(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】リチウムリン酸鉄バッテリーを含むポータブル式のドローンアークスタッド溶接機
(51)【国際特許分類】
B23K 9/20 20060101AFI20221115BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221115BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221115BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20221115BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B23K9/20 D
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H02J7/02 H
H02J7/00 N
H02J7/00 302D
(21)【出願番号】P 2019550765
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018023105
(87)【国際公開番号】W WO2018170503
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502301193
【氏名又は名称】ネルソン スタッド ウェルディング,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】シュラフ スコット ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クラップ ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス スティーブン ディー
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0050259(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0210676(US,A1)
【文献】特開2012-147529(JP,A)
【文献】特開2012-139088(JP,A)
【文献】特開平10-064598(JP,A)
【文献】国際公開第2015/193041(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0053967(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32、10/00 - 10/02
B23K 11/00 - 11/36
H01M 10/42 - 10/48
H01M 10/52 - 10/667
H02J 7/00 - 7/12、7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッドをワークに溶接するためのポータブル式のドローンアークスタッド溶接機であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、複数のLFPバッテリーセルを含む、リチウムリン酸鉄(LFP)バッテリーと、
スタッドを保持し、前記LFPバッテリーに電気的に接続され、前記LFPバッテリーからエネルギーを受け取って前記スタッド及び前記ワークに電流を流して溶接部を形成するように構成された、溶接スタッドガンと、
前記ハウジング内に配置され、当該ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の前記LFPバッテリーに電気的に接続されたスタッド溶接バッテリー制御システム(SWBCS)と、
を備え、
前記SWBCSは、当該ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の動作の制御及び監視を実施するために、コンピュータ、プロセッサ、メモリ、及び、それらの中の命令を含み、
前記SWBCSは、一連の連続溶接後に、前記LFPバッテリーの電圧の変化率を測定し、測定された変化率が所定の変化率レベルを超えるか否かを判断するように構成されており、
前記SWBCSは、前記複数のバッテリーセルのバランスを取るように構成されており、また、少なくとも当該SWBCSが前記複数のバッテリーセルのバランスをとった後で、
前記LFPバッテリーに接続された温度センサを介して前記LFPバッテリーの温度を測定
して当該測定されたバッテリー温度を所定の温度範囲に対して比較するように構成されており、
前記SWBCSは、少なくとも、前記LFPバッテリーの測定温度が所定の温度レベルを超える場合、及び/または、計算された溶接率が
所定の溶接率レベルを超える場合、前記ハウジングに配置された1または複数のファンを起動するように構成されており、
前記SWBCSは、少なくとも、
前記LFPバッテリーの測定温度が前記所定の温度レベルを下回る場合、及び/または、前記計算された溶接率が
前記所定の溶接率レベルを
下回る場合、前記1または複数のファンを
選択的に制御するように構成されている
ことを特徴とするポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項2】
前記SWBCSは、更に、測定される溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを超えるか、または、測定されるLFPバッテリーの温度変化率が所定のLFPバッテリーの温度変化率を超えるか、または、測定されるLFPバッテリーの平均電力が所定のLFPバッテリーの平均電力レベルを超えるか、または、測定されるLFPバッテリーの温度が所定のレベルを超えるかした上で、測定されるLFPバッテリーの電流レベルが所定のLFPバッテリーの電流レベルを超える場合に、前記1または複数のファンを起動するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項3】
前記1または複数のファンの起動は、前記所定の溶接頻度レベル、前記所定のLFPバッテリーの温度変化率レベル、前記所定のLFPバッテリーの平均電力レベル、及び、前記所定のLFPバッテリーの電流レベル、の少なくとも1つに対する可変速度を含む
ことを特徴とする請求項2に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項4】
前記SWBCSは、更に、測定される溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを超えるか、または、測定されるLFPバッテリーの温度変化率が所定のLFPバッテリーの温度変化率を超えるか、または、測定されるLFPバッテリーの平均電力が所定のLFPバッテリーの平均電力レベルを超えるかした上で、測定されるLFPバッテリーの温度が所定のLFPバッテリーの温度を超える場合に、前記1または複数のファンを第1速度から当該第1速度よりも速い第2速度へと起動するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項5】
前記1または複数のファンの起動は、前記所定の溶接頻度レベル、前記所定のLFPバッテリーの温度変化率レベル、前記所定のLFPバッテリーの平均電力レベル、及び、前記所定のLFPバッテリーの温度、の少なくとも1つに対する可変速度を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項6】
前記SWBCSは、更に、測定される溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを下回り、測定されるLFPバッテリーの温度変化率が所定のLFPバッテリーの温度変化率を下回り、測定されるLFPバッテリーの平均電力が所定のLFPバッテリーの平均電力レベルを下回り、且つ、測定されるLFPバッテリーの温度が所定のLFPバッテリーの温度を下回る場合に、前記1または複数のファンを第1速度から当該第1速度よりも遅い第2速度へと起動するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項7】
前記1または複数のファンの起動は、前記所定の溶接頻度レベル、前記所定のLFPバッテリーの温度変化率レベル、前記所定のLFPバッテリーの平均電力レベル、及び、前記所定のLFPバッテリーの温度、の少なくとも1つに対する可変速度を含む
ことを特徴とする請求項6に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項8】
前記SWBCSは、更に、測定される溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを下回り、測定されるLFPバッテリーの温度変化率が所定のLFPバッテリーの温度変化率を下回り、測定されるLFPバッテリーの平均電力が所定のLFPバッテリーの平均電力レベルを下回り、且つ、測定されるLFPバッテリーの温度が所定のLFPバッテリーの温度を下回る場合に、前記1または複数のファンを起動停止するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項9】
前記1または複数のファンの起動停止は、前記所定の溶接頻度レベル、前記所定のLFPバッテリーの温度変化率レベル、前記所定のLFPバッテリーの平均電力レベル、及び、前記所定のLFPバッテリーの温度、の少なくとも1つに対する可変速度を含む
ことを特徴とする請求項8に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項10】
前記SWBCSは、更に、前記LFPバッテリーの電圧の測定される変化率が所定のレベルを超える時、バッテリー低エラー信号を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項11】
前記SWBCSは、更に、当該SWBCSが所定の溶接電流設定点と測定される溶接電流との差が所定の溶接電流値を超えると判定する時、バッテリー低エラー信号を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項10に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項12】
前記SWBCSは、更に、当該SWBCSが前記LFPバッテリーの電圧を測定して当該測定された前記LFPバッテリーの電圧が所定の電圧値を下回ると判定する時、バッテリー低エラー信号を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項11に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項13】
前記SWBCSは、前記LFPバッテリーの電圧を測定して所定のLFPバッテリーの電圧レベルと比較することにより、前記LFPバッテリーの充電状態を判定する
ことを特徴とする請求項12に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項14】
前記SWBCSは、前記LFPバッテリーの充電電流を測定し、当該測定された前記LFPバッテリーの充電電流が所定のLFPバッテリーの充電電流レベルを超えているか否かを判定するように構成されている
ことを特徴とする請求項13に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項15】
前記LFPバッテリーは、
当該複数のバッテリーセルへの及び/または当該複数のバッテリーセルからの電気エネルギーの伝送のための複数のバッテリーセルバスバーに電気的に接続された複数のバッテリーセルと、
前記LFPバッテリーへの及び/または前記LFPバッテリーからの電気エネルギーの伝送のために前記複数のバッテリーセルバスバーに電気的に接続された複数のバッテリー端子バスバーと、
前記複数のバッテリーセルの間に配置された複数の熱伝導性の電気絶縁パッドと、
前記LFPバッテリーのハウジングであって、当該ハウジングの少なくとも一部がヒートシンクとして構成されているハウジングと、
前記LFPバッテリーの前記ハウジングの周りに配置された複数の温度センサと、
前記LFPバッテリー内に配置され、前記少なくとも1または複数のファンと流体連通する少なくとも1つの冷却ダクトと、
を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項16】
前記SWBCSは、前記LFPバッテリーの前記複数のバッテリーセルの各々の電圧を測定して、前記LFPバッテリーの前記複数のバッテリーセルの各々の電圧が所定の電圧範囲内であるか否かを判定するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項17】
前記SWBCSは、前記LFPバッテリーの前記複数のバッテリーセルの測定された電圧を、前記複数のバッテリーセルの所定の電圧範囲と比較して、前記LFPバッテリーの前記複数のバッテリーセルのいずれかが前記所定の電圧範囲を上回る及び/または下回る測定された電圧を有する場合、前記LFPバッテリーの利用(mine)を抑止(deter)するように構成されている
ことを特徴とする請求項16に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項18】
前記SWBCSは、前記LFPバッテリーの前記複数のバッテリーセルのいずれかが前記所定の電圧範囲を上回る及び/または下回る測定された電圧を有する場合、前記LFPバッテリーの前記複数のバッテリーセルの充電レベルを、前記所定の電圧範囲に平衡化するように構成されている
ことを特徴とする請求項17に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項19】
前記SWBCSは、当該SWBCSが所定の温度範囲に対して前記温度センサを介して前記LFPバッテリーの温度を測定した後で、当該SWBCS及び溶接スタッドガンコントローラに電気的に接続された溶接スタッドガンコイルコンデンサの充電レベルを測定するように構成されている
ことを特徴とする請求項18に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【請求項20】
前記SWBCSは、測定される電圧レベルが所定の電圧範囲内であるか否かを判定し、測定される電圧レベルが前記所定の電圧レベルを下回る場合に溶接スタッドガンコイルコンデンサを充電するように構成されており、
前記SWBCSは、エラーが検出されたか否か、及び/または、測定値が所定のレベル及び/または所定の範囲の少なくとも1つに準拠していないか否か、を判定した後で、溶接プロセスが進行することを許容するように構成されている
ことを特徴とする請求項19に記載のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年3月17日に出願された米国特許仮出願第62/472,762号、及び、2018年3月19日に出願された米国実用特許出願第15/924,949号に対する優先権を主張する。それらの出願の内容は、あたかも本明細書に完全に記載されているかの如く、当該参照によって本明細書に組み込まれる(incorporated by reference)。
【0002】
[技術分野]
本発明は、スタッド溶接機に関し、より具体的には、リチウムリン酸鉄バッテリーによって駆動されるポータブル式のドローン(描画)アークスタッド溶接機に関する。
【背景技術】
【0003】
スタッド溶接は、スタッドまたは他の締結具(ファスナー)などの締結具(ファスナー)をワークの母材に溶接する技術である。本明細書では、「スタッド」という用語は、スタッド及び他の締結具を一般的に指し示すために用いられており、単なる例示であって、限定するものではない、ということが理解されるべきである。様々なスタッド溶接機システムが、この目的のために、当該技術分野で知られている。1つのそのようなタイプのスタッド溶接機システムは、充電回路、エネルギー貯蔵装置(1または複数のコンデンサー)、及び、溶接スタッドガンを貫通する放電回路、を含み得る容量性放電(CD)システムとして知られている。このような溶接システムの電源は、通常、AC電源の外部ソースである。動作中、エネルギー貯蔵装置は、放電され、溶接スタッドガンに接続されたスタッドとワークとの間にアークを生成し、それによって当該スタッド及び当該ワークを加熱する。アークが完成すると、溶接スタッドガンは、スタッドをワークの加熱領域に押し込み、溶接部を生成する。しかしながら、これらのスタッド溶接機システムは、動作中に外部電源(すなわちAC電源)に接続される必要があるため、持ち運びができない。また、これらのシステムが使用する容量性放電プロセスは、当該技術分野において、アメリカ溶接協会(AWS)D1.1などの主要な規制コードによって、構造用途において要求される完全な強度の溶接には不適であると認識されている。
【0004】
構造用途に適した完全な強度の溶接を生成するために、ドローンアークスタッド溶接システムを適用することが、当該技術分野において知られており、AWS Dl.1の溶接コードによって要求されている。ドローンアークスタッド溶接システムは、高容量電力変換器を含み得て、それは、入力として、単相または三相の産業用AC電源を使用し得て、高電流のDC溶接出力を生成し得る。直径1.27cm(0.5インチ)のスタッドを溶接可能なドローンアークシステムの場合、DC溶接出力電流は、500ミリ秒から600ミリ秒までの持続時間で、800アンペアから900アンペアの間である必要がある。
【0005】
ドローンアークスタッド溶接システムは、真の携帯性(ポータブル性能)を実現するために、バッテリー駆動され得て、入力電源ケーブルに接続される必要がなく、容易な搬送のために小型軽量であり得る。これらのポータブル式のバッテリー駆動システムの場合、最適に適用されるバッテリーの課題は、可能な限り小さく軽量でありながら、必要とされる高い溶接電流と好適に高い溶接電圧とを繰り返し提供することである。
【0006】
バッテリーを含むドローンアークスタッド溶接システムは、経験豊富な溶接工(すなわちオペレータ/ユーザ)の期待に応える速度(例えば、1分あたりのスタッド溶接の数)でスタッド溶接を生成できる必要がある。この要件は、ドローンアークスタッド溶接システムのバッテリーが優れた熱管理能力を持ち、過熱を回避する、という必要性をもたらす。バッテリーは、使用中の過熱によって引き起こされる、またはバッテリーの内部構造の過電流/過熱をもたらす内部短絡を引き起こし得る衝撃/穿刺によって引き起こされる、発熱暴走事象を含む一般的に理解されている危険から、本質的に安全である必要がある。
【0007】
幾つかの既存のポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システムは、幾つかのタイプのバッテリーに依存しており、その各々がそれ自身の用途のトレードオフを有している。例えば、ある既存のポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システムは、複数の鉛酸バッテリーを使用し得て、その結果、比較的大きくて重いポータブル式の溶接システムに帰結し得る。比較的低いエネルギー比(Wh/kg)を有する複数の鉛酸バッテリーを使用すると、持ち運びが難しく、そのため用途に制限のあるポータブル溶接システムに帰結する。当該既存のポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システムは、ドローンアークスタッド溶接に必要な高電流容量を提供するために、当該ポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システムのハウジングにそれぞれ恒久的に配置された4つの12ボルトのDC鉛酸バッテリーを使用し得る。鉛酸バッテリーを含む当該既存のポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システムは、結果として得られるポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システムのサイズと重量とをさらに増加させる内部バッテリー充電器を含み得る。鉛酸バッテリーは、比較的長い再充電時間を必要とし得るため、このようなシステムは、当該制限のために、長時間の作動時間の損失が発生し得る。前述の鉛酸バッテリーの制限とは別に、追加の制限は、過度の熱によるバッテリーの劣化、バッテリーの老化、過度の放電、遅い充電速度、短いサイクル寿命、ならびに、酸及び/または水素ガスの漏れのために可能性のある危険な状態、を含む。また、鉛は有毒な金属であるため、環境的に適切な廃棄のための追加の危険を生成する。
【0008】
ポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システム用の他のバッテリータイプは、ポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システムへの用途を制限する負の属性がある。ニッケルカドミウム(NiCd)バッテリーは、非使用時に急速に電荷(充電状態)を失い得る。NiCdバッテリーは、再充電前に完全に放電されなければ最大充電容量を徐々に失うというメモリー効果として知られる効果を防ぐために、完全に放電/充電される必要がある。当該効果は、時間とともに増加するのみである。最後に、NiCdバッテリーは、有毒なカドミウムを含んでおり、鉛酸バッテリーと同様に、環境的に適切な廃棄のための追加の危険を生成する。(バッテリータイプの特性の情報ソース:http://batteryuniversity.com/learn/article/secondary_batteries).
【0009】
ニッケル金属水素化物(NiMH)バッテリーは、非使用時にNiCdバッテリーよりもさらに電荷(充電状態)を失い得る。NiMHバッテリーは、NiCdバッテリーに比べて、サイクル寿命(充電/放電サイクルの合計数の寿命)もより短い。最後に、NiMHバッテリーは、NiCdバッテリーの2倍の充電時間を必要とする。
【0010】
コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMmCn)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(LiNiMnCoCO2、または「NMC」)を含む、他のリチウムイオンバッテリーの化学的性質は、過電流及び/または過熱からの発熱暴走に対して脆弱であり得て、火災または他の危険な状況をもたらし得る。最後に、コバルトは、鉛やカドミウムと同様、有毒金属であり、環境的に適切な廃棄のための追加の危険を生成する。
【0011】
前述の観点において、低コストで持ち運び可能なドローンアークスタッド溶接システムのニーズが残っている。
【発明の概要】
【0012】
主題の開示は、LFPバッテリーを備えたポータブル式のバッテリー駆動のドローンアークスタッド溶接システムを対象としており、スタッド溶接バッテリー制御システムがこれらの利点を提供する。具体的には、リチウムリン酸鉄(LFP)バッテリーと、スタッド溶接バッテリー制御システム(SWBCS)と、を備えたポータブル式のドローンアークスタッド溶接システムが、ワークにスタッドを溶接するために提供される。ポータブル式のドローンアークスタッド溶接システムは、ハウジングと、前記ハウジング内に配置されたLFPバッテリーと、複数のLFPバッテリーセルと、スタッドを保持して前記LFPバッテリーに電気的に接続され前記LFPバッテリーからエネルギーを受け取って前記スタッド及び前記ワークに電流を流して溶接部を形成するように構成された溶接スタッドガンと、を備える。スタッド溶接バッテリー制御システム(SWBCS)は、前記ハウジング内に配置され、当該ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の前記LFPバッテリーに電気的に接続される。前記SWBCSは、当該ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の動作の制御及び監視を実施するために、以下に説明されるように、コンピュータ(デジタルコントローラ)、メモリ、及び、それらの中の命令を含む。
【0013】
LFPバッテリーと、スタッド溶接バッテリー制御システム(SWBCS)と、を備えたポータブル式のドローンアークスタッド溶接機が、ワークにスタッドを溶接するために提供される。当該ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置され得て複数のLFPバッテリーセルを含み得るリチウムリン酸鉄(LFP)バッテリーと、スタッドを保持して前記LFPバッテリーに電気的に接続され前記LFPバッテリーからエネルギーを受け取って前記スタッド及び前記ワークに電流を流して溶接部を形成するように構成された溶接スタッドガンと、前記ハウジング内に配置され当該ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の前記LFPバッテリーに電気的に接続されたスタッド溶接バッテリー制御システム(SWBCS)と、を含み得る。前記SWBCSは、当該ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の動作の制御及び監視を実施するために、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータと、それらの中の命令と、を含む。前記SWBCSは、所定の温度レベルに対して、温度センサを介して前記LFPバッテリーの温度を測定するように構成されている。前記SWBCSは、前記測定温度が前記所定の温度レベルを下回る場合、及び/または、本明細書に記載される他の制御変数に基づいて、前記1または複数のファンを起動停止するように構成されている。
【0014】
LFPバッテリーをポータブル式のドローンアークスタッド溶接機に組み込む利点は、少なくとも、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機が構造用途のための完全な強度のスタッド溶接を提供できることを含む。ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機は、AWS Dl.1の要件を満たしており、一人のユーザ/オペレータが簡単に持ち運べる小型で軽量のパッケージとなっている。ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機は、LFPバッテリーを再充電する必要無しで、100個以上の1.27cm(0.5インチ)のスタッド溶接物を溶接可能である。LFPバッテリーを組み込んだポータブル式のドローンアークスタッド溶接機は、LFPバッテリーに損傷を与えることなく連続的にトリクル(すなわち、低速)充電する能力、トリクル充電速度が溶接放電速度を超えること(すなわち、溶接がLFPバッテリーを放電してもトリクル充電を追い越さない)、再充電前に完全放電を必要とするバッテリーメモリーの問題がないこと、を含む多数の特有のバッテリー性能属性を有しており、熱暴走状態から本質的に安全であり、廃棄時に有毒または有害な廃棄物を作成しない。
【0015】
本開示の他の利点は、添付の図面に関連して考慮される時、以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解されるように、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一態様による、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の側方斜視図であり、少なくとも、当該ポータブル式ドローンアークスタッド溶接機をオペレータ/ユーザが容易に持ち運ぶことを可能にするハンドルを有するハウジングを示している。
【0017】
【
図2】本発明の一態様による、ハウジングが取り外されたポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の斜視図であり、少なくとも、LFPバッテリー、ガンコイルコンデンサ、スタッド溶接機バッテリー制御システム(SWBCS)ボード、溶接スタッドガン制御ボード、入力制御システムボード、ビデオディスプレイボード、及び、LCDディスプレイを示している。
【0018】
【
図3】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の一方の側面図である。
【0019】
【
図4】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の他方の側面図である。
【0020】
【
図5】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の平面図である。
【0021】
【
図6】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の分解図である。
【0022】
【
図7】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機のLFPバッテリーの側面図である。
【0023】
【
図8】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機の概略図である。
【0024】
【
図9A】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機のSWBCS内の制御ロジックを含む、制御ロジックの幾つかの実施形態を示すフローチャートである。
【
図9B】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機のSWBCS内の制御ロジックを含む、制御ロジックの幾つかの実施形態を示すフローチャートである。
【
図9C】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機のSWBCS内の制御ロジックを含む、制御ロジックの幾つかの実施形態を示すフローチャートである。
【
図9D】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機のSWBCS内の制御ロジックを含む、制御ロジックの幾つかの実施形態を示すフローチャートである。
【
図9E】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機のSWBCS内の制御ロジックを含む、制御ロジックの幾つかの実施形態を示すフローチャートである。
【
図9F】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機のSWBCS内の制御ロジックを含む、制御ロジックの幾つかの実施形態を示すフローチャートである。
【0025】
【
図10】
図2のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機のLCDユーザインタフェースの例示的なスクリーンショットである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照して、幾つかの図を通して、同様の数字は対応する部品を示している。各図において、スタッドをワークに溶接するためのポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20が、全体的に示されている。ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20は、ハウジング22を備えており、それは、全体的に直方体形状を有し、前壁24、後壁26、上壁28、底壁30、第1側壁32及び第2側壁34を含んでいる。
図1乃至
図6に最もよく示されているように、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20は、LFPバッテリー38、SWBCS42、溶接ガンコイルコンデンサ46、溶接電流センサ52、溶接ガン制御システムボード54、入力検知制御システムボード62、スイッチングトランジスタ(例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT))66、一対の溶接端子68、LCDユーザインタフェース80、少なくとも一対の冷却ファン84、充電ポート86、電源スイッチ88、溶接ガン制御コネクタ92、ハンドル94、脚部96、及び、LCDユーザインタフェースボード98、を含んでいる。
【0027】
図2乃至
図6は、一実施形態のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20を、ハウジング22が取り外された状態で示している。第1側壁32は、一対の溶接端子68を含んでいる。溶接端子68は、負(「-」)端子68A及び正(「+」)端子68Bを含んでいる。また、第1側壁32には、LCDユーザインタフェース80が配置されている(例えば、
図11を参照)。LCDユーザインタフェース80は、オペレータ/ユーザがポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20を操作可能で、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の動作の様々な特性を調整可能な、容量性タッチスクリーンである。第1側壁32はまた、電源(オン/オフ)スイッチ88を含んでいる。第1側壁32はまた、溶接ガン制御コネクタ92を含んでいる。溶接ガン制御コネクタ92は、(
図9に示すように)溶接ガン82を受け入れるように構成されている。第1側壁32は、ハウジング22内への及び/またはハウジング22からの空気の流れを促進するように構成され、且つ、ファン84を伴って構成された通気口102を含んでいる。
【0028】
コンポーネント棚100が、前壁24及び/または後壁26に取り付けられており、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の1または複数の部品のための取り付け位置を含んでいる。幾つかの実施形態において、コンポーネント棚100は、SWBCS42を含んでいる(すなわち、支持している)。SWBCS42は、1または複数のコンピュータコンポーネント(例えば、プロセッサ、メモリ、及び/または、チップ上のシステム)を含む1または複数のプリント回路基板(PCB)として構成されている。SWBCS42は、コンポーネント棚100を介して、配線または他の電気的インタフェースなどにより、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の1または複数の他のコンポーネントに接続されている。コンポーネント棚100は、溶接ガンコイルコンデンサ46を含んでいる。溶接ガンコイルコンデンサ46は、コンポーネント棚100を介して、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の1または複数の他のコンポーネントに接続されている。コンポーネント棚100は、溶接電流センサ52を含んでいる。溶接電流センサ52は、1または複数のコンピュータコンポーネント(例えば、プロセッサ、メモリ、及び/または、チップ上のシステム)を含む1または複数のプリント回路基板(PCB)として構成されている。溶接電流センサ52は、コンポーネント棚100を介して、配線などにより、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の1または複数の他のコンポーネントに接続されている。コンポーネント棚100は、溶接ガン制御システムボード54を含んでいる。溶接ガン制御システムボード54は、1または複数のコンピュータコンポーネント(例えば、プロセッサ、メモリ、及び/または、チップ上のシステム)を含む1または複数のプリント回路基板(PCB)として構成されている。溶接ガン制御システムボード54は、コンポーネント棚100を介して、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の1または複数の他のコンポーネントに接続されている。コンポーネント棚100は、入力検知制御システムボード62を含んでいる。入力検知制御システムボード62は、1または複数のコンピュータコンポーネント(例えば、プロセッサ、メモリ、及び/または、チップ上のシステム)を含む1または複数のプリント回路基板(PCB)として構成されている。入力検知制御システムボード62は、コンポーネント棚100を介して、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の1または複数の他のコンポーネントに接続されている。コンポーネント棚100は、スイッチングトランジスタ(例えば、集積バイポーラゲートトランジスタ(IGBT))66を含んでいる。IGBT66は、ドローンアークスタッド溶接のための溶接放電電流を調整するために必要な役割を実行するためのスイッチングトランジスタとして構成されており、付加的に、SWBCS42によって要求される時にはバッテリー放電電流を無効にする手段を提供する。IGBT66は、そのSWBCS42との統合(集積)によって、大型で嵩張るリレー(例えば、900Aリレー)、または、高価で及び/または大きく重いトランジスタに、置き換わる。IGBT66は、コンポーネント棚100を介して、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の1または複数の他のコンポーネントに接続されている。コンポーネント棚100は、LCDユーザインタフェース80用のLCDユーザインタフェースドライバボード98を含んでいる。LCDユーザインタフェースドライバボード98は、1または複数のコンピュータコンポーネント(例えば、プロセッサ、メモリ、及び/または、チップ上のシステム)を含む1または複数のプリント回路基板(PCB)として構成されている。LCDユーザインタフェースドライバボード98は、コンポーネント棚100を介して、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の1または複数の他のコンポーネントに接続されている。
【0029】
背壁26が、コンポーネント棚100に接続されている。後壁26は、充電ポート86及び通気口102を含んでいる。充電ポート86は、充電コード(図示せず)を受け入れるように構成されており、通気口102は、1または複数のファン84と係合するように構成されている。通気口102は、1または複数のファン84を介して、ハウジング22内への、及び/または、ハウジング22からの空気流を促進するように構成されている。第1側壁32及び第2側壁34は、底壁30と係合するように構成されている。底壁30は、LFPバッテリー38のための支持体、1または複数のファン84、及び、1または複数の脚部96、を含んでいる。
【0030】
図7を参照すると、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20のLFPバッテリー38の一実施形態が示されている。LFPバッテリー38は、複数の個別のLFPバッテリーセル70を含んでいる。本明細書で説明されるように、LFPバッテリーセル70は、LFPセル70のアレイに配置されており、LFPセル70のアレイが組み合わされて(すなわち、物理的及び/または電気的に)、LFPバッテリー38を形成している。実施形態において、LFPバッテリーセル70は、電気的に直列に接続(すなわち、結合)されている。例えば、第1のLFPバッテリーセル70の正端子が、第2のLFPバッテリーセル70の負端子に接続されている。この構成は、例えば、限定されることなく、16個のLFPバッテリーセル70が直列に結合されるまで繰り返され得る。追加的または代替的に、LFPバッテリーセル70は、電気的に並列に接続される。
【0031】
実施形態では、LFPバッテリーセル70は、直径26mm×長さ65mmなどの形状/サイズである。LFPバッテリーセル70の他のサイズ及び/または形状も企図され得て、本明細書で説明されるLFPバッテリーセル70の特徴は例示的であって限定的ではない、ということが理解されるべきである。LFPバッテリーセル70は、例えば、90~120Wh/kgの比エネルギー、非常に低い内部抵抗、1000~2000サイクルのサイクル寿命(80%の放電深度に基づく)、1~2時間の充電時間、5%未満/月(室温)の自己放電率、3.2~3.3Vの公称セル電圧、3.60V/セルの充電カットオフ電圧、2.50V/セルの放電カットオフ電圧、といった本明細書に記載のLFPバッテリーの特性を有する。
【0032】
図7に戻って、LFPバッテリーセル70は、セルバスバー76によって互いに電気的に並列に接続された9個のLFPセルのアレイ(すなわち、列)に配置されて示されている。セルバスバー76は、セルバスバー76の第1端が第1LFPバッテリーセル70に接続され、セルバスバー76の後続の端子(図示せず)が第2乃至第9LFPバッテリーセル70に電気的に接続するように構成され、
図7に示すようなLFPバッテリーセル70の列を形成している。限定ではないが、例えばLFPバッテリーセル70の上方及び下方など、LFPバッテリーセル70の周りに配置されているのは、絶縁/熱パッド74である。断熱/熱パッド74は、LFPバッテリーセル70を冷却するための熱伝導を提供する。
【0033】
バッテリー端子バスバー78は、LFPバッテリーセル70に電気的に接続されて示されている。バッテリー端子バスバー78は、LFPバッテリーセル70内に貯蔵された電気エネルギーを分配し、及び/または、少なくともSWBCS42を介して充電ポート86から電気エネルギーを受け取るように構成された末端部79を含んでいる。
【0034】
LFPバッテリー38は、LFPバッテリーセル70、絶縁/熱パッド74、セルバスバー76、バッテリー端子バスバー78、及び/または、温度センサ44を受容するように構成されたヒートシンク壁72を含んでいる。ヒートシンク壁72は、アルミニウムなどの高い熱伝導率の材料で構成されている。なぜなら、ヒートシンク壁72は、
図7に示すように、LFPバッテリーセル70からの熱を、少なくとも中央ダクトDを含むLFPバッテリー38の全ての側における設計されたダクト空間を通る強制的な空気流内に伝達するための、一体的手段として機能するからである。ヒートシンク壁72は、当該ヒートシンク壁72が底壁30などのポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20に堅固に取り付けられることを許容するコンポーネント(図示せず)と共に構成されている。ヒートシンク壁72は、ファン84からの空気流、及び/または、LFPバッテリーセル70からの及びLFPバッテリーセル70の周りの熱放散、を促進するための開口部(すなわち、開口)を含んでいる。ヒートシンク壁72は、
図7に示すように、これに限定されないが例えば当該ヒートシンク壁72の上面及び底面において、1または複数の温度センサ44を受け入れるように構成されている。
【0035】
図8は、一実施形態のポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の概略図である。ハウジング22が、複数のLFPバッテリーセル70を含むLFPバッテリー38を収容している。温度センサ44が、
図7に示されるように、LFPバッテリー38上に配置されている。LFPバッテリー38と温度センサ44との両方が、SWBCS42に電気的に接続されている。実施形態では、SWBCS42は、当該SWBCS42が複数のLFPバッテリーセル70の電圧レベルを平衡化する(バランスをとる)前、その最中、またはその後に、SWBCS42に記憶された1または複数の所定の温度レベルまたは範囲に対して、温度センサ44を介してLFPバッテリー38の1または複数の温度を測定するように構成されている。SWBCS42は、LFPバッテリー38の測定温度がSWBCS42に記憶された所定の温度レベルまたは範囲を超える場合、及び/または、本明細書に記載される他の制御変数に応じて、ハウジング22内に配置された1または複数のファン84を選択的に制御するように構成されている。SWBCS42は、前記測定温度がSWBCS42に記憶された前記所定の温度レベルまたは範囲を下回るとき、及び/または、本明細書に記載される他の制御変数に応じて、ファン制御モジュール106を介して、1または複数のファン84を選択的に制御するように構成されている。
【0036】
LFPバッテリー38は、ハウジング22上に配置された充電ポート86を介して充電される。充電ポート86は、SWBCS42に電気的に接続されている。SWBCS42は、LFPバッテリー38のLFPバッテリーセル70に供給される電流を監視、測定、及び/または調整する充電電流センサ50を含んでいる。充電リレー104が、LFPバッテリー38の充電回路に含まれている。充電リレー104は、SWBCS42が熱検知モジュール108及び/または温度センサ44を介して、LFPバッテリー38の測定温度がSWBCS42に記憶された所定の温度レベルを超えていると判断する時などにおいて、充電サイクル中にSWBCS42によって起動される。追加的または代替的に、充電リレー104は、SWBCS42がセル検知及び平衡化モジュール110を介して、LFPバッテリー38のLFPバッテリーセル70の充電レベルがSWBCS42に記憶された所定の充電レベルを超えていると測定されたと判断する時などにおいて、充電サイクル中にSWBCS42によって起動される。SWBCS42は、電源スイッチ88がオンにされている(すなわち、ユーザによって起動されている)か否かにかかわらず、LFPバッテリー38を監視、測定、及び/または調整できることが、留意されるべきである。
【0037】
電源スイッチ88は、電源イネーブルモジュール112を伴って構成されている。電源イネーブルモジュール112は、ハウジング22上に配置される電源スイッチ88の位置を判定するために、SWBCS42内に含まれている。例えば、電源イネーブルモジュール112は、電源スイッチ88の状態に関する信号をSWBCS42に提供する。この信号は、SWBCS42によって、ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20が、オフ状態、充電専用状態、充電及び溶接状態、または溶接状態、のいずれであるかを判定するために使用される。
【0038】
SWBCS42は、セル検知及び平衡化モジュール110を伴って構成されている。セル検知及び平衡化モジュール110は、LFPバッテリー38のLFPバッテリーセル70の電圧及び電流のレベルを、監視、測定及び/または調整するための、電流及び電圧測定の装置及び/またはアプリケーションを含んでいる。実施形態において、セル検知及び平衡化モジュール110は、LFPバッテリーセル70のバッテリー平衡化を実行する。バッテリー平衡化(バッテリーバランシング)は、各LFPバッテリーセル70の電圧レベルを決定すること、決定された電圧を比較すること、及び、SWBCS42に記憶された所定の電圧に従って当該電圧を調整すること、を含む。例えば、LFPバッテリーセル70の所定の電圧は3.0Vであり得る。SWBCS42によるLFPバッテリーセル70の測定は、幾つかのLFPバッテリーセル70が3.0Vより上であり、幾つかは3.0Vより下であり、幾つかは3.0Vである、と決定する。実施形態において、SWBCS42のセル検知及び平衡化モジュール110は、3.0Vを超えるLFPバッテリーセル70からエネルギーを放電し、3.0V未満であるLFPバッテリーセル70とそれらを平衡化させる。実施形態において、セル検知及び平衡化モジュール110及び/またはSWBCS42は、オペレータ/ユーザのためにLCDユーザインタフェース80上に1または複数のメッセージを表示し、LFPバッテリー38のLFPバッテリーセル70の状態を記述する。
【0039】
SWBCS42はまた、共にリンクされた複数のDC/DCコンバータとして、あるいは、当該複数のDC/DCコンバータよりも大きい容量を有する単一のDC/DCコンバータに「デイジーチェーン」されたものとして構成された電源58を含んでいる。当該単一のDC/DCコンバータは、LFPバッテリー38のバッテリー端子バスバー78からの変動電圧を処理するために、複数のDC/DCコンバータよりも広い動作範囲を伴って構成される。付加的に、当該単一のDC/DCコンバータには、電源スイッチ88及び/または電源イネーブルモジュール112の動作によって起動されるイネーブル入力ピン(図示せず)が装備され得る。電源58の単一のDC/DCコンバータを使用することにより、電源スイッチ88を通る電流は、オペレータ/ユーザの安全のため及び/または充電ポート86またはポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20と同じタイプの他の同等の溶接機を使用した充電による自動起動のため、より低レベルに維持される。電源58は、溶接電力スイッチング電源60にも接続されている。溶接電力スイッチング電源60は、溶接放電回路114の一部であるIGBT66に接続されている。
【0040】
SWBCS42はまた、溶接ガンコイルコンデンサ46、溶接ガン制御システムボード54、及び/または、溶接ガン82、に接続されたブースト充電モジュール48を含んでいる。ブースト充電モジュール48は、SWBCS42を介して、スタッド溶接用の溶接ガン82のソレノイドに供給するのに十分なエネルギーで溶接ガンコイルコンデンサ46を充電する電流を供給するように構成されている。
【0041】
SWBCS42は、溶接電流センサ52、溶接ガン制御システムボード54、LCDユーザインタフェース80、及び、溶接放電回路114、にも接続されている入力検知制御システムボード62に接続されている。
【0042】
ポータブル式のドローンアークスタッド溶接機20の溶接放電回路114は、溶接電流センサ52、コンデンサ56、溶接チョーク64、IGBT66、及び、溶接端子68を含んでいる。溶接電流センサ52は、例えば、SWBCS42が過電流状態に迅速に応答することを可能にする高速パルスを検出する高周波応答特性を備えたホール効果トランスデューサとして構成されている。溶接電流センサ52は、溶接回路(すなわち、溶接放電回路114)からSWBCS42を分離するように構成されている。溶接電流センサ52は、電気ノイズがSWBCS42と干渉することを防ぐ保護バリアを提供するホール効果トランスデューサとして構成されている。
【0043】
図9Aを参照して、フローチャートが、SWBCS42の動作及びそのプログラミングを詳述している。本明細書で説明されるように、SWBCS42は、少なくともプロセッサ及びメモリを含むコンピュータ内に実装される。コンピュータの非限定的な例は、システムオンチップ及びデジタルコントローラである。
【0044】
初期化の後、SWBCS42は、多くのシステムレベルタスクを実行する。SWBCS42のこれらのシステムレベルタスクは、同時に、直線的に、またはそれらの組み合わせで、実行される。実施形態では、少なくとも溶接機20及び/またはSWBCS42の動作状態に応じて、幾つかのシステムレベルタスクは実行されない。
【0045】
図9Bにおいて、SWBCS42により実行される多数のシステムレベルタスクのうちの最初のものが示されている。当該最初のタスクは、バッテリー電圧の測定である。SWBCS42は、LFPバッテリー38の電圧を測定する。LFPバッテリー38の電圧の測定は、LFPバッテリー38の各LFPバッテリーセル70について経時的に平均化される複数のサンプリングを含む。LFPバッテリー38の電圧が(制御システム42にプログラムされたような)所定の閾値を下回る場合、低_LFPバッテリー電圧信号が生成され、LCDユーザインタフェース80に表示される。LFPバッテリー38の電圧が所定の閾値にある場合、OK_LFPバッテリー電圧信号が生成され、LCDユーザインタフェース80に表示される。
【0046】
図9Eに更に記載されるように、システムレベルタスクのバッテリー電圧測定は、少なくともSWBCS42及び/または溶接機20の他のコンポーネントによる幾つかの充電状態(SOC)の検出/反応を含む。一連の連続した溶接からの測定されたLFPバッテリー38の電圧の変化率が、所定のレベルを超える時、バッテリー低エラーが生成される。あるいは、溶接電流設定点と実際の溶接電流との間の差が所定の値を超え、測定されたLFPバッテリー38の電圧が所定の電圧レベルを下回っている場合、少なくともSWBCS42によって「Battery Low」エラーメッセージが生成され、LCDユーザインタフェース80に表示される。追加的または代替的に、SWBCS42は、LFPバッテリー38の電圧を測定し、LCDユーザインタフェース80に表示されるLFPバッテリー38の充電状態(SOC)を判定する。追加的または代替的に、SWBCS42は、LFPバッテリー38の充電電流を測定し、及び/または、LFPバッテリー38の測定された充電電流が所定の充電電流レベルを超えているか否かを判定する。LFPバッテリー38の測定された充電電流(及び/または他の関連データ)は、LCDユーザインタフェース80に表示される。
【0047】
別のシステムレベルタスクは、個別セル電圧の測定である。SWBCS42は、LFPバッテリー38の並列接続されたLFPバッテリーセル70の各バンクの電圧を測定するように構成される。LFPバッテリー38の並列接続されたLFPバッテリーセル70の各バンクの電圧の測定値を取得した後、SWBCS42は、LFPバッテリーセル70の個々のバンクを互いに比較して、平衡化が必要かどうかを判定する。バッテリー平衡化(バッテリーバランシング)は、例えば、LFPバッテリー38のLFPバッテリーセル70のバンクの全ての電圧レベルが所定の狭い範囲内の電圧レベルになるまで、LFPバッテリー38のLFPバッテリーセル70のバンクからエネルギーを転送することを含む。SWBCS42は、他のシステムレベルタスクを完了しながら平衡化を継続するように構成される。
【0048】
バッテリーバランシングが要求される場合(すなわち、LFPバッテリー38のセルの電圧が不均衡及び/または不均等である場合)、SWBCS42は、LFPバッテリー38のLFPバッテリーセル70がバランスをとる(すなわち、所定のバランス範囲内となる)まで、セルからのエネルギーを転送するように構成されている。バッテリーバランシングが要求されない場合(すなわち、LFPバッテリー38のセルの均衡がとれている場合)、SWBCS42はこのタスクを実行しない。
【0049】
SWBCS42の別のシステムレベルタスクは、バッテリーセル温度センサの測定である。SWBCS42は、温度センサ44を使用して、LFPバッテリー38の温度を測定する。温度センサ44は、例えば、熱電対、または、電気エネルギーを使用して温度を測定するように構成された負の温度係数(NTC)サーミスタ、であり得る。温度センサ44は、溶接機20の少なくともLFPバッテリー38の周りに配置されている。温度センサ44は、例えば、ハウジング22の周りにも配置されている。本明細書で説明されるように、温度センサ44は、LFPバッテリー38の1または複数のセルの周囲または近くなどの、LFPバッテリー38内に配置されている。
【0050】
温度センサ44を使用して、SWBCS42は、LFPバッテリー38を含むがこれに限定されない温度センサ44の様々な位置における温度の温度測定値(すなわち、読み取り値)を受け取る。温度センサ44から温度測定値を受信すると、SWBCS42は、アプリケーションソフトウェアを使用して、例えば、LFPバッテリー38(または溶接機20の他のコンポーネント)が冷却(すなわち、温度の低下、または、溶接プロセスが終了されるべきかどうか)を必要とするかどうかを決定する。
【0051】
SWBCS42が、温度センサ44から取得されたデータを介して、温度センサ44からの温度測定値が所定の温度範囲(すなわち温度「OK」)内にあると判定する場合、SWBCS42は、溶接機20の1または複数のファン84をオフにする(または選択的に制御する)。実施形態では、SWBCS42は、起動時に、システムレベルのタスクであるバッテリーセル温度センサ測定タスクを実行する前に、ファン84を自動的に起動する。この起動は、例えば溶接機20が高温環境にある状況(例えば、暑い日の閉ざされた車両、日光に浸った状態、または、温度センサ44を介して高温を検知する前の高い溶接率に応じたプリエンプティブ動作)で、LFPバッテリー38及び/または溶接機20の他のコンポーネントの温度を下げるために生じる。
【0052】
SWBCS42が、温度センサ44から取得されたデータを介して、温度センサ44からの温度測定値が所定の温度範囲内にない(すなわち、温度「高すぎる」)と判定する場合、SWBCS42は、溶接機20の1または複数のファン84を起動する。
【0053】
SWBCS42は、所定の期間、例えば、溶接機20の電源がオンである間、あるいは、溶接機20の電源がオンで溶接モードで動作している間(すなわち、ワークへの電流の放電中、または充電中)、温度センサ44からのデータの取得を継続する。
【0054】
図9Dにさらに記載されるように、システムレベルタスクのバッテリーセル温度センサの測定は、少なくともSWBCS42及び/または溶接機20の他のコンポーネントによる熱測定/判定を含む。
【0055】
本明細書で説明されるように、溶接機20は、1または複数のファン84を含む。ファン84は、1または複数の速度で動作するように、及び/または、可変速度で動作するように(例えば、選択的に制御するように)、構成されている。例えば、限定するものではないが、第1ファン84は、「低速」及び「高速」で動作するように構成されており、低速での第1ファン84の速度(すなわち、rpm)は、約500rpmであり得て、高速は、約1000rpmであり得る。第2ファン84は、当該第2ファン84の動作範囲全体に亘って、可変速度で動作するように構成されている。追加のファン84が溶接機20内に含まれ得て、通気口102及び/または他の気流管理装置(図示せず)と共に動作するように構成され得る。
【0056】
第1の熱測定/判定は、「オフ」から第1速度(例えば「低速」)へのファン84の移行を含む。測定された溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを超えるか、測定されたバッテリー温度変化率が所定の温度変化率レベルを超えるか、または、LFPバッテリー38からの測定された平均電力が所定の平均電力レベルを超えるかして、更にLFPバッテリー38の測定された温度レベルが所定のレベルを超えると、ファン84は「オフ」から第1速度に移行するように構成されている。別の実施形態では、「オフ」から、それぞれの所定のレベルを超える量に比例し得る(または別の関係を有し得る)可変速度へ移行する形態である。
【0057】
第2の熱測定/判定は、第1速度(例えば「低速」)から第2速度(例えば「高速」)へのファン84の移行を含む。測定された溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを超えるか、測定されたバッテリー温度変化率が所定の温度変化率レベルを超えるか、または、LFPバッテリー38からの測定された平均電力が所定の平均電力レベルを超えるかして、更にLFPバッテリー38の測定された温度が所定の温度を超えると、ファン84は第1速度(例えば「低速」)から第2速度(例えば「高速」)に移行するように構成されている。別の実施形態では、第1可変速度から第2可変速度に移行する形態において、その各々が、それぞれの所定のレベルを超える量に比例し得る(または別の関係を有し得る)。
【0058】
第3の熱測定/判定は、第1速度(例えば「高速」)から第2速度(例えば「低速」)へのファン84の移行を含む。測定された溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを下回り、測定されたバッテリー温度変化率が所定の温度変化率レベルを下回り、LFPバッテリー38からの測定された平均電力が所定の平均電力レベルを下回り、且つ、LFPバッテリー38の測定された温度が所定の温度を下回ると、ファン84は第2速度(例えば「高速」)から第1速度(例えば「低速」)に移行するように構成されている。別の実施形態では、第2可変速度から第1可変速度に移行する形態において、その各々が、それぞれの所定のレベルを超える量に比例し得る(または別の関係を有し得る)。
【0059】
第4の熱測定/判定は、「低速」から「オフ」(非稼働状態)へのファン84の移行を含む。測定された溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを下回り、測定されたバッテリー温度変化率が所定の温度変化率レベルを下回り、LFPバッテリー38からの測定された平均電力が所定の平均電力レベルを下回り、且つ、LFPバッテリー38の測定された温度が所定の温度を下回ると、ファン84は「低速」からオフに移行するように構成されている。別の実施形態では、可変速度からオフに移行する形態において、それぞれの所定のレベルを下回る量に比例し得る(または別の関係を有し得る)。
【0060】
別のシステムレベルタスクは、ガンコンデンサの測定である。SWBCS42は、溶接ガンコイルコンデンサ46が完全に充電されているか否かを判定する。SWBCS42が、溶接ガンコイルコンデンサ46が完全に充電されていないと判定する場合、SWBCS42は、ブースト充電モジュール48を起動して、溶接ガンコイルコンデンサ46を所定の電圧レベル(溶接機20によって決定される所定レベル)まで完全に充電する。溶接ガンコイルコンデンサ46が完全に充電されると、SWBCS42によって判定されるが、SWBCS42は、次のシステムレベルのタスクである熱過負荷センサ入力に移動する。SWBCS42が、溶接ガンコイルコンデンサ46がすでに完全に充電されていると判定する場合(すなわち、所定のレベルに基づいてさらなる充電が不要である場合)、同様である。
【0061】
別のシステムレベルタスクは、省電力である。省電力タスクは、タイマー134が最初に起動されるか(すなわち、溶接機20が「オン」になるか)、溶接機20のエンコーダーが回転されるか、または、LCDユーザインタフェース80が起動される(すなわち、オペレータ/ユーザによってタッチされる)か、についてのSWBCS42による判定を含む。それらの際には、LCDユーザインタフェース80の状態が、省電力状態(すなわち、暗い状態)からフルパワー状態(すなわち、完全に明るい状態)に移行される。
【0062】
2番目の省電力タスクは、
測定された充電状態(SOC)が所定のSOCレベル未満であるか、
測定された溶接頻度が所定の溶接頻度レベルを下回るか、
溶接機20のエンコーダーが所定期間に亘って非稼働状態であるとSWBCS42(及び/または溶接機20の他のコンポーネント)によって判定されるか、または、
LCDユーザインタフェース80が所定期間に亘って非稼働状態である(オペレータ/ユーザによってタッチされていない)とSWBCS42(及び/または溶接機20の他のコンポーネント)によって判定されるか、
そしてそれに加えて、溶接機20が(オペレータ/ユーザ及び/またはSWBCS42によって)省電力形態となっていてLCDユーザインタフェース80の状態がフルパワー状態(すなわち、完全に明るい状態)から省電力状態(すなわち、暗い状態)に移行されているか、
についてのSWBCS42(及び/または溶接機20の他のコンポーネント)による判定を含む。
【0063】
3番目の省電力タスクは、SWBCS42(及び/または溶接機20の他のコンポーネント)が、オペレータ/ユーザに対して充電状態(SOC)のアイコン(例えば、定形化されたバッテリー)を表示する、及び/または、(少なくとも部分的にSWBCS42による判定に基づいて)オペレータ/ユーザの設定点での溶接数の推定を提供する、ようにLCDユーザインタフェース80を構成する工程を含む。オペレータ/ユーザは、この情報を用いて、LFPバッテリー38の残量をどのように利用するかを決定することができる(例えば、より低い電力設定でより多くの溶接を行うことができる)。
【0064】
4番目の省電力タスクは、測定された溶接頻度が所定の溶接頻度閾値を下回るか、及び、溶接機20が自動的にオフになるように構成されていて(すなわち、自動電源オフ)、最後の溶接動作からの測定時間が所定期間を超えて、溶接機20のエンコーダが起動されておらず、LCDユーザインタフェース80がタッチされていない(すなわち、タッチスクリーンタイムアウトが切れていない)か、または、測定されたLFPバッテリー38の充電状態(SOC)が所定のSOCレベルを下回っているか、についてのSWBCS42(及び/または溶接機20の他のコンポーネント)による判定を含む。この場合、溶接機20は自動的にシャットダウンする。溶接機20のシャットダウンをもたらすLFPバッテリー38の測定されたSOCの状況において、当該シャットダウンは、LFPバッテリー38の保護のためである(すなわち、LFPバッテリー38への損傷を防止するためである)。4番目の省電力タスクで説明されている他の状況では、当該シャットダウンは、オペレータ/ユーザの利便性のためである(すなわち、溶接機20から一時的に離れるが、戻って溶接を再開する意図があるオペレータ/ユーザの利便性のためである)。
【0065】
システムレベルタスクの熱過負荷センサ入力では、SWBCS42は、温度センサ44の状態(すなわち、動作状態)を判定する。本明細書で説明されるように、LFPバッテリー38の温度を監視することは、溶接機20の動作において重要な要素である。結果として、SWBCS42は、LFPバッテリーを監視する各温度センサ44と、溶接機20内に配置された任意の他の温度センサ44と、の各々の状態を判定する。SWBCS42は、例えば、温度センサ44により提供される戻り電圧または信号を測定することにより、温度センサ44の状態を判定する。SWBCS42は、温度センサ44の少なくとも1つのエラー(すなわち、熱過負荷センサ入力)を判定すると、溶接機20を起動停止するか、さもなければ、LFPバッテリー38を保護するように溶接機20の動作を変更する。温度センサ44にエラーがないとSWBCS42が判定する場合(すなわち、所定のまたは予想される電圧または信号が返される場合)。
【0066】
システムレベルタスクのバッテリー充電電流測定では、SWBCS42は、バッテリー充電電流センサ50と電圧測定回路とを使用して、電流レベルと電圧レベルが所定の電流範囲と電圧範囲にあるか否かを判定し得る。例えば、LFPバッテリーセル70のバンク電圧が充電中に低すぎる場合、SWBCS42は、充電リレー104を開いて充電経路を遮断してバッテリー充電プロセスを終了し得て、LCDユーザインタフェース80にエラーメッセージを表示し得る。
【0067】
システムレベルのタスクの接触入力では、SWBCS42は、回路を完成させドローンアーク溶接プロセスの条件を提供するべく、溶接ガン82を使用して、溶接ガン82によって保持されたスタッドとワークとの接触がなされたか否かを判定する。SWBCS42が、溶接ガン82によって保持されたスタッドとワークとの接触がなされていないと判定する場合、システムレベルのタスクは終了され、ドローンアーク溶接プロセスは発生しない。SWBCS42が、溶接ガン82によって保持されたスタッドとワークとの接触がなされていると判定する場合、SWBCS42は、溶接プロセスの発生を許可する。
【0068】
システムレベルタスクのガントリガー入力では、SWBCS42は、溶接ガン制御システムボード54を使用して、溶接ガン82のトリガーが(オペレータ/ユーザによって)押されたか否かを判定する。SWBCS42が、溶接ガン82のトリガーが押されていないと判定する場合、システムレベルのタスクは終了し、ドローンアーク溶接プロセスは開始しない。SWBCS42が、溶接ガン82のトリガーが押されたと判定する場合、SWBCS42は、エラー(例えば、温度エラー、低バッテリー充電、溶接ガンコイル短絡など)が存在するか否かを判定する。エラーが存在せず、ワーク接触がなされると、SWBCS42は、ドローンアーク溶接プロセスの開始を許可し、溶接ルーチンの実行及び終了後に、システムレベルのタスクが終了する。エラーが存在する場合、システムレベルのタスクは終了し、ドローンアーク溶接プロセスは開始せず、システムレベルのタスクは終了する。
【0069】
図9Cを参照して、SWBCS42の溶接プロセスが説明される。最初のステップは、溶接プロセス開始である。溶接プロセスは、オペレータ/ユーザがスタッドをワークに接触させ、溶接ガン82のトリガーを押した後に開始し、溶接ガン82のソレノイドがスタッドを持ち上げ、スタッドがアークを描き(ドローし)、所定のアーク時間が経過した後に、溶接ガン82のソレノイドの電源が切られ、ガンスプリングがスタッドをワークに形成された溶融池内に押し込む。
【0070】
次のステップであるセルバランシング及び充填の一時停止は、溶接プロセスの開始の結果として発生する。このとき、SWBCS42によるセルバランシング(本明細書で説明されるような)は、一時停止または停止され得る。この一時停止または停止により、LFPバッテリー38は、充電システムまたはSWBCS42から電流を引き出すことなく、溶接電流を独立して供給することができる。
【0071】
次のステップである、低電流の調整(高ゲイン)は、パイロット電流と呼ばれる比較的低い電流として発生し、溶接ガン82によって短絡回路内に流れ、次のステップで、スタッドがワークから僅かな距離だけ持ち上げられる時、SWBCS42によって維持(すなわち調整)される。
【0072】
スタッドとワークの間に低電流(パイロット電流)の流れが確立されると、リフトスタッド(ガンソレノイドへの通電)ステップが生じる。溶接ガン82が通電されると、その結果、スタッドとワークとの間の短い距離にアークが形成される。SWBCS42は、溶接放電電流の流れ及びアーク溶接電圧を判定する(すなわち、監視する)ことによって、アークが形成されているか否かを判定する。SWBCS42が、溶接電流センサ52を介してアーク電圧及び溶接電流を測定することによりアークが描かれた(ドローンされた)と判定する場合、プロセスは次のステップに続く。
【0073】
次のステップでは、パイロットアークが描かれた後に、設定点電流の調整(低ゲイン)が行われる。SWBCS42は、溶接時間を設定するために、内部的に設定される(すなわち、所定の時間)、または、LCDユーザインタフェース80を使用してオペレータ/ユーザによって設定される、タイマー機能を利用する。溶接時間は、LCDユーザインタフェース80に表示される。従って、SWBCS42は、スタッドとワークとの間で溶接アークが描かれる(または存在する)時間の長さ、及びアークが終了する時間、を制御する。例えば、SWBCS42は、100ミリ秒という短い溶接アーク時間の長さを制御する。プログラムされた時間が経過したことをSWBCS42が判定すると、プロセスは、次のステップであるドロップスタッド(ガンソレノイドの通電を切る)に進む。
【0074】
ドロップスタッド(ガンソレノイドの通電を切る)ステップでは、別のタイマー機能がSWBCS42によって使用され、スタッドがワークに押し込まれた後で電流が維持される時間の長さを決定する。電流がスタッドを介してワークに流れる時間は、SWBCS42によって監視される。当該時間が経過すると、SWBCS42はスタッドからワークへの電流の流れを停止し、スタッドとワークとを接合する溶接が形成される。
【0075】
この時点で、SWBCS42は、入力検知制御システムボード62上の接触検知機能に基づいて、ガンチャックと溶接スタッドとの間に接触があるか否かを判定する。SWBCS42は、溶接ガン82のチャックが溶接スタッドとまだ接触しているか否かを判定し続ける。溶接ガン82がもはや溶接スタッドと接触していない場合、SWBCS42は、溶接ガン82のトリガーが(オペレータ/ユーザなどによって)解放されたか否かを判定する。溶接ガン82のトリガーが解放された場合、SWBCS42の溶接プロセスは終了する。
【0076】
図10は、LCDユーザインタフェース80の例示的な視覚的読み出しを示す。LCDユーザインタフェース80は、複数のタッチスクリーンを含み、そのうちの1つが
図10に示されている。LCDユーザインタフェース80に表示される情報は、少なくとも、SWBCS42によって、LCDユーザインタフェース80上に表示するために、LCDユーザインタフェースボード98に提供されるが、溶接機20の他のコンポーネントも、LCDユーザインタフェース80及び/またはLCDユーザインタフェースボード98を、単独で、またはSWBCS42と組み合わせて、利用する。LCDユーザインタフェース80は、溶接機20の周りに配置されてLCDユーザインタフェース80と相互作用するべく連動してまたは単独で利用される補助制御装置を含むことも考えられる。
図10に示す例示的なタッチスクリーンでは、調整溶接電流制御部120が提供される。調整溶接電流制御部120を押すことにより、オペレータ/ユーザは、次の溶接で使用され、LCDユーザインタフェース80に電流レベル132として表示される電流を増減する。
【0077】
システム設定制御部122が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。この実施形態では、システム設定制御部122は、ギヤ歯車で表されているが、他のアイコンが使用されてもよい。システム設定制御部122を押すことにより、オペレータ/ユーザは、1または複数の追加のタッチスクリーンをLCDユーザインタフェース80に表示させる。これらの追加の画面は、例えば、溶接機20の溶接プロセスの総数を追跡する溶接総数カウンター、特定のオペレータ/ユーザによる溶接プロセスの総数を追跡すると共にリセットオプション(特定のタスクのためのオペレータ/ユーザによる溶接の数を追跡するなど)を含むユーザ溶接カウンター、溶接機20を工場出荷時のデフォルト設定に戻す工場デフォルトオプション、溶接機20のサービス及び/またはメンテナンスを実行するために認証されたサービス技術者によって使用されるサービス設定パスワード入力オプション、オペレータ/ユーザがLCDユーザインタフェース80に溶接電圧を表示することを切り替えることを許容するディスプレイ電圧オプション、を含む。
【0078】
エラー/通知制御部124が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。この実施形態では、エラー/通知制御部124は、ベルで表されているが、他のアイコンが使用されてもよい。エラー/通知制御部124を押すことにより、オペレータ/ユーザは1または複数の追加のタッチスクリーンをLCDユーザインタフェース80に表示させる。これらの追加の画面は、例えば、溶接機20の動作に関するエラーメッセージまたは他の通知の詳細を含み、オペレータ/ユーザに追加情報を提供したり、オペレータ/ユーザに応答することを要求する。
【0079】
ロック/ロック解除制御部128が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。この実施形態では、ロック/ロック解除制御部128は、南京錠で表されているが、他のアイコンが使用されてもよい。ロック/ロック解除制御部128を押すことにより、オペレータ/ユーザは1または複数の追加のタッチスクリーンをLCDユーザインタフェース80に表示させる。これらの追加の画面は、例えば、オペレータ/ユーザによって起動にされる場合に、LCDユーザインタフェース80をロックして、オペレータ/ユーザによって行われた設定への不所望の変更、例えば溶接プロセス中のオペレータ/ユーザによるLCDユーザインタフェース80の偶発的な接触による、を防ぐロック/ロック解除トグル制御部を含む。
【0080】
プリセット制御部130が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。この実施形態では、プリセット制御部130は、3×3の立方体で表されているが、他のアイコンが使用されてもよい。プリセット制御部130を押すことにより、オペレータ/ユーザは1または複数の追加のタッチスクリーンをLCDユーザインタフェース80に表示させる。これらの追加の画面は、例えば、オペレータ/ユーザが溶接機20に記憶されているプリセットを記憶(保存)及び/または呼び出すための制御部を含むプリセット制御画面を含む。例えば、溶接設定は、オペレータ/ユーザによって保存及び/または呼び出し可能な、溶接時間、溶接電流、リフト高さ、及びプランジ深度、を含むが、これらに限定はされない。
【0081】
調整溶接時間制御部144が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。調整溶接時間制御部144を押すことにより、オペレータ/ユーザは、次の溶接のためであってLCDユーザインタフェース80にタイマー134として表示される溶接時間を増減する。
【0082】
バッテリー充電レベル136が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。この実施形態では、バッテリー充電レベル136は、定形化されたバッテリーで表されているが、他のアイコンが使用されてもよい。バッテリー充電レベル136は、バッテリー充電レベルを表すために定形化されたバッテリーの内部を選択的に表示することによって、オペレータ/ユーザに表示される(例えば、半分満杯の内部は、半分レベルのバッテリー充電を表す)。
【0083】
溶接結果制御部138が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。この実施形態では、溶接結果制御部138は、グラフで表されているが、他のアイコンが使用されてもよい。溶接結果制御部138を押すことにより、オペレータ/ユーザは1または複数の追加のタッチスクリーンをLCDユーザインタフェース80に表示させる。これらの追加の画面は、例えば、オペレータ/ユーザが確認できるように、以前の溶接の詳細を詳述する画面を含む。
【0084】
溶接プロセスモニタ140が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。この実施形態では、溶接プロセスモニタ140は、グラフで表されているが、他のアイコンが使用されてもよい。溶接プロセスモニタ140を押すことにより、オペレータ/ユーザは1または複数の追加のタッチスクリーンをLCDユーザインタフェース80に表示させる。これらの追加の画面は、例えば、以前の溶接の結果として溶接波形のビューをオペレータ/ユーザに提供するチャートを含む。当該チャートは、溶接電流と溶接ガンの動きとのオーバーレイを含み得る。
【0085】
溶接ガン状態インジケータ142が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。この実施形態では、溶接ガン状態インジケータ142は、グラフィックインジケータ上のそれぞれのセクションを照明することにより、接触状態(ワークとの)、ガントリガー状態、及び/または、コイル状態、を表示する。
【0086】
スタッドエキスパート制御部143が、LCDユーザインタフェース80上に提供されている。スタッドエキスパート制御部143を押すことにより、オペレータ/ユーザは1または複数の追加のタッチスクリーンをLCDユーザインタフェース80に表示させる。これらの追加の画面は、例えば、オペレータ/ユーザがスタッド直径を入力し、入力された当該スタッド直径に対応する溶接時間及び溶接電流の正しい設定を受け取ることを許容する画面を含む。
【0087】
明らかに、添付の特許請求の範囲の範囲内において、本開示の多くの修正及び変更が、前述の教示に照らして可能であり、具体的に説明されたものとは別の方法で実施され得る。これらの先行する言及は、本発明の新規性がその有用性を発揮する任意の組み合わせを網羅するものと解釈されるべきである。