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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】サルブタモール含有眼科用医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20221115BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 33/14 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/585 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/401 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/402 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/421 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P27/02
A61P43/00 121
A61P27/14
A61P27/12
A61P27/10
A61P27/04
A61P27/06
A61P25/02
A61P9/10
A61P29/00
A61P43/00 105
A61K45/00
A61K31/198
A61K38/48
A61K38/48 100
A61K31/7004
A61K33/14
A61K31/573
A61K31/585
A61K31/675
A61K31/401
A61K31/55
A61K38/05
A61K31/616
A61K31/405
A61K31/402
A61K31/421
A61K31/196
A61K31/192
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/107
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018568424
(86)(22)【出願日】2017-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 IB2017000779
(87)【国際公開番号】W WO2018007864
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】TN2016/0259
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TN
(73)【特許権者】
【識別番号】512310136
【氏名又は名称】ラオフ・レキク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラオフ・レキク
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/068786(WO,A1)
【文献】国際公開第01/041806(WO,A1)
【文献】米国特許第03985897(US,A)
【文献】特表2013-544275(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125416(WO,A1)
【文献】特表平01-502829(JP,A)
【文献】特表2005-516914(JP,A)
【文献】特表2013-527222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の活性成分:サルブタモール又はその薬学的に許容される塩、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アルドステロン受容体拮抗薬、及びN-アセチル-DL-ロイシン又はその薬学的に許容される塩を含む、眼及び/又は視覚機能の悪化を含む1つ又は複数の眼科的疾患であって、加齢黄斑変性、ぶどう膜炎、糖尿病性網膜症、及び中心性漿液性脈絡網膜症を含む群から選択される眼科的疾患を予防及び/又は処置する方法における使用のための組成物。
【請求項2】
a.アンジオテンシン変換酵素阻害剤が、フォシノプリル、フォシノプリラート、ラミプリル、ラミプリラート、カプトプリル、トランドラプリル、トランドラプリラート、モエキシプリル、モエキシプリラート、リシノプリル、キナプリル、キナプリラート、エナラプリル、エナラプリラート、ペリンドプリル、ペリンドプリラート、ベナゼプリル及びベナゼプリラートからなる群から選択され、及び/又は
b.アルドステロン受容体拮抗薬が、エプレレノンである、
請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
サルブタモール、ラミプリラート、エプレレノン及びN-アセチル-DL-ロイシンを含む、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
薬学的に許容される添加剤、希釈剤又はビヒクル若しくは担体を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
組成物が、経口投与、非経口投与、静脈内投与、脈管内投与、筋肉内投与、経皮投与、又は局所投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
眼に局所投与される、請求項5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
点眼剤又は眼内注射若しくは硝子体内注射を介して投与される、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
液剤、ローション剤、滴剤、クリーム剤、軟膏剤、眼科用液剤又は点眼剤の形態をとる、請求項5から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
点眼剤として眼に投与される組成物である、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
サルブタモールは、0.05~0.2%(重量/体積)の範囲、若しくは0.05~0.1%(重量/体積)の範囲の濃度で局所投与され、且つ
ラミプリラートは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~2%(重量/体積)の範囲の濃度で局所投与され、且つ
エプレレノンは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは1~2%(重量/体積)の範囲の濃度で局所投与され、且つ
N-アセチル-DL-ロイシンは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは1~2%(重量/体積)の範囲の濃度で局所投与される、
請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
サルブタモールは、0.1%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ
ラミプリラートは、2%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ
エプレレノンは、1%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ
N-アセチル-DL-ロイシンは、1%(重量/体積)の濃度で局所投与される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
a.活性成分が、1日に1回、2回、3回又は4回投与され、1日4回投与が最大である、及び/又は
b.活性成分が、1、2又は3ヶ月以上にわたり投与される
求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記処置を必要とする被験体の視覚機能を維持又は改善するための、請求項1から1のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記処置を必要とする被験体の視力及び/又は視野を維持又は改善するための、請求項1に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護的眼科用医薬として使用するための、少なくともサルブタモール又はその薬学的に許容される塩を含む組成物に関する。この治療的使用との関係において、本発明の組成物はまた、β1アドレナリン遮断薬、α2アドレナリン作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アルドステロン受容体拮抗薬、N-アセチル-DL-ロイシン、ブドウ糖、マグネシウム、カリウム、一酸化窒素供与体、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬、タンパク質分解酵素、これらの薬学的に許容される塩のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数のさらなる活性成分と併用したサルブタモール又はその薬学的に許容される塩を含み、又はそれらから本質的になり、若しくはそれらからなっていてよい。そのような組成物を使用して、眼及び/又は視覚機能の悪化を伴う、1つ又は複数の眼科的疾患を予防及び/又は処置する方法も開示される。本発明は、特に、遺伝性網膜ジストロフィー、緑内障、緑内障神経障害、加齢黄斑変性、屈折異常、ドライアイ、眼炎症性遺伝性ジストロフィー、眼炎症、ぶどう膜炎、眼窩炎症、白内障、アレルギー性結膜炎、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、角膜浮腫、円錐角膜、増殖性硝子体網膜症(線維症)、網膜周辺線維症、中心性漿液性脈絡網膜症(central serious chorio retinopathy)、網膜硝子体異常、硝子体黄斑牽引及び硝子体出血を含む群から選択される眼科的疾患の処置のための医薬を開示する。本発明はまた、本発明の方法における使用に特に適した、組成物、キットオブパーツ(一緒に提供され、同時に、別々に又は間隔を置いて適用することができる製品)又はキットに関する。特定の態様によれば、本発明の保護的眼科用組成物及び医薬は、それを必要とする患者の眼の視力又は視野等の視覚機能を維持又は改善することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、医薬、特に、失明をもたらす眼科的症状につながる視覚喪失(特に近見及び遠見視力及び視野)を予防及び/又は治療するための眼保護医薬(又は薬物)の製造に関する。
【0003】
本発明の組成物は、サルブタモールである(また、文献中でアルブテロールの名称で一般に同定されている)少なくとも1つの活性成分をベースとしており、それを含んでいる。
【0004】
サルブタモールはβ2-アドレナリン作動薬である。より具体的には、サルブタモールは選択的β2-アドレナリン作動薬、及び短時間作用型β2-アドレナリン作動薬である。
【0005】
本発明によれば、サルブタモールは、他の活性成分、特にN-アセチル-DL-ロイシン及び/又はコルチコステロイド及び/又は非ステロイド系抗炎症薬及び/又はアルドステロン受容体拮抗薬及び/又はアンジオテンシン変換酵素阻害薬及び/又はα2アドレナリン作動薬及び/又はβ1遮断薬及び/又はテトラサイクリン及び/又は炭酸脱水酵素阻害剤(例えばアセタゾラミド)、及び/又はタンパク質分解酵素(例えばセラペプターゼ)と併用され得る。
【0006】
本発明は、特に
- 視覚屈折障害、特に老視、遠視、近視及び乱視
- 糖尿病性網膜症
- 黄斑浮腫
- 中心性漿液性脈絡網膜症(Serious central chorio-retinopathy)
- 加齢黄斑変性
- 網膜静脈閉塞
- 網膜動脈閉塞
- ぶどう膜炎
- 乳頭炎、視神経炎
- 増殖性硝子体網膜症及び線維症
- 例えば網膜色素変性網膜症又はスターガルト病を含む遺伝性網膜ジストロフィー
- 緑内障及び緑内障神経障害
- 白内障
- 角膜浮腫
- 円錐角膜
- ドライアイ
- アレルギー性眼瞼炎及び結膜炎
- 硝子体黄斑牽引
- 硝子体出血
を患っている患者の視覚機能を維持又は改善するために、眼科的疾患又は障害の予防及び/又は処置を意図とした医薬を提供することを特に目的としている。
【0007】
本発明に従い、本明細書に開示されている組成物及び医薬は、前述の使用に限定されない。それらの組成物及び医薬は、特に加齢被検体において、視力若しくは視野又はその両方の加齢に伴う低下を防止又は減速し、更には停止させる上で効果的に使用することができる。
【0008】
実施例の節に記載した実験に基づいて本明細書中に詳述されているように、全身経路(特に経口又は注射形態)又は局所経路(特に点眼剤、軟膏若しくはクリーム又は眼内注射の形態)による患者へのサルブタモールの投与は、処置を受けた患者において、視力、コントラスト視覚、色覚だけでなく、視野の改善をももたらす。
【0009】
サルブタモール(文献では一般にアルブテロールとも称される)は、以下の化学構造及び式:
【0010】
【化1】
【0011】
を有する分子である。
【0012】
他のβ2アドレナリン作動薬: サルメテロールキシナホ酸塩、テルブタリン硫酸塩、ピルブテロールメタプロテレノール(Pirbuterolmetaproterol)、フォルモテロール、ビトルテロール、アルフォモテロール、ブフェニン、クランブテロール、イソルタリン(Isoltarine)、レボサルブタモール、オルシプレナリン、プロカテロール、リトドリンが、当該技術分野において知られている。
【0013】
β2アドレナリン作動薬は、主に血管系、気管支、腸、子宮及び眼の平滑筋に作用する。β2アドレナリン作動薬は、主に喘息の処置に使用され、広く使用されており、忍容性が高く安全であることが証明されている。
【0014】
サルブタモールは喘息に対して好ましい効果を有するが、本発明がなされる前に眼科適用の可能性は知られていなかった。
【0015】
本出願に記載の他の活性成分、特に、限定されないがレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の阻害剤として作用する活性成分を含み、任意選択でさらなる活性成分を有する、併用におけるサルブタモールの眼科適用に関する可能性は、本発明がなされる前には知られていなかった。
【0016】
本明細書の実施例に開示されているように、特に緑内障性ニューロパチー又は緑内障、遺伝性ジストロフィーの網膜症(例えば、網膜色素変性網膜症又はスターガルト病)、黄斑変性、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、近視、遠視、老視としての視覚屈折障害、加齢による生理学的視覚喪失、白内障、角膜浮腫、円錐角膜、増殖網膜症及び中心性漿液性脈絡網膜症を有する患者における実際の試みに基づく観察がなされた。
【0017】
これらの疾患は、数ヶ月又は数年の間に重度の障害を伴うことがある。現在のところ完璧な治療法はない。したがって、そのような無効化を伴う疾患(invalidating disease)を予防又は治療すること、及び/又はそのような疾患又は症状を有する患者の視覚機能を少なくとも維持し又は改善することを目的とした処置について、継続的な改善の必要性が依然として残っている。
【0018】
本発明は、この必要性に対応し、組成物、特に本明細書に詳述されているように、保護的眼科医薬として作用することが示された眼科組成物を提供する。
【0019】
本発明及びその成果は、発明の概要、詳細な説明、臨床所見及び特許請求の範囲に明示されている。
【0020】
作用機序
1. cAMP産生: 生理機能における役割
サルブタモールはβ2アドレナリン作動薬であり、それはβ2受容体を刺激する。肺におけるアルブテロールのβ2受容体への結合は、気管支平滑筋の弛緩をもたらす。サルブタモールはアデニル酸シクラーゼを活性化することによりcAMP産生を増加させ、サルブタモールの作用は、ミオシンのリン酸化を阻害し細胞内カルシウム濃度を低下させるcAMP依存性プロテインキナーゼAにより媒介されると考えられている。細胞内濃度の低下は、平滑筋弛緩及び気管支拡張をもたらす。気管支拡張に加えて、サルブタモールは肥満細胞からの気管支収縮物質の放出を抑制し、微小血管漏出を抑制する。
【0021】
Na+/K+ATPアーゼ
Na+/K+ATPアーゼ(ナトリウム-カリウムアデノシントリフォスファターゼ、Na+/K+ポンプ又はナトリウムカリウムポンプとしても知られる)は、全ての動物細胞の原形質膜に見られる酵素である。Na+/K+ATPアーゼ酵素は、カリウムを細胞内に送り込みながら、ナトリウムを細胞外に送り出すポンプであり、ポンピングは共にカリウムとナトリウムの濃度勾配に対して生じる。このポンピングは活発であり(ATPからのエネルギーを使用する)、細胞生理学にとって重要である。
【0022】
機序
- 3つの細胞内Na+イオンを結合した後のポンプ
- ATPは加水分解され、続くADPのリラックスを伴うポンプのリン酸化をもたらす。
- ポンプの配座変化によりNa+が外部に曝露される。リン酸化型ポンプはNa+イオンとの親和性が低いために放出される。
- ポンプは2つの細胞外K+イオンを結合する。これにより、ポンプの脱リン酸化が生じ、ポンプが以前の配座状態に戻り、K+イオンが細胞内に輸送される。
【0023】
機能
Na+ / K+ ATPアーゼの機能: 安静時の潜在的な効果輸送(effect transport)を維持し、細胞量を調節する。ほとんどの動物細胞では、Na+ / K+ ATPアーゼが細胞のエネルギー消費量の約20%の原因となり得る。神経(nervous)では、Na+ / K+ ATPアーゼは細胞のエネルギー消費の最大2/3の原因となり得る。
【0024】
a.エネルギー源の輸送:
細胞からのナトリウムの輸出は、複数の二次性能動輸送体膜タンパク質の推進力をもたらし、このタンパク質が細胞のエネルギー源であるナトリウム勾配を利用することによりグルコース、アミノ酸及び他の栄養素を細胞内に取り込む。
【0025】
b.細胞量の制御:
Na+ / K+ポンプの機能不全は細胞の膨張をもたらし得る。細胞の浸透圧モル濃度は、各種同種及び多くのタンパク質の濃度の合計である。細胞の浸透圧モル濃度が細胞外の浸透圧モル濃度よりも高い場合、水は浸透により細胞内に流入する。これにより細胞が膨張して溶解することがある。Na+ / K+ポンプは更にイオンの適切な濃度を維持するのに役立ち、細胞が膨張し始めたとき、Na+ / K+ポンプは自動的に作動する。
【0026】
c.カルシウム
キャリア酵素(Na+ _Ca2+トランスロケーター(tranlocator))は、Na+ / K+ポンプによって生成されたNa+勾配を利用して細胞内空間からCa2+を除去するため、Na+ / K+ポンプの減速はCa2+レベルを恒久的に上昇させる。
【0027】
d.調節
Na+ / K+ ATPアーゼはcAMPによって上方調節される。cAMPの増加を引き起こす物質は、Na+ / K+ ATPアーゼを上方制御する。対照的に、cAMPを減少させる物質はNa+ / K+ ATPアーゼを下方調節する。
【0028】
2. cAMP: 病理学における役割: cAMPの活性化がTNF-αを阻害することが示唆されている。
【0029】
腫瘍壊死因子α(本明細書ではTNF-α又はTNFアルファ):
全身性炎症に関与する細胞シグナル伝達タンパク質(サイトカイン)である。腫瘍壊死因子αは、主にマクロファージによって産生されるが、CD4+リンパ球、NK細胞、好中球、肥満細胞、外因性細胞及び神経細胞(網膜)等の他の多くの細胞型によって産生され得る。TNFは、アポトーシス細胞死、炎症を誘発し、腫瘍形成を阻害することができる。
【0030】
腫瘍壊死因子αは血管新生の強力な刺激物質である。腫瘍壊死因子αは内皮細胞の表面上の血管細胞接着分子_1(VCAM_1)の発現を誘導することができる。
【0031】
可溶型のVCAM_1は最近、血管新生媒介物質として機能することが証明された。
【0032】
TNF-αは、VEGF及びFGF等の因子の放出を誘導することによって作用する。
【0033】
β2アドレナリン受容体の刺激は腫瘍壊死因子の放出を阻害する。α-cAMP上昇剤(サルブタモール、プロスタグランジン等のβ2アドレナリン作動薬)は、血漿TNFレベルを低下させ、次いでVEGFを低下させる。
【0034】
TNF-α阻害を通して、β2アドレナリン作動薬はマトリックスメタロプロテイナーゼの活性を低下させる。
【0035】
TNF-αは、MMP2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)及びMMP9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)の活性化を刺激する。このことは、β2アドレナリン作動薬がマトリックスメタロプロテイナーゼの活性を低下させて病的状態を改善する理由を説明する。
【0036】
実際上、MMPは、形態形成、組織修復、線維症、血栓、変形性関節症(artrosis)、関節炎、癌浸潤及び転移、関節リウマチ、潰瘍、脳傷害及び神経性炎症、線維症(肝硬変、線維性肺疾患)、耳硬化症、アテローム性動脈硬化症並びに多発性硬化症等の各種生理学的又は病理学的過程に伴う組織リモデリングにおいて重要な役割を果たす。拡張型心筋症、大動脈瘤の場合のような、マトリックスの弱体化。血管新生、アポトーシス、糖尿病及び高血圧。
【0037】
3. したがって結論として、サルブタモールはcAMPを介して以下の二重の役割を果たす。
1) 視覚機能を改善するエネルギー産生及び恒常性を伴う生理学的役割。
2) TNF-α及びMMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)阻害を通じた病理において: アポトーシス、炎症、血管形成、線維形成及び興奮毒性を改善する。
【0038】
in vitroオートラジオグラフィーを使用したウサギの眼におけるβアドレナリン受容体の局在化は、眼において、オートラジオグラフィーによって検出可能であるβアドレナリン受容体の大部分がβ2型であり、眼組織(結膜、角膜、毛様体突起、水晶体、網膜脈絡膜及び外眼筋)に広く分布することを示した。β1アドレナリン受容体は網膜血管系に位置し、β2アドレナリン受容体は網膜ミュラー細胞に分布していることが証明されている。
【0039】
病理学における老化時のβアドレナリン受容体
Gタンパク質共役型受容体は、細胞間コミュニケーションにおいて重要な役割を果たし、ヒト細胞が外部キューを感知したり、ホルモンや神経伝達物質を介して互いにやり取りしたりすることを可能にする。
【0040】
βアドレナリン受容体(BAR)は、カテコールアミンに対する生理的反応を媒介する。BARファミリーには以下の3つの受容体サブタイプがあり、β1ARは心臓において最高レベルで見られ、β2ARは体全体に広く分布しており、β3ARは主に白色及び褐色脂肪組織に発現する。
【0041】
β2ARはGタンパク質と結合してアデニルシクラーゼの活性化をもたらし、次いでアデニルシクラーゼはアデノシン三リン酸のサイクリックAMPへの変換を触媒する。
【0042】
老化の理解: 老化は、最終的に恒常性を維持する能力を低下させる、臓器機能の余力の漸進的低下によって特徴付けられる複雑な過程である。老化について複数の理論が提示されている。体細胞突然変異理論はDNA修復の失敗について述べており、フリーラジカル理論は活性酸素種に対する防御の失敗について述べており、自己免疫理論は免疫系が最終的には自己と非自己を区別できないことを示唆している。他の研究者は有毒化学物質の有害な影響について述べている。
【0043】
本開示では、老化とBARの関係における現在の知識の最新の説明が提示される。各種区域、特に眼において、老化とBARの潜在的相互調節が行われ、高齢者におけるBAR作動薬等の既知の医薬化合物の使用に関する、分子及び臨床上の意義の両方を提供する。
【0044】
実験結果は、高齢者における加齢に伴うカテコールアミン応答性の低下を示している。加齢に伴うβ2AR機能の減退及び以後のcAMP生成の減少が示唆されている。分子メカニズムに関しては、以下の多くの理論が提案されている。
- 受容体密度の低下
- アデニル酸シクラーゼへの結合効率の低さ
- cAMPの生成障害
- 現在の証拠は、インスリン受容体及び膜インテグリンCD18等の膜受容体の細胞外ドメインの切断を引き起こす、増強されたマトリックスメタロプロテイナーゼ活性(MMP活性)は、血管拡張、末梢血管抵抗及び血圧レベルを制御するβ2ARにも影響するように見えることを示唆している。
【0045】
β1アドレナリン遮断薬、アンジオテンシン受容体作動薬、変換酵素阻害薬(ラミプリラト等)、非ステロイド系抗炎症剤、抗レニン、抗アルドステロン(エプレレノン等)、炭酸脱水酵素阻害薬、N-アセチル-DL-ロイシン、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンC、テトラサイクリンは、MMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)を阻害するため、β2アドレナリン受容体及びβ2アドレナリン作動薬活性(サルブタモール)を改善する。
【0046】
ただし、加齢に伴うβ2アドレナリン機能低下を完全に説明することができる単一の細胞又は分子因子はない。後者の因子は、エネルギー低下、恒常性の不均衡、TNF-α(TNFアルファ)分泌の増加、MMP活性化、及び最終的に、アポトーシス、炎症、線維症及び眼内圧上昇を引き起こす、α1及びβ1アドレナリン機能の増加を誘発する循環カテコールアミンの基礎レベルの上昇の原因であると思われる。加齢に伴う変化は、膜受容体(β2アドレナリン受容体及びインスリン受容体)の細胞外ドメインの切断によるものである可能性があることが示唆されている。
【0047】
β2ARノックアウトマウスは糖尿病性網膜症表現型を示す
網膜におけるBARとインスリン受容体シグナル伝達経路との間の機能的リンクについての相当の証拠がある。更に、このリンクが糖尿病性網膜症と同様の病変に寄与し得るという仮説が立てられている。
【0048】
β2アドレナリン作動性入力の喪失は、インスリン受容体シグナル伝達の重要な阻害剤であるTNFα(TNFアルファ)の増加をもたらした。糖尿病性網膜症表現型の局面は、β2ARシグナル伝達の喪失によって引き起こされ得ると仮定されている。ただし、MMPはおそらくインスリン受容体の切断を引き起こす。
【0049】
炎症及びアレルギーにおけるβ2ARの役割: β2アドレナリン受容体は、アレルギー及び炎症において積極的な役割を果たすようである。β2ARの刺激は炎症媒介物質の放出を阻害する。
【0050】
サルブタモールは選択的β2アドレナリン作動性神経薬であり、したがって、この分子は選択的β1アドレナリン作動性神経薬、選択的β3アドレナリン作動性神経薬又は非選択的βアドレナリン作動性神経薬とは異なっており、非選択的βアドレナリン作動性神経薬はβ1作動性神経薬であり、且つβ2アドレナリン作動性神経薬である。サルブタモールはまた、αアドレナリン作動性神経薬とも異なる。これらの薬剤は全て異なる作用機序を有し、異なる生物学的経路を含む。全個体群において高い発生率を有し、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症(age-related macular degenerescence)、ぶどう膜炎、緑内障等の重篤な結果を有する慢性眼科疾患又は障害の処置は、当技術分野において、一般に、β遮断薬を用いて行われる。β遮断薬は、βアドレナリン受容体を遮断する。β遮断薬は、βアドレナリン受容体を活性化しない。
【0051】
当該技術はまた、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の阻害剤、例えば、β遮断薬、抗レニン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、アンジオテンシン2の拮抗薬、抗アルドステロンの使用を提案する傾向がある。
【0052】
β遮断薬は、抗炎症特性、血管新生抑制特性を有することが知られており、ぶどう膜炎、糖尿病性網膜症及び中枢性漿液性脈絡網膜症(CSCR)処置に使用することができる。
【0053】
現時点において、この関連で、βアドレナリン作動薬であるサルブタモールを使用することは、先行技術の指示及び推奨に反する。上記のことから、当業者が(抗RAAS剤である)β遮断薬と(ラミプリラト又はエプレレノン等の)RAAS阻害剤を併用することを指示されることはないであろう。特に、本開示は、本出願に記載の他の活性成分、特に、限定されないがレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の阻害剤として作用する活性成分を含み、任意選択でさらなる活性成分を有する、併用におけるサルブタモールの眼科適用に関する本明細書に記載されている可能性を証明する。
【0054】
本発明は臨床実施例の記載により更に例示されるが、それらの実施例は当然ながら本質的に限定を加えるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0055】
保護的眼科用医薬として使用するための、少なくともサルブタモール又はその薬学的に許容される塩を含む組成物が、本発明によって提供される。
【課題を解決するための手段】
【0056】
本発明の使用のための組成物は、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩 、及びβ1アドレナリン遮断薬、α2アドレナリン作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アルドステロン受容体拮抗薬、N-アセチル-DL-ロイシン、ブドウ糖、マグネシウム、カリウム、一酸化窒素供与体、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬、タンパク質分解酵素、これらの薬学的に許容される塩のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のさらなる活性成分を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれらからなっていてよい。
【0057】
特定の実施形態によれば、本発明の保護的眼科用医薬として使用するための組成物は、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩から本質的になるか又はそれらからなる。
【0058】
それに反して、別の態様においては、本発明の使用のための組成物は、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩と、本明細書に記載の他の活性成分、特に、本明細書に記載されている、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の阻害剤として作用する活性成分、及び場合により、本明細書に記載されている、さらなる活性成分とを併用され得る。
【0059】
特定の実施形態によれば、本発明の使用のための組成物は、
- サルブタモール、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム、カリウム及び一酸化窒素供与体、又は
- サルブタモール、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アルドステロン受容体拮抗薬、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム、及びタンパク質分解酵素、又は
- サルブタモール、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アルドステロン受容体拮抗薬、N-アセチル-DL-ロイシン、又は
- サルブタモール、アンジオテンシン変換酵素阻害剤及びアルドステロン受容体拮抗薬
を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなっていてよい。
【0060】
別の態様によれば、上記の段落に記載されている組成物はまた、本明細書に開示された他の活性成分をそれらの全ての組み合わせで含み得る。
【0061】
本発明によれば、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はその活性代謝物、アルドステロン受容体拮抗薬、一酸化窒素供与体、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬、タンパク質分解酵素は、本明細書の詳細な説明に開示されている通りであり得る。
【0062】
特定の実施形態によれば、本発明の使用のための組成物は、
- サルブタモール、ラミプリラート、エプレレノン及びN-アセチル-DL-ロイシン、又は
- サルブタモール、ラミプリラート及びエプレレノン
を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなっていてよい。
【0063】
ラミプリラート及びエプレレノンは、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の阻害剤として作用する活性成分であることが観察されている。本発明は、そのような化合物を、場合により本明細書に開示されているさらなる活性成分と併用することを包含する。
【0064】
本発明の別の態様では、使用のための組成物は、薬学的に許容される添加剤、希釈剤又はビヒクル若しくは担体を更に含み得る。
【0065】
別の態様において、本発明は、眼及び/又は視覚機能の悪化を含む1つ又は複数の眼科的疾患であって、遺伝性網膜ジストロフィー、緑内障、緑内障神経障害、加齢黄斑変性、屈折異常、ドライアイ、眼炎症性遺伝性ジストロフィー、眼炎症、ぶどう膜炎、眼窩炎症、白内障、アレルギー性結膜炎、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、角膜浮腫、円錐角膜、増殖性硝子体網膜症(線維症)、網膜周辺線維症、中心性漿液性脈絡網膜症、網膜硝子体異常、硝子体黄斑牽引及び硝子体出血からなる群から選択される眼科的疾患を予防及び/又は処置する方法における、保護的眼科用医薬として使用する本発明の組成物の使用に関する。
【0066】
特定の実施形態によれば、眼科的疾患は、本明細書の詳細な説明に開示されている通りであり得る。
【0067】
本発明の組成物は、本明細書に記載の通り、経口投与、非経口投与、静脈内投与、脈管内投与、筋肉内投与、経皮投与、又は局所投与することができる。別の実施形態では、本発明の組成物は、特に点眼薬又は眼内注射若しくは硝子体内注射により、眼に局所投与することができる。他の実施形態では、本発明の組成物は、液剤、ローション剤、点滴薬、クリーム剤又は軟膏剤の形態であり得る。別の実施形態では、本発明の組成物は、眼科用液剤又は点眼剤の形態であるか、又は点眼剤として眼内に投与されてよい。
【0068】
特定の実施形態によれば、本発明に従って使用するための組成物は、以下の活性成分の投与を包含する:
- サルブタモールは、0.05~0.2%(重量/体積)の範囲、若しくは0.05~0.1%(重量/体積)の範囲、特に0.1%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又は
- ラミプリラートは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~2%(重量/体積)の範囲、例えば0.5%、1%若しくは2%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又は
- エプレレノンは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは1~2%(重量/体積)の範囲、例えば0.5%、1%若しくは2%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又は
- N-アセチル-DL-ロイシンは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは1~2%(重量/体積)の範囲、例えば0.5%、1%若しくは2%(重量/体積)の濃度で局所投与される。
【0069】
特定の態様によれば、活性成分は、1日に1回又は2回又は3回、及び最大4回投与することができ、且つ/又は1、2又は3ヶ月以上にわたり投与することができる。本明細書の実施形態のいずれか1つに開示されている活性成分は、単一組成物又は別の組成物中に見出すことができ、且つ/又はそれを必要とする被検体に、同時に、逐次的に若しくは別々に投与することができる。
【0070】
1つ又は複数の組成物中に見出される複数の活性成分が、それを必要とする被検体に、時間経過に沿って逐次的に投与される、特定の実施形態によれば、
- サルブタモールを、1、2若しくは3ヶ月以上にわたり、1日に1回若しくは2回若しくは3回、及び最大4回、局所投与し、次いで、
- サルブタモール、ラミプリラート、エプレレノン及びN-アセチル-DL-ロイシンを、1、2若しくは3ヶ月以上にわたり、1日に1回若しくは2回若しくは3回、及び最大4回、同時に、逐次的に若しくは別々に局所投与し、又は
- サルブタモール、ラミプリラート及びエプレレノンを、1、2若しくは3ヶ月以上にわたり、同時に、逐次的に若しくは別々に、1日に1回若しくは2回若しくは3回、及び最大4回、局所投与する
スキームに従ってよい。
【0071】
本発明はまた、そのような処置を必要とする被検体の視覚機能、特に視力及び/又は視野を維持又は改善するための、本明細書に記載の組成物の使用に関する。
【0072】
本発明は更に、少なくともサルブタモール又はその薬学的に許容される塩を含む組成物をそれを必要とする被検体に投与する工程を含む、眼及び/若しくは視覚機能の悪化を含む1つ若しくは複数の眼科的疾患若しくは障害を予防及び/又は処置するための方法に関する。本明細書に記載の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、本明細書の実施形態のいずれか1つに記載の1つ又は複数の活性成分又は組成物を更に投与する工程を含んでもよく、ここで、前記複数の活性成分は、単一又は複数の別々の組成物中で、同時に、逐次的に又は別々に投与される。
【0073】
本明細書に記載の処置方法の範囲内で、組成物、投与経路、組成物の製剤、投与量、濃度、薬量学、処置期間又は投与スケジュール(別々の組成物を投与する場合を含む)は、上記及び本明細書の記載の通りであってよい。
【0074】
本発明は更に、以下の物質:
- サルブタモール又はその薬学的に許容される塩、
- β1アドレナリン遮断薬、α2アドレナリン作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アルドステロン受容体拮抗薬、N-アセチル-DL-ロイシン、ブドウ糖、マグネシウム、カリウム、一酸化窒素供与体、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬、タンパク質分解酵素、これらの薬学的に許容される塩のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の活性成分、並びに
- 場合により、薬学的に許容される添加剤、希釈剤又はビヒクル若しくは担体
を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなることを特徴とする組成物に関する。
【0075】
特定の実施形態によれば、組成物は、
- サルブタモール、ラミプリラート、エプレレノン及びN-アセチル-DL-ロイシン、又は
- サルブタモール、ラミプリラート及びエプレレノン
を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれらからなっていてよい。
【0076】
特定の態様によれば、使用のための組成物に関して本明細書に記載されている特徴は、組成物自体にも適用することができる。
【0077】
本発明はまた、本明細書に記載の1つ又は複数の活性成分を含む、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩である第1の活性成分のキットオブパーツに関し、ここで、前記活性成分は、組み合わさると、本明細書に記載の1つ又は複数の疾患を予防及び/若しくは処置することができ、且つ/又は組み合わさると視覚機能を維持又は改善し、混合剤中に若しくは別々に見出される。
【0078】
本発明はまた、以下の物質:
- 本明細書中で定義された少なくとも2種の活性成分、
- 場合により、前記キットを使用するための説明書
を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれらからなるキットに関し、ここで、前記活性成分は同じ組成物中で併用されているか、又はこれらの活性成分の少なくとも2種以上が別々の組成物中に存在する。
【0079】
別の態様において、本明細書に記載の製品は、特に本開示の任意の実施形態に従って記載された処置のための、保護的眼科用医薬として使用することができる。
【0080】
本発明はまた、本明細書で定義された治療的使用のいずれかを意図した医薬の製造における、本開示による組成物又はキットオブパーツ若しくはキットの使用に関する。特定の実施形態において、本発明は、本明細書に開示された保護的眼科用医薬の製造における、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】糖尿病性網膜症を有する患者B.Z.の、処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図2】糖尿病性網膜症を有する患者B.Z.の、処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図3】非増殖性糖尿病性網膜症を有する患者B.M.の、処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図4】非増殖性糖尿病性網膜症を有する患者B.M.の、処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図5】ARMDを有する患者M.E.の蛍光血管造影画像である。
図6】ARMDを有する患者M.E.の、1ラウンド目の処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図7】ARMDを有する患者M.E.の、1ラウンド目の処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図8】ARMDを有する患者M.E.の、1ラウンド目の処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図9】ARMDを有する患者M.E.の、1ラウンド目の処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図10】ARMDを有する患者M.E.の、2ラウンド目の処置後の蛍光血管造影画像である。
図11】ARMDを有する患者M.E.の、2ラウンド目の処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図12】ARMDを有する患者K.A.の、1ラウンド目の処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図13】ARMDを有する患者K.A.の、1ラウンド目の処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図14】ARMDを有する患者K.A.の、2ラウンド目の処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図15】CSCRを有する患者B.S.の、処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図16】CSCRを有する患者B.S.の、処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図17】CSCRを有する患者E.A.の、処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図18】CSCRを有する患者E.A.の、処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図19】CSCRを有する患者E.A.の、処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図20】CSCRを有する患者E.A.の、処置後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図21】ぶどう膜炎を有する患者S.M.の、処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図22】ぶどう膜炎を有する患者S.M.の、処置前の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図23】ぶどう膜炎を有する患者S.M.の、処置から1ヶ月後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図24】ぶどう膜炎を有する患者S.M.の、処置から1ヶ月後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図25】ぶどう膜炎を有する患者S.M.の、処置から3ヶ月後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
図26】ぶどう膜炎を有する患者S.M.の、処置から3ヶ月後の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)走査である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
特に指示がない限り、本明細書に開示された各実施形態は、独立に及び/又は他の記載された実施形態のうちの任意の1つ又は複数と組み合わせて適用することができる。
【0083】
本発明は、特に以下の実施形態に関する。
項目1. それを必要としている動物における、眼の悪化を含む複数の眼科的疾患の予防又は処置における使用のためのβ2アドレナリン作動薬であって、当該症状が、
- 遺伝性網膜ジストロフィー
- 緑内障神経障害
- 加齢黄斑変性
- 屈折異常; 老視
- ドライアイ
- 眼炎症、ぶどう膜炎
- 白内障
- 糖尿病性網膜症
- 黄斑浮腫
- 円錐角膜
- 増殖性硝子体網膜症(線維症)
- 中心性漿液性脈絡網膜症
- 硝子体黄斑牽引
- 硝子体出血
から選択され、前記β2アドレナリン作動薬が、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩である、β2アドレナリン作動薬。
【0084】
項目2. 前記医薬が、経口、非経口、血管内、筋肉内、経皮、硝子体内又は局所形態で前記医薬を投与するための薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、項目1に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0085】
項目3. 前記医薬が、局所投与(点眼剤、眼内注射及び硝子体内注射)用であることを特徴とする、項目1又は項目2に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0086】
項目4. 前記医薬が点眼剤であることを特徴とする、項目1から3のいずれか一項に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0087】
項目5. 前記医薬が遺伝性網膜ジストロフィー(色素性網膜炎、スターガルト病)に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ1アドレナリン作動薬。
項目5. 前記医薬が緑内障神経障害又は緑内障に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0088】
項目6. 前記医薬が加齢黄斑変性に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0089】
項目7. 前記医薬が糖尿病性網膜症に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0090】
項目8. 前記医薬が黄斑浮腫に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0091】
項目9. 前記医薬が屈折異常(老視、近視、遠視)に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0092】
項目10. 前記医薬が眼炎症性遺伝性ジストロフィー(ぶどう膜炎)、眼窩炎症に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0093】
項目11. 前記医薬がドライアイに使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0094】
項目12. 前記医薬が白内障に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0095】
項目13. 前記医薬がアレルギー性結膜炎に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0096】
項目14. 前記医薬が角膜浮腫に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0097】
項目15. 前記医薬が円錐角膜に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0098】
項目16. 前記医薬が、硝子体網膜病理におけるビトレオライシスを誘発するための硝子体黄斑牽引に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0099】
項目17. 前記医薬が中心性漿液性脈絡網膜症に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0100】
項目18. 前記医薬が網膜周辺線維症に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0101】
項目19. 前記医薬が硝子体出血に使用するためのものであることを特徴とする、項目1から4に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0102】
項目20. 前記医薬が、視力及び視野を維持又は改善することに使用するためのものであることを特徴とする、項目1から19のいずれか一項に記載のβ2アドレナリン作動薬。
【0103】
項目21. β2アドレナリン作動薬を含んだ医薬であって、前記β2アドレナリン作動薬が、保護的眼科用医薬として使用するためのサルブタモール又はその薬学的に許容される塩である、医薬。
【0104】
項目22. 項目1から20のいずれか一項に規定の保護的眼科用医薬の製造において、前記β2アドレナリン作動薬がサルブタモール又はその薬学的に許容される塩である、β2アドレナリン作動薬の使用。
【0105】
項目23. 以下の物質:
- サルブタモール
- β1遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ラミプリラト)、アルドステロン受容体拮抗薬(エプレレノン)、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム、カリウム、一酸化窒素供与体(ビタミンC、ビタミンB9)、ステロイド系又は非ステロイド系抗炎症薬及びタンパク質分解酵素(セラペプターゼ)の中から選択される1つ又は複数の活性成分
- 薬学的に許容されるビヒクル
を含むことを特徴とする組成物。
【0106】
項目24. 糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症、ぶどう膜炎、黄斑浮腫及び中心性漿液性脈絡網膜症(serious central chorioretinopathy)の処置に使用するための、サルブタモール、エプレレノン、ラミプリラト、N-アセチル-DL-ロイシン及び非ステロイド系抗炎症薬を含む組成物。
【0107】
項目25. 老視のためにサルブタモール、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム及びカリウムを含む組成物。
【0108】
項目26. 保護的眼科用製品としての使用のために、これらの組成物を含む医薬。
【0109】
本発明は、より詳細には、保護的眼科用医薬としての使用のための、少なくともサルブタモール又はその薬学的に許容される塩を含む組成物に関する。
【0110】
「保護的眼科用医薬」とは、本明細書に記載の通り、眼科的疾患若しくは障害又はそれらの症状に伴う身体的又は機能的傷害を予防、遅延又は回復させる治療に、組成物を使用できることを意味する。
【0111】
本明細書で使用するとき、「組成物」は、複数の物の組み合わせ又は集合物で構成され得る製品; 組み合わせ、併用物又は混合物を指す。組成物は、化学で使用されるような「組み合わせ」、又は一般用語である「集合物」の意味も有し得る。
したがって、本明細書で使用される「組成物」は、構成成分が一緒に混合された混合物と、並んで提示され、したがって、同時に、別々に又は間隔を置いて、被検体の身体に投与又は適用され得る、構成成分の組み合わせとの両方を包含する。ただし、共同的効果が、組み合わせた製品を通じて得られる場合がある。
【0112】
本明細書に記載の組成物がサルブタモール又はその薬学的に許容される塩である活性成分のみを包含する場合、サルブタモールという用語は、本明細書において一貫性及び読みやすさの便宜のために使用される「組成物」に置き換えることができると理解される。
【0113】
特定の実施形態によれば、組成物は、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩、並びに、β1アドレナリン遮断薬、α2アドレナリン作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ラミプリラト等)、アルドステロン受容体拮抗薬(エプレレノン等)、N-アセチル-DL-ロイシン、ブドウ糖、マグネシウム、カリウム、一酸化窒素供与体(ビタミンC、ビタミンB9等)、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬、タンパク質分解酵素(セラペプターゼ等)、これらの薬学的に許容される塩のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数のさらなる活性成分を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれらからなる。
【0114】
「β遮断剤」(又はβアドレナリン拮抗剤)とは、本明細書において、ヒト及び動物の体内でエピネフリン(アドレナリン)及び/又はノルエピネフリン(ノルアドレナリン)の作用を遮断する薬物を意味する。これらの化合物は、眼圧を低下させるために且つ/又は眼房水分泌物を減少させるために、特に使用される。「β1アドレナリン遮断薬」とは、β1アドレナリン受容体の拮抗薬であるβ遮断剤を意味する。既知のβ遮断剤としては、チモロール、ソタロール、プロプラノロール、ペンブトロール、ナドロール、メトプロロール、ラベタロール、エスモロール、カルテオロール、ビソプロロール、ベタキソロール、アテノロール、アセブトロール、レボブノロール、メチプラノロールが挙げられる。
【0115】
「α2アドレナリン作動薬」とは、エピネフリン(アドレナリン)と類似若しくは同一の効果を有するか、又はエピネフリン又は生物学的受容体等の類似物質に対して感受性がある薬物を意味する。α2作動薬は、ヒト及び動物の体内でアデニルシクラーゼ活性を阻害することができ、眼房水分泌物を減少させ、ぶどう膜強膜経路を介した房水流出を促進するために、降圧剤、鎮静剤として特に使用される。α2作動薬の例としては、ブリモニジン、アプラクロニジン(aprachlonidine)及びクロニジンが挙げられる。
【0116】
炭酸脱水酵素阻害剤は、炭酸脱水酵素の活性を抑制する医薬品の一種である。「炭酸脱水酵素阻害剤」の例は、アセタゾラミドである。「炭酸脱水酵素阻害剤」のさらなる例は、メタゾラミド、ドルゾラミド又はブリンゾラミドを包含する。
【0117】
本明細書で使用するとき、「ACE阻害剤」は、アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換を阻害する、アンジオテンシン変換酵素阻害剤を略した語である。
ACE阻害剤はまた血管を拡張する。ACE阻害剤は高血圧及び鬱血性心不全を有する患者に使用されることが知られている。本明細書に記載のACE阻害剤は、以下で更に詳述される、フォシノプリル、ラミプリル、カプトプリル、トランドラプリル、モエキシプリル、リシノプリル、キナプリル、エナラプリル、ペリンドプリル、ベナゼプリル及びこれらの混合物、並びに活性代謝物を包含する。
【0118】
特定の好ましい実施形態によれば、前記アンジオテンシン変換酵素阻害剤の活性代謝物は、フォシノプリラート(fosinoprilate)、トランドラプリラート(trandolaprilate)、モエキシプリラート(moexiprilate)、ラミプリラート、キナプリラート(quinaprilate)、エナラプリラート(enalaprilate)、ペリンドプリラート(perindoprilate)及びベナゼプリラート(benazeprilate)、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0119】
特定の実施形態によれば、ACEIはラミプリル又はラミプリラートである。
【0120】
ラミプリル(rampirill)のエステル分解の結果であるラミプリラート(Ramprilate)は、下記式:
【0121】
【化2】
【0122】
を有する。
【0123】
明らかに、ラミプリル及びラミプリラートは、ある程度、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)の作用機序に干渉し、アンジオテンシンIのアンジオテンシンIIへの変換を防止する。アンジオテンシンIIは血管収縮物質であり、血管拡張物質のブラジキニンを分解する。したがって、これらのアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、動静脈にも影響を及ぼす血管拡張(vasodialation)をもたらし、混合型血管拡張物質として知られている。
【0124】
アルドステロン受容体拮抗薬(抗ミネラルコルチコイド、MCRA、場合によりMRAとも呼ばれる)は、アルドステロンの作用を阻害するクラスの薬物である。アルドステロンは体内の主要なミネラルコルチコイドホルモンであり、副腎の副腎皮質で産生される。アルドステロンは腎臓、唾液腺、汗腺及び結腸によるナトリウムの再吸収を増加させる。同時に、アルドステロンは水素とカリウムイオンの排泄を増加させる。アルドステロン受容体拮抗薬は、アルドステロンの効果を遮断することにより、ナトリウムの再吸収を遮断し、水分損失を促進する。その結果、血圧の低下及び心臓周囲の体液の減少がもたらされる。アルドステロン受容体拮抗薬は、高血圧又は心不全の処置に使用することができる。アルドステロン受容体拮抗薬はまた弱い利尿作用を有している。「アルドステロン受容体拮抗薬」の既知の例としては、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン及びカンレノン酸カリウム又はフィネレノン(finerenone)が挙げられる。いくつかの薬物はまた、それらの主要な作用機序に次いで、抗ミネラルコルチコイド作用を有する。例としては、プロゲステロン、ドロスピレノン、ゲストデン、及びベニジピンが挙げられる。これらの化合物は全て本発明の特定の実施形態に包含される。特定の実施形態によれば、「アルドステロン受容体拮抗薬」はエプレレノンである。
【0125】
N-アセチル-DL-ロイシン(C8H15NO3)は、比較的単純な化学構造を有する小分子である。この光学的に不活性な生成物は、α-アミノ-イソカプロン酸(C6H13NO2)のN-アセチル化の結果得られ、そのL異性体、ロイシンは、広範囲に存在する天然α-アミノ酸である。
【0126】
ロイシン:
【0127】
【化3】
【0128】
対照的に、N-アセチル-DL-ロイシンは下記式:
【0129】
【化4】
【0130】
を有する。
【0131】
マウスの実験的めまいに対するN-アセチル-DL-ロイシンの効果は1957年に発見された。それ以降、この化合物はめまい状態の対症医薬としてヒト臨床薬剤として問題なく使用されている。N-アセチル-DL-ロイシンは、医師によって広く処方されており、Tanganil(登録商標)(Pierre Fabre Medicament社)の名称で薬剤師に周知されており、その有効性はめまいを患っている多くの患者から高く評価されている。
【0132】
本発明に包含されるマグネシウム及び/又はカリウムの薬学的に許容される塩としては、例えば、それぞれ塩化カリウム及び塩化マグネシウムが挙げられる。
【0133】
一酸化窒素(NO)供与体は、in vivo又はin vitroでNOを放出する薬理学的に活性な物質である。一酸化窒素供与体の例は、ビタミンC若しくはビタミンB9(葉酸)、又は本発明を実施するのに適しているとして本明細書に開示されている、これらの混合物、並びにこれらの薬学的に許容される塩を包含する。
【0134】
ステロイド系抗炎症薬は、好ましくは、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、デルタコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、デルタヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メドロコルチゾン(medrocortisone)、フルオロヒドロコルチゾン、フルオロコルチゾン(fluorocortisone)、フルオロメチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、フルオロメチルデルタヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、パラメタゾン、これらの薬学的に許容される塩、及びこれらの混合物からなる群から選択されるコリチコステロイドである。
【0135】
非ステロイド系抗炎症薬の例は、アスピリン、アリールアルカン酸、ブロムフェナク、インドメタシン、オキサメチシン、2-アリールプロピオン酸、フェンブフェン、ピルプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、オキサプロジン、及びケトロラク、フェナム酸(femamic acid)、ピラゾリジン誘導体、クロフェゾネム(clofezonem)、ケブゾン、フェナゾン、オキシカム(ocicam)、ドロキシカム、メロキシカム、COX-2阻害剤、 セレコキシブ、ロフェコキシブ、これらの薬学的に許容される塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物を包含する。
【0136】
タンパク質分解酵素の例はセラペプターゼである。
【0137】
本発明は、本明細書に開示されている化合物(それらの一般的名称を含む。)の全ての薬学的に許容される塩、並びにそれらの全ての混合物(開示されている活性成分及び塩)を包含する。特に、用語「マグネシウム」及び「カリウム」は、それぞれ任意の形態のマグネシウム及びカリウム、特にマグネシウム及びカリウムの薬学的に許容される塩、例えば、塩化マグネシウム及び塩化カリウムを包含する。
【0138】
本明細書で使用するとき、「から本質的になる」とは、組成物が、列挙された活性成分及び場合により薬学的に許容されるビヒクル、並びに医薬品活性成分の活性を妨害しない追加成分を有し得ることを意味する。したがって、本明細書に開示されている組成物、医薬、キット又は方法において使用される活性成分に大きな影響を与えることなく、微量成分を添加することができる。
【0139】
「複数の」とは、本明細書において、少なくとも2(すなわち2以上)、例えば3、4、5、6、7、8、9、10又は10より大きな数を意味する。
【0140】
特定の実施形態によれば、治療的使用のための組成物は、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩から本質的になるか、又はそれからなる。
【0141】
特定の実施形態によれば、治療的使用のための組成物は、サルブタモール、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム、カリウム及び本明細書に開示されている一酸化窒素供与体、又はその薬学的に許容される塩を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれらからなる。
【0142】
特定の実施形態によれば、治療的使用のための組成物は、サルブタモール、本明細書に開示されているアンジオテンシン変換酵素阻害剤、本明細書に開示されているアルドステロン受容体拮抗薬、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム、及び本明細書に開示されているタンパク質分解酵素、又はこれらの薬学的に許容される塩を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれからなる。
【0143】
特定の実施形態によれば、治療的使用のための組成物は、サルブタモール、本明細書に開示されているアンジオテンシン変換酵素阻害剤、本明細書に開示されているアルドステロン受容体拮抗薬、N-アセチル-DL-ロイシン、又はこれらの薬学的に許容される塩を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれからなる。
【0144】
特定の実施形態によれば、治療的使用のための組成物は、サルブタモール、本明細書に開示されているアンジオテンシン変換酵素阻害剤、及び本明細書に開示されているアルドステロン受容体拮抗薬、又はこれらの薬学的に許容される塩を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれからなる。
【0145】
特定の実施形態によれば、治療的使用のための組成物は、サルブタモール、ラミプリラート及びエプレレノンを含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれからなる。
【0146】
ラミプリラート及びエプレレノンは、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の阻害剤として作用する活性成分であることが観察されている。本発明は、場合により、本開示の実施形態のうちの任意の1つに開示されているさらなる活性成分と併用して、そのような化合物を使用することを包含する。
【0147】
特定の実施形態によれば、治療的使用のための組成物は、サルブタモール、ラミプリラート、エプレレノン及びN-アセチル-DL-ロイシンを含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれからなる。
【0148】
特定の実施形態によれば、本発明の治療的使用のための組成物は、したがって本明細書に記載された手段、例えば組み合わせ又は併用により、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)に対する機能的効果、特に阻害効果を有する活性成分と併用される。
【0149】
本開示による使用のための組成物は、薬学的に許容される添加剤、希釈剤又はビヒクル若しくは担体を更に含み得る。
【0150】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的又は眼科学的に許容される添加剤、希釈剤又はビヒクル若しくは担体」は、それが投与される器官(特に眼)に対して、実質的に長期間又は恒久的に有害な影響を及ぼさない任意の成分又はビヒクル、具体的には、前記器官(特に眼)に投与することができ炎症(特に眼の炎症)を引き起こさない任意のビヒクルを意味する。本発明に包含される薬学的ビヒクルが眼科学的ビヒクルである特定の実施形態によれば、ビヒクルは、水(蒸留水又は脱イオン水)、食塩水、リン酸緩衝食塩水、生理学的血清、及び他の水性媒体を含む。
【0151】
その他の場合、薬学的に許容されるビヒクルは、眼科用組成物の薬学的活性を妨げず、組成物が投与される宿主に対して毒性ではない、任意の許容される担体、アジュバント又はビヒクルであり得る。薬学的に許容されるビヒクルとしては、溶媒、分散媒体、コーティング、吸収遅延剤等が挙げられる。これらの薬学的に許容されるビヒクルは、Remington's Pharmaceutical Sciences 21st edition(2005)に記載されている。許容されるビヒクルは、例えば、食塩水、緩衝食塩水等であり得る。許容されるビヒクルは、製剤化後に医薬組成物に添加してもよい。
【0152】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに開示されている本発明の治療的組成物は、全ての開示された組み合わせ及び併用において、眼及び/又は視覚機能の悪化を含む1つ又は複数の眼科的疾患を予防及び/又は処置する方法での使用を目的としている。
【0153】
したがって、特定の実施形態において、本発明の組成物は眼科用組成物であり、特にそれらが眼に直接適用される場合に限定されるものではない。
【0154】
本明細書で使用する用語「視覚」又は「視覚機能」は、視力(より詳細には近距離視力及び/又は遠距離視力)、並びにコントラスト視覚、色覚及び視野(又は視界)を包含する。
【0155】
本明細書で使用される用語「視覚喪失」又は「視覚機能低下」は、部分的又は全体的な視覚喪失、特に部分的又は全体的な視力(近距離及び/又は遠距離視力)並びに/又はコントラスト視覚、色覚及び/若しくは視野の喪失を含む。「視覚喪失」又は「視覚機能低下」は、例えば加齢動物における「自然な」視力低下(すなわち、明白な眼疾患又は障害がなくても現れる視力低下)、及び/又は1つ若しくは複数の眼科的症状(特に、眼障害及び/又は眼疾患)から生じ得る。
【0156】
したがって、特に、視覚機能とは、視力又は視野を意味する。視力は、眼内の網膜焦点の鮮鋭度に依存する、視界の清澄度又は鮮鋭度である。古典的なスネレン指標が視力を検査するために使用される。通常の視力は視力20/20と呼ばれ、測定基準値は視力6/6である。最初の数字は、患者の視力が検査される距離を表し、一般に20フィート又は6メートルである。2番目の数字は、正常な眼がチャート上の記号又は文字を見ることができる距離を示す。
【0157】
視野は、患者が周辺視できる水平及び垂直方向の全範囲の視野検査により決定される。この種の検査は通常、自動視野測定検査で行われ、患者は前方の光源をまっすぐ見つめ、様々な密度のランダムな光が患者の周辺視野でフラッシュされる。患者はボタン又は他の手段を押して、光が見えることを示す。
【0158】
「視覚機能を改善する」とは、個人の視覚がその初期状態から改善されることを意味する。「維持する」とは、視覚機能の悪化が観察されないことを意味する。
【0159】
したがって、本開示に従って予防及び/又は処置することができる眼科的疾患は、眼(生理学的原因)の悪化及び/又は視覚機能の悪化を含み得る。
【0160】
用語「処置する」及び「処置」は、眼科的症状(特に、眼障害及び/又は眼疾患)が(少なくとも部分的に)改善されること、特に処置動物の視力及び/若しくはコントラスト視覚及び/若しくは色覚及び/若しくは視野が改善されること、又は視覚機能の低下の過程が停止されることを意味する。
【0161】
特定の実施形態によれば、本発明は、そのような処置を必要とする被検体の視覚機能、特に視力及び/若しくは視野を維持若しくは改善することを目的とし、又は更に目的とする。
【0162】
本明細書中で使用される場合、用語「眼科的症状又は疾患」(又は眼症状)は、進行性の視力喪失をもたらす、脈絡網膜及び/又は視神経を含む眼科的障害及び眼科的疾患を包含する。
【0163】
特に慢性眼科疾患が含まれる。
【0164】
本明細書で使用される用語「眼科的障害」(又は眼障害)は、視覚の変化、眼の外観の変化、又は眼に違和感を有することを包含する。「眼科的障害」(又は眼障害)は、視神経障害及び脈絡網膜障害、並びに眼への傷害等の外傷、特に進行性の視力低下又は視覚喪失をもたらす障害を含む。
【0165】
本開示によれば、前記眼科的疾患は、遺伝性網膜ジストロフィー、緑内障、緑内障神経障害、加齢黄斑変性、屈折異常、ドライアイ、眼炎症性遺伝性ジストロフィー、眼炎症、ぶどう膜炎、眼窩炎症、白内障、アレルギー性結膜炎、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、角膜浮腫、円錐角膜、増殖性硝子体網膜症(線維症)、網膜周辺線維症、中心性漿液性脈絡網膜症、網膜硝子体異常、硝子体黄斑牽引及び硝子体出血を含む群から選択される。
【0166】
特定の実施形態によれば、遺伝性網膜ジストロフィーは、色素性網膜炎及びスターガルト病の中から選択される。
【0167】
特定の実施形態によれば、屈折異常は、老視、近視及び遠視の中から選択される。
【0168】
特定の実施形態によれば、本発明は、網膜硝子体異常におけるビトレオライシスを引き起こすために、硝子体黄斑牽引を予防及び/又は処置することを目的とする。
【0169】
本明細書で使用される「被検体」又は「動物」という用語は哺乳動物、特にヒト及び非ヒト哺乳動物を含む。
【0170】
特定の態様によれば、本明細書に記載の使用のための組成物は、経口投与、非経口投与、静脈内投与、血管内投与、筋肉内投与、経皮投与、又は局所投与(眼内注射を含む)することができる。
【0171】
本発明の組成物は一般に固体又は溶液の形態であってよい。
【0172】
特定の実施形態によれば、組成物は、特に点眼剤又は眼内注射若しくは硝子体内注射を介して、眼に局所投与される。
【0173】
「局所投与」とは、本明細書において、局所作用を有する投与を意味する。この用語は、特にテノン嚢下(sub-tenonian)投与、又は眼への投与(特に眼内又は眼外投与)を含む。
【0174】
したがって、「局所形態」とは、本明細書では局所投与に適した形態、特に、液剤(特に眼科用液剤)、ローション、滴剤(特に点眼剤)、クリーム又は軟膏を意味する。
【0175】
眼への投与は、例えば、本明細書に開示されている(例えば、眼科用液剤、軟膏剤又は点眼剤の形態であり得る)活性成分を眼の外側表面に適用することによって、すなわち、眼、特に角膜と前記活性成分を接触させることによって、実施され得る。
【0176】
代替的又は累積的に、眼への投与は、例えば眼科的溶液の形態により、活性成分を、眼、特に硝子体へ注射すること(すなわち硝子体内注射)によって実施することができる。
【0177】
活性成分は、眼の表面上又は眼内に活性成分の制御放出を行う送達デバイスを使用して(例えば、眼の外側表面への適用及び/又は眼内注射により)、眼に投与することができる。前記デバイスは、例えば、角膜の下の下結膜嚢(lower cul de sac)又は結膜盲嚢(conjunctival cul-de-sac)内に配置するか、又は眼内、特に硝子体内に注入することができる。
【0178】
特定の実施形態によれば、組成物は、液剤、ローション剤、滴剤、クリーム剤又は軟膏剤の形態をとる。より具体的な実施形態によれば、組成物は眼科用液剤又は点眼剤の形態をとる。本発明の特定の実施態様において、組成物は点眼剤として眼に投与される。
【0179】
特定の態様によれば、本明細書に記載の組成物は、実施例の節に開示された組成物を包含するが、その全ての可能な組み合わせによる以下の実施形態をも包含し、ここで、活性成分は、以下のように投与さる:
- サルブタモールは、0.05~2%(重量/体積)の範囲、若しくは0.05~1%(重量/体積)の範囲、若しくは0.1~2%(重量/体積)の範囲、若しくは0.1~1%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~2%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~1%(重量/体積)の範囲の濃度で局所投与され、特に、サルブタモールは、0.1、若しくは0.5、若しくは1若しくは2%(重量/体積)の濃度で投与され、且つ/又は
- ラミプリラートは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~2%(重量/体積)の範囲、例えば0.5%、若しくは1%若しくは2%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又は
- エプレレノンは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは1~2%(重量/体積)の範囲、例えば0.5%、若しくは1%若しくは2%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又は
- N-アセチル-DL-ロイシンは、0.5~5%(重量/体積)の範囲、若しくは0.5~3%(重量/体積)の範囲、若しくは1~2%(重量/体積)の範囲、例えば0.5%、若しくは1%若しくは2%(重量/体積)の濃度で局所投与される。
【0180】
当業者は、発生した効果を観察しながら、これらの範囲内で本発明を容易に実施することができる。
【0181】
特定の実施形態によれば、サルブタモールは0.1%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又はラミプリラートは2%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又はエプレレノンは1%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又はN-アセチル-DL-ロイシンは1%(重量/体積)の濃度で局所投与される。
【0182】
特定の実施形態によれば、活性成分は、1日に1回又は2回又は3回、及び最大4回投与されることが理解されよう。
【0183】
特定の実施形態によれば、活性成分は、1、2又は3ヶ月以上にわたり投与される。
【0184】
本明細書中に定義されている活性成分を含有する組成物又は医薬は、障害又は疾患(特に眼科的症状)の改善を得るために必要な頻度で、哺乳動物の眼に投与することができる。
【0185】
当業者であれば、投与頻度及び処置継続期間は、活性成分の正確な性質及び組成物中でのその濃度、並びに障害又は疾患の種類及び重篤度、動物の年齢及び体重、動物の全般的な身体状態、及び障害又は疾患の原因等の各種要因に依存することを理解するであろう。これらの指針の範囲内で、本発明の眼科用組成物(好ましくは眼科用液剤又は点眼薬)は、哺乳動物の眼に局所投与され、特に、1日に1回、2回又は3回程度、眼に滴下され、且つ/又は哺乳動物の眼に注射されると考えられる。
【0186】
本発明に従って投与される処置継続期間は、例えば、数週間(少なくとも1週間)~数ヶ月(少なくとも1ヶ月間)、特に1週間~6ヶ月間、及び全ての中間の値の範囲であり得る。継続期間は、少なくとも2週間~4ヶ月間未満、特に3ヶ月間の範囲であり得、(本明細書に記載の指針の範囲内で)同じ処方又は別の処方により反復することができる。長期処置が必要とされる場合がある。特に、処置は、1年若しくは数年、又は例えば障害又は疾患の再発、特に眼科的症状の場合には、生涯にわたって、継続することがある。
【0187】
当然ながら、眼障害及び/又は疾患を処置するために、複数の追加活性成分のうち1つ、特に複数の追加化合物のうち1つを、本発明の方法で使用してもよく、又はそれらの活性成分が他の活性成分と相互作用せず、有害な副作用をもたらさないことを条件として、それらの活性成分が本発明による組成物、医薬又はキット中に存在してもよい。
【0188】
別の態様によれば、活性成分は単一組成物又は別々の組成物中に見出される。
【0189】
本明細書から、開示された全ての活性成分を、別々に(すなわち別々の組成物中で)投与することも、一緒に(例えば同じ組成物で)投与することもできることは明らかであろう。
【0190】
より正確には、特定の実施形態によれば、活性成分は、それを必要とする被検体に、同時に又は別々に若しくは連続的に投与される。当業者は、定義されたプロトコールに従って、投与された活性成分が同じ組成物中に見出されるかどうかを容易に判断することができる。
【0191】
「逐次的に」とは、活性成分が(上記に開示されたスケジュールに従って)特定の適用時間に特定の順序により投与され、順序は当業者によって一般的に定義され、又は本明細書に開示された2回又は数回の期間に対応する長期間にわたって、2ラウンド若しくは数ラウンドの処置プロトコールが、継続的に実施されることを意味する。
【0192】
複数ラウンドの処置に含まれる組成物は、1ラウンドの処置と別の処置で異なっていても、同じであってもよい(反復されてもよい)。また、製剤の種類又は投与量は、前記の異なるラウンドの処置において、異なっていても同じであってもよい。
【0193】
1つ又は複数の組成物中に見出される複数の活性成分が、それを必要とする被検体に、時間経過に沿って逐次的に投与される、特定の実施形態によれば、
- サルブタモールを、1、2若しくは3ヶ月以上にわたり、1日に1回若しくは2回若しくは3回、及び最大4回、局所投与し、次いで、
- サルブタモール、ラミプリラート、エプレレノン及びN-アセチル-DL-ロイシンを、1、2若しくは3ヶ月以上にわたり、1日に1回若しくは2回若しくは3回、及び最大4回、同時に、逐次的に若しくは別々に局所投与し、又は
- サルブタモール、ラミプリラート及びエプレレノンを、1、2若しくは3ヶ月以上にわたり、同時に、逐次的に若しくは別々に、1日に1回若しくは2回若しくは3回、及び最大4回、局所投与する
スキームに従ってよい。
【0194】
逐次的投与の例は以下の実施例の節に記載されている。
【0195】
本発明はまた、少なくともサルブタモール又はその薬学的に許容される塩を含む組成物をそれを必要とする被検体に投与する工程を含む、眼及び/若しくは視覚機能の悪化を含む1つ若しくは複数の眼科的疾患若しくは障害を予防及び/又は処置するための方法に関する。
【0196】
特定の実施形態によれば、前記方法は、本明細書に開示されている実施形態のいずれか1つに記載されている、1つ又は複数の活性成分又は組成物を更に投与する工程を含み、ここで、前記複数の活性成分は、本明細書に記載された定義に従う単一又は複数の別々の組成物中で、同時に、逐次的に又は別々に局所投与される。
【0197】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、本明細書に記載された定義に従い、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩を、場合により薬学的に許容される添加剤、希釈剤又はビヒクル若しくは担体と共に、それを必要とする被検体に投与する工程を含む。投与される活性成分は、特に本明細書に開示されている通り、処置効果を得るための有効量及び/又は薬学的に許容される量(特に生理学的又は眼科的に許容される量)で提供される。
【0198】
投与される組成物及び/又は投与される活性成分は、本明細書に記載された実施形態のうちのいずれか1つに開示されている通りである。
【0199】
それを必要とする被検体は、本明細書で定義された1つ又は複数の眼科的疾患を有する。投与経路、ガレヌス製剤、投与量、濃度、薬量学、処置スケジュール又はプロトコールは、上記に開示した通りである。
【0200】
したがって、複数の活性成分を、それを必要とする被検体に、同時に、逐次的に又は別々に投与することができる。
【0201】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、そのような処置を必要とする被検体の視覚機能、特に視力及び/又は視野を維持又は改善するためのものであるか、又はそれを更に改善するためのものである。
【0202】
本発明はまた、以下の物質:
- サルブタモール又はその薬学的に許容される塩、及び
- β1アドレナリン遮断薬、α2アドレナリン作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ラミプリラト)、アルドステロン受容体拮抗薬(エプレレノン)、N-アセチル-DL-ロイシン、ブドウ糖、マグネシウム、カリウム、一酸化窒素供与体(ビタミンC、ビタミンB9)、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬、タンパク質分解酵素(セラペプターゼ)、これらの薬学的に許容される塩のいずれか、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の活性成分、及び
- 場合により、薬学的に許容される添加剤、希釈剤又はビヒクル若しくは担体
を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれからなることを特徴とする組成物に関する。
【0203】
特定の実施形態によれば、活性成分、特定の投与経路に適した製剤、投与量、濃度、及び薬量学の全ての可能な組み合わせに従う、本明細書に開示された全ての組成物は、本発明及び本開示の一部である。
【0204】
本発明はまた、本明細書に記載の1つ又は複数の活性成分を有する、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩である第1の活性成分のキットオブパーツにも関し、ここで、前記活性成分が併用時に共同的効果をもたらすことができ、成分の一部又は全部は混合剤中に又は別々に見出される。
【0205】
特定の実施形態によれば、本発明は、サルブタモール又はその薬学的に許容される塩である第1の活性成分のキットオブパーツを提供し、1つ又は複数の活性成分は、本明細書に開示された、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)に対する機能的効果、特に阻害効果を有する。本明細書に記載の作用機序について言及する。
【0206】
本発明はまた、以下の物質:
- 本明細書に記載の全ての実施形態に従って定義される少なくとも2つの活性成分、及び
- 場合により、前記キットを使用するための説明書
を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれらからなるキットに関し、ここで、キットの活性成分は同じ組成物中で併用されているか、又はこれらの活性成分のうち少なくとも2つ以上が別々の組成物中に存在する。
【0207】
本発明の組成物又はキットオブパーツ若しくはキットは、本明細書に開示されている本発明の方法に使用することができる。本発明の組成物又はキットオブパーツ若しくはキットは、特に本明細書に開示されている処置のための、保護的眼科用医薬として使用することができる。
【0208】
本発明はまた、本明細書の任意の実施形態に定義された使用を意図した医薬の製造における、本明細書に開示されている組成物、キットオブパーツ又はキットの使用に関する。
【0209】
本発明はまた、本明細書に開示されている実施形態のいずれか1つに記載された保護用眼科用医薬の製造におけるサルブタモール又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0210】
本発明はまた、β2アドレナリン作動薬、例えばサルブタモール、非ステロイド系抗炎症剤、N-アセチル-DL-ロイシン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(本明細書ではACEIとも称される)、アルドステロン受容体拮抗薬(エプレレノン)、葉酸及びマグネシウムの中から選択される1つ又は複数の追加活性成分を含むか、又はそれらから本質的になるか、若しくはそれらからなることを特徴とする組成物、特に医薬組成物(又は薬物若しくは医薬)に関する。
【0211】
併用: β2アドレナリン作動薬、N-アセチル-DL-ロイシン、カリウム、一酸化窒素供与体(ビタミンC、ビタミンB9)、マグネシウムもまた注目に値する。
【0212】
本発明の一実施形態において、本発明は、動物(特にヒト又は非ヒト哺乳動物、特に加齢動物及び1つ又は複数の眼科的症状を有する動物)における、遠視及び近視の改善、老視進行の好転、視覚喪失進行の防止、減速又は中断、更には視覚喪失進行の好転に適した眼球保護医薬に関する。
【0213】
本発明の一実施形態において、動物、特に加齢動物及び/又は眼疾患若しくは障害を有する動物において、視覚を維持若しくは改善するための組成物若しくは医薬、及び/又は視覚を維持若しくは改善するために使用される組成物若しくは医薬。
【実施例
【0214】
臨床観察
本発明は臨床実施例の記載により更に例示されるが、それらの実施例は当然ながら本質的に限定を加えるものではない。特に明記しない限り、医薬については、経口投与、点眼剤の形態での局所投与、又は眼内注射、特に硝子体内注射による投与が行われた。
【0215】
点眼剤を用いた局所投与が行われる特定の実施形態によれば、投与される活性成分の投与量、薬量学、投与方式は、詳細な説明に開示された特定の実施形態に記載の通りであり、すなわち、別段の指定がない限り、サルブタモールは0.1%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又はラミプリラートは2%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又はエプレレノンは1%(重量/体積)の濃度で局所投与され、且つ/又はN-アセチル-DL-ロイシンは1%(重量/体積)の濃度で局所投与され、活性成分は、1、2又は3ヶ月以上にわたり、1日に1回又は2回又は3回、及び最大4回投与される。
【0216】
1) 屈折異常:
本発明は、視覚を改善するための全体的経路又は局所経路(点眼薬)を介した眼球保護医薬、すなわちサルブタモールの製造に関する。
【0217】
より具体的には、排他的ではないが、本発明は、改善(すなわち、本例では老視、近視、遠視及び乱視の影響を減少させること)、及び老視、近視、遠視及び乱視を安定化させるか、更にはそれらの進行を好転させることを意図した、サルブタモールを含む点眼剤に関する。
【0218】
これらの屈折異常の全ての症例において、グルコース及び/又はマグネシウム及び/又はカリウム及び/又はN-アセチル-DL-ロイシン及び/又は変換酵素阻害剤及び/又はα2アドレナリン作動薬、及び/又は一酸化窒素供与体(ビタミンC、ビタミンB9)を併用すると、結果が改善される。
【0219】
近視:
12人の患者を評価し、点眼剤の形態でサルブタモールを投与した。
【0220】
結果: 視力の改善に加えて、屈折値が減少した。サルブタモールは視覚を改善するだけでなく近視も処置すると推定することができる。
【0221】
老視
老視は眼の老化に伴う症状であり、その結果、近くの物体に明確に焦点を合わせる能力が次第に悪化する。症状は、小さな活字を読むことの困難、読み物を遠くに保持しなければならないこと、頭痛、及び眼精疲労を含む。人によって問題の度合いも異なる。老視と同時に他の種類の屈折異常が存在する場合がある。
【0222】
老視は老化プロセスに必然的に含まれる。老視は眼のレンズの硬化に起因し、近くの物体を見たとき、眼は網膜上ではなく網膜の後ろに光の焦点を合わせるようになる。
老視は、近視、遠視、及び乱視と同様に、屈折異常の一種である。診断は眼検査によって行われる。
【0223】
処置は典型的に眼鏡により行われる。使用される眼鏡は、レンズの下部において、より高い集束力を有する。既製の老視鏡でも十分な場合がある。
【0224】
35歳以上の人は老視を発症する危険があり、全ての人がある程度の影響を受けるようになる。症状は紀元前4世紀のアリストテレスの書物に早くも言及されていた。ガラスレンズは、13世紀後半に初めてこの問題のために使われるようになった。
【0225】
大部分の人が最初に気づく最初の症状は、特に暗い場所での、細かい活字の読みにくさ、長期間読書したときの眼精疲労、近くの物体のぼやけ、又は視距離を変えるときの一瞬の眼のかすみである。多くの極度の老視者は、自分の腕が読み物を快適な距離に保持するのに「短すぎる」ようになったことを訴える。
【0226】
老視は、他の焦点欠陥と同様に、瞳孔が小さくなる明るい日光の下では顕著ではなくなる。他のレンズと同様に、レンズの焦点比を大きくすると、焦点が合っていない物体のぼやけの程度が低下し、被写界深度が広がる(写真におけるアパーチャの被写界深度に対する効果と比較されたい)。
【0227】
老視の矯正の開始は、特定の職業を持つ人及び縮瞳を有する人によって異なる。特に、農業従事者及び主婦は遅くに矯正を求めるのに対し、サービス労働者及び建設労働者はより早く視力矯正を求める。水中写真撮影に興味があるスキューバダイバーは、低光条件での近焦点のために、通常の日常生活で症状を認識する前にダイビング中に老視の変化に気づくことがある。
【0228】
8人の患者に点眼剤の形態でサルブタモールを投与し、近見視力の改善及び老視の減少を検査した。患者のうちの何人かは近見視力の矯正具をもはや着用することを必要としなくなった。サルブタモールは老視の効果的な処置法であることが証明された。
【0229】
9人の患者が、サルブタモール、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム、カリウム、一酸化窒素供与体(ビタミンC、ビタミンB9)の併用により処置され、近見視力の点でより良い結果を示した。
【0230】
乱視:
乱視の被検体は自身の屈折及び視力の改善を認めた。
【0231】
円錐角膜:
2人の患者はサルブタモールを投与され、彼らは視力の改善と不規則な乱視の減少を認めた。
【0232】
2) 糖尿病性網膜症:
糖尿病性眼疾患としても知られる、糖尿病性網膜症は、糖尿病により網膜に損傷が生じる医学的状態である。糖尿病性網膜症は最終的に失明につながる場合がある。
【0233】
20年以上糖尿病を患っている人の最大80%が糖尿病性網膜症に罹患している。眼に対する適切な処置及びモニタリングがあれば、新規症例の少なくとも90%が軽減される可能性がある。糖尿病を患っている期間が長いほど、糖尿病性網膜症を発症する可能性が高くなる。米国では毎年、糖尿病性網膜症が失明の新規症例全体の12%を占めている。糖尿病性網膜症はまた、20~64歳の人々にとって失明の主な原因である。
【0234】
糖尿病性網膜症はしばしば初期徴候を示さない。急速な視覚喪失を引き起こし得る黄斑浮腫も、ある程度の間、兆候を示さない場合がある。しかしながら、一般に、黄斑浮腫を患っている人は、かすみ眼を有している可能性が高いため、読書や運転等の行為が困難になる。複数の症例では、日中に視覚が改善したり悪化したりする。
【0235】
非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)と称される第一段階では、症状は見られず、徴候は眼に見えず、患者は視力20/20を保持する。NPDRを検出する唯一の方法は、微小動脈瘤(動脈壁中の血液が充満した微視的な膨れ部分)を見ることができる眼底写真撮影によるものである。視力低下がある場合は、フルオレセイン血管造影を行って眼の後ろ側を見ることができる。狭窄又は閉塞した網膜血管は、はっきりと見ることができ、これは網膜虚血(血流の欠如)と称される。
【0236】
血管がその内容物を黄斑領域に漏出させる黄斑浮腫は、NPDRの任意の段階で起こり得る。黄斑浮腫の症状は、かすみ目又は両眼で異なる暗く歪んだ像である。糖尿病患者の10パーセント(%)が、黄斑浮腫に関連した視覚喪失を有することになる。光コヒーレンストモグラフィーは、黄斑浮腫の(体液蓄積による)網膜肥厚領域を示すことができる。
【0237】
第二段階では、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)の一部として、眼の後ろに異常な新生血管が形成される(新生血管形成)。これらの新生血管は壊れやすいため、これらの血管が破裂して出血し(硝子体出血)、視界をぼやけさせることがある。この出血が初めて起きるとき、出血はあまり激しいものではない場合がある。ほとんどの場合、ほんの数滴の血液、又は人の視野に浮かぶ斑点が残るが、多くの場合、斑点は数時間後に消える。
【0238】
多くの場合、これらの斑点に続いて、数日又は数週間以内にはるかに多くの血液の漏出が起こり、眼がかすむ。極端な場合、人はその眼で明暗を見分けることしかできない場合がある。眼の内部から血液が排出されるまでに数日から数ヶ月、又は数年かかる場合があるが、場合によっては血液は排出されない。これらの種類の大規模な出血は、多くの場合、睡眠中に、複数回起こる傾向がある。
【0239】
眼底検査では、医者は、綿状白斑点、火炎状出血(同様の病変はクロストリジウム-ノビイ(Clostridium novyi)のアルファ毒素によっても引き起こされる。)、及びしみ状出血を見ることになる。
【0240】
糖尿病性黄斑浮腫は、糖尿病患者における視覚喪失の主な原因である。
【0241】
現在、1つの検査技術が糖尿病を評価するのに非常に有用であり、それが光コヒーレンストモグラフィー(O.C.T)である。
【0242】
OCTは糖尿病性黄斑浮腫を評価する上で非常に高感度であり、中心窩黄斑厚(central macular thickness)は視力と相関している。
【0243】
サルブタモール又はサルブタモールと併用された医薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アルドステロン受容体拮抗薬及びN-アセチル-DL-ロイシン等の1つの薬物の投与に対する黄斑浮腫の応答は、O.C.Tイメージングによって正確に記録することができる。
【0244】
これらの医薬を局所投与して糖尿病患者を処置した。
【0245】
以下の研究は、非増殖性糖尿病性網膜症又は増殖性糖尿病性網膜症を有する複数の患者に対して行われた。
【0246】
サルブタモール又は以下の物質:ACEI(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、アルドステロン受容体拮抗薬、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム及びセラペプターゼ(点眼剤; 錠剤; 眼内注射、特に硝子体内注射)のうち1つ又は複数と併用されたサルブタモールのいずれかにより、20人の患者を処置した。
全て患者の網膜症及び視力を改善した。
【0247】
B.Zは、糖尿病性網膜症を呈した糖尿病患者である(図1のOCT)。B.Zは0.1%(重量/体積)のサルブタモールを局所投与された(点眼剤による)。処置の2ヶ月後、追跡OCT走査(図2のOCT)は、総黄斑量が減少したことを示した。
【0248】
患者B.Mは、非増殖性糖尿病性網膜症を呈した(図3のOCT)。B.Mには、サルブタモール点眼剤0.1%(重量/体積)+ラミプリラト点眼剤2%(重量/体積)+エプレレノン点眼剤1%(重量/体積)+N-アセチル-DL-ロイシン点眼剤1%(重量/体積)を、1日に3回、局所投与した。3ヶ月後、B.Mの視力は改善した。追跡OCT走査(図4のOCT)は、高解像度の網膜内体液を示した。
【0249】
3) 加齢黄斑変性
加齢黄斑変性症(AMD)は網膜の問題である。加齢黄斑変性症(AMD)は、黄斑と称される網膜の一部が損傷を受けたときに起こる。AMDにより、中心視覚が失われる。近くの物を見るか遠くの物を見るかにかわからず、細部が見えなくなる。しかし、周辺(側方)視力は正常な状態のままとなる。例えば、腕時計を見る場合を想像してほしい。AMDがある場合、時計の数字は見えるが、手は見えない。
【0250】
AMDは非常に多く見られる。AMDは50歳以上の人の視覚喪失の主な原因である。
【0251】
2種類のAMD:
ドライ型AMD
この形態はかなり一般的である。AMDを有している人の約80%(10人中8人)がドライ型を有している。ドライ型AMDでは、黄斑の一部が年齢とともに薄くなり、ドルーゼン蓄積(drusen grow)と称される小さなタンパク質塊が成長する。患者は中心視覚をゆっくりと失っていく。ドライ型AMDを処置する方法はまだない。
【0252】
ウェット型AMD
この型はあまり一般的ではないが、はるかに深刻である。ウェット型AMDでは、網膜下で新しい異常な血管が成長する。これらの血管は血液又は他の体液を漏出させることがあり、黄斑の瘢痕化が引き起こされる。ウェット型AMDでは、患者はドライ型AMDよりも速く視覚を喪失する。
【0253】
多くの人々は、視界が非常にぼやけて見えるようになるまで、AMDを有していることに気づかない。これが定期的に眼科医の検診を受けることが重要である理由である。眼科医は、患者の視力に問題が出る前に、AMDの初期兆候を見つけることができる。
【0254】
ARMDに対する最も実績がある治療法は、血管新生型疾患を処置するもので、光凝固術及び抗VEGF眼内注射(Avastin; lucentis)を用いる。
【0255】
O.C.Tによって得られる構造情報は、フルオレセイン血管造影法に対する有益な診断補助になりつつある。OCTはこれらの処置の効果を調べるための有益なツールである。
【0256】
抗VEGF薬の眼内注射の代わりに、1日3回局所投与したサルブタモール(点眼剤0.1%(重量/体積))又はサルブタモール、エプレレノン1%(重量/体積)、ラミプリラト2%(重量/体積)の併用点眼剤は、黄斑肥厚化の退行を示す。
【0257】
サルブタモール、又は以下の物質: アルドステロン受容体拮抗薬、ACEI(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、N-アセチル-DL-ロイシン、マグネシウム及びセラペプターゼ(点眼剤; 錠剤; 眼内注射)のうち1つ又は複数と併用されるサルブタモールにより、15人の患者を処置した。
患者らはO.C.T及び視力の改善を認めた。
【0258】
患者M.Eは右眼の視力低下の病歴を示していた。蛍光血管造影画像(図5)は、脈絡網膜新生血管(CNV)を示した。サルブタモール処置を受ける前に、OCT走査を行い、それを(図6)に示す。3ヶ月後の視力は、黄斑肥厚の不完全な退行を示した。
【0259】
連続的OCT対照は、さらなる改善を示したが、完全な回復は示さなかった(図7図8図9)。
【0260】
次いで、サルブタモール点眼剤0.1%(重量/体積)、ラミプリラト点眼剤2%(重量/体積)、エプレレノン点眼剤1%(重量/体積)、N-アセチル-DL-ロイシン点眼剤1%(重量/体積)の併用物を、1日3回、局所的に処方した。3ヶ月後、視力は10/10に達し、蛍光血管造影は新生血管の活動の低下を明らかにした(図10)。
【0261】
追跡OCT(図11)は、黄斑肥厚の完全退行及び中心窩輪郭の回復を示している。
【0262】
患者K.Aは右眼の視力低下の6ヶ月の病歴を示していた。OCT検査は、黄斑肥厚及び色素上皮剥離を明らかにした(図12)。
【0263】
患者K.Aをサルブタモール点眼剤0.1%(重量/体積)で処置した。3ヶ月後、視力は改善した。追跡OCT走査は、黄斑肥厚の不完全な退行を示している(図13)。
【0264】
次いで、患者K.Aに、1日3回サルブタモール点眼剤0.1%(重量/体積)、ラミプリラト点眼剤2%(重量/体積)、エプレレノン点眼剤1%(重量/体積)、N-アセチル-DL-ロイシン点眼剤1%(重量/体積)の併用物を投与したところ、症状は改善し、視力が増加し(4/10)、追跡OCT(図14)は黄斑肥厚のさらなる後退を示した。
【0265】
4) 中心性漿液性脈絡網膜症(CSCR)
CSCRでは、網膜の下に体液が蓄積する。これは視界を歪める場合がある。体液の漏出は、脈絡膜と称される網膜下の組織層から生じる。網膜色素上皮(RPE)と称される細胞の別の層がある。RPEが正常に機能しない場合、RPEの下に液体が蓄積する。その結果、網膜の下に小規模な剥離が形成され、視界が歪むようになる。
【0266】
中枢性漿液性脈絡網膜症は通常、一度に片方の眼だけに発症するが、両方の眼が同時に発症する場合もある。
【0267】
CSCRを患う7人の患者を、サルブタモール点眼剤0.1%(重量/体積)、ラミプリラト点眼剤2%(重量/体積)及びエプレレノン点眼剤1%(重量/体積)、及びN-アセチル-DL-ロイシン点眼剤1%(重量/体積)により処置した。3ヶ月後、患者らは視力及びOCTの改善を認めた。
【0268】
患者B.Sは慢性両側性CSCRを呈した。それぞれ右眼の視力1/10及び左眼の視力1/20というOCT検査(図15)は、右眼において、より重要な黄斑漿液性網膜剥離を明らかにした。患者B.Sは、1日3回のサルブタモール点眼剤0.1%(重量/体積)、ラミプリラト点眼剤2%(重量/体積)、エプレレノン点眼剤1%(重量/体積)及びN-アセチル-DL-ロイシン点眼剤1%(重量/体積)からなる局所的な4薬併用治療を受けた。
【0269】
2ヶ月後、右眼の視力は増加し、7/10に達した。追跡OCT走査(図16)は、網膜下液の完全な後退及び中心窩輪郭の回復を示している。
【0270】
患者E.Aは慢性両側性CSCRを呈した。それぞれ右眼の視力2/10及び左眼の視力1/20というOCT検査(図17図18)は、左眼において、より重要な黄斑漿液性網膜剥離を明らかにした。患者E.Aは、1日3回のサルブタモール点眼剤0.1%(重量/体積)、ラミプリラト点眼剤2%(重量/体積)、エプレレノン点眼剤1%(重量/体積)及びN-アセチル-DL-ロイシン点眼剤1%(重量/体積)からなる局所的な4薬併用治療を受けた。
【0271】
3ヶ月後、右眼の視力は増加し、5~6/10に達した。追跡OCT走査(図19)は、右眼での網膜下液の完全な退行及び左眼での不完全な退行(図20)並びに中心窩輪郭の回復を示している。
【0272】
5) ぶどう膜炎、視神経炎:
ぶどう膜炎は、内網膜と強膜及び角膜からなる外側線維層との間にある色素層である、ぶどう膜の炎症である。ぶどう膜は、眼の色素性血管構造の中間層からなり、虹彩、毛様体、及び脈絡膜を含む。ぶどう膜炎は眼の救急事態であり、検眼者又は眼科医による綿密な検査及び炎症を制御するための緊急の処置を必要とする。
【0273】
ぶどう膜炎は、主に罹患している眼の部分に基づいて、解剖学的に前部、中間部、後部、及び全ぶどう膜炎型に分類される。20世紀以前は、ぶどう膜炎は通常、英語で「眼炎」と呼ばれていた。
- 前部ぶどう膜炎は、虹彩毛様体炎及び虹彩炎を含む。虹彩炎は前房と虹彩の炎症である。虹彩毛様体炎は、虹彩炎と同じ症状を示すが、毛様体の炎症も含む。ぶどう膜炎の症例の3分の2から90%は、前部に位置するものである。この症状は、単一の発現として起こり、適切な処置で鎮静するか、又は再発性若しくは慢性的な性質を帯びることがある。
- 中間部ぶどう膜炎(別名: 周辺部ぶどう膜炎)は、硝子体腔内の細胞が炎症である硝子体炎からなり、場合により雪状堆積(snowbanking)、又は扁平部への炎症性物質の沈着を伴う。硝子体の炎症細胞である「雪玉」も見られる。
- 後部ぶどう膜炎又は脈絡網膜炎は、網膜及び脈絡膜の炎症である。
- 全ぶどう膜炎は、ぶどう膜の全ての層の炎症である。
【0274】
症状と徴候:
前部ぶどう膜炎:
- 眼の焼けるような痛み
- 眼の発赤
- ぼやけた視界
- 羞明又は光に対する感受性
- 瞳孔不整
- 強膜のブラックアウト(Blacked out sclera)
- 浮遊点(視野内に浮遊する黒い点)
- 頭痛
- 前部ぶどう膜炎の徴候としては、毛様体血管の膨張、前房内の細胞及び発赤の状態、並びに角膜の後面上の角質沈殿物(「KP」)が挙げられる。重度の炎症では、前房蓄膿の証拠がある場合がある。ぶどう膜炎の過去の発現は、レンズ上の色素沈着、KP、及び瞳孔拡張時の瞳孔の花采によって同定される。
- ブサッカ結節(フサクヘテロクロミック虹彩環炎(FHI)等の、前部ぶどう膜炎の肉芽腫形態での虹彩の表面に位置する炎症性結節)
- 癒着
【0275】
中間部ぶどう膜炎:
最も一般的な病状:
- 浮遊点
- ぼやけた視界
中間部ぶどう膜炎は通常、片方の眼のみに発症する。痛み及び羞明はあまり見られない。
【0276】
後部ぶどう膜炎:
眼の後ろ側の炎症は、一般に、
- 浮遊点
- ぼやけた視界
- 光視症又は点滅する光が見える症状
によって特徴付けられる。
【0277】
ぶどう膜炎の10例において、サルブタモール単独、又は以下の物質:非ステロイド性抗炎症薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アルドステロン受容体拮抗薬、β1遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、マグネシウム、コルチコステロイド及びセラペプターゼのうち1つ又は複数と併用されたサルブタモールが、炎症性障害を減少させた。
【0278】
患者の一人であるS.Mは、黄斑浮腫及び視力低下を含む両側性ぶどう膜炎を呈した。OCT検査(図21のOD、図22のOS)は両眼の黄斑肥厚を明らかにし、S.Mは、サルブタモール点眼液0.1%(重量/体積)、ラミプリラト点眼剤2%(重量/体積)、エプレレノン点眼剤1%(重量/体積)、及びN-アセチル-DL-ロイシン点眼剤1%(重量/体積)に基づいた局所的4薬併用治療を受けた。
【0279】
1ヶ月後、視力は改善した。本発明者らは、黄斑肥厚の不完全な退行を認めた(図23のOD、図24のOS)。
【0280】
3ヶ月後、両眼の視力は10/10であり、黄斑浮腫の退縮は完全であった(図25のOD、図26のOS)。炎症は完全に後退した。
【0281】
6) 緑内障神経障害又は緑内障
緑内障は眼の視神経を損傷させる疾患である。緑内障は通常、眼の前部に体液が蓄積したときに起こる。その余剰な体液が眼内の圧力を高め、視神経を損傷させる。
【0282】
緑内障は、60歳超の人々の失明の主な原因である。しかし、緑内障による失明は、多くの場合、早期処置で予防することができる。
【0283】
緑内障には主に以下の2つのタイプがある。
原発開放隅角緑内障
原発開放隅角緑内障は、最も一般的なタイプの緑内障である。原発開放隅角緑内障は、(目詰まりした排液管のように)眼が正常に体液を排出しない場合に、徐々に生じる。その結果、眼圧が上昇し、視神経を傷つけ始める。このタイプの緑内障は無痛性であり、最初は視覚の変化を引き起こさない。
【0284】
通常の眼圧に対して敏感な視神経を持つ人もいる。このことは、緑内障になる危険性が通常より高いことを意味する。定期的な眼検査が、視神経への損傷の初期兆候を見つける上で重要である。
【0285】
閉塞隅角緑内障(「閉塞角緑内障」又は「狭隅角緑内障」とも称される)
このタイプは、虹彩が眼の排出隅角に非常に近いときに生じる。虹彩は排出隅角を塞ぐ場合がある。これは一枚の紙が流しの排水溝の上を滑っているようなものと考えることができる。排出隅角が完全に閉塞されると、眼圧は急激に上昇する。これは急性発作と称される。これは真の眼の救急事態であり、直ちに眼科医を呼ばなければ、失明するおそれがある。
【0286】
急性閉塞隅角緑内障発作の兆候を以下に挙げる。
- 視界が突然ぼやける。
- 眼に激痛を感じる。
- 頭痛を感じる。
- 胃の気持ち悪さ(吐き気)を感じる。
- 吐く(嘔吐する)。
- 照明の周囲に七色の輪又は光輪が見える。
閉塞隅角緑内障を有する多くの人は、症状をゆっくりと発症する。これは慢性閉塞隅角緑内障と称される。最初は症状がないため、損傷が深刻になるか発作が起こるまで、患者は自分が閉塞隅角緑内障を有していることがわからない。
閉塞隅角緑内障は直ちに処置しなければ失明を引き起こすおそれがある。
【0287】
既知の緑内障を有する患者は、サルブタモール、又は以下の物質:N-アセチル-DL-ロイシン、グルコース、マグネシウム、アルドステロン受容体拮抗薬(エプレレノン)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ラミプリラト)、β1遮断薬及び炭酸脱水酵素阻害剤のうちの1つ又は複数と併用されたサルブタモールで処置されたとき、眼圧の低下、及び視力及び視野の改善を経験した。
【0288】
7) 遺伝性網膜ジストロフィー:
- 色素性網膜炎:
網膜色素変性症(RP)は、網膜の桿状体光受容体細胞の進行性変性により重度の視覚障害を引き起こす遺伝性の変性眼疾患である。この形態の網膜ジストロフィーは、年齢とは無関係に初期症状を発現する。したがって、RP診断は、早期幼児期から成人期後期までのいずれかの時点で行われる。RPの初期段階の患者は最初に、桿状体光受容体の衰退のために周辺視覚及び薄明視覚が低下することを認める。進行性の桿状体変性の後に続いて、隣接する網膜色素上皮(RPE)の異常及び錐体光受容体細胞の劣化が生じる。周辺視覚が低下するにつれて、患者は進行性の「トンネル視力」及び最終的な失明を経験する。罹患した個人は更に、明暗順応の不良、夜盲症、及び眼底での骨棘の蓄積を経験する場合がある。
【0289】
網膜色素変性の初期網膜変性症状は、夜間視力の低下(夜盲症)及び中周辺視野の喪失を特徴とする。低光量視野の原因となり網膜周辺部に配向されている桿体光受容体細胞は、この疾患の非症候群型において、最初に発症する網膜突起である。視力低下は遠周辺視野に至るまで比較的急速に進行し、トンネル視力が増大するにつれて、最終的に中心視野へと拡大する。視力及び色覚は、色覚、視力、及び中心視野の視界を担う錐体光受容体細胞における付随的な異常のために、低下することがある。病状の進行は左右対称の態様で生じ、左右の眼の両方が同様の割合で症状を経験する。
【0290】
初期の桿状体光受容体変性及び後の錐体視細胞衰退の直接的効果とともに、各種間接的症状が、網膜色素変性を特徴付ける。光が強烈なまぶしさとして知覚される事象を説明する羞明等の現象、及び視野内に明滅する光又はちらちらする光が存在する光視は、多くの場合、RPの後の段階に現れる。RPに関連した所見は、しばしば眼底における眼科的三主徴(Ophthalamic triad)として特徴付けられてきた。眼科的三主徴としては、骨棘形成によって引き起こされる網膜色素上皮(RPE)の斑紋状の外観、視神経の蝋様の外観、及び網膜内の血管の衰弱が挙げられる。
【0291】
非症候群型RPは通常、以下の様々な症状を呈する。
夜盲症;
(周辺視力喪失による)トンネル視力;
格子視覚(Latticework vision);
光視(明滅する光/ちらちらする光);
羞明(まぶしさを避けること);
眼底での骨棘形成;
暗い環境から明るい環境への適応又はその逆の場合の適応が遅い;
視力のぼやけ;
色分解が不十分;
中心視力の喪失;
最終的な失明
【0292】
サルブタモールを使用し、視覚機能の改善を誘導した。
9人の患者を処置した。患者全員が視力及び視野の改善を認めた。
【0293】
- スターガルト病
スターガルト病、又は黄色斑眼底(fundus flavimaculatus)は、遺伝性若年性黄斑変性の最も頻繁に見られる形態である。スターガルト病は、進行性の視覚喪失を引き起こし、通常、法的盲の時点に至る。複数の遺伝子がこの障害に関係している。症状、主に中心視力喪失は、典型的に、20歳(発病年齢の中央値: 約17歳)より前に現れ、波状視力(wavy vision)、盲点、ぼやけ、色覚障害、及び薄暗い照明への適応困難(暗順応遅延)も含む。
【0294】
スターガルト病は、あらゆる若年性黄斑ジストロフィーを指すためによく用いられる。しかし、それは正しくは、網膜色素上皮の黄斑を囲む不明瞭な黄色の斑点を伴う、萎縮性黄斑ジストロフィーを指す。
【0295】
スターガルト病を有する患者は通常、人生の最初の十年の半ばから10代終わりに症状が現れ、発病年齢が約6歳である場合もある。スターガルト病の主な症状は、眼鏡では矯正不可能な視力喪失であり、症状は進行して20/200~20/400の間で安定することが多い。他の症状としては、波状視力、盲点(暗点)、ぼやけ、色覚障害、及び薄暗い照明への適応困難(暗順応遅延)が挙げられる。この疾患は時々まぶしさへの過敏性を生じさせる。曇りの日には、症状がいくらか緩和する。黄斑(網膜の中心及び視野の焦点)が損傷した場合に視力が最も顕著に損なわれ、周辺視力の損傷は少ない。一般に、視力喪失は人生の最初の20年のうちに始まる。
【0296】
検眼鏡による検査では、疾患の初期段階において目立った結果はほとんど示されない。しかし、最終的には、水平長軸を持つ楕円形の萎縮が網膜色素上皮に出現し、視神経乳頭周囲の領域の回避(乳頭周囲回避)と共に、打ち延ばした青銅の外観を呈する。眼底自己蛍光(FAF)、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)、又はより低い頻度でのフルオレセイン血管造影等の技術は、眼底検査で目視可能になる前に早期の兆候を検出することができる。
【0297】
サルブタモールで処置された8人の患者は視力の改善を認めた。
以下の物質: N-アセチル-DL-ロイシン、一酸化窒素供与体(ビタミンC、ビタミンB9)、ラミプリラト、及びアルドステロン受容体拮抗薬のうち1つ又は複数をサルブタモールと併用すると、改善が認められる。
【0298】
8) 白内障:
サルブタモール下でいくらかの改善が認められた。
【0299】
9) 角膜浮腫:
10人の患者はサルブタモール処置後に視力を改善し、浮腫は減少した。
【0300】
10) 加齢に伴う生理的視力低下:
多くの場合、サルブタモールは眼の病理がない場合に視覚機能を改善した。
【0301】
11)ドライアイ: サルブタモール点眼剤処置後に7人の患者で改善された。
【0302】
12) アレルギー性結膜炎及び眼瞼炎: サルブタモール点眼剤処置後に5人の患者で改善された。
【0303】
13) 網膜周囲線維症: サルブタモール処置後に減少した。
【0304】
14) 硝子体黄斑牽引:
サルブタモールはタンパク質分解活性があるようである。硝子体黄斑牽引は、融解と離漿(synerisis)の両方を誘発するビトレオライシスを促進するが、網膜に悪影響を及ぼすことはない。
【0305】
線維性血管増殖、網膜剥離、硝子体黄斑牽引を含む増殖性糖尿病性網膜症の多くの場合において、サルブタモールの硝子体内注射は、後部硝子体剥離の誘発、特に黄斑部円孔病理における網膜前線維性膜(epiretinal fibrotic membrane)及び内境界膜のより容易な剥離及び除去をもたらした。
【0306】
15) 硝子体出血:多くの場合、サルブタモール処置後に減少した。
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