(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】基板処理装置および方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2019568630
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(86)【国際出願番号】 FI2017050465
(87)【国際公開番号】W WO2018234611
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】510275024
【氏名又は名称】ピコサン オーワイ
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI-02150 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】マリネン ティモ
(72)【発明者】
【氏名】キルピ ヴァイノ
(72)【発明者】
【氏名】プダス マルコ
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-234346(JP,A)
【文献】特開平06-047270(JP,A)
【文献】特開昭59-001671(JP,A)
【文献】特開平05-090161(JP,A)
【文献】特開平08-078392(JP,A)
【文献】特開平04-246176(JP,A)
【文献】特開平05-214536(JP,A)
【文献】特開平03-194918(JP,A)
【文献】実開昭58-167387(JP,U)
【文献】特開平08-109998(JP,A)
【文献】特開昭63-164308(JP,A)
【文献】特開2007-073627(JP,A)
【文献】特開2008-153409(JP,A)
【文献】実開平04-037268(JP,U)
【文献】実開平04-133430(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
B01J 3/00
B01J 3/02
F16L 5/02
F16L 27/00 -27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された反応チャンバである内側チャンバを囲む外側チャンバを形成する密閉圧力容器と、
前記密閉圧力容器の壁に取り付けられた流体インレットアセンブリであって、前記壁を通過する流体インレットパイプを有する前記流体インレットアセンブリと、
を備える基板処理装置であって、
前記流体インレットパイプを前記壁に結合する、前記インレットパイプの周りの前記流体インレットアセンブリ中の弾性要素をさらに備え、前記弾性要素の内表面および外表面の一方は前記密閉圧力容器内に行き渡る圧力を受け、他方は前記密閉圧力容器の外側に行き渡る圧力を受け、内側で運ばれる流体が前記弾性要素と接触するのを前記流体インレットパイプが防止
し、
前記反応チャンバは、前記流体インレットパイプをその水平位置にロックするカラーを備える、
基板処理装置。
【請求項2】
密閉された反応チャンバである内側チャンバを囲む外側チャンバを形成する密閉圧力容器と、
前記密閉圧力容器の壁に取り付けられた流体インレットアセンブリであって、前記壁を通過する流体インレットパイプを有する前記流体インレットアセンブリと、
を備える基板処理装置であって、
前記流体インレットパイプを前記壁に結合する、前記インレットパイプの周りの前記流体インレットアセンブリ中の弾性要素をさらに備え、前記弾性要素の内表面および外表面の一方は前記密閉圧力容器内に行き渡る圧力を受け、他方は前記密閉圧力容器の外側に行き渡る圧力を受け、内側で運ばれる流体が前記弾性要素と接触するのを前記流体インレットパイプが防止
し、
前記インレットパイプは、反応チャンバ壁に対して回転可能な位置にあるように配置される、
基板処理装置。
【請求項3】
密閉された反応チャンバである内側チャンバを囲む外側チャンバを形成する密閉圧力容器と、
前記密閉圧力容器の壁に取り付けられた流体インレットアセンブリであって、前記壁を通過する流体インレットパイプを有する前記流体インレットアセンブリと、
を備える基板処理装置であって、
前記流体インレットパイプを前記壁に結合する、前記インレットパイプの周りの前記流体インレットアセンブリ中の弾性要素をさらに備え、前記弾性要素の内表面および外表面の一方は前記密閉圧力容器内に行き渡る圧力を受け、他方は前記密閉圧力容器の外側に行き渡る圧力を受け、内側で運ばれる流体が前記弾性要素と接触するのを前記流体インレットパイプが防止
し、
前記基板処理装置は、前記弾性要素の収縮を通じて前記インレットパイプに対する機械的圧力を生じさせるように構成され、前記機械的圧力の方向は、前記密閉圧力容器内部へ向かい、前記機械的圧力は、前記密閉圧力容器内に行き渡る前記圧力と前記密閉圧力容器の外側に行き渡る圧力との間の圧力差によって生じる、
基板処理装置。
【請求項4】
前記弾性要素は、前記インレットパイプに対する機械的圧力を生じさせるように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記機械的圧力の方向は、前記反応チャンバに向かって、内向きである、請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記反応チャンバは、前記インレットパイプをその位置にロックするカラーを備える、請求項
3に記載の装置。
【請求項7】
前記インレットパイプは、反応チャンバ壁に対して回転可能な位置にあるように配置される、請求項
3に記載の装置。
【請求項8】
前記流体インレットアセンブリは、一端において、前記流体インレットパイプに固定される第1の端部部品を備えると共に、他端において、前記外側チャンバの壁に固定される第2の端部部品を備え、前記弾性要素は、前記第1の端部部品と前記第2の端部部品の間に位置する、請求項1
から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記インレットパイプは、内側で互いに摺動するように配置された2つのパイプから形成される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記インレットパイプは、前記インレットパイプの少なくとも一部分を、前記装置の内部を通って内側へ取り外すことによって分解されるように配置される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記インレットパイプは、前記インレットパイプの少なくとも一部分を、前記装置から離れるように向く方向に外側へ取り外すことによって分解されるように配置される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記インレットパイプは、反応チャンバ壁に対して定位置にあるように配置される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記インレットパイプは、前記インレットパイプに沿って熱を分配するための熱分配要素が装備される、請求項1~
12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記熱分配要素は、前記密閉圧力容器の前記壁のフィードスルー箇所を越えて延びる、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記インレットパイプが前記反応チャンバと接する接触箇所は、非永続的な固定箇所である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記接触箇所は、密閉および/または補強されている、請求項
15に記載の装置。
【請求項17】
基板処理装置における方法であって、
密閉圧力容器に、前記密閉圧力容器の壁に取り付けられた流体インレットアセンブリであって、前記壁を通過する流体インレットパイプを有する前記流体インレットアセンブリと、前記流体インレットパイプを前記壁に結合する、前記インレットパイプの周りの前記流体インレットアセンブリ中の弾性要素とを設けることを含み、前記弾性要素の内表面および外表面の一方は前記密閉圧力容器内に行き渡る圧力を受け、他方は前記密閉圧力容器の外側に行き渡る圧力を受け、内側で運ばれる流体が前記弾性要素と接触するのを前記流体インレットパイプが防止し、前記方法は、
前記弾性要素の収縮を通じて前記インレットパイプに対する機械的圧力を生じさせることをさらに含み、前記機械的圧力の方向は、前記密閉圧力容器内部へ向か
い、
前記機械的圧力は、前記密閉圧力容器内に行き渡る前記圧力と前記密閉圧力容器の外側に行き渡る圧力との間の圧力差によって生じる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、一般に、基板処理反応装置およびそれらの動作方法に関する。より詳しくは、しかし排他的にではなく、本発明は、原子層堆積(ALD:atomic layer depositon)反応装置に関する。
【発明の背景】
【0002】
このセクションは、本明細書に記載される任意の技術を入れることなく現行の技術を表す有用な背景情報を示す。
【0003】
堆積反応装置などの様々な基板処理装置は、典型的に、周囲圧力から真空圧力に及ぶ異なる圧力領域に部品を有する。真空部品は、典型的に、周囲圧力においてサイズを合わされ、温度および圧力差は、望ましくない箇所に変形を生じさせるであろう。特に、化学物質インレットパイプは、典型的に、周囲圧力領域からまたはそれら領域を通り、ほとんどのケースでは一組の異なる温度を有する領域を経て減圧状態にあるチャンバへ導かれる。これは、化学物質インレットパイプに著しい応力を生じさせることになり、重大な故障箇所となりうる。チャンバ中への化学物質インレットの例は、米国特許第8,741,062(B1)号に示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【摘要】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態の目的は、流体インレットアセンブリをもつ改良された装置を提供し、または少なくとも既存技術への代替手段を提供することである。
【0006】
本発明の第1の例示的側面によれば、
密閉圧力容器と、
密閉圧力容器の壁に取り付けられた流体インレットアセンブリであって、壁を通過する流体インレットパイプを有する流体インレットアセンブリと、
を備える基板処理装置が提供され、この装置は、
流体インレットパイプを壁に結合する、インレットパイプの周りの流体インレットアセンブリ中の弾性要素をさらに備え、この弾性要素の内表面および外表面の一方は圧力容器内に行き渡る圧力を受け、他方は周囲圧力を受け、内側で運ばれる流体が弾性要素と接触するのを流体インレットパイプが防止する。
【0007】
開示される装置は、いくつかの実施形態例において、圧力調節されたインレットクランピングを提供する。いくつかの実施形態例において、弾性要素は、周囲圧力と圧力容器の内部内に行き渡る圧力との間の圧力差に起因して、圧力容器に圧接するように構成される。
【0008】
圧力容器が密閉されるとは、いくつかの実施形態例において、反応容器が閉じられるかまたは閉じることが可能なチャンバであることを意味する。
【0009】
いくつかの実施形態例において、弾性要素は、装置またはアセンブリの固定部品の間の変位の下で変形するように構成される。いくつかの実施形態例において、弾性要素は、気密かまたはほとんど気密である。弾性要素がほとんど気密であるに過ぎないときには、分離した圧力領域を維持するために、弾性要素を通るガス漏れが少しの漏れに過ぎないことが好ましい。
【0010】
いくつかの実施形態例において、密閉圧力容器は、密閉された反応チャンバである内側チャンバを囲む外側チャンバを形成する。
【0011】
いくつかの実施形態例では、流体インレットアセンブリが反応チャンバ壁に取り付けられる。いくつかの実施形態例では、流体インレットアセンブリが反応チャンバを囲む外側チャンバに取り付けられる。適宜に、実装に依存して、上で特定された密閉圧力容器は、外側チャンバまたは反応チャンバ(それを囲む外側チャンバを有するかまたは有さないいずれかの反応チャンバ)と呼ばれてよい。
【0012】
いくつかの実施形態例において、インレットパイプは、インレットパイプの少なくとも一部分を、装置の内部(または反応チャンバ)を通って内側へ取り外すことによって分解されるように配置される。
【0013】
いくつかの実施形態例において、インレットパイプは、インレットパイプの少なくとも一部分を、装置(または反応チャンバ)から離れるように向く方向に外側へ取り外すことによって分解されるように配置される。
【0014】
いくつかの実施形態例において、インレットパイプは、反応チャンバ壁に対して定位置にあるように配置される。かかる実施形態において、インレットパイプは、他の箇所または継手において変形または湾曲するように構成されてよい。
【0015】
いくつかの実施形態例において、インレットパイプは、反応チャンバ壁に対して回転可能な位置にあるように配置される。かかる実施形態において、インレットパイプは、他の箇所または継手において変形または湾曲するように構成されてよい。
【0016】
いくつかの実施形態例において、弾性要素は、インレットパイプに対する機械的圧力を生じさせるように構成されてよい。
【0017】
いくつかの実施形態例において、機械的圧力の方向は、反応チャンバに向かって、内向きである。
【0018】
いくつかの実施形態例において、インレットパイプは、内側で互いに摺動するように配置された2つのパイプから形成される。
【0019】
いくつかの実施形態例において、反応チャンバは、インレットパイプをその位置にロックするカラーを備える。
【0020】
いくつかの実施形態例では、インレットパイプは、インレットパイプに沿って熱を分配するための熱分配要素が装備される。いくつかの実施形態例では、熱分配要素は、インレットパイプの長さ方向の距離全体にわたって延びる。いくつかの実施形態例では、熱分配要素は、インレットパイプの長さ方向の距離全体の一部のみにわたって延びる。いくつかの実施形態例では、熱分配要素は、単一の部品から形成される。いくつかの実施形態例では、熱分配要素は、複数の部品から形成される。いくつかの実施形態例では、熱分配要素は、能動ヒータ要素であるかまたはそれを備える。いくつかの実施形態例では、熱分配要素は、周囲圧力条件に置かれる。いくつかの実施形態例では、熱分配要素は、(圧力容器の)真空側に置かれる。
【0021】
いくつかの実施形態例では、熱分配要素は、密閉圧力容器の壁のフィードスルー箇所を越えて延びる。
【0022】
いくつかの実施形態例において、インレットパイプが反応チャンバと接する接触箇所は、非永続的な固定箇所である。
【0023】
いくつかの実施形態例において、接触箇所は、密閉および/または補強される。
【0024】
本発明の第2の例示的側面によれば、
密閉圧力容器に、密閉圧力容器の壁に取り付けられた流体インレットアセンブリであって、壁を通過する流体インレットパイプを有する流体インレットアセンブリと、流体インレットパイプを壁に結合する、インレットパイプの周りの流体インレットアセンブリ中の弾性要素とを設けることを含む方法が提供され、この弾性要素の内表面および外表面の一方は圧力容器内に行き渡る圧力を受け、他方は周囲圧力を受け、内側で運ばれる流体が弾性要素と接触するのを流体インレットパイプが防止し、この方法は、
弾性要素の収縮を通じてインレットパイプに対する機械的圧力を生じさせることをさらに含み、機械的圧力の方向は圧力容器内部へ向かう。
【0025】
いくつかの実施形態例において、機械的圧力は、圧力容器内に行き渡る圧力と周囲圧力との間の圧力差によって生じる。
【0026】
本発明の種々の拘束力のない例示的側面および実施形態を先に示してきた。上記の実施形態は、本発明の実装に利用されてよい選択された側面またはステップを単に説明するために用いたに過ぎない。ある実施形態は、本発明のいくつかの例示的側面のみを参照して提示されるであろう。当然のことながら、他の例示的側面にも同様に対応する実施形態が適用される。実施形態の任意の適切な組み合わせが形成されてもよい。
【0027】
次に、単なる例として、添付図面を参照しながら本発明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態例による基板処理装置の部品を示す。
【
図2】
図1の流体インレットアセンブリの拡大断面図を示す。
【
図3】本発明の別の実施形態例による流体インレットアセンブリの断面図を示す。
【
図4】先の実施形態に開示されたいくつかの部品を示す。
【
図5】
図5aおよび
図5bは、本発明のいくつかの実施形態例による機械式リミッタの動作を示す。
【
図6】本発明のさらに別の実施形態例による流体インレットアセンブリの断面図を示す。
【
図7】本発明のさらに別の実施形態例による流体インレットアセンブリの断面図を示す。
【
図8】本発明のさらに別の実施形態例による流体インレットアセンブリの断面図を示す。
【
図9】いくつかの実施形態例によるインレットパイプと反応チャンバ壁との間の接触箇所のさらなる断面図を示す。
【詳細説明】
【0029】
以下の記載では、原子層堆積(ALD)技術が例として用いられる。しかしながら、本発明は、ALD技術には限定されず、種々の温度および/または圧力範囲を適用する多種多様な基板処理装置において、例えば、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)反応装置で本発明を利用することができる。基板処理装置は、真空堆積装置であってよい。代わりに、シンタリングまたはエッチング、例えば、原子層エッチング(ALE:Atomic Layer Etching)など、堆積以外のプロセスを行う装置に本発明を適用することもできる。
【0030】
ALD成長機構の基礎は、当業者に知られている。ALDは、少なくとも1つの基板への少なくとも2つの反応性前駆体種の逐次的導入に基づく特殊な化学堆積方法である。しかしながら、理解すべきは、例えば、光強化ALDまたはプラズマ支援ALD、例えば、単一前駆体ALDプロセスをもたらすPEALDを用いるときには、これらの反応性前駆体のうちの1つがエネルギーによって置き換えられうるということである。例えば、金属などの純元素の堆積には、前駆体を1つしか必要としない。また、酸化物などの2元化合物についても、堆積されることになる2成分物質の両方の元素を前駆体化学物質が含むときには、1つの前駆体化学物質を用いてそれらを作り出すことができる。ALDによって成長した薄膜は、緻密でピンホールがなく、均一な厚さを有する。
【0031】
図1は、いくつかの実施形態例による基板処理装置100の部品を示す。反応空間112は、反応チャンバ内に画定された体積である。所望の基板処理、すなわち、所望の化学反応は、反応空間112において基板101の表面で発生する。処理中に、いくつかの実施形態例における基板101は、反応チャンバ内の基板ホルダ110によって支持される。
【0032】
反応チャンバは、反応チャンバ壁(単数または複数)130によって画定された圧力容器である。いくつかの実施形態例において、
図1に示されるように、装置100は、さらなる圧力容器、外側チャンバを備える。外側チャンバは、反応チャンバを囲み、それによって、反応チャンバ壁130と外側チャンバ(外)壁140との間の中間空間114を閉じる。
【0033】
処理中に、反応チャンバ内の反応空間112は、真空状態にある。装置100が堆積反応装置、例えば、ALDまたはCVD反応装置ならば、反応チャンバ/反応空間112内の圧力は、例えば、1μバール~0.1バール、またはより好ましくは0.1~1mバールであってよい。いくつかの実施形態例において、中間空間114は、反応チャンバにおける圧力より高い圧力、例えばおよそ10mバールを有する。中間空間114は、ヒータを含むことができる。この圧力配置は、反応性化学物質が、例えば、ヒータと接触するのを防止する。
【0034】
周囲条件(温度、圧力)は、外側チャンバ壁140の外側に全般的に行き渡る。周囲温度および圧力が行き渡る外側チャンバ壁140の外側の空間は、参照符号116によって示される。
【0035】
流体インレットアセンブリ120は、反応空間112に所望の化学物質を供給するために外側チャンバ壁140に取り付けられる(とはいえ、他の実施形態では、例えば、外側チャンバが欠落した実施形態では、対応する流体インレットアセンブリをその代わりに反応チャンバ壁130に取り付けることできる)。
【0036】
図2は、流体インレットアセンブリ120の拡大断面図を示す。流体インレットアセンブリ120は、一端において流体インレットパイプ201に、他端においてチャンバ壁140の外表面に取り付けられる。ある実施形態において、流体インレットアセンブリは、アセンブリの第1端に第1の端部部品209およびアセンブリの反対端に第2の端部部品206を備える。端部部品206、209は、フランジまたは同様であってよい。流体インレットパイプ201は、アセンブリ120内でチャンバ壁140を貫通する。流体インレットアセンブリ120は、流体インレットパイプ201を壁140に結合する、インレットパイプの周りの弾性要素205をさらに備える。弾性要素205は、気密またはほとんど気密であってよい。ある実施形態において、弾性要素205は、端部部品206、209の間に置かれる。端部部品またはフランジ206は、ボルト207などの締結要素によってチャンバ壁140に取り付けられてよい。端部部品209は、例えば、VCR(Vacuum Coupling Radiation:放射線研究所向け真空用継手)接続によって流体インレットパイプ201に取り付けられてよい。流体インレットパイプ201の周りの真空ギャップは、外側チャンバ壁140を通して、弾性要素205の内表面によって境界を画されたアセンブリ120内の空間中へ延びる。弾性要素205の内表面は、それゆえに、中間空間114内に行き渡る圧力を受け、弾性要素205の外表面は周囲圧力を受ける。描かれた解決法において、内表面は、反応空間112の圧力もある程度受ける。
【0037】
先述のように、基板処理装置100の動作中の中間空間114内の圧力は、周囲圧力と異なる。この圧力差が弾性要素205を収縮(すなわち、変形)させて、インレットパイプ201がそれ自体を反応チャンバの方へ押し進めるようにする。
【0038】
容積112および114が周囲圧力へ加圧されたとき、例えば、メンテナンス期間中に、これは、インレットパイプ201を外側へ後戻りさせる効果によって、弾性要素205にその元の長さを回復させる。これは、さらに、弾性要素205の剛性を減少させて、必要とされるときに1つ以上の部品を装置から取り外すことを容易にするために、任意の方向または角度におけるその移動を可能にする。
【0039】
図2に示されるような、いくつかの実施形態例において、流体インレットパイプ201は、2つのパイプ:パイプ201およびより大きい直径のパイプ202から形成される。流体インレットパイプ201は、より大きい直径のパイプ202の内側に入り、より大きい直径のパイプ内を(短い)距離進んで、次に、停止する。パイプ201および202は、結果として、いくらかの距離重なる。より大きい直径のパイプは、不連続部から反応チャンバ壁130へ延びる。パイプ201および202の間のフィッティングは、
図2に両矢印で示されるように、インレット配置120が圧力変動に起因して収縮または伸長するときに、パイプ201がより大きい直径のパイプ202内で水平方向に専ら摺動することを許容するタイトフィッティングである。より大きい直径のパイプ202は、パイプ202の位置をロックする半径方向延長部分211を有する。より大きい直径のパイプ202を、反応チャンバの方向から、半径方向延長部分が反応チャンバ壁130と接触してパイプ202のさらなる水平移動を防止する位置へ押し進めることができる。カラー212を半径方向延長部分の向こう側に下げて、パイプ202が後方へ移動するのを防止し、それによって、パイプ202をその水平位置にロックすることができる。メンテナンス中には、反応チャンバを通ってパイプ202を引き出すことができる。
【0040】
いくつかの実施形態例において、インレット配置120は、インレット配置120の水平移動、特に、弾性要素205の水平移動を制限する1つ以上の機械式リミッタ208を備える。機械式リミッタ208は、回転対称性を有する必要のない独立したバー要素として実装されてよい。リミッタ(単数または複数)を端部部品206および209の間に取り付けることができる。
【0041】
いくつかの実施形態例では、インレット配置120は、パイプ201の周りにチューブ状熱伝導体204を備える。いくつかの実施形態例では、インレット配置120は、パイプ202の周りにさらなるチューブ状熱伝導体203を備える。熱伝導体203および204は、1つ以上のヒータから熱を受け取ってよく、またはそれら自体が能動ヒータであってもよい。いくつかの実施形態例では、インレットパイプ201および/または202の周りのヒータ要素の上に熱分配要素がある。いくつかの実施形態例では、熱伝導体(単数または複数)は、温度差の均衡を保って好ましい熱勾配を作り出すためのものである。インレットパイプの加熱は、入ってくる流体が基板101へ到達する前にその温度を上昇させる。いくつかの実施形態例では、パイプ201へ接続された化学物質ソースは、加熱されたソースである。それらの実施形態例では、コールドスポットの発生を回避するために、加熱されたソースから基板への経路全体が加熱されるべきである。
【0042】
記載される流体インレットアセンブリ120は、圧力調節されたインレットクランピングを提供する。弾性要素205は、例えば、ベローズなどの、ひだ形状を有するチューブによって、またはいくつかの実施形態例では、ばねによって実装されてよい。先述のように、インレットアセンブリ120は、周囲圧力と圧力容器の内部内に行き渡る圧力との間の圧力差に起因して、反応チャンバまたは別の圧力容器に圧接するように構成される。しかしながら、留意すべきは、他の実施形態例では、他の手段によって、例えば、機械的作動によって、流体インレットアセンブリ120または弾性要素205の記載された変形(収縮または伸長作用)を作動できるということである。それらの実施形態では、作動を実施するために、例えば、モータ(単数または複数)または形状記憶合金を用いることができる。
【0043】
実装に依存して、流体インレットアセンブリ120は、例えば、反応チャンバ壁130、カラー212および/またはより大きい直径のパイプ202であってよい、対応部分に対してインレットパイプの機械的に緊密な接続を作り出す。いくつかの実施形態例では、弾性要素205は、反応チャンバ壁130に対するインレットパイプ201、202の移動を許容する。いくつかの実施形態例では、この移動は、圧力、温度、または装置の他の構造、例えば、蓋によって誘起される応力によって生じる。移動は、実際には、任意の方向および角度にあってよい。いくつかの実施形態例では、プッシングバルブなどの1つ以上のさらなる部品がインレットパイプから吊り下がって、弾性要素205の移動を制限しないように置かれる。弾性要素205は、インレットパイプ201中を導かれる化学物質(単数または複数)とは接触しない。それゆえに、要素205を通る潜在的な材料漏れは、反応空間112内の化学反応に影響を及ぼさない。
【0044】
図3は、別の実施形態例による流体インレットアセンブリ120の断面図を示す。示される実施形態は、先の実施形態において圧力領域114内に置かれた熱伝導体204が周囲圧力領域116内に置かれたことを除いて、
図1および2に示された実施形態に対応する。同時に、端部部品209が流体インレットパイプ201をつなぐ取り付けの箇所が反応チャンバの方へ移された。熱伝導体204は、代わりに、能動ヒータであってもよい。
【0045】
図4は、流体インレットパイプ201および202の繋ぎ箇所を示す。パイプ201は、より大きい直径のパイプ202内で摺動することを許容される。
図4は、パイプ202に含まれる半径方向延長部分も示す。
図4は、さらに、カラー212を示す。カラーは、パイプ202が嵌合するのを許容するが、延長部分211が嵌合するのを防止するのに十分に緊密な開口部を有し、それによって、パイプ202のロッキング効果を提供する。
【0046】
図5aおよび5bは、機械式リミッタ(単数または複数)208の動作を示す断面図である。
図5aは、弾性要素205の外表面がその内表面と同じ圧力を受ける状況を示すが、一方で
図5bは、圧力が内表面側でより低い状況を示す。
【0047】
図5aおよび5bに示される機械式リミッタ208の例は、2つの接続されたバー208'および208''から形成される。バー208'が端部部品206に、部品208''が端部部品209に取り付けられる。バー208'は、2つの端部ストッパを有し、バー208''は、端部ストッパの間で移動することを許容され結果として弾性要素205の長さ方向移動に対する終了点を設定する突出部を有する。
【0048】
図5aの状況において、弾性要素205は、その通常の長さにあり、突出部は、端部部品209の方により近い端部ストッパの近くにある。
図5bの状況においては、弾性要素205は、その長さ方向に収縮する傾向があり、突出部は、他方の端部ストッパ(端部部品206の方により近い)とともに最大収縮の限度を設定する。リミッタは、運動を水平方向に制限するようにここでは牽引されるが、実装に依存して、移動の範囲を任意の方向に制限することを可能にできると理解されたい。
【0049】
図6は、さらに別の実施形態例による流体インレットアセンブリ120の断面図を示す。示される実施形態は、概して、
図1および2に示された実施形態に対応する。しかしながら、この実施形態では、流体インレットパイプ201は反応チャンバ壁130までずっと延びており、半径方向延長部分211を備えるのはこのパイプ201である。より大きい直径のパイプ202は、省略される。
【0050】
図7は、さらに別の実施形態例による流体インレットアセンブリ120の断面図を示す。示される実施形態は、概して、
図6に示された実施形態に対応する。しかしながら、この実施形態では、半径方向延長部分211が反応チャンバ壁130のインレットアセンブリ側に置かれるが、一方で
図6に示された実施形態では、半径方向延長部分211が反応チャンバ壁130の反応チャンバ側に置かれる。弾性要素205の収縮は、流体インレットパイプ201を反応チャンバ壁130の方へ押すかおよび/またはそれに圧接させる。半径方向延長部分211は、パイプ201の長さ方向移動に対するリミッタとして機能する。ヒータ(単数または複数)もしくは熱伝導体(単数または複数)203および204を互いに並んだまたは重なり合った分離要素として実装することができる。または、要素203および204を単一要素として実装できる。さらに、真空側内に置く代わりに、ヒータ204を(例えば、
図3に示されるのと同様に周囲側からインレットパイプ201の表面に沿って延びる、またはそれを完全に環状に囲む溝中にそれを置くことによって)周囲圧力領域中に置くことができる。メンテナンス中には、インレットパイプ201をアセンブリ120とともに(壁140の)外側から引き出すことができる。
【0051】
図8は、さらに別の実施形態例による流体インレットアセンブリ120の断面図を示す。示される実施形態は、概して、
図7に示された実施形態に対応する。しかしながら、
図8では、インレットパイプが反応チャンバもしくは壁130と接する接触箇所の密閉または補強がより詳細に示されている。
図8によれば、流体インレットアセンブリは、中間空間114中への化学物質漏れを低減するために、パイプ201と反応チャンバ壁130との間に、Oリングのような、シール801を含むことができる。接触箇所は、様々な方法で実装できる。
図7に示された段状接続および
図8に示された密閉実装の代わりにまたはそれらに加えて、円錐型接続、ボール状または半球状接続、チャンバ壁130中の適切な逆形状との任意の表面接続を実装できる。例えば、段継手、丸棒継手、ボール継手によって、または分離したシリンダによって接触箇所を補強することができる。
【0052】
図9は、インレットパイプ201と反応チャンバ壁130との間の接触箇所(または繋ぎ箇所)901が回転可能に配置された一実装を示す。インレットパイプ201は、湾曲したまたはボール状の端部を備え、反応チャンバまたはチャンバ壁130は、くぼんだ対向表面を備える。インレットパイプ201は、必要とされるときに、形成された継手または繋ぎ箇所における回転移動を許容される。いくつかの実施形態例において、繋ぎ箇所で壁130を通るフィードスルー開口部は、インレットパイプ201の内径より大きい直径を有してよい。いくつかの実施形態例において、継手は、反応チャンバ壁130の内側に実装される。
【0053】
なお代わりの実施形態では、弾性要素205は、分離要素ではなく、チャンバ140の一体的な部分であるように生産された要素である。さらにまた、開示された実施形態は、弾性要素205の位置を制限することは意図されず、むしろそれが接続された1つ以上の部品の移動を許容するためにその機械的機能を制限することが意図される。いくつかの実施形態例において、中間空間114における圧力が反応チャンバにおける圧力より高い圧力配置は、反応性化学物質が弾性要素205と接触するのを防止する。
【0054】
いくつかの代わりの実施形態では、中間空間114が周囲領域116における圧力より高い圧力を有する。かかる状態においては、インレットアセンブリ120に対する機械的圧力を密閉圧力容器もしくは反応チャンバの内側から外側に向かって作り出すことができる。
【0055】
いくつかの実施形態例では、要素120にかかる機械的圧力を機械式アクチュエータによって、またはばね負荷によって補強する、ずらす、または完全に作り出すことができる。
【0056】
さらにいくつかの代わりの実施形態では、基板処理装置が2つより多い壁を備え、インレットアセンブリは、各々の壁を超えて動作する。
【0057】
いずれか特定の先の実施形態に関する記載を他の開示された実施形態に直接に適用することができる。開示された装置の構造および動作の両方について、このことが当て嵌まる。
【0058】
特許請求の範囲および解釈を限定することなく、本明細書に開示された1つ以上の実施形態例のいくつかの技術的効果が以下に示される。1つの技術的効果は、化学物質インレットパイプおよび関連構造において不必要な応力の低減を提供することである。別の技術的効果は、圧力または他の手段によって調節可能なインレットパイプクランピングである。別の技術的効果は、チャンバフィードスルーにおけるコールドスポットの回避および改善された熱分布である。別の技術的効果は、改善されたサービス性である。
【0059】
留意すべきは、先に考察された機能または方法ステップのいくつかが異なる順序でおよび/または互いに同時に行われてよいことである。さらにまた、上記の機能または方法ステップの1つ以上は、随意的であってもよく、または組み合わされてもよい。
【0060】
本発明の特定の実装および実施形態の非限定の例として、本発明者らによって現在考慮される本発明を実施するための最良モードの完全かつ参考になる記載を提供してきた。しかしながら、本発明は、上記に提示された実施形態の詳細には制限されず、本発明の特性から逸脱することなく他の実施形態において等価な手段を用いて本発明を実施できることが当業者には明らかである。
【0061】
さらにまた、上に開示された本発明の実施形態の特徴のうちのいくつかが他の特徴をそれに対応して使用することなく有利に用いられてもよい。このように、先の記載は、本発明の原理を単に説明するに過ぎず、それらを限定しないと見做されるべきである。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。