(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】アルカリ電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/24 20060101AFI20221115BHJP
H01M 4/42 20060101ALI20221115BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20221115BHJP
H01M 10/26 20060101ALI20221115BHJP
H01M 10/30 20060101ALI20221115BHJP
H01M 10/24 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01M4/24 H
H01M4/42
H01M4/48
H01M10/26
H01M10/30 Z
H01M10/30 A
H01M10/24
(21)【出願番号】P 2018238726
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 和美
(72)【発明者】
【氏名】森本 直樹
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】FAN,XINMING et.al.,THE APPLICATION OF Zn-Al-HYDROTALCITE AS A NOVEL ANODIC MATERIAL FOR Ni-Zn SECONDARY CELLS,JOURNAL OF POWER SOURCES,米国,2012年09月29日,No.224,p.80-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/24
H01M 4/42
H01M 4/48
H01M 10/26
H01M 10/30
H01M 10/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極、正極、及びアルカリ電解液を有するアルカリ電池であって、
前記負極は、下記(a)~(c)を有している亜鉛複合水酸化物を負極活物質として含み:(a)水酸化亜鉛、(b)前記水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウム、及び(c)水酸化物イオン以外のアニオン、
前記アニオンは、炭酸アニオン、硫酸アニオン、及びリン酸アニオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、亜鉛元素が70.0モル%以上であり、アルミニウム元素が30.0モル%以下であり、かつ
前記アルカリ電解液は、前記アニオンと同種のアニオンを含む、
アルカリ電池。
【請求項2】
前記アルカリ電解液において、アルカリ塩の水酸化物イオン1モルに対して、前記同種のアニオンは、0.1モル以上である、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項3】
負極、正極、及びアルカリ電解液を有するアルカリ電池であって、
前記負極は、下記(a)~(c)を有している亜鉛複合水酸化物を負極活物質として含み:(a)水酸化亜鉛、(b)前記水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウム、及び(c)水酸化物イオン以外のアニオン、
前記アニオンは、炭酸アニオン、硫酸アニオン、及びリン酸アニオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、亜鉛元素が70.0モル%以上であり、アルミニウム元素が30.0モル%以下であり、かつ
前記亜鉛複合水酸化物は、(d)前記水酸化亜鉛に固溶している、アルミニウム以外の金属元素を更に有しており、
前記アルミニウム以外の金属元素の価数が、3価以上であり、かつ
前記亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、前記アルミニウム以外の金属元素が、20.0モル%未満である、
アルカリ電池。
【請求項4】
前記アルミニウム以外の金属元素は、イットリウム、チタン、ジルコニウム、及びモリブデンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のアルカリ電池。
【請求項5】
負極、正極、及びアルカリ電解液を有するアルカリ電池であって、
前記負極は、下記(a)~(c)を有している亜鉛複合水酸化物を負極活物質として含み:(a)水酸化亜鉛、(b)前記水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウム、及び(c)水酸化物イオン以外のアニオン、
前記アニオンは、炭酸アニオン、硫酸アニオン、及びリン酸アニオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、亜鉛元素が70.0モル%以上であり、アルミニウム元素が30.0モル%以下であり、かつ
前記アルカリ電解液は、亜鉛又は酸化亜鉛で飽和されていない、
アルカリ電池。
【請求項6】
前記亜鉛複合水酸化物は、結晶水を更に含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載のアルカリ電池。
【請求項7】
前記正極は、水酸化ニッケルを正極活物質として含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載のアルカリ電池。
【請求項8】
二次電池である、請求項1~
7のいずれか一項に記載のアルカリ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルカリ電池に関する。特に、本開示は、亜鉛複合水酸化物を負極活物質として含む負極を有するアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛は、地球上に多く存在しており、安価な材料である一方で、電池の活物質として理論容量密度が高い。このため、亜鉛及び/又は亜鉛含有化合物(例えば、酸化亜鉛等)を負極系活物質として有する亜鉛電池は、古くから注目されてきた。
【0003】
このような亜鉛電池としては、例えば、ニッケル・亜鉛電池、空気・亜鉛電池、マンガン・亜鉛電池又は亜鉛イオン電池、銀・亜鉛電池等が研究されてきた。
【0004】
しかしながら、亜鉛(Zn)は、下記反応式(1)に示す放電反応により、放電生成物として強アルカリ電解液に可溶なジンケートアニオン(Zn(OH)4
2-)を生成する:
放電反応:Zn+4OH-→Zn(OH)4
2-+2e- …反応式(1)
【0005】
このような亜鉛成分の電解液への溶解を抑えるために、亜鉛負極を用いる電池では、通常、酸化亜鉛(ZnO)を溶解させた強アルカリ水溶液を電解液として用いる。
【0006】
しかしながら、酸化亜鉛を飽和溶解させても、ジンケートアニオンが過飽和溶解し、飽和溶解度に対して数倍の濃度にまで溶解するため、放電によって生成したジンケートアニオンは、電解液中に容易に拡散移動することができる。
【0007】
負極の充電又は放電の過程において、ジンケートアニオンの濃度が局所的に過飽和溶解度を超えるような場合、又は局所的に電解液の水酸化物イオン(OH-)の濃度が低くなり、ジンケートアニオンに対する過飽和溶解度が低下するような場合、ジンケートアニオンは、下記反応式(2)に示す反応により、固体の酸化亜鉛となって析出する:
Zn(OH)4
2-→ZnO+H2O+2OH- …反応式(2)
【0008】
すなわち、充放電の繰り返しにより、負極内の同様な箇所で上記のような酸化亜鉛の析出と堆積が繰り返されるため、亜鉛負極の形状変化が進行すると考えられる。
【0009】
このような問題を解決するために、特許文献1及び2では、それぞれ、亜鉛系負極を被覆して用いる技術、及び亜鉛及び/又は酸化亜鉛の代わりに、層状複水酸化物(LDH)を負極として用いる技術が提案されている。
【0010】
より具体的には、特許文献1では、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)から選ばれる金属の酸化物を1種以上含み、かつ特定の表面偏在比を有している被覆組成物を用いて、亜鉛含有活物質を被覆している二次電池用亜鉛負極材が提案されている。
【0011】
また、特許文献2では、正極活物質として、Ni、Fe及びMnからなる群から選択される少なくとも1種を構成元素として含有する層状複水酸化物(LDH)を含む正極と、負極活物質として、Cu、Al及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を構成元素として含有する層状複水酸化物(LDH)を含む負極と、アルカリ電解液及び/又は水酸化物イオン伝導性固体電解質と、を備えた、二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2017/077991号
【文献】特開2018-133324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1及び2は、放電容量に関して、依然として開発及び改善の余地がある。
【0014】
そこで、本開示は、上記事情を鑑みてなされたものであり、放電容量を向上することができるアルカリ電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の本発明者らは、以下の手段により、上記課題を解決できることを見出した。
【0016】
〈態様1〉
負極、正極、及びアルカリ電解液を有するアルカリ電池であって、
前記負極は、下記(a)~(c)を有している亜鉛複合水酸化物を負極活物質として含み:(a)水酸化亜鉛、(b)前記水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウム、及び(c)水酸化物イオン以外のアニオン、かつ
前記亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、前記亜鉛元素が70.0モル%以上であり、前記アルミニウム元素が30.0モル%以下である、
アルカリ電池。
〈態様2〉
前記アニオンは、炭酸アニオン、硫酸アニオン、及びリン酸アニオンからなる群より選択される少なくとも1種である、態様1に記載のアルカリ電池。
〈態様3〉
前記アルカリ電解液は、前記アニオンと同種のアニオンを含む、態様1又は2に記載のアルカリ電池。
〈態様4〉
前記アルカリ電解液において、アルカリ塩の水酸化物イオン1モルに対して、前記同種のアニオンは、0.1モル以上である、態様3に記載のアルカリ電池。
〈態様5〉
前記亜鉛複合水酸化物は、(d)前記水酸化亜鉛に固溶している、アルミニウム以外の金属を更に有しており、
前記アルミニウム以外の金属の価数が、3価以上であり、かつ
前記亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、前記アルミニウム以外の金属元素が、20.0モル%未満である、
態様1~4のいずれか一項に記載のアルカリ電池。
〈態様6〉
前記アルミニウム以外の金属は、イットリウム、チタン、ジルコニウム、及びモリブデンからなる群より選択される少なくとも1種である、態様5に記載のアルカリ電池。
〈態様7〉
前記亜鉛複合水酸化物は、結晶水を更に有している、態様1~6のいずれか一項に記載のアルカリ電池。
〈態様8〉
前記正極は、水酸化ニッケルを正極活物質として含む、態様1~7のいずれか一項に記載のアルカリ電池。
〈態様9〉
前記アルカリ電解液は、亜鉛又は酸化亜鉛で飽和されていない、態様1~8のいずれか一項に記載のアルカリ電池。
〈態様10〉
二次電池である、態様1~9のいずれか一項に記載のアルカリ電池。
【発明の効果】
【0017】
本開示のアルカリ電池によれば、放電容量を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1、比較例1及び比較例2のアルカリ電池の充放電試験の結果をプロットした図である。
【
図2】実施例1~3のアルカリ電池の充放電試験の結果をプロットした図である。
【
図3】実施例4~6のアルカリ電池の充放電試験の結果をプロットした図である。
【
図4】実施例7及び8のアルカリ電池の充放電試験の結果をプロットした図である。
【
図5】実施例9及び10のアルカリ電池の充放電試験の結果をプロットした図である。
【
図6】実施例11及び12のアルカリ電池の充放電試験の結果をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0020】
《アルカリ電池》
本開示のアルカリ電池は、
負極、正極、及びアルカリ電解液を有するアルカリ電池であって、
負極は、下記(a)~(c)を有している亜鉛複合水酸化物を負極活物質として含み:(a)水酸化亜鉛、(b)水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウム、及び(c)水酸化物イオン以外のアニオン、かつ
亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、亜鉛元素が70モル%以上であり、アルミニウム元素が30モル%以下である。
【0021】
〈負極〉
本開示において、負極は、負極材料及び負極集電体を含む。
【0022】
負極の形態としては、特に限定されず、例えば、板状の負極集電体の上に負極材料が層状に形成されているもの、又は発泡体状、特に連続気泡構造体状の負極集電体に負極材料が塗布又は充填されているものを挙げることができる。
【0023】
(負極活物質)
本開示において、負極活物質は、下記(a)~(c)を有している亜鉛複合水酸化物であり:
(a)水酸化亜鉛、
(b)水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウム、及び
(c)水酸化物イオン以外のアニオン、
かつ
亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、亜鉛元素が70モル%以上であり、アルミニウム元素が30モル%以下である。
【0024】
本開示の本発明者らの鋭意研究によって、上記のような特定のモル%の範囲で亜鉛元素及びアルミニウム元素を有している亜鉛複合水酸化物を負極活物質として使用することによって、アルカリ電池の放電容量を向上できたことが見出された。
【0025】
本開示において、「亜鉛複合水酸化物」とは、水酸化亜鉛に少なくとも一種の金属元素が固溶している水酸化物を意味する。また、「水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウム」とは、水酸化亜鉛の結晶構造中に部分的に入り込んでいるアルミニウム元素を指す。
【0026】
また、亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対する亜鉛元素のモル%及びアルミニウム元素のモル%は、例えばICP発光分光分析(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)によって求めることができる。より具体的には、ICP分光分析によって亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体の合計原子数に対して、亜鉛元素の原子数の割合を亜鉛元素のモル%とし、アルミニウム元素の原子数の割合をアルミニウム元素のモル%として得ることができる。
【0027】
また、後述する「アルミニウム以外の金属元素」を更に有している場合は、金属元素全体の合計原子数に対して、この金属元素のモル%を求めることができる。
【0028】
なお、ICP発光分光分析は、JIS K 0116:2014に準拠にして行うことができる。また、分析装置は特に限定されず、例えば、ICP発光分光分析装置SPS-3100(日立ハイテクサイエンス)であってよい。
【0029】
亜鉛複合水酸化物において、亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、亜鉛元素は70.0モル%以上であれば特に限定されず、例えば71.0モル%以上、72.0モル%以上、73.0モル%以上、74.0モル%以上、75.0モル%以上、76.0モル%以上、77.0モル%以上、78.0モル%以上、79.0モル%以上、又は80.0モル%以上であってよく、また99.0モル%以下、95.0モル%以下、90.0モル%以下、85.0モル%以下、84.0モル%以下、83.0モル%以下、82.0モル%以下、81.0モル%以下、又は80.0モル%以下であってよい。
【0030】
また、亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、アルミニウム元素は、30.0モル%以下であれば、特に限定されず、例えば29.0モル%以下、28.0モル%以下、27.0モル%以下、26.0モル%以下、25.0モル%以下、24.0モル%以下、23.0モル%以下、22.0モル%以下、21.0モル%以下、20.0モル%以下、17.0モル%以下、15.0モル%以下、又は12.0モル%以下であってよく、また、1.0モル%以上、5.0モル%以上、10.0モル%以上、又は11.0モル%以上であってよい。
【0031】
本開示において、亜鉛複合水酸化物は、層状構造であってよい。この場合、水酸化亜鉛及び水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウムが、「ホスト層」の骨格を形成することができる。そして、水酸化物イオン以外のアニオンは、「ホスト層」と「ホスト層」との層間(「ゲスト層」とも呼ばれる)に挿入されている状態で存在することができる。
【0032】
ここで、アニオンは、水酸化物イオン以外のアニオンであれば、特に限定されない。アニオンは1価のアニオン、2価のアニオン、又は3価のアニオンであってよい。より具体的には、アニオンは、例えば炭酸アニオン、硫酸アニオン、及びリン酸アニオンからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0033】
亜鉛複合水酸化物に存在しているアニオンは、亜鉛複合水酸化物の全体の電荷バランスを取る役割を有する。したがって、アニオンの含有量は、特に限定されず、例えば上述した亜鉛、アルミニウム、及び任意のアルミニウム以外の金属元素の組成に合わせて、適宜調整することができる。
【0034】
また、本開示にかかる亜鉛複合水酸化物は、(d)水酸化亜鉛に固溶している、アルミニウム以外の金属を更に有してよい。
【0035】
この場合、亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体に対して、アルミニウム以外の金属元素は、20.0モル%未満であることが好ましく、また、15.0モル%以下、12.0モル%以下、10.0モル%以下、9.0モル%以下、又は8.0モル%以下であってよく、また1.0モル%以上、2.0モル%以上、5.0モル%以上、又は0.8モル%以上であってよい。
【0036】
アルミニウム以外の金属の価数は、3価以上であることが好ましく、より具体的には、例えば3価、4価、5価、又は6価であることが好ましく、3価又は4価であることがより好ましい。
【0037】
アルミニウム以外の金属の具体例としては、例えば、イットリウム、チタン、ジルコニウム、及びモリブデンからなる群より選択される少なくとも1種であってよく、好ましくはイットリウム又はジルコニウムである。
【0038】
また、本開示にかかる亜鉛複合水酸化物は、結晶水を更に有してよい。結晶水は、例えば上述した「ゲスト層」に挿入されている状態で存在することができる。
【0039】
本開示にかかる亜鉛複合水酸化物の一例として、例えば下記式(I)で表されているものが挙げられる:
ZnaAlbMc(A)d(OH)e (I)
【0040】
式(I)において、Mは、アルミニウム以外の金属元素であり、かつ3価以上の価数である金属元素を表しており、Aは、水酸化物以外のアニオンを表している。ここで、関係式:a+b+c=1、d>0、及びe>0を満たしている。
【0041】
また、式(I)において、例えばa≧0.70、a≧0.75、又はa≧0.80であってよい。また、b≦0.30、b≦0.25、又はb≦0.20であってよい。また、0≦c<0.20であってよい。
【0042】
本開示にかかる亜鉛複合水酸化物としてはまた、例えば下記式(II)で表されているものが挙げられる:
ZnaAlbMc(A)d(OH)e・fH2O (II)
【0043】
式(II)において、f以外の符号は上述した式(I)を参照することができる。ここで、fは、結晶水のモル比を正規化した数を表しており、f>0であってよい。
【0044】
(負極集電体)
負極集電体としては、特に限定されず、例えば発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、又は金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体等であってよい。また、負極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されることが好ましい。負極集電体を構成する材料の具体例としては、銅、真鍮、鋼、ニッケル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
また、負極集電体の形状は、特に限定されず、例えば平板状、又はシート状等であってよい。
【0046】
(その他の成分)
負極材料は、任意選択的に、例えば導電助剤、又はバインダー等のその他の成分を含んでよい。
【0047】
導電助剤としては、導電性を有し、かつ電極反応を阻害するものでなければ特に限定されない。より具体的には、導電助剤として、例えば炭素材料、ペロブスカイト型導電性材料、多孔質導電性ポリマー及び金属多孔体等を挙げることができる。炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであっても良い。多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、又はカーボンファイバー等を挙げることができる。
【0048】
バインダーとしては、特に限定されず、活物質の結着力を高め、かつ電極反応を阻害するものが好ましい。より具体的には、バインダーとして、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ化物ポリマー、又はスチレン・ブタジエンゴム(SBRゴム)等のゴム系樹脂等を挙げることができる。
【0049】
〈正極〉
本開示において、正極は、正極材料及び正極集電体を含む。ここで、負極材料は、特に限定されず、目的とするアルカリ電池に合わせて適宜設定することができる。以下では、ニッケル・亜鉛電池を目的とする場合を例として、正極材料について、説明する。なお、本開示のアルカリ電池は、これに限定されるものではない。
【0050】
また、正極の形態としては、特に限定されず、例えば、板状の正極集電体の上に負正極材料が層状に形成されているもの、又は発泡体状、特に連続気泡構造体状の正極集電体に正極材料が塗布又は充填されているものを挙げることができる。
【0051】
(正極活物質)
正極材料には、正極活物質が含まれている。
【0052】
ニッケル・亜鉛アルカリ電池において、正極活物質としては、例えば、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、又は水酸化ニッケルにアルミニウム及びイッテルビウムが少なくとも固溶しているニッケル複合水酸化物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
(正極集電体)
正極集電体としては、特に限定されず、例えば上述した負極集電体を適宜用いることができる。
【0054】
(その他の成分)
正極材料は、任意選択的に、例えば導電助剤、又はバインダー等のその他の成分を含んでよい。これらの他の成分に関しては、上述した負極材料に含むことができる「その他の成分」を参照することができる。
【0055】
〈アルカリ電解液〉
本開示のアルカリ電池において、アルカリ電解液は、アルカリ塩の水溶液中に、負極活物質として含まれている亜鉛複合水酸化物中のアニオンと同種のアニオンを含むことが好ましい。以下の説明では、このようなアルカリ電解液中に含まれているアニオンを、単に「同種アニオン」とも称する。
【0056】
本開示の本発明者らの鋭意研究によって、このように、アルカリ電解液は、同種のアニオンを含む場合は、同種のアニオンを含まない場合に比べて、更に放電容量を向上できることが分かった。その理由は、以下のように推測されるが、これによって本開示を限定されることはない。
【0057】
すなわち、アルカリ電解液は同種のアニオンを含むことによって、亜鉛複合水酸化物中のアニオンの溶出を抑制し、それによって亜鉛複合水酸化物自体の溶解を抑制できると推測される。
【0058】
また、アルカリ電解液を構成するアルカリ塩としては、例えば水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、又は水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0059】
アルカリ塩の水溶液中におけるアルカリ塩の濃度は、例えば1mol/L以上、2mol/L以上、3mol/L以上、4mol/L以上、5mol/L以上、又は6mol/L以上であってよく、また10mol/L以下、9mol/L以下、8mol/L以下、7mol/L以下、又は6mol/L以下であってよい。
【0060】
また、アルカリ電解液中の同種アニオンの含有量は、特に限定されない。本開示の効果をより発揮させる観点から、前記アルカリ電解液において、アルカリ塩の水酸化物イオン(OH-)1モルに対して、前記同種のアニオンは、0.1モル以上であることが好ましく、また0.2モル以上、0.3モル以上、0.4モル以上、又は0.5モル以上であってよく、また1.0モル以下、0.8モル以下、0.7モル以下、又は0.6モル以下であってよい。
【0061】
また、本開示によれば、アルカリ電解液は、亜鉛又は酸化亜鉛で飽和されていなくてよい。換言すると、本開示にアルカリ電池は、本開示の特有の負極活物質及びアルカリ電解液を用いることで、従来のように亜鉛負極の問題点を解決できる。
【0062】
〈セパレータ〉
本開示のアルカリ電池は、セパレータを有してよい。
【0063】
セパレータの材料としては、特に限定されず、アルカリ電池に合わせて適宜設定することができる。例えば、ポリオレフィン不織布、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布、ポリエチレン・ポリプロピレン不織布、又はそれらを親水性処理したもの等が挙げられる。
【0064】
《アルカリ電池の製造方法》
本開示にかかるアルカリ電池の製造方法としては、例えば下記工程(i)~(iv)を含む方法であってよい:
(i)負極を準備すること、
(ii)正極を準備すること、
(iii)アルカリ電解液を準備すること、及び
(iv)組立。
〈工程(i)〉
工程(i)では、本開示にかかる負極を準備する。ここで、負極は、下記(a)~(c)を有している亜鉛複合水酸化物を負極活物質として含む:(a)水酸化亜鉛、(b)水酸化亜鉛に固溶しているアルミニウム、及び(c)水酸化物イオン以外のアニオン。
【0065】
負極活物質として含まれる亜鉛複合水酸化物の調製は、特に限定されず、公知の層状複水酸化物の調製方法を適宜採用できる。以下では例示的に説明する。
【0066】
まず、亜鉛を含む塩及びアルミニウムを含む塩を、所望の元素組成比(モル比)で、水に溶解させて、第1の溶液を調製する。
【0067】
ここで、亜鉛を含む塩は、特に限定されず、例えば硫酸亜鉛、硝酸亜鉛又は塩化亜鉛等であってよい。
【0068】
また、アルミニウムを含む塩は、特に限定されず、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム又は硝酸アルミニウム等であってよい。
【0069】
なお、任意のアルミニウム以外の金属元素を含む場合には、当該金属を含む塩を、所望の元素組成比(モル比)で、上述した亜鉛を含む塩及びアルミニウムを含む塩と同時に混合されてよい。
【0070】
次に、水溶性のアルカリ性物質を水に溶解させて、第2の溶液を調製する。
【0071】
ここで、水溶性アルカリ性物質は、特に限定されず、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、又はリン酸ナトリウム等であってよい。これらの水溶性アルカリ性物質は、いずれかを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
なお、水酸化物イオン以外のアニオンとして、炭酸アニオンは優先的に亜鉛複合水酸化物の「ゲスト層」に挿入することが知られている。
【0073】
このため、水酸化物イオン以外のアニオンとして、炭酸アニオンを目的とする場合は、第2の溶液を調製する際に、例えば炭酸ナトリウム等の炭酸アニオンを含む水溶性アルカリ性物質を、単独で用いてもよく、水酸化ナトリウム等の他の水溶性アルカリ性物質と併用してもよい。
【0074】
また、水酸化物イオン以外のアニオンとして、例えば硫酸アニオン、リン酸アニオン等の炭酸アニオン以外のアニオンを目的とする場合、炭酸アニオンを含まない方が好ましい。
【0075】
より具体的には、例えば硫酸アニオンを水酸化物イオン以外のアニオンとして用いる場合、第2の溶液として、炭酸アニオンを含まない他の水溶性アルカリ性物質(例えば、水酸化ナトリウム等)を水に溶解させて調製してよい。この場合、上述した第1の溶液を調製する際に硫酸アニオンを含む亜鉛又はアルミニウムの塩を採用すれば、亜鉛複合水酸化物中に硫酸アニオンを挿入されることができる。
【0076】
また、例えばリン酸アニオンを水酸化物イオン以外のアニオンとして用いる場合、第2の溶液として、炭酸アニオンを含まずかつリン酸アニオンを含む他の水溶性アルカリ性物質(例えば、リン酸ナトリウムと等)を、単独で、又は水酸化ナトリウム等の他の水溶性アルカリ性物質と併用して水に溶解させて調製してよい。
【0077】
なお、亜鉛複合水酸化物中に(c)水酸化物イオン以外のアニオンを導入させる方法は、上記に限定されず、当業者によって適宜設計することができる。
【0078】
そして、第1の溶液と第2の溶液とを反応漕で混合して、スラリーを得る。このスラリーをオートクレーブ等の装置に入れて、150℃~200℃、又は160℃~170℃の温度で数時間(例えば、2時間以上)加熱させる。
【0079】
加熱後、室温に冷却して、通常の後処理を行う。例えば、濾別、洗浄、及び乾燥等の操作によって、目的の亜鉛複合水酸化物を調製することができる。
【0080】
なお、亜鉛複合水酸化物中における亜鉛、アルミニウム、及び任意のアルミニウム以外の金属元素の組成比(モル比)は、第1の溶液を調製する際に、目的のモル比に合わせて、それぞれの金属イオンを含む溶液を混合されればよい。
【0081】
得られた亜鉛複合水酸化物と、任意選択的に、例えば導電助剤、又はバインダー等のその他の成分と、水とを混合させて、負極材料スラリーを調製する。
【0082】
この負極材料スラリーを負極集電体に塗布又は充填し、乾燥及び/又は焼成し、圧縮することによって、負極を準備することができる。
【0083】
〈工程(ii)〉
工程(ii)では、正極を準備する。
【0084】
正極は、目的とするアルカリ電池に合わせて、当該技術分野で公知の方法で作製することができる。正極の作製工程は、例えば正極集電体及び正極材料に関する材料を採用することを除き、負極の作製工程と同様にして行うことができる。
【0085】
〈工程(iii)〉
工程(iii)では、アルカリ電解液を準備する。ここで、アルカリ電解液は、亜鉛複合水酸化物中のアニオンと同種のアニオンを含む。
【0086】
〈工程(iv)〉
工程(iv)では、準備した正極及び負極と、セパレータとの組立を行う。
正極と負極の間に、セパレータを挟んで積層体を作製する。これによって、正極、セパレータ、及び負極がこの順で積層されている積層体を得ることができる。
【0087】
一方で、電池の外装となる筐体に準備したアルカリ電解液を注入し、ここに先の積層体を拘束して浸漬することによって、本開示のアルカリ電池を製造することができる。
【実施例】
【0088】
《実施例1》
(負極の準備)
硫酸亜鉛及び硫酸アルミニウムを、モル比として亜鉛:アルミニウム=80:20となるように、純水に溶解させて、第1の溶液として調製した。
【0089】
水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを純水に溶解させて、第2の溶液として調製した。
【0090】
上記調製した第1の溶液と第2の溶液とを反応槽で混合して中和し、生成したスラリーをオートクレーブ装置に移し入れ、170℃で2時間に亘って、反応させた。
【0091】
次いで、反応系を室温に冷却して、生成物を濾別し、純水で洗浄した。その後、温風で乾燥することによって、粉末状の亜鉛複合水酸化物を、負極活物質として得た。
【0092】
この実施例1の亜鉛複合水酸化物では、水酸化亜鉛に、アルミニウムが固溶している。ICP発光分光分析(ICP発光分光分析装置SPS-3100(日立ハイテクサイエンス)装置)の測定結果によれば、実施例1の亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体(亜鉛元素及びアルミニウム元素の合計)に対して、亜鉛元素が80.0モル%以上、アルミニウム元素が20.0モル%であった。また、この実施例1の亜鉛複合水酸化物は、水酸化物イオン以外のアニオンとして、炭酸アニオンを含んでいた。
【0093】
そして、固形分重量比で、実施例1の亜鉛複合水酸化物の粉末:アセチレンブラック:スチレン・ブタジエンゴム=85:10:5となる量で、純水と混合することによって、負極材料スラリーを作製した。
【0094】
この負極材料スラリーを金属集電体に塗布して、乾燥後に圧縮することによって、負極を準備した。
【0095】
(正極の準備)
固形分重量比で、水酸化ニッケル:アセチレンブラック:スチレン・ブタジエンゴム=85:10:5となる量で、純水と混合することによって、正極材料スラリーを作製した。
【0096】
この正極材料スラリーを金属集電体に塗布して、乾燥後に圧縮することによって、正極を準備した。
【0097】
(アルカリ電解液の準備)
アルカリ電解液として、6mol/Lの水酸化カリウム水溶液を準備した。
【0098】
(組立)
アクリル板、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極、及びアクリル板をこの順で積層し、これをネジで圧着することによって積層体を作製した。なお、セパレータの材料としては、ポリエチレン及びポリプロピレンから構成されているポリエチレン・ポリオレフィン不織布を採用した。
【0099】
こうして作製した積層体を、上記で準備したアルカリ電解液が入ったアクリル製容器に含浸し、積層体の近傍に参照極としてのHg/HgO電極を配置することにより、実施例1のアルカリ電池を作製した。
【0100】
《実施例2》
上述した実施例1の亜鉛とアルミニウムの組成をベースにして、アルミニウム10モル%分を減らしたこと、及び10モル%のイットリウムを固溶させたことが以外は、実施例1と同様にして、実施例2のアルカリ電池を作製した。
【0101】
この実施例2の亜鉛複合水酸化物では、水酸化亜鉛に、アルミニウム及びイットリウムが固溶している。ICP発光分光分析(ICP発光分光分析装置SPS-3100(日立ハイテクサイエンス))の測定結果によれば、実施例2の亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体(亜鉛元素、アルミニウム元素、及びイットリウム元素の合計)に対して、亜鉛元素が80.0モル%以上、アルミニウム元素が12.0モル%、イットリウム元素が8.0モル%であった。また、この実施例2の亜鉛複合水酸化物は、水酸化物イオン以外のアニオンとして、炭酸アニオンを含んでいた。
【0102】
《実施例3》
上述した実施例1の亜鉛とアルミニウムの組成をベースにして、アルミニウム10モル%分を減らしたこと、及び10モル%分のジルコニウムを固溶させたことが以外は、実施例1と同様にして、実施例3のアルカリ電池を作製した。
【0103】
この実施例3の亜鉛複合水酸化物では、水酸化亜鉛に、アルミニウム及びジルコニウムが固溶している。ICP発光分光分析(ICP発光分光分析装置SPS-3100(日立ハイテクサイエンス))の測定結果によれば、実施例3の亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体(亜鉛元素、アルミニウム元素、及びジルコニウム元素の合計)に対して、亜鉛元素が78.4モル%以上、アルミニウム元素が11.8モル%、ジルコニウム元素が9.8モル%であった。また、この実施例3の亜鉛複合水酸化物は、水酸化物イオン以外のアニオンとして、炭酸アニオンを含んでいた。
【0104】
《実施例4》
アルカリ電解液の調製において、6mol/Lの水酸化カリウム水溶液と3mol/Lの炭酸カリウム水溶液との混合溶液を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のアルカリ電池を作製した。
【0105】
《実施例5》
アルカリ電解液の調製において、6mol/Lの水酸化カリウム水溶液と3mol/Lの炭酸カリウム水溶液との混合溶液を準備したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例5のアルカリ電池を作製した。
【0106】
《実施例6》
アルカリ電解液の調製において、6mol/Lの水酸化カリウム水溶液と3mol/Lの炭酸カリウム水溶液との混合溶液を準備したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例6のアルカリ電池を作製した。
【0107】
《実施例7》
負極活物質の調製において、炭酸ナトリウムを用いずに、第2の溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7のアルカリ電池を作製した。
【0108】
この実施例7の亜鉛複合水酸化物では、水酸化亜鉛に、アルミニウムが固溶している。ICP発光分光分析(ICP発光分光分析装置SPS-3100(日立ハイテクサイエンス))の測定結果によれば、実施例7の亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体(亜鉛元素及びアルミニウム元素の合計)に対して、亜鉛元素が80.0モル%以上、アルミニウム元素が20.0モル%であった。また、この実施例7の亜鉛複合水酸化物は、水酸化物イオン以外のアニオンとして、硫酸アニオンを含んでいた。
【0109】
《実施例8》
アルカリ電解液の調製において、6mol/Lの水酸化カリウム水溶液と0.7mol/Lの硫酸カリウム水溶液との混合溶液を準備したこと以外は、実施例7と同様にして、実施例8のアルカリ電池を作製した。
【0110】
《実施例9》
負極活物質の調製において、炭酸ナトリウムの代わりに、リン酸三ナトリウムを用いて第2の溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9のアルカリ電池を作製した。
【0111】
この実施例9の亜鉛複合水酸化物では、水酸化亜鉛に、アルミニウムが固溶している。ICP発光分光分析(ICP発光分光分析装置SPS-3100(日立ハイテクサイエンス))の測定結果によれば、実施例9の亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体(亜鉛元素及びアルミニウム元素の合計)に対して、亜鉛元素が78.4モル%以上、アルミニウム元素が21.6モル%であった。また、この実施例9の亜鉛複合水酸化物は、水酸化物イオン以外のアニオンとして、リン酸アニオンを含んでいた。
【0112】
《実施例10》
アルカリ電解液の調製において、6mol/Lの水酸化カリウム水溶液と3mol/Lのリン酸カリウム水溶液との混合溶液を準備したこと以外は、実施例9と同様にして、実施例10のアルカリ電池を作製した。
【0113】
《実施例11》
上述した実施例1の亜鉛とアルミニウムの組成をベースにして、亜鉛5モル%分を減らしたこと、及びアルミニウム5モル%分を増やしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11のアルカリ電池を作製した。
【0114】
この実施例11の亜鉛複合水酸化物では、水酸化亜鉛に、アルミニウムが固溶している。ICP発光分光分析(ICP発光分光分析装置SPS-3100(日立ハイテクサイエンス))の測定結果によれば、実施例11の亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体(亜鉛元素及びアルミニウム元素の合計)に対して、亜鉛元素が74.1モル%以上、アルミニウム元素が25.9モル%であった。また、この実施例11の亜鉛複合水酸化物は、水酸化物イオン以外のアニオンとして、炭酸アニオンを含んでいた。
【0115】
《実施例12》
アルカリ電解液の調製において、6mol/Lの水酸化カリウム水溶液と3mol/Lの炭酸カリウム水溶液との混合溶液を準備したこと以外は、実施例11と同様にして、実施例12のアルカリ電池を作製した。
【0116】
《比較例1》
負極活物質として、実施例1の亜鉛複合水酸化物の粉末の代わりに、酸化亜鉛を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のアルカリ電池を作製した。
【0117】
《比較例2》
上述した実施例1の亜鉛とアルミニウムの組成をベースにして、亜鉛13モル%分を減らしたこと、及びアルミニウム13モル%分を増やしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のアルカリ電池を作製した。
【0118】
この比較例2の亜鉛複合水酸化物では、水酸化亜鉛に、アルミニウムが固溶している。ICP発光分光分析(ICP発光分光分析装置SPS-3100(日立ハイテクサイエンス))の測定結果によれば、比較例2の亜鉛複合水酸化物中の金属元素全体(亜鉛元素及びアルミニウム元素の合計)に対して、亜鉛元素が67.0モル%以上、アルミニウム元素が33.0モル%であった。また、この比較例2の亜鉛複合水酸化物は、水酸化物イオン以外のアニオンとして、炭酸アニオンを含んでいた。
【0119】
作製した各実施例及び比較例の詳細は、下記の表1に示す。
【0120】
【0121】
《評価》
〈電池の充放電評価〉
上記で作製した各実施例及び比較例の電池を、25℃の恒温槽内にセットして、充放電評価を行った。
【0122】
より具体的には、理論容量を100%とし、その5時間率の電流負荷にて、5時間充電した。そして、10分間の休止時間を設けた。その後、同じ電流負荷にて端子電圧が-0.1Vに到達するまで放電を行った。
【0123】
〈結果〉
実施例1、比較例1及び比較例2の結果は
図1に示し、実施例1~3の結果は
図2に示し、実施例4~6の結果は
図3に示し、実施例7及び8の結果は
図4に示し、実施例9及び10の結果は
図5に示し、実施例11及び12の結果は
図6に示す。
【0124】
図1の結果から、明らかであるように、従来とおりの酸化亜鉛負極を用いた比較例1のアルカリ電池、及び本開示の特定のモル%の範囲から外れた亜鉛複合水酸化物を用いた比較例2のアルカリ電池に比べて、実施例1のアルカリ電池は、放電容量が大きいことがわかった。
【0125】
また、
図1~6の結果から、明らかであるように、実施例1~12のアルカリ電池は、比較例1及び2のアルカリ電池よりも放電容量が大きいことがわかった。
【0126】
また、
図2における実施例1~3と、
図3における実施例4~6との結果の比較から、亜鉛複合水酸化物中のアニオンと同種のアニオンが、アルカリ電解液中に存在している実施例4~6のアルカリ電池はそれぞれ、この同種のアニオンが存在しない実施例1~3のアルカリ電池よりも、放電容量が向上したことが分かった。同様に、
図4における実施例7と実施例8との結果の比較、
図5における実施例9と実施例10との結果の比較、及び
図6における実施例11と実施例12との結果の比較からも、亜鉛複合水酸化物中のアニオンと同種のアニオンが、アルカリ電解液中に存在している実施例8、10及び12のアルカリ電池はそれぞれ、この同種のアニオンが存在しない実施例7、9及び11のアルカリ電池よりも、放電容量が向上したことが分かった。