IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

特許7177035PEG化エリスロポエチンを精製するための方法
<>
  • 特許-PEG化エリスロポエチンを精製するための方法 図1
  • 特許-PEG化エリスロポエチンを精製するための方法 図2
  • 特許-PEG化エリスロポエチンを精製するための方法 図3
  • 特許-PEG化エリスロポエチンを精製するための方法 図4
  • 特許-PEG化エリスロポエチンを精製するための方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】PEG化エリスロポエチンを精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/505 20060101AFI20221115BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C07K14/505 ZNA
C07K1/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019501473
(86)(22)【出願日】2017-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017067790
(87)【国際公開番号】W WO2018011381
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】16179755.0
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファルケンシュタイン ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュペンスベルガー ベルンハルト
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/010270(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/035037(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を精製するための方法であって、以下の工程:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
2.4~2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、官能基としてスルホプロピルを有するメタクリラートのマトリックスを有するクロマトグラフィー材料を含むカラム
に添加する工程、
(b)前記第1の溶液と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(c)増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液を前記カラムに添加し、それによって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を回収する工程、
を含み、増加したpH値を有する前記第2の溶液が、2.7~3.2のpHを有する溶液である、前記方法。
【請求項2】
エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を生産するための方法であって、以下の工程:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
2.4~2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、官能基としてスルホプロピルを有するメタクリラートのマトリックスを有するクロマトグラフィー材料を含むカラム
に添加する工程、
(b)前記第1の溶液と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(c)増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液を前記カラムに添加し、それによって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を回収する工程、
を含み、増加したpH値を有する前記第2の溶液が、2.7~3.2のpHを有する溶液である、前記方法。
【請求項3】
2.4~2.7のpHを有する前記第1の溶液を、工程(b)の後かつ工程(c)の前に再度添加する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
増加したpH値を有する前記第2の溶液が、2.7~3.0のpHを有する溶液であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
増加したpH値を有する前記第2の溶液が、一定の伝導率値を有する溶液であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
増加したpH値を有する前記第2の溶液および2.4~2.7のpHを有する前記第1の溶液が、ほぼ同じ一定の伝導率値を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
増加したpH値を有する前記第2の溶液および/または2.4~2.7のpHを有する前記第1の溶液が、17 mS/cm~19 mS/cmの一定の伝導率値を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
増加したpH値を有する前記第2の溶液が、2.7~3.0のpHを有し、かつ17 mS/cm~19 mS/cmの伝導率値を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む前記溶液が、19 mS/cmの伝導率値に調節されていないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
漸増する伝導率を有する前記溶液が、漸増する塩化ナトリウム濃度を有する溶液であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
漸増する伝導率を有する前記溶液が、線形的または段階的に増加する伝導率を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
大規模のタンパク質調製で用いられ、前記工程(a)のクロマトグラフィー・カラムが少なくとも30 cmの直径を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記エリスロポエチンが、ヒトエリスロポエチンであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記ヒトエリスロポエチンが、SEQ ID NO: 01またはSEQ ID NO: 02のアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記単一のポリ(エチレングリコール)残基が、20 kDa~40 kDaの分子量を有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
官能基としてスルホプロピルを有するメタクリラートのマトリックスを有する前記クロマトグラフィー材料が、Toyopearl(登録商標)SP-650クロマトグラフィー材料であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、陽イオン交換クロマトグラフィー材料を使用する単カラムプロセスを用いてPEG化エリスロポエチンを精製するための方法を報告する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タンパク質は、今日の医療系製品群において重要な役割を果たしている。人間への適用のために、どの治療用タンパク質も個別の基準を満たさなくてはならない。人間に対する生物製剤の安全性を確保するには、特に、製造プロセス中に蓄積する副産物を除去しなくてはならない。規制基準を順守するために、製造プロセス後に1つまたは複数の精製工程を行う必要がある。中でも、純度、スループット、および収率は、適切な精製プロセスを決定する際に重要な役割を果たす。
【0003】
例えば、ポリエチレングリコール(PEG)とインターロイキン-6(EP 0 442 724(特許文献1))、PEGとエリスロポエチン(WO 01/02017(特許文献2))、エンドスタチンと免疫グロブリンとを含むキメラ分子(US 2005/008649(特許文献3))、分泌抗体ベースの融合タンパク質(US 2002/147311(特許文献4))、アルブミンを含む融合ポリペプチド(US 2005/0100991(特許文献5);ヒト血清アルブミンUS 5,876,969(特許文献6))、PEG化ポリペプチド(US 2005/0114037(特許文献7))、およびエリスロポエチン融合体に関して、治療用タンパク質の複合体が報告されている。
【0004】
Necina, R.ら(Biotechnol. Bioeng. 60 (1998) 689-698(非特許文献1))は、高電荷密度を呈するイオン交換媒体により、細胞培養物の上清からヒトモノクローナル抗体を直接捕捉することを報告している。WO 89/05157(特許文献8)では、細胞培養液を直接陽イオン交換処理に供することにより、産物の免疫グロブリンを精製するための方法が報告されている。マウス腹水からのモノクローナルIgG抗体の1工程の精製が、Danielsson, A., et al, J. Immun. Meth. 115 (1988) 79-88(非特許文献2)で説明されている。イオン交換クロマトグラフィーによるポリペプチドの精製方法がWO 2004/024866(特許文献9)で報告されており、ここではグラジエント洗浄を使用して、関心対象のポリペプチドを1種または複数種の夾雑物から分離させている。EP 0 530 447(特許文献10)では、3つのクロマトグラフ工程の組み合わせによりIgGモノクローナル抗体を精製するプロセスが報告されている。モノPEG化インターロイキン-1受容体アンタゴニストの容易な精製がYu, G, et al., Process Biotechnol. 42 (2007) 971-977(非特許文献3)で報告されている。Wang, H., et al, Peptides 26 (2005) 1213 - 1218(非特許文献4)は、大腸菌(E.coli)内で発現させたhTFF3の、2工程の陽イオン交換クロマトグラフィーによる精製を報告している。Yun, Q., et al. (Yun, Q., et al., J. Biotechnol. 118 (2005) 67-74)(非特許文献5)は、2つの連続するイオン交換クロマトグラフィー工程によるPEG化rhG-CSFの精製を報告している。
【0005】
PEG化エリスロポエチンをSP Sephacryl S 500 HRカラムで精製するための方法が、WO 2012/035037(特許文献11)で報告されている。
【0006】
WO 1999/057134(特許文献12)は、イオン交換クロマトグラフィーによるタンパク質精製について報告している。
【0007】
2つの陽イオン交換クロマトグラフィー工程を含むモノPEG化エリスロポエチンの精製法がWO 2009/010270(特許文献13)で報告されており、この方法では両方の陽イオン交換クロマトグラフィー工程で同じタイプの陽イオン交換材料を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】EP 0 442 724
【文献】WO 01/02017
【文献】US 2005/008649
【文献】US 2002/147311
【文献】US 2005/0100991
【文献】US 5,876,969
【文献】US 2005/0114037
【文献】WO 89/05157
【文献】WO 2004/024866
【文献】EP 0 530 447
【文献】WO 2012/035037
【文献】WO 1999/057134
【文献】WO 2009/010270
【非特許文献】
【0009】
【文献】Biotechnol. Bioeng. 60 (1998) 689-698
【文献】Danielsson, A., et al, J. Immun. Meth. 115 (1988) 79-88
【文献】Yu, G, et al., Process Biotechnol. 42 (2007) 971-977
【文献】Wang, H., et al, Peptides 26 (2005) 1213 - 1218
【文献】Yun, Q., et al. (Yun, Q., et al., J. Biotechnol. 118 (2005) 67-74)
【発明の概要】
【0010】
本明細書では、陽イオン交換クロマトグラフィー法により、反応副産物または未反応の出発物質から、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質複合体を精製するための方法を報告する。
【0011】
増加したpH値を有する洗浄溶液での洗浄工程を採用することで、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含む複合体化タンパク質を、例えばToyopearl(登録商標)SP-650などの陽イオン交換クロマトグラフィー材料から、単一の工程で、高い純度および収率を伴って、改善および簡素化されたやり方で得ることができることが見出された。
【0012】
2つの順次的な陽イオン交換クロマトグラフィー工程を採用する、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質複合体の精製プロセスと比較すると、収率および品質は少なくとも同等か、または優れていることが見出された。この1カラムのプロセスは、同品質を得ることを可能にするとともに、プロセスの頑健性を向上させる。また、製造コストおよび生産時間も削減される。最終収率を、モノPEG化エリスロポエチンの質を損なうことなく、増加させることができる。
【0013】
そこで、本明細書では、一局面として、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を得る/精製する/生産するための方法を報告し、該方法は、以下の工程を含む:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、Toyopearl(登録商標)SP-650をクロマトグラフィー材料として含むカラム
に添加する工程、
(b)第1の溶液(約2.4~約2.7のpHを有する)と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(c)増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液をカラムに添加し、それによって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を回収する工程。
【0014】
本明細書では、一局面として、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を得る/精製する/生産するための方法を報告し、該方法は、以下の工程を含む:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、官能基としてスルホプロピルを有するメタクリラートのマトリックスを有するクロマトグラフィー材料を含むカラム
に添加する工程、
(b)第1の溶液(約2.4~約2.7のpHを有する)と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(c)増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液をカラムに添加し、それによって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を回収する工程。
【0015】
1つの態様において、方法は、約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液を、工程(b)の後かつ工程(c)の前に再度添加する工程をさらに含む。したがって、1つの態様において、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を得る/精製する/生産するための方法を報告し、該方法は、以下の工程を含む:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、Toyopearl(登録商標)SP-650クロマトグラフィー材料を含むカラム
に添加する工程、
(b)約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(b1)約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液を再度添加する工程、
(c)増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液をカラムに添加し、それによって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を回収する工程。
【0016】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約3.2のpH、好ましくは約2.7~3.0のpHを有する溶液である。
【0017】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、一定の伝導率値を有する溶液である。
【0018】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液および約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液は、ほぼ同じ一定の伝導率値を有する。
【0019】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液および/または約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液は、約19 mS/cmの一定の伝導率値を有し、好ましくは約17 mS/cm~約19 mS/cmの伝導率値を有する。
【0020】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約3.2のpHを有し、かつ約19 mS/cmの伝導率値を有する。
【0021】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、リン酸緩衝液である。
【0022】
1つの態様において、エリスロポエチンと、エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体との混合物を含む溶液は、約19 mS/cmの伝導率値に調節されていない。
【0023】
1つの態様において、増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液は、増加したまたは漸増する塩化ナトリウム濃度を有する溶液である。1つの態様において、増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液は、pH 2.3~pH 3.5のpH値を有する。
【0024】
1つの態様において、増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液は、段階的または線形的に増加する伝導率を有する。
【0025】
1つの態様において、この方法は大規模のタンパク質調製で用いられ、工程(a)のクロマトグラフィー・カラムは、少なくとも30 cmの直径を有する。
【0026】
1つの態様において、エリスロポエチンはヒトエリスロポエチンである。1つの態様において、ヒトエリスロポエチンは、SEQ ID NO: 01またはSEQ ID NO: 02のアミノ酸配列を有する。
【0027】
1つの態様において、単一のポリ(エチレングリコール)残基は、20 kDa~40 kDaの分子量を有する。
【0028】
本明細書では、一局面では、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を得るための方法を報告し、該方法は、以下の工程を含む:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、Toyopearl(登録商標)SP-650をクロマトグラフィー材料として含むカラム
に添加する工程、
(a1)約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液を再度添加する工程、
(b)約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(c)増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液をカラムに添加し、それによって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を回収する工程。
[本発明1001]
エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を精製するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、官能基としてスルホプロピルを有するメタクリラートのマトリックスを有するクロマトグラフィー材料を含むカラム
に添加する工程、
(b)前記第1の溶液と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(c)増加したまたは漸増する伝導率を有する溶液を前記カラムに添加し、それによって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を回収する工程。
[本発明1002]
約2.4~約2.7のpHを有する前記第1の溶液を、工程(b)の後かつ工程(c)の前に再度添加する工程をさらに含むことを特徴とする、本発明1001の方法。
[本発明1003]
増加したpH値を有する前記第2の溶液が、約2.7~約3.0のpHを有する溶液であることを特徴とする、本発明1001または1002のいずれかの方法。
[本発明1004]
増加したpH値を有する前記第2の溶液が、一定の伝導率値を有する溶液であることを特徴とする、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
増加したpH値を有する前記第2の溶液および約2.4~約2.7のpHを有する前記第1の溶液が、ほぼ同じ一定の伝導率値を有することを特徴とする、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
増加したpH値を有する前記第2の溶液および/または約2.4~約2.7のpHを有する前記第1の溶液が、約17 mS/cm~約19 mS/cmの一定の伝導率値を有することを特徴とする、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
増加したpH値を有する前記第2の溶液が、約2.7~約3.0のpHを有し、かつ約17 mS/cm~約19 mS/cmの伝導率値を有することを特徴とする、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む前記溶液が、約19 mS/cmの伝導率値に調節されていないことを特徴とする、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
漸増する伝導率を有する前記溶液が、漸増する塩化ナトリウム濃度を有する溶液であることを特徴とする、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
漸増する伝導率を有する前記溶液が、線形的または段階的に増加する伝導率を有することを特徴とする、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
大規模のタンパク質調製で用いられ、前記工程(a)のクロマトグラフィー・カラムが少なくとも30 cmの直径を有することを特徴とする、本発明1001~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記エリスロポエチンが、ヒトエリスロポエチンであることを特徴とする、本発明1001~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記ヒトエリスロポエチンが、SEQ ID NO: 01またはSEQ ID NO: 02のアミノ酸配列を有することを特徴とする、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記単一のポリ(エチレングリコール)残基が、20 kDa~40 kDaの分子量を有することを特徴とする、本発明1001~1013のいずれかの方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の説明
本明細書において、例えば、Toyopearl(登録商標)SP-650を含むカラムなど、陽イオン交換クロマトグラフィー用カラムによる勾配溶出法により、1つのエリスロポエチン分子と1つのポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を精製するための方法が報告され、該方法では、陽イオン交換クロマトグラフィー/Toyopearl(登録商標)SP-650カラムが、1つのエリスロポエチン分子と1つのポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質の回収/溶出を開始する前に2種類の洗浄溶液で洗浄されている。本明細書において、第2の洗浄溶液は、第1の洗浄溶液と比べて増加したpH値を有する。
【0030】
一般的なクロマトグラフィー法およびそれらの使用は、当業者に公知である。例えば、Heftmann, E., (ed.), Chromatography, 5th edition, Part A: Fundamentals and Techniques, Elsevier Science Publishing Company, New York (1992); Deyl, Z., (ed.), Advanced Chromatographic and Electromigration Methods in Biosciences, Elsevier Science BV, Amsterdam, The Netherlands (1998); Poole, C.F., and Poole, S.K., Chromatography Today, Elsevier Science Publishing Company, New York (1991); Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer Verlag (1982); Sambrook, J., et al., (eds.), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989);またはAusubel, F.M., et al., (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York (1987-1994)を参照されたい。
【0031】
「~に添加する」という用語は、溶液をクロマトグラフィー材料と接触させる、精製方法の一部の工程を意味する。これは、(a)溶液を、クロマトグラフィー材料を含有するクロマトグラフィーデバイスに加えるか、または(b)クロマトグラフィー材料を溶液に加えるかのいずれかを表す。(a)の場合では、溶液はデバイスを通過し、クロマトグラフィー材料と溶液中に含まれる物質との間で相互作用させる。例えばpH、伝導率、塩濃度、温度、および/または流速などの条件に応じて、溶液の一部の物質はクロマトグラフィー材料に結合し、よって、さらなる工程においてクロマトグラフィー材料から回収することができる。溶液中の残りの物質はフロースルー中に見出すことができる。「フロースルー」は、デバイスの通過後に得られる溶液を意味し、これは、カラムを洗浄するかまたはクロマトグラフィー材料に結合した物質を溶出させるために用いられる、添加溶液または緩衝液のいずれかであってもよい。1つの態様において、デバイスはカラムまたはカセットである。(b)の場合では、クロマトグラフィー材料は、例えば固体として、例えば精製されるべき関心対象の物質を含有する溶液に加えられ、クロマトグラフィー材料と溶液中の物質と間で相互作用させることができる。相互作用後、クロマトグラフィー材料は、例えばろ過によって取り除かれ、クロマトグラフィー材料に結合した物質もまたそれと一緒に溶液から取り除かれるのに対して、クロマトグラフィー材料に結合しなかった物質は、溶液中に残存する。
【0032】
「結合-溶出モード」という用語は、精製されるべき関心対象の物質を含有する溶液がクロマトグラフィー材料に添加され、それによって、関心対象の物質がクロマトグラフィー材料に結合する、クロマトグラフィー工程の操作モードを意味する。したがって、関心対象の物質は、クロマトグラフィー材料上に保持され、一方で、関心対象ではない物質はフロースルーまたは上清と一緒に取り除かれる。関心対象の物質はその後、溶出液による第2の工程においてクロマトグラフィー材料から回収される。1つの態様において、本明細書において報告される方法は結合-溶出モードで操作される。
【0033】
本明細書で報告される方法において利用される溶液は、粗溶液または緩衝液である。「緩衝液」という用語は、酸性物質またはアルカリ性物質の付加または遊離に起因するpHの変化が溶解した緩衝物質によって水平化される溶液を意味する。そのような性質を有する任意の緩衝物質を用いることができる。一般的に、薬学的に許容される緩衝物質が用いられる。1つの態様において、緩衝液は、リン酸および/もしくはその塩からなるリン酸緩衝液、または酢酸およびその塩からなる酢酸緩衝液、またはクエン酸および/もしくはその塩からなるクエン酸緩衝液、または、モルホリン緩衝液、または2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸緩衝液、またはヒスチジン緩衝液、またはグリシン緩衝液、またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)緩衝液から選択される。1つの態様において、緩衝液は、リン酸緩衝液、または酢酸緩衝液、またはクエン酸緩衝液、またはヒスチジン緩衝液から選択される。任意で、緩衝液は、追加の塩、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、クエン酸ナトリウム、またはクエン酸カリウムなどを含んでもよい。当技術分野において、緩衝液は、それらがその後用いられるものと同等の条件下で調製されることが理解される。例えば、緩衝液のpHは、該溶液が目的とするプロセスにおいてその後用いられる温度と同等の温度で調整される。例えば、緩衝液が、4℃で実施されるクロマトグラフィー法で用いられる場合、pHは、緩衝液が、例えば30℃ではなく、同等の温度を有するときに調整される。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液はリン酸緩衝液である。
【0034】
「連続溶出」および「連続溶出法」という用語は、本願の範囲内で互換的に用いられ、溶出(すなわち、クロマトグラフィー材料からの結合化合物の回収)をもたらす溶液の伝導率が、連続的(すなわち、溶出をもたらす物質の濃度の2%または1%分の変化よりも各段階が小さい一連の小さな段階の単位で、濃度が変化する)に変化する(すなわち、上昇または低下する)方法を意味する。この「連続溶出」では、1つまたは複数の条件、例えば、pH、イオン強度、塩の濃度、および/またはクロマトグラフィーの流量は、線形的にまたは指数関数的にまたは漸近的に変化させてもよい。1つの態様において、変化は線形的である。
【0035】
「段階溶出(step elution)」、「段階溶出(step-wise elution)」、「段階溶出(step-wise elution)法」、および「段階溶出(step elution)法」という用語は、本願の範囲内で互換的に用いられ、例えば、溶出(すなわち、材料からの結合化合物の溶解)をもたらす物質の濃度が一度に、すなわち、1つの値/レベルから次の値/レベルに直接的に、上昇または低下する方法を意味する。この「段階溶出」において、1つまたは複数の条件、例えば、クロマトグラフィーのpH、イオン強度、塩の濃度、および/または流量は、第1の値、例えば出発値から、第2の値、例えば最終値まで、一度に変化する、すなわち、線形的変化とは対照的に、条件は付加的に、すなわち、段階的に変化する。「段階溶出法」では、イオン強度の各増加の後に、新たな画分が収集される。この画分は、対応するイオン強度の増加によりイオン交換物質から回収される化合物を含有する。各増加後、条件は溶出法における次の段階まで維持される。「段階溶出」では、1つまたは複数の条件は、第1の値、例えば出発値から、第2の値、例えば最終値まで一度に変化する。変化は、溶出をもたらす物質の濃度の10%分以上でありうる。すなわち、溶出をもたらす物質の濃度が、第1の段階では100%、第2の段階では110%以上、第3の段階では120%以上である場合である。また、変化は、溶出をもたらす物質の濃度の50%以上でありうる。さらに、変化は、溶出をもたらす物質の濃度の120%以上でありうる。「段階溶出」は、線形的変化とは対照的に、条件が付加的に、すなわち段階的に変化することを意味する。
【0036】
「イオン交換クロマトグラフィー材料」という用語は、イオン交換クロマトグラフィーにおいて固定相として用いられる共有結合性荷電交換基を保有する固定化高分子量マトリックスを意味する。全体的な電荷的中性のために、共有結合していない対イオンはそれに結合する。「イオン交換クロマトグラフィー材料」は、その共有結合していない対イオンを周囲溶液の類似の荷電イオンと交換する能力を有する。その交換可能な対イオンの電荷に応じて、「イオン交換樹脂」は、陽イオン交換樹脂または陰イオン交換樹脂と呼ばれる。荷電基(交換基)の性質に応じて、「イオン交換樹脂」は、例えば、陽イオン交換樹脂の場合、スルホン酸樹脂(S)、またはスルホプロピル樹脂(SP)、またはカルボキシメチル樹脂(CM)と呼ばれる。荷電基/交換基の化学的性質によって、「イオン交換樹脂」はさらに、共有結合した荷電交換基の強度に応じて、強または弱イオン交換樹脂として分類できる。例えば、強陽イオン交換樹脂は荷電交換基として、スルホン酸基、好ましくはスルホプロピル基を有し、弱陽イオン交換樹脂は荷電交換基として、カルボキシル基、好ましくはカルボキシメチル基を有し、弱陰イオン交換樹脂は荷電交換基としてジエチルアミノエチル基を有する。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は強陽イオン交換クロマトグラフィー材料である。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料はToyopearl(登録商標)SP-650クロマトグラフィー材料である。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料はToyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料である。
【0037】
当業者にとって、例えばポリペプチドのアミノ酸配列を、このアミノ酸配列をコードする対応する核酸配列に変換するための手法および方法は周知である。したがって、核酸は、個々のヌクレオチドからなるその核酸配列によって特徴付けられ、同様に、それによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列によって特徴付けられる。
【0038】
「ポリ(エチレングリコール)」または「ポリ(エチレングリコール)残基」という用語は、必須部分としてポリ(エチレングリコール)を含有する非タンパク質性残基を意味する。そのようなポリ(エチレングリコール)残基は、結合反応に必要とされるさらなる化学基を含有することができ、これは、分子の化学合成に起因するか、または分子の部分の最適距離のためのスペーサーである。これらのさらなる化学基は、ポリ(エチレングリコール)残基の分子量の計算で使用されない。加えて、そのようなポリ(エチレングリコール)残基は、一緒に共有結合的に連結される1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)鎖からなることができる。2つ以上のPEG鎖を有するポリ(エチレングリコール)残基は、多岐または分岐型ポリ(エチレングリコール)残基と呼ばれる。分岐型ポリ(エチレングリコール)残基は、例えば、グリセロール、ペンタエリスリオール(pentaerythriol)、およびソルビトールを含む種々のポリオールへのポリエチレンオキシドの付加によって調製することができる。分岐型ポリ(エチレングリコール)残基は、例えば、EP 0 473 084、US 5,932,462において報告される。1つの態様において、ポリ(エチレングリコール)残基は、20 kDa~35 kDaの分子量を有し、かつ直鎖型ポリ(エチレングリコール)残基である。別の態様において、ポリ(エチレングリコール)残基は、35 kDa~40 kDaの分子量を有する分岐型ポリ(エチレングリコール)残基である。
【0039】
「エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)残基との融合」という用語は、エリスロポエチンのN末端または内部リジン残基に化学的に導入されたポリ(エチレングリコール)残基の共有結合性の連結を意味する。融合は、1つのエリスロポエチン分子および1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を含む、タンパク質複合体をもたらす。融合プロセスはまた、PEG化として表され、その産物はPEG化エリスロポエチンとして表される。ポリペプチドとポリ(エチレングリコール)残基との融合/コンジュゲーションは、当技術分野の状況において広く知られており、例えば、Veronese, F.M., Biomaterials 22 (2001) 405-417によって概説される。ポリ(エチレングリコール)残基は、さまざまな官能基を用いて連結することができる。さまざまな分子量、さまざまな形態、ならびにさまざまな連結基を有するポリ(エチレングリコール)を用いることができる(Francis, G.E., et al., Int. J. Hematol. 68 (1998) 1-18; Delgado, C., et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Systems 9 (1992) 249-304も参照されたい)。エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)残基との融合は、例えば、WO 00/44785に記載されているようなポリ(エチレングリコール)残基試薬を用いて水溶液中で実施することができる。融合はまた、Lu, Y., et al., Reactive Polymers 22 (1994) 221-229に従って固相で実施することができる。無作為ではなく、N末端融合はまたWO 94/01451に従って作製することもできる。
【0040】
「エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)とを融合する」および「PEG化」という用語は、1つのエリスロポエチン分子と1つのポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質複合体を得るための、エリスロポエチンのN末端および/または内部リジンでのポリ(エチレングリコール)残基との間の共有結合性の連結の形成を意味する。1つの態様において、エリスロポエチンのPEG化は、5 kDa~40 kDaの間の分子量のNHS活性化直鎖型または分岐型PEG分子を用いて水溶液中で実施される。
【0041】
本願の範囲内で用いられる「結合に適した条件下」という用語およびその文法的同義語は、関心対象の物質、例えばPEG化エリスロポエチンが、例えばイオン交換材料と接触させたときに、固定相に結合することを意味する。これは、関心対象の物質の100%が結合することを必ずしも意味するものではないが、本質的には関心対象の物質の100%が結合する、すなわち、固定相に、関心対象の物質の少なくとも50%が結合する、関心対象の物質の少なくとも75%が結合する、関心対象の物質の少なくとも85%が結合する、または関心対象の物質の95%超が結合することを意味する。
【0042】
エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との化学的融合またはコンジュゲーションは概して、ポリ-PEG化エリスロポエチン(オリゴ-PEG化エリスロポエチン)、モノ-PEG化エリスロポエチン(単一ポリ(エチレングリコール)残基による)、PEG化されていないエリスロポエチン、活性化PEGエステルの加水分解生成物、ならびにエリスロポエチンそれ自体の加水分解生成物などのさまざまな化合物の混合物をもたらす。実質的に均質な形態のモノ-PEG化エリスロポエチンを得るために、これらの物質は相互に除去/分離されなければならない。
【0043】
したがって、本明細書において報告される1つの局面は、以下の工程を含む、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を得るための方法を提供することである:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、陽イオン交換クロマトグラフィー材料を含むカラム
に添加する工程、
(b)約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(c)漸増する伝導率を有する溶液をカラムに添加し、それによって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質およびエリスロポエチンを別々に回収する工程であって、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質が最初に回収される、工程。
【0044】
1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、強陽イオン交換クロマトグラフィー材料である。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、Toyopearl(登録商標)SP-650クロマトグラフィー材料である。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、Toyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料である。
【0045】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、一定の伝導率値を有する溶液である。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液および/または約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液は、約17 mS/cm~約19 mS/cmの一定の伝導率値を有する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約3.0のpHを有しかつ約17 mS/cm~約19 mS/cmの伝導率値を有する。
【0046】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約3.2のpHを有しかつ約17 mS/cm~約19 mS/cmの伝導率値を有する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約3.0のpH値を有しかつ約17 mS/cm~約19 mS/cmの伝導率値を有する。1つの好ましい態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約2.9のpHを有しかつ約17 mS/cm~約19 mS/cmの伝導率値を有するか、または約2.7~約3.0のpHおよび約17 mS/cm~約18 mS/cmの伝導率値を有する。
【0047】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液および約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液は、ほぼ同じ一定の伝導率値を有する。
【0048】
1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、官能基としてスルホプロピルを有するメタクリラートのマトリックスを有する。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は約65 μmの粒子径を有する。
【0049】
本方法は、グリコシル化され、すなわち、哺乳類細胞、1つの態様においては、CHO細胞、またはHEK293細胞、またはBHK細胞、またはPer.C6(登録商標)細胞、またはHeLa細胞によって産生され、その後化学的にPEG化される、PEG化組換えエリスロポエチンの精製に特に有用である。
【0050】
方法の第1工程において、エリスロポエチンはPEG化される。PEG化反応で用いられるポリ(エチレングリコール)(PEG)ポリマー分子は、約20 kDa~40 kDaの分子量を有する(ポリマー化合物としてのPEGは規定した分子量で得られず、実際には分子量分布を有することから、本明細書で用いられる「分子量」という用語は、PEGの平均分子量として理解されるべきである;「約」という用語は、PEG調製において、一部の分子が表示した分子量より大きい重量を有し、一部の分子がそれよい小さい重量を有することを示す、すなわち「約」という用語は、PEG分子の95%が表示した分子量の+/- 10%の範囲内の分子量を有する分子量分布を指す。例えば、30 kDaの分子量は27 kDa~33 kDaの範囲を意味する)。
【0051】
「エリスロポエチン」およびその略号「EPO」という用語は、SEQ ID NO: 1もしくはSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはそれに実質的に相同なタンパク質もしくはポリペプチドを指し、その生物学的特性は、骨髄における赤血球産生の刺激ならびに運命拘束された赤血球前駆細胞の分裂および分化の促進に関する。組換えエリスロポエチンは、組換えDNA技術によって、または内在性遺伝子活性化、すなわちエリスロポエチン糖タンパク質を内在性遺伝子活性化によって発現させることによって、真核細胞、例えば、CHO細胞、またはBHK細胞、またはHeLa細胞などにおける発現を介して調製することができる。例えば、US 5,733,761、US 5,641,670、US 5,733,746、WO 93/09222、WO 94/12650、WO 95/31560、WO 90/11354、WO 91/06667、およびWO 91/09955を参照されたい。1つの態様において、エリスロポエチンはヒトEPOである。1つの態様において、ヒトエリスロポエチンはSEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2に提示されるアミノ酸配列を有する。1つの態様において、ヒトエリスロポエチンはSEQ ID NO: 1に提示されるアミノ酸配列を有する。「エリスロポエチン」という用語はまた、1個または複数個のアミノ鎖残基が変更、欠失、または挿入されており、かつ改変されていないタンパク質と同等の生物学的活性を有する、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2のタンパク質の変異体も意味し、例えば、EP 1 064 951またはUS 6,583,272で報告されている。変異体は、グリコシル化のための1から6つのさらなる部位を有するヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列を有してもよい。PEG化エリスロポエチンの比活性は、当技術分野において公知の種々のアッセイによって決定することができる。精製されたPEG化エリスロポエチンの生物学的活性は、ヒト患者への注入によるタンパク質の投与が、対象の非注入群または対照群と比較して、網状赤血球および赤血球の産生が増加した骨髄細胞をもたらすというものである。本明細書において報告されたような方法に従って入手および精製されるPEG化エリスロポエチンの生物学的活性は、Bristow, A., Pharmeuropa Spec. Issue Biologicals BRP Erythropoietin Bio 97-2 (1997) 31-48に記載の方法によって試験することができる。
【0052】
エリスロポエチンのアミノ酸配列変異体は、エリスロポエチンをコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。そのような改変には、例えば、エリスロポエチンのアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または残基内への挿入、および/または残基の置換が含まれる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを、最終構築物がヒトエリスロポエチンと同等の生物活性を有することを条件として、最終構築物に到達するために作製することができる。
【0053】
保存的アミノ酸置換は、表1において「好適な置換」という見出しの下に示される。より大幅な変化は、表1において「例示的な置換」という見出しの下に提供され、アミノ酸側鎖クラスに関連して以下に説明される。アミノ酸置換がヒトエリスロポエチンに導入されてもよく、産物がヒトエリスロポエチンの生物活性の保持についてスクリーニングされる。
【0054】
【表1】
【0055】
アミノ酸は、共通する側鎖特性に従ってグループ分けされうる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0056】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0057】
エリスロポエチンの化学的PEG化は概して、リジン残基の1つまたは複数のε-アミノ基および/またはN末端アミノ基でPEG化されるエリスロポエチンを含むタンパク質調製物をもたらす。N末端アミノ酸での選択的PEG化は、Felix, A.M., et al., ACS Symp. Ser. 680 (Poly(ethylene glycol)) (1997) 218-238にしたがって実施することができる。選択的N末端PEG化は、Nα-PEG化アミノ酸誘導体の、ペプチド鎖のN-1末端アミノ酸へのカップリングによって、固相合成時に達成することができる。側鎖PEG化は、Nε-PEG化リジン誘導体の成長鎖へのカップリングによって固相合成時に実施することができる。N末端PEG化と側鎖PEG化の組み合わせは、固相合成で上述したように、または活性化PEG試薬をアミノ脱保護ペプチドに適用することによる液相合成によって実行可能である。
【0058】
適切なPEG誘導体は、1つの態様では約5 kDa~約40 kDa、別の態様では約20 kDa~約40 kDa、およびさらなる態様では約30 kDa~約35 kDaの平均分子量を有する活性化PEG分子である。PEG誘導体は、直鎖型または分岐型PEGでありうる。PEG-タンパク質およびPEG-ペプチド複合体の調製で使用するのに適した多種多様なPEG誘導体が利用可能である。
【0059】
活性化PEG誘導体は当技術分野において周知であり、例えば、Morpurgo, M., et al., J. Bioconjug. Chem. 7 (1996) 363-368に、PEG-ビニルスルホンについて記載されている。直鎖型および分岐鎖型PEG種は、PEG化断片の調製に適している。反応性PEG試薬の例は、ヨード-アセチル-メトキシ-PEGまたはメトキシ-PEG-ビニルスルホン(mは1つの態様では約450~約900の整数であり、かつRは、1個~6個の炭素原子を有する直鎖型または分岐鎖型の低級アルキル、例えば、メチル、エチル、イソプロピルなどであり、メチルが好ましい)である:
【0060】
これらのヨード活性化物質の使用は当技術分野において公知であり、例えば、Hermanson, G. T., in Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego (1996) pp. 147-148に記載されている。
【0061】
1つの態様において、PEG種は活性化PEGエステル、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミジルプロピオネート、またはN-ヒドロキシスクシンイミジルブタノエート、またはN-ヒドロキシスクシンイミド、例えば、PEG-NHS(Monfardini, C., et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)である。1つの態様において、PEGは、アルコキシ-PEG-N-ヒドロキシスクシンイミド、例えば、メトキシ-PEG-N-ヒドロキシスクシンイミド(MW30000)を用いて、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル:
により活性化され、式中、Rおよびmは上記で定義されるとおりである。1つの態様において、PEG種はメトキシポリ(エチレングリコール)酪酸のN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルである。「アルコキシ」という用語は、アルキルエーテル基を指し、ここで、「アルキル」という用語は、最大4個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖アルキル基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシなど、好ましくはメトキシを意味する。
【0062】
「実質的に均質な形態」という用語は、得られる、含まれる、または用いられるエリスロポエチンタンパク質融合体または複合体が、規定数のPEG残基を付着させたものであることを意味する。1つの態様において、PEG化エリスロポエチンはモノ-PEG化エリスロポエチンである。調製物は未反応の(すなわち、PEG基を欠く)エリスロポエチン、ポリ-PEG化エリスロポエチン、ならびにPEG化反応過程で生成したポリペプチドの断片を含有してもよい。「実質的に均質な形態」という用語は、モノ-PEG化エリスロポエチンの調製物が、少なくとも50%(w/w)のモノ-PEG化エリスロポエチン、または少なくとも75%のモノ-PEG化エリスロポエチン、または少なくとも90%のモノ-PEG化エリスロポエチン、または95%を上回るモノ-PEG化エリスロポエチンを含有することを意味する。パーセント値は、モノ-PEG化エリスロポエチンが得られるクロマトグラフィー法に対応するクロマトグラムの面積%に基づく。
【0063】
本明細書において、実質的に均質な形態のモノ-PEG化エリスロポエチンを得るための、PEG化エリスロポエチンの精製のための方法が報告される。単純化されかつ技術的により実行可能であるプロセスをもたらす単一のクロマトグラフィー工程のみを使用/利用して、精製プロセスが改善できることが見出された。
【0064】
したがって、本発明は、第1の洗浄工程でのpH値と比べて増加したpH値を有する溶液を利用する洗浄工程を、通常の洗浄工程に加えて導入/適用することによって、単一のクロマトグラフィー工程でToyopearl(登録商標)SP-650クロマトグラフィー材料を用いてモノ-PEG化エリスロポエチンを得る/生成する/精製するための方法を提供する。モノ-PEG化エリスロポエチン中のオリゴ-PEG化エリスロポエチンの不純物の除去/低減がこの追加洗浄の工程を用いることによって改善できることが見出された。
【0065】
したがって、本明細書において報告されるような、エリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を得る/生成する/精製するための方法は、以下の工程を含む:
(a)エリスロポエチンと、
エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との複合体と
の混合物を含む溶液を、
約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液が添加されている、クロマトグラフィー材料としてToyopearl(登録商標)SP-650含むカラム
に添加する工程、
(b)約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液と比べて増加したpH値を有する第2の溶液を添加する工程、
(c)漸増する伝導率を有する溶液をカラムに適用し、それによってエリスロポエチンと単一のポリ(エチレングリコール)残基とを含むタンパク質を回収する工程。
【0066】
副産物からのモノ- PEG化エリスロポエチンの分離/副産物の除去は、増加したpHを有する洗浄溶液を適用した後に、より低いpHを有する第1の洗浄溶液を再度添加する場合に改善することが見出された。したがって、1つの態様において、方法は、工程(b)の後かつ工程(c)の前に、約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液を再度添加する工程をさらに含む。
【0067】
追加の/第2の洗浄工程において、第2の溶液は増加したpH値を有するべきであり、増加はある特定の大きさであることが見出された。
【0068】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは約2.7~約3.1のpHを有する溶液である。1つの好ましい態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは約2.7~約3.0のpHを有する溶液である。1つの好ましい態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは約2.7~約2.9のpHを有する溶液である。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは約2.8~約3.0のpHを有する溶液である。
【0069】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して最大で25%まで増加する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して最大で20%まで増加する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して最大で15%まで増加する。
【0070】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して0.5 pH単位で増加する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して0.4 pH単位で増加する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して0.3 pH単位で増加する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して0.2 pH単位で増加する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して0.1 pH単位で増加する。
【0071】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して0.1から0.5 pH単位で増加する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液のpHは、第1の溶液と比較して0.3から0.5 pH単位で増加する。
【0072】
増加したpH値を有する溶液は、一定の伝導率を有する、すなわち、最大で+/-10%、好ましくは最大で+/-5%変動する伝導率値での溶液として添加されるべきである。
【0073】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、一定の伝導率値を有する溶液である。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液および/または約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液は、約17 mS/cmの一定の伝導率値を有する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液および/または約2.4~約2.7のpH値を有する第1の溶液は、約18 mS/cmの一定の伝導率値を有する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液および/または約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液は、約19 mS/cmの一定の伝導率値を有する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約3.0のpHを有しかつ約17 mS/cmの伝導率値を有する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約3.0のpHを有しかつ約18 mS/cmの伝導率値を有する。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約2.9のpHを有しかつ約19 mS/cmの伝導率値を有する。
【0074】
1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約3.0のpHを有しかつ約17 mS/cm~約19 mS/cmの伝導率値を有する。1つの好ましい態様において、増加したpH値を有する第2の溶液は、約2.7~約2.9のpHを有しかつ約17 mS/cm~約19 mS/cmの伝導率値を有する。
【0075】
当技術分野において、pHおよび伝導率は相互に関連することが理解される。したがって、洗浄溶液のpH値は、伝導率も変化する場合、上述のものと異なる可能性がある。例えば、pHは、伝導率が低い場合はより高い範囲に増加させることができ、同時に、同等の精製結果を達成することができる。
【0076】
増加したpH値を有する溶液を添加する場合、伝導率は第1の洗浄溶液に対して一定に保たれるべきであることが見出されている。1つの態様において、増加したpH値を有する第2の溶液および約2.4~約2.7のpHを有する第1の溶液はほぼ同じ一定の伝導率値を有する。
【0077】
ポリ- PEG化エリスロポエチンがクロマトグラフィー材料から回収された後に、伝導率の増加によってモノ- PEG化エリスロポエチンの溶出が開始される。クロマトグラフィー材料を通過する移動相の伝導率は線形的にまたは段階的に増加する。
【0078】
1つの態様において、漸増する伝導率を有する溶液は、線形的にまたは段階的に増加する伝導率を有する。
【0079】
伝導率勾配では、最初、モノ-PEG化エリスロポエチンがカラムから回収され、その後、実質的に均質な非PEG化エリスロポエチンが回収される。
【0080】
伝導率の増加は、1つの態様では、漸増する塩化ナトリウム濃度を有する溶液を添加することによる。1つの態様において、伝導率を増加させるために添加される溶液は、pH 2.5からpH 3.5のpH値を有する。
【0081】
1つの態様において、遊離エリスロポエチンおよび遊離ポリ(エチレングリコール)と、エリスロポエチン1分子当たり1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)残基を有する、エリスロポエチンとポリ(エチレングリコール)との融合タンパク質(すなわち、タンパク質複合体)との混合物を含む溶液は、1 mg/mlから最大で4 mg/mlのタンパク質が1 mlのクロマトグラフィー材料に適用されるように、クロマトグラフィー材料に添加される。
【0082】
本明細書において報告されるような(特に、クロマトグラフィー材料としてToyopearl(登録商標)SP-650を用いる場合)方法は、大規模なタンパク質の精製で用いることができることが見出された。
【0083】
1つの態様において、方法は、工程(a)のクロマトグラフィーカラムが少なくも30 cmの直径を有する、大規模タンパク質調製において用いられる。
【0084】
「Toyopearl(登録商標)SP-650クロマトグラフィー材料」という用語は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料(東ソー株式会社から入手可能である)を意味する。Toyopearl(登録商標)SP-650クロマトグラフィー材料は、官能基としてスルホプロピルを有するメタクリラートのマトリックスを有し、よって、強陽イオン交換クロマトグラフィー材料である。Toyopearl(登録商標)SP-650Mクロマトグラフィー材料は65 μmの粒子径を有する。
【0085】
1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料はメタクリラートのマトリックスを有する。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は官能基としてスルホプロピルを有する。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、官能基としてスルホプロピルを有するメタクリラートのマトリックスを有する。1つの態様において、陽イオン交換クロマトグラフィー材料は約65 μmの粒子径を有する。
【0086】
以下の実施例、配列表および図面は、本発明の理解を支援するために提供するものであり、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の精神から逸脱することなく、記載された手順において変更を行うことができることが理解される。
【0087】
配列表の説明
SEQ ID NO: 01 ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列。
SEQ ID NO: 02 ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】実施例1において報告される方法によるPEG化エリスロポエチン調製物の精製の溶出クロマトグラム(pH 2.5で洗浄;追加洗浄の工程なし)。
図2】実施例3において報告される方法によるPEG化エリスロポエチン調製物の精製の溶出クロマトグラム(pH 2.5で洗浄;pH 2.8で追加洗浄の工程)。
図3】実施例3において報告される方法によるPEG化エリスロポエチン調製物の精製の溶出クロマトグラム(図2)の拡大図(pH 2.5で洗浄;pH 2.8で追加洗浄の工程)。
図4】実施例2において報告される方法によるPEG化エリスロポエチン調製物の精製の溶出クロマトグラム(pH 3.0で洗浄;追加洗浄の工程なし)。
図5】実施例4において報告される方法によるPEG化エリスロポエチン調製物の精製の溶出クロマトグラム(pH 2.5で洗浄;pH 3.0で追加洗浄の工程)。
【実施例
【0089】
実施例1
追加洗浄の工程(pH 2.5)なしでのToyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料によるPEG化エリスロポエチン調製物のクロマトグラフィー
PEG化エリスロポエチンのクロマトグラフィーを以下に示すように実施した。

PEG化エリスロポエチンクロマトグラフィー:
樹脂:SP Toyopearl 650 M
ベッドボリューム:19.6 ml
試料負荷:1.3 mg/ml樹脂
流速:1.3 ml/分
溶液:A:100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム、
pH 2.5に調整、5 m塩化ナトリウムによりLF=19 mS/cmに調整
B:100 mMリン酸カリウム、375 mM塩化ナトリウム、pH 2.5に調整

適用溶液:100%A溶液
洗浄溶液:100%A溶液
洗浄容量:100 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄2):なし
洗浄容量(洗浄2):なし
線形勾配溶出溶液:100%B溶液
線形勾配:100%B溶液まで196 ml(10カラム容量)以内
波長:280 nm

この方法での溶出クロマトグラムを図1に示す。
【0090】
実施例2
追加洗浄の工程(pH 3.0)なしでのToyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料によるPEG化エリスロポエチン調製物のクロマトグラフィー
PEG化エリスロポエチンクロマトグラフィーを以下に示すように実施した。

PEG化エリスロポエチンクロマトグラフィー:
樹脂:SP Toyopearl 650 M
ベッドボリューム:19.6 ml
試料負荷:1.3 mg/ml樹脂
流速:1.3 ml/分
溶液:A:100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム、
pH 3.0に調整、伝導率値=20.5 mS/cmを有する
B:100 mMリン酸カリウム、375 mM塩化ナトリウム、pH 2.5に調整

適用溶液:100%A溶液
洗浄溶液:100%A溶液
洗浄容量:100 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄2):なし
洗浄容量(洗浄2):なし
線形勾配溶出溶液:100%B溶液
線形勾配:100%B溶液まで196 ml(10カラム容量)以内
波長:280 nm

この方法での溶出クロマトグラムを図4に示す。
【0091】
実施例3
2.8のpHかつ約19 mS/cmの伝導率を有する溶液による追加洗浄の工程を伴う、Toyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料によるPEG化エリスロポエチン調製物のクロマトグラフィー
PEG化エリスロポエチンクロマトグラフィーを以下に示すように実施した:

樹脂:SP Toyopearl 650 M
ベッドボリューム:19.6 ml
試料負荷:1.3 mg/ml樹脂
流速:1.3 ml/分
溶液:A:100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム、
pH 2.5に調整、5 m塩化ナトリウムによりLF=19 mS/cmに調整
B:100 mMリン酸カリウム、375 mM塩化ナトリウム、pH 2.5に調整
追加洗浄(洗浄2):100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム
pH 2.8に調整、水でLF=19 mS/cmに調整

適用溶液:100%A溶液
洗浄溶液:100%A溶液
洗浄容量:100 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄2):100%追加洗浄(洗浄2)溶液
洗浄容量(洗浄2): 100 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄3):100%A溶液
洗浄容量(洗浄3): 60 ml(3カラム容量(CV))
線形勾配溶出溶液:100%B溶液
線形勾配:100%B溶液まで196 ml(10カラム容量)以内
波長:280 nm

この方法での溶出クロマトグラムを図2に示し、かつ拡大図を図3に示す。
【0092】
実施例4
3.0のpHかつ約19 mS/cmの伝導率を有する溶液による追加洗浄の工程を伴う、Toyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料によるPEG化エリスロポエチン調製物のクロマトグラフィー
PEG化エリスロポエチンクロマトグラフィーを以下に示すように実施した:

樹脂:SP Toyopearl 650 M
ベッドボリューム:19.6 ml
試料負荷:1.3 mg/ml樹脂
流速:1.3 ml/分
溶液:A:100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム、
pH 2.5に調整、5 m塩化ナトリウムによりLF=19 mS/cmに調整
B:100 mMリン酸カリウム、375 mM塩化ナトリウム、pH 2.5に調整
追加洗浄(洗浄2):100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム
pH 3.0に調整、水でLF=19 mS/cmに調整

適用溶液:100%A溶液
洗浄溶液:100%A溶液
洗浄容量:100 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄2):100%追加洗浄(洗浄2)溶液
洗浄容量(洗浄2): 100 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄3):100%A溶液
洗浄容量(洗浄3): 60 ml(3カラム容量(CV))
線形勾配溶出溶液:100%B溶液
線形勾配:100%B溶液まで196 ml(10カラム容量)以内
波長:280 nm

この方法での溶出クロマトグラムを図5に示す。
【0093】
実施例5
異なるpH値(pH 2.8、2.9または3.0)かつ約17 mS/cmの伝導率の溶液による追加洗浄の工程を伴う、Toyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料によるPEG化エリスロポエチン調製物のクロマトグラフィー
PEG化エリスロポエチンクロマトグラフィーを以下に示すように実施した:

樹脂:SP Toyopearl 650 M
ベッドボリューム:19.2 ml
試料負荷:0.7 mg/ml樹脂
流速:150 cm/時
溶液:A:100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム、
pH 2.5に調整、5 m塩化ナトリウムによりLF=17 mS/cmに調整
B:100 mMリン酸カリウム、375 mM塩化ナトリウム、pH 2.5に調整
追加洗浄(洗浄2):100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム
pH 2.8、2.9または3.0に調整、水でLF=17 mS/cmに調整

適用溶液:100%A溶液
洗浄溶液:100%A溶液
洗浄容量:96.2 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄2):100%追加洗浄(洗浄2)溶液
洗浄容量(洗浄2): 96.2 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄3):100%A溶液
洗浄容量(洗浄3): 57.7 ml(3カラム容量(CV))
線形勾配溶出溶液:100%B溶液
線形勾配:100%B溶液まで192 ml(10カラム容量)以内
波長:280 nm
【0094】
結果を以下に示す:
収量は、出発材料中のモノPEG化EPO含量に基づき計算される。
【0095】
実施例6
異なるpH値(pH 2.8、2.9または3.0)かつ約18 mS/cmの伝導率の溶液による追加洗浄の工程を伴う、Toyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料によるPEG化エリスロポエチン調製物のクロマトグラフィー
PEG化エリスロポエチンクロマトグラフィーを以下に示すように実施した:

樹脂:SP Toyopearl 650 M
ベッドボリューム:19.2 ml
試料負荷:0.7 mg/ml樹脂
流速:150 cm/時
溶液:A:100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム、
pH 2.5に調整、5 m塩化ナトリウムによりLF=18 mS/cmに調整
B:100 mMリン酸カリウム、375 mM塩化ナトリウム、pH 2.5に調整
追加洗浄(洗浄2):100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム
pH 2.8、2.9または3.0に調整、水でLF=18 mS/cmに調整

適用溶液:100%A溶液
洗浄溶液:100%A溶液
洗浄容量:96.2 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄2):100%追加洗浄(洗浄2)溶液
洗浄容量(洗浄2): 96.2 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄3):100%A溶液
洗浄容量(洗浄3): 57.7 ml(3カラム容量(CV))
線形勾配溶出溶液:100%B溶液
線形勾配:100%B溶液まで192 ml(10カラム容量)以内
波長:280 nm
【0096】
結果を以下に示す:
収量は、出発材料中のモノPEG化EPO含量に基づき計算される。
【0097】
実施例7
異なるpH値(pH 2.8、2.9または3.0)かつ約19 mS/cmの伝導率の溶液による追加洗浄の工程を伴う、Toyopearl(登録商標)SP-650 Mクロマトグラフィー材料によるPEG化エリスロポエチン調製物のクロマトグラフィー
PEG化エリスロポエチンクロマトグラフィーを以下に示すように実施した:

樹脂:SP Toyopearl 650 M
ベッドボリューム:19.2 ml
試料負荷:0.7 mg/ml樹脂
流速:150 cm/時
溶液:A:100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム、
pH 2.5に調整、5 m塩化ナトリウムによりLF=19 mS/cmに調整
B:100 mMリン酸カリウム、375 mM塩化ナトリウム、pH 2.5に調整
追加洗浄(洗浄2):100 mMリン酸カリウム、100 mM塩化ナトリウム
pH 2.8、2.9または3.0に調整、水でLF=19 mS/cmに調整

適用溶液:100%A溶液
洗浄溶液:100%A溶液
洗浄容量:96.2 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄2):100%追加洗浄(洗浄2)溶液
洗浄容量(洗浄2): 96.2 ml(5カラム容量(CV))
洗浄溶液(洗浄3):100%A溶液
洗浄容量(洗浄3): 57.7 ml(3カラム容量(CV))
線形勾配溶出溶液:100%B溶液
線形勾配:100%B溶液まで196 ml(10カラム容量)以内
波長:280 nm
【0098】
結果を以下に示す:
収量は、出発材料中のモノPEG化EPO含量に基づき計算される。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
0007177035000001.app