(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】マーカー用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/16 20140101AFI20221115BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C09D11/16
B43K8/02 110
(21)【出願番号】P 2019033044
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】岩元 淳
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/053005(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1489144(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0106131(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102702861(CN,A)
【文献】国際公開第2013/061814(WO,A1)
【文献】特開2015-124345(JP,A)
【文献】特開2014-198757(JP,A)
【文献】特表2017-524762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00 - 13/00
B43K 1/00 - 1/12
B43K 5/00 - 8/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを0.5~20質量%含むマーカー用インク組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1、R
2、R
5、およびR
6はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数6~15のアルキル基を表し、R
5およびR
6は互いに連結して脂肪族5~8員環を形成してもよく、R
3およびR
4はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数6~15のアルキル基を表し、R
3およびR
4は互いに連結して芳香族6員環を形成してもよく、
Xは下記一般式(2)で表される置換基を表し
【化2】
(一般式(2)中、R
7は炭素原子数6~15のアルキル基を表し、R
8は炭素原子数12~18のアルキル基を表し、mは12~18の整数を表す)、
Yは下記一般式(3)で表される置換基又は水酸基を表し
【化3】
(一般式(3)中、R
7は炭素原子数6~15のアルキル基を表し、mは12~18の整数を表す)、
M
1は水素原子または下記一般式(4)で表される置換基を表し、
【化4】
(一般式(4)中、R
7は炭素原子数6~15のアルキル基を表し、nは12~18の整数を表す)、
M
2は水素原子または下記一般式(5)で表される置換基を表す
【化5】
(一般式(5)中、R
7は炭素原子数6~15のアルキル基を表し、nは12~18の整数を表す)。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーに加えて、さらにトリメチルグリシン、カルニチン類、ペンタエリスリトール、糖アルコール、デキストリンおよび還元水飴からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載のマーカー用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーカー用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被筆記物に対する描線の固着性を付与する目的で、筆記具用水性インクに樹脂を配合することが行われている。このようなインクを充填した筆記具は、キャップを外した状態で放置すると、インク吐出機構表面にインク中の樹脂が乾燥・固化してインク吐出性が低下しやすい。特にマーカーはボールペンと比較してインク吐出機構の面積が大きく、その傾向が顕著である。このような筆記具におけるインク吐出性の低下は、特に樹脂の種類または配合量による影響を受けやすい。
【0003】
インク吐出性の低下は、水分の揮発により樹脂が凝集・析出して、これが筆記部のインク流出を阻害することに起因する。これを抑制する方法として、凝集を生じさせない、または緩い凝集を生じさせることにより「蓋」のような状態をつくる方法があるが、緩い凝集であっても、嵩高い凝集構造を形成していると、インクが高粘度のダマを含んだような状態になるため、インク吐出性は維持できても、描線品位が低下するなどの課題がある。
【0004】
インク吐出性を向上させた筆記具用インク組成物としては、着色剤と、水と、ハイパーブランチポリマーとを含有するボールペン用水性インク組成物が報告されている(特許文献1)。前記ハイパーブランチポリマーは多分岐高分子で、非晶質および低粘度でかつ溶媒に可溶である。特許文献1には、前記ハイパーブランチポリマーを水性インク中に添加することで、従来の線状高分子とは異なり、インクの粘度を上昇させることがなく、キャップオフ性能が阻害されず、筆記時のインク追従性も良好でカスレのない筆跡が形成できることが開示されている。
【0005】
特許文献2でも、着色剤と、溶剤と、新モース硬度4以上の無機粒子と、繰り返し分子構造中にエステル基を有し、末端に水酸基および/またはカルボキシル基を有する樹枝状高分子とを少なくとも含有するボールペン用インク組成物が開示されている。前記樹枝状高分子は、その末端の水酸基およびカルボキシル基、ならびに繰り返し分子構造中のエステル基で、インク中の無機粒子表面、または、ボールペンチップの筆記部材であるボールやボールペンチップの内壁金属面に水素結合により吸着する。特許文献2では、樹枝状高分子が平面状に貼り付いたような吸着構造を形成しているので、接触するときに互いに絡み合うことがなく、無機粒子がボールとボールホルダー内壁との間で挟まれ易く、逃げ易いものと推察されており、結果的に金属表面を傷つけることなく、無機粒子が有するころやそりの機能が充分に発揮されて、円滑なボールの回転が維持され、美しい連続的な筆記が維持できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-124345号公報
【文献】特開2014-198757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に開示されたインク組成物は、いずれもボールペン用のインクであり、マーカー用のインクとして用いた場合のインク吐出性は明らかでない。前記のとおり、マーカーはボールペンと比較してインク吐出機構の面積が大きく、キャップオフの状態が続くと、インク吐出機構表面のインクが乾燥・固化して筆記不良が発生しやすい。キャップをすれば固化物が弛緩して再び正常な筆記をすることが可能となるが、固化の程度によっては筆記性能が充分に復帰しないことがある。
【0008】
本発明は、前記した従来技術における課題を解決するものであり、特定のハイパーブランチポリマーを添加することによって、描線固着性を低下させることなく、筆記性能の復帰性、すなわち再筆記性を示すマーカー用インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマーカー用インク組成物は、下記一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを0.5~20質量%含むことを特徴とする。
【化1】
【0010】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
5およびR
6はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数6~15のアルキル基を表し、R
5およびR
6は互いに連結して脂肪族5~8員環を形成してもよく、R
3およびR
4はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数6~15のアルキル基を表し、R
3およびR
4は互いに連結して芳香族6員環を形成してもよく、Xは下記一般式(2)で表される置換基を表し、
【化2】
Yは下記一般式(3)で表される置換基または水酸基を表し、
【化3】
M
1は水素原子または下記一般式(4)で表される置換基を表し、
【化4】
M
2は水素原子または下記一般式(5)で表される置換基を表す。
【化5】
【0011】
ただし、前記一般式(2)~(5)中、R7は炭素原子数6~15のアルキル基を表し、R8は炭素原子数12~18のアルキル基を表し、mおよびnはそれぞれ12~18の整数を表す。
本発明のマーカー用インク組成物は、前記一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーに加えて、さらにトリメチルグリシン、カルニチン類、ペンタエリスリトール、糖アルコール、デキストリンおよび還元水飴からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定のハイパーブランチポリマーをマーカー用インクに配合することで、固着性の高い描線が得られ、かつ、キャップオフの状態が続いてインク吐出機構表面のインクが乾燥・固化してもキャップをすれば固化物が弛緩して再筆記が可能となるインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のマーカー用インク組成物(以下単に「インク組成物」ともいう。)は、一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを0.5~20質量%含むことを特徴とする。
【化6】
【0014】
一般式(1)中、R1、R2、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数6~15のアルキル基を表し、R5およびR6は互いに連結して脂肪族5~8員環を形成してもよく、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数6~15のアルキル基を表し、R3およびR4は互いに連結して芳香族6員環を形成してもよい。
【0015】
炭素原子数6~15のアルキル基には、例えば、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、およびn-ドデシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素原子数10~15のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素原子数12のアルキル基などがより好ましい。
【0016】
脂肪族5~8員環は、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、およびシクロオクタンなどである。
芳香族6員環は、具体的には、ベンゼンである。
Xは、一般式(2)で表される置換基を表す。
【化7】
【0017】
Yは、一般式(3)で表される置換基または水酸基を表す。
【化8】
【0018】
一般式(2)および(3)中、mは12~18の整数、好ましくは17を表す。
一般式(1)中、M
1は水素原子または一般式(4)で表される置換基を表す。
【化9】
M
2は水素原子または下記一般式(5)で表される置換基を表す。
【化10】
【0019】
一般式(4)および(5)中、nは12~18の整数、好ましくは17を表す。
一般式(2)~(5)中、R7は炭素原子数6~15のアルキル基を表す。炭素原子数6~15のアルキル基の好ましい形態は前記のとおりである。R8は炭素原子数12~18のアルキル基を表す。これらのうち、炭素原子数17のアルキル基などがより好ましい。
なお、一般式(1)中、波線は単結合または二重結合を表し、一般式(2)~(5)中、*は結合手の位置を表す。
【0020】
前記一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、具体的には、下記構造式で表される化合物(1)~(5)であることが好ましい。
【化11】
【化12】
【0021】
前記一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、一般的な合成方法、すなわち、1分子中に2種類の置換基を合計3個以上持つABx型分子を重縮合する方法や、1分子中に重合開始能を有する基と重合性基とを有する分子、すなわち、いわゆるイニマー(inimer)を重縮合する方法によって製造してもよいし、例えば、HybraneS1200、P/S80 1200、DEO750 8500、H S80 1700、およびZW 6403(いずれも登録商標、DSM社製)などの市販品を用いてもよい。
【0022】
本発明のマーカー用インク組成物は、インク組成物全量に対して、一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを0.5~20質量%、好ましくは1~10質量%含有する。一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーの含有量が前記範囲内であるとき、得られるインク組成物は、固着性に優れた描線を与えることができる。また、キャップオフの状態が続いてインク吐出機構表面のインクが乾燥・固化してもキャップをすれば固化物が弛緩して筆記性能が復帰する性質、すなわち、優れた再筆記性を有する。一方、一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーの含有量が20質量%を超えると、インク組成物の粘度が高くなり、カスレなどが生じることがある。
【0023】
一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、その特異的な分子構造により、水分が揮発しても強固な結晶構造を形成することなく、乾燥・固化しても緩やかな固化物を生じる。再び水分が供給される環境におかれる、すなわちキャップをすることにより固化物が弛緩して再筆記が可能となる。
【0024】
前記マーカー用インク組成物は、一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーに加えて、さらにトリメチルグリシン(グリシンベタイン)、カルニチン類、ペンタエリスリトール、糖アルコール、デキストリンおよび還元水飴からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。これらの成分はインク組成物中で乾燥防止剤の働きをする。
これらの成分、すなわち乾燥防止剤の含有量は、マーカー用インク組成物全量中、通常0.1~20質量%、好ましくは1~10質量%である。
また、一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーと乾燥防止剤の含有比(質量比)は、概ね1:10~10:1である。
【0025】
前記マーカー用インク組成物は、前記した一般式(1)で表されるハイパーブランチポリマーおよび乾燥防止剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、さらに水、顔料、顔料分散剤、染料、pH調整剤、界面活性剤、溶剤および防腐剤などを含んでいてもよい。
水には、水道水、蒸留水、イオン交換水および純水などが用いられる。
顔料には、従来から水性マーカー用に用いられる顔料の中から任意のものを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、グラファイトおよび二酸化チタン顔料などの無機顔科;タルク、シリカ、アルミナ、マイカおよびアルミナシリケートなどの体質顔科;アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン顔料、キナクドリン顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料および各種レーキ顔料などの有機顔料;蛍光顔料、パール顔料、ならびに金色および銀色などのメタリック顔料などが挙げられる。これらの顔料は、単独で、または二種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
顔料分散剤には、例えば、スチレンアクリル酸共重合体およびスチレンマレイン酸共重合体などの樹脂系化合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0027】
染料には、従来から水性マーカー用に用いられる直接染料、酸性染料、食用染料および塩基性染料のいずれも用いることができる
これらの染料は、単独で、または二種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
pH調整剤には、pH調整の必要性に応じて、トリエタノールアミンおよびアミノメチルプロパノールなど、公知のものが用いられる。
界面活性剤は、ノニオン系、カチオン系およびアニオン系のいずれの界面活性剤も用いることができる。
溶剤には、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどの水溶性の高い多価アルコールまたはグリコールエーテルが用いられる。
防腐剤には、カルボン酸系、ハロゲン系、イミダゾール系、チアゾール系、ピリジン系、トリアジン系およびイミド系などの化合物が用いられる。
【0029】
水の含有量は、インク組成物全量に対して、通常20~90質量%である。また、顔料、顔料分散剤、染料、pH調整剤、界面活性剤、溶剤および防腐剤の含有量は、インク組成物全量に対して、それぞれ通常0.001~40質量%の間で適宜調整する。
【0030】
本発明のマーカー用インク組成物は、従来公知の方法で調製することができる。例えば、水にハイパーブランチポリマーと前記した任意の各成分を所定量配合し、ホモミキサーまたはディスパーなどの攪拌機により攪拌混合することによって調製することができる。さらに、必要に応じて、ろ過や遠心分離によってマーカー用インク組成物中の粗大粒子などを除去してもよい。
【0031】
前記のとおり、本発明のマーカー用インク組成物は、特定のハイパーブランチポリマーを含有することで、固着性に優れた描線性能を有し、しかも再筆記性にも優れる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により制限されるものではない。
〔実施例1〕
[マーカー用インク組成物の調製]
カーボンブラック(MCF88;三菱ケミカル社製)10質量%および顔料分散剤(Joncryl 60;BASFジャパン社製)10質量%をイオン交換水71質量%に添加した水分散体に、化合物(1)5質量%、pH調整剤(トリエタノールアミン)0.5質量%、界面活性剤(レオコールTD-50;ライオン社製)0.2質量%、防腐剤(安息香酸ナトリウム)0.3質量%および乾燥防止剤(グリシンベタイン)3質量%を添加して室温で攪拌することにより、マーカー用インク組成物を調製した。なお、カーボンブラック、顔料分散剤、イオン交換水、ハイパーブランチポリマー、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、および乾燥防止剤の合計を100質量%とする。
【化13】
【0033】
[マーカー用インク組成物の評価]
(1)固着性
三菱鉛筆社製PM-120T(商品名「プロッキー」、ペン芯:極細(POM樹脂芯)+細字丸芯(PET繊維芯))のペン体に、マーカー用インク組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下で、直径約15mmの螺旋をPETフィルム上に8回描き、乾燥後、指先の指紋で10回同じ方向に擦り、擦過後の描線について下記評価基準にて目視で評価した(n=10)。なお、極細および細のペン芯両方で筆記し、悪い評価のものを記載した。
評価基準:
A:擦過前と同じ(全く消えていない)
B:描線の25%未満が消去
C:描線の25%以上が消去
【0034】
(2)再筆記性
三菱鉛筆社製PM-120Tのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、直径約15mmの螺旋をPETフィルム上に8回描いた。これを気温25℃、湿度65%の環境下にキャップを外して横向きで放置し、その後、キャップをして前記同一の条件で24時間放置後、再び前記同様に筆記して、描線の様子を比較して、下記評価基準にて目視で評価した(n=10)。なお、極細および細字のペン芯両方で筆記し、悪い評価のものを記載した。
評価基準:
A:試験前の描線と同じ
B:試験前と比較してやや薄くなっている
C:試験前と比較して著しく薄くなっている
マーカー用インク組成物の調製条件および評価の結果を表1に示す。
【0035】
〔実施例2〕
実施例1において、乾燥防止剤の種類をグリシンベタインからカルニチンに変更したこと、化合物(1)の量を5質量%から1質量%に変更したこと、イオン交換水の量を71質量%から75質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0036】
〔実施例3〕
実施例1において、乾燥防止剤の種類をグリシンベタインからペンタエリスリトールに変更したこと、化合物(1)の量を5質量%から10質量%に変更したこと、イオン交換水の量を71質量%から66質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0037】
〔実施例4〕
実施例1において、乾燥防止剤を使用しなかったこと、イオン交換水の量を71質量%から74質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0038】
〔実施例5〕
実施例1において、乾燥防止剤の種類をグリシンベタインからキシリトールに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0039】
〔実施例6〕
実施例1において、乾燥防止剤の種類をグリシンベタインからデキストリン(MALTRIN M100;三晶社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0040】
〔実施例7〕
実施例1において、乾燥防止剤の種類をグリシンベタインから還元澱粉(H-PDX;松谷化学工業社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0041】
〔実施例8〕
実施例1において、ハイパーブランチポリマーの種類を化合物(1)から化合物(2)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
【化14】
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0042】
〔実施例9〕
実施例8において、ハイパーブランチポリマーの種類を化合物(2)から化合物(5)に変更したこと以外は、実施例8と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
【化15】
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0043】
〔実施例10〕
実施例8において、ハイパーブランチポリマーの種類を化合物(2)から化合物(3)に変更したこと以外は、実施例8と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
【化16】
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。
【0044】
実施例1~3および5~10とは異なり、乾燥防止剤を使用しなかった実施例4では、実施例1~3および5~10に比べて復帰性がやや劣っていた。これはインク組成物中の水分が少し揮発したためと考えられる。
【0045】
【0046】
〔比較例1〕
実施例1において、ハイパーブランチポリマーを使用しなかったこと、イオン交換水の量を71質量%から76質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。比較例1では、固着性が劣る結果を示した。この結果から、比較例1では、ハイパーブランチポリマーおよび固着樹脂のいずれも使用しなかったため、固着性が充分でなかったことがわかる。
【0047】
〔比較例2〕
実施例1において、ハイパーブランチポリマー5質量%に代えて固着樹脂(Joncryl 7100;BASFジャパン社製)10質量%を使用したこと、イオン交換水の量を71質量%から66質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。比較例2では、固着性は優れていたが、再筆記性では劣っていた。この結果から、ハイパーブランチポリマーは、従来の固着樹脂と同等の固着性を有しながら、再筆記性に優れていることがわかった。
【0048】
〔比較例3〕
実施例1において、ハイパーブランチポリマー5質量%に代えて固着樹脂(HUX-564;ADEKA社製)5質量%を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてマーカー用インク組成物を調製した。
実施例1と同様にマーカー用インク組成物を評価した。
結果を表1に示す。比較例3でも比較例2と同様に、固着性は優れていたが、再筆記性では劣っていた。この結果から、ハイパーブランチポリマーは、従来の固着樹脂と同等の固着性を有しながら、再筆記性に優れていることがわかった。
【0049】