(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】DHCPサーバ、ネットワークシステム、固定IPアドレスの割り当て方法
(51)【国際特許分類】
H04L 61/5014 20220101AFI20221115BHJP
【FI】
H04L61/5014
(21)【出願番号】P 2019063370
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2018225598
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 幸士
(72)【発明者】
【氏名】松永 淳
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-260828(JP,A)
【文献】特開2007-132009(JP,A)
【文献】特開2014-230046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0163118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットを中継可能なネットワーク機器を含む複数の機器を含むネットワークの、前記各々の機器の接続場所に対して定義されたIPアドレスを記憶する記憶部を有し、
第1のネットワーク機器を識別する第1の機器識別情報を含むLLDPフレームを受信し、前記第1のネットワーク機器の前記ネットワーク内の接続場所を判定し、前記判定された接続場所に定義されたIPアドレスと前記受信したLLDPフレームに含まれる第1の機器識別情報との対応関係を、IPアドレス割り当て規則に追加するように構成された
DHCPサーバ。
【請求項2】
請求項
1に記載のDHCPサーバであって、
前記第1のネットワーク機器の前記LLDPフレーム送信用のポートがtrustedportである
DHCPサーバ。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のDHCPサーバであって、
前記第1のネットワーク機器からSNMPにより、第2のネットワーク機器の第2の機器識別情報とインタフェース番号の情報を含むLLDP-MIBを取得し、SNMPエージェントのIPアドレスと前記LLDP-MIBに含まれるインタフェース番号の情報をもとに、前記第2のネットワーク機器の前記ネットワーク内の接続場所を判定し、前記判定された前記接続場所に定義されたIPアドレスと前記受信したLLDPフレームに含まれる第2の機器識別情報との対応関係を、前記IPアドレス割り当て規則に追加するように構成された
DHCPサーバ。
【請求項4】
パケットを中継可能なネットワーク機器を含む複数の機器を含むネットワークと、
前記ネットワークの、前記各々の機器の前記ネットワーク内の接続場所に対して定義されたIPアドレスを記憶する記憶部を有し、
第1のネットワーク機器を識別する第1の機器識別情報を含むLLDPフレームを受信し、前記第1のネットワーク機器の前記ネットワーク内の接続場所を判定し、前記判定された接続場所に定義されたIPアドレスと前記受信したLLDPフレームに含まれる第1の機器識別情報との対応関係を、IPアドレス割り当て規則に追加するように構成されたDHCPサーバと
を含むネットワークシステム。
【請求項5】
DHCPサーバが、パケットを中継可能なネットワーク機器を含む複数の機器を含むネットワークの、前記各々の機器の前記ネットワーク内の接続場所に対して定義されたIPアドレスを記憶し、
第1のネットワーク機器を識別する第1の機器識別情報を含むLLDPフレームを受信し、前記第1のネットワーク機器の前記ネットワーク内の接続場所を判定し、前記判定された接続場所に定義されたIPアドレスと前記受信したLLDPフレームに含まれる第1の機器識別情報との対応関係を、IPアドレス割り当て規則に追加する
固定IPアドレスの割り当て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DHCPサーバ、ネットワークシステム、固定IPアドレスの割り当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークの機器にIPアドレスを自動的に割り当てるプロトコルとしてDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)がある。DHCPでは、DHCPクライアントからの要求に対して、DHCPサーバが管理するアドレス範囲から任意のIPアドレスが選択されて割り当てられる。
【0003】
一方、ネットワーク上の各機器にその機器の場所に紐付けて固定のIPアドレスを割り当てたい状況がある。例えば、故障した機器の交換前後で同じIPアドレスを割り当てたい場合がある。機器のMACアドレスとIPアドレスとの対応をDHCPサーバで管理する一般的な固定IPアドレスの割り当て方式では、機器の故障などによる機器の交換に伴って、DHCPサーバに管理されているMACアドレスとIPアドレスとの対応を手作業などにより変更する必要があり、そのための手間がかかる。そこで、DHCPリレーエージェント機能のoption82を用いる方法がある。
【0004】
DHCPリレーエージェント機能のoption82では、機器を特定する情報であるリモートIDとDHCPクライアントが接続されているポート番号を示すサーキットIDとを管理し、DHCPクライアントからDHCPパケットに上記のリモートIDおよびサーキットIDを含むoption82を付加する。ここでリモートIDには、例えばMACアドレスなどが用いられる。
【0005】
option82が付加されたDHCPパケットを受け取ったDHCPサーバは、そのDHCPパケットに付加されたoption82のリモートIDとサーキットIDをキーとして、DHCPサーバに管理されているリモートIDとサーキットIDとIPアドレスとの対応表から該当するIPアドレスを選択し、このIPアドレスを含むDHCPパケットを応答する。このようにして、DHCPクライアント機器は、DHCPサーバから固定のIPアドレスの割り当てを受けることができる。
【0006】
特許文献1には、サーバなどのネットワーク機器のMACアドレスなどの識別情報をLLDPフレームを用いてラック管理装置に送信し、ラック管理装置は受信したLLDPフレームに含まれる識別情報と以前に受信した識別情報とを比較して新たな識別情報であることを判定すると、その新たな識別情報を含むLLDPフレームをラック中央管理装置に送信する。ラック中央管理装置は、LLDPフレームを受信すると、そのLLDPフレームに含まれる識別情報を使って、ネットワーク機器に割り当てられたIPアドレスをDHCPサーバから取得し、識別情報とIPアドレスとを対応付けた構成情報をデータベースに格納する。これによって、サーバの構成情報の変化に対応した適切なサーバ管理を可能としたシステムが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、DHCPリレーエージェント機能においては、untrusted portから入力されて他のポートから出力されるパケットに対してのみ上記のoption82を付加できるとされている。
【0009】
その一方で、一般的に、スイッチのDHCPサーバへの送信用のポートや、スイッチ同士の送受信に使用するポートはtrusted portに設定されることが慣習的に行われる。trusted portに設定されると、そのポートを用いて送信されるDHCPパケットに対するDHCPリレーエージェント機能が無効となり、固定のIPアドレスを割り当てられない状況が発生する。
【0010】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、DHCPサーバに至る通信系路上のポートがすべてtrusted portに設定されるネットワーク機器に固定のIPアドレスを割り当てることのできるDHCPサーバ、ネットワークシステム、固定IPアドレスの割り当て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係るDHCPサーバは、パケットを中継可能なネットワーク機器を含む複数の機器を含むネットワークの、前記各々の機器の接続場所に対して定義されたIPアドレスを記憶する記憶部を有する。このDHCPサーバは、第1のネットワーク機器を識別する第1の機器識別情報を含むLLDPフレームを受信し、前記第1のネットワーク機器の前記ネットワーク内の接続場所を判定し、前記判定された接続場所に定義されたIPアドレスと前記受信したLLDPフレームに含まれる第1の機器識別情報との対応関係を、IPアドレス割り当て規則に追加するように構成されたものである。
【0012】
本発明に係るDHCPサーバによれば、DHCPサーバに直接接続されたネットワーク機器に対して、機器の交換後も固定のIPアドレスを割り当てることができる。
【0013】
また、本発明に係るDHCPサーバは、前記第1のネットワーク機器からSNMPにより、第2のネットワーク機器の第2の機器識別情報とインタフェース番号の情報を含むLLDP-MIBを取得し、SNMPエージェントのIPアドレスと前記LLDP-MIBに含まれるインタフェース番号の情報をもとに、前記第2のネットワーク機器の前記ネットワーク内の接続場所を判定し、前記判定された前記接続場所に定義されたIPアドレスと前記受信したLLDPフレームに含まれる第2の機器識別情報との対応関係を、前記IPアドレス割り当て規則に追加するように構成されたものである。
【0014】
これにより、第1のネットワーク機器とtrusted portを使って相互に送受信するように接続された第2のネットワーク機器に対して、機器交換後も固定のIPアドレスを割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る実施形態のネットワークシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図1のDHCPサーバの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】DHCPクライアントに対する固定IPアドレスの割り当て動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】MAC-IP対応表へのレコードを追加する動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】DHCPクライアントに固定IPアドレスを割り当てる動作の初期状態を示すシーケンス図である。
【
図6】第1のスイッチに固定IPアドレスを割り当てる動作のシーケンス図である。
【
図7】第1のスイッチに接続された第1のエンドデバイスに固定IPアドレスを割り当てる動作のシーケンス図である。
【
図8】第2のスイッチに固定IPアドレスを割り当てる動作のシーケンス図である。
【
図9】第2のスイッチに接続された第2のエンドデバイスに固定IPアドレスを割り当てる動作のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0017】
(ネットワークシステムの構成)
図1は本発明に係る実施形態のネットワークシステム100の構成を示す図である。
このネットワークシステム100は、DHCPサーバ10と、複数のDHCPクライアント21、22、31、32を有する。複数のDHCPクライアントとしては、第1のスイッチ21、第2のスイッチ22、第1のエンドデバイス31、第2のエンドデバイス32が存在する。
【0018】
第1のスイッチ21は、DHCPサーバ10への送信に用いられる第1のtrusted port21aと、第2のスイッチ22との送受信に用いられる第2のtrusted port21bと、第1のエンドデバイス31との送信に用いられるuntrusted port21cを有する。
第2のスイッチ22は、第1のスイッチ21との送受信に用いられる第3のtrusted port22aと、第2のエンドデバイス32との送受信に用いられるuntrusted port22bとを有する。
【0019】
DHCPサーバ10は、DHCPサーバとしての機能のほか、SNMPマネージャ機能、LLDPフレーム受信機能を有する。DHCPサーバ10の詳細については後述する。
【0020】
第1のスイッチ21、第2のスイッチ22は、イーサネットフレーム(パケット)を中継するネットワーク機器である。本実施形態において第1のスイッチ21、第2のスイッチ22はマネージドスイッチである。本発明においてネットワーク機器はルータであってもよい。第1のスイッチ21、第2のスイッチ22は、DHCPリレーエージェント機能、SNMP(Simple Network Management Protocol)エージェント機能、LLDP(Link Layer Discovery Protocol)フレーム送受信機能を有する。
【0021】
第1のエンドデバイス31、第2のエンドデバイス32は、基本的にDHCPクライアントとして動作する機器である。鉄道ネットワークを例にすると、エンドデバイスは、例えば、ドア制御装置、空調装置、行き先表示器、マスコンなどに該当する。なお、本発明は、鉄道ネットワークに限定されるものではない。
【0022】
(DHCPサーバ10の構成)
図2はDHCPサーバ10の機能的な構成を示すブロック図である。
同図に示すように、DHCPサーバ10は、DHCPサーバブロック11と、ネットワーク管理ブロック12と、TCP/IPプロトコルスタック13と、SNMPマネージャ14と、Ethernetドライバ15とを有する。
【0023】
DHCPサーバブロック11は、DHCPリレーエージェント機能に対応するブロックであり、スコープ111と、option82対応表112と、MAC-IP対応表113と、割り当て状況管理表114と、DHCPサーバタスク115とを有する。
【0024】
スコープ111は、DHCPサーバ10が割り当てるIPアドレスの範囲を定義する。スコープ111は、先頭IPアドレス、割り当てアドレス数、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、割り当て時間(秒単位)などで構成される。
【0025】
option82対応表112は、リモートIDとサーキットIDとの組み合わせとIPアドレスとの対応表である。リモートID、サーキットID、IPアドレスのセットをoption82対応表112のレコードと呼ぶ。リモートIDは、機器を特定する情報であり、例えばIPアドレスやMACアドレスなど、ネットワーク内でユニークな情報である。サーキットIDは、ポート番号などの情報である。
【0026】
MAC-IP対応表113は、Chassis IDとIPアドレスとの対応表である。Chassis IDは定期的に自機器の情報を隣接機器との間で送受するプロトコルであるLLDP(Link Layer Discovery Protocol)において機器を識別する情報であり、例えばMACアドレスなどで表現される。
【0027】
割り当て状況管理表114は、IPアドレスの割り当て状況を管理する表である。
【0028】
DHCPサーバタスク115は、Ethernetドライバ15およびTCP/IPプロトコルスタック13を通じてDHCPクライアントから送信されるDHCP DiscoverやDHCP RequestなどのDHCPパケットに対して、上記のスコープ111、option82対応表112、MAC-IP対応表113および割り当て状況管理表114を参照してDHCPクライアントに割り当てるIPアドレスを決定し、DHCPクライアントにDHCP OfferやDHCP Ackを応答する。
【0029】
ネットワーク管理ブロック12は、ネットワーク中の機器接続構成を管理するブロックであり、TNDIR121と、ネットワーク管理タスク122と、MIB監視タスク123と、LLDP受信タスク124とを有する。
【0030】
TNDIR121は、ネットワーク中の各々の機器の接続場所と、その接続場所の機器に対して定義された固有のIPアドレスとの関係を表すデータ構造である。
【0031】
MIB監視タスク123は、SNMPマネージャ14を通じて周期的に隣接機器からLLDP-MIBを取得し、ネットワーク管理タスク122にわたすタスクである。
【0032】
LLDP受信タスク124は、周期的に隣接機器からLLDPフレームを受信し、ネットワーク管理タスク122にわたすタスクである。
【0033】
ネットワーク管理タスク122は、LLDP受信タスク124によるLLDPフレームの受信に応じてLLDPフレーム送信元の機器(第1のスイッチ21)のTNDIR121上の接続場所を判定し、判定された接続場所に定義されたIPアドレスと、受信したLLDPフレームに含まれるLLDPフレーム送信元の機器のChassis ID(MACアドレス)とを対応付けたレコードをMAC-IP対応表113に追加する。また、ネットワーク管理タスク122は、MIB監視タスク123によって隣接機器(第1のスイッチ21)により取得されたLLDP-MIBとSNMPエージェントのIPアドレスをもとに、第2のスイッチ22のTNDIR121上の接続場所を判定し、判定された接続場所に定義されたIPアドレスと取得したLLDP-MIBに含まれる第2のスイッチ22のChassis ID(MACアドレス)とを対応付けたレコードをMAC-IP対応表113に追加する。さらにネットワーク管理タスク122は、LLDP-MIBに基づいてMAC-IP対応表113から不要なレコードの削除も行う。
【0034】
(DHCPクライアントに対する固定IPアドレスの割り当て動作)
図3はDHCPクライアントに対する固定IPアドレスの割り当て動作の流れを示すフローチャートである。
図4はMAC-IP対応表にレコードを追加する動作の流れを示すフローチャートである。
図5から
図9はDHCPクライアントに固定IPアドレスを割り当てる動作のシーケンス図である。
【0035】
図5はDHCPクライアントに対するIPアドレス割り当て前の状態を示す図である。この時点でDHCPサーバ10には固定のIPアドレスが割り当てられており、DHCPクライアントである第1のスイッチ21、第2のスイッチ22、第1のエンドデバイス31および第2のエンドデバイス32にはまだIPアドレスが割り当てられていない。また、第1のスイッチ21、第2のスイッチ22には、DHCPパケットの転送先としてDHCPサーバ10のIPアドレスが設定されている。
【0036】
図6に示すように、第1のスイッチ21、第2のスイッチ22、第1のエンドデバイス31および第2のエンドデバイス32からは、各々一定の規則に従いDHCP Discoverがブロードキャスト送信される。DHCPサーバ10以外のネットワーク機器である第1のスイッチ21および第2のスイッチ22に受信されたDHCP Discoverは、第1のスイッチ21および第2のスイッチ22にIPアドレスがまだ割り当てられていないため破棄される。
【0037】
DHCPサーバ10において、第1のスイッチ21からのDHCP Discoverが受信されたこととする。このときDHCPサーバ10は、受信したDHCPパケットにoption82が付加されているかどうかを判断する(
図3、ステップS101からステップS102)。
【0038】
受信したDHCPパケットは第1のスイッチ21の第1のtrusted port21a(
図1参照)から送信されたものであるから、DHCPパケットにoption82が付加されていない(ステップS102のN)。DHCPパケットにoption82が付加されていない場合、DHCPサーバ10は、DHCPパケット中のgiaddrフィールドの値を確認する(
図3、ステップS103)。giaddrフィールドには、通常"0"が格納され、DHCPリレーエージェントがDHCPパケットをDHCPサーバに転送するときにDHCPリレーエージェントのIPアドレスが格納される。
【0039】
今回受信したDHCPパケット中のgiaddrフィールドの値は"0"であることから(
図3、ステップS103のY)、DHCPサーバ10はchaddrフィールドの値をキーにMAC-IP対応表113を検索する(
図3、ステップS106)。chaddrフィールドの先頭6バイトには、DHCPクライアント(第1のスイッチ21)のMACアドレスが格納されている。したがって、DHCPクライアント(第1のスイッチ21)のMACアドレスがMAC-IP対応表113の検索キーとして使用される。
【0040】
この時点では、MAC-IP対応表113には、第1のスイッチ21のMACアドレスに対応するIPアドレスは記録されていないので、該当するレコードは検出されない。MAC-IP対応表113からの該当するレコードの検出に失敗した場合(
図3、ステップS107のN)、DHCPサーバ10は何もしない(無視する)(ステップS109)。
【0041】
また、
図6に示すように、DHCPサーバ10には周期的に、DHCPサーバ10の隣接機器である第1のスイッチ21から、当該第1のスイッチ21に関する機器情報を含むLLDPフレームがDHCPサーバ10に送信される。機器情報には、機器名、機能名などの他、例えばMACアドレスなど、機器を特定可能なChassis IDが含まれる。DHCPサーバ10は、このLLDPフレームを受信すると、次のような動作を実行する。
【0042】
図4は、LLDPフレームの受信時およびLLDP-MIB取得時のDHCPサーバ10の動作の流れを示すフローチャートである。
まず、
図4に沿って、DHCPサーバ10がLLDPフレームを受信した場合の動作から説明する。
【0043】
DHCPサーバ10はLLDPフレームを受信すると、このLLDPフレームを受信したインタフェースの情報(IPアドレス、ポート番号)を確認し(ステップS201)、TNDIR121において第1のスイッチ21がどの接続場所のものであるかを調べる(ステップS203、S204)。TNDIR121において該当する接続場所が存在しない場合(ステップS204のN)、DHCPサーバ10は受信したLLDPフレームを未知の機器から送信されたLLDPフレームとしてこれを無視する(ステップS206)。TNDIR121に該当する接続場所が存在する場合(ステップS204のY)、DHCPサーバ10は、LLDPフレームのTLVに格納されているChassis IDをキーにMAC-IP対応表113を参照して該当するレコードの有無を調べる(ステップS205)。
【0044】
ここで、Chassis IDには、送信元の機器を特定する情報としてMACアドレスが用いられる場合を想定する。MAC-IP対応表113に該当するレコードが存在しない場合(ステップS207のY)、DHCPサーバ10は、受信したLLDPフレームのTLVから抽出したChassis ID(MACアドレス)と、TNDIR121における該当接続場所に対して定義されているIPアドレスとを対応付けたレコードをMAC-IP対応表113に追加する(ステップS208)。MAC-IP対応表113に該当するレコードが存在する場合には(ステップS207のN)、DHCPサーバ10は何もしない(ステップS209)。
【0045】
第1のスイッチ21のMACアドレスとIPアドレスとを対応付けたレコードがMAC-IP対応表113に追加されて以後、DHCPサーバ10は、第1のスイッチ21からのDHCP Discoverを受信すると、このDHCP Discoverのパケットのchaddrフィールドの先頭6バイトに記述されたMACアドレスとIPアドレスとを対応付けたレコードがMAC-IP対応表113に登録されているかどうかを判断し(
図3、ステップS106)、該当するレコードが登録されていれば(
図3、ステップS107のY)、DHCP Offerを第1のスイッチ21に応答する。第1のスイッチ21はDHCP Offerを受信するとDHCP Requestを送信し、DHCPサーバ10はDHCP Requestに応じて、上記レコードのIPアドレスを含むDHCP Ackを応答する。これにより、第1のスイッチ21に対する固定のIPアドレスの割り当てが完了する。
【0046】
第1のスイッチ21にIPアドレスが割り当てられた後は、
図7に示すように、第1のエンドデバイス31から送信されたDHCP Discoverが第1のスイッチ21によってDHCPサーバ10に中継されるとき、第1のスイッチ21のDHCPリレーエージェント機能によってDHCP Discoverのパケットに、第1のスイッチ21のMACアドレスなどのリモートIDと第1のエンドデバイス31からの受信用のポート番号を示すサーキットIDを含むoption82が付加される。
【0047】
option82が付加されたDHCP DiscoverのパケットがDHCPサーバ10に受信されると、DHCPサーバ10はこのDHCP Discoverのパケットに付加されたoption82をキーとしてoption82対応表112を参照して該当するレコードを検索する(
図3のステップS104)。該当するレコードが存在するならば(
図3、ステップS105のY)、DHCPサーバ10はoption82を含むDHCP Offerを第1のスイッチ21に応答する。第1のスイッチ21はDHCP Offerからoption82を除去して第1のエンドデバイス31に送信する。第1のエンドデバイス31はDHCP Offerを受信すると、DHCP Requestを送信する。第1のスイッチ21はDHCPリレーエージェント機能によってこのDHCP Requestに再びoption82を付加してDHCPサーバ10に転送する。DHCPサーバ10はDHCP Requestに応じて、検索レコード中のIPアドレスを含むDHCP Ackを第1のスイッチ21に応答する。第1のスイッチ21は、DHCP Ackからoption82を除去して第1のエンドデバイス31に送信する。これにより、第1のエンドデバイス31に対する固定のIPアドレスの割り当てが完了する。
【0048】
次に、DHCPサーバ10が第1のスイッチ21よりLLDP-MIBを取得したときの動作を説明する。
【0049】
図8に示すように第1のスイッチ21は、第2のスイッチ22からChassis IDを含むLLDPフレームを受信すると、受信したLLDPフレームに含まれる第2のスイッチ22のChassis IDにより、保有しているLLDP-MIBを更新する。
【0050】
DHCPサーバ10は、周期的に、SNMPによって第1のスイッチ21からLLDP-MIBを取得する。第1のスイッチ21から取得されるLLDP-MIBには、第1のスイッチ21のインタフェース番号を示すifNumberと、第2のスイッチ22から受信したLLDPフレームのTLVから抽出したChassis IDが含まれる。ifNumberは、第1のスイッチ21が第2のスイッチ22から受信したLLDPフレームに応じて更新される。
【0051】
図4に示したように、DHCPサーバ10は、第1のスイッチ21に割り当てられているIPアドレスとifNumberをキーとして(
図4のステップS202)、TNDIR121を参照することによって(ステップS203)、第2のスイッチ22がTNDIR121におけるどの接続場所のものであるかを調べる(ステップS203)。以降の動作は、LLDPフレームの受信時と同様である。すなわち、TNDIR121に該当する接続場所が存在しない場合(ステップS204のN)、DHCPサーバ10は未知の機器から送信されたLLDPフレームとしてこれを無視する(ステップS206)。TNDIR121に該当する接続場所が存在する場合(ステップS204のY)、DHCPサーバ10は、LLDP-MIBから抽出した第2のスイッチ22のChassis ID(MACアドレス)をキーにMAC-IP対応表113を参照して該当するレコードを検索する(ステップS205)。MAC-IP対応表113に該当するレコードが存在しない場合(ステップS207のY)、DHCPサーバ10は、LLDP-MIBから抽出した第2のスイッチ22のChassis ID(MACアドレス)と、TNDIR121における該当接続場所に対して定義されているIPアドレスとを対応付けたレコードをMAC-IP対応表113に追加する(ステップS208)。MAC-IP対応表113に該当するレコードが存在する場合(ステップS207のN)、DHCPサーバ10は何もしない(ステップS209)。
【0052】
第2のスイッチ22のMACアドレスとIPアドレスとを対応付けたレコードがMAC-IP対応表113に追加されて以後、DHCPサーバ10は、第2のスイッチ22からのDHCP Discoverを受信すると、このDHCP Discoverのパケットのchaddrフィールドの先頭6バイトに記述されたMACアドレスとIPアドレスとを対応付けたレコードがMAC-IP対応表113に登録されているかどうかを判断し(
図3のステップS106)、該当するレコードが登録されていれば(ステップS107のY)、DHCP Offerを第2のスイッチ22に応答する。第2のスイッチ22はDHCP Offerを受信すると、DHCP Requestを送信し、DHCPサーバ10はDHCP Requestに応じて、上記レコードのIPアドレスを含むDHCP Ackを応答する。これにより、第2のスイッチ22に対する固定のIPアドレスの割り当てが完了する。
【0053】
第2のスイッチ22にIPアドレスが割り当てられた後は、
図9に示すように、第2のスイッチ22のuntrusted port22b(
図1参照)に接続された第2のエンドデバイス32から送信されたDHCP DiscoverがDHCPサーバ10に中継されるとき、第2のスイッチ22のDHCPリレーエージェント機能によって、このDHCP Discoverのパケットに、第2のスイッチ22のMACアドレスなどのリモートIDと第2のエンドデバイス32が接続されているポート番号を示すサーキットIDを含むoption82が付加される。
【0054】
option82が付加されたDHCP DiscoverのパケットがDHCPサーバ10に受信されると、DHCPサーバ10はこのDHCP Discoverのパケットに付加されたoption82をキーとしてoption82対応表112を参照して該当するレコードを検索する(
図3のステップS104)。該当するレコードが存在するならば(ステップS105のY)、DHCPサーバ10はoption82を含むDHCP Offerを第2のスイッチ22に応答する。第2のスイッチ22はDHCP Offerからoption82を除去して第2のエンドデバイス32に送信する。第2のエンドデバイス32はDHCP Offerを受信すると、DHCP Requestを送信する。第2のスイッチ22はDHCPリレーエージェント機能によってこのDHCP Requestに再びoption82を付加してDHCPサーバ10に転送する。DHCPサーバ10はDHCP Requestに応じて、上記のレコード中のIPアドレスを含むDHCP Ackを第2のスイッチ22に応答する。第2のスイッチ22は、DHCP Ackからoption82を除去して第2のエンドデバイス32に送信する。これにより、第2のエンドデバイス32に対して固定のIPアドレスの割り当てが完了する。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、DHCPサーバ10は、DHCPサーバに直接接続された第1のスイッチ21から受信したLLDPフレームの送信元の機器のTNDIR121上の接続場所を検索し、この接続場所に定義されているIPアドレスとLLDPフレームに含まれる送信元の機器のChassis ID(MACアドレス)とを対応付けたレコードをMAC-IP対応表113に追加する。これにより、第1のスイッチ21に対して固定のIPアドレスが、機器交換後も割り当てることが可能になる。
【0056】
さらに、本実施形態によれば、DHCPサーバ10は、第1のスイッチ21からSNMPによりLLDP-MIBを取得し、第2のスイッチ22のTNDIR121上の接続場所を検索し、この接続場所に定義されているIPアドレスとLLDP-MIBに含まれる第2のスイッチ22のChassis ID(MACアドレス)とを対応付けたレコードをMAC-IP対応表113に追加する。これにより、DHCPサーバに至る通信系路上のポートがすべてtrusted portに設定された第2のスイッチ22に対しても固定のIPアドレスを機器交換後も割り当てることが可能になる。
【0057】
(補足1)
TNDIRの概念を補足説明する。
図10はTNDIRの概念図である。
ここではネットワークが列車内の複数機器で構成される鉄道ネットワークである場合を想定する。
同図に示すように、列車(Train)は1つ以上の編成(Consist)により構成される。1つの編成は1つ以上の車両(Vehicle)により構成される。車両には複数の機器(Device)が搭載される。各機器は他の機器と互いに接続される。接続先は同じ車両内の機器とは限らず、他の車両に搭載されている機器かもしれない。この接続をEdgeあるいはLinkと呼ぶ。TNDIRでは、Edgeを含む各オブジェクトに割り当てられる固有のIDによって管理される。
【0058】
(補足2)
LLDPフレームについて補足説明する。
LLDPはデータリンク層のプロトコルであり、送受信にIPアドレスを使用しない。したがって、IPアドレスを設定する前でも送受信可能である。
図11はLLDPフレームの構成を示す図である。
LLDPフレームはEthernetヘッダとLLDPDU(LLDP Data Unit)により構成される。LLDPDUはいくつかのTLV(type,length,value)により構成される。TLVには、LLDPフレームの送信元機器を特定する情報であるChassis IDやLLDPフレームの送信に用いるポート番号などを格納することができる。
【0059】
その他、本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
10…DHCPサーバ
11…DHCPサーバブロック
12…ネットワーク管理ブロック
13…IPプロトコルスタック
14…SNMPマネージャ
15…ドライバ
21…第1のスイッチ
22…第2のスイッチ
31…第1のエンドデバイス
32…第2のエンドデバイス
100…DHCPネットワークシステム
111…スコープ
112…option82対応表
112.MAC-IP対応表
115…DHCPサーバタスク
121…TNDIR
122…ネットワーク管理タスク
123…MIB監視タスク
124…LLDP受信タスク