(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】鋼材搬送器
(51)【国際特許分類】
B66F 9/12 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
B66F9/12 D
(21)【出願番号】P 2019023661
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000182982
【氏名又は名称】日鉄大径鋼管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】大和田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小沼 弘一
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060631(JP,A)
【文献】実開昭55-101870(JP,U)
【文献】実開平05-042283(JP,U)
【文献】実開平01-021199(JP,U)
【文献】実公昭52-032043(JP,Y1)
【文献】米国特許第03410431(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトのフォークに支持されるように構成された本体と、
前記本体が前記フォークに支持されているときにおける前記フォークリフトの左右方向に沿って前記本体に対して移動可能に前記本体に支持された右可動ビームおよび左可動ビームを含む左右一対の可動ビームと、
前記右可動ビームおよび前記左可動ビームの互いの間隔を近づける動作および遠ざける動作を行わせるための可動ビーム駆動装置と、
前記左右一対の可動ビームに取り付けられた左右一対の爪と、
を備え、
前記左右一対の爪は、前記右可動ビームの移動に伴い前記右可動ビームと連動して前記左右方向に移動する右爪と、前記左可動ビームの移動に伴い前記左可動ビームと連動して前記左右方向に移動する左爪と、を含
み、
前記右爪および前記左爪は、それぞれ、爪本体を含み、
前記右爪の爪本体は、前記右可動ビームから下方に延びる右第1本体部と、前記右第1本体部から前記左爪側に延びる右第2本体部と、を含み、
前記左爪の爪本体は、前記左可動ビームから下方に延びる左第1本体部と、前記左第1本体部から前記右爪側に延びる左第2本体部と、を含み、
前記右第1本体部および前記左第1本体部の互いの対向部には、それぞれ、鋼材の端面に押圧されることで検知信号を出力する第1センサが設置され、
前記右第2本体部および前記左第2本体部のそれぞれには、前記鋼材が載せられて前記鋼材と接触することで検知信号を出力する第2センサが設置されている、鋼材搬送器。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼材搬送器であって、
前記本体は、前記左右一対の可動ビームを収容する収容室を有し、
前記左右一対の可動ビームは、互いの間隔が最も小さいときには前記収容室内に収容され、前記左右方向に移動することに伴い前記収容室からの突出量が変化する、鋼材搬送器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鋼材搬送器であって、
前記本体に対する前記左右一対の可動ビームの位置を固定するための固定機構をさらに備える、鋼材搬送器。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の鋼材搬送器であって、
前記可動ビーム駆動装置は、前記左右一対の可動ビームが互いに遠ざかる方向および互いに近接する方向に移動するように前記左右一対の可動ビームを連動して変位させるように構成され、
前記左右一対の爪に前記鋼材を保持する動作および前記鋼材の保持を解除する動作を行わせるために前記左右一対の爪を互いに動作させる爪駆動装置をさらに備えている、鋼材搬送器。
【請求項5】
請求項4に記載の鋼材搬送器であって、
前記可動ビーム駆動機構は、前記左右一対の可動ビームに変位力を付与する手動操作部材を含み、
前記爪駆動装置は、前記フォークリフトの油圧によって駆動される油圧機構を含んでいる、鋼材搬送器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材搬送器に関する。
【背景技術】
【0002】
大型かつ大重量の鋼管は、出荷時の搬送、または、現地施工時での搬送の際、クレーンにより吊り上げられて搬送される。この搬送するための装置として、これまでに種々の装置が提案されている。例えば、特許文献1には、長さがばらついている長尺物の搬送に使用する吊具装置が開示されている。特許文献1に記載の吊具装置は、長尺物の両側部を保持する一対の玉掛け部が、固定ビームに対して進退する2つの伸縮ビームの先端部にそれぞれ設けられる。2つの伸縮ビームは、固定ビームの中央部を基準として左右対称に同期して進退する。この特許文献1の吊具装置は、2つの伸縮ビーム間の幅を変更できるため、対となる玉掛け部の吊りスパンを長尺物の長さに応じて変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の吊具装置は、クレーン等の重機により吊り下げられて用いられる。この使用中に強風などが発生した場合、吊具装置が揺れるため、搬送作業を中断する状況が発生することがある。このため、作業効率が低下するおそれがある。
【0005】
上記課題を鑑み、本発明の目的は、フォークリフトで支持することで、安定した状態で鋼材を搬送する鋼材搬送器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、フォークリフトのフォークに支持されるように構成された本体と、前記本体が前記フォークに支持されているときにおける前記フォークリフトの左右方向に沿って前記本体に対して移動可能に前記本体に支持された右可動ビームおよび左可動ビームを含む左右一対の可動ビームと、前記右可動ビームおよび前記左可動ビームの互いの間隔を近づける動作および遠ざける動作を行わせるための可動ビーム駆動装置と、前記左右一対の可動ビームに取り付けられた左右一対の爪と、を備え、前記左右一対の爪は、前記右可動ビームの移動に伴い前記右可動ビームと連動して前記左右方向に移動する右爪と、前記左可動ビームの移動に伴い前記左可動ビームと連動して前記左右方向に移動する左爪と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によると、本体をフォークリフトで支持することで、吊り下げる場合と比べて本体の姿勢を安定させることができる。その結果、鋼材搬送器は、安定した姿勢で鋼材を搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、鋼材搬送器と、鋼材搬送器を保持するフォークリフトとを説明するための図である。
【
図2】
図2は、フォークリフトの運転座席を示す図である。
【
図3】
図3は、フォークリフトと、鋼材搬送器との接続態様を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、固定機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、スパイラル鋼管またはシームレス鋼管などの鋼管を鋼材の一例とし、鋼材搬送器は、その鋼管を吊り下げて搬送する機器として説明する。なお、鋼材は、鋼管以外に、H形鋼などであってもよい。鋼材搬送器は、フォークリフトによって支持され、持ち上げられる。鋼管は、フォークリフトに持ち上げられた鋼材搬送器によって吊り下げられた状態で両持ち支持されて、搬送される。
【0010】
図1は、鋼材搬送器1と、鋼材搬送器1を保持するフォークリフト10とを説明するための図である。鋼材搬送器1は一方向に延びている。鋼材搬送器1は、その長手方向をフォークリフト10の左右方向(車幅方向)に一致させて、フォークリフト10に支持される。以下では、鋼材搬送器1の長手方向をX軸方向、鋼材搬送器1の上下方向をY軸方向、鋼材搬送器1の奥行方向をZ軸方向として説明する。また、以下の説明での右側および左側は、鋼材搬送器1からフォークリフト10を視た時を基準としている。
【0011】
まず、本実施形態のフォークリフト10について、
図1および
図2を用いて説明する。
図2は、フォークリフト10の運転座席を示す図である。
【0012】
フォークリフト10は、左右方向に並ぶ、一対の左フォーク11および右フォーク12を備えている。運転座席には、運転者により操作される複数の操作レバー13~17が配置されている。各操作レバー13~17が操作されると、不図示の油圧アクチュエータが動作する。この油圧アクチュエータにより、左フォーク11および右フォーク12は動作する。
【0013】
第1操作レバー13が操作されると、チルト動作が実行される。チルト動作では、左フォーク11および右フォーク12は互いに同期して傾斜する。第2操作レバー14が操作されると、昇降動作が実行される。昇降動作では、左フォーク11および右フォーク12が互いに同期して上下方向(車高方向)に移動する。第3操作レバー15が操作されると、両サイドシフト動作が実行される。両サイドシフト動作では、左フォーク11および右フォーク12が互いに同期して、左右方向に移動する。第4操作レバー16が操作されると、左フォークシフト動作が実行される。左フォークシフト動作では、左フォーク11および右フォーク12のうちの左フォーク11のみが左右方向に移動する。第5操作レバー17が操作されると、右フォークシフト動作が実行される。右フォークシフト動作では、左フォーク11および右フォーク12のうちの右フォーク12のみが左右方向に移動する。
【0014】
次に、鋼材搬送器1について説明する。
【0015】
鋼材搬送器1は、X軸方向に延びた本体20を備えている。本体20の下部には、一対の左フォーク収容部21および右フォーク収容部22が設けられている。左フォーク収容部21および右フォーク収容部22は、Z軸方向に沿った貫通孔を有している。左フォーク収容部21の貫通孔には、左フォーク11が挿入される。右フォーク収容部22の貫通孔には、右フォーク12が挿入される。鋼材搬送器1は、左フォーク収容部21および右フォーク収容部22に、左フォーク11および右フォーク12が挿入されることで、フォークリフト10により支持され、持ち上げられる。このように、鋼材搬送器1の本体20が、フォークリフト10により下方から支持されることで、クレーン等の重機により上方から吊り下げられる場合と比べて、本体20の姿勢は安定する。
【0016】
本体20には、左右一対の可動ビームである、左可動ビーム25および右可動ビーム26が支持されている。左可動ビーム25および右可動ビーム26は、本体20に対して、X軸方向に移動可能である。
図1の破線は、左可動ビーム25および右可動ビーム26が移動した状態を示す。左可動ビーム25および右可動ビーム26は、互いに遠ざかる方向および互いに近接する方向に連動して移動する。最も近接した状態では、左可動ビーム25および右可動ビーム26は、本体20に収納された状態となる。X軸方向へ移動させると、
図1の破線に示すように、左可動ビーム25および右可動ビーム26は、本体20から突出した状態となる。
【0017】
左可動ビーム25および右可動ビーム26には、鋼管100を両持ち支持するための左右一対の爪である、左爪23および右爪24が支持されている。左爪23および右爪24は、左可動ビーム25および右可動ビーム26から下方に突出した状態で、左可動ビーム25および右可動ビーム26に支持されている。
【0018】
左爪23および右爪24は、左可動ビーム25および右可動ビーム26のX軸方向への移動に伴い、本体20に対してX軸方向へ移動する。左爪23は、左可動ビーム25に連動して、X軸方向へ移動する。右爪24は、右可動ビーム26に連動して、X軸方向へ移動する。本実施形態では、X軸方向への左可動ビーム25の移動に伴い、左爪23と左可動ビーム25とが一体に移動する。また、X軸方向への右可動ビーム26の移動に伴い、右爪24と右可動ビーム26とが一体に移動する。
【0019】
また、左爪23および右爪24は、左可動ビーム25および右可動ビーム26の移動とは独立して、左可動ビーム25および右可動ビーム26に対して、X軸方向へ移動する。左爪23は、左可動ビーム25に対して、X軸方向へ移動する。右爪24は、右可動ビーム26に対して、X軸方向へ移動する。また、左爪23および右爪24は、互いに独立して、X軸方向へ移動する。例えば、右爪24が停止状態で、左爪23のみがX軸方向へ移動可能である。
【0020】
左可動ビーム25および右可動ビーム26を本体20から突出させた状態にできるため、左可動ビーム25に支持される左爪23と、右可動ビーム26に支持される右爪24との間の距離を、本体20の長さ以上に長くできる。このため、鋼管100の長さが本体20と略同じ長さであっても、左爪23および右爪24で、鋼管100を両持ち支持が可能である。
【0021】
また、左爪23と右爪24とは独立して移動可能であるため、鋼管100の中央と、本体20の中央とを一致させなくても、左爪23と右爪24との間の距離を、鋼管100の長さに合わせることができる。このため、鋼管100を両持ち支持する際の作業効率が向上する。
【0022】
左爪23は左爪用油圧モータによりX軸方向に移動する。右爪24は右爪用油圧モータによりX軸方向に移動する。これらの油圧モータに接続されている油圧管は、フォークリフト10に接続され、フォークリフト10から送出された作動油により、油圧モータは動作する。
【0023】
図3は、フォークリフト10と、鋼材搬送器1との接続態様を示すブロック図である。なお、
図3に示すフォークリフト10の構成は、鋼材搬送器1との接続に関係する構成のみを示す。
【0024】
フォークリフト10は、左フォーク用油圧回路161と、右フォーク用油圧回路171と備えている。
【0025】
鋼材搬送器1が使用されていないとき、左フォーク用油圧回路161は、油圧ホースを介して、左フォーク11を左右方向に移動させる油圧アクチュエータに接続されている。第4操作レバー16が操作されると、その油圧アクチュエータへ作動油が送出される。これにより、左フォークシフト動作が実行される。本実施形態では、左フォーク11用の油圧アクチュエータへ接続されている油圧ホースは、鋼材搬送器1の左爪用油圧モータ42に接続される油圧ホース42Aへ接続される。これにより、左フォーク用油圧回路161と、左爪用油圧モータ42とが、油圧ホース42Aを介して接続される。そして、第4操作レバー16が操作されると、左フォーク用油圧回路161は、油圧ホース42Aを介して、左爪用油圧モータ42へ作動油を送出する。そして、左爪用油圧モータ42が動作し、左爪23が移動する。
【0026】
また、鋼材搬送器1が使用されていないとき、右フォーク用油圧回路171は、油圧ホースを介して、右フォーク12を左右方向に移動させる油圧アクチュエータに接続されている。第5操作レバー17が操作されると、その油圧アクチュエータへ作動油が送出される。これにより、右フォークシフト動作が実行される。本実施形態では、右フォーク12用の油圧アクチュエータへ接続されている油圧ホースは、鋼材搬送器1の右爪用油圧モータ52に接続される油圧ホース52Aへ接続される。これにより、右フォーク用油圧回路171と、右爪用油圧モータ52とが、油圧ホース52Aを介して接続される。そして、第5操作レバー17が操作されると、右フォーク用油圧回路171は、油圧ホース52Aを介して、右爪用油圧モータ52へ作動油を送出する。そして、右爪用油圧モータ52が動作し、右爪24が移動する。
【0027】
つまり、本実施形態では、フォークリフト10の第4操作レバー16および第5操作レバー17は、左フォーク11および右フォーク12を動作させるための操作レバーではなく、左爪23および右爪24を移動させる操作レバーとして機能する。
【0028】
鋼材搬送器1は、左爪23および右爪24の他に、鋼管100を把持するハッカー250A、260Aを備えている。本実施形態では、ハッカー250A、260Aは、左可動ビーム25および右可動ビーム26のX軸方向における最外面に設けられている。ハッカー250A、260Aは、作業員の人手により、鋼管100に取り付けられる。一方、左爪23および右爪24は、左爪用油圧モータ42および右爪用油圧モータ52の動力によって、鋼管100に取り付けられる。このハッカー250A、260Aにより、左爪23および右爪24よりも迅速に鋼管100を把持できる。鋼管100は、状況に応じて、ハッカー250A、260Aと、左爪23および右爪24とのいずれかで把持され、搬送される。ハッカー250A、260Aは、鋼管100の管端を把持できる形状であれば特に限定されない。
【0029】
以下に、鋼材搬送器1についてより詳細に説明する。
【0030】
図4は、鋼材搬送器1の正面図である。
図5は、鋼材搬送器1の底面図である。
図6は、鋼材搬送器1の側面図である。
図4の破線は、移動可能な部材が移動した状態を示す。
図6の破線は、手前の部材で見えない奥側の部材を示す。
【0031】
前述したように、鋼材搬送器1は、本体20に対して、X軸方向に沿って伸縮する、左可動ビーム25および右可動ビーム26を備えている。左可動ビーム25および右可動ビーム26の構成は左右対称であるため、以下では、左可動ビーム25について説明する。右可動ビーム26については、左可動ビーム25と対応する部材の符号をカッコ書きで示し、その説明は省略する。
【0032】
本体20は、
図6に示すように、収納室としての内部空間20Aを有し、下方が開口した形状である。左可動ビーム25(26)は、その内部空間20Aに配置されている。左可動ビーム25(26)は、一対のI型鋼材251、252(261、262)を有している。I型鋼材251、252(261、262)は、X軸方向に延びている。また、I型鋼材251、252(261、262)は、Z軸方向に対向配置されている。I型鋼材251、252(261、262)には、外側端部に側壁部250(260)が設けられている。側壁部250(260)には、上記したハッカー250A、260Aが設けられている。なお、
図6では、図面の都合上、ハッカー250Aの図示は省略している。
【0033】
左可動ビーム25は、可動ビーム駆動装置により、X軸方向に沿って移動する。可動ビーム駆動装置は、歯車301、302と、チェーン受け303、304と、チェーン305、306とを含む。
【0034】
歯車301、302は、本体20の内部空間20Aの上部に設けられている。歯車301と歯車302とは、Z軸方向において対向している。また、図示しないが、歯車301、302はそれぞれ、X軸方向に沿って複数設けられている。I型鋼材251は、Y軸方向において、歯車301と対向配置される。また、I型鋼材252は、Y軸方向において、歯車302と対向配置される。
【0035】
チェーン受け303はI型鋼材251の上部に設けられ、チェーン受け304はI型鋼材252の上部に設けられている。複数の歯車301と、チェーン受け303との間には、チェーン305が架け渡されている。複数の歯車302と、チェーン受け304との間にも、チェーン306が架け渡されている。歯車301、302の回転がチェーン305、306に伝わることで、I型鋼材251およびI型鋼材252がX軸方向に移動する。これにより、左可動ビーム25は、X軸方向に移動する。
【0036】
左可動ビーム25は、本体20のX軸方向における略中央に設けられた手動操作部材30が操作されることで、移動する。手動操作部材30はハンドルである。このハンドルが回転すると、その回転運動が、複数の歯車301、302の一つに伝達される。例えば、ハンドルの回転とともに回転する軸部材の周方向に歯車を形成し、その歯車を、歯車301、302とする。これにより、ハンドルが回転すると、軸部材とともに歯車301、302が回転し、歯車301、302に架け渡されたチェーン305、306が回転する。そして、チェーン305、306を介して、I型鋼材251、252つまり、左可動ビーム25がX軸方向に移動する。
【0037】
なお、右可動ビーム26がX軸方向に沿って移動させる可動ビーム駆動装置も、左可動ビーム25と同じであるため、その説明は省略する。また、手動操作部材30により、右可動ビーム26も、左可動ビーム25と同様にX軸方向へ移動する。つまり、手動操作部材30は、左可動ビーム25および右可動ビーム26にX軸方向への変位力を付与する。なお、左可動ビーム25および右可動ビーム26を移動させる機構は、上記の構成に限定されない。
【0038】
本体20の下部には、I型鋼材251、252(261、262)の移動を補助するローラ201、202(203、204)が設けられている。ローラ201、202(203、204)は、Z軸方向に沿った回転軸を中心に回転する。I型鋼材251(261)は、ローラ201(203)により下方で支持される。I型鋼材252(262)は、ローラ202(204)により下方で支持される。ローラ201、202(203、204)は、I型鋼材251、252(261、262)がX軸方向に沿って移動する際に、回転し、I型鋼材251、252(261、262)の移動を補助する。
【0039】
このように本体20に支持された左可動ビーム25および右可動ビーム26は、手動操作部材30が回転操作されると、互いに遠ざかる方向および互いに近接する方向に同期して移動する。互いの間隔が最も小さいときには、左可動ビーム25および右可動ビーム26は、内部空間20Aに収容される。そして、移動に伴い、内部空間20Aからの突出量が変化する。また、移動時では、左可動ビーム25と、右可動ビーム26とは、同じ移動量で移動する。
【0040】
鋼材搬送器1は、左可動ビーム25および右可動ビーム26が本体20に対して移動しないように、位置を固定する固定機構を備えている。
図7は、固定機構を説明するための図である。
図4に示すように、本体20の両側面(Z軸方向に対向する面)には、X軸方向に沿って複数の貫通孔20Bが設けられている。また、I型鋼材251、252(261、262)それぞれには、貫通孔20Bと略同径の貫通孔25A、25Bが設けられている。貫通孔25A、25Bは、Y軸方向において、貫通孔20Bと同じ位置になるよう設けられている。そして、貫通孔20Bと、貫通孔25A、25BとがZ軸方向において重なる状態で、挿入ピン18を、貫通孔20Bおよび貫通孔25A、25Bに挿入する。これにより、I型鋼材251、252(261、262)は、本体20に対して移動が禁止され、位置が固定される。左可動ビーム25および右可動ビーム26の位置を固定することで、鋼管100を両持ちする左爪23と右爪24との距離が意図せず変動することを抑制できる。
【0041】
鋼材搬送器1は、左爪駆動機構40と、右爪駆動機構50とを備えている。左爪駆動機構40は、左爪23をX軸方向に移動させて、鋼管100を保持する動作および鋼管100の保持を解除する動作を行わせるため爪駆動装置である。右爪駆動機構50は、右爪24をX軸方向に移動させて、鋼管100を保持する動作および鋼管100の保持を解除する動作を行わせるため爪駆動装置である。
【0042】
左爪駆動機構40および右爪駆動機構50の構成は左右対称であるため、以下では、左爪駆動機構40について説明する。右爪駆動機構50については、左爪駆動機構40と対応する部材の符号をカッコ書きで示し、その説明は省略する。
【0043】
図8は、左爪駆動機構40を説明する図である。
図8は、本体20が取り外された状態の鋼材搬送器1を上方から視た図に相当する。以下、
図4~
図6に加え、
図8も参照しつつ説明する
【0044】
左爪駆動機構40(50)は、I型鋼材251、252(261、262)と一体的にX軸方向へ移動するように、I型鋼材251、252(261、262)に設けられている。左爪駆動機構40(50)は、X軸方向に延びる回転軸41(51)を備えている。回転軸41(51)は、I型鋼材251(261)とI型鋼材252(262)との間に設けられている。本体20の中央部側となる回転軸41(51)の端部には、油圧機構としての左爪用油圧モータ42(52)が設けられている。
図3で説明したように、左爪用油圧モータ42(52)に接続される油圧ホース(不図示)は、フォークリフト10に接続される。左爪用油圧モータ42(52)は、フォークリフト10で操作レバー16(17)が操作されることで駆動する。回転軸41(51)は、左爪用油圧モータ42(52)の動作により、回転軸を中心に回転する。
【0045】
回転軸41には、移動部43が設けられている。回転軸41には、周方向に沿ってねじ溝が設けられている。移動部43は、回転軸41とねじ締結するナット部431を有する。ナット部431は、回転軸41が軸方向を中心に回転すると、回転軸41の軸方向に移動する。つまり、移動部43は、回転軸41の回転に伴い、X軸方向に移動する。この移動部43には、左爪23が支持されている。そして、左爪23は、回転軸41が回転すると、移動部43とともにX軸方向に移動する。
【0046】
なお、図示しないが、回転軸51にも、回転軸51の回転に伴いX軸方向に移動する移動部が設けられている。この移動部には、右爪24が支持されている。そして、右爪24は、回転軸51が回転すると、移動部とともにX軸方向に移動する。
【0047】
【0048】
左爪23は爪本体230を備えている。爪本体230の上面には、上記の移動部43が設けられている。また、爪本体230の上部には、一対の第1ローラ241と、一対の第2ローラ242とが設けられている。一対の第1ローラ241と、一対の第2ローラ242とは、X軸方向において並んで配置されて、Z軸方向に沿った回転軸を中心に回転する。
【0049】
一対の第1ローラ241および一対の第2ローラ242はそれぞれコーン型であって、その傾斜面がI型鋼材251、252の下側フランジ251A、252Aに接触している。そして、移動部43のX軸方向への移動に伴い、一対の第1ローラ241および一対の第2ローラ242が、I型鋼材251、252の下側フランジ251A、252A上を転がり、左爪23はX軸方向に移動する。
【0050】
爪本体230は、Y軸方向に延びる第1本体部231と、X軸方向に延びる第2本体部232とを有している。第2本体部232は、第1本体部231の下部に設けられ、第1本体部231と第2本体部232とは、略L字状を形成している。左爪23は、第2本体部232を鋼管100の内部に挿入し、第2本体部232に鋼管100を引っ掛けることで、鋼管100を保持する。
【0051】
左爪23で鋼管100を確実に引っ掛けた場合、第2本体部232には鋼管100の内周面が接触し、第1本体部231には鋼管100の管端面が接触する。第1本体部231には、鋼管100の管端面が接触したことを検知する第1センサ231Aが設けられている。第1センサ231Aは、鋼管100の管端面で押圧されることで、検知信号を出力する。また、第2本体部232には、鋼管100の内周面が接触したことを検知する第2センサ232Aが設けられている。第2センサ232Aは、鋼管100の内周面で押圧されることで、検知信号を出力する。
【0052】
左爪23で鋼管100を確実に引っ掛けることができると、第1センサ231Aおよび第2センサ232Aそれぞれは検知信号を出力する。検知信号が出力されると、本体20の上部に設けられたランプ19A(
図4参照)が点灯するようになっている。これにより、鋼管100は左爪23により確実に引っ掛けられていると、周囲に視覚的に報知できる。このため、作業員は、確認作業のために鋼管100に近づく必要がない。
【0053】
右爪24の構成は、左爪23と同じである。そして、右爪24にも、右爪24で鋼管100を確実に引っ掛けた場合に、検知信号を出力するセンサが設けられている。検知信号が出力されると、本体20の上部に設けられたランプ19B(
図4参照)が点灯するようになっている。
【0054】
また、爪本体部230には撮像装置233が設けられている。撮像装置233は、少なくとも第2本体部232の上面が撮像範囲に含まれるように配置されている。例えば、撮像装置233で撮像した画像を、フォークリフト10の運転座席のディスプレイに映し出すことで、フォークリフト10の運転者は、運転座席にいながらにして、鋼管100が第2本体部232に引っ掛かっているかの確認を行うことができる。
【0055】
また、鋼材搬送器1は、フォークリフト10に保持された際に、安定した姿勢に維持させるための姿勢保持機構を備えている。
【0056】
図10は、姿勢保持機構を説明するための図である。鋼材搬送器1がフォークリフト10に支持されたときに、フォークリフト10と対向する本体20の面には、スペーサ61、62(
図5参照)が設けられている。スペーサ61、62は、Z軸方向に沿って、伸縮する構成である。
【0057】
スペーサ61は、大筒部611と、小筒部612と、ピン613とを備えている。大筒部611は本体20に設けられている。小筒部612は、大筒部611に挿入され、大筒部611に対して軸方向(Z軸方向)に摺動する。これにより、スペーサ61は、Z軸方向に伸縮する。また、大筒部611と小筒部612とには、略同径の貫通孔が設けられている。その貫通孔が一方向に重なった状態で、ピン613を貫通孔に挿入することで、小筒部612の位置を固定できる。また、この貫通孔は、Z軸方向に複数形成されている。大筒部611と小筒部612とのZ軸方向の相対位置を調整して、貫通孔を重ね、その貫通孔にピン613を差し込むことで、スペーサ61の全体の長さを、例えば3段階に変更できる。なお、スペーサ62も、スペーサ61と同じ構成である。
【0058】
また、鋼材搬送器1がフォークリフト10に保持されたときに、フォークリフト10と対向する本体20の面には、シャックル631が設けられている。そのシャックル631にはワイヤ632の一端が装着されている。ワイヤ632の他端は、フォークリフト10に固定可能となっている。
【0059】
左フォーク収容部21および右フォーク収容部22に、左フォーク11および右フォーク12が挿入されて、鋼材搬送器1がフォークリフト10に支持されたとき、スペーサ61、62をフォークリフト10側へ伸ばして、フォークリフト10に当接させる。また、ワイヤ632を撓みがないよう引っ張った状態で、ワイヤ632の他端を、フォークリフト10に固定する。このとき、ワイヤ632の他端は、Y軸方向において、本体20よりも上方の位置で固定されることが好ましい。
【0060】
スペーサ61、62により、本体20がフォークリフト10側へ傾くことが防止される。また、ワイヤ632により、本体20がフォークリフト10と反対側へ傾くことが防止される。これにより、鋼材搬送器1がフォークリフト10に支持される際、鋼材搬送器1を安定した姿勢に維持させることができ、鋼材搬送器1が左フォーク11および右フォーク12から落下することを防止できる。このため、鋼材搬送器1による鋼管100の搬送時における安全性を向上させることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態の鋼材搬送器1は、フォークリフト10に支持して使用され、鋼管100を両持ち支持して搬送する。鋼材搬送器1をフォークリフト10で支持することで、クレーン等で吊り下げて使用する場合と比べて、鋼材搬送器1の姿勢は安定する。このため、鋼材搬送器1は、安定した姿勢で鋼管100を搬送できる。
【0062】
また、鋼材搬送器1の左爪23および右爪24は、互いに独立して動くため、左爪23と右爪24との間の距離を、鋼管100の長さに合わせて調整しやすくなり、搬送作業時の作業効率は向上する。また、フォークリフト10の左フォーク11および右フォーク12を左右に移動させるための操作レバー16、17に、左爪23および右爪24の移動機能を割り当てることで、作業者は、フォークリフト10の運転座席にいながら、鋼管100の搬送作業を直感的に行える。
【符号の説明】
【0063】
1 鋼材搬送器
10 フォークリフト
11 左フォーク
12 右フォーク
20 本体
21 左フォーク収容部
22 右フォーク収容部
23 左爪
24 右爪
25 左可動ビーム
26 右可動ビーム
42 左爪用油圧モータ
52 右爪用油圧モータ
100 鋼管