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特許7177124バッテリ制御システムおよびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】バッテリ制御システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221115BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20221115BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221115BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221115BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/35 A
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/42 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020148411
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042807
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】山本 一輝
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-015810(JP,A)
【文献】特開2013-078242(JP,A)
【文献】特開2007-151247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/35
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリパックが接続される複数の接続装置と、
前記複数のバッテリパックの動作を制御する制御装置と、
を備えたバッテリ制御システムであって、
前記制御装置は、
前記複数のバッテリパックそれぞれの第1上限出力を取得し、
前記複数のバッテリパックの第1上限出力を用いて、前記複数のバッテリパックを含むバッテリユニットの第2上限出力を演算し、
演算した前記バッテリユニットの第2上限出力に基づいて、前記複数のバッテリパックの動作を制御し、
前記複数のバッテリパックは3個以上のバッテリパックであり、
前記制御装置は、
前記複数のバッテリパックのうちの2個以上を組み合わせて得られる複数のグループそれぞれの第3上限出力を演算し、
前記複数のグループの第3上限出力の中で最大となる第3上限出力を前記バッテリユニットの第2上限出力に設定し、
前記複数のグループのうちの一つである第1グループは、第1バッテリパックを含み、
前記制御装置は、
前記第1グループに含まれるバッテリパックの中で電圧が最も低いバッテリパックが前記第1バッテリパックである場合、前記第1バッテリパックの電圧を基準電圧に設定し、
前記第1グループに含まれる他のバッテリパックの電圧のそれぞれと、前記基準電圧との比を演算し、
前記演算した比に基づいて、前記他のバッテリパックのそれぞれに適用するデューティー比を演算し、
前記演算したデューティー比を適用した場合の前記他のバッテリパックそれぞれの第1上限出力を演算し、
前記演算した他のバッテリパックの第1上限出力と前記第1バッテリパックの第1上限出力とを足した値を、前記第1グループの第3上限出力として取得する、バッテリ制御システム。
【請求項2】
前記複数のバッテリパックのうちの少なくとも一つの放電を制限しても、前記バッテリ制御システムに接続される負荷の消費電力よりも前記バッテリユニットの第2上限出力の方が大きい場合、前記制御装置は、前記少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限する制御を行う、請求項1に記載のバッテリ制御システム。
【請求項3】
前記複数のグループの中で前記第3上限出力が最大となるグループに含まれるバッテリパックのうちの少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限しても、前記バッテリ制御システムに接続される負荷の消費電力よりも前記バッテリユニットの第2上限出力の方が大きい場合、前記制御装置は、前記少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限する制御を行う、請求項に記載のバッテリ制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記複数のグループの中から、前記バッテリ制御システムに接続される負荷の消費電力よりも前記第3上限出力が大きいグループを一つ選択し、
前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる制御を行う、請求項からのいずれかに記載のバッテリ制御システム。
【請求項5】
前記複数のグループの中に、前記バッテリ制御システムに接続される負荷の消費電力よりも前記第3上限出力が大きいグループが2個以上存在する場合、前記制御装置は、
前記複数のグループの中で前記第3上限出力が最大となるグループ以外の、前記消費電力よりも前記第3上限出力が大きいグループを一つ選択し、
前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる制御を行う、請求項からのいずれかに記載のバッテリ制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記複数のグループの中から一つのグループを選択する場合、前記複数のバッテリパックのうちの前記第1上限出力が最小のバッテリパックが含まれないグループを選択し、
前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる制御を行う、請求項からのいずれかに記載のバッテリ制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複数のグループの中から一つのグループを選択する場合、前記複数のバッテリパックのうちの前記第1上限出力が最大のバッテリパックが含まれないグループを選択し、
前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる制御を行う、請求項からのいずれかに記載のバッテリ制御システム。
【請求項8】
前記複数のグループの中から選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる場合、
前記制御装置は、
前記選択したグループに含まれるバッテリパックの中で電圧が最も低いバッテリパックの電圧を基準電圧に設定し、
前記選択したグループに含まれる他のバッテリパックから出力された電圧のそれぞれを、前記基準電圧に調整する制御を行う、請求項からのいずれかに記載のバッテリ制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、前記他のバッテリパックから出力された電圧のそれぞれを前記基準電圧に調整する、請求項に記載のバッテリ制御システム。
【請求項10】
複数のバッテリパックが接続される複数の接続装置と、
前記複数のバッテリパックの動作を制御する制御装置と、
を備えたバッテリ制御システムであって、
前記制御装置は、
前記複数のバッテリパックそれぞれの第1上限出力を取得し、
前記複数のバッテリパックの第1上限出力を用いて、前記複数のバッテリパックを含むバッテリユニットの第2上限出力を演算し、
演算した前記バッテリユニットの第2上限出力に基づいて、前記複数のバッテリパックの動作を制御し、
前記複数のバッテリパックは3個以上のバッテリパックであり、
前記制御装置は、
前記複数のバッテリパックのうちの2個以上を組み合わせて得られる複数のグループそれぞれの第3上限出力を演算し、
前記複数のグループの第3上限出力の中で最大となる第3上限出力を前記バッテリユニットの第2上限出力に設定し、
前記複数のグループの中から選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる場合、
前記制御装置は、
前記選択したグループに含まれるバッテリパックの中で電圧が最も低いバッテリパックの電圧を基準電圧に設定し、
前記選択したグループに含まれる他のバッテリパックから出力された電圧のそれぞれを、前記基準電圧に調整する制御を行い、
前記選択したグループに含まれるバッテリパックは互いに並列接続された状態で放電し、
前記選択したグループに含まれないバッテリパックのうち、出力電圧が前記基準電圧よりも低いバッテリパックの正極端子は、ダイオードを介して前記並列接続のノードに接続されるバッテリ制御システム。
【請求項11】
前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる過程において、前記複数のグループの第3上限出力の大小関係が変化した場合、前記制御装置は、放電させるグループを変更する、請求項から10のいずれかに記載のバッテリ制御システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記バッテリパックの電圧の検出値と、前記電圧の検出値に対応する前記バッテリパックの上限電流とに基づいて、前記バッテリパックの第1上限出力を演算する、請求項1から11のいずれかに記載のバッテリ制御システム。
【請求項13】
前記複数のバッテリパックのうちの少なくとも一つは、他のバッテリパックと仕様が異なる、請求項1から12のいずれかに記載のバッテリ制御システム。
【請求項14】
複数のバッテリパックの動作の制御をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、
前記複数のバッテリパックそれぞれの第1上限出力を取得すること、
前記複数のバッテリパックの第1上限出力を用いて、前記複数のバッテリパックを含むバッテリユニットの第2上限出力を演算すること、
演算した前記バッテリユニットの第2上限出力に基づいて、前記複数のバッテリパックの動作を制御すること
を前記コンピュータに実行させ
前記複数のバッテリパックは3個以上のバッテリパックであり、
前記コンピュータプログラムは、
前記複数のバッテリパックのうちの2個以上を組み合わせて得られる複数のグループそれぞれの第3上限出力を演算すること、
前記複数のグループの第3上限出力の中で最大となる第3上限出力を前記バッテリユニットの第2上限出力に設定すること
を前記コンピュータに実行させ、
前記複数のグループのうちの一つである第1グループは、第1バッテリパックを含み、
前記コンピュータプログラムは、
前記第1グループに含まれるバッテリパックの中で電圧が最も低いバッテリパックが前記第1バッテリパックである場合、前記第1バッテリパックの電圧を基準電圧に設定すること、
前記第1グループに含まれる他のバッテリパックの電圧のそれぞれと、前記基準電圧との比を演算すること、
前記演算した比に基づいて、前記他のバッテリパックのそれぞれに適用するデューティー比を演算すること、
前記演算したデューティー比を適用した場合の前記他のバッテリパックそれぞれの第1上限出力を演算すること、
前記演算した他のバッテリパックの第1上限出力と前記第1バッテリパックの第1上限出力とを足した値を、前記第1グループの第3上限出力として取得すること
を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリパックを組み合わせて放電させるバッテリ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリから供給される電力により動作する機械として、例えば電動車両および電動補助車両等がある。一般に、これらの車両にはバッテリが搭載され、バッテリから供給される電力により電動モータは回転し、車両は走行することができる。バッテリは充電可能であり、充電することで繰り返し使用することができる。
【0003】
近年、上記のような車両等で使用された中古のバッテリを用いて、定置用蓄電システムを構成することが提案されている。定置用蓄電システムは、例えば、太陽光発電設備などの再生可能エネルギーを利用する発電設備で用いられ得る。
【0004】
特許文献1は、複数のバッテリを制御するバッテリ制御装置を開示している。特許文献1では、温度およびSOC等から各バッテリの劣化度を判定し、劣化度に基づいて複数のバッテリ間の出力比率を調節している。これにより、複数のバッテリそれぞれの充放電量を適切に制御することができる。
【0005】
特許文献2は、バッテリの内部抵抗から劣化度を判定し、劣化度が小さいバッテリから優先的に放電させるバッテリ制御装置を開示している。劣化度が小さいバッテリを優先的に使用することで、複数のバッテリ間で劣化度を均一化させ、システム全体の長寿命化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-041550号公報
【文献】特許第4572850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2が開示するバッテリ制御装置は、いずれも同一仕様の複数のバッテリを用いることを前提としている。同一仕様であることにより、複数のバッテリ間で内部抵抗などの測定値に差が発生した場合に、測定値と劣化度との関係を示すテーブルまたはマップを用いて、複数のバッテリ間における劣化度の大小関係を把握することができる。
【0008】
しかし、例えば中古のバッテリをリユースする場合においては、同一仕様のバッテリを組み合わせた使用のみならず、互いに仕様が異なるバッテリを組み合わせて使用することが求められる可能性がある。この場合、各バッテリの温度、SOCおよび内部抵抗等を同一の尺度で評価することは困難であり、各バッテリの相対的な劣化度を判断することは困難である。特許文献1および2が開示する制御方法を、互いに仕様が異なるバッテリの組み合わせに適用することは困難であり、バッテリの選択の自由度は低い。
【0009】
本発明は、バッテリの選択の自由度を向上させたバッテリ制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある実施形態に係るバッテリ制御システムは、複数のバッテリパックが接続される複数の接続装置と、前記複数のバッテリパックの動作を制御する制御装置と、を備えたバッテリ制御システムであって、前記制御装置は、前記複数のバッテリパックそれぞれの第1上限出力を取得し、前記複数のバッテリパックの第1上限出力を用いて、前記複数のバッテリパックを含むバッテリユニットの第2上限出力を演算し、演算した前記バッテリユニットの第2上限出力に基づいて、前記複数のバッテリパックの動作を制御する。
【0011】
本発明では、複数のバッテリパックの第1上限出力を用いてバッテリユニットの第2上限出力を演算し、その演算したバッテリユニットの第2上限出力に基づいて複数のバッテリパックを制御する。
【0012】
複数のバッテリパックの仕様が互いに同じ場合および互いに異なる場合に関わらず、上限出力はバッテリパック毎に取得可能であり、この上限出力に基づいて複数のバッテリパックを組み合わせた放電を制御する。複数のバッテリパックの間で仕様が互いに異なっていても、上限出力はそれらバッテリパック間で共通の物理量となる。このため、上限出力を用いて各バッテリパックを評価することにより、複数のバッテリパックの間で仕様が互いに異なっていても、バッテリパック同士を組み合わせることができる。これにより、バッテリパックの選択の自由度を向上させることができる。
【0013】
ある実施形態において、前記複数のバッテリパックのうちの少なくとも一つの放電を制限しても、前記バッテリ制御システムに接続される負荷の消費電力よりも前記バッテリユニットの第2上限出力の方が大きい場合、前記制御装置は、前記少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限する制御を行ってもよい。
【0014】
少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限しても、負荷の消費電力よりも大きい上限出力が得られる場合は、その少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限することにより、複数のバッテリパックを効率的に使用することができる。例えば、その放電を制限するバッテリパックの劣化を抑制することができる。
【0015】
ある実施形態において、前記複数のバッテリパックは3個以上のバッテリパックであり、前記制御装置は、前記複数のバッテリパックのうちの2個以上を組み合わせて得られる複数のグループそれぞれの第3上限出力を演算し、前記複数のグループの第3上限出力の中で最大となる第3上限出力を前記バッテリユニットの第2上限出力に設定してもよい。
【0016】
複数のバッテリパックの状態によっては、組み合わせたバッテリパックの数が多いほど上限出力が大きくなるとは限らない。バッテリパックの組み合わせ方が互いに異なる複数のグループそれぞれの第3上限出力を演算し、その中で最大となる上限出力をバッテリユニットの第2上限出力に設定する。複数のバッテリパックの組み合わせから得られる最大の上限出力を採用することにより、複数のバッテリパックの能力を最大限に活かした放電が可能となる。
【0017】
ある実施形態において、前記複数のグループのうちの一つである第1グループは、第1バッテリパックを含み、前記制御装置は、前記第1グループに含まれるバッテリパックの中で電圧が最も低いバッテリパックが前記第1バッテリパックである場合、前記第1バッテリパックの電圧を基準電圧に設定し、前記第1グループに含まれる他のバッテリパックの電圧のそれぞれと、前記基準電圧との比を演算し、前記演算した比に基づいて、前記他のバッテリパックのそれぞれに適用するデューティー比を演算し、前記演算したデューティー比を適用した場合の前記他のバッテリパックそれぞれの第1上限出力を演算し、前記演算した他のバッテリパックの第1上限出力と前記第1バッテリパックの第1上限出力とを足した値を、前記第1グループの第3上限出力として取得してもよい。
【0018】
第1グループに含まれるバッテリパックそれぞれから出力された電圧を互いに同じ大きさに調整することができ、第1グループに含まれるバッテリパックを並列接続して放電させることができる。また、第1グループに含まれるバッテリパックを並列接続して放電させる形態における、第1グループの第3上限出力を取得することができる。
【0019】
上記演算を複数のグループそれぞれに対して行うことにより、複数のグループそれぞれの第3上限出力を取得することができる。
【0020】
ある実施形態において、前記複数のグループの中で前記第3上限出力が最大となるグループに含まれるバッテリパックのうちの少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限しても、前記バッテリ制御システムに接続される負荷の消費電力よりも前記バッテリユニットの第2上限出力の方が大きい場合、前記制御装置は、前記少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限する制御を行ってもよい。
【0021】
少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限しても、負荷の消費電力よりも大きい上限出力が得られる場合は、その少なくとも一つのバッテリパックの放電を制限することにより、複数のバッテリパックを効率的に使用することができる。例えば、その放電を制限するバッテリパックの劣化を抑制することができる。
【0022】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記複数のグループの中から、前記バッテリ制御システムに接続される負荷の消費電力よりも前記第3上限出力が大きいグループを一つ選択し、前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる制御を行ってもよい。
【0023】
これにより、負荷に必要な電力を供給することができる。
【0024】
ある実施形態において、前記複数のグループの中に、前記バッテリ制御システムに接続される負荷の消費電力よりも前記第3上限出力が大きいグループが2個以上存在する場合、前記制御装置は、前記複数のグループの中で前記第3上限出力が最大となるグループ以外の、前記消費電力よりも前記第3上限出力が大きいグループを一つ選択し、前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる制御を行ってもよい。
【0025】
第3上限出力が最大となるグループ以外のグループを選択することにより、複数のバッテリパックを効率的に使用することができる。例えば、複数のバッテリパックのうちの1個以上を使用しないグループを選択することで、その使用しないバッテリパックの劣化を抑制することができる。
【0026】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記複数のグループの中から一つのグループを選択する場合、前記複数のバッテリパックのうちの前記第1上限出力が最小のバッテリパックが含まれないグループを選択し、前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる制御を行ってもよい。
【0027】
第1上限出力が小さいバッテリパックは、残容量が小さいか、または劣化が進んでいることが考えられる。第1上限出力が小さいバッテリパックを放電用に使用しないことにより、安定した放電を行うことができる。また、残容量が小さいバッテリパックについては放電よりも充電を優先させることができる。また、その使用しないバッテリパックの劣化を抑制することができる。
【0028】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記複数のグループの中から一つのグループを選択する場合、前記複数のバッテリパックのうちの前記第1上限出力が最大のバッテリパックが含まれないグループを選択し、前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる制御を行ってもよい。
【0029】
第1上限出力が大きいバッテリパックは、残容量が大きいか、または劣化が進んでいないことが考えられる。バッテリ制御システムを例えば電動車両の充電ステーションとして用いる場合、電動車両に搭載中の空のバッテリパックと差し替えるバッテリパックの残容量は大きい方が望ましい。また、劣化が進んでいないバッテリパックが電動車両に搭載されることが望ましい。
【0030】
第1上限出力が大きいバッテリパックをバッテリ制御システムでの放電用に使用しないことにより、そのバッテリパックを電動車両に搭載させることができる。また、電動車両に搭載させるために、その上限出力が大きいバッテリパックをバッテリ制御システムから取り外した場合でも、バッテリ制御システムの放電動作を継続することができる。
【0031】
ある実施形態において、前記複数のグループの中から選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる場合、前記制御装置は、前記選択したグループに含まれるバッテリパックの中で電圧が最も低いバッテリパックの電圧を基準電圧に設定し、前記選択したグループに含まれる他のバッテリパックから出力された電圧のそれぞれを、前記基準電圧に調整する制御を行ってもよい。
【0032】
放電用に選択したグループに含まれるバッテリパックそれぞれから出力された電圧を互いに同じ大きさに調整することで、そのグループに含まれるバッテリパックを並列接続して放電させることができる。
【0033】
ある実施形態において、前記制御装置は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、前記他のバッテリパックから出力された電圧のそれぞれを前記基準電圧に調整してもよい。
【0034】
PWM制御により、バッテリパックそれぞれから出力された電圧を互いに同じ大きさに調整することができる。
【0035】
ある実施形態において、前記選択したグループに含まれるバッテリパックは互いに並列接続された状態で放電し、前記選択したグループに含まれないバッテリパックのうち、出力電圧が前記基準電圧よりも低いバッテリパックの正極端子は、ダイオードを介して前記並列接続のノードに接続されてもよい。
【0036】
負荷の大きさが急激に変化すると、バッテリ制御システムの出力電圧が急激に低下する場合がある。バッテリ制御システムの出力電圧が、ダイオードを介して接続される非選択のバッテリパックの出力電圧よりも低くなると、その非選択のバッテリパックからも負荷に電力が供給されるようになる。これにより、バッテリ制御システムがダウンすることを抑制できる。
【0037】
ある実施形態において、前記選択したグループに含まれるバッテリパックを放電させる過程において、前記複数のグループの第3上限出力の大小関係が変化した場合、前記制御装置は、放電させるグループを変更してもよい。
【0038】
放電によりバッテリパックの残容量が減少することに伴い、複数のグループの第3上限出力の大小関係は変化する。この場合、放電させるグループを変更することで、より適切なグループで放電させることができる。
【0039】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記バッテリパックの電圧の検出値と、前記電圧の検出値に対応する前記バッテリパックの上限電流とに基づいて、前記バッテリパックの第1上限出力を演算してもよい。
【0040】
演算したバッテリパックの第1上限出力を用いて、複数のバッテリパックを含むバッテリユニットの第2上限出力を演算することができる。
【0041】
ある実施形態において、前記複数のバッテリパックのうちの少なくとも一つは、他のバッテリパックと仕様が異なっていてもよい。
【0042】
上限出力を用いてバッテリパック同士を組み合わせることにより、仕様が異なるバッテリパックを組み合わせることができる。これにより、バッテリパックの選択の自由度を向上させることができる。
【0043】
本発明のある実施形態に係るコンピュータプログラムは、複数のバッテリパックの動作の制御をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記複数のバッテリパックそれぞれの第1上限出力を取得すること、前記複数のバッテリパックの第1上限出力を用いて、前記複数のバッテリパックを含むバッテリユニットの第2上限出力を演算すること、演算した前記バッテリユニットの第2上限出力に基づいて、前記複数のバッテリパックの動作を制御することを前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0044】
本発明のある実施形態に係るバッテリ制御システムによれば、複数のバッテリパックの第1上限出力を用いてバッテリユニットの第2上限出力を演算し、その演算したバッテリユニットの第2上限出力に基づいて複数のバッテリパックの動作を制御する。複数のバッテリパックの仕様が互いに同じ場合および互いに異なる場合に関わらず、上限出力はバッテリパック毎に取得可能であり、この上限出力に基づいて複数のバッテリパックを組み合わせた放電を制御する。複数のバッテリパックの間で仕様が互いに異なっていても、上限出力はそれらバッテリパック間で共通の物理量となる。このため、上限出力を用いて各バッテリパックを評価することにより、複数のバッテリパックの間で仕様が互いに異なっていても、バッテリパック同士を組み合わせることができる。これにより、バッテリパックの選択の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の実施形態に係るバッテリ制御システム1を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るバッテリ制御システム1におけるバッテリパック10の着脱の様子を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るバッテリ制御システム1およびバッテリパック10を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るバッテリ制御システム1の放電動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係るバッテリユニット20の第2上限出力を演算する処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係るバッテリユニット20の第2上限出力の演算の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るバッテリユニット20の第2上限出力の演算の別の例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る複数のバッテリパック10から得られる複数のグループを示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る複数のグループ間の第3上限出力の大小関係が変化した場合に、放電させるグループを変更する処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係るバッテリユニット20の第2上限出力と負荷71の消費電力との大小関係に応じて、放電させるグループを変更する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係るバッテリ制御システムを説明する。実施形態の説明においては、同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリ制御システム1を示す斜視図である。バッテリ制御システム1は、複数のバッテリパック10を組み合わせて充放電を行う。バッテリ制御システム1は、例えば定置用蓄電システムとして用いられる。定置用蓄電システムは、例えば、太陽光発電設備および風力発電設備等の再生可能エネルギーを利用する発電設備で用いられ得る。また、定置用蓄電システムは、災害時等の非常用電源としても用いられ得る。
【0048】
バッテリ制御システム1は、筐体2と、筐体2に設けられた複数のコネクタ(接続装置)3とを備える。コネクタ3の個数は2個以上の任意の個数である。複数のコネクタ3のそれぞれにはバッテリパック10が接続される。複数のバッテリパック10のうちの1個以上のバッテリパック10からバッテリユニット20が構成され、バッテリ制御システム1はバッテリユニット20を一つの単位として放電を行う。
【0049】
バッテリ制御システム1の筐体2には、充電用コネクタ4、放電用コネクタ5および6が設けられている。充電用コネクタ4は例えば太陽光発電装置および風力発電装置等の発電装置に接続され、発電装置が発電した電力によりバッテリパック10を充電することができる。また、例えば、充電用コネクタ4が家庭用電源等の任意の電源に接続されることにより、バッテリパック10を充電してもよい。
【0050】
放電用コネクタ5および6は、例えば負荷(外部装置)に接続される。放電用コネクタ5および6からは、バッテリユニット20を構成するバッテリパック10から出力された電力が出力される。放電用コネクタ5からは直流の電力が出力される。放電用コネクタ6からは交流の電力が出力される。バッテリ制御システム1の用途に応じて、バッテリ制御システム1は放電用コネクタ5および6の一方のみを備えていてもよい。
【0051】
バッテリパック10のそれぞれは、バッテリ制御システム1に対して着脱可能である。図2は、バッテリ制御システム1における1個のバッテリパック10の着脱の様子を示す斜視図である。バッテリ制御システム1は、コネクタ3に接続されたバッテリパック10を充電する。充電されたバッテリパック10は、例えば、バッテリ制御システム1から取り外して、電動車両および電動補助車両等の機械に装着して、電源として用いることができる。バッテリパック10が装着された車両では、バッテリパック10から供給される電力により電動モータは回転し、車両は走行することができる。
【0052】
車両で使用されて残容量が少なくなったバッテリパック10は車両から取り外し、バッテリ制御システム1のコネクタ3に接続することで充電することができる。そして、バッテリ制御システム1から充電済みの別のバッテリパック10を取り外して車両に装着することで、車両は再び走行することができる。このように、バッテリ制御システム1は、車両に搭載中の空のバッテリパック10と充電済みのバッテリパック10とを差し替える充電ステーションとして用いることができる。
【0053】
図3は、バッテリ制御システム1およびバッテリパック10を示す図である。
【0054】
本発明の実施形態を分かりやすく説明するために、以降の説明では3個のバッテリパック10がバッテリ制御システム1に接続された形態について主に説明するが、本発明の実施形態はそれに限定されない。バッテリ制御システム1に接続されるバッテリパック10の個数は任意であり、2個でもよいし4個以上でもよく、それらの形態にも本発明は適用可能である。図3に示す例では、バッテリパック10として3個のバッテリパック10a、10b、10cがバッテリ制御システム1に接続されている。
【0055】
バッテリパック10は、複数の単電池(セル)11と、バッテリマネージメントシステム(BMS)12と、コネクタ13とを備える。BMS12は、バッテリパック10の充放電等の各種動作を制御するとともに、バッテリパック10の各種状態を監視する。BMS12は、バッテリパック10の電圧、電流、温度、SOC(State of Charge)、SOH(State of Health)等を監視する。バッテリパック10のコネクタ13がバッテリ制御システム1のコネクタ3に接続されることにより、バッテリパック10はバッテリ制御システム1に接続される。複数の単電池11から出力された電流は、BMS12およびコネクタ13を介してバッテリ制御システム1に供給される。
【0056】
バッテリ制御システム1において、複数のバッテリパック10a、10b、10cは互いに並列接続される。バッテリパック10aは、PWM(Pulse Width Modulation)用のスイッチング素子51、ダイオード61、放電用のスイッチング素子54を介してコンバータ41およびインバータ42に接続される。バッテリパック10bは、PWM用のスイッチング素子52、ダイオード62、放電用のスイッチング素子54を介してコンバータ41およびインバータ42に接続される。バッテリパック10cは、PWM用のスイッチング素子53、ダイオード63、放電用のスイッチング素子54を介してコンバータ41およびインバータ42に接続される。
【0057】
放電用コネクタ6に負荷(外部装置)71が接続されている場合、インバータ42は、入力された直流電圧を交流電圧に変換し、負荷71に出力する。放電用コネクタ5に負荷71が接続されている場合、コンバータ41は、入力された直流電圧の大きさを調整し、負荷71に出力する。バッテリ制御システム1の用途に応じて、バッテリ制御システム1はコンバータ41およびインバータ42の一方のみを備えていてもよい。
【0058】
充電用コネクタ4に発電装置73が接続されている場合、発電装置73から出力された電力は、充電用コネクタ4、充電用のスイッチング素子55を介して充電器43に入力される。充電器43は、電圧および電流の大きさを調整し、バッテリパック10に出力する。バッテリパック10aを充電する場合、充電器43から出力された電流は、ダイオード64およびコネクタ3を介してバッテリパック10aに供給される。バッテリパック10bを充電する場合、充電器43から出力された電流は、ダイオード65およびコネクタ3を介してバッテリパック10bに供給される。バッテリパック10cを充電する場合、充電器43から出力された電流は、ダイオード66およびコネクタ3を介してバッテリパック10cに供給される。
【0059】
スイッチング素子51、52、53、54、55は、例えば電界効果トランジスタ(FET)であるが、それらのスイッチング素子は電界効果トランジスタに限定されず、任意のスイッチング素子が用いられ得る。
【0060】
制御装置30は、バッテリ制御システム1の動作を制御する。制御装置30は、プロセッサ31と、メモリ32と、通信回路33とを備える。プロセッサ31は、バッテリ制御システム1の動作を制御する信号処理回路(コンピュータ)である。典型的にはプロセッサ31は半導体集積回路である。
【0061】
メモリ32は、バッテリ制御システム1の動作の制御をプロセッサ31に実行させるためのコンピュータプログラムを記憶している。そのようなコンピュータプログラムは、それが記録された記録媒体(半導体メモリ、光ディスク等)からバッテリ制御システム1へインストールしてもよいし、インターネット等の電気通信回線を介してダウンロードしてもよい。また、無線通信を介してそのようなコンピュータプログラムをバッテリ制御システム1へインストールしてもよい。このようなコンピュータプログラムは、パッケージソフトウェアとして販売され得る。プロセッサ31は、メモリ32に記憶されたコンピュータプログラムを実行してバッテリ制御システム1の動作を制御する。
【0062】
プロセッサ31は、通信回路33を介してバッテリパック10のBMS12と通信を行う。プロセッサ31は、バッテリパック10を充放電するときにBMS12との間で必要な情報の送受信を行う。また、プロセッサ31は、バッテリパック10の電圧、電流、温度等の情報をBMS12から受け取る。
【0063】
プロセッサ31は、コンバータ41、インバータ42、充電器43、スイッチング素子51、52、53、54、55の動作を制御する。バッテリ制御システム1の放電動作時は、プロセッサ31は、スイッチング素子54をオンにする。プロセッサ31は、スイッチング素子51、52、53のオンとオフを繰り返し切り替えることでPWM制御を実行する。PWM制御により変調された直流電圧は、コンバータ41またはインバータ42に入力される。バッテリパック10の充電動作時は、プロセッサ31は、スイッチング素子55をオンにするとともに、充電器43の動作を制御して、充電を行うバッテリパック10に電力を供給する。
【0064】
充電を行う場合、スイッチング素子51、52、53のうちの充電の対象となるバッテリパック10に対応するスイッチング素子はオフにしてもよい。例えば、バッテリパック10a、10b、10cの中でバッテリパック10cの電圧が最も低く、バッテリパック10cの充電を行うとする。バッテリパック10cの充電時は、スイッチング素子53をオフにすることで、充電用の電流が回路の放電側に流れることを防止できる。これにより、バッテリパック10aおよび10bを放電させながら、バッテリパック10cの充電を行うことができる。このようにバッテリ制御システム1では、充電と放電とを並行して行うことができる。充電対象のバッテリパック10cの電圧と、放電させるバッテリパック10aおよび10bの電圧との乖離を解消させることができ、バッテリパック10cが所望のレベルまで充電された後は、バッテリパック10cをバッテリパック10aおよび10bとともに放電させることができる。
【0065】
また、充電を行う場合、スイッチング素子51、52、53のうちの充電の対象となるバッテリパック10に対応するスイッチング素子をオンにしてもよい。例えば、バッテリパック10cを充電する場合、スイッチング素子53をオンにする。この場合、充電用の電流の一部は、回路の放電側に流れる。すなわち、充電器43から出力された電力の一部は、放電用の電力として用いられる。充電対象のバッテリパック10cから出力される電流が減少するため、バッテリパック10cの電圧と、バッテリパック10aおよび10bの電圧との乖離を小さくすることができる。
【0066】
次に、バッテリ制御システム1の放電動作をより詳細に説明する。
【0067】
図4は、バッテリ制御システム1の放電動作を示すフローチャートである。上述したように、バッテリ制御システム1では、複数のバッテリパック10のうちの1個以上のバッテリパック10を含むバッテリユニット20を構成し、バッテリユニット20を一つの単位として放電を行う。
【0068】
まず、プロセッサ31(図3)は、バッテリ制御システム1に接続された複数のバッテリパック10それぞれの上限出力を取得する(ステップS10)。バッテリパック10の上限出力は、バッテリパック10が出力可能な電力の上限値である。上限出力は、バッテリパック10の現在の状態に応じて変化する。例えば、上限出力は、SOCおよび温度等に応じて変化する。以降の説明では、バッテリパック10の上限出力を“第1上限出力”と表現する。
【0069】
バッテリパック10のBMS12は、バッテリパック10の電圧を検出する。BMS12は、電圧の検出値に対応するバッテリパック10の上限電流を取得する。上限電流は、バッテリパック10の電圧が検出された大きさである場合に、そのときのバッテリパック10が出力可能な電流の上限値である。例えば、BMS12は、電圧と上限電流との関係を示すマップを予め記憶している。BMS12は、そのようなマップを用いて電圧の検出値から上限電流を取得することができる。BMS12は、電圧の検出値および上限電流の値をプロセッサ31に出力する。プロセッサ31は、電圧の検出値と上限電流の値とを乗算することで、バッテリパック10の第1上限出力を取得する。なお、BMS12が電圧の検出値と上限電流の値とを乗算することで第1上限出力を取得し、取得した第1上限出力の値をプロセッサ31に出力してもよい。
【0070】
プロセッサ31は、複数のバッテリパック10のうちの1個以上のバッテリパック10を含むバッテリユニット20を構成する。プロセッサ31は、そのバッテリユニット20の上限出力を演算する(ステップS11)。バッテリユニット20の上限出力は、バッテリユニット20が出力可能な電力の上限値である。以降の説明では、バッテリユニット20の上限出力を“第2上限出力”と表現する。プロセッサ31は、例えば、バッテリユニット20に含まれるバッテリパック10それぞれの第1上限出力を用いて、バッテリユニット20の上限出力を演算する。
【0071】
図5は、バッテリユニット20の第2上限出力を演算する処理を示すフローチャートである。図6は、バッテリユニット20の第2上限出力の演算の一例を示す図である。図7は、バッテリユニット20の第2上限出力の演算の別の例を示す図である。図8は、複数のバッテリパック10のうちの1個以上のバッテリパック10を含む複数のグループを示す図である。
【0072】
図8を参照して、バッテリパック10の個数が3個のとき、1個以上のバッテリパック10を含むグループの数は7個になる。図8は、それら7個のグループ80i、80j、80k、80l、80m、80n、80oを示している。プロセッサ31は、複数のグループ80i、80j、80k、80l、80m、80n、80oそれぞれの上限出力を演算する。グループの上限出力は、そのグループが出力可能な電力の上限値である。以降の説明では、グループの上限出力を“第3上限出力”と表現する。
【0073】
プロセッサ31は、各バッテリパック10のBMS12から、電圧の検出値および上限電流の値を受け取る。図6は、バッテリパック10a、10b、10cの電圧および上限電流の例を示している。各バッテリパック10の第1上限出力は、電圧と上限電流とを乗算することで得られる。
【0074】
図5を参照して、プロセッサ31は、複数のグループのうちの一つのグループに属するバッテリパック10を特定する(ステップS20)。例えば、グループ80iに属するバッテリパックはバッテリパック10a、10b、10cであることを特定する。
【0075】
プロセッサ31は、グループ80iに属するバッテリパック10a、10b、10cの中から最も電圧が低いバッテリパックを特定する(ステップS21)。図6に示す例では、最も電圧が低いバッテリパックとして、バッテリパック10aを特定する。プロセッサ31は、最も電圧が低いバッテリパック10aの電圧21.0(V)を基準電圧に設定する。
【0076】
プロセッサ31は、グループ80iに属する他のバッテリパック10b、10cそれぞれの電圧と、基準電圧との比を演算する。図6に示す例では、バッテリパック10bの電圧比は0.84、バッテリパック10cの電圧比は0.71である。
【0077】
プロセッサ31は、バッテリパック10a、10b、10cそれぞれのPWM制御に適用するデューティー比(DT比)を演算する(ステップS22)。デューティー比は、電圧比を二乗することで得られる。
【0078】
プロセッサ31は、演算したデューティー比を適用した場合のバッテリパック10a、10b、10cそれぞれの第1上限出力を演算する(ステップS23)。図6に示す例では、バッテリパック10aの第1上限出力は210(W)、バッテリパック10bの第1上限出力は266(W)、バッテリパック10cの第1上限出力は300(W)となる。
【0079】
プロセッサ31は、これらデューティー比を適用したときの第1上限出力を足し合わせて、グループの第3上限出力を取得する(ステップS24)。図6に示す例では、グループ80iの第3上限出力として776(W)を取得する。
【0080】
ステップS25において、プロセッサ31は、全てのグループの第3上限出力を演算したか判定する。全てのグループの第3上限出力の演算が完了していない場合、ステップS20の処理に戻り、演算が未だのグループについて処理を行う。
【0081】
図6に示す例では、プロセッサ31は、グループ80jに属するバッテリパック10b、10cの中から最も電圧が低いバッテリパック10bを特定する。プロセッサ31は、最も電圧が低いバッテリパック10bの電圧25.0(V)を基準電圧に設定する。そして、上述と同様の処理を行い、グループ80jの第3上限出力として798(W)を取得する。
【0082】
また、プロセッサ31は、グループ80kに属するバッテリパック10a、10cの中から最も電圧が低いバッテリパック10aを特定する。プロセッサ31は、最も電圧が低いバッテリパック10aの電圧21.0(V)を基準電圧に設定する。そして、上述と同様の処理を行い、グループ80kの第3上限出力として510(W)を取得する。同様に、プロセッサ31は、グループ80lの第3上限出力を演算する。図6では、グループ80lの第3上限出力の演算の例は省略している。また、図8に示すグループ80m、80n、80oのように、グループに属するバッテリパック10が1個である場合、そのグループの第3上限出力は、そのグループに属するバッテリパック10の第1上限出力となる。
【0083】
全てのグループの第3上限出力の演算が完了すると、ステップS26(図5)の処理に進む。ステップS26において、プロセッサ31は、全てのグループの第3上限出力の中で最大となる第3上限出力を選択する。プロセッサ31は、その選択した第3上限出力をバッテリユニット20の第2上限出力として設定する。図6に示す例では、グループ80jの第3上限出力798(W)が最大値となる。プロセッサ31は、その798(W)をバッテリユニット20の第2上限出力として設定する。
【0084】
図7は、バッテリユニット20の第2上限出力の演算の別の例を示している。図7に示すバッテリパック10a、10b、10cの状態は図6とは異なっている。図7に示す状態のバッテリパック10a、10b、10cに対して、上記と同様の処理を行う。プロセッサ31は、全てのグループの第3上限出力の中で最大となる第3上限出力を選択する。図7に示す例では、グループ80iの第3上限出力705(W)が最大値となる。プロセッサ31は、その705(W)をバッテリユニット20の第2上限出力として設定する。
【0085】
図4を参照して、プロセッサ31は、演算したバッテリユニット20の第2上限出力に基づいて、各バッテリパック10の放電を制御する(ステップS12)。図6に示すグループ80jの第3上限出力798(W)をバッテリユニット20の第2上限出力として設定した場合、バッテリユニット20は、グループ80jに属するバッテリパック10bおよび10cで構成される。プロセッサ31は、バッテリユニット20を構成するバッテリパック10bおよび10cを放電させる。
【0086】
プロセッサ31は、バッテリパック10bおよび10cの中で電圧が最も低いバッテリパック10bの電圧25.0(V)を基準電圧に設定する。プロセッサ31は、PWM制御により、他のバッテリパック10cから出力された電圧29.4(V)を基準電圧25.0(V)に調整する。放電用に選択したグループ80jに属するバッテリパック10bおよび10cのそれぞれから出力された電圧が互いに同じ大きさになるよう調整することで、そのグループ80jに属するバッテリパック10bおよび10cを並列接続して放電させることができる。
【0087】
図7に示すグループ80iの第3上限出力705(W)をバッテリユニット20の第2上限出力として設定した場合、バッテリユニット20は、グループ80iに属するバッテリパック10a、10b、10cで構成される。プロセッサ31は、バッテリユニット20を構成するバッテリパック10a、10b、10cを放電させる。
【0088】
プロセッサ31は、バッテリパック10a、10b、10cの中で電圧が最も低いバッテリパック10aの電圧21.0(V)を基準電圧に設定する。プロセッサ31は、PWM制御により、他のバッテリパック10b、10cから出力された電圧を基準電圧21.0(V)に調整する。放電用に選択したグループ80iに属するバッテリパック10a、10b、10cのそれぞれから出力された電圧が互いに同じ大きさになるよう調整することで、そのグループ80iに属するバッテリパック10a、10b、10cを並列接続して放電させることができる。
【0089】
バッテリ制御システム1が出力した電力は負荷71に供給される。負荷71が動作を停止するなど、放電を終了する場合は、プロセッサ31は、放電の制御を終了する(ステップS13)。
【0090】
上述したように、本実施形態のバッテリ制御システム1では、複数のバッテリパック10の第1上限出力を用いてバッテリユニット20の第2上限出力を演算し、その演算したバッテリユニット20の第2上限出力に基づいて複数のバッテリパック10の放電を制御する。
【0091】
本実施形態では、バッテリ制御システム1に接続される複数のバッテリパック10のうちの少なくとも一つは、他のバッテリパック10と仕様が異なっていてもよい。複数のバッテリパック10の間で仕様が互いに異なっていてもよい。
【0092】
複数のバッテリパック10の仕様が互いに同じ場合および互いに異なる場合に関わらず、上限出力はバッテリパック10毎に取得可能であり、この上限出力に基づいて複数のバッテリパック10を組み合わせた放電を制御する。複数のバッテリパック10の間で仕様が互いに異なっていても、上限出力はそれらバッテリパック10の間で共通の物理量となる。このため、上限出力を用いて各バッテリパック10を評価することにより、複数のバッテリパック10の間で仕様が互いに異なっていても、バッテリパック10同士を組み合わせることができる。これにより、バッテリパック10の選択の自由度を向上させることができる。
【0093】
また、複数のバッテリパック10の状態によっては、組み合わせたバッテリパック10の数が多いほど第3上限出力が大きくなるとは限らない。例えば、図6に示すバッテリパック10a、10b、10cの状態では、2個のバッテリパック10bおよび10cを組み合わせたときの第3上限出力が最大となっている。バッテリパック10の組み合わせ方が互いに異なる複数のグループそれぞれの第3上限出力を演算し、その中で最大となる第3上限出力をバッテリユニット20の第2上限出力に設定する。複数のバッテリパック10の組み合わせから得られる最大の第3上限出力を採用することにより、複数のバッテリパック10の能力を最大限に活かした放電が可能となる。
【0094】
次に、複数のグループ間の第3上限出力の大小関係が変化した場合に、放電させるグループを変更する処理を説明する。
【0095】
例えば、放電開始時のバッテリパック10a、10b、10cの状態は図6に示す状態であり、グループ80jに属するバッテリパック10bおよび10cを放電させるとする。放電を継続する過程でバッテリパック10bおよび10cの電圧は徐々に低下し、図7に示す状態になったとする。図7に示す状態では、グループ80jの第3上限出力595(W)よりも、グループ80iの第3上限出力705(W)の方が大きくなる。この場合は、放電させるグループをグループ80jからグループ80iに変更してもよい。
【0096】
図9は、複数のグループ間の第3上限出力の大小関係が変化した場合に、放電させるグループを変更する処理を示すフローチャートである。
【0097】
プロセッサ31は、バッテリユニット20を構成するバッテリパック10を放電させながら、定期的に複数のグループそれぞれの第3上限出力を演算する(ステップS30)。第3上限出力の演算方法は上述したとおりである。
【0098】
プロセッサ31は、複数のグループ間の第3上限出力の大小関係が変化したか判定する(ステップS31)。例えば、バッテリパック10a、10b、10cが図6に示す状態から図7に示す状態に変化した場合、複数のグループ間の第3上限出力の大小関係は変化する。
【0099】
第3上限出力の大小関係は変化していないと判定した場合、プロセッサ31は、複数のグループそれぞれの第3上限出力の演算を定期的に繰り返す。
【0100】
第3上限出力の大小関係が変化したと判定した場合、プロセッサ31は、負荷が必要とする電力(消費電力)よりも第3上限出力が大きいグループを特定する(ステップS32)。負荷の消費電力については、負荷(外部装置)から消費電力に関する情報をプロセッサ31が受け取ってもよいし、バッテリ制御システム1から出力される電圧および電流から推定してもよい。例えば、バッテリパック10a、10b、10cが図7に示す状態にあり、負荷の消費電力が500(W)である場合、プロセッサ31は、グループ80iおよび80jを特定する。
【0101】
プロセッサ31は、グループ80iおよび80jの中から放電させるグループを選択する(ステップS33)。例えば、余裕のある放電を優先する場合は、第3上限出力が最も大きいグループ80iを放電させるグループとして選択する。すなわち、放電させるグループをグループ80jからグループ80iに変更する。例えば、バッテリパック10aの放電を制限してバッテリパック10aの劣化を抑制することを優先する場合は、グループ80jの放電を維持する。
【0102】
なお、第3上限出力の大小関係が変化した場合は、放電させるグループを第3上限出力が最も大きいグループに常に変更するようにしてもよい。これにより、複数のバッテリパック10の能力を最大限に活かした放電を行うことができる。
【0103】
負荷71が動作を停止するなど、放電を終了する場合は、プロセッサ31は、放電の制御を終了する(ステップS34)。
【0104】
次に、バッテリユニット20の第2上限出力と負荷71の消費電力との大小関係に応じて、放電させるグループを変更する処理を説明する。
【0105】
図10は、バッテリユニット20の第2上限出力と負荷71の消費電力との大小関係に応じて、放電させるグループを変更する処理を示すフローチャートである。
【0106】
プロセッサ31は、バッテリユニット20の第2上限出力は負荷71の消費電力よりも大きいか判定する(ステップS40)。第2上限出力が消費電力よりも大きいと判定した場合、プロセッサ31は、放電させるグループを第3上限出力が小さいグループに変更可能か判定する(ステップS41)。
【0107】
例えば、バッテリパック10a、10b、10cが図7に示す状態にあり、放電させるグループとしてグループ80iを選択中であるとする。負荷の消費電力が500(W)である場合は、グループ80jを選択しても負荷からの要求に答えることが可能である。この場合、プロセッサ31は、放電させるグループをグループ80iからグループ80jに変更する(ステップS43)。
【0108】
グループ80iからグループ80jへの変更は、グループ80iに含まれるバッテリパック10aの放電を制限することと同義である。第3上限出力が最大のグループに含まれるバッテリパック10のうちの少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限しても、負荷71の消費電力よりもバッテリユニット20の第2上限出力の方が大きくなる場合、プロセッサ31は、少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限する制御を行ってもよい。これにより、その放電を制限するバッテリパック10の劣化を抑制することができる。
【0109】
なお、余裕のある放電を優先する場合は、ステップS43において、第3上限出力が最も大きいグループ80iの選択を維持してもよい。
【0110】
負荷71が動作を停止するなど、放電を終了する場合は、プロセッサ31は、放電の制御を終了する(ステップS44)。
【0111】
ステップS40において、バッテリユニット20の第2上限出力は負荷71の消費電力以下であると判定した場合、プロセッサ31は、第3上限出力が消費電力よりも大きいグループが存在するか判定する。存在すると判定した場合、プロセッサ31は、放電させるグループをその第3上限出力が消費電力よりも大きいグループに変更する(ステップS43)。第3上限出力が消費電力よりも大きいグループは存在しないと判定した場合、放電の制御を終了する。
【0112】
図10に示す処理では、負荷71の消費電力よりも第3上限出力が大きいグループが2個以上存在する場合、第3上限出力が最大のグループ以外のグループを選択し得る。上記の例では、グループ80iおよび80jの第3上限出力が負荷71の消費電力よりも大きい。この場合、プロセッサ31は、第3上限出力が最大のグループ80i以外のグループ80jを選択し得る。複数のバッテリパック10のうちの1個以上を使用しないグループを選択することで、その使用しないバッテリパック10の劣化を抑制することができる。
【0113】
複数のグループの中から放電させるグループを選択する場合、複数のバッテリパック10のうちの第1上限出力が最小のバッテリパック10が含まれないグループを選択するようにしてもよい。第1上限出力が小さいバッテリパック10は、残容量が小さいか、または劣化が進んでいることが考えられる。第1上限出力が小さいバッテリパック10を放電用に使用しないことにより、安定した放電を行うことができる。また、残容量が小さいバッテリパック10については放電よりも充電を優先させることができる。また、その使用しないバッテリパック10の劣化を抑制することができる。
【0114】
また、複数のグループの中から放電させるグループを選択する場合、複数のバッテリパック10のうちの第1上限出力が最大のバッテリパック10が含まれないグループ80を選択するようにしてもよい。第1上限出力が大きいバッテリパック10は、残容量が大きいか、または劣化が進んでいないことが考えられる。バッテリ制御システム1を例えば電動車両の充電ステーションとして用いる場合、電動車両に搭載中の空のバッテリパック10と差し替えるバッテリパック10の残容量は大きい方が望ましい。また、劣化が進んでいないバッテリパック10が電動車両に搭載されることが望ましい。第1上限出力が大きいバッテリパック10をバッテリ制御システム1での放電用に使用しないことにより、そのバッテリパック10を電動車両に搭載させることができる。また、電動車両に搭載させるために、その上限出力が大きいバッテリパック10をバッテリ制御システム1から取り外した場合でも、バッテリ制御システム1の放電動作を継続することができる。
【0115】
図3を参照しながら説明したように、複数のバッテリパック10は、ダイオード61、62、63を介してコンバータ41およびインバータ42に接続される。放電用に選択したグループに含まれるバッテリパック10は互いに並列接続された状態で放電する。例えば、グループ80jが選択されている場合、バッテリパック10bおよび10cは互いに並列接続された状態で放電する。このとき、グループ80jに含まれないバッテリパック10aの正極端子は、ダイオード61を介して並列接続のノード68に接続されている。スイッチング素子51はオンにしておく。バッテリパック10aの電圧は、グループ80jの基準電圧よりも低いため、バッテリパック10aからは電流は流れない。
【0116】
放電中に負荷71の消費電力が急激に大きくなった場合、バッテリ制御システム1の出力電圧は急激に低下し得る。ノード68の電圧がバッテリパック10aの電圧よりも低くなると、ダイオード61を介して電流が流れ、バッテリパック10aからも負荷71に電力が供給されるようになる。このように、ダイオードを介して非選択のバッテリパック10を並列接続のノード68に接続しておくことにより、負荷71の消費電力が急激に大きくなった場合でもバッテリ制御システム1がダウンすることを抑制できる。
【0117】
上記の説明では、グループに含まれるバッテリパック10の中で電圧が最も低いバッテリパック10の電圧を基準電圧に設定したが、本発明はそれに限定されない。電圧が最も低いバッテリパック10以外のバッテリパック10の電圧を基準電圧に設定してもよい。この場合、基準電圧よりも低い電圧のバッテリパック10については、その電圧を昇圧することにより、同じグループに含まれるバッテリパック10のそれぞれから出力された電圧が互いに同じ大きさになるよう調整してもよい。
【0118】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0119】
本発明のある実施形態に係るバッテリ制御システム1は、複数のバッテリパック10が接続される複数の接続装置3と、複数のバッテリパック10の動作を制御する制御装置30と、を備える。制御装置30は、複数のバッテリパック10それぞれの第1上限出力を取得し、複数のバッテリパック10の第1上限出力を用いて、複数のバッテリパック10を含むバッテリユニット20の第2上限出力を演算し、演算したバッテリユニット20の第2上限出力に基づいて、複数のバッテリパック10の動作を制御する。
【0120】
本発明の実施形態では、複数のバッテリパック10の第1上限出力を用いてバッテリユニット20の第2上限出力を演算し、その演算したバッテリユニット20の第2上限出力に基づいて複数のバッテリパック10を制御する。
【0121】
複数のバッテリパック10の仕様が互いに同じ場合および互いに異なる場合に関わらず、上限出力はバッテリパック10毎に取得可能であり、この上限出力に基づいて複数のバッテリパック10を組み合わせた放電を制御する。複数のバッテリパック10の間で仕様が互いに異なっていても、上限出力はそれらバッテリパック10間で共通の物理量となる。このため、上限出力を用いて各バッテリパック10を評価することにより、複数のバッテリパック10の間で仕様が互いに異なっていても、バッテリパック10同士を組み合わせることができる。これにより、バッテリパック10の選択の自由度を向上させることができる。
【0122】
ある実施形態において、複数のバッテリパック10のうちの少なくとも一つの放電を制限しても、バッテリ制御システム1に接続される負荷71の消費電力よりもバッテリユニット20の第2上限出力の方が大きい場合、制御装置30は、少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限する制御を行ってもよい。
【0123】
少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限しても、負荷71の消費電力よりも大きい上限出力が得られる場合は、その少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限することにより、複数のバッテリパック10を効率的に使用することができる。例えば、その放電を制限するバッテリパック10の劣化を抑制することができる。
【0124】
ある実施形態において、複数のバッテリパック10は3個以上のバッテリパック10であり、制御装置30は、複数のバッテリパック10のうちの2個以上を組み合わせて得られる複数のグループ80それぞれの第3上限出力を演算し、複数のグループ80の第3上限出力の中で最大となる第3上限出力をバッテリユニット20の第2上限出力に設定してもよい。
【0125】
複数のバッテリパック10の状態によっては、組み合わせたバッテリパック10の数が多いほど上限出力が大きくなるとは限らない。バッテリパック10の組み合わせ方が互いに異なる複数のグループ80それぞれの第3上限出力を演算し、その中で最大となる上限出力をバッテリユニット20の第2上限出力に設定する。複数のバッテリパック10の組み合わせから得られる最大の上限出力を採用することにより、複数のバッテリパック10の能力を最大限に活かした放電が可能となる。
【0126】
ある実施形態において、複数のグループ80のうちの一つである第1グループは、第1バッテリパック10aを含み、制御装置30は、第1グループに含まれるバッテリパック10の中で電圧が最も低いバッテリパック10が第1バッテリパック10aである場合、第1バッテリパック10aの電圧を基準電圧に設定し、第1グループに含まれる他のバッテリパック10の電圧のそれぞれと、基準電圧との比を演算し、演算した比に基づいて、他のバッテリパック10のそれぞれに適用するデューティー比を演算し、演算したデューティー比を適用した場合の他のバッテリパック10それぞれの第1上限出力を演算し、演算した他のバッテリパック10の第1上限出力と第1バッテリパック10aの第1上限出力とを足した値を、第1グループの第3上限出力として取得してもよい。
【0127】
第1グループに含まれるバッテリパック10それぞれから出力された電圧を互いに同じ大きさに調整することができ、第1グループに含まれるバッテリパック10を並列接続して放電させることができる。また、第1グループに含まれるバッテリパック10を並列接続して放電させる形態における、第1グループの第3上限出力を取得することができる。
【0128】
上記演算を複数のグループ80それぞれに対して行うことにより、複数のグループ80それぞれの第3上限出力を取得することができる。
【0129】
ある実施形態において、複数のグループ80の中で第3上限出力が最大となるグループに含まれるバッテリパック10のうちの少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限しても、バッテリ制御システム1に接続される負荷71の消費電力よりもバッテリユニット20の第2上限出力の方が大きい場合、制御装置30は、少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限する制御を行ってもよい。
【0130】
少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限しても、負荷71の消費電力よりも大きい上限出力が得られる場合は、その少なくとも一つのバッテリパック10の放電を制限することにより、複数のバッテリパック10を効率的に使用することができる。例えば、その放電を制限するバッテリパック10の劣化を抑制することができる。
【0131】
ある実施形態において、制御装置30は、複数のグループ80の中から、バッテリ制御システム1に接続される負荷71の消費電力よりも第3上限出力が大きいグループを一つ選択し、選択したグループに含まれるバッテリパック10を放電させる制御を行ってもよい。これにより、負荷71に必要な電力を供給することができる。
【0132】
ある実施形態において、複数のグループ80の中に、バッテリ制御システム1に接続される負荷71の消費電力よりも第3上限出力が大きいグループが2個以上存在する場合、制御装置30は、複数のグループ80の中で第3上限出力が最大となるグループ以外の、消費電力よりも第3上限出力が大きいグループを一つ選択し、選択したグループに含まれるバッテリパック10を放電させる制御を行ってもよい。
【0133】
第3上限出力が最大となるグループ以外のグループを選択することにより、複数のバッテリパック10を効率的に使用することができる。例えば、複数のバッテリパック10のうちの1個以上を使用しないグループを選択することで、その使用しないバッテリパック10の劣化を抑制することができる。
【0134】
ある実施形態において、制御装置30は、複数のグループ80の中から一つのグループを選択する場合、複数のバッテリパック10のうちの第1上限出力が最小のバッテリパック10が含まれないグループを選択し、選択したグループに含まれるバッテリパック10を放電させる制御を行ってもよい。
【0135】
第1上限出力が小さいバッテリパック10は、残容量が小さいか、または劣化が進んでいることが考えられる。第1上限出力が小さいバッテリパック10を放電用に使用しないことにより、安定した放電を行うことができる。また、残容量が小さいバッテリパック10については放電よりも充電を優先させることができる。また、その使用しないバッテリパック10の劣化を抑制することができる。
【0136】
ある実施形態において、制御装置30は、複数のグループ80の中から一つのグループを選択する場合、複数のバッテリパック10のうちの第1上限出力が最大のバッテリパック10が含まれないグループを選択し、選択したグループに含まれるバッテリパック10を放電させる制御を行ってもよい。
【0137】
第1上限出力が大きいバッテリパック10は、残容量が大きいか、または劣化が進んでいないことが考えられる。バッテリ制御システム1を例えば電動車両の充電ステーションとして用いる場合、電動車両に搭載中の空のバッテリパック10と差し替えるバッテリパック10の残容量は大きい方が望ましい。また、劣化が進んでいないバッテリパック10が電動車両に搭載されることが望ましい。
【0138】
第1上限出力が大きいバッテリパック10をバッテリ制御システム1での放電用に使用しないことにより、そのバッテリパック10を電動車両に搭載させることができる。また、電動車両に搭載させるために、その上限出力が大きいバッテリパック10をバッテリ制御システム1から取り外した場合でも、バッテリ制御システム1の放電動作を継続することができる。
【0139】
ある実施形態において、複数のグループ80の中から選択したグループに含まれるバッテリパック10を放電させる場合、制御装置30は、選択したグループに含まれるバッテリパック10の中で電圧が最も低いバッテリパック10の電圧を基準電圧に設定し、選択したグループに含まれる他のバッテリパック10から出力された電圧のそれぞれを、基準電圧に調整する制御を行ってもよい。
【0140】
放電用に選択したグループに含まれるバッテリパック10それぞれから出力された電圧を互いに同じ大きさに調整することで、そのグループに含まれるバッテリパック10を並列接続して放電させることができる。
【0141】
ある実施形態において、制御装置30は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、他のバッテリパック10から出力された電圧のそれぞれを基準電圧に調整してもよい。PWM制御により、バッテリパック10それぞれから出力された電圧を互いに同じ大きさに調整することができる。
【0142】
ある実施形態において、選択したグループ80に含まれるバッテリパック10は互いに並列接続された状態で放電し、選択したグループ80に含まれないバッテリパック10のうち、出力電圧が基準電圧よりも低いバッテリパック10の正極端子は、ダイオード61、62または63を介して並列接続のノード68に接続されてもよい。
【0143】
負荷71の大きさが急激に変化すると、バッテリ制御システム1の出力電圧が急激に低下する場合がある。バッテリ制御システム1の出力電圧が、ダイオード61、62または63を介して接続される非選択のバッテリパック10の出力電圧よりも低くなると、その非選択のバッテリパック10からも負荷71に電力が供給されるようになる。これにより、バッテリ制御システム1がダウンすることを抑制できる。
【0144】
ある実施形態において、選択したグループ80に含まれるバッテリパック10を放電させる過程において、複数のグループ80の第3上限出力の大小関係が変化した場合、制御装置30は、放電させるグループを変更してもよい。
【0145】
放電によりバッテリパック10の残容量が減少することに伴い、複数のグループ80の第3上限出力の大小関係は変化する。この場合、放電させるグループ80を変更することで、より適切なグループ80で放電させることができる。
【0146】
ある実施形態において、制御装置30は、バッテリパック10の電圧の検出値と、電圧の検出値に対応するバッテリパック10の上限電流とに基づいて、バッテリパック10の第1上限出力を演算してもよい。演算したバッテリパック10の第1上限出力を用いて、複数のバッテリパック10を含むバッテリユニット20の第2上限出力を演算することができる。
【0147】
ある実施形態において、複数のバッテリパック10のうちの少なくとも一つは、他のバッテリパック10と仕様が異なっていてもよい。
【0148】
上限出力を用いてバッテリパック10同士を組み合わせることにより、仕様が異なるバッテリパック10を組み合わせることができる。これにより、バッテリパック10の選択の自由度を向上させることができる。
【0149】
本発明のある実施形態に係るコンピュータプログラムは、複数のバッテリパック10の動作の制御をコンピュータに実行させる。コンピュータプログラムは、複数のバッテリパック10それぞれの第1上限出力を取得すること、複数のバッテリパック10の第1上限出力を用いて、複数のバッテリパック10を含むバッテリユニット20の第2上限出力を演算すること、演算したバッテリユニット20の第2上限出力に基づいて、複数のバッテリパック10の動作を制御することをコンピュータに実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、複数のバッテリパックを組み合わせて放電させる技術分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0151】
1:バッテリ制御システム、2:筐体、3:コネクタ(接続装置)、4:充電用コネクタ、5:放電用コネクタ、6:放電用コネクタ、10:バッテリパック、11:セル(単電池)、12:バッテリマネージメントシステム(BMS)、13:コネクタ、20:バッテリユニット、30:制御装置、31:プロセッサ、32:メモリ、33:通信回路、41:コンバータ、42:インバータ、43:充電器、51、52、53:PWM用スイッチング素子、54:放電用スイッチング素子、55:充電用スイッチング素子、61、62、63、64、65、66:ダイオード、68:ノード、71:負荷(外部装置)、73:発電装置、80:グループ
図1
図2
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