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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20221115BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20221115BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20221115BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 100B
B60C11/03 100A
B60C11/00 B
B60C11/12 D
B60C11/12 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019110820
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020203503
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 康典
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/015832(WO,A1)
【文献】特開2008-074346(JP,A)
【文献】実開昭57-127005(JP,U)
【文献】特表2013-540077(JP,A)
【文献】特開平02-227306(JP,A)
【文献】特開2001-130227(JP,A)
【文献】特開平05-338417(JP,A)
【文献】特表2002-501458(JP,A)
【文献】特表2013-505874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/03
B60C 11/12-11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向溝及びトレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記幅方向溝は、前記トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かって溝幅が漸減する溝幅漸減部分と、該溝幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、溝幅一定部分と、該溝幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐溝部分と、を有し、
前記幅方向サイプは、前記トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かってサイプ幅が漸減するサイプ幅漸減部分と、該サイプ幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、サイプ幅が一定である、サイプ幅一定部分と、該サイプ幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐サイプ部分と、を有することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置と、前記分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置とが異なる、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記分岐溝部分は、2本の分岐溝からなり、
前記2本の分岐溝がなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記分岐サイプ部分は、2本の分岐サイプからなり、
前記2本の分岐サイプがなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記2本の分岐溝がなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みの曲率半径は、前記2本の分岐サイプがなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みの曲率半径より小さい、請求項に従属する請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とした、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、又は、
前記分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とした、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なる、請求項3~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ径方向内側を分岐させたサイプが提案されている(例えば、特許文献1)。このような構成によれば、摩耗進展時の排水性を向上させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-529392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなサイプを有する空気入りタイヤにおいては、新品時から摩耗初期において、排水性と耐摩耗性とを高い次元で両立させることも求められていた。このことは、タイヤ径方向内側を分岐させた溝を有する空気入りタイヤにも同様に生じ得る課題である。
【0005】
本発明は、摩耗進展時の排水性を向上させつつも、新品時から摩耗初期において、排水性と耐摩耗性とを高い次元で両立させることのできる、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向溝を有し、
前記幅方向溝は、前記トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かって溝幅が漸減する溝幅漸減部分と、該溝幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、溝幅一定部分と、該溝幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐溝部分と、を有することを特徴とする、空気入りタイヤ。
これによれば、摩耗進展時の排水性を向上させつつも、新品時から摩耗初期において、排水性と耐摩耗性とを高い次元で両立させることができる。
【0007】
ここで、「トレッド踏面」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填して、最大負荷荷重を負荷した際に路面と接地することとなるトレッド表面の、トレッド周方向全域にわたる面をいう。
また、「周方向主溝」とは、トレッド周方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、2mm以上のものをいう。
また、「トレッド端」とは、上記トレッド踏面のタイヤ幅方向両側の最外側点をいう。
また、「幅方向溝」とは、トレッド幅方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、2mm以上のものをいう。
また、後述の「幅方向サイプ」とは、トレッド幅方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面における開口幅が、2mm未満のものをいう。
【0008】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0009】
(2)上記(1)において、前記分岐溝部分は、2本の分岐溝からなり、前記2本の分岐溝がなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有することが好ましい。
この構成によれば、交差部におけるクラックの発生を抑制して、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)において、前記分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とする、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なることが好ましい。
一例として、タイヤ径方向内側領域において、グリップ性能の高い(例えば硬度の小さい)トレッドゴムを用いることで、摩耗進展時のウェット性能をさらに向上させることができる。
【0011】
(4)トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記幅方向サイプは、前記トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かってサイプ幅が漸減するサイプ幅漸減部分と、該サイプ幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、サイプ幅が一定である、サイプ幅一定部分と、該サイプ幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐サイプ部分と、を有することを特徴とする、空気入りタイヤ。
これによっても、摩耗進展時の排水性を向上させつつも、新品時から摩耗初期において、排水性と耐摩耗性とを高い次元で両立させることができる。
【0012】
(5)上記(4)において、前記分岐サイプ部分は、2本の分岐サイプからなり、
前記2本の分岐サイプがなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有することが好ましい。
この構成によれば、交差部におけるクラックの発生を抑制して、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0013】
(6)上記(4)又は(5)において、前記分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とする、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なることが好ましい。
一例として、タイヤ径方向内側領域において、グリップ性能の高い(例えば硬度の小さい)トレッドゴムを用いることで、摩耗進展時のウェット性能をさらに向上させることができる。
【0014】
(7)トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周方向主溝と、前記複数本の周方向主溝のうちトレッド幅方向に隣接する前記周方向主溝間に、又は、前記周方向主溝とトレッド端とにより、区画される複数の陸部と、を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向溝及びトレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記幅方向溝は、前記トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かって溝幅が漸減する溝幅漸減部分と、該溝幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、溝幅一定部分と、該溝幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐溝部分と、を有し、
前記幅方向サイプは、前記トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かってサイプ幅が漸減するサイプ幅漸減部分と、該サイプ幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、サイプ幅が一定である、サイプ幅一定部分と、該サイプ幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐サイプ部分と、を有することを特徴とする、空気入りタイヤ。
これによれば、摩耗進展時の排水性を向上させつつも、新品時から摩耗初期において、排水性と耐摩耗性とをより高い次元で両立させることができる。
【0015】
(8)上記(7)において、前記分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置と、前記分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置とが異なることが好ましい。
この構成によれば、タイヤ径方向の剛性段差を低減することができる。
【0016】
(9)上記(7)又は(8)において、前記分岐溝部分は、2本の分岐溝からなり、
前記2本の分岐溝がなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有することが好ましい。
この構成によれば、分岐溝部分の交差部におけるクラックの発生を抑制して、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0017】
(10)上記(7)~(9)のいずれかにおいて、前記分岐サイプ部分は、2本の分岐サイプからなり、前記2本の分岐サイプがなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有することが好ましい。
この構成によれば、分岐サイプ部分の交差部におけるクラックの発生を抑制して、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0018】
(11)上記(9)に従属する上記(10)において、前記2本の分岐溝がなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みの曲率半径は、前記2本の分岐サイプがなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みの曲率半径より小さいことが好ましい。
この構成によれば、分岐サイプ部分の交差部におけるクラックの発生を有効に抑制することができる。
【0019】
(12)上記(9)~(11)において、前記分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とした、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、又は、
前記分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とした、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なることが好ましい。
一例として、タイヤ径方向内側領域において、グリップ性能の高い(例えば硬度の小さい)トレッドゴムを用いることで、摩耗進展時のウェット性能をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、摩耗進展時の排水性を向上させつつも、新品時から摩耗初期において、排水性と耐摩耗性とを高い次元で両立させることのできる、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図2】トレッドパターンの他の例を模式的に示す展開図である。
図3】幅方向溝の一例を模式的に示す断面図である。
図4】幅方向サイプの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
ここで、空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)の内部構造等については、従来のものと同様の構造とすることができる。一例としては、該タイヤは、一対のビード部と、該一対のビード部に連なる一対のサイドウォール部と、該一対のサイドウォール部間に配置されたトレッド部とを有するものとすることができる。また、該タイヤは、一対のビード部間をトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルトと、を有するものとすることができる。
以下、特に断りのない限り、寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の寸法等を指す。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
【0024】
図1に示すように、本例のタイヤは、トレッド踏面1に、トレッド周方向に延びる複数本(図示例では4本)の周方向主溝2(2a、2b、2c、2d)と、複数本の周方向主溝2のうちトレッド幅方向に隣接する周方向主溝2間に、又は、周方向主溝2(2a、2d)とトレッド端TEとにより、区画される複数(図示例では5つ)の陸部3(3a、3b、3c、3d、3e)と、を有している。この例では、2本の周方向主溝2a、2bは、タイヤ赤道面CLを境界としたトレッド幅方向の一方の半部に位置しており、且つ、他の2本の周方向主溝2c、2dは、タイヤ赤道面CLを境界としたトレッド幅方向の他方の半部に位置している。そして、この例では、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部3cと、トレッド幅方向各半部に位置する4つの陸部3(3a、3b、3d、3e)が配置されている。なお、本例では、タイヤ赤道面CL上には、陸部3cが位置しているが、タイヤ赤道面CL上に周方向主溝2が位置する構成とすることもできる。
【0025】
図1に示した例では、周方向主溝2の本数は、4本であるが、3本以下(1~3本)又は5本以上とすることもできる。従って、陸部3の個数も、4つ以下(2~4つ)又は6つ以上とすることができる。また、本例では、全ての陸部がブロック状の陸部3であるが、少なくとも1つの陸部が、リブ状陸部であっても良い。なお、「リブ状陸部」とは、陸部が、トレッド幅方向に延びる幅方向溝や幅方向サイプによってトレッド周方向に完全に分断されていない陸部をいう。
【0026】
周方向主溝2の溝幅(開口幅(平面視において、溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、周方向主溝2の本数にもよるため特には限定されないが、例えば3~15mmとすることができる。同様に、周方向主溝2の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば14~20mmとすることができる。
【0027】
図示例では、トレッド踏面1の平面視において、周方向主溝2は、いずれも、トレッド周方向に沿って(傾斜せずに)延びているが、少なくとも1つの周方向主溝2がトレッド周方向に対して傾斜して延びていても良く、その場合、トレッド周方向に対して、例えば5°以下の角度で傾斜して延びるものとすることができる。また、図示例では、周方向主溝2は、いずれも、トレッド周方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の周方向主溝2が、ジグザグ状、湾曲状などの形状を有していても良い。
【0028】
図示例では、各陸部3は、トレッド幅方向に延びる幅方向溝4を複数本有している。具体的には、本例では、トレッド端TEに隣接する陸部3a、3eにおいては、トレッド端TEからトレッド幅方向内側に延びて、周方向主溝2a、2dにそれぞれ開口する幅方向溝4aを複数本(図示の範囲で、陸部3a、3eでは5本ずつ)有している。また、タイヤ赤道面CL上の陸部3c及び陸部3cと陸部3a、3eとの間に位置する陸部3b、3dにおいては、それら陸部3を区画する2本の周方向主溝2間を連通する幅方向溝4bを複数本(図示の範囲で、陸部3b、3dでは3本、陸部3cでは2本)有している。幅方向溝4(4a、4b)の本数は適宜設定することができる。なお、図示例では、全ての陸部3が幅方向溝4を有しているが、トレッド踏面1に幅方向溝4を有する場合は、いずれかの陸部3が幅方向溝4を有していれば良い。
ここで、幅方向溝4の溝幅(開口幅(平面視において、溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、幅方向溝4の本数にもよるため特には限定されないが、例えば5~10mmとすることができる。同様に、幅方向溝4の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば14~20mmとすることができる。
なお、図示例では、各陸部3において、幅方向溝4がトレッド幅方向に対して傾斜して延びているが、幅方向溝4は、各陸部3において、トレッド幅方向に沿って延びていても、傾斜して延びていても良い。幅方向溝4がトレッド幅方向に傾斜して延びている場合には、幅方向溝4は、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましく、また、30°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。また、図示のように、陸部3間で幅方向溝4のトレッド幅方向に対する傾斜角度を異ならせることもできる(本例では、陸部3a、3eにおける幅方向溝4aのトレッド幅方向に対する傾斜角度は、陸部3b、3c、3dにおける幅方向溝4bのトレッド幅方向に対する傾斜角度より小さい)。また、陸部3内でも複数本の幅方向溝4のトレッド幅方向に対する傾斜角度を同じとすることもでき、あるいは、異ならせることもできる。
また、図示例では、幅方向溝4は、いずれも、トレッド幅方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の幅方向溝4が、屈曲した部分を有していても良い。
ここで、幅方向溝4は、排水性を向上させる観点から、例えば図示例のように、トレッド端TE及び/又は周方向主溝2に開口していることが好ましい。一方で、陸部3の剛性を高めるために、幅方向溝4は、トレッド端TE及び周方向主溝2のいずれにも開口せず、両端が陸部3内で終端するものとすることもできる。また、トレッド幅方向に隣接する2本の周方向主溝2間に区画される陸部3においては、幅方向溝4は、該2本の周方向主溝2のうちいずれの方に開口していても良い。
【0029】
図示例では、陸部3a、3eは、サイプを有していない。一方で、図示例では、陸部3b、3c、3dは、複数本の(図示の範囲で、陸部3b、3dでは2本、陸部3cでは3本)サイプ5を有している。図示例では、サイプ5は、トレッド幅方向に延びる幅方向サイプ5である。幅方向サイプ5の本数は適宜設定することができる。なお、図示例では、陸部3b、3c、3dが幅方向サイプ5を有しているが、トレッド踏面1に幅方向サイプ5を有する場合は、いずれかの陸部3が幅方向サイプ5を有していれば良い。
ここで、幅方向サイプ5のサイプ幅(開口幅(サイプの延在方向に対して垂直に測った開口幅))は、幅方向サイプ5の本数にもよるため特には限定されないが、例えば0.6~1.2mmとすることができる。同様に、幅方向サイプ5のサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば14~20mmとすることができる。
なお、図示例では、各陸部3b、3c、3dの各サイプ5は、トレッド幅方向に対して傾斜して延びている幅方向サイプであるが、トレッド幅方向に沿って延びている幅方向サイプであっても良い。幅方向サイプ5が、トレッド幅方向に対して傾斜して延びている場合には、トレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましく、また、30°以下の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。また、陸部3間で幅方向サイプ5のトレッド幅方向に対する傾斜角度を異ならせることもできる(本例では、陸部3b、3c、3dにおける幅方向サイプ5のトレッド幅方向に対する傾斜角度は同じである)。また、陸部3内でも複数本の幅方向サイプ5のトレッド幅方向に対する傾斜角度を同じとすることもでき、あるいは、異ならせることもできる。
また、図示例では、幅方向サイプ5は、いずれも、トレッド幅方向に真っ直ぐ延びているが、少なくとも1本の幅方向サイプ5が、屈曲した部分を有していても良い。
ここで、幅方向サイプ5は、排水性を向上させる観点から、トレッド端TE及び/又は周方向主溝2に開口していることが好ましい。一方で、陸部3の剛性を高めるために、幅方向サイプ5は、トレッド端TE及び周方向主溝2のいずれにも開口せず、両端が陸部3内で終端するものとすることもできる。また、トレッド幅方向に隣接する2本の周方向主溝2間に区画される陸部3においては、幅方向サイプ5は、該2本の周方向主溝2のうちいずれの方に開口していても良い。
【0030】
図示例では、陸部3b、3c、3dにおいて、幅方向溝4と幅方向サイプ5とが、トレッド周方向に交互に配置されている。一方で、陸部3が、幅方向溝4と幅方向サイプ5との両方を有する場合に、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向サイプ5間に幅方向溝4が2本以上連続して配置されている箇所を有していても良く、また、トレッド周方向に隣接する2つの幅方向溝4間に幅方向サイプ5が2本以上連続して配置されている箇所を有していても良い。
【0031】
図示例では、陸部3bにおける幅方向溝4bと、陸部3cにおける幅方向サイプ5と、陸部3dにおける幅方向溝4bとが、連通している。これにより、排水性を向上させつつも、全て幅方向溝4が連通する場合と比較して陸部3の剛性の低下を抑えることができる。また、図示例では、陸部3b、3dにおける幅方向溝4bと、陸部3cにおける幅方向サイプ5とのトレッド幅方向に対する傾斜方向が逆になっており、これによって陸部の剛性のバランスをより適正化することができる。
また、図示例では、陸部3bにおける幅方向サイプ5と、陸部3cにおける幅方向溝4bと、陸部3dにおける幅方向サイプ5とが、連通している。これにより、排水性を向上させつつも、全て幅方向溝4が連通する場合と比較して陸部3の剛性の低下を抑えることができる。また、図示例では、陸部3b、3dにおける幅方向サイプ5と、陸部3cにおける幅方向溝4とのトレッド幅方向に対する傾斜方向が逆になっており、これによって陸部の剛性のバランスをより適正化することができる。
一方で、隣接する陸部3間で、幅方向溝4と幅方向サイプ5とは必ずしも連通している必要はない。また、隣接する陸部3間で、幅方向溝4と幅方向サイプ5とのトレッド幅方向に対する傾斜方向を同じとすることもできる。
【0032】
ここで、各陸部3の幅方向溝4は、トレッド幅方向に投影した際に、他の陸部3の幅方向溝4や幅方向サイプ5とは重なる部分を有しても良いし、重ならないように配置しても良い。
【0033】
図示例では、陸部3a、3eにおいては、トレッド周方向に隣接する2本の幅方向溝4により、ブロック6が区画されている。また、図示例では、陸部3b、3c、3dにおいては、トレッド周方向に隣接する幅方向溝4と幅方向サイプ5とにより、ブロック6が区画されている。
【0034】
図2は、トレッドパターンの他の例を模式的に示す展開図である。図2に示す例では、トレッド端TEに隣接する陸部3a、3eにおいて、幅方向溝4も幅方向サイプ5も有していない点で、図1に示した例のトレッドパターンと相違している。すなわち、陸部3a、3bは、リブ状の陸部である。
【0035】
図3は、幅方向溝の一例を模式的に示す断面図である。図3は、幅方向溝の延在方向に直交する断面での断面図である。図3は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態を示している。
図3に示すように、本実施形態において、幅方向溝4は、トレッド踏面1からタイヤ径方向内側に向かって溝幅が漸減する溝幅漸減部分4aと、該溝幅漸減部分4aからタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、溝幅一定部分4bと、該溝幅一定部分4bからタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐溝部分4cと、を有している。
【0036】
図示例では、溝幅漸減部分4aは、タイヤ径方向内側に向かって溝幅の減少率が一定である(この断面図で直線の溝壁を有している)。一方で、溝幅漸減部分4aは、タイヤ径方向内側に向かって溝幅の減少率が変化していても良く、例えば溝幅の変化率が漸減又は漸増しても良い。あるいは、溝幅漸減部分4aは、タイヤ径方向内側に向かって階段状に溝幅が減少しても良い。
また、図示例では、トレッド周方向一方側の溝壁と他方側の溝壁とが対称な形状をなしているが、異なる形状をなしていても良く、トレッド周方向一方側の溝壁のタイヤ径方向に対する傾斜角度を、トレッド周方向他方側の溝壁のタイヤ径方向に対する傾斜角度より大きくすることも小さくすることもできる。
幅方向溝4全体の深さ方向の延在長さに対して、溝幅漸減部分4aの溝深さ方向の延在長さは、25~50%とすることができる。
【0037】
溝幅一定部分4bの溝幅は、2~3mmとすることが好ましい。溝幅一定部分4bは、溝幅が一定であるが、略一定であれば良く、溝幅一定部分4bの溝幅の最大値と最小値との差が0.2mm以下であれば、わずかに溝幅が変化する部分を有していても良い。幅方向溝4全体の深さ方向の延在長さに対して、溝幅一定部分4bの溝深さ方向の延在長さは、0超~25%とすることができる。
また、図示例では、溝幅一定部分4bは、この断面視で、トレッド踏面1に対して垂直な方向に沿って延びているが、トレッド踏面1に対して垂直な方向に対して傾斜して延びていても良い。
【0038】
分岐溝部分4cは、図示例では、2本(のみ)の分岐溝4c1、4c2からなる。一方で、分岐溝部分4cは、3本以上の分岐溝を有していても良い。図示例では、分岐溝4c1、4c2は、それぞれ溝底に拡幅部4dを有している点を除いて、溝幅は略一定である。この拡幅部4dにより溝底のクラックの発生を抑制することができる。図示例では、拡幅部4dは、略球状であり、この断面視では略円形である。拡幅部4dの形状は、分岐溝4c1、4c2の溝幅より大きい溝幅を有する様々な形状とすることができる。この断面視で、拡幅部4dの最大径は、特には限定されないが、分岐溝4c1、4c2の溝幅(最大幅)の1.5~2倍とすることができる。なお、分岐溝4c1、4c2は、必ずしも拡幅部4dを有していなくても良い。また、分岐溝4c1、4c2の溝幅は、タイヤ径方向内側に向かって変化していても良い。
幅方向溝4全体の深さ方向の延在長さに対して、分岐溝部分4cの延在方向に沿った長さは、25~50%とすることができる。分岐溝4c1、4c2の溝幅は、溝幅一定部分4bの溝幅と同じとすることができるが、溝幅一定部分4bの溝幅より大きくすることも小さくすることもできる。
図示例では、分岐溝4c1は、タイヤ径方向外側から内側に向かって、トレッド周方向の一方側に傾斜し、また、分岐溝4c2は、タイヤ径方向外側から内側に向かって、トレッド周方向の他方側に傾斜している。このように、2本の分岐溝を有する場合、2本の分岐溝間で、タイヤ径方向外側から内側に向かう、トレッド周方向に対する傾斜角度の方向を異ならせることが好ましい。
また、図示例では、分岐溝4c1、4c2は、上記のタイヤ径方向外側から内側に向かう、トレッド周方向に対する傾斜角度の方向を除いては、同様の形状をなしている。一方で、分岐溝間で形状を異ならせることもでき、溝幅、延在長さ、拡幅部の有無、その他の形状等のいずれか1つ以上を異ならせることができる。
【0039】
図示例では、2本の分岐溝4c1、4c2がなすタイヤ径方向内側での交差部4eが丸みを有する。これにより当該交差部4eでのクラックの発生を抑制してタイヤ耐久性を向上させることができる。
なお、この断面視で、溝幅漸減部分4aと溝幅一定部分4bとがなす鈍角の溝壁部分や、溝幅一定部分4bと分岐溝4c1、4c2とがなす鈍角の溝壁部分も、丸みを有するものとすることができる。これによれば、当該部分でのクラックの発生を抑制してタイヤ耐久性を向上させることができる。
【0040】
本例では、分岐溝部分4cのタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とする、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なる。例えば、点線で境界を示すように、分岐溝部分4cのタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置を境界とする、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なる。
【0041】
なお、本例では、トレッド踏面1内の全ての幅方向溝4が、図3に示した構成を有している。
【0042】
図4は、幅方向サイプの一例を模式的に示す断面図である。図4は、幅方向サイプの延在方向に直交する断面での断面図である。図4は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態を示している。
図4に示すように、本実施形態において、幅方向サイプ5は、トレッド踏面1からタイヤ径方向内側に向かってサイプ幅が漸減するサイプ幅漸減部分5aと、該サイプ幅漸減部分5aからタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、サイプ幅一定部分5bと、該サイプ幅一定部分5bからタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐サイプ部分5cと、を有している。
【0043】
図示例では、サイプ幅漸減部分5aは、タイヤ径方向内側に向かってサイプ幅の減少率が一定である(この断面図で直線のサイプ壁を有している)。一方で、サイプ幅漸減部分5aは、タイヤ径方向内側に向かってサイプ幅の減少率が変化していても良く、例えばサイプ幅の変化率が漸減又は漸増しても良い。あるいは、サイプ幅漸減部分5aは、タイヤ径方向内側に向かって階段状にサイプ幅が減少しても良い。
また、図示例では、トレッド周方向一方側のサイプ壁と他方側のサイプ壁とが対称な形状をなしているが、異なる形状をなしていても良く、トレッド周方向一方側のサイプ壁のタイヤ径方向に対する傾斜角度を、トレッド周方向他方側のサイプ壁のタイヤ径方向に対する傾斜角度より大きくすることも小さくすることもできる。
幅方向サイプ5全体の深さ方向の延在長さに対して、サイプ幅漸減部分5aのサイプ深さ方向の延在長さは、25~50%とすることができる。
【0044】
サイプ幅一定部分5bのサイプ幅は、0.5~1.1mmとすることが好ましい。サイプ幅一定部分5bは、サイプ幅が一定であるが、略一定であれば良く、サイプ幅一定部分5bのサイプ幅の最大値と最小値との差が0.2mm以下であれば、わずかにサイプ幅が変化する部分を有していても良い。幅方向サイプ5全体の深さ方向の延在長さに対して、サイプ幅一定部分5bの溝深さ方向の延在長さは、25~50%とすることができる。
また、図示例では、サイプ幅一定部分5bは、この断面視で、トレッド踏面1に対して垂直な方向に沿って延びているが、トレッド踏面1に対して垂直な方向に対して傾斜して延びていても良い。
【0045】
分岐サイプ部分5cは、図示例では、2本(のみ)の分岐サイプ5c1、5c2からなる。一方で、分岐サイプ部分5cは、3本以上の分岐サイプを有していても良い。図示例では、分岐サイプ5c1、5c2は、それぞれサイプ底に拡幅部5dを有している点を除いて、サイプ幅は略一定である。この拡幅部5dによりサイプ底のクラックの発生を抑制することができる。図示例では、拡幅部5dは、略球状であり、この断面視では略円形である。拡幅部5dの形状は、分岐サイプ5c1、5c2のサイプ幅より大きいサイプ幅を有する様々な形状とすることができる。この断面視で、拡幅部5dの最大径は、特には限定されないが、分岐サイプ5c1、5c2のサイプ幅(最大幅)の1.5~2倍とすることができる。なお、分岐サイプ5c1、5c2は、必ずしも拡幅部5dを有していなくても良い。なお、分岐サイプ5c1、5c2のサイプ幅は、タイヤ径方向内側に向かって変化していても良い。幅方向サイプ5全体の深さ方向の延在長さに対して、分岐サイプ部分5cの延在方向に沿った長さは、25~50%とすることができる。分岐サイプ5c1、5c2のサイプ幅は、サイプ幅一定部分5bのサイプ幅と同じとすることができるが、サイプ幅一定部分5bのサイプ幅より大きくすることも小さくすることもできる。
図示例では、分岐サイプ5c1は、タイヤ径方向外側から内側に向かって、トレッド周方向の一方側に傾斜し、また、分岐サイプ5c2は、タイヤ径方向外側から内側に向かって、トレッド周方向の他方側に傾斜している。このように、2本の分岐サイプを有する場合、2本の分岐サイプ間で、タイヤ径方向外側から内側に向かう、トレッド周方向に対する傾斜角度の方向を異ならせることが好ましい。
また、図示例では、分岐サイプ5c1、5c2は、上記のタイヤ径方向外側から内側に向かう、トレッド周方向に対する傾斜角度の方向を除いては、同様の形状をなしている。一方で、分岐サイプ間で形状を異ならせることもでき、サイプ幅、延在長さ、拡幅部の有無、その他の形状等のいずれか1つ以上を異ならせることができる。
【0046】
図示例では、2本の分岐サイプ5c1、5c2がなすタイヤ径方向内側での交差部5eが丸みを有する。これにより当該交差部5eでのクラックの発生を抑制してタイヤ耐久性を向上させることができる。
なお、この断面視で、サイプ幅漸減部分5aとサイプ幅一定部分5bとがなす鈍角の溝壁部分や、サイプ幅一定部分5bと分岐サイプ5c1、5c2とがなす鈍角の溝壁部分も、丸みを有するものとすることができる。これによれば、当該部分でのクラックの発生を抑制してタイヤ耐久性を向上させることができる。
【0047】
本例では、分岐サイプ部分5cのタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とする、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なる。例えば、点線で境界を示すように、分岐サイプ部分5cのタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置を境界とする、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なる。
【0048】
なお、本例では、トレッド踏面1内の全ての幅方向サイプ5が、図5に示した構成を有している。
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0049】
本実施形態の空気入りタイヤは、陸部3に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向溝4を有し、幅方向溝4は、溝幅一定部分4bからタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる分岐溝部分4cを有する。これにより、摩耗進展時において、(本例では2本の)分岐溝4c1、4c2により排水性を向上させることができ、また、トレッド幅方向のエッジ成分(トレッド周方向に対するエッジ成分)を増大させて、ウェット性能を向上させることもできる。また、陸部3に作用するせん断力を低減させて、耐摩耗性を向上させることもできる。
また、本実施形態の空気入りタイヤは、幅方向溝4が、トレッド踏面1からタイヤ径方向内側に向かって溝幅が漸減する溝幅漸減部分4aと、該溝幅漸減部分4aからタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、溝幅一定部分4bと、を有する。
これにより、溝幅漸減部分4aが露出している新品時から摩耗初期において、(例えば溝体積が同じである、溝幅が一定の溝と比較して)開口幅が大きいため排水性を向上させつつも、溝幅漸減部分4aにより区画される陸部3が断面視で鈍角に形成されるため、陸部3の剛性を確保することができ、耐摩耗性も向上させることができる。このように、新品時から摩耗初期において、排水性と耐摩耗性とを高い次元で両立させることができる。また、溝幅一定部分4bが露出している摩耗中期においては、溝幅が一定の通常の幅方向溝と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、各サイプ5が図4に示した構成を有しているが、本発明では、幅方向溝が、トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かって溝幅が漸減する溝幅漸減部分と、該溝幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、溝幅一定部分と、該溝幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐溝部分と、を有する構成であって、サイプを有しない又はサイプが通常のサイプである構成とすることもできる。この場合は、幅方向溝に関する上述の作用効果を得ることができる。
また、本例では、トレッド踏面1内の全ての幅方向溝4が、図3に示した構成を有しているが、トレッド踏面1内のいずれか1本以上の幅方向溝4が、トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かって溝幅が漸減する溝幅漸減部分と、該溝幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、溝幅一定部分と、該溝幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐溝部分と、を有する構成であれば、当該幅方向溝に関し、上述の作用効果を得ることができる。
例えば、いずれかの陸部のみにおいて、幅方向溝4が、トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かって溝幅が漸減する溝幅漸減部分と、該溝幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、溝幅が一定である、溝幅一定部分と、該溝幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐溝部分と、を有する構成とすれば、当該陸部において、幅方向溝に関し、上述の作用効果を得ることができる。
【0050】
次に、本実施形態の空気入りタイヤは、陸部3に、トレッド幅方向に延びる複数本の幅方向サイプ5を有し、幅方向サイプ5は、サイプ幅一定部分5bからタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる分岐サイプ部分5cを有する。これにより、摩耗進展時において、(本例では2本の)分岐サイプ5c1、5c2により排水性を向上させることができ、また、トレッド幅方向のエッジ成分(トレッド周方向に対するエッジ成分)を増大させて、ウェット性能を向上させることもできる。また、陸部3に作用するせん断力を低減させて、耐摩耗性を向上させることもできる。
また、本実施形態の空気入りタイヤは、幅方向サイプ5が、トレッド踏面1からタイヤ径方向内側に向かってサイプ幅が漸減するサイプ幅漸減部分5aと、該サイプ幅漸減部分5aからタイヤ径方向内側に向かって延び、サイプ幅が一定である、サイプ幅一定部分5bと、を有する。
これにより、サイプ幅漸減部分5aが露出している新品時から摩耗初期において、(例えば溝体積が同じである、サイプ幅が一定のサイプと比較して)開口幅が大きいため排水性を向上させつつも、サイプ幅漸減部分5aにより区画される陸部3が断面視で鈍角に形成されるため、陸部3の剛性を確保することができ、耐摩耗性も向上させることができる。このように、新品時から摩耗初期において、排水性と耐摩耗性とを高い次元で両立させることができる。また、サイプ幅一定部分5bが露出している摩耗中期においては、サイプ幅が一定の通常のサイプと同様の作用効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、幅方向溝4が図3に示した構成を有しているが、本発明では、幅方向サイプが、トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かってサイプ幅が漸減するサイプ幅漸減部分と、該サイプ幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、サイプ幅が一定である、サイプ幅一定部分と、該サイプ幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐サイプ部分と、を有する構成であって、幅方向溝を有しない又は幅方向溝が通常の幅方向溝である構成とすることもできる。この場合は、幅方向サイプに関する上述の作用効果を得ることができる。
また、本例では、トレッド踏面1内の全ての幅方向サイプ5が、図4に示した構成を有しているが、トレッド踏面1内のいずれか1本以上の幅方向サイプ5が、トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かってサイプ幅が漸減するサイプ幅漸減部分と、該サイプ幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、サイプ幅が一定である、サイプ幅一定部分と、該サイプ幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐サイプ部分と、を有する構成であれば、当該幅方向サイプに関し、上述の作用効果を得ることができる。
例えば、いずれかの陸部のみにおいて、幅方向サイプが、トレッド踏面からタイヤ径方向内側に向かってサイプ幅が漸減するサイプ幅漸減部分と、該サイプ幅漸減部分からタイヤ径方向内側に向かって延び、サイプ幅が一定である、サイプ幅一定部分と、該サイプ幅一定部分からタイヤ径方向内側に向かって分岐して延びる、分岐サイプ部分と、を有する構成とすれば、当該陸部において、幅方向サイプに関し、上述の作用効果を得ることができる。
【0051】
ここで、分岐溝部分は、2本の分岐溝からなり、2本の分岐溝がなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有することが好ましい。分岐溝の交差部におけるクラックの発生を抑制して、タイヤ耐久性を向上させることができるからである。
なお、交差部は、面取り等により丸みを設ける他、この断面で略三角形状の切り欠き部を設ける等しても良い。
【0052】
また、分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とする、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なることが好ましい。この場合、タイヤ径方向内側領域のトレッドゴムの硬度が、タイヤ径方向外側領域のトレッドゴムの硬度より低いことが好ましい。これにより、タイヤ径方向内側領域が使用される摩耗進展時において、ウェット性能(ウェットグリップ性能)を向上させることができる。この場合、特には限定されないが、タイヤ径方向内側領域のトレッドゴムのヤング率を、タイヤ径方向外側領域のトレッドゴムのヤング率の80~90%とすることができる。なお、ヤング率は、JIS K 6254に準拠する。
【0053】
また、分岐サイプ部分は、2本の分岐サイプからなり、2本の分岐サイプがなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有することが好ましい。分岐サイプの交差部におけるクラックの発生を抑制して、タイヤ耐久性を向上させることができるからである。
なお、交差部は、面取り等により丸みを設ける他、この断面で略三角形状の切り欠き部を設ける等しても良い。
【0054】
また、分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とする、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なることが好ましい。この場合、タイヤ径方向内側領域のトレッドゴムの硬度が、タイヤ径方向外側の領域のトレッドゴムの硬度より低いことが好ましい。これにより、タイヤ径方向内側領域が使用される摩耗進展時において、ウェット性能(ウェットグリップ性能)を向上させることができる。この場合、特には限定されないが、タイヤ径方向内側領域のトレッドゴムのヤング率を、タイヤ径方向外側領域のトレッドゴムのヤング率の80~90%とすることができる。
【0055】
また、分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置と、分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置とが異なることが好ましい。タイヤ径方向の剛性段差を低減することができるからである。
この場合、分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置が、分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側であることがより好ましい。溝体積(サイプの体積も含む)が急激に減少することを避けることができるからである。
【0056】
また、分岐溝部分は、2本の分岐溝からなり、2本の分岐溝がなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有し、且つ、分岐サイプ部分は、2本の分岐サイプからなり、2本の分岐サイプがなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みを有することが好ましい。
分岐溝の交差部及び分岐サイプの交差部におけるクラックの発生を抑制して、タイヤ耐久性をさらに向上させることができるからである。
【0057】
この場合、2本の分岐溝がなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みの曲率半径は、2本の分岐サイプがなすタイヤ径方向内側での交差部が丸みの曲率半径より小さいことが好ましい。クラックの発生し易い分岐サイプの交差部におけるクラックの発生を有効に抑制することができるからである。
【0058】
分岐溝部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とした、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、又は、
分岐サイプ部分のタイヤ径方向最外側端のタイヤ径方向位置又は該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側の位置を境界とした、タイヤ径方向外側領域と、タイヤ径方向内側領域とで、トレッドゴムの種類が異なることが好ましい。この場合、タイヤ径方向内側領域のトレッドゴムの硬度が、タイヤ径方向外側の領域のトレッドゴムの硬度より低いことが好ましい。これにより、タイヤ径方向内側領域が使用される摩耗進展時において、ウェット性能(ウェットグリップ性能)を向上させることができる。この場合、特には限定されないが、タイヤ径方向内側領域のトレッドゴムのヤング率を、タイヤ径方向外側領域のトレッドゴムのヤング率の80~90%とすることができる。なお、ヤング率は、JIS K 6254に準拠する。
【0059】
ここで、上記の実施形態において、一例として、幅方向溝4については、溝幅漸減部分4a、溝幅一定部分4b、及び分岐溝部分4cからなる全体を、金型を用いて形成することができる。また、一例として、幅方向サイプ5については、サイプ幅漸減部分5aを、金型を用いて形成し、サイプ幅一定部分5b及び分岐サイプ部分5cを、ブレードを用いて形成することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に実施形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
1:トレッド踏面、
2、2a、2b、2c、2d:周方向主溝、
3、3a、3b、3c、3d、3e:陸部、
4:幅方向溝、4a:溝幅漸減部分、 4b:溝幅一定部分、 4c:分岐溝部分、
4c1、4c2:分岐溝、 4d:拡幅部、 4e:交差部、
5:幅方向サイプ、 5a:サイプ幅漸減部分、 5b:サイプ幅一定部分、
5c:分岐サイプ部分、 5c1、5c2:分岐サイプ、 5d:拡幅部、
5e:交差部、
6:ブロック、
CL:タイヤ赤道面、
TE:トレッド端
図1
図2
図3
図4