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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】車両管理装置
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20221115BHJP
【FI】
G07B15/00 T
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020073370
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021170246
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知己
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-96297(JP,A)
【文献】特開平4-290199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の画像を時間経過と共に順次撮影する撮像器と、
前記撮像器から時間経過と共に順次出力される画像フレームに対して前記車両を追跡するトラッキング処理であって、前記撮像器から画像フレームが取得されるごとに、前記車両の幾何学的情報が得られるトラッキング処理を実行する演算器と、を備え、
前記演算器は、
先に前記撮像器から取得され記憶された管理画像フレームに対して得られた前記幾何学的情報と、新たに取得された画像フレームである最新画像フレームに対して得られた前記幾何学的情報とに基づいて、前記最新画像フレームの良否を判定する処理と、
前記最新画像フレームが良好であると判定されたときに、前記最新画像フレームを新たに前記管理画像フレームとして記憶する処理と、を実行することを特徴とする車両管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両管理装置において、
前記最新画像フレームの良否を判定する処理は、前記最新画像フレームによって前記車両のナンバープレートが示される可能性があるときに、前記最新画像フレームが良好であると判定する処理を含むことを特徴とする車両管理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両管理装置において、
前記最新画像フレームの良否を判定する処理は、
前記管理画像フレームに対して得られた前記幾何学的情報に基づいて、前記車両が進行する方向に関する第1の進行方向指標を求める処理と、
前記最新画像フレームに対して得られた前記幾何学的情報に基づいて、前記車両が進行する方向に関する第2の進行方向指標を求める処理と、
前記第1の進行方向指標と前記第2の進行方向指標との比較に基づいて、前記最新画像フレームの良否を判定する処理と、を含むことを特徴とする車両管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両管理装置において、
前記第1の進行方向指標は、前記管理画像フレームが示す画像に前記車両の前面または背面が現れる可能性を示し、
前記第2の進行方向指標は、前記最新画像フレームが示す画像に前記車両の前面または背面が現れる可能性を示すことを特徴とする車両管理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両管理装置において、
前記幾何学的情報は、
前記車両が存在する画像上の領域を示す情報を含み、
前記最新画像フレームの良否を判定する処理は、
前記車両が存在する領域が、予め定められた判定枠の内側にないときに、前記最新画像フレームが良好でないと判定する処理を含むことを特徴とする車両管理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両管理装置において、
前記幾何学的情報は、
前記車両とは異なる他車両が存在する画像上の領域を示す情報を含み、
前記最新画像フレームの良否を判定する処理は、
前記撮像器から見て前記車両の視界を遮る他車両が存在するか否かを判定する処理と、
前記撮像器から見て前記車両の視界を遮る他車両が存在するときに、前記最新画像フレームが良好でないと判定する処理と、を含むことを特徴とする車両管理装置。
【請求項7】
無線器を備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両管理装置において、
前記演算器は、
前記トラッキング処理を開始または終了させるイベントが生じたときに、前記管理画像フレームを前記無線器に送信させることを特徴とする車両管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理装置に関し、特に、車両に対するトラッキングに基づく画像を記憶する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車場等において自動車のナンバープレートを記録する技術につき研究開発が行われている。例えば、以下の特許文献1には、駐車場に入庫した車両の画像を撮影し、その車両画像から車両ナンバーを読み取る駐車場管理システムが記載されている。この駐車場管理システムでは、車両ナンバー、車両画像および入庫時刻が関連付けて記録され、操作部に入力された車両ナンバーまたは入庫時刻との適合率が高い車両ナンバーに対応する車両画像が表示される。
【0003】
また、以下の特許文献2には、駐車車両のナンバープレートを撮影し、ナンバープレート部分から内容を認識する技術が記載されている。ナンバープレートに記載された総ての文字のうちの一部を認識することで、同一車両が駐車されているとの判定がされる。なお、特許文献3には、本願発明に関連する技術として、画像上の目標物を認識する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-22366号公報
【文献】特開2018-41398号公報
【文献】特開2019-207523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の駐車位置のそれぞれにおいて車両のナンバープレート等、車両の特徴箇所を撮影し車両を管理する場合、複数の駐車位置のそれぞれにカメラが必要となり、車両を管理するシステムの構造が複雑になることがある。一方、駐車位置の数よりも少ない数のカメラで車両の特徴箇所を撮影し、車両を管理する場合には、車両の向きによっては特徴箇所を撮影することが不可能となる。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で車両を管理することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の画像を時間経過と共に順次撮影する撮像器と、前記撮像器から時間経過と共に順次出力される画像フレームに対して前記車両を追跡するトラッキング処理であって、前記撮像器から画像フレームが取得されるごとに、前記車両の幾何学的情報が得られるトラッキング処理を実行する演算器と、を備え、前記演算器は、先に前記撮像器から取得され記憶された管理画像フレームに対して得られた前記幾何学的情報と、新たに取得された画像フレームである最新画像フレームに対して得られた前記幾何学的情報とに基づいて、前記最新画像フレームの良否を判定する処理と、前記最新画像フレームが良好であると判定されたときに、前記最新画像フレームを新たに前記管理画像フレームとして記憶する処理と、を実行することを特徴とする。
【0008】
望ましくは、前記最新画像フレームの良否を判定する処理は、前記最新画像フレームによって前記車両のナンバープレートが示される可能性があるときに、前記最新画像フレームが良好であると判定する処理を含む。
【0009】
望ましくは、前記最新画像フレームの良否を判定する処理は、前記管理画像フレームに対して得られた前記幾何学的情報に基づいて、前記車両が進行する方向に関する第1の進行方向指標を求める処理と、前記最新画像フレームに対して得られた前記幾何学的情報に基づいて、前記車両が進行する方向に関する第2の進行方向指標を求める処理と、前記第1の進行方向指標と前記第2の進行方向指標との比較に基づいて、前記最新画像フレームの良否を判定する処理と、を含む。
【0010】
望ましくは、前記第1の進行方向指標は、前記管理画像フレームが示す画像に前記車両の前面または背面が現れる可能性を示し、前記第2の進行方向指標は、前記最新画像フレームが示す画像に前記車両の前面または背面が現れる可能性を示す。
【0011】
望ましくは、前記幾何学的情報は、前記車両が存在する画像上の領域を示す情報を含み、前記最新画像フレームの良否を判定する処理は、前記車両が存在する領域が、予め定められた判定枠の内側にないときに、前記最新画像フレームが良好でないと判定する処理を含む。
【0012】
望ましくは、前記幾何学的情報は、前記車両とは異なる他車両が存在する画像上の領域を示す情報を含み、前記最新画像フレームの良否を判定する処理は、前記撮像器から見て前記車両の視界を遮る他車両が存在するか否かを判定する処理と、前記撮像器から見て前記車両の視界を遮る他車両が存在するときに、前記最新画像フレームが良好でないと判定する処理と、を含む。
【0013】
望ましくは、無線器を備える前記車両管理装置において、前記演算器は、前記トラッキング処理を開始または終了させるイベントが生じたときに、前記管理画像フレームを前記無線器に送信させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成で車両を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両管理システムの構成を示す図である。
図2】車両管理装置の構成を示す図である。
図3】トラッキング処理で認識される自動車を概念的に示す図である。
図4】2つのバウンディングボックスと判定枠を模式的に示す図である。
図5】2つの自動車に対して求められた各バウンディングボックスを模式的に示す図である。
図6】自動車の右側面、左側面、正面および背面が画像に表されている場合における移動ベクトルの様子を示す図である。
図7】公道、駐車場および自動車を示す図である。
図8】入退場判定を説明するための撮影視野を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)車両管理システムの構成
図1には、本発明の実施形態に係る車両管理システム1の構成が示されている。車両管理システム1は、車両管理装置10および基地局12を備えている。車両管理装置10は、駐車場14内または駐車場14の傍らに設置されている。車両管理装置10は、時間経過と共に順次、駐車場14内を移動する自動車16(車両)の画像を撮影する。そして、時間経過と共に順次撮影された画像のうち、自動車16のナンバープレートが示されている可能性が高い管理画像を、基地局12に無線送信する。
【0017】
また、車両管理装置10は、自動車16のナンバープレートに記載されているナンバーを管理画像から認識すると共に、自動車16が駐車場14に入場した時刻または駐車場14から退場した時刻(以下、入場/退場時刻という)を後述の処理によって計測する。車両管理装置10は、自動車16のナンバーおよび入場/退場時刻を管理画像と共に、あるいは、管理画像とは別に基地局12に無線送信する。基地局12は、管理画像、ナンバーおよび入場/退場時刻を対応付けて記憶する。
【0018】
ここでは、車両管理装置10と基地局12との間で無線通信が行われる実施形態が示されているが、車両管理装置10と基地局12とが通信線で接続され、車両管理装置10と基地局12との間で有線通信が行われてもよい。
【0019】
(2)車両管理装置の構成および車両管理装置が実行する処理
(2-1)車両管理装置の構成
図2には、車両管理装置10の構成が示されている。車両管理装置10は、撮像器24、演算器18、記憶デバイス22および無線器20を備えている。撮像器24はカメラを備えている。演算器18は、記憶デバイス22に記憶されているプログラムを実行するプロセッサによって構成されてよい。記憶デバイス22は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のデバイスであってよい。また、記憶デバイス22はハードディスク等の記憶媒体であってよい。また、記憶デバイスは22、インターネット等のネットワークを構成する複数のコンピュータによって構成される、ネットワーク上のストレージであってもよい。
【0020】
撮像器24は、駐車場の画像を時間経過と共に順次撮影し、撮影によって得られる画像フレームを時間経過と共に順次、演算器18に出力する。演算器18は、画像フレームを時間経過と共に順次撮像器24から取得し、各画像フレームに対してトラッキング処理を実行する。トラッキング処理は、新たに画像フレームが取得されるごとに、その新たに取得された最新画像フレームが示す画像における目標物の位置を追跡する処理である。トラッキング処理については、例えば、上記の特許文献3に「目標物を認識する処理」として記載されている。
【0021】
(2-2)トラッキング処理
目標物を自動車とするトラッキング処理は、例えば、次のようにして実行される。演算器18は、各画像フレームが示す画像から、自動車である可能性を示す尤度が所定の閾値を超える物体を認識する。この処理は、記憶デバイス22に予め記憶されたデータベースに基づいて実行される。以下の説明では、自動車である可能性を示す尤度が所定の閾値を超える物体を認識することを、単に自動車を認識するという。トラッキング処理によれば、自動車が存在する領域を示すバウンディングボックスの位置情報が、各画像フレームで認識された自動車に対する幾何学的情報として求められる。
【0022】
本実施形態では、バウンディングボックスの形状は各辺が画像周辺の各辺と平行な矩形である。バウンディングボックスの位置情報は、x座標値およびy座標値が最小となる最小座標値(xmin,ymin)と、x座標値およびy座標値が最大となる最大座標値(xmax,ymax)を含む情報であってよい。ただし、x座標値およびy座標値は、画像フレームが示す画像上に定義された直交するx軸およびy軸上での座標値である。xy座標は画像の左上の角を原点とする。x軸の正方向は右方向であり、y軸の正方向は下方向である。
【0023】
図3には、トラッキング処理で認識される自動車T1~T4が概念的に示されている。この図では、目標物としての自動車T1~T4が撮影視野30内に示されている。自動車T1は、最も先に取得された第1の画像フレームが示す画像上で認識された自動車であり、自動車T2はその次に取得された第2の画像フレームが示す画像上で認識された自動車である。自動車T3は、第2の画像フレームの次に取得された第3の画像フレームが示す画像上で認識された自動車であり、自動車T4は、その次に取得された第4の画像フレームが示す画像上で認識された自動車である。自動車T1~T4に対しては、それぞれ、自動車の位置および走行方向に応じて位置および大きさが異なるバウンディングボックスB1~B4が描かれている。バウンディングボックスのx軸方向の占有範囲は、画像上で認識された自動車がx軸へ投影される範囲であり、バウンディングボックスのy軸方向の占有範囲は、画像上で認識された自動車がy軸へ投影される範囲である。なお、図3では、説明の便宜上、1フレーム周期で自動車が移動する距離、すなわち、隣接する自動車間の距離が誇張して描かれている。実際の1フレーム周期では、1フレーム周期で自動車が移動する距離は図3に示されている距離よりも短い。
【0024】
(2-3)複数台の自動車を目標物とするトラッキング処理
上記では、1台の自動車を目標物とするトラッキング処理が示されたが、トラッキング処理では、複数台の自動車が目標物とされてよい。以下の説明では、目標物としての複数の自動車のうち1台の自動車を管理対象の自動車とする処理が取り上げられる。複数台の自動車を管理対象とする場合には、管理対象の複数の自動車のそれぞれに対し、1台の自動車を管理対象の自動車とする処理が実行される。
【0025】
(3)良否判定処理(位置判定、他車両重なり判定、および移動ベクトル演算判定)
演算器18は、撮像器24から新たに画像フレームが取得されるごとに、その最新画像フレームに対する良否判定処理を実行する。この良否判定処理は、画像上にナンバープレートが示される可能性があるときに、画像フレームが良好であると判定する処理である。良否判定処理において、演算器18は、(i)位置判定、(ii)他車両重なり判定、および(iii)移動ベクトル演算判定を行う。ここでは、位置判定、他車両重なり判定および移動ベクトル演算判定の概要について述べる。
【0026】
位置判定では、画像フレームにおいて認識された自動車のバウンディングボックスが、撮影視野内に定義された判定枠の内側にあるか否かが判定される。判定枠は、撮影視野の外周と同一の矩形状の枠であってもよいし、撮影視野内に定義された矩形状の枠であってもよい。演算器18は、位置判定によって、バウンディングボックスが判定枠の内側にない旨の枠外判定、あるいは、バウンディングボックスが判定枠の内側にある旨の枠内判定をする。枠外判定がされたときは、ナンバープレートが画像に現れている可能性が低い。
【0027】
他車両重なり判定では、撮像器24から見て、管理対象となっている自動車までの視界を遮る他自動車(以下、オーバーラップ自動車という)が存在するか否かが判定される。演算器18は、オーバーラップ自動車が存在するときは重なり判定をし、オーバーラップ自動車が存在しないときは非重なり判定をする。非重なり判定がされたときは、ナンバープレートが画像に現れている可能性が低い。
【0028】
移動ベクトル演算判定では、最新画像フレームより1フレームだけ前に取得された画像フレームである先行画像フレームを基準として、最新画像フレームについて求められたバウンディングボックスの移動ベクトル(xdiff,ydiff)が求められる。演算器18は、移動ベクトル演算判定において、さらに、進行方向指標r=|ydiff/xdiff|を求める。進行方向指標rは、最新画像フレームにおいて認識された自動車の前面または背面が画像に現れている可能性を示す。進行方向指標rが大きい程、自動車の前面または背面が画像に現れている可能性が高く、ナンバープレートが画像に現れている可能性が高い。なお、進行方向指標rは、後述するその他の定義に基づいて求められてもよい。
【0029】
上記の良否判定処理によって、位置判定の結果を示す情報、他車両重なり判定の結果を示す情報、および移動ベクトル演算判定の結果を示す情報が、良否判定情報として得られる。なお、位置判定、他車両重なり判定および移動ベクトル演算判定の詳細については後述する。
【0030】
ここでは、最新画像フレームが撮像器24から取得されるときに、先に取得された画像フレームに基づく管理画像フレームと、その管理画像フレームに対する良否判定処理によって得られた良否判定情報が、記憶デバイス22に記憶されているものとする。
【0031】
演算器18は、最新画像フレーム対する位置判定において枠外判定をした場合、または最新画像フレームに対する他車両重なり判定において重なり判定をした場合には、管理画像フレームと、その参照フレームに対する良否判定情報が記憶デバイス22に記憶された状態を維持する。そして、次の最新画像フレームについて良否判定処理を実行する。このように、演算器18が、最新画像フレーム対する位置判定において枠外判定をした場合、または最新画像フレームに対する他車両重なり判定において重なり判定をした場合は、演算器18が、最新画像フレームが良好でないと判定した場合に相当する。
【0032】
演算器18は、最新画像フレーム対する位置判定において枠内判定をし、かつ、最新画像フレーム対する他車両重なり判定において非重なり判定をした場合には、最新画像フレームに対する移動ベクトル演算判定を実行し、進行方向指標rを求める。演算器18は、記憶デバイス22に記憶されている管理画像フレームに対する進行方向指標r0(第1の進行方向指標)と、最新画像フレームに対して求められた進行方向指標r(第2の進行方向指標)とを比較する。
【0033】
演算器18は、進行方向指標r0が、進行方向指標r以上であるときは、管理画像フレームと、その管理画像フレームに対する良否判定情報が記憶デバイス22に記憶された状態を維持する。そして、次の最新画像フレームについて良否判定処理を実行する。
【0034】
他方、演算器18は、進行方向指標r0が進行方向指標r未満であるときは、先に記憶されていた管理画像フレームに代えて、最新画像フレームを新たな管理画像フレームとして記憶デバイス22に記憶する。演算器18は、さらに、先に記憶されていた良否判定情報に代えて、最新画像フレームに対する良否判定情報を記憶デバイス22に記憶する。このように、演算器18が、最新画像フレーム対する位置判定において枠内判定をし、かつ、最新画像フレーム対する他車両重なり判定において非重なり判定をし、さらに、進行方向指標r0が、進行方向指標r未満であると判定した場合は、演算器18が、最新画像フレームが良好であると判定したことに相当する。
【0035】
このような処理によれば、最新画像フレームが良好であると演算器18が判定したときに、演算器18は、最新画像フレームを管理画像フレームとして記憶デバイス22に記憶する。これによって、時間経過と共に順次、撮像器24から取得される画像フレームから、ナンバープレートが表されている可能性がある画像フレームが選択され、記憶デバイス22に記憶される。
【0036】
なお、上記では、位置判定、他車両重なり判定、および移動ベクトル演算判定を組み合わせて良否判定処理が行われる実施形態が示された。良否判定処理は、位置判定、他車両重なり判定、および移動ベクトル演算判定のうち少なくとも1つを実行することで行われてもよい。複数の判定が組み合わされた場合、総ての判定において、最新画像フレームによって示される画像にナンバープレートが表されている可能性があると判定された場合に(最新画像フレームによって示される画像が良好であると判定された場合に)、最新画像フレームが管理画像フレームとして、その良否判定情報と共に記憶される。
【0037】
また、上記では、最新画像フレームが撮像器24から取得されるときに、先に取得された画像フレームに基づく管理画像フレームと、その管理画像フレームに対する良否判定処理によって得られた良否判定情報が、記憶デバイス22に記憶されている場合について説明した。最新画像フレームが最初に撮像器24から取得された画像フレームであり、管理画像フレームおよびその良否判定情報が記憶デバイス22に記憶されていないときは、予め定められた初期の画像フレームおよび初期の良否判定情報が記憶デバイス22に記憶されている。
【0038】
(4)位置判定
位置判定について詳細に説明する。位置判定では、画像フレームにおいて認識された自動車のバウンディングボックスが、撮影視野内に定義された判定枠の中に入っているか否かが判定される。図4には、2つのバウンディングボックス36-1および36-2と、判定枠40が模式的に示されている。判定枠40は、最小座標値を(cutin_xmin,cutin_ymin)とし、最大座標値を(cutin_xmax,cutin_ymax)とする矩形の枠である。
【0039】
演算器18は、以下の条件(C1)が成立するときは、バウンディングボックスが、判定枠40の内側にある旨の枠内判定をする。一方、演算器18は、条件(C1)が成立しないときは、バウンディングボックスが判定枠40の内側にない旨の枠外判定をする。
【0040】
(C1)cutin_xmin<xmin、かつ、xmax<cutin_xmax、かつ、cutin_ymin<ymin、かつ、ymax<cutin_ymax
【0041】
例えば、バウンディングボックス36-2については条件(C1)が成立しないため、演算器18は、バウンディングボックス36-2が求められた画像フレームに対しては枠外判定をする。一方、バウンディングボックス36-1については条件(C1)が成立するため、演算器18は、バウンディングボックス36-1が求められた画像フレームに対しては枠内判定をする。
【0042】
(5)他車両重なり判定
他車両重なり判定について詳細に説明する。他車両重なり判定では、オーバーラップ自動車が存在するか否かが判定される。具体的には、管理対象となっている自動車に対して求められたバウンディングボックス(管理対象車ボックス)に、他自動車に対して求められたバウンディングボックス(他車ボックス)が重なっており、かつ、管理対象車ボックスが、他車ボックスよりも撮影視野内で上方に位置している場合には、演算器18は、オーバーラップ自動車が存在する旨の重なり判定をする。一方、この条件が成立しないときは、演算器18は、オーバーラップ自動車が存在しない旨の非重なり判定をする。
【0043】
演算器18は、1つまたは複数の他自動車との間に、以下の条件(C2)が成立するときは重なり判定をする。ただし、座標値(xminA,yminA)は他自動車のバウンディングボックスの最小座標値であり、座標値(xmaxA,ymaxA)は他自動車の最大座標値である。
【0044】
(C2)(xminA<xmin<xmaxA、または、xminA<xmax<xmaxA)、かつ、yminA<ymax<ymaxA
【0045】
演算器18は、いずれの他自動車との間にも、条件(C2)が成立しないときは非重なり判定をする。
【0046】
図5には、2つの自動車16Aおよび16Bに対してそれぞれ求められたバウンディングボックス36-3および36-4が模式的に示されている。バウンディングボックス36-3およびバウンディングボックス36-4は重なっており、バウンディングボックス36-3の方が、バウンディングボックス36-4よりも撮影視野30内で上方に位置している。したがって、自動車16Aが管理対象である場合には重なり判定がされる。一方、自動車16Bが管理対象である場合には非重なり判定がされる。
【0047】
(6)移動ベクトル演算判定
移動ベクトル演算判定について詳細に説明する。移動ベクトル演算判定では、最新画像フレームより1フレーム前に取得された画像フレームである先行画像フレームを基準として、最新画像フレームについて求められたバウンディングボックスの移動ベクトル(xdiff,ydiff)が求められる。x軸方向の増加分xdiffは、xdiff=xmax-xmax0またはxdiff=xmin-xmin0として求められる。y軸方向の増加分ydiffは、ydiff=ymax-ymax0またはydiff=ymin-ymin0として求められる。ただし、座標値(xmin0,ymin0)は、先行画像フレームについて求められた最小座標値であり、座標値(xmax0,ymax0)は、先行画像フレームについて求められた最大座標値である。
【0048】
なお、先行画像フレームは、最新画像フレームより2フレーム以上前に取得された画像フレームであってもよい。また、移動ベクトルは、最新画像フレームについて求められたバウンディングボックスの重心の座標値から、先行画像フレームについて求められたバウンディングボックスの重心の座標値を減算することで求めてもよい。また、移動ベクトルは、最新画像フレームについて求められたバウンディングボックスの所定の角(四隅のうち予め定められた1つ)の座標値から、先行画像フレームについて求められたバウンディングボックスの所定の角の座標値を減算することで求めてもよい。
【0049】
演算器18は、x軸方向の増加分xdiffに対するy軸方向の増加分ydiffの比率の絶対値である進行方向指標r=|ydiff/xdiff|を求める。進行方向指標rが大きい程、最新画像フレームにおいて認識されている自動車の前方または後方が画像に現れている可能性が高く、ナンバープレートが画像に現れている可能性が高い。
【0050】
図6(a)、図6(b)、図6(c)および図6(d)には、それぞれ、自動車16の右側面、左側面、正面および背面が画像に表されている場合における移動ベクトルの様子が示されている。図6(a)~図6(d)に示されているように、自動車16が撮影視野30において上方向または下方向に走行しているときは、自動車16が撮影視野において右方向または左方向に走行しているときに比べて、進行方向指標r=|ydiff/xdiff|が大きい。すなわち、自動車16の前面または背面が画像に現れているときは、自動車16の右側面または左側面が画像に現れているときに比べて、進行方向指標r=|ydiff/xdiff|が大きい。
【0051】
なお、演算器18は、バウンディングボックスのx軸方向の長さxmax-xminに対する、y軸方向の長さymax-yminの比率を進行方向指標rとしてもよい。一般に、自動車は正面または背面から見た幅(車幅)に比べて、側面から見た幅(車長)の方が大きい。この場合も、進行方向指標rが大きい程、自動車の前方または後方が画像に現れている可能性が高く、ナンバープレートが画像に現れている可能性が高い。
【0052】
また、駐車場の出入口が撮像器24の撮像方向にある場合、すなわち、駐車場の出入口を通る自動車が撮像器24から見て正面または背面を向くように、撮像器24が配置されている場合には、演算器18は次のような演算によって進行方向指標rを求めてもよい。すなわち、演算器18は、画像上に定義された駐車場出入口線のy座標値ylineと、バウンディングボックスの下辺のy座標値ymaxとの差の絶対値の逆数1/|yline-ymax|を進行方向指標としてもよい。ここで、駐車場出入口線は、駐車場の出入口を通り、x軸方向に平行である仮想的な直線として定義されている。
【0053】
上記では、進行方向指標が大きい程、最新画像フレームにおいて認識されている自動車の前方または後方が画像に現れている可能性が高くなるように、進行方向指標が定義された実施形態が示された。進行方向指標は、その値が小さい程、最新画像フレームにおいて認識されている自動車の前方または後方が画像に現れている可能性が高くなるように定義されてもよい。
【0054】
この場合、演算器18は、管理画像フレームに対応する進行方向指標が、最新画像フレームに対応する進行方向指標未満であるときは、管理画像フレームと、その管理画像フレームに対する良否判定情報が記憶デバイス22に記憶された状態を維持する。他方、演算器18は、管理画像フレームに対応する進行方向指標が、最新画像フレームに対応する進行方向指標以上であるときは、先に記憶されていた管理画像フレームに代えて、最新画像フレームを新たな管理画像フレームとして記憶デバイス22に記憶する。演算器18は、さらに、先に記憶されていた良否判定情報に代えて、最新画像フレームに対する良否判定情報を記憶デバイス22に記憶する。
【0055】
図7には、公道50から駐車場14に侵入する自動車16Cと、その自動車16Cに対するバウンディングボックス36-5が示されている。また、駐車場14内を走行している自動車16Dと、その自動車16Dに対するバウンディングボックス36-5が示されている。図7に示されているように、バウンディングボックス36-6の下辺の方が、バウンディングボックス36-6の下辺よりも、駐車場出入口線52に近い。このように、バウンディングボックスの下辺が、駐車場出入口線52に近い程、そのバウンディングボックスに対応する自動車は、その正面または背面を撮像器24に向けている可能性が高い。したがって、1/|yline-ymax|を進行方向指標rとした場合、進行方向指標rが大きい程、最新画像フレームにおいて認識されている自動車の前方または後方が画像に現れている可能性が高く、ナンバープレートが画像に現れている可能性が高い。
【0056】
(7)入退場判定
演算器18は、管理対象の自動車が駐車場に入場したこと、および管理対象の自動車が駐車場から退場したことを判定する入退場判定を実行する。上記のトラッキング処理において、演算器18は、管理対象の自動車が最初に認識されたときに、バウンディングボックスの位置を出現点の座標値として求める。また、演算器18は、管理対象の自動車が認識できなくなったときは、最後に自動車が認識されたときのバウンディングボックスの位置を消失点の座標値として求める。ここで、バウンディングボックスの位置は、バウンディングボックスの重心の位置または所定の角の位置であってよい。
【0057】
図8には、入退場判定を説明するための撮影視野30が概念的に示されている。撮影視野30に対しては、入退場検出範囲54が定義されている。撮影視野30の上辺は公道50に面している。撮影視野30のうち、公道50に面した上方の横長の長方形の領域が入退場検出範囲54である。軌跡56-1および56-2は、トラッキング処理によって認識された自動車の軌跡を示す。軌跡56-1は、入退場検出範囲54外にある出現点S1を始点とし、入退場検出範囲54内にある消失点F1を終点とする。軌跡56-2は、入退場検出範囲54内にある出現点S2を始点とし、入退場検出範囲54外にある消失点F2を終点とする。
【0058】
演算器18は、出現点が入退場検出範囲54内にあり、消失点が入退場検出範囲54外にあるときに自動車が入場したとの判定をする。また、演算器18は、出現点が入退場検出範囲54外にあり、消失点が入退場検出範囲54内にあるときに自動車が退場したとの判定をする。演算器18は、さらに、出現点および消失点の両者が入退場検出範囲54内にあるとき、あるいは、出現点および消失点の両者が入退場検出範囲54外にあるときは、自動車が入場も退場もしていないと判定する。
【0059】
図8に示されている例では、出現点S1が入退場検出範囲54外にあり、消失点F1が入退場検出範囲54内にあるため、演算器18は、軌跡56-1を描いた自動車が退場したとの判定をする。また、出現点S2が入退場検出範囲54内にあり、消失点F2が入退場検出範囲54外にあるため、演算器18は、軌跡56-2を描いた自動車が入場したとの判定をする。
【0060】
演算器18は、自動車が入場したとの判定、または自動車が退場したとの判定をしたときに管理情報を生成し無線器20に出力する。管理情報は、例えば、入場/退場時刻、記憶デバイス22に記憶された管理画像フレーム、良否判定情報、管理画像フレームが示す画像に示されているナンバー等を含む。無線器20は管理情報を基地局12に送信する。管理情報を受信した基地局12は、管理情報に含まれる入場/退場時刻、管理画像フレーム、ナンバー等を対応付けて記憶する。
【0061】
このように、演算器18は、自動車が入場したというイベント、または自動車が退場したというイベントの発生に応じて、入場/退場時刻、管理画像フレーム、良否判定情報、ナンバー等を含む管理情報を無線器20に送信させる。すなわち、演算器18は、トラッキング処理を開始または終了させるイベントの発生に応じて、管理情報を無線器20に送信させる。
【0062】
本発明の実施形態に係る車両管理システム1では、撮影視野に対応する駐車場の領域において、1つの撮像器24によって自動車の管理が行われる。したがって、複数の駐車位置のそれぞれにカメラが配置される場合に比べて構成が簡単となる。
【符号の説明】
【0063】
1 車両管理システム、10 車両管理装置、12 基地局、14 駐車場、16,16A~16D,T1~T4 自動車、18 演算器、20 無線器、22 記憶デバイス、24 撮像器、36-1~36-6,B1~B4 バウディングボックス、40 判定枠、50 公道、52 駐車場出入口線、54 入退場検出範囲、56-1,56-2 軌跡、S1,S2 出現点、F1,F2 消失点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8