り付けられている複数の動翼列43と、を有する。複数の動翼列43は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列43は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列43の各軸線上流側Dauには、静翼列44が配置されている。各静翼列44は、タービン車室48の内側に設けられている。各静翼列44は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。なお、以下では、複数の動翼列43のうち、最も軸線下流側Dadの動翼列である最終段動翼列43aを通過した燃焼ガスを排気ガスEGと呼ぶ。
【0040】
圧縮機ロータ11とタービンロータ41とは、同一軸線Ar上に位置して互いに接続されてガスタービンロータ2を成す。このガスタービンロータ2には、発電機9のロータが接続されている。ガスタービン1は、さらに、中間車室38を備える。この中間車室38は、圧縮機車室18の軸線下流側Dadの端に接続されている。この中間車室38の軸線下流側Dadの端には、タービン車室48が接続されている。中間車室38には、圧縮機車室18から吐出された圧縮空気が流入する。
【0041】
燃焼器30は、中間車室38に設けられている。この燃焼器30には、燃料供給源からの燃料Fが流れる燃料ライン35が接続されている。この燃料ライン35には、燃料調節弁36が設けられている。
【0042】
排気ダクト50は、タービン車室48の軸線下流側Dadの端に接続されている。この排気ダクト50には、タービン40から排気された排気ガスEGが流れる。
【0043】
本実施形態において、ガスタービン1の各種状態量等を検知する検知器として、大気圧を検知する大気圧計63と、圧縮機10が吸い込む空気の温度を検知する吸気温度計64と、中間車室38内の圧力、つまり、燃焼器30に流入する圧縮空気の圧力を検知する車室圧力計65と、排気ガスEGの温度を検知する第一温度計61及び第二温度計62と、ガスタービンロータ2の回転数を検知する回転数計66と、発電機9の出力、つまりガスタービン1の実出力PWrを検知する出力計67と、を有する。第一温度計61は、タービン車室48内で最終段動翼列43aの軸線下流側Dadの位置(第一位置)における排気ガスEGの温度Tbを検知する。第二温度計62は、排気ダクト内での軸線下流側Dadの位置(第二位置)における排気ガスEGの温度Teを検知する。なお、第一温度計61は、排気ダクト50内で軸線上流側Dauの位置における排気ガスEGの温度を検知してもよい。
【0044】
制御装置100は、図2に示すように、燃料調節弁36を制御する燃料制御部110と、IGV装置21を制御するIGV制御部140と、を有する。
【0045】
燃料制御部110は、負荷燃料量LDCSOを求める負荷燃料量演算部(LDCSO演算部)111と、許容燃料量を求める許容燃料量演算部120と、流量低値選択部131と、弁指令出力部132と、を有する。流量低値選択部131は、LDCSO演算部111と許容燃料量演算部120とが求めた燃料量のうち、最小の燃料量である最小燃料量CSOを選択する。なお、以上における燃料量は、燃料の流量である。弁指令出力部132は、弁指令値を燃料調節弁36に出力する。
【0046】
LDCSO演算部111は、図3に示すように、差分器112と、PI制御器113と、を有する。差分器112は、外部からの要求出力PWdと出力計67で検知されたガスタービン1の実際に出力である実出力PWrとを受け付け、要求出力PWdと実出力PWrとの偏差を求める。PI制御器113は、この偏差に応じた比例及び積分制御量を負荷燃料量LDCSOとして出力する。
【0047】
許容燃料量演算部120は、許容温度燃料量を求める許容温度燃料量演算部121と、変化率制限燃料量LRCSOを求める変化率制限燃料量演算部(LRCSO演算部)127と、を有する。許容温度燃料量演算部121は、第一許容温度燃料量BPCSOを求める第一許容温度燃料量演算部(BPCSO演算部)121aと、第二許容温度燃料量EXCSOを求める第二許容温度燃料量演算部(EXCSO演算部)121bとを有する。
【0048】
BPCSO演算部121aは、ガスタービン1の前述の第一位置における排気ガスEGの許容温度である第一許容温度を求める第一許容温度演算部122aと、第一許容温度に対応する第一許容温度燃料量BPCSOを求める第一許容温度燃料量算出部(BPCSO算出部)124aと、を有する。第一許容温度演算部122aは、第二許容温度演算部122bと、温度バイアス器123と、を有する。第二許容温度演算部122bは、ガスタービン1の前述の第二位置における排気ガスEGの許容温度である第二許容温度を求める。温度バイアス器123は、第二許容温度に予め定められた温度バイアスを付加して、第一許容温度を求める。BPCSO算出部124aは、差分器125aと、PI制御器126aと、を有する。差分器125aは、第一許容温度と第一温度計61で検知された排気ガスEGの温度Tbとを受け付け、第一許容温度と排気ガスEGの温度Tbとの偏差を求める。PI制御器126aは、この偏差に応じた比例及び積分制御量を第一許容温度燃料量BPCSOとする。
【0049】
EXCSO演算部121bは、前述の第二許容温度演算部122bと、第二許容温度に対応する第二許容温度燃料量EXCSOを求める第二許容温度燃料量算出部(EXCSO算出部)124bと、を有する。EXCSO算出部124bは、差分器125bと、PI制御器126bと、を有する。差分器125bは、第二許容温度と第二温度計62で検知された排気ガスEGの温度Teとを受け付け、第二許容温度と排気ガスEGの温度Teとの偏差を求める。PI制御器126bは、この偏差に応じた比例及び積分制御量を第二許容温度燃料量EXCSOとする。
【0050】
なお、第二許容温度演算部122bは、以上で説明したように、BPCSO演算部121aとEXCSO演算部121bとの共有構成要素である。この第二許容温度演算部122bは、車室圧力計65で検知された車室圧力Pcを受け付け、関数Fx1を用いて、この車室圧力Pcに応じた第二許容温度を求める。
【0051】
ここで、関数Fx1について、図4を用いて説明する。
【0052】
車室圧力計65で検知される車室圧力Pcと、第二位置における排気ガスEGの温度Teとは、タービン40の入口における燃焼ガスの温度であるタービン入口温度を一定にする場合、車室圧力Pcの増加に伴って排気ガスEGの温度Teが低くなるという関係がある。このため、タービン40や排気ダクト50を保護する等の観点で定められた許容タービン入口温度を保つ場合、車室圧力Pcの増加に伴って、この許容タービン入口温度に対応する排気ガス許容温度も低くなる。一方、車室圧力Pcがある値Pc1以下の場合、排気ガス許容温度は、排気ダクト50を保護する等の観点から、車室圧力Pcに関係なく、一定である。
【0053】
関数Fx1は、以上で説明した車室圧力Pcと排気ガス許容温度との関係を示す関数である。つまり、関数Fx1は、車室圧力Pcがある値Pc1以下の場合、一定の排気ガス許容温度を示し、車室圧力Pcがある値Pc1より大きい場合、車室圧力Pcの増加に伴って低くなる排気ガス許容温度を示す。
【0054】
なお、状況に応じた排気ガス許容温度を求めるため、吸気温度計64で検知された空気の温度Tiや大気圧計63で検知された大気圧Piで、車室圧力Pcを補正してもよい。この場合、関数Fx1を用いて、補正後の車室圧力Pcに応じた排気ガス許容温度を求める。
【0055】
LRCSO演算部127は、入口温度相関値演算器(CLCSO演算器)128と、変化率制限燃料量算出器(LRCSO算出器)129と、を有する。CLCSO演算器128は、タービン入口温度と正の相関関係を有する入口温度相関値CLCSOを求める。LRCSO算出器129は、この入口温度相関値CLCSOに応じた変化率制限燃料量LRCSOを求める。
【0056】
入口温度相関値CLCSOは、タービン入口温度を無次元化したパラメータで、このタービン入口温度と正の相関関係を持つパラメータである。この入口温度相関値CLCSOは、タービン入口温度が下限値のときに0%、タービン入口温度が上限値のときに100%となるように設定される。例えば、タービン入口温度の下限値を700℃、タービン入口温度の上限値を1500℃としたとき、入口温度相関値CLCSOは以下の式(1)で表される。
【0057】
CLCSO(%)={(実出力-700℃MW)/(1500℃MW-700℃MW)}
×100 ・・・・・(1)
なお、700℃MWは、現時点でのガスタービン1がおかれている環境で、タービン入口温度が下限値である700℃のときのガスタービン1の出力(発電機出力)である。また、1500℃MWは、現時点でのガスタービン1の環境下で、タービン入口温度が上限値である1500℃のときのガスタービン1の出力(発電機出力)である。
【0058】
CLCSO演算器128は、現時点でのガスタービン1がおかれている環境を認識するために、吸気温度計64で検知された空気の温度Ti、大気圧計63で検知された大気圧Pi、及びIGV開度IGVoを受け付ける。なお、このIGV開度IGVoは、後述するように、IGV制御部140からIGV装置21へ出力されるIGV指令が示すIGV装置21の開度である。CLCSO演算器128は、空気の温度Ti、大気圧Pi及びIGV開度IGVoを用いて、700℃MW及び1500℃MWを求める。CLCSO演算器128は、ガスタービン1が標準環境におかれているときの700℃MW及び1500℃MWを所持している。CLCSO演算器128は、この標準環境下での700℃MW及び1500℃MWを、空気の温度Ti、大気圧Pi及びIGV開度IGVoを用いて補正して、現時点の環境下での700℃MW及び1500℃MWを求める。CLCSO演算器128は、これら700℃MW及び1500℃MWと、出力計67で検知された実出力PWrとを式(1)に代入して、入口温度相関値CLCSOを求める。
【0059】
なお、以上では、タービン入口温度の下限値を700℃、その上限値を1500℃にした。しかしながら、燃焼器30の型式等によっては、タービン入口温度の下限値及び上限値は、以上の例と異なる値になる。
【0060】
LRCSO算出器129は、最小燃料量CSOが増加する過程で、入口温度相関値CLCSOが予め定められた値CLCSOx以下のときの変化率制限燃料量LRCSOと、入口温度相関値CLCSOが予め定められた値CLCSOxより大きいときの変化率制限燃料量LRCSOとをそれぞれ求める。LRCSO算出器129は、図5に示すように、入口温度相関値CLCSOが予め定められた値CLCSOx以下のとき、最小燃料量CSOに予め定められたバイアス燃料量Bを加え、最小燃料量CSOにバイアス燃料量Bが加わった値の単位時間当たりの変化量である変化率を予め定めた第一制限値R1以内にした値を、変化率制限燃料量LRCSOにする。また、LRCSO算出器129は、入口温度相関値CL」CSOが予め定められた値CLCSOxより大きいとき、入口温度相関値CLCSOが予め定められた値CLCSOxのときの変化率制限燃料量LRCSOから、第一制限値R1より小さい第二制限値R2以下の変化率で増加する値を、変化率制限燃料量LRCSOにする。
【0061】
なお、予め定められた値CLCSOxは、例えば、95%より大きく99%より小さい値である。よって、変化率制限燃料量LRCSOは、入口温度相関値CLCSOが100%に極めて近くなったときに、燃料量の増加率を小さくするための値である。
【0062】
流量低値選択部131は、LDCSO演算部111と許容燃料量演算部120とが求めた燃料量、つまり負荷燃料量LDCSOと、第一許容温度燃料量BPCSOと、第二許容温度燃料量EXCSOと、変化率制限燃料量LRCSOと、のうち、最小の燃料量である最小燃料量CSOを選択する。弁指令出力部132は、最小燃料量CSOに応じた燃料調節弁36の開度を求め、この開度を示す弁指令を燃料調節弁36に出力する。
【0063】
要求出力PWdが増加する過程では、図5に示すように、当初、この要求出力PWdに応じた負荷燃料量LDCSOが最小燃料量CSOになる。その後、この要求出力PWdに応じた負荷燃料量LDCSOより変化率制限燃料量LRCSOが小さくなって、この変化率制限燃料量LRCSOが最小燃料量CSOになる。さらに、時間が経過すると、変化率制限燃料量LRCSOより第一許容温度燃料量BPCSO又は第二許容温度燃料量EXCSOが小さくなり、第一許容温度燃料量BPCSO又は第二許容温度燃料量EXCSOが最小燃料量CSOになる。このように、流量低値選択部131が複数の燃料量のうちから最小燃料量CSOを選択するのは、ガスタービン1を保護する等の観点からである。
【0064】
IGV制御部140は、図2に示すように、IGV装置21のIGV基本開度IGVb(基本駆動量))を求める基本開度演算部(基本駆動量演算部)141と、燃料偏差演算部142と、IGV基本開度IGVbの補正値を求める補正値演算部146と、IGV基本開度IGVbを補正値で補正する補正部150と、補正されたIGV基本開度IGVbであるIGV開度IGVo(調節器駆動量)をIGV装置21に出力するIGV指令出力部(調節器指令出力部)155と、を有する。
【0065】
基本開度演算部141は、関数Fx2を用いて、IGV基本開度IGVbを求める。この関数Fx2は、図6に示すように、ガスタービン1の出力(発電機出力)PWが小さい第一出力PW1以下の場合、IGV装置21における最小のIGV開度をIGV基本開度IGVbにする。この関数Fx2は、出力PWが第一出力PW1より大きくなると、出力PWの増加に伴ってIGV基本開度IGVbを大きくする。この関数Fx2は、出力PWが第二出力PW2(>PW1)より大きくなると、出力PWが増加してもIGV基本開度IGVbを大きくしない。
【0066】
基本開度演算部141は、この関数Fx2に、出力計67で検知された実出力PWrを入力して、IGV基本開度IGVbを求める。
【0067】
なお、状況に応じたIGV基本開度IGVbを求めるため、吸気温度計64で検知された空気の温度Tiや大気圧計63で検知された大気圧Piで、実出力PWrを補正してもよい。この場合、基本開度演算部141は、関数Fx2を用いて、補正後の実出力PWrに応じたIGV基本開度IGVbを求める。
【0068】
燃料偏差演算部142は、図2に示すように、サブ偏差演算部143と、偏差低値選択部145と、を有する。サブ偏差演算部143は、複数種類の許容燃料量毎に最小燃料量CSOとの偏差を求める。このため、サブ偏差演算部143は、第一許容温度燃料量BPCSOと最小燃料量CSOとの偏差を求める第一差分器144aと、第二許容温度燃料量EXCSOと最小燃料量CSOとの偏差を求める第二差分器144bと、変化率制限燃料量LRCSOと最小燃料量CSOとの偏差を求める第三差分器144cと、を有する。
【0069】
偏差低値選択部145は、サブ偏差演算部143が求めた複数の偏差のうちから最小偏差Δminを選択する。すなわち、偏差低値選択部145は、複数種類の許容燃料量のうち、最小燃料量CSOに最も近い許容燃料量と最小燃料量CSOとの偏差を選択する。
【0070】
補正値演算部146は、関数Fx3を用いて、IGV基本開度IGVbの補正値であるメイン補正値IGVcmを求める。関数Fx3は、図7に示すように、最小偏差Δminが最も大きい値に比べて十分に小さい値Δmin1より大きいときには、メイン補正値IGVcmを0にし、最小偏差Δminが小さい値Δmin1以下のときには、最小偏差Δminが小さくなるに連れてメイン補正値IGVcmを大きくする。
【0071】
補正部150は、メイン補正値IGVcmを補正するためのサブ補正値IGVcsを求めるサブ補正値演算部151と、サブ補正値IGVcsでメイン補正値IGVcmを補正するサブ補正部152と、サブ補正部152で補正されたメイン補正値IGVcmaの変化率を制限する変化率制限部153と、変化率制限部153で変化率が制限されたメイン補正値IGVcmbでIGV基本開度IGVbを補正するメイン補正部154と、を有する。
【0072】
サブ補正値演算部151は、関数Fx4を用いて、サブ補正値IGVcsを求める。この関数Fx4は、図8に示すように、ガスタービン1の出力(発電機出力)PWが小さい第一出力PW1o以下の場合、サブ補正値IGVcsを最小値にする。この関数Fx4は、出力PWが第一出力PW1oより大きくなると、出力PWの増加に伴ってサブ補正値IGVcsを大きくする。この関数Fx2は、出力PWが第二出力PW2o(>PW1o)より大きくなると、出力PWが増加してもサブ補正値IGVcsを大きくしない。
【0073】
サブ補正値演算部151は、この関数Fx4に、出力計67で検知された実出力PWrを入力して、サブ補正値IGVcsを求める。
【0074】
なお、ここでの第一出力PW1oは、図6を用いて説明した関数Fx2の変曲点の一つである第一出力PW1より大きな出力である。また、状況に応じたサブ補正値IGVcsを求めるため、吸気温度計64で検知された空気の温度Tiや大気圧計63で検知された大気圧Piで、実出力PWrを補正してもよい。この場合、サブ補正値演算部151は、関数Fx4を用いて、補正後の実出力PWrに応じたサブ補正値IGVcsを求める。
【0075】
サブ補正部152は、メイン補正値IGVcmにサブ補正値IGVcsを掛けて、メイン補正値IGVcmを補正する。よって、このサブ補正部152は、乗算器である。
【0076】
変化率制限部153は、サブ補正部152で補正されたメイン補正値IGVcmaの単位時間当たりの変化量である変化率を予め定められた制限値以内に制限する。この変化率制限部153が用いる制限値は、IGV基本開度IGVbを大きくして吸気量を多くするときの制限値と、IGV基本開度IGVbを小さくして吸気量を少なくするときの制限値とで異なる。具体的には、IGV基本開度IGVbを大きくしているときの変化率の制限値は、IGV基本開度IGVbを小さくしているときの変化率の制限値より大きい。
【0077】
メイン補正部154は、変化率制限部153で変化率が制限されたメイン補正値IGVcmbをIGV基本開度IGVbに加えて、このIGV基本開度IGVbを補正する。よって、このメイン補正部154は、加算器である。メイン補正値IGVcmbで補正されたIGV基本開度IGVbは、IGV開度IGVo(調節器駆動量)としてIGV指令出部に出力される。
【0078】
IGV指令出力部155は、このIGV開度IGVo(調節器駆動量)を示すIGV指令をIGV装置21に出力する。
【0079】
以上で説明した制御装置100は、コンピュータである。このため、この制御装置100は、各種演算を行うCPU191と、CPU191のワークエリア等になるメモリ192と、ハードディスクドライブ装置等の補助記憶装置193と、キーボードやマウス等の手入力装置195aと、表示装置195bと、手入力装置195a及び表示装置195bの入出力インタフェース195と、ガスタービン1等に設けられている各種検知器からの信号が入力する設備Iインタフェース196と、ガスタービン1の各種操作端に操作量を出力する設備Oインタフェース197と、ネットワークNを介して外部と通信するための通信インタフェース198と、ディスク型記憶媒体Dに対してデータの記憶処理や再生処理を行う記憶・再生装置194と、を備えている。
【0080】
補助記憶装置193には、ガスタービン固有値データ193a、制御プログラム193b、OS(Operating System)プログラム193c等が予め格納されている。ガスタービン固有値データ193aとしては、例えば、標準環境下でのタービン入口温度が下限値のときのガスタービン出力(発電機出力)等がある。制御プログラム193bは、ガスタービン1を制御するためのプログラムである。補助記憶装置193に格納される各種データやプログラムは、例えば、記憶・再生装置194を介して、ディスク型記憶媒体Dから補助記憶装置193に取り込まれる。なお、各種データやプログラムは、通信インタフェース198を介して外部の装置から補助記憶装置193に取り込まれてもよい。また、各種データやプログラムは、手入力装置195aから入出力インタフェース195を介して補助記憶装置193に取り込まれてもよい。
【0081】
CPU191は、補助記憶装置193に格納されている制御プログラム193bをメモリ192上に展開し、この制御プログラム193bを実行することで、制御装置100の各機能構成を実現する。
【0082】
次に、ガスタービン1の基本的な動作について説明する。
【0083】
ガスタービン1の圧縮機10は、空気Aを圧縮して圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、燃焼器30に供給される。また、燃焼器30には、燃料ライン35から燃料Fも供給される。燃焼器30内では、この圧縮空気中で燃料Fが燃焼し、高温高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスは、タービン車室48内に送られ、タービンロータ41を回転させる。このタービンロータ41の回転で、このタービンロータ41に接続されている発電機9が発電する。
【0084】
以上のようなガスタービン1の動作過程で、燃料調節弁36やIGV装置21が制御装置100により制御される。
【0085】
次に、図10及び図11に示すフローチャートに従って、制御装置100の動作について説明する。
【0086】
図10のフローチャートに示すように、LDCSO演算部111は、外部から要求出力PWdと出力計67で検知された実出力PWrとを受け付ける。そして、LDCSO演算部111は、要求出力PWdと実出力PWrとの偏差に応じた負荷燃料量LDCSOを求める(S1:負荷燃料量演算工程)。
【0087】
許容燃料量演算部120は、負荷燃料量演算工程(S1)と並行して、複数の検知器から検知値を受け付けて、この検知値に応じた許容燃料量を求める(S2:許容燃料量演算工程)。
【0088】
この許容燃料量演算工程(S2)では、図11のフローチャートに示すように、BPCSO演算部121aによる第一許容温度燃料量演算工程(BPCSO演算工程)(S21)と、ERXCSO演算部による第二許容燃料量演算工程(EXCSO演算工程)(S24)と、LRCSO演算部127による変化率制限燃料量演算工程(LRCSO演算工程)(S27)とが並行して実行される。
【0089】
BPCSO演算工程(S21)では、まず、BPCSO演算部121aの第一許容温度演算部122aにより第一許容温度が求められる(S22:第一許容温度演算工程)。第一許容温度演算部122aは、車室圧力計65で検知された車室圧力Pcを受け付け、この車室圧力Pcに応じた第一許容温度を求める。なお、この第一許容温度は、前述したように、タービン車室48内又は排気ダクト50内の第一位置における排気ガスEGの許容温度である。次に、BPCSO演算部121aのBPCSO算出部124aにより第一許容温度燃料量BPCSOが求められる(S23:第一許容温度算出工程(BPCSO算出工程))。BPCSO算出部124aは、第一温度計61で検知された第一位置における排気ガスEGの温度Tbを受け付けて、この排気ガスEGの温度Tbと第一許容温度との偏差を求める。そして、BPCSO算出部124aは、この偏差に応じた第一許容温度燃料量BPCSOを求める。
【0090】
EXCSO演算工程(S24)では、まず、EXCSO演算部121bの第二許容温度演算部122bにより第二許容温度が求められる(S25:第二許容温度演算工程)。第二許容温度演算部122bは、車室圧力計65で検知された車室圧力Pcを受け付け、この車室圧力Pcに応じた第二許容温度を求める。なお、この第二許容温度は、前述したように、排気ダクト50内の第二位置における排気ガスEGの許容温度である。次に、EXCSO演算部121bのEXCSO算出部124bにより第二許容温度燃料量EXCSOが求められる(S26:第二許容温度算出工程(EXCSO算出工程))。EXCSO算出部124bは、第二温度計62で検知された第二位置における排気ガスEGの温度Teを受け付けて、この排気ガスEGの温度Teと第二許容温度との偏差を求める。そして、EXCSO算出部124bは、この偏差に応じた第二許容温度燃料量EXCSOを求める。
【0091】
LRCSO演算工程(S27)では、まず、LRCSO演算部127のCLCSO演算器128により入口温度相関値CLCSOが求められる(S28:相関値演算工程)。CLCSO演算器128は、前述したように、吸気温度計64で検知された空気の温度Ti、大気圧計63で検知された大気圧Pi、出力計67で検知れた実出力PWr、及び、IGV開度IGVoを用いて、入口温度相関値CLCSOを求める。次に、LRCSO演算部127のLRCSO算出器129により、前述した方法で、入口温度相関値CLCSOに応じた変化率制限燃料量LRCSOが求められる(S29:変化率制限燃料算出工程(LRCSO算出工程))。
【0092】
以上で説明したように、許容燃料量演算部120は、ガスタービン1を損傷から保護するために必要なパラメータを複数の検知器から受け付け、このパラメータを用いて、ガスタービン1を保護可能な許容燃料量を求める。本実施形態でのパラメータとしては、以上で説明したように、車室圧力計65で検知された車室圧力Pc、第一温度計61で検知された排気ガスEGの温度Tb、第二温度計62で検知された排気ガスEGの温度Te、吸気温度計64で検知された空気の温度Ti、大気圧計63で検知された大気圧Pi、出力計67で検知れた実出力PWr、及び、IGV開度IGVoがある。また、本実施形態での許容燃料量としては、以上で説明したように、第一許容温度燃料量BPCSO、第二許容温度燃料量EXCSO、及び、変化率制限燃料量LRCSOがある。これらの許容燃料量は、いずれも、基本的にタービン入口温度を許容最大温度以下にすることで、ガスタービン1、特に、燃焼器30、及びタービン40中で最も軸線上流側Dauの静翼列44を熱損傷から保護可能な燃料量である。
【0093】
基本開度演算部(基本駆動量演算部)141は、図10のフローチャートに示すように、負荷燃料量演算工程(S1)及び許容燃料量演算工程(S2)と並行して、出力計67で検知された実出力PWrに応じたIGV基本開度IGVb(基本駆動量))を求める(S3:基本開度演算工程(基本駆動量演算工程))。
【0094】
次に、流量低値選択部131が、負荷燃料量演算工程(S1)で求められた負荷燃料量LDCSOと許容燃料量演算工程(S2)で求められた複数の許容燃料量とのうち、最小の燃料量である最小燃料量CSOを選択する(S4:流量低値選択工程)。許容燃料量演算工程(S2)で求められた許容燃料量としては、前述したように、第一許容温度燃料量BPCSO、第二許容温度燃料量EXCSO、変化率制限燃料量LRCSOがある。
【0095】
次に、燃料偏差演算部142が、許容燃料量演算工程(S2)で求められた複数の許容燃料量と流量低値選択工程(S4)で選択された最小燃料量CSOとの偏差を求める(S5:燃料偏差演算工程)。
【0096】
この燃料偏差演算工程(S5)では、まず、サブ偏差演算部143が複数種類の許容燃料量毎に最小燃料量CSOとの偏差を求める(S51:サブ偏差演算工程)。次に、偏差低値選択部145が複数の偏差のうちから、最小の偏差である最小偏差Δminを選択する(S52:偏差低値選択工程)。複数の偏差としては、前述したように、第一許容温度燃料量BPCSOと最小燃料量CSOとの偏差、第二許容温度燃料量EXCSOと最小燃料量CSOとの偏差、変化率制限燃料量LRCSOと最小燃料量CSOとの偏差がある。複数の偏差のうちの最小偏差Δminは、ガスタービン損傷の可能性が高まっていることを示すパラメータの一つである。
【0097】
次に、補正値演算部146が、最小偏差Δminを用いて、IGV基本開度IGVbの補正値であるメイン補正値IGVcmを求める(S6:補正値演算工程)。このメイン補正値IGVcmは、図7を用いて前述したように、最小偏差Δminが小さい値Δmin1より大きいときには0になる。すなわち、最小偏差Δminが大きいときには、メイン補正値IGVcmが0になり、IGV基本開度IGVbは補正されない。また、メイン補正値IGVcmは、最小偏差Δminが小さい値Δmin1以下のときには、最小偏差Δminが小さくなるに連れて大きくなる。よって、最小偏差Δminが第一偏差であるときのメイン補正値IGVcmは、最小偏差Δminが第一偏差より小さい第二偏差であるときのメイン補正値IGVcm以上である。つまり、最小偏差Δminが小さい方が、メイン補正値IGVcmは大きくなる。
【0098】
次に、補正部150が、メイン補正値IGVcmで、IGV基本開度IGVbを補正する(S7:補正工程)。この補正工程(S7)では、サブ補正値演算工程(S71)、サブ補正工程(S72)、変化率制限工程(S73)、メイン補正工程(S74)が実行される。
【0099】
サブ補正値演算工程(S71)では、サブ補正値演算部151が実出力PWrに応じたサブ補正値IGVcsを求める。サブ補正値演算部151は、図8を用いて説明したように、実出力PWrが第一出力PW1oより小さいときにはサブ補正値IGVcsを最小値にし、実出力PWrが第一出力PW1oより大きくなると、出力PWrの増加に伴ってサブ補正値IGVcsを大きくし、実出力PWrが大きい第二出力PW2oより大きくなると、実出力PWrが増加してもサブ補正値IGVcsを大きくしない。よって、実出力PWrが第一値のときのサブ補正値IGVcsは、実出力PWrが第一値より小さい第二値のときのサブ補正値IGVcs以上である。つまり、実出力PWrが大きい方が、サブ補正値IGVcsは大きくなる。
【0100】
サブ補正工程(S72)では、サブ補正部152が、メイン補正値IGVcmにサブ補正値IGVcsを掛けて、このメイン補正値IGVcmを補正する。このため、サブ補正値IGVcsが第一値のときに補正したメイン補正値IGVcmaは、サブ補正値IGVcsが第一値より小さい第二値のときに補正したメイン補正値IGVcmaより大きくなる。よって、実出力PWrが大きい方が、補正されたメイン補正値IGVcmaは大きくなる。
【0101】
変化率制限工程(S73)では、サブ補正部152で補正されたメイン補正値IGVcmaの変化率を予め定められた制限値以内に制限する。この変化率制限部153が用いる制限値は、前述したように、IGV開度を大きくするときの変化率の制限値が、IGV開度を小さくするときの変化率の制限値より大きい。
【0102】
メイン補正工程(S74)では、メイン補正部154が、IGV基本開度IGVbを補正する。この際、メイン補正部154は、変化率が制限されたメイン補正値IGVcmbをIGV基本開度IGVbに加える。メイン補正値IGVcmbは正の値である。よって、IGV基本開度IGVbは、補正部150による補正で大きくなる。
【0103】
メイン補正部154で補正されたIGV基本開度IGVbは、IGV開度IGVoとしてIGV指令出力部155に出力される。このIGV指令出力部155は、このIGV開度IGVoを示すIGV指令を作成し、このIGV指令をIGV装置21に出力する(S8:IGV指令出力工程)。この結果、IGV装置21の開度は、IGV開度IGVoになる。
【0104】
弁指令出力部132は、流量低値選択工程(S4)で選択された最小燃料量CSOに応じた燃料調節弁36の開度を求める。そして、弁指令出力部132は、この開度を示す弁指令を燃料調節弁36に出力する(S9:弁指令出力工程)。この結果、燃料調節弁36は、弁指令が示す開度になり、この燃料調節弁36には、最小燃料量CSOの燃料が流れる。
【0105】
以上で、制御装置100による一連の処理が終了する。この一連の処理は、ガスタービン1が駆動している間、繰り返して実行される。
【0106】
以上のように、本実施形態では、ガスタービン損傷の可能性が高まっていることを示すパラメータの一つである最小偏差Δminの大きさに応じて、IGV基本開度IGVbが補正される。このため、本実施形態では、ガスタービン損傷の可能性が高まっているときにIGV基本開度IGVbが補正され、ガスタービン1に流入する空気の流量が調節される。この結果、本実施形態では、ガスタービン損傷の可能性が高まっているときに、燃焼ガスのタービン入口温度や排気ダクト50内の排気ガスEGの温度が調節され、ガスタービン1の損傷を抑えることができる。さらに、本実施形態では、ガスタービン損傷の可能性が高まっていないときには、IGV基本開度IGVbが補正されず、ガスタービン1に流入する空気の流量が調節されない。つまり、ガスタービン損傷の可能性が高まっていないときに、ガスタービン1に流入する空気の流量は、IGV基本開度IGVbに対応する空気の流量より大きくならない。この結果、本実施形態では、ガスタービン損傷の可能性が高まっていないときに、タービン40単独での出力エネルギーに対して圧縮機10における消費エネルギーは増加せず、ガスタービン効率の低下を抑制することができる。
【0107】
ガスタービン1は、実出力PWrが小さいときより実出力PWrが大きいときの方が損傷の可能性が高い。本実施形態では、実出力PWrに応じたサブ補正値IGCcsでメイン補正値IGGcmを補正し、補正後のメイン補正値でIGV基本開度IGVbを補正する。すなわち、本実施形態では、実出力PWrが大きくてガスタービン損傷の可能性が高いときにメイン補正値が補正される。よって、本実施形態では、この観点からも、ガスタービン1の損傷を抑えることができる。
【0108】
ガスタービン1は、基本開度演算部141が求めたIGV基本開度IGVbが大きくなっているとき、つまり吸気量が多くなっているとき、燃焼器30に供給される燃料量も多くなる。このため、ガスタービン1は、基本開度演算部141が求めたIGV基本開度IGVbが小さくなっているときより、このIGV基本開度IGVbが大きくなっているときの方が損傷の可能性が高い。本実施形態では、IGV基本開度IGVbを大きくして吸気量を多くするときの補正値変化率に関する制限値が、IGV基本開度IGVbを小さくして吸気量を少なくするときの補正値変化率に関する制限値より大きい。このため、本実施形態では、IGV基本開度IGVbを大きくして吸気量を多くするときの補正値変化率が、IGV基本開度IGVbを小さくして吸気量を少なくするときの補正値変化率より大きくなる。よって、本実施形態では、この観点からも、ガスタービン1の損傷を抑えることができる。
【0109】
「変形例」
以上の実施形態では、許容燃料量として、第一許容温度燃料量BPCSOと、第二許容温度燃料量EXCSOと、変化率制限燃料量LRCSOとを求める。しかしながら、許容燃料量として、これらの許容燃料量のうち、いずれか一の許容燃料量、例えば、第一許容温度燃料量BPCSOのみを求めるようにしてもよい。この場合、複数の許容燃料量毎の最小燃料量CSOに対する偏差を求める必要がないため、偏差低値選択部145は不要である。また、許容燃料量として、第一許容温度燃料量BPCSO及び第二許容温度燃料量EXCSOのみを求め、変化率制限燃料量LRCSOを求めなくてもよい。
【0110】
本実施形態の補正部150は、サブ補正値演算部151、サブ補正部152、変化率制限部153、メイン補正部154を有する。しかしながら、補正部150は、これらのうち、サブ補正値演算部151及びサブ補正部152が無くてもよい。この場合、補正値演算部146が求めたメイン補正値IGVcmの変化率を変化率制限部153が制限する。また、補正部150は、これらのうち、変化率制限部153が無くてもよい。この場合、サブ補正部152で補正され、変化率が制限されていないメイン補正値IGVcmaにより、IGV基本開度IGVbが補正される。さらに、補正部150は、サブ補正値演算部151、サブ補正部152、変化率制限部153が無くてもよい。この場合、補正値演算部146が求めたメイン補正値IGVcmによりIGV基本開度IGVbが補正される。
【符号の説明】
【0111】
1:ガスタービン
2:ガスタービンロータ
9:発電機
10:圧縮機
11:圧縮機ロータ
12:ロータ軸部
13:動翼列
14:静翼列
18:圧縮機車室
21:IGV装置(吸気量調節器)
22:可動翼
23:駆動器
30:燃焼器
35:燃料ライン
36:燃料調節弁
38:中間車室
40:タービン
41:タービンロータ
42:ロータ軸部
43:動翼列
43a:最終段動翼列
44:静翼列
48:タービン車室
50:排気ダクト
61:第一温度計
62:第二温度計
63:大気圧計
64:吸気温度計
65:車室圧力計
66:回転数計
67:出力計
100:制御装置
110:燃料制御部
111:負荷燃料量演算部(LDCSO演算部)
112:差分器
113:PI制御器
120:許容燃料量演算部
121:許容温度燃料量演算部
121a:第一許容温度燃料量演算部(BPCSO演算部)
122a:第一許容温度演算部
123:温度バイアス器
124a:第一許容温度燃料量算出部(BPCSO算出部)
125a:差分器
126a:PI制御器
121b:第二許容温度燃料量演算部(EXCSO演算部)
122b:第二許容温度演算部
124b:第二許容温度燃料量算出部(EXCSO算出部)
125b:差分器
126b:PI制御器
127:変化率制限燃料量演算部(LRCSO演算部)
128:入口温度相関値演算器(CLCSO演算器)
129:変化率制限燃料量算出器(LRCSO算出器)
131:流量低値選択部
132:弁指令出力部
140:IGV制御部
141:基本開度演算部(基本駆動量演算部)
142:燃料偏差演算部
143:サブ偏差演算部
144a:第一差分器
144b:第二差分器
144c:第三差分器
145:偏差低値選択部
146:補正値演算部
150:補正部
151:サブ補正値演算部
152:サブ補正部
153:変化率制限部
154:メイン補正部
155:IGV指令出力部(調節器指令出力部)
191:CPU
192:メモリ
193:補助記憶装置
193a:ガスタービン固有値データ
193b:制御プログラム
193c:OS(Operating System)プログラム
194:記憶・再生装置
195:入出力インタフェース
195a:手入力装置
195b:表示装置
196:設備Iインタフェース
197:設備Oインタフェース
198:通信インタフェース
A:空気
F:燃料
EG:排気ガス
Ar:軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
図1
図2
図3
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図10
図11