(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/397 20060101AFI20221115BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221115BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221115BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221115BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20221115BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221115BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221115BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A61K31/397
A61P25/28
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/12
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/32
A61K47/18
A61K47/34
A61K9/70 401
A61K9/70 405
(21)【出願番号】P 2018559633
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2017047251
(87)【国際公開番号】W WO2018124281
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2016255622
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 直美
(72)【発明者】
【氏名】野呂 正樹
(72)【発明者】
【氏名】辻畑 茂朝
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-169145(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199878(WO,A1)
【文献】特開2016-135744(JP,A)
【文献】国際公開第2012/057212(WO,A1)
【文献】国際公開第1998/031369(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035850(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/081014(WO,A1)
【文献】国際公開第96/015793(WO,A1)
【文献】特表2004-525872(JP,A)
【文献】特開2011-074034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩と、アルコール類、スルホキシド類およびアミド類からなる群より選ばれる1種以上の溶剤と、吸収促進剤とを含む外用組成物であって、
前記溶剤が、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシドおよびN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選ばれる溶剤であり、
前記吸収促進剤が、ラウリン酸
、イソステアリン酸、オレイン酸、デカノール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、外用組成物。
【請求項2】
さらに水を含む、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
さらに水溶性高分子を含む、請求項1または2に記載の外用組成物。
【請求項4】
水溶性高分子が、カラギーナン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボシキビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリビニルアルコールからなる群より選ばれる、請求項3に記載の外用組成物。
【請求項5】
水溶性高分子が、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる、請求項3に記載の外用組成物。
【請求項6】
さらに粘着剤を含む、請求項1または2に記載の外用組成物。
【請求項7】
経皮外用組成物である、請求項1から6の何れか一項に記載の外用組成物。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の外用組成物を含む、貼付剤。
【請求項9】
貼付剤がパップ剤またはパッチ剤である、請求項8に記載の貼付剤。
【請求項10】
経鼻外用組成物である、請求項1から5の何れか一項に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病等の疾患の治療薬を含有する外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オール(以下、化合物Aとも言う)またはその塩は、神経保護作用、神経再生促進作用および神経突起伸展作用を有し、中枢および末梢神経の疾病の治療薬として有用な化合物である(特許文献1)。
【0003】
化合物Aまたはその塩の投与経路は、主に経口が検討されており、錠剤以外の剤型に関する報告は少ないが、特許文献2には点眼用の液組成物として、化合物Aを1質量/体積%で含有するpH7.5リン酸緩衝溶液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2003/035647号パンフレット
【文献】国際公開WO2004/091605号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルツハイマー病は認知機能の低下を主な症状とする認知症の一種であり、化合物Aは有効な治療薬のひとつであるが、アルツハイマー病の患者が毎日自分で正しく服薬を続けることは容易ではない。そのため、介護者が服薬を介助する場合が多いが、介護者にとって大きな負担となっており、服薬が簡便で介護者にとっても負担軽減が期待できる貼付剤などの経皮製剤、および経鼻剤などの外用組成物の開発が求められている。また、経皮製剤では介護者による確実な投与および投与状態の確認が可能になるというメリットがある。さらに、貼付剤の面積は小さい方が患者の負担が小さく、服薬アドヒアランスもより向上することが期待できるため、皮膚透過性が十分高い経皮製剤を開発することが必要とされている。特許文献2の製造例には、網膜神経疾患の予防および/または治療のための点眼剤用の液組成物が開示されているが、アルツハイマー病の治療に必要とされる化合物Aまたはその塩の用量を投与することは困難であり、一般的に点眼剤より多い用量を投与することが可能な経皮製剤として使用するという記載はない。また、特許文献2に記載された点眼剤をそのまま皮膚に適用しても皮膚透過性は十分ではない。さらに、製剤中の化合物Aまたはその塩の配合量を高めると溶液安定性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、化合物Aまたはその塩の皮膚透過性を向上させた外用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、化合物Aまたはその塩を、適切な溶剤および吸収促進剤と組み合わせることによって、化合物Aまたはその塩の皮膚透過性を大幅に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記を提供する。
(1) 1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩と、アルコール類、スルホキシド類およびアミド類からなる群より選ばれる1種以上の溶剤と、吸収促進剤とを含む外用組成物。
(2) 溶剤が、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシドおよびN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選ばれる、(1)に記載の外用組成物。
(3) さらに水を含む、(1)または(2)に記載の外用組成物。
(4) 吸収促進剤が、カルボキシル基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を有する化合物である、(1)から(3)の何れか一に記載の外用組成物。
(5) 吸収促進剤が、炭素数が5~18の脂肪族基を有する化合物である、(1)から(4)の何れか一に記載の外用組成物。
(6) さらに水溶性高分子を含む、(1)から(5)の何れか一に記載の外用組成物。
(7)水溶性高分子が、カラギーナン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボシキビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリビニルアルコールからなる群より選ばれる、(6)に記載の外用組成物。
(8)水溶性高分子が、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる、(6)に記載の外用組成物。
(9) さらに粘着剤を含む、(1)から(5)の何れか一に記載の外用組成物。
(10) 経皮外用組成物である、(1)から(9)の何れか一に記載の外用組成物。
(11)(1)から(10)の何れか一に記載の外用組成物を含む、貼付剤 。
(12)貼付剤がパップ剤またはパッチ剤である、(11)に記載の貼付剤。
(13) 経鼻外用組成物である、(1)から(8)の 何れか一に記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、化合物Aまたはその塩の皮膚透過性を向上させた外用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、「~」で表す範囲は、特に記載した場合を除き、両端の値を含む。
【0011】
本発明の外用組成物は、化合物Aまたはその塩と、アルコール類、スルホキシド類およびアミド類からなる群より選ばれる1種以上の溶剤と、吸収促進剤とを含む。本発明においては、化合物Aまたはその塩に対して、特定の溶剤と吸収促進剤とを配合することによって、皮膚透過性が顕著に増加した外用組成物が得られる。なお、特許文献2に記載されている化合物Aを1質量/体積%で含有するpH7.5リン酸緩衝溶液を皮膚に塗布しても、皮膚透過性が低いために、薬効を示すために必要な量を投与することは困難であった。
【0012】
<化合物Aまたはその塩>
本発明においては、化合物Aまたはその塩を有効成分として使用する。
【0013】
化合物Aは環状のアミノ基を有するので、その塩としては通常知られている塩基性基における塩を挙げることができる。
【0014】
塩基性基における塩としては、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硝酸および硫酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩;ならびにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩が挙げられる。
【0015】
上記した塩の中で、好ましい塩としては、薬理学的に許容される塩が挙げられ、より好ましい塩としては、マレイン酸との塩が挙げられる。
【0016】
化合物Aまたはその塩において、異性体(例えば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、それらすべての異性体の何れでもよく、また、水和物、溶媒和物およびすべての結晶形の何れでもよい。
【0017】
化合物Aまたはその塩は、自体公知の方法またはそれらを適宜組み合わせることにより、また、特許文献1に記載の方法により製造することができる。
【0018】
本発明の外用組成物における化合物Aまたはその塩の含有量は特に限定されないが、組成物の全質量に対して一般的には0.1~30質量%であり、好ましくは0.5~25質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0019】
<溶剤>
本発明で用いる溶剤は、アルコール類、スルホキシド類およびアミド類からなる群より選ばれる1種以上である。
【0020】
本発明では、化合物Aまたはその塩を溶解できる溶剤を使用することが好ましい。必要量の化合物Aまたはその塩を効率よく血中に透過させることが望ましいことから、化合物Aまたはその塩を高濃度で溶解できる溶剤を使用することがより好ましい。上記の観点から、本発明においては、溶剤の中でも比較的極性が高いアルコール類、アミド類またはスルホキシド類を使用する。本発明においては、上記した溶剤を2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0021】
アルコール類の例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコールおよびベンジルアルコールなどの1価のアルコール類、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール(ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類が挙げられる。
【0022】
スルホキシド類の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびテトラメチレンスルホキシドなどが挙げられる。
アミド類の例としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンおよびN,N'-ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0023】
これらの溶剤の中でも化合物Aおよびその塩の溶解度が高いものが好ましい。表1に化合物Aの代表的な塩である化合物Aのマレイン酸塩の代表的な溶剤への溶解度を示す。化合物Aのマレイン酸塩の25℃における溶解度が2g/100g溶剤以上である溶剤、具体的には、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドンおよびジメチルスルホキシドがより好ましい溶剤として挙げられる。中でも化合物Aの溶解度が5g/100g溶剤以上である溶剤がさらに好ましく、10g/100g溶剤以上である溶剤が最も好ましい。
【0024】
【表1】
ポリエチレングリコール(数平均分子量200)
ポリエチレングリコール(数平均分子量400)
【0025】
また、上記した溶剤の中でも化合物Aおよびその塩の分解を抑制する効果を有するものが好ましい。その観点から好ましい溶剤として具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール(ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、ならびにジメチルスルホキシド(DMSO)およびテトラメチレンスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられ、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)およびジメチルスルホキシド(DMSO)がより好ましい。
【0026】
本発明の外用組成物における溶剤の含有量は特に限定されない。溶剤の含有量の下限は組成物の全質量に対して一般的には20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上である。溶剤の含有量の下限は、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上でもよい。溶剤の含有量の上限は、組成物の全質量に対して一般的には99質量%以下であり、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは97質量%以下である。溶剤の含有量の上限は、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下でもよい。
【0027】
<吸収促進剤>
本発明の外用組成物は吸収促進剤を含む。吸収促進剤は、薬剤の角層のバリア抵抗を軽減し皮膚透過性を向上させる物質である。
主な吸収促進剤としては、角層脂質と相互作用して脂質膜の構造変化や流動性を高めることで角層内の薬剤の拡散係数を増加させる物質(AZONE(1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン)、テルペン類、脂肪酸、脂肪酸エステル、界面活性剤およびアルコール類など);
角層細胞内のケラチンタンパクと相互作用し、タンパク質の高密度構造を緩めることで角層内の薬剤の拡散係数を増加させる物質(ジメチルスルホキシドおよびイオン性界面活性剤など);並びに角層に浸透し、角層内の化学的環境や溶解性を改善することで薬剤の角層への分配を高める溶剤(水、エタノールまたはプロピレングリコールなど):
等がある。
一般に有機溶剤は吸収促進剤としての効果があることが知られているが、本発明では、上記したアルコール類、スルホキシド類およびアミド類からなる群より選ばれる1種以上の溶剤に加えて添加することにより、皮膚透過性をさらに向上させることができる物質を吸収促進剤と呼ぶ。
【0028】
吸収促進剤としては、医薬品に適用可能なものであれば特に限定されず、アルコール類、カルボン酸類、エステル類またはエーテル類等が使用できる。
吸収促進剤の具体例としては、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、ポリオキシエチレンカプリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデカニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリエチレングリコールカプレート、ポリエチレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールミリステート、ポリエチレングリコールパルミテート、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールイソステアレート、ポリエチレングリコールオレエート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンひまし油、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのアルコール類;カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ソルビン酸、レブリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸などのカルボン酸類;ソルビタンモノカプレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリステアレート、グリセロールモノオレエート、サリチル酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、ジリノール酸ジイソプロピル、オレイン酸エチル、イソステアリン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、プロピレングリコールジアセテート、などのエステル類;またはジメチルイソソルビドなどのエーテル類;ココイルサルコシンナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、グリチルリチン酸2カリウム、尿素、シクロメチコン、グルコノラクトン、レモンオイル、メントール、リモネンおよびα-テルピネオールなどが挙げられる。
吸収促進剤は一種のみを使用してもよいし、2種以上の吸収促進剤を併用してもよい。
【0029】
カルボキシル基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を有する化合物は、吸収促進剤としての効果が大きいことから、本発明における吸収促進剤として好ましい。
カルボキシル基、水酸基またはアルコキシカルボニル基を有する化合物としては、カルボン酸類、アルコール類およびエステル類等が挙げられる。
また、疎水性基として炭素数5~18の脂肪族基を有する吸収促進剤を使用することも好ましく、炭素数9~18の脂肪族基を有する吸収促進剤を使用することがより好ましい。脂肪族基としては、飽和アルキル基、不飽和アルキル基、飽和アルキレン基、不飽和アルキレン基が挙げられ、それぞれ分岐構造や環構造を有していてもよく、置換基を有していてもよい。例えば、ヘキシル基、オクチル基、2―エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基等が挙げられる。親水性基としてカルボキシル基または水酸基をもち、疎水性基として炭素数5~18の脂肪族基を有する吸収促進剤がさらに好ましく、親水性基としてカルボキシル基または水酸基をもち、疎水性基として炭素数9~18の脂肪族基を有する吸収促進剤が最も好ましい。具体的には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレンカプリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデカニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、がさらに好ましく、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレンデカニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルが最も好ましい。
【0030】
本発明の外用組成物における吸収促進剤の含有量は特に限定されないが、組成物の全質量に対して、一般的には0.1~30質量%であり、好ましくは0.2~25質量%であり、より好ましくは0.5~20質量%である。
【0031】
<水>
本発明の外用組成物は、さらに水を含んでもよい。
本発明の組成物が水を含有する場合における水としては、生体適合性が良好であり、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、または注射用水等が好ましい。
【0032】
本発明の組成物が水を含有する場合には、水を含有することにより、本発明の組成物における化合物Aまたはその塩の皮膚透過率が向上するという効果、並びに水溶性の添加剤(ゲル化剤や増粘剤など)の配合性が高まることにより製剤化に対する適性が向上するという効果がある。その一方で、水を含有することにより、吸収促進剤の溶解度は低下する傾向にある。従って、水の含有量は、本発明の組成物に含まれる各成分の溶解状態を維持できる範囲であることが好ましい。上記の観点から本発明の組成物が水を含有する場合における好ましい水の含有量は、組成物の全質量に対して1質量%~80質量%の範囲が好ましく、2質量%~70質量%の範囲がより好ましく、5質量%~50質量%の範囲がさらに好ましく、5質量%~35質量%の範囲が最も好ましい。本発明の外用組成物が溶媒として水を含有する場合、水の含有量が上記の範囲内であれば、化合物Aおよびその塩の皮膚透過効率が向上するとともに、製剤化適性がより良好となる。
【0033】
<水溶性高分子>
本発明の外用組成物をパップ剤のような貼付剤、またはゲル剤として使用する場合、本発明の外用組成物はさらに水溶性高分子を含むことができる。
水溶性高分子としては、例えば、以下のものを使用することができるが、特に限定されない。
グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチンまたは澱粉等の植物系天然高分子;
ザンサンガムまたはアカシアガム等の微生物系天然高分子;
ゼラチンまたはコラーゲン等の動物系天然高分子;
メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系半合成高分子;
可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプンまたはジアルデヒドデンプン等のデンプン系半合成高分子;
ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレートまたはカルボキシビニルポリマー等のビニル系合成高分子;
ポリアクリル酸またはポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系合成高分子;および
ポリエチレンオキサイドまたはメチルビニルエーテル/無水マイレン酸共重合体等の合成高分子。
【0034】
これらの中でも、本発明で用いる溶剤と水の混合液に対して溶解度が高いものが好ましく、例えばプロピレングリコール/水=7/3のように溶剤の含率が高い混合液に対する溶解度が高いカラギーナン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボシキビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムまたはポリビニルアルコールがより好ましい。さらに化合物Aの塩を高濃度で配合可能であるアルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースまたはポリビニルピロリドンがさらに好ましい。
【0035】
上記の水溶性高分子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明の外用組成物が水溶性高分子を含む場合、本発明の外用組成物における水溶性高分子の含有量は特に限定されないが、外用組成物の質量に対して、一般的には、0.1~15質量%であり、好ましくは、0.1~12質量%であり、さらに好ましくは、0.2~10質量%である。
【0037】
<粘着剤>
本発明の外用組成物を、貼付剤、例えばテープ剤として使用する場合、本発明の外用組成物は、粘着剤を含むことができる。
【0038】
粘着剤としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体、ポリブテン、液状ポリイソプレン等の天然ゴム、合成ゴム、シリコーンおよびエラストマー等を挙げることができる。
【0039】
本発明の外用組成物における粘着剤の含有量は特に限定されないが、外用組成物の質量に対して一般的には1質量%~80質量%であり、好ましくは5質量%~65質量%であり、より好ましくは10質量%~50質量%である。
【0040】
本発明の外用組成物が粘着剤を含む場合、外用組成物の物性を制御する目的で公知の粘着付与剤を含有することができる。粘着付与剤の好ましい例としては、石油系樹脂(例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、およびC9留分による樹脂など)、テルペン系樹脂(例えば、αピネン樹脂、βピネン樹脂、テルペンフェノール共重合体、水添テルペンフェノール樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、およびアビエチン酸エステル系樹脂)、ロジン系樹脂(例えば、部分水素化ガムロジン樹脂、エリトリトール変性木材ロジン樹脂、トール油ロジン樹脂、およびウッドロジン樹脂)、クマロンインデン樹脂(例えば、クマロンインデンスチレン共重合体)、およびスチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、およびスチレンとα-メチルスチレンの共重合体等)等が挙げられる。
【0041】
また、本発明の外用組成物は軟化剤を含むことができる。軟化剤としては、例えば、流動パラフィン、プロセスオイルまたは低分子ポリブテン等の石油系軟化剤、ヤシ油またはひまし油等の脂肪酸系軟化剤、および精製ラノリン等を挙げることができる。
さらに、テープ剤等の粘着性を制御する目的で、本発明の外用組成物は、必要に応じて、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムまたはケイ酸類等の充填剤を含有してもよい。
テープ剤が粘着剤を含む場合、経皮製剤の物性を制御する目的で公知の粘着付与剤を含有することができる。
【0042】
<外用組成物の形態>
本発明の外用組成物の剤型は特に制限はなく、経皮外用組成物(経皮製剤)または経鼻外用組成物(経鼻製剤)等を作製することもできる。
【0043】
[経皮外用組成物(経皮製剤)]
本発明の経皮外用組成物(経皮製剤)としては、有効成分である化合物Aまたはその塩を皮膚上に所望の時間保持できる限り、剤型には特に制限はなく、貼付剤および塗布剤などを作製することができる。
【0044】
(貼付剤)
貼付剤としては、パップ剤、パッチ剤またはテープ剤などが挙げられ、また、貼付剤は、化合物Aまたはその塩を含む本発明の外用組成物が、適切な基材に粘着層とともに塗布されるか、または基材と放出制御層の間の薬物貯蔵層に配置された形態を有する。または、基材と放出制御層の間に本発明の外用組成物が密閉された形態を有していてもよい。
【0045】
パップ剤は、伸縮性を有する支持体の片面に展着された含水粘着剤層を有し、含水粘着剤層の表面をプラスチックフィルムで覆ったものが一般に用いられる。本発明の外用組成物は、パップ剤の含水粘着剤層として好ましく用いることができる。本発明の外用組成物を含水粘着剤として用いる場合は、例えば硬化剤、硬化調整剤および湿潤剤などをさらに含んでもよく、皮膚への薬効効果が十分得られるように水分を含有し、かつ粘着性を有し、常温またはそれ以上の温度においても軟化し膏体が皮膚に残らない程度の適度な凝集性を有するように形成される。本発明の外用組成物をパップ剤に用いる場合の好ましい水溶性高分子は前述したものと同じであるが、中でもゲル化能が高いゼラチンまたは寒天のいずれか一方を少なくとも含むことが好ましい。
【0046】
水溶性高分子以外の成分については、例えば特開平10-95728号公報(段落0018~0031)や特開2006-320745号公報(段落0013~0016)に記載されているものを好ましく用いることができる。
【0047】
本発明の外用組成物をパッチ剤として好ましく使用することができる。パッチ剤は一般的には、支持体、薬剤含有液を含む薬物貯蔵層、前記薬物を皮膚面又は粘膜面に供給するための放出制御膜、製剤を皮膚又は粘膜面に接着するための感圧性粘着剤層、及び感圧性粘着剤層を保護するための剥離フィルム等からなる。本発明の外用組成物は支持体と放出制御膜との間に形成される薬物貯蔵層に充填される。感圧性粘着剤層は、放出制御膜の全面を覆っていてもよく、放出制御膜の中心付近以外の外周部のみを覆っていてもよい。製剤の使用に際しては、剥離フィルムをはがし、感圧性粘着剤層を皮膚面又は粘膜面に接触させて製剤を固定し、この状態を維持することにより、化合物Aまたはその塩が薬物貯蔵層から薬剤放出層を通過して皮膚面又は粘膜面に至り、経皮的又は経粘膜的に体内に移行する。本発明の外用組成物には上記以外のいかなるデバイスを利用してもよい。支持体、放出制御膜、感圧性粘着剤、剥離フィルムなどは公知の部材を用いることができる。
【0048】
本発明の外用組成物を、テープ剤として使用する場合には、本発明の外用組成物は粘着剤を含むことができる。
【0049】
(塗布剤)
塗布剤としてはゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、および液剤(ローション剤、リニメント剤)などが挙げられる。
本発明の外用組成物は、経皮適用可能であることを限度として特に制限されるものではなく、本剤を皮膚の所要部位(患部)に直接塗布、噴霧または貼付することができればよい。本発明の外用組成物の製剤形態は、例えば、ローション剤、リニメント剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、およびスプレー剤等の外用組成物である。
【0050】
<本発明の経皮外用組成物(経皮製剤)に含まれ得る他の成分>
経皮製剤は既述の有効成分、溶剤、吸収促進剤、水、粘着剤、水溶性高分子に加え、効果を損なわない限りにおいて、経皮製剤の剤形にて公知の添加剤を目的に応じて含有することができる。
経皮製剤に使用し得る他の成分として、例えば、前述以外の溶剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、皮膚保護剤、界面活性剤、増粘剤、有機粒子、無機粒子、緩衝剤、pH調整剤、着色剤、香料、架橋剤などを挙げることができる。また、製剤の安定性向上を目的として、公知の安定化剤、抗酸化剤などを含有してもよい。
【0051】
[経鼻外用組成物(経鼻製剤)]
本発明の外用組成物は、経鼻外用組成物(経鼻製剤)として製剤化してもよい。経鼻製剤の剤型は、経鼻投与または点鼻が可能である限り特に制限されず、例えば、軟膏剤、クリーム剤、およびゲル剤などの半固形剤、液剤(溶液剤、乳剤、および懸濁剤など)などの形態でもよい。
【0052】
本発明の経鼻製剤は、その剤型に応じて、さらに、ベヒクル(経鼻用ベヒクルまたはキャリア)、湿潤剤、ゲル剤または粘稠化剤、等張化剤、pH調整剤、乳化剤、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、保存剤、防腐剤、清涼化剤および香料から選択される一種以上を含んでいてもよい。
【0053】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、表2~10に記載の数値は、組成物の全量に対する各成分の含有量(質量%)を示す。
【実施例】
【0054】
<実施例1~実施例34および比較例1~比較例11>
表2~表8に示す組成に従い、各表に示した成分を容器内で撹拌し、化合物Aのマレイン酸塩溶液を調製した。
【0055】
なお、各表中に記載された各成分の詳細は以下の通りである。
・プロピレングリコール(JT Baker製)
・エタノール(和光純薬(株)製)
・ジメチルスルホキシド(和光純薬(株)製)
・N-メチルピロリドン(和光純薬(株)製)
・ポリエチレングリコール200(和光純薬(株)製)
・ポリエチレングリコール400(和光純薬(株)製)
・カプリン酸(MP biochemicals製)
・ラウリン酸(東京化成工業(株)製)
・ステアリン酸(和光純薬工業(株)製)
・イソステアリン酸(イソステアリン酸EX、高級アルコール工業(株)製)
・オレイン酸(SR OLEIC ACID-LQ-(JP)、クローダ製)
・ヘキサノール(和光純薬工業(株)製)
・オクタノール(和光純薬工業(株)製)
・デカノール(東京化成工業(株)製)
・ラウリルアルコール(コノール20P、新日本理化(株)製)
・イソステアリルアルコール(イソステアリルアルコールEX、高級アルコール工業(株)製)
・オレイルアルコール(東京化成工業(株))
・POE(2)ラウリルエーテル(NIKKOL(登録商標) BL-2、日光ケミカルズ(株)製)(POEはポリオキシエチレンの略である)
・POE(2)オレイルエーテル(NIKKOL(登録商標) BO-2V、日光ケミカルズ(株)製、)
・POE(7)オレイルエーテル(NIKKOL(登録商標) BO-7V、日光ケミカルズ(株)製、)
・パルミチン酸イソプロピル(和光純薬工業(株)製)
・ミリスチン酸イソプロピル(和光純薬工業(株)製)
【0056】
<化合物Aのマレイン酸塩の皮膚透過性>
皮膚透過性は、in vitro皮膚透過実験法またはin vivo皮膚透過実験法等で評価することができる。In vitro皮膚透過実験法としては、例えば拡散セルを用いる方法が挙げられる。拡散セルとしては、フランツ型拡散セル等の垂直型セルまたは水平型セルなどが挙げられる。拡散セルは2つのセルパーツからなり、その2つのセルパーツの間に透過性を測定する膜を挟んで用いる。膜としては、ヒト皮膚、動物皮膚、三次元培養皮膚モデルまたは人工膜などが挙げられる。本実施例では、以下に示すヘアレスラット摘出皮膚を用いた皮膚透過性試験にて評価した。
【0057】
<ヘアレスラット摘出皮膚を用いた皮膚透過性試験>
8週齢のSPF(Specific Pathogen Free:特定病原体不在)ヘアレスラット(石川実験動物研究所)の摘出皮膚を、フランツ型拡散セル(パーメギア社、ジャケット付静置型、有効透過面積1cm2、レセプター容積8mL)に、皮膚の角質層が上面になる方向で装着する。皮膚上面の角質層側に、評価対象である組成物100mg/cm2を均一に塗布し、セル内に充填されたレセプター液に皮膚を介して溶出してくる化合物Aのマレイン酸塩濃度を測定する。拡散セルはジャケット内に32℃の水を循環させ皮膚表面温度を保ち、レセプター液として、pH7.4のリン酸緩衝液を用いる。閉塞状態でレセプター液をマグネティックスターラーで撹拌し、24時間後にレセプター液を採取し、採取したのと同じ容量の新しいレセプター液で置換する。採取したレセプター液を、高速液体クロマトグラフィ(Prominence UFLCXR:商品名、島津製作所)を用いてレセプター液中の化合物Aの濃度を測定することにより、化合物Aの皮膚透過量を算出する。
【0058】
<化合物Aの皮膚透過に対する評価>
(評価1)化合物Aの皮膚透過量
比較例1の組成物から皮膚を透過した化合物Aの量に対する、各実施例および各比較例の組成物から皮膚を透過した化合物Aの量の比率を求めて、皮膚透過性を評価した。化合物Aの皮膚透過量が多い方が好ましい。評価基準は以下に示すとおりである。
D:比較例1に対して1.2倍未満
C:比較例1に対して1.2倍以上~2倍未満
B:比較例1に対して2倍以上~5倍未満
A:比較例1に対して5倍以上
【0059】
(評価2)吸収促進剤による皮膚透過量の増加倍率
吸収促進剤を含まない実験例の皮膚透過量に対する、吸収促進剤を添加した実験例の皮膚透過量の倍率を算出し、吸収促進剤による皮膚透過量の向上効果を評価した。この倍率が大きいほど、吸収促進剤の効果が大きいことを示し、吸収促進剤としての能力が高いと考えられる。評価基準は以下に示すとおりである。
D:吸収促進剤を含まない実験例に対して2倍未満
C:吸収促進剤を含まない実験例に対して2倍以上~5倍未満
B:吸収促進剤を含まない実験例に対して5倍以上~20倍未満
A:吸収促進剤を含まない実験例に対して20倍以上
【0060】
(評価3)皮膚透過した化合物Aの割合
皮膚透過試験に用いた組成物中の化合物Aの量に対する、皮膚透過量の割合を算出することにより、各組成物に含まれる化合物Aの皮膚透過効率を評価した。吸収促進剤が含まれる実験例と吸収促進剤が含まれない実験例での皮膚透過効率を比較することにより、吸収促進剤の皮膚透過促進効果がわかる。効率が高いことは組成物中の有効成分である化合物Aを効率よく体内に吸収させることができ、好ましい。評価基準は以下に示すとおりである。
D:35%未満
C:35%以上~55%未満
B:55%以上~75%未満
A:75%以上
【0061】
上記の評価2および評価3はいずれも吸収促進剤の効果を評価する基準であるため、各実験例について評価1、評価2または評価3についての評価結果を各表に示した。
【0062】
【0063】
比較例1の液を皮膚に適用しても、必要量の化合物Aが皮膚中に透過しなかった。
【0064】
【0065】
化合物Aのマレイン酸塩を溶解したプロピレングリコール溶液に吸収促進剤を添加することで皮膚透過量が大幅に向上し、最大で約80倍向上した。
【0066】
【0067】
化合物Aのマレイン酸塩を溶解したエタノール溶液に吸収促進剤を添加することで皮膚透過率が、23%から最大で66%まで向上した。
【0068】
【0069】
化合物Aのマレイン酸塩を溶解したジメチルスルホキシド溶液に吸収促進剤を添加することで皮膚透過率が、30%から最大88%まで向上した。
【0070】
【0071】
化合物Aのマレイン酸塩を溶解したN-メチルピロリドンまたはポリエチレングリコール溶液に吸収促進剤を添加することで皮膚透過量が各々29倍、47倍増大した。
【0072】
【0073】
化合物Aのマレイン酸塩を溶解したエタノール/水混合液に吸収促進剤を添加することで皮膚透過率が、19%から最大85%まで向上した。
【0074】
【0075】
化合物Aのマレイン酸塩を溶解したプロピレングリコール/水混合液に吸収促進剤を添加することで皮膚透過量が最大171倍増大した。また、表7および表8に示した結果より、水を共存させても吸収促進剤の効果は見られること、さらに水を共存させることにより皮膚透過量が増加する傾向にあることが明らかとなった。
【0076】
<実施例35および比較例12>
以下の方法にて、貼付剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
化合物Aのマレイン酸塩をジメチルスルホキシドに溶解させて調製した溶液、アクリル系粘着剤液(DURO-TAK 387-2510、ヘンケル社)、および吸収促進剤を表9に示す割合になるように容器内で撹拌し、化合物Aのマレイン酸塩を含む粘着剤溶液を得た。得られた粘着剤溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:50μm)基材上に塗布し、70℃の温風による送風乾燥を10分間行って粘着剤液中の溶剤を除去した塗布膜を形成し、基材上に、有効成分を含む25mgの粘着層を備える貼付剤の形態を有する経皮製剤(テープ剤)を得た。
【0077】
【0078】
ラット皮膚上に評価対象である組成物100mg/cm2を均一に塗布する代わりに、比較例12と実施例35の製剤をラット皮膚に接触させる以外は、上記と同じ方法で化合物Aの皮膚透過量を測定し、評価を行った結果を表9に示す。これから明らかなように、本発明の組成物を用いることにより、粘着層を有する経皮製剤の形態においても吸収促進剤による皮膚透過量の増大効果は顕著であった。
【0079】
<実施例36>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-VH、日本曹達(株))1gを、8.8gの水に溶解することにより水性ゲルを得た。さらに、10/61.6/17.6/1の比率の化合物Aのマレイン酸塩、プロピレングリコール、水、およびデカノールを容器内で撹拌して化合物Aのマレイン酸塩溶液を調製した。得られた化合物Aのマレイン酸塩溶液と水性ゲルとを、90.2/9.8の比率で混合し、自転公転式ミキサー(あわとり練太郎ARE-310、シンキー社)を用いて、目視で均一になるまで混合し、経皮吸収用組成物を得た。なお、実施例に用いた自転公転式ミキサーは内容物を撹拌羽根で直接せん断しないタイプの一般的な撹拌装置である。
【0080】
<実施例37>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-VH、日本曹達(株))1gを、8.8gの水に溶解することにより水性ゲルを得た。さらに、10/60.9/17.4/2の比率の化合物Aのマレイン酸塩、プロピレングリコール、水、およびデカノールを容器内で撹拌して化合物Aのマレイン酸塩溶液を調製した。得られた化合物Aのマレイン酸塩溶液と水性ゲルとを、90.3/9.7の比率で混合し、自転公転式ミキサー(あわとり練太郎ARE-310、シンキー社)を用いて、目視で均一になるまで混合し、経皮吸収用組成物を得た。
【0081】
<実施例38>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
表10に記載の比率の化合物Aのマレイン酸塩、プロピレングリコール、水およびデカノールにて化合物Aのマレイン酸塩溶液を調製した。得られた溶液を容器内で撹拌しながら、表10に記載の比率のポリビニルピロリドン(Kollidon 90F、BASF)粉末を添加し、経皮吸収用組成物を得た。
【0082】
<実施例39>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
加温にて溶解したゼラチン水溶液に、10/58.1/2の比率の化合物Aのマレイン酸塩、プロピレングリコール、デカノールを混合した溶液を添加し、容器内で撹拌することで経皮吸収用組成物を得た。
【0083】
<実施例40>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
加温にて溶解したゼラチン水溶液に、ポリビニルピロリドン粉末を添加した。この水溶液に10/55.3/2の比率の化合物Aのマレイン酸塩、プロピレングリコール、デカノールを混合した溶液を添加し、容器内で撹拌することで経皮吸収用組成物を得た。
【0084】
<実施例41>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
実施例39のゼラチンを寒天に変更し、実施例39と同様の方法にて経皮吸収用組成物を得た。
【0085】
<実施例42>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
実施例40のゼラチンを寒天に変更し、実施例40と同様の方法にて経皮吸収用組成物を得た。
【0086】
<比較例13>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
化合物Aのマレイン酸塩、プロピレングリコール、水を1/29.0/29.0の比率で化合物Aのマレイン酸塩溶液を調製した。得られた溶液を容器内で撹拌しながら、ゲル化剤であるポリアクリル酸ナトリウム部分中和物(アロンビズAH、東亞合成(株))粉末を表11に記載の比率で添加し増粘液を得た。さらに、この増粘液、プロピレングリコールとを61.5/38.6の比率で混合し、経皮吸収用組成物を得た。
【0087】
<実施例43>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
化合物Aのマレイン酸塩、プロピレングリコール、水を1/28.7/28.7の比率で化合物Aのマレイン酸塩溶液を調製した。得られた溶液を容器内で撹拌しながら、ゲル化剤であるポリアクリル酸ナトリウム部分中和物(アロンビズAH、東亞合成(株))粉末を表11に記載の比率で添加し増粘液を得た。さらに、この増粘液、プロピレングリコール、デカノールとを60.9/38.2/1の比率で混合し、経皮吸収用組成物を得た。
【0088】
<実施例44>
以下の方法にて、ゲル剤の形態を有する経皮製剤を作製した。
化合物Aのマレイン酸塩、プロピレングリコール、水を1/28.4/28.4の比率で化合物Aのマレイン酸塩溶液を調製した。得られた溶液を容器内で撹拌しながら、ゲル化剤であるポリアクリル酸ナトリウム部分中和物(アロンビズAH、東亞合成(株))粉末を表11に記載の比率で添加し増粘液を得た。さらに、この増粘液、プロピレングリコール、デカノールとを60.3/37.8/2の比率で混合し、経皮吸収用組成物を得た。
【0089】
<実施例45>
デカノールの代わりにラウリアルコールを用いた以外は実施例39と全く同様にして実施例41の経皮吸収組成物を得た。
【0090】
実施例1と同様に、実施例36~41および比較例13で得た製剤を均一に塗布する以外は上記と同じ方法で化合物Aの皮膚透過量を測定し、評価を行った結果を表10および表11に示す。
【0091】
【0092】
【0093】
この結果から明らかなように、本発明の組成物はゲル剤の形態であっても吸収促進剤による皮膚透過量の増大効果は顕著であった。