(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】光透過性導電フィルムの可視化の分析方法、及び光透過性導電フィルム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20221115BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20221115BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221115BHJP
【FI】
G01N21/27 B
H01B5/14 A
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2018519987
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2018014299
(87)【国際公開番号】W WO2018186412
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2017076783
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 淳之介
(72)【発明者】
【氏名】寺田 匡徳
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/114056(WO,A1)
【文献】特開2010-208169(JP,A)
【文献】特開2013-202844(JP,A)
【文献】特開2015-201165(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088809(WO,A1)
【文献】特開2013-208841(JP,A)
【文献】特開2017-045087(JP,A)
【文献】特開2016-013632(JP,A)
【文献】特開2010-182528(JP,A)
【文献】特開2012-103968(JP,A)
【文献】特開2003-080624(JP,A)
【文献】特開2016-225269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17 - G01N 21/61
H01B 5/14
B32B 1/00 - B32B 43/00
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01M 11/00 - G01M 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の表面側に配置された導電層とを備える光透過性導電フィルムを第1の測定対象物とし、前記光透過性導電フィルムに、全面エッチング、洗浄、乾燥の各工程をこの順に行い、前記光透過性導電フィルムから前記導電層を取り除いた部分を第2の測定対象物として、
前記第1の測定対象物及び前記第2の測定対象物のそれぞれについて、積分球付分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物を透過した透過光を測定することで、下記の通り定義されるΔL*、Δa*及びΔb*を用いて下記式で表されるΔE*をΔE*tとして得て、
前記第1の測定対象物及び前記第2の測定対象物のそれぞれについて、測定対象物の光源側とは反対側に白色板(BaSO
4)が配置された状態で、積分球付分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物及び該白色板により反射された反射光を測定することで、下記の通り定義されるΔL*、Δa*及びΔb*を用いて下記式で表されるΔE*をΔE*rwとして得て、
ΔE*tの値とΔE*rwの値とから、光透過性導電フィルムの可視化を判別する、光透過性導電フィルムの可視化の分析方法。
ΔE*=(ΔL*
2+Δa*
2+Δb*
2)
1/2
ΔL*=第1の測定対象物のLab表色系のL値-第2の測定対象物のLab表色系のL値
Δa*=第1の測定対象物のLab表色系のa値-第2の測定対象物のLab表色系のa値
Δb*=第1の測定対象物のLab表色系のb値-第2の測定対象物のLab表色系のb値
【請求項2】
前記基材フィルムが、ポリカーボネート基材フィルム、又は、シクロオレフィンポリマー基材フィルムである、請求項1に記載の光透過性導電フィルムの可視化の分析方法。
【請求項3】
基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の表面側に配置された導電層とを備える光透過性導電フィルム(但し、フィラーを含むハードコート層を備える光透過性導電フィルムを除く)であり、
前記基材フィルムと前記導電層との間にアンダーコート層を備え、
前記基材フィルムの前記一方の表面上及び前記基材フィルムの前記一方の表面とは反対側の表面上の少なくとも一方に、ハードコート層を備え、
前記アンダーコート層の材料が無機材料のみであり、
前記基材フィルムが
、シクロオレフィンポリマー基材フィルムであり
、
下記の測定
をした場合に求められるΔE*rw/ΔE*tが4.50以上である、光透過性導電フィルム。
ΔE*rw/ΔE*tの測定方法:前記光透過性導電フィルムを第1の測定対象物とし、前記光透過性導電フィルムに、全面エッチング、洗浄、乾燥の各工程をこの順に行い、前記光透過性導電フィルムから前記導電層を取り除いた部分を第2の測定対象物とする。前記第1の測定対象物及び前記第2の測定対象物のそれぞれについて、積分球付分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、測定対象物を透過した透過光を測定することで、下記の通り定義されるΔL*、Δa*及びΔb*を用いて下記式で表されるΔE*をΔE*tとして得る。前記第1の測定対象物及び前記第2の測定対象物のそれぞれについて、測定対象物の光源側とは反対側に白色板(BaSO
4)が配置された状態で、積分球付分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物及び該白色板により反射された反射光を測定することで、下記の通り定義されるΔL*、Δa*及びΔb*を用いて下記式で表されるΔE*をΔE*rwとして得る。ΔE*tの値とΔE*rwの値とから、ΔE*rw/ΔE*tを求める。
ΔE*=(ΔL*
2+Δa*
2+Δb*
2)
1/2
ΔL*=第1の測定対象物のLab表色系のL値-第2の測定対象物のLab表色系のL値
Δa*=第1の測定対象物のLab表色系のa値-第2の測定対象物のLab表色系のa値
Δb*=第1の測定対象物のLab表色系のb値-第2の測定対象物のLab表色系のb値
【請求項4】
前記ΔE*rw/ΔE*tが5.0以上である、請求項3に記載の光透過性導電フィルム。
【請求項5】
前記アンダーコート層の厚みが10nm以下である、請求項3又は4に記載の光透過性導電フィルム。
【請求項6】
前記導電層の厚みが12nm以下である、請求項3~5のいずれか1項に記載の光透過性導電フィルム。
【請求項7】
前記導電層の材料が、インジウムスズ酸化物である、請求項6に記載の光透過性導電フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性及び導電性を有する光透過性導電フィルムの可視化の分析方法に関する。また、本発明は、光透過性及び導電性を有する光透過性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、携帯電話、ノートパソコン、タブレットPC、複写機又はカーナビゲーションなどの電子機器において、タッチパネル式の液晶表示装置が、広く用いられている。このような液晶表示装置では、基材上に透明導電層が積層された透明導電フィルム(光透過性導電フィルム)が用いられている。
【0003】
下記の特許文献1には、透明なフィルム基材と、透明なSiOx(x=1.0~2.0)薄膜と、透明な導電性薄膜とがこの順で積層されている透明導電フィルムが開示されている。上記透明なSiOx薄膜は、10~100nmの厚さを有し、1.40~1.80の光の屈折率を有し、0.8~3.0nmの平均表面粗さ〔Ra〕を有する。上記透明な導電性薄膜は、20~35nmの厚さを有し、3~15重量%のSnO2/(In2O3+SnO2)重量比を有し、インジウム・スズ複合酸化物により形成されている。
【0004】
下記の特許文献2には、基材フィルムと、高屈折率層と、SiO2膜と、透明導電膜とがこの順で積層された透明導電フィルムが開示されている。下記の特許文献2には、上記高屈折率層が、1.61~1.80の屈折率を有し、30nm以上の厚みを有することが記載されている。下記の特許文献2には、上記SiO2膜が、1.40~1.50の屈折率を有することが好ましく、3~30nmの厚みを有することが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-19239号公報
【文献】WO2013/038718A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、タッチパネルのセンサーの役割を果たす透明導電フィルムは、インデックスマッチングの調整を行うことで、可視化されないように形成される必要がある。タッチパネルに組み込む前に、透明導電フィルムの可視化の可能性を評価するために、従来、分光光度計を用いて、導電層を備える透明導電フィルムの透過光及び反射光、並びに透明導電フィルムの導電層を除くフィルムの透過光及び反射光を測定することで得られるそれぞれのΔE*の値が用いられる場合がある。例えば、
図6に示すように、測定対象物121に対して、光源122から光を照射し、受光部123において透過光を受光して、透過スペクトルを得ることができる。また、
図7に示すように、測定対象物121に対して、光源122から光を照射し、受光部123において反射光を受光して、反射スペクトルを得ることができる。導電層を備える透明導電フィルム及び透明導電フィルムの導電層を除くフィルムの各測定結果から、反射光及び透過光のΔE*が求められている。
【0007】
この評価方法は、ディスプレイの背景が黒いときの反射の評価方法としては適切であるが、この評価方法では、バックライトが発光している際の評価としては、実際の使用状況と異なるため、正確な評価ができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、光透過性導電フィルムの可視化をより正確に判別することができる光透過性導電フィルムの可視化の分析方法を提供することである。また、本発明の目的は、光透過性導電フィルムの可視化を効果的に抑えることができる光透過性導電フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の表面側に配置された導電層とを備える光透過性導電フィルムを第1の測定対象物とし、前記光透過性導電フィルムの前記導電層を除くフィルム部分を第2の測定対象物として、前記第1の測定対象物及び前記第2の測定対象物のそれぞれについて、分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物を透過した透過光を測定することで、下記式で表されるΔE*をΔE*tとして得て、前記第1の測定対象物及び前記第2の測定対象物のそれぞれについて、測定対象物の光源側とは反対側に白色板が配置された状態で、分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物及び該白色板により反射された反射光を測定することで、下記式で表されるΔE*をΔE*rwとして得て、ΔE*tの値とΔE*rwの値とから、光透過性導電フィルムの可視化を判別する、光透過性導電フィルムの可視化の分析方法が提供される。
【0010】
ΔE*=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
Lab表色系
ΔL*=第1の測定対象物のL値-第2の測定対象物のL値
Δa*=第1の測定対象物のa値-第2の測定対象物のa値
Δb*=第1の測定対象物のb値-第2の測定対象物のb値
【0011】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法のある特定の局面では、前記基材フィルムが、ポリカーボネート基材フィルム、又は、シクロオレフィンポリマー基材フィルムである。
【0012】
本発明の広い局面によれば、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の表面側に配置された導電層とを備える光透過性導電フィルムであり、前記基材フィルムが、ポリカーボネート基材フィルム、又は、シクロオレフィンポリマー基材フィルムであり、前記基材フィルムが、前記ポリカーボネート基材フィルムである場合に、下記の測定により求められるΔE*rw/ΔE*tが0.5以上であり、前記基材フィルムが、前記シクロオレフィンポリマー基材フィルムである場合に、下記の測定により求められるΔE*rw/ΔE*tが1.0以上である、光透過性導電フィルムが提供される。
【0013】
ΔE*rw/ΔE*tの測定方法:前記光透過性導電フィルムを第1の測定対象物とし、前記光透過性導電フィルムの前記導電層を除くフィルム部分を第2の測定対象物とする。前記第1の測定対象物及び前記第2の測定対象物のそれぞれについて、分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物を透過した透過光を測定することで、下記式で表されるΔE*をΔE*tとして得る。前記第1の測定対象物及び前記第2の測定対象物のそれぞれについて、測定対象物の光源側とは反対側に白色板が配置された状態で、分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物及び該白色板により反射された反射光を測定することで、下記式で表されるΔE*をΔE*rwとして得る。ΔE*tの値とΔE*rwの値とから、ΔE*rw/ΔE*tを求める。
【0014】
ΔE*=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
Lab表色系
ΔL*=第1の測定対象物のL値-第2の測定対象物のL値
Δa*=第1の測定対象物のa値-第2の測定対象物のa値
Δb*=第1の測定対象物のb値-第2の測定対象物のb値
【0015】
本発明に係る光透過性導電フィルムのある特定の局面では、前記基材フィルムが、前記ポリカーボネート基材フィルムであり、前記ΔE*rw/ΔE*tが0.5以上である。
【0016】
本発明に係る光透過性導電フィルムのある特定の局面では、前記基材フィルムが、前記シクロオレフィンポリマー基材フィルムであり、前記ΔE*rw/ΔE*tが1.0以上である。
【0017】
本発明に係る光透過性導電フィルムのある特定の局面では、前記導電層の材料が、インジウムスズ酸化物であり、前記導電層の厚みが、15nm以上、30nm未満である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、基材フィルムと、上記基材フィルムの一方の表面側に配置された導電層とを備える光透過性導電フィルムを第1の測定対象物とし、上記光透過性導電フィルムの上記導電層を除くフィルム部分を第2の測定対象物とする。本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、上記第1の測定対象物及び上記第2の測定対象物のそれぞれについて、分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物を透過した透過光を測定することで、上記式で表されるΔE*をΔE*tとして得る。本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、上記第1の測定対象物及び上記第2の測定対象物のそれぞれについて、測定対象物の光源側とは反対側に白色板が配置された状態で、分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射する。本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、該測定対象物及び該白色板により反射された反射光を測定することで、上記式で表されるΔE*をΔE*rwとして得る。本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、ΔE*tの値とΔE*rwの値とから、光透過性導電フィルムの可視化を判別する。本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、上記の構成が備えられているので、光透過性導電フィルムの可視化をより正確に判別することができる。
【0019】
本発明に係る光透過性導電フィルムは、基材フィルムと、上記基材フィルムの一方の表面側に配置された導電層とを備える光透過性導電フィルムであり、上記基材フィルムが、ポリカーボネート基材フィルム、又は、シクロオレフィンポリマー基材フィルムである。本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記基材フィルムが、上記ポリカーボネート基材フィルムである場合に、上記の測定により求められるΔE*rw/ΔE*tが0.5以上であり、上記基材フィルムが、上記シクロオレフィンポリマー基材フィルムである場合に、上記の測定により求められるΔE*rw/ΔE*tが1.0以上である。本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記の構成が備えられているので、光透過性導電フィルムの可視化を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光透過性導電フィルムを示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る光透過性導電フィルムを示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光透過性導電フィルムの導電層をパターン状にする前の状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明における透過スペクトルの測定方法を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、本発明における反射スペクトルの測定方法を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、従来の透過スペクトルの測定方法を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、従来の反射スペクトルの測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0022】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法に用いられる第1の測定対象物は、光透過性導電フィルムである。該光透過性導電フィルムは、基材フィルムと、導電層とを備える。上記導電層は、上記基材フィルムの一方の表面側に配置されている。
【0023】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法に用いられる第2の測定対象物は、上記光透過性導電フィルムの上記導電層を除くフィルム部分である。上記第2の測定対象物として、上記導電層を形成する前のフィルムを用いてもよく、光透過性導電フィルムから導電層を取り除いたフィルムを用いてもよい。
【0024】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、
図4に示すように、上記第1の測定対象物及び上記第2の測定対象物のそれぞれについて、分光光度計を用いて、測定対象物21に光を照射し、測定対象物21を透過した透過光を測定することで、下記式で表されるΔE*をΔE*tとして得る。
図4では、光源22から光が照射され、受光部23において測定が行われる。
【0025】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、
図5に示すように、上記第1の測定対象物及び上記第2の測定対象物のそれぞれについて、測定対象物21の光源22側とは反対側に白色板24が配置された状態で、分光光度計を用いて、測定対象物21に光を照射する。本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、測定対象物21及び白色板24により反射された反射光を測定することで、下記式で表されるΔE*をΔE*rwとして得る。
図5では、光源22から光が照射され、受光部23において測定が行われる。
【0026】
ΔE*=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
Lab表色系
ΔL*=第1の測定対象物のL値-第2の測定対象物のL値
Δa*=第1の測定対象物のa値-第2の測定対象物のa値
Δb*=第1の測定対象物のb値-第2の測定対象物のb値
【0027】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、ΔE*tの値とΔE*rwの値とから、光透過性導電フィルムの可視化を判別する。
【0028】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、上記の構成が備えられているので、光透過性導電フィルムの可視化(骨見え)をより正確に判別することができる。
【0029】
本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、例えば、上記基材フィルムが、ポリカーボネート基材フィルムである場合に、上記の測定により求められるΔE*rw/ΔE*tが0.5以上であると、可視化が抑えられると判別できる。例えば、上記基材フィルムが、上記シクロオレフィンポリマー基材フィルムである場合に、上記の測定により求められるΔE*rw/ΔE*tが1.0以上であると、可視化が抑えられると判別できる。基材フィルムの種類によるΔE*rw/ΔE*tの最適値は、ΔE*rw/ΔE*tの値と、可視化の状態との関係を予め評価することで、見出すことができる。見出されたΔE*rw/ΔE*tの最適値に基づいて、ΔE*tの値とΔE*rwの値とから、光透過性導電フィルムの可視化を判別することができる。上記基材フィルムが、ポリカーボネート基材フィルム及びシクロオレフィンポリマー基材フィルム以外の基材フィルムである場合にも、同様に光透過性導電フィルムの可視化を判別することができる。例えば、上記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート基材フィルムである場合にも、同様に光透過性導電フィルムの可視化を判別することができる。
【0030】
光透過性導電フィルムの可視化をより一層正確に判別する観点からは、本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、上記基材フィルムが、上記ポリカーボネート基材フィルム、又は、シクロオレフィンポリマー基材フィルムであることが好ましい。上記基材フィルムが、上記ポリカーボネート基材フィルムである場合には、上記ΔE*rw/ΔE*tが0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがより一層好ましく、4.0以上であることが更に好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。上記基材フィルムが、シクロオレフィンポリマー基材フィルムである場合には、上記ΔE*rw/ΔE*tが1.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることが更に好ましい。
【0031】
本発明に係る光透過性導電フィルムは、基材フィルムと、導電層とを備える。上記導電層は、上記基材フィルムの一方の表面側に配置されている。本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記基材フィルムが、ポリカーボネート基材フィルム、又は、シクロオレフィンポリマー基材フィルムである。本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記基材フィルムが、上記ポリカーボネート基材フィルムである場合に、下記の測定により求められるΔE*rw/ΔE*tが0.5以上である。本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記基材フィルムが、上記シクロオレフィンポリマー基材フィルムである場合に、下記の測定により求められるΔE*rw/ΔE*tが1.0以上である。
【0032】
ΔE*rw/ΔE*tの測定方法:上記光透過性導電フィルムを第1の測定対象物とし、上記光透過性導電フィルムの上記導電層を除くフィルム部分を第2の測定対象物とする。上記第1の測定対象物及び上記第2の測定対象物のそれぞれについて、分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、測定対象物を透過した透過光を測定することで、下記式で表されるΔE*をΔE*tとして得る。上記第1の測定対象物及び上記第2の測定対象物のそれぞれについて、測定対象物の光源側とは反対側に白色板が配置された状態で、分光光度計を用いて、測定対象物に光を照射し、該測定対象物及び該白色板により反射された反射光を測定することで、下記式で表されるΔE*をΔE*rwとして得る。ΔE*tの値とΔE*rwの値とから、ΔE*rw/ΔE*tを求める。
【0033】
ΔE*=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
Lab表色系
ΔL*=第1の測定対象物のL値-第2の測定対象物のL値
Δa*=第1の測定対象物のa値-第2の測定対象物のa値
Δb*=第1の測定対象物のb値-第2の測定対象物のb値
【0034】
本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記の構成が備えられているので、光透過性導電フィルムの可視化(骨見え)を効果的に抑えることができる。
【0035】
本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記基材フィルムが、上記ポリカーボネート基材フィルムであり、上記ΔE*rw/ΔE*tが0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがより一層好ましく、4.0以上であることが更に好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。上記基材フィルムが、上記ポリカーボネート基材フィルムであり、上記ΔE*rw/ΔE*tが上記下限以上であると、光透過性導電フィルムの可視化をより一層効果的に抑えることができる。
【0036】
本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記基材フィルムが、上記シクロオレフィンポリマー基材フィルムであり、上記ΔE*rw/ΔE*tが1.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることが更に好ましい。上記基材フィルムが、上記シクロオレフィンポリマー基材フィルムであり、上記ΔE*rw/ΔE*tが上記下限以上であると、光透過性導電フィルムの可視化をより一層効果的に抑えることができる。
【0037】
上記光透過性導電フィルムは、アニール処理された光透過性導電フィルムであることが好ましい。
【0038】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0039】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光透過性導電フィルムを示す断面図である。
【0040】
図1に示す光透過性導電フィルム1は、基材2、導電層3及び保護フィルム4を備える。
【0041】
基材2は、第1の表面2a及び第2の表面2bを有する。第1の表面2aと、第2の表面2bとは、互いに対向している。基材2の第1の表面2a上に、導電層3が積層されている。第1の表面2aは、導電層3が積層される側の表面である。基材2は、導電層3と保護フィルム4との間に配置される部材であり、導電層3の支持部材である。
【0042】
基材2の第2の表面2b上に、保護フィルム4が積層されている。第2の表面2bは、保護フィルム4が積層される側の表面である。保護フィルム4を設けることで、基材2の第2の表面2bを保護することができる。
【0043】
基材2は、基材フィルム11、第1及び第2のハードコート層12,13及びアンダーコート層14を有する。基材フィルム11は、光透過性を有する材料により構成されている。基材フィルム11の導電層3側の表面上には、第2のハードコート層13及びアンダーコート層14がこの順に積層されている。アンダーコート層14は、導電層3に接している。
【0044】
基材フィルム11の保護フィルム4側の表面上には、第1のハードコート層12が積層されている。第1のハードコート層12は、保護フィルム4に接している。
【0045】
導電層3は、光透過性及び導電性を有する材料により構成されている。導電層3は、パターン状の導電層である。パターン状の導電層3は、基材2の第1の表面2a上に部分的に積層されている。光透過性導電フィルム1は、基材2の第1の表面2a上において、パターン状の導電層3がある部分と、パターン状の導電層3がない部分とを有する。
【0046】
保護フィルムは、粘着剤層により、基材の第2の表面上に積層されてもよい。基材の第2の表面は、保護フィルムの上記粘着剤層と接していることが好ましい。
【0047】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る光透過性導電フィルムを示す断面図である。
【0048】
図2に示す光透過性導電フィルム1Aでは、第1のハードコート層が設けられていない。光透過性導電フィルム1Aは、アンダーコート層14と、第2のハードコート層13と、基材フィルム11とがこの順で積層された基材2Aを有する。光透過性導電フィルム1Aでは、基材フィルム11の導電層3とは反対側の表面上に直接、保護フィルム4が積層されている。
【0049】
本発明に係る光透過性導電フィルムでは、光透過性導電フィルム1Aのように、第1のハードコート層が設けられていなくてもよい。基材フィルムの表面上に、保護フィルムが直接積層されていてもよい。また、第2のハードコート層及びアンダーコート層のうち少なくとも一方が設けられていなくてもよい。基材フィルムの導電層側の表面上には、アンダーコート層及び導電層がこの順に積層されていてもよく、基材フィルムの表面上に導電層が直接積層されていてもよい。
【0050】
アンダーコート層は、単層であってもよく、多層であってもよい。アンダーコート層が多層である場合、導電層側に低屈折層が設けられ、基材フィルム側に高屈折率層が設けられていることが好ましい。
【0051】
次に、
図1に示す光透過性導電フィルム1の製造方法を説明する。
【0052】
光透過性導電フィルム1は、例えば、以下の方法により作製することができる。
【0053】
基材フィルム11の一方の表面上に、第1のハードコート層12を形成する。第1のハードコート層12の材料として紫外線硬化樹脂を用いる場合は、光硬化性モノマー及び光開始剤を希釈剤中で撹拌して塗工液を作製する。得られた塗工液を基材フィルム11上に塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させて、第1のハードコート層12を形成する。
【0054】
次に、基材フィルム11の第1のハードコート層12とは反対側の表面上に、第2のハードコート層13を形成する。第2のハードコート層13の材料として紫外線硬化樹脂を用いる場合は、光硬化性モノマー及び光開始剤を、希釈剤中で撹拌して塗工液を作製する。得られた塗工液を基材フィルム11の第1のハードコート層12側とは反対側の表面上に塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、第2のハードコート層13を形成する。
【0055】
続いて、第1のハードコート層12上に保護フィルム4を形成する。保護フィルム4として、基材シート上に粘着剤層が設けられた保護フィルムを用いる場合は、粘着剤層側を第1のハードコート層12の表面に貼り合わせて、第1のハードコート層12上に保護フィルム4を形成することができる。
【0056】
次に、第2のハードコート層13上にアンダーコート層14を形成する。アンダーコート層の材料14の材料としてSiO2を用いる場合は、蒸着又はスパッタリングにより第2のハードコート層13上にアンダーコート層14を形成することができる。
【0057】
上記のようにして、基材フィルム11上に、第1及び第2のハードコート層12,13及びアンダーコート層14を形成する。なお、本発明において、第1及び第2のハードコート層12,13及びアンダーコート層14は設けなくてもよい。この場合には、基材フィルム11の導電層3側の表面が、基材2の第1の表面2aであり、基材フィルム11の保護フィルム4側の表面が、基材2の第2の表面2bである。
【0058】
次に、アンダーコート層14上に、導電層3Xを形成することにより、
図3に示す光透過性導電フィルム1Xを作製することができる。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光透過性導電フィルム1の導電層をパターン状にする前の状態を示す断面図である。
図3に示す導電フィルム1Xにおける導電層3Xをパターン状の導電層3にすることにより、光透過性導電フィルム1を得ることができる。
【0059】
導電層3Xの基材フィルム11側とは反対側の表面上に、レジスト層を部分的に形成して、エッチング処理することで、パターン状の導電層3を形成することができる。エッチング処理後には、通常水洗が行われる。
【0060】
パターン状の導電層の形成方法は、特に限定されない。パターン状の導電層の形成方法として、例えば、蒸着又はスパッタリングにより形成した金属膜をエッチングする方法、スクリーン印刷又はインクジェット印刷などの各種印刷方法、並びにレジストを用いたフォトリソグラフィー法等の公知のパターニング方法等を用いることができる。パターン状に形成した導電層は、アニール処理により結晶性を高めることができる。
【0061】
アニール処理の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下である。上記の範囲内で、より高温でアニール処理することで導電層の傷つきを抑制できる。これは基材の熱収縮によって、導電層の内部応力が適度に上昇するためと推測される。
【0062】
上記アニール処理の処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、好ましくは90分以下、より好ましくは60分以下である。上記の範囲内で、より長時間でアニール処理することで導電層の傷つきを抑制できる。
【0063】
光透過性導電フィルム1は、保護フィルム4を積層したまま使用してもよく、保護フィルム4を剥がして使用してもよい。なお、ΔE*rw及びΔE*tの測定方法においては、保護フィルムを剥離させ、保護フィルムの無い状態で測定する。
【0064】
以下、光透過性導電フィルムを構成する各層の詳細を説明する。
【0065】
(基材)
基材の全体の厚みは、好ましくは23μm以上、より好ましくは50μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0066】
基材フィルム;
基材フィルムは、高い光透過性を有することが好ましい。従って、基材フィルムの材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリスルホン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、及びセルロースナノファイバー等が挙げられる。但し、本発明に係る光透過性導電フィルムでは、上記基材フィルムは、ポリカーボネート基材フィルム、又は、シクロオレフィンポリマー基材フィルムである。光透過性導電フィルムの可視化をより一層正確に判別する観点からは、本発明に係る光透過性導電フィルムの可視化の分析方法では、上記基材フィルムは、ポリカーボネート基材フィルム、又は、シクロオレフィンポリマー基材フィルムであることが好ましい。
【0067】
基材フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは190μm以下、より好ましくは125μm以下である。
【0068】
基材フィルムの波長380~780nmの可視光領域における平均透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。上記基材フィルムの波長380~780nmの可視光領域における平均透過率は、通常100%以下である。
【0069】
また、基材フィルムは、各種安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤又は着色剤を含んでいてもよい。
【0070】
第1及び第2のハードコート層;
第1及び第2のハードコート層はそれぞれ、バインダー樹脂により構成されていることが好ましい。上記バインダー樹脂は、硬化樹脂であることが好ましい。上記硬化樹脂としては、熱硬化樹脂、及び紫外線硬化樹脂等の活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。生産性及び経済性を良好にする観点から、上記硬化樹脂は、紫外線硬化樹脂であることが好ましい。
【0071】
上記紫外線硬化樹脂は、光硬化性モノマーが重合された樹脂であることが好ましい。上記紫外線硬化樹脂は、光硬化性モノマー以外のモノマーが重合された樹脂であってもよい。上記光硬化性モノマー及び上記光硬化性モノマー以外のモノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0072】
上記光硬化性モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジメタクリレート等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート等のトリアクリレート化合物;ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物;並びにジペンタエリトリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート等のペンタアクリレート化合物等が挙げられる。上記紫外線硬化樹脂としては、多官能アクリレート化合物であってもよい。上記多官能アクリレート化合物は、5官能以上の多官能アクリレート化合物であってもよい。上記多官能アクリレート化合物は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。また、上記多官能アクリレート化合物に、光開始剤、光増感剤、レベリング剤、及び希釈剤等を添加してもよい。
【0073】
第1のハードコート層は、フィラーを含んでいてもよい。上記第1のハードコート層は、上記バインダー樹脂等の樹脂及びフィラーにより構成されていてもよい。第1のハードコート層がフィラーを含む場合、導電層のパターンをより一層視認され難くすることができる。なお、第1のハードコート層がフィラーを含む場合、表面粗さによる曇りが生じることがあり、液晶表示装置に用いると表示光が見えにくくなることがある。従って、曇りを生じ難くする観点からは、第1のハードコート層がフィラーを含まず、上記バインダー樹脂等の樹脂のみによって構成されていることが好ましい。また、第1のハードコート層がフィラーを含む場合には、上記フィラーの平均粒子径は、第1のハードコート層の厚みより小さいことが好ましく、上記フィラーが、第1のハードコート層の表面において突出していないことが好ましい。
【0074】
上記フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化セリウム、インジウム-錫酸化物などの金属酸化物粒子;シリコーン、(メタ)アクリル、スチレン、メラミンなどの樹脂粒子等が挙げられる。上記フィラーとして、より具体的には、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの樹脂粒子を用いることができる。上記フィラーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0075】
また、第1及び第2のハードコート層はそれぞれ、各種安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤又は着色剤を含んでいてもよい。
【0076】
アンダーコート層;
アンダーコート層は、例えば、屈折率調整層である。アンダーコート層を設けることで、導電層と、第2のハードコート層又は基材フィルムとの間の屈折率の差を小さくすることができるので、光透過性導電フィルムの光透過性をより一層高めることができる。
【0077】
アンダーコート層の材料は、屈折率調整機能を有する限り特に限定されない。アンダーコート層の材料としては、SiO2、MgF2、Al2O3などの無機材料、並びにアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂及びシロキサンポリマーなどの有機材料が挙げられる。
【0078】
アンダーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法又は塗工法により形成することができる。
【0079】
(導電層)
導電層は、光透過性を有する導電性材料により形成されている。上記導電性材料としては、特に限定されないが、例えば、IZO(インジウム亜鉛酸化物)及びITO(インジウムスズ酸化物)などのIn系酸化物、SnO2及びFTO(フッ素ドープ酸化スズ)などのSn系酸化物、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)及びGZO(ガリウム亜鉛酸化物)などのZn系酸化物、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-リチウム合金、Al/Al2O3混合物、Al/LiF混合物、金等の金属、CuI、Agナノワイヤー(AgNW)、カーボンナノチューブ(CNT)並びに導電性透明ポリマーなどが挙げられる。上記導電性材料は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0080】
導電性をより一層高め、光透過性をより一層高める観点から、上記導電性材料は、IZO及びITOなどのIn系酸化物、SnO2及びFTOなどのSn系酸化物、AZO及びGZOなどのZn系酸化物であることが好ましく、ITOであることがより好ましい。
【0081】
導電層の厚みは、好ましくは12nm以上、より好ましくは16nm以上、更に好ましくは17nm以上、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、更に好ましくは19.9nm以下である。
【0082】
導電層の厚みが上記下限以上である場合、光透過性導電フィルムの導電層の表面抵抗値を効果的に低くすることができ、導電性をより一層高めることができる。導電層の厚みが上記上限以下である場合、導電層のパターンをより一層視認され難くすることができ、光透過性導電フィルムをより一層薄くすることができる。
【0083】
上記導電層の材料(導電性材料)がITO(インジウムスズ酸化物)である場合、導電層の厚みは、好ましくは15nm以上、より好ましくは17nm以上、更に好ましくは19nm以上であり、好ましくは30nm未満、より好ましくは29nm以下、更に好ましくは28nm以下である。上記導電層の材料がITOである場合において、上記導電層の厚みが上記下限以上であると、光透過性導電フィルムの導電層の表面抵抗値(シート抵抗値)を効果的に低くすることができる。そのため、光透過性導電フィルムをタッチセンサーパネルに用いた際に、センシング感度を高めたり、配線を細くすることができるため配線の視認性を低減したりできる。上記導電層の材料がITOである場合において、上記導電層の厚みが上記上限以下(又は上記上限未満)であると、光透過性導電フィルムの透過率を高めることができる。そのため、光透過性導電フィルムをタッチセンサーパネルに用いた際に、配線の視認性を低減することができる。
【0084】
導電層の表面抵抗値(シート抵抗値)は、好ましくは500Ω/□以下、より好ましくは300Ω/□以下、より一層好ましくは200Ω/□以下、更に好ましくは150Ω/□以下、更に一層好ましくは130Ω/□以下、特に好ましくは100Ω/□以下である。上記導電層の表面抵抗値が上記上限以下であると、調光フィルムの駆動速度を向上させることができ、また、色調の変化のむらを抑えることができる。
【0085】
上記導電層の表面抵抗値は、上記導電層の基材フィルム側とは反対の表面側で、JIS K7194に基づいて、測定される。
【0086】
導電層の波長380~780nmの可視光領域における平均透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。上記導電層の波長380~780nmの可視光領域における平均透過率は、通常100%以下である。
【0087】
(保護フィルム)
保護フィルムは、基材シート及び粘着剤層により構成されていることが好ましい。
【0088】
上記基材シートは、状態を視認できることから、高い光透過性を有することが好ましい。上記基材シートの材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリスルホン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、及びセルロースナノファイバー等が挙げられる。
【0089】
上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系接着剤又はエポキシ系接着剤により構成することができる。熱処理による粘着力の上昇を抑制する観点から、上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系粘着剤により構成されていることが好ましい。
【0090】
上記(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体に、必要に応じて架橋剤、粘着付与樹脂及び各種安定剤などを添加した粘着剤である。
【0091】
上記(メタ)アクリル重合体は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、共重合可能な他の重合性モノマーとを含む混合モノマーを共重合して得られた(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。
【0092】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1~12の1級又は2級のアルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られる(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0093】
上記共重合可能な他の重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸及びフマル酸等の官能性モノマー等が挙げられる。上記共重合可能な他の重合性モノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0094】
上記架橋剤としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤、多官能アクリレートなどが挙げられる。上記架橋剤は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0095】
上記粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体及び脂環式系共重合体等の石油系樹脂;クマロン-インデン系樹脂;テルペン系樹脂;テルペンフェノール系樹脂;重合ロジン等のロジン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂等が挙げられる。上記粘着付与樹脂は、水素添加された樹脂であってもよい。上記粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0096】
保護フィルムの厚みは、好ましくは25μm以上、より好ましくは50μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0097】
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例に基づき、更に詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0098】
以下の基材フィルムを用意した。
【0099】
シクロオレフィンポリマー(COP)基材フィルムA(厚み100μm、日本ゼオン社製「ZF16」)
シクロオレフィンポリマー(COP)基材フィルムB(厚み50μm、日本ゼオン社製「ZF16」)
ポリカーボネート(PC)基材フィルムA(厚み100μm、帝人社製「C110」)
【0100】
(実施例1)
基材フィルムとして、上記COP基材フィルムAを用意した。
【0101】
ハードコート層の形成;
光硬化性モノマーとしてのウレタンアクリレートオリゴマー100重量部と、希釈溶剤としてのトルエン及びメチルイソブチルケトン(MIBK)の混合溶剤140重量部と、光開始剤としてのイルガキュア194(チバスペシャルティケミカル社製)7重量部とを混合撹拌して、塗工液を調製した。
【0102】
COP基材フィルムAの両面に上記塗工液を塗布し、乾燥させた。乾燥後、高圧水銀ランプにより200mJ/cm2の紫外線を照射することにより樹脂を硬化させ、厚み2μmの第1のハードコート層及び厚み2μmの第2のハードコート層を形成した。
【0103】
保護フィルムの貼り合わせ;
第1のハードコート層上に、保護フィルム(厚み50μm)を、粘着剤層側から貼り合わせた。
【0104】
アンダーコート層の形成;
第2のハードコート層上に、Si純度99.9%の多結晶をSiターゲット材として用いて、ACマグネトロンスパッタリング法により、SiO2膜を形成した。具体的には、チャンバー内を5×10-4Pa以下となるまで真空排気した後に、チャンバー内にArガス:95%及び酸素ガス:5%の混合ガスを導入し、厚さ10nmのSiO2膜を堆積させて、アンダーコート層を形成した。
【0105】
導電層の形成;
上記アンダーコート層上に、酸化インジウム:93重量%及び酸化スズ:7重量%の焼結体材料をターゲット材として用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、アンダーコート層の全面を覆う導電層を形成した。具体的には、チャンバー内を5×10-4Pa以下となるまで真空排気した後に、チャンバー内にArガス:95%及び酸素ガス:5%の混合ガスを導入し、厚さ20nmのITO層(導電層)を形成した。ITO層を堆積したフィルムをオーブンにて140℃で、60分加熱し、光透過性導電フィルム(第1の測定対象物)を得た。得られた光透過性導電フィルムを、全面エッチング、洗浄、乾燥の各工程をこの順に行い、光透過性導電フィルムからITO層を除去した。それによって、光透過性導電フィルムから導電層を取り除いたフィルム(第2の測定対象物)を得た。
【0106】
(実施例8,9、比較例1~4及び参考例2~7,10)
基材フィルムの種類、保護フィルムの厚み、ITO層の厚み、及びSiO2膜の厚みを下記の表1,2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、光透過性導電フィルム、及びパターン状の導電層を有する光透過性導電フィルムを得た。
【0107】
(評価)
(1)ΔE*rw/ΔE*t
得られた光透過性導電フィルム(第1の測定対象物)、及び、光透過性導電フィルムから導電層を取り除いたフィルム(第2の測定対象物)について、保護フィルムを剥離した後、上述した方法で、ΔE*tの値と、ΔE*rwの値とを求めた。
【0108】
分光光度計として、積分球付分光光度計(日立製作所社製「U-4100」)を用いた。
【0109】
ΔE*rwを評価する際に、測定対象物の光源側とは反対側には、標準白色板(BaSO4)を積層した。
【0110】
(2)骨見えの評価
得られた光透過性導電フィルムについて、以下の基準で骨見えの評価を行った。
【0111】
[骨見えの評価サンプルの作成方法]
光透過性導電フィルムを5cm角に切り出し、導電層の上に200μm幅のラインアンドスペースのレジストパターンを露光現像し、ITOエッチング液(関東化学社製「ITO-06N」)に1分間浸漬し、リンス及び乾燥後にレジストパターンを除去して、パターニングされた導電層(パターン状の導電層)を有する光透過性導電フィルムを得た。
【0112】
光源として、LED、蛍光灯、白色灯を用い、パターニングされた導電層側が各電灯の直下となるように電灯とパターン状の導電層を有する光透過性導電フィルムとの配置を調整した。光透過性導電フィルムの表面に対して45度の角度から光透過性導電フィルムを観察し、電灯の正面から受けた光が光透過性導電フィルムで反射した時の電灯の反射像を観察した。観察した反射像(電灯の正面から反射してくる反射光による電灯の像)を、次の評価基準で判断した。
【0113】
[骨見えの評価の判定基準]
○○…LED光、蛍光灯及び白色灯のいずれを照射した場合においても、目視で導電層のパターンが視認されない
○…LED光を照射した場合には、目視で導電層パターンがわずかに視認されるが、蛍光灯を照射した場合には、目視で導電層のパターンが視認されない
△…LED光を照射した場合には、目視で導電層パターンが視認されるが、蛍光灯を照射した場合には、目視で導電層のパターンが視認されない
×…LED光、蛍光灯のいずれを照射した場合においても、目視で導電層パターンが視認される
【0114】
(3)導電層の表面抵抗値(シート抵抗値)
得られた透明導電フィルムの導電層の表面抵抗値(シート抵抗値)を、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製「ロレスタAX MCP-T370」)を用いて、JIS K7105に基づいて、測定した。
【0115】
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。
【0116】
【0117】
【符号の説明】
【0118】
1,1A,1X…光透過性導電フィルム
2,2A…基材
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…パターン状の導電層
3X…導電層
4…保護フィルム
11…基材フィルム
12…第1のハードコート層
13…第2のハードコート層
14…アンダーコート層
21…測定対象物
22…光源
23…受光部
24…白色板