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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】バタフライバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/22 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
F16K1/22 H
F16K1/22 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019564696
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2019000230
(87)【国際公開番号】W WO2019139004
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2018001829
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】那須 隆志
(72)【発明者】
【氏名】上村 忍文
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-131166(JP,U)
【文献】特開2014-047858(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0309056(US,A1)
【文献】実開昭51-043929(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0067562(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105715808(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0107734(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/16 - 1/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路軸線方向に延びる内部流路が形成されている弁本体と、前記内部流路内で弁軸を介して前記弁本体に前記流路軸線と垂直な回動軸線周りに回動可能に支持される円盤形状の弁体と、前記内部流路の内周に設けられた環状の弁座とを備え、前記弁軸の回動により前記弁体の外周縁部を前記弁座に接離させて内部流路の開閉を行うバタフライバルブであって、
前記弁体の二つの対向する主面の一方に、前記回動軸線と交差する方向に延びる溝部が設けられており、前記溝部の両側壁が回動軸線方向に互いに向かって凸状に延びる凸状湾曲面として形成され、前記溝部の前記両側壁の凸状湾曲面が頂部を挟んで接続される異なる湾曲半径の曲面部分を有していることを特徴とするバタフライバルブ。
【請求項2】
前記溝部の凸状湾曲面は、開弁時に流体の流出側に配置される第1の曲面部分の湾曲半径が開弁時に流体の流入側に配置される第2の曲面部分の湾曲半径よりも大きくなるように形成されている、請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項3】
前記弁体において、前記溝部を挟んで回動軸線方向の両側に外縁残留部が形成されており、該外縁残留部が前記回動軸線から離れる方向に凸状に湾曲した凸状湾曲面を有している、請求項1又は請求項2に記載のバタフライバルブ。
【請求項4】
前記外縁残留部の各々の凸状湾曲面が頂部を挟んで接続される異なる湾曲半径の凸状曲面部分を有している、請求項3に記載のバタフライバルブ。
【請求項5】
前記外縁残留部の凸状湾曲面は、開弁時に流体の流出側に配置される第1の曲面部分の湾曲半径が開弁時に流体の流入側に配置される第2の曲面部分の湾曲半径よりも大きくなるように形成されている、請求項4に記載のバタフライバルブ。
【請求項6】
前記溝部が形成されている前記弁体の主面と対向する主面には、球面状の窪み部が形成されている、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のバタフライバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業における流体輸送配管ラインに使用され、弁体を回動させることにより流路の開閉を行うバタフライバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
化学工場、半導体製造分野、食品分野、バイオ分野などの各種産業において、種々の流体が流通する流路の開閉、制御を行うバタフライバルブが使用されている。バタフライバルブでは、弁本体内に形成された管状の流路内に、弁軸によって弁本体に回動可能に支持された円盤形状の弁体が配置されており、弁軸に接続されたハンドルやアクチュエータによって弁軸を回動させて流路の内周面や弁本体と弁体の外周縁部との間に設けられた環状のシート部材に対して弁体の外周縁部を接離させることにより、流路の開閉を行う。
【0003】
バタフライバルブは、上記のような構成となっているため、バルブの全開時でも、弁体は、その主面(閉弁時に流路軸線方向を向く面)が弁本体の流路の中央に流路方向と略平行となるように位置する。したがって、弁体は、開口面積を減少させると共に流体への抵抗となって、Cv値などの容量係数を低下させている。特に、弁体の中心軸線から弁体の厚さ方向に回転軸線がオフセットされるようにステムが弁体に接続されている偏心型のバタフライバルブでは、構成上、弁体が厚くなるため、弁体が開口面積の減少や流体抵抗の増加に大きく影響を及ぼす。このような問題への対策の一つとして、例えば特許文献1に記載のように、弁体の主面に回動軸線と垂直に直線状に延びる溝部を設けて弁体の断面を略C字形状に形成し、全開時の開口面積を増加させると共に、流路抵抗を減少させるようにしたバタフライバルブが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-113472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、開口面積の増加や流路抵抗の減少には、溝部を設けて弁体の一部の厚さを減少させることが有利となる。一方、バタフライバルブの弁体には、閉弁時に流体圧力が作用するので、流体圧力に抗して弁体の変形を防止するためには、弁体に所定の厚さが必要となる。したがって、溝部の深さには限界が生じ、直線状の溝部の形成のみでは、容量係数の向上に限界があった。
【0006】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解決して、弁体の形状を工夫することにより、バタフライバルブの容量係数を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み、本発明は、流路軸線方向に延びる内部流路が形成されている弁本体と、前記内部流路内で弁軸を介して前記弁本体に前記流路軸線と垂直な回動軸線周りに回動可能に支持される円盤形状の弁体と、前記内部流路の内周に設けられた環状の弁座とを備え、前記弁軸の回動により前記弁体の外周縁部を前記弁座に接離させて内部流路の開閉を行うバタフライバルブであって、前記弁体の二つの対向する主面の一方に、前記回動軸線と交差する方向に延びる溝部が設けられており、前記溝部の両側壁が回動軸線方向に互いに向かって凸状に延びる凸状湾曲面として形成され、前記溝部の前記両側壁の凸状湾曲面が頂部を挟んで接続される異なる湾曲半径の曲面部分を有しているバタフライバルブを提供する。
【0008】
上記バタフライバルブでは、弁体の主面の少なくとも一方に回動軸線と交差する方向に延びる溝部が設けられている。したがって、弁体が全開位置に回動させられたときに、溝部の分だけ、内部流路内の開口面積が増加し、容量係数を増加させることができる。また、本発明者は、溝部の両側壁を回動軸線方向に互いに向かって凸状に延びる凸状湾曲面として形成して、溝部に絞りを設けるような形状にすることにより、渦の発生が抑制されて容量係数の向上効果が得られることを見出した。これにより、さらにバタフライバルブの容量係数を向上させることができる。
【0009】
上記バタフライバルブでは、前記溝部の凸状湾曲面は、開弁時に流体の流出側に配置される第1の曲面部分の湾曲半径が開弁時に流体の流入側に配置される第2の曲面部分の湾曲半径よりも大きくなるように形成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記バタフライバルブの一つの実施形態として、前記弁体において、前記溝部を挟んで回動軸線方向の両側に外縁残留部が形成されており、該外縁残留部が前記回動軸線から離れる方向に凸状に湾曲した凸状湾曲面を有しているようにしてもよい。このような構成により、さらに容量係数を向上させることが可能となる。
【0011】
この場合、前記外縁残留部の各々の凸状湾曲面が頂部を挟んで接続される異なる湾曲半径の凸状曲面部分を有していることが好ましく、前記外縁残留部の凸状湾曲面は、開弁時に流体の流出側に配置される第1の曲面部分の湾曲半径が開弁時に流体の流入側に配置される第2の曲面部分の湾曲半径よりも大きくなるように形成されていることがさらに好ましい。
【0012】
上記バタフライバルブでは、さらに、前記溝部が形成されている前記弁体の主面と対向する主面には、球面状の窪み部が形成されているようにしてもよい。これにより、さらに容量係数を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバタフライバルブによれば、弁体の主面の少なくとも一方に溝部を設けることにより、開口面積が増加し、容量係数を向上させることができる。さらに、溝部の両側壁の形状や溝部の両側の外縁残留部の表面形状を凸状湾曲面とすることで、渦の発生の抑制によるさらなる容量係数の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるバタフライバルブの全体構成を示す縦断面図である。
図2図1に示されているバタフライバルブを右側から見た側面図である。
図3図1に示されているバタフライバルブの弁体の斜視図である。
図4A図3に示されている弁体を図1における右側から見た平面図である。
図4B図4Aに示されている弁体を図4Aにおける上方から見た上面図である。
図4C図4Aに示されている弁体を図4Aにおける下方から見た底面図である。
図5図4Aの線IV-IVに沿って上方から見た矢視断面図である。
図6A図1に示されているバタフライバルブの弁体を軸支する下側の第2の弁軸の斜視図である。
図6B図1に示されているバタフライバルブの弁体を軸支する下側の第2の弁軸を矢印Aの方向から見た側面図である。
図7図1に示されているバタフライバルブの弁体を軸支する上側の第1の弁軸を示すバタフライバルブの部分縦断面図である。
図8A図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
図8B図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
図8C図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
図8D図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
図8E図1に示されているバタフライバルブの弁本体と弁体との組み立て手順を示している説明図である。
図9A図3に示されている弁体を図1における右側から見た、シミュレーションにおける各パラメータの説明図である。
図9B図9Aに示されている弁体を図9Aにおける上方から見た、シミュレーションにおける各パラメータの説明図である。
図9C図9Aに示されている弁体を図9Aにおける下方から見た、シミュレーションにおける各パラメータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明によるバタフライバルブ11の実施の形態を説明する。
最初に図1及び図2を参照して、本発明によるバタフライバルブ11の全体構成について説明する。
【0016】
バタフライバルブ11は、流路軸線方向に延びる内部流路13aが形成されている中空円筒状の弁本体13と、内部流路13a内に配置され弁本体13に回動可能に軸支されている概略円盤形状の弁体15と、内部流路13aの内周に取り付けられている環状のシートリング17と、シートリング17を弁本体13に固定するための環状のシート押え19とを備えており、弁体15の外周縁部とシートリング17上に形成される弁座部17aとを接離させることにより、内部流路13aの開閉を行うことができるようになっている。
【0017】
弁本体13の内部流路13aの流路軸線方向の下流側端部の周縁部、すなわち弁本体13の流路軸線方向の下流側の側面における内部流路13aの外周部には、環状のシート押え19の外径と概略同径まで径方向に延びる環状凹部21が形成されており、この環状凹部21にシートリング17及びシート押え19が嵌合される。シート押え19は、環状のリテーナ本体19aと環状のリテーナキャップ19bとからなる。リテーナ本体19aには、段差部23(図7参照)が形成されており、段差部23には、リテーナキャップ19bとの間にシートリング17の固定部17bを配置するようにリテーナキャップ19bとシートリング17の固定部17bとが収納される。このような構成により、リテーナ本体19aを適宜の方法で環状凹部21に固定して、環状凹部21の流路軸線方向の側面上に配置されるリテーナキャップ19bとリテーナ本体19aとの間にシートリング17の固定部17bを挟持することにより、環状凹部21にシートリング17を固定することができる。
【0018】
なお、リテーナキャップ19bは、その内周縁端が内部流路13a内に突出するように配置されることが好ましい。
【0019】
リテーナ本体19aを環状凹部21に固定する方法としては、例えば、特開平11-230372に開示されているようなバイヨネット方式を採用することができる。この場合、リテーナ本体19aの弁本体13側の外周面に径方向に突出する複数の円弧状突起部を周方向に等間隔で形成すると共に、環状凹部21の外周部に円弧状突起部を収容可能に形成される円弧状切欠き部と、円弧状切欠き部の流路軸線方向側面側から円弧状突起部を周方向に案内するように延びる係合溝とを設け、リテーナ本体19aの円弧状突起部を環状凹部21の円弧状切欠き部に嵌合させて円弧状突起部を環状凹部21の流路軸線方向側面に当接させた状態で、リテーナ本体19aを周方向に回動させ、円弧状突起部を係合溝に沿って案内して円弧状突起部と係合溝とを係合させることにより、リテーナ本体19aを環状凹部21に固定することができる。
【0020】
シートリング17は、弾性材料から形成されており、弁座部17aと固定部17bとを有している。弁座部17aは、固定部17bがリテーナ本体19aとリテーナキャップ19bとの間に挟持された状態でシートリング17が環状凹部21に取り付けられたときに、内部流路13a内に突出するように形成されている。シートリング17を形成する好適な弾性材料としては、ブチルゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FRM)等のゴム弾性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、PTFE等のフッ素樹脂被覆ゴム弾性体が挙げられる。
【0021】
弁体15は、対向する二つの主面15a、15bと、二つの主面15a、15bの間を接続するように環状に延びる外周縁部15cとを有している。弁体15の一方の主面15aには、図3によく示されているように、回動軸線Rと交差する方向(好ましくは直交する方向)に貫通して延びる溝部25が設けられている。溝部25の両側壁25a,25bは、図2図4A示されているように、回動軸線Rに向かって互いに向かって凸状に延びる凸状湾曲面となるように形成されている。また、弁体15の一方の主面15aに上述のような溝部25が形成されることにより、溝部25を挟んで回動軸線R方向の両側には、外縁残留部27(27a,27b)が形成される。外縁残留部27は、図4B及び図4C示されているように、回動軸線Rから離れる方向に凸状に延びる凸状湾曲面を有していることが好ましい。
【0022】
上述のような溝部25を設けることにより、弁体15を全開状態まで回動したときに、溝部25の分だけ、内部流路13a内の開口面積が増加し、容量係数Cvが増加する。また、本発明者は、溝部25の両側壁25a,25bを回動軸線Rに向かって互いに凸状に延びる凸状湾曲面として形成して絞り部のようにすることや、溝部25の両側に形成される外縁残留部27a,27bが回動軸線Rから離れる方向に凸状に延びる凸状湾曲面を有するように形成することにより、渦の発生が抑制されて、圧力損失を低減させることを見出した。これにより、容量係数Cvの向上効果を得ることが可能となる。
【0023】
また、弁体15の他方の主面15bの中央部には、図5に示されているように、球面状の窪み部(以下、「ディンプル」とも記載する。)29が形成されている。このような球面状の窪み部29を設けることにより、同様に、渦の発生が抑制されて、圧力損失の低減による容量係数の向上効果を得ることができる。
【0024】
弁体15の外周縁部15cには、弁体弁座面15dが形成されており、回動軸線R周りに弁体15を回動させて弁体弁座面15dをシートリング17の弁座部17aに圧接させることにより、弁体弁座面15dと弁座部17aとの間をシールするシール面を形成し、内部流路13aを閉鎖して閉弁状態にさせるようになっている。弁体弁座面15dは、球面の一部のような形状となっていることが好ましい。
【0025】
図示されている実施形態のバタフライバルブ11では、弁体15は、第1の弁軸31と第2の弁軸33とによって弁本体13に回動可能に支持されており、弁体15の回動軸線R方向の対向する位置には、第1の弁軸31と連結するための嵌合穴35と第2の弁軸33と連結するための係止溝37とが設けられている。
【0026】
第1の弁軸31は、回動軸線Rに沿って延びるように弁本体13に形成された第1の軸穴39に回動可能に挿通されて支持されており、第2の弁軸33は、回動軸線Rに沿って内部流路13aを介して第1の軸穴39と対向して形成された第2の軸穴41に挿入され、回動可能に支持されている。
【0027】
第1の軸穴39は外部から回動軸線R方向に弁本体13を内部流路13aまで貫通して延びる貫通軸穴であり、両端部が第1の軸穴39から突出するように第1の弁軸31が第1の軸穴39に回動可能に挿通されている。外部に突出する第1の弁軸31の一端部(図1における上端部)には、弁体15の操作や駆動のために、図示されていないハンドルや駆動部を取り付けることができるようになっている。また、内部流路13aに突出する第1の弁軸31の他端部(図1における下端部)には、嵌合穴35と相補的形状の嵌合部31aが形成されており、弁体15の嵌合穴35と嵌合部31aとが回動軸線R周りに回動不能に嵌合されるようになっている。例えば、弁体15の嵌合穴35と第1の弁軸31の嵌合部31aとを多角形状を有するように形成することにより、嵌合穴35と嵌合部31aとを回動不能に連結することができる。
【0028】
一方、第2の軸穴41は弁本体13の内部流路13aから回動軸線R方向に延びる有底軸穴(すなわち貫通していない軸穴)となっており、一方の端部が第2の軸穴41から突出するように第2の弁軸33が第2の軸穴41に挿入され、回動可能に支持されている。第2の弁軸33は、第2の軸穴41内に回動可能に支持される軸部33aと第2の軸穴41から突出するように軸部33aに接続されて形成されている係止部33bとを含んでおり、係止部33bが係止溝37に嵌合されるようになっている。詳細には、係止部33bは、図6A及び図6Bに示されているように、回動軸線Rと垂直な方向に延びるレール状部分として形成され、レール状部分の一端が軸部33aの外周面から回動軸線Rと垂直な方向に突出して延びており、第2の弁軸33は概略L字形状を有している。また、弁体15の係止溝37は、図4Aに示されているように、レール状部分と相補形状となるように形成されており、弁体15と第2の弁軸33とは、回動軸線Rと垂直な方向に弁体15の係止溝37にレール状部分である係止部33bを挿入することにより、回動軸線R周りに回動不能に連結されるようになっている。レール状部分である係止部33bは、軸部33aとの接続部である根元から先端に向かって広がるくさび形状断面を有していることが好ましい。このようなくさび形状を有していることにより、第2の弁軸33からの回動軸線R方向への弁体15の抜けを防止することができる。しかしながら、係止部33bの断面形状は、弁体15と第2の弁軸33とを回動不能に連結することができるようになっていれば限定されるものではなく、多角形状、円形状、楕円形状などとしてもよい。
【0029】
なお、図1に示されているように、内部流路13a内の流体が有底の穴である嵌合穴35や第2の軸穴41内へ侵入することを防ぐために、第1の弁軸31や第2の弁軸33の軸部33aの外周面には、嵌合穴35の内周面の内部流路13aへの開口部付近や第2の軸穴41の内周面の内部流路13aへの開口部付近に相対する位置に設けられた環状溝に環状シール部材43,45が配置され、嵌合穴35の内周面と第1の弁軸31の外周面との間並びに第2の軸穴41の内周面と第2の弁軸33の軸部33aの外周面との間をシールするようになっている。また、内部流路13a内の流体が貫通軸穴である第1の軸穴39を通して外部に流出することを防止するために、第1の弁軸31の外周面には、第1の軸穴39の内部流路13aへの開口部付近に相対する位置を含めた複数の位置(図示されている実施形態では3箇所)に設けられた環状溝に、ゴム弾性材料からなるOリングなどの環状シール部材47a,47b,47cが配置され、第1の軸穴39の内周面と第1の弁軸31の外周面と間をシールするようになっている。さらに、図7に詳しく示されているように、第1の弁軸31の嵌合部31aと反対側の端部付近にフランジ部31bが設けられていると共に、弁本体13の第1の軸穴39の外部への開口部の周囲にフランジ部31bを収容するための環状凹部13bが設けられ、環状凹部13bにおいてフランジ部31bと対向する面(以下、底面と記載する。)に設けた環状溝に、ゴム弾性材料からなる環状の平面シール部材47dが嵌合されている。このように配置されたシール部材47dにより、フランジ部31bと環状凹部13bの底面との間をシールし、万が一、内部流路13a内の流体が第1の軸穴39内に侵入しても、第1の軸穴39から外部に漏出しないようになっている。このようなシール構造は、内部流路13aを有害な流体が流通する場合に特に有効である。
【0030】
図示されている実施形態のバタフライバルブ11は、二重偏心構造を有する二重偏心型バタフライバルブとなっている。図1及び図2を参照すると、二重偏心型のバタフライバルブ11では、閉弁時に弁体15の弁体弁座面15dとシートリング17の弁座部17aとの間に形成されるシール面の流路軸線方向の中心が弁体15の回動軸線Rから流路軸線方向に偏心して位置するように、シートリング17の弁座部17a、弁体弁座面15d、第1の弁軸31及び第2の弁軸33が設けられている。さらに、図2に詳しく示されているように、弁体15の回動軸線Rが内部流路13aの横断面の中心を通るように回動軸線Rと平行に延びる中心軸線Oから同横断面内で距離dだけ離間して位置するように弁体15に第1の弁軸31及び第2の弁軸33が接続されている。このような構成とすることにより、バルブの開閉時に、偏心によるカム作用により弁体15が僅かな回転角度でシートリング17から離脱するため、シートリング17と弁体15との摩擦が少なく、シートリング17の摩耗を減少させると共に、操作トルクを低減させることが可能となる。
【0031】
また、上述のように、二重偏心型バタフライバルブ11は、回動軸線Rが内部流路13aの中心軸線Oから偏心して位置するように構成されているので、弁体15の回動軸線R方向の最大幅は、回動軸線Rを挟んで半径方向の一方側と他方側とで異なっている。このことを利用して、図示されている実施形態の二重偏心型バタフライバルブ11では、内周縁端が内部流路13a内に突出するようにリテーナキャップ19bを配置している。これにより、閉弁状態から開弁状態に弁体15を回動させる際に、回動軸線R周りの一方の方向への回動では外周縁部15cがリテーナキャップ19bと干渉せずに弁体15が回動でき且つ回動軸線R周りの他方の方向への回動では外周縁部15cがリテーナキャップ19bと干渉して弁体15が回動できなくするように、リテーナキャップ19bの内部流路13aへの突出量を設定することで、全閉状態からの弁体15の回動方向を規制することを可能とさせている。
【0032】
なお、弁本体13、弁体15、シート押え19、第1の弁軸31、第2の弁軸33は、用途に応じて、金属材料、樹脂材料、樹脂材料で被覆された金属材料、射出成形法にてインサート成形された金属材料などから形成することができる。
【0033】
次に、図8Aから図8Eを参照して、バタフライバルブ11の組み立て方法について説明する。
【0034】
最初に、図8A示されているように、弁本体13の第2の軸穴41に第2の弁軸33の軸部33aを回動可能に挿入する。このとき、第2の弁軸33の係止部33bのレール状部分が流路軸線方向に延び且つ軸部33aの周面から回動軸線Rと垂直な方向に突出する側がシートリング17の装着側(環状凹部21側)へ向くように、第2の弁軸33が配置される。
【0035】
次に、図8B示されているように、環状凹部21と流路軸線方向の反対側から、弁体15の係止溝37を弁本体13側へ向けた状態で流路軸線方向に弁体15を弁本体13の内部流路13a内へ挿入することによって、第2の弁軸33の係止部33bと弁体15の係止溝37とを嵌合させ、係止部33bが係止溝37の端部に到達するまで係止部33bを係止溝37内に収容させる。さらに、図8C示されているように、第1の軸穴39に第1の弁軸31を挿入することにより、第1の弁軸31の嵌合部31aを回転不能に弁体15の嵌合穴35に嵌合させる。これにより、弁体15が回動軸線R周りに回動可能に弁本体13の内部流路13a内に支持される。
【0036】
上述した向きに第2の弁軸33を配置した状態で弁体15を内部流路13a内に挿入することで、第2の弁軸33に近い側から弁体15を挿入することが可能となり、作業がしやすくなる。
【0037】
次に、図8D示されているように、内部流路13a内で弁体15を回動軸線R周りに180°だけ回動させ、図8E示されているように、弁体15の弁体弁座面15dを、シートリング17が装着される側すなわち環状凹部21側へ向けて、配置させる。その後、環状凹部21にシート押え19によってシートリング17が取り付けられ、バタフライバルブ11の組み立てが完了する。
【0038】
次に、弁体15の詳細な構成をさらに説明する。
【0039】
弁体15の溝部25の回動軸線R方向の両側壁25a,25bの凸状湾曲面は、頂部を挟んで接続される異なる湾曲半径の曲面部分を有していることが好ましく、開弁時に流出側(すなわち、シートリング17側)に配置される第1の曲面部分の湾曲半径が開弁時に流入側に配置される第2の曲面部分の湾曲半径よりも大きくなるように形成されていることがさらに好ましい。また、溝部25を挟んで回動軸線R方向の両側に形成される外縁残留部27の凸状湾曲面は、頂部を挟んで接続される異なる湾曲半径の曲面部分を有していることが好ましく、開弁時に流出側(すなわち、シートリング17側)に配置される第1の曲面部分の湾曲半径が開弁時に流入側に配置される第2の曲面部分の湾曲半径よりも大きくなるように形成されていることがさらに好ましい。このような構成とすることで、さらなる容量係数Cvの向上効果を得ることができる。
【実施例
【0040】
以下に、溝部25の両側壁25a,25bの凸状湾曲面の湾曲半径、外縁残留部27a,27bの凸状湾曲面の湾曲半径をそれぞれ変えたときにシミュレーションにより得られた容量係数Cvを比較した表を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
従来例は、バタフライバルブ11と同様に溝部が設けられているものの、溝部の回動軸線R方向の両側壁が流路軸線と平行な面によって構成され且つ外縁残留部の表面が非湾曲の平面のみによって構成されているバタフライバルブであり、実施例1から実施例4は、バタフライバルブ11と同様に溝部25が設けられ、溝部25の両側壁25a,25bの凸状湾曲面の湾曲半径、外縁残留部27a,27bの凸状湾曲面の湾曲半径、ディンプル29の有無をパラメータとして様々に変化させた本発明によるバタフライバルブである。シミュレーションは、呼び径D=150mmのバタフライバルブ11の上流側に長さ2Dの直線状の入口流路、下流側に長さ6Dの直線状の出口流路を接続し、入口流路と出口流路と間の差圧を1KPaとする設定で行った。また、図9Aから図9Cに、シミュレーションにおけるパラメータR1~R12が示されている。なお、図9Aから図9C中における矢印は流体の流れ方向を示している。
【0043】
R1,R2は、それぞれ、溝部25の図9Aの上側の側壁25aにおいて開弁時に頂部を挟んで流入側(入口側)、流出側(出口側)に配置される凸状曲面部分の湾曲半径であり、R3、R4は、それぞれ、溝部25図9Aの下側の側壁25bにおいて開弁時に頂部を挟んで流入側(入口側)、流出側(出口側)に配置される凸状曲面部分の湾曲半径である。また、図9Aの上側の外縁残留部27aの表面は、図9B示されているように、開弁時に頂部を挟んで流入側(入口側)に位置する湾曲半径R6の凸状曲面部分と流出側(出口側)に位置する湾曲半径R7の凸状曲面部分とが接続されており、流入側の湾曲半径R6の凸状曲面部分の上流側に湾曲半径R5の凹状曲面部分がさらに接続され、流出側の湾曲半径R7の凸状曲面部分の下流側に湾曲半径R8の凹状曲面部分がさらに接続された形態、すなわち、頂部を挟んで二つのS字形状の曲面部分が接続された形態となっている。同様に、図9Aの下側の外縁残留部27bの表面は、図9C示されているように、開弁時に頂部を挟んで流入側(入口側)に位置する湾曲半径R10の凸状曲面部分と流出側(出口側)に位置する湾曲半径R11の曲面部分とが接続されており、流入側の湾曲半径R10の凸状曲面部分の上流側に湾曲半径R9の凹状曲面部分がさらに接続され、流出側の湾曲半径R11の凸状曲面部分の下流側に湾曲半径R12の凹状曲面部分がさらに接続された形態、すなわち、頂部を挟んで二つのS字形状の曲面部分が接続された形態となっている。
【0044】
なお、容量係数は、以下の式により求めた。
【数1】
また、流体は水とし、流体の密度は水の密度である997.561kg/mとした。
【0045】
実施例2及び実施例3は、溝部25を設け、溝部25の回動軸線R方向の両側壁25a,25bを互いに向かって凸状に延びる凸状湾曲面となるように形成し、外縁残留部27a,27bの表面を従来技術と同様に平面として形成した場合のバタフライバルブの例である。従来技術と実施例2及び実施例3とを比較すると、溝部25の回動軸線R方向の両側壁25a,25bを互いに向かって凸状の湾曲面として形成することにより、容量係数Cvの向上の効果が得られることが分かる。
【0046】
また、実施例4は、溝部25を設け、溝部25の回動軸線R方向の両側壁25a,25bを互いに向かって凸状に延びる凸状湾曲面となるように形成していると共に、上側及び下側の外縁残留部27a,27bについて、回動軸線Rと垂直な方向に凸状に湾曲した曲面を有するように構成した場合のバタフライバルブの例である。実施例2から実施例4の比較から、溝部25の両側壁25a,25bの凸状湾曲面は、開弁時に流出側(出口側)に配置される凸状曲面部分の湾曲半径R2が流入側(入口側)に配置される凸状曲面部分の湾曲半径R1よりも大きく、R1=75mm、R2=150mm、R3=75mm、R4=150mmと、R1:R2=1:2、R3:R4=1:2の比率となっているときに最も容量係数Cvが大きくなっていることが分かる。
【0047】
また、実施例2から実施例4の比較から、外縁残留部27a,27bの表面は、上側の外縁残留部27a及び下側の外縁残留部27bの両方ともに、開弁時に流出側(出口側)に配置される凸状曲面部分の湾曲半径R7、R11が流入側(入口側)に配置される凸状曲面部分の湾曲半径R6、R10よりも大きく、R6=40mm、R7=50mm、R10=21.5mm、R11=40mmのときに容量係数Cvの向上の効果が得られることが分かる。さらに、上側の外縁残留部27aの表面は、開弁時に流入側に配置される凹状曲面部分の湾曲半径R5と凸状曲面部分の湾曲半径R6とが、R5=40mm、R6=40、すなわちR5:R6=1:1の関係であり、開弁時に流出側に配置される凸状曲面部分の湾曲半径R7と凹状曲面部分の湾曲半径R8とが、R7=50mm、R8=40mm、すなわちR7:R8=1.25:1の関係となっているときに容量係数Cvの向上の効果が得られていることが分かる。同様に、下側の外縁残留部27bの表面は、開弁時に流入側に配置される凹状曲面部分の湾曲半径R9と凸状曲面部分の湾曲半径R10とが、R9=50mm、R10=21.5mm、すなわちR9:R10=2.3:1の関係であり、開弁時に流出側に配置される凸状曲面部分の湾曲半径R11と凹状曲面部分の湾曲半径R12とが、R11=40mm、R12=30mm、すなわちR11:R12=1.3:1の関係となっているときに容量係数Cvの向上の効果が得られていることが分かる。
【0048】
実施例1は、実施例4の弁体の形態に、弁体15の溝部25が形成された主面15aと対向する他方の主面15bに湾曲半径400mmの球面状の窪み部(ディンプル)をさらに設けた場合のバタフライバルブの例である。実施例1と実施例4の比較から、弁体15の溝部25が形成された主面15aと対向する他方の主面15bに球面状のディンプルを設けることにより、容量係数Cvのさらなる向上効果が得られていることが分かる。
【0049】
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明によるバタフライバルブ11を説明したが、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、二重偏心型のバタフライバルブ11に本発明が適用された実施形態に基づいて本発明を説明しているが、本発明の適用は二重偏心型のバタフライバルブに限定されるものではなく、一重偏心型や多重偏心型のバタフライバルブでもよく、また、回動軸線Rがシール面の中心と内部流路13aの中心とを通って延びるいわゆるセンター型のバタフライバルブなどに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
11 バタフライバルブ
13 弁本体
13a 内部流路
15 弁体
15a,15b 主面
15c 外周縁部
15d 弁体弁座面
17 シートリング
17a 弁座部
25 溝部
27,27a,27b 外縁残留部
29 窪み部(ディンプル)
31 第1の弁軸
33 第2の弁軸
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C