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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】現像装置および現像方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221115BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01L21/30 569D
G03F7/30 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020156272
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049955
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】山岡 英人
(72)【発明者】
【氏名】田中 友耶
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216170(JP,A)
【文献】特開2014-017316(JP,A)
【文献】特開2016-051713(JP,A)
【文献】特開2006-202893(JP,A)
【文献】特開2003-100623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
21/67
G03F 7/30
B08B 3/04
B05B 13/02
B05C 11/02
B05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光されたフォトレジスト膜を表面に有する基板を、前記フォトレジスト膜を上にして水平姿勢に支持しつつ水平方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部に支持される前記基板の上面に現像液を供給して、前記基板の上面を前記現像液の液膜で覆う一次供給部と、
前記基板の搬送方向において前記一次供給部よりも下流側で、搬送される前記基板の上面に前記現像液を追加的に供給する二次供給部と
を備え、
前記二次供給部は、
前記基板の上面に対し前記現像液を吐出する液体吐出口を有する二次供給ノズルと、
前記搬送方向において前記一次供給部よりも下流側かつ前記液体吐出口よりも上流側で前記液体吐出口に近接配置された気体吐出口から前記基板上の前記液膜に向けて気体を噴射して、前記搬送方向に直交する幅方向に延びるエアカーテンを形成する気体噴射ノズルと、
前記気体噴射ノズルからの前記気体の噴射量を制御する噴射制御部と
を有し、
前記噴射制御部は、一の前記基板に対する前記気体の噴射量を経時的に変化させる現像装置。
【請求項2】
前記噴射制御部は、予め定められた処理レシピに応じて前記噴射量を変化させる請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記噴射制御部は、前記噴射量を経時的に減少させる請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記噴射制御部は、一の前記基板に対する前記気体の前記噴射量を最終的にゼロにする請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記二次供給ノズルは、前記基板の前記幅方向の全体に亘り一様に前記現像液を吐出する請求項1ないし4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記気体噴射ノズルは、前記基板の前記幅方向の全体に亘り一様に前記気体を噴射する請求項1ないし5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
前記一次供給部は、前記搬送部により搬送される前記基板の上面に対し前記現像液を吐出する液体吐出口を有し、前記一次供給部の前記液体吐出口と前記気体吐出口との最短の距離が、前記搬送方向における前記基板の長さよりも大きい請求項1ないし6のいずれかに記載の現像装置。
【請求項8】
露光された基板表面のフォトレジスト膜を現像液により現像する現像方法において、
前記フォトレジスト膜を上にして水平姿勢に支持された前記基板の上面に現像液を一次供給して、前記基板の上面を前記現像液の液膜で覆う工程と、
前記液膜が形成された前記基板を水平方向に搬送する工程と、
搬送される前記基板上の前記液膜に向けて気体を噴射し、前記基板の搬送方向に直交する幅方向に延びるエアカーテンを形成する工程と、
前記気体が吹き付けられた前記基板の上面に対し前記現像液を二次供給する工程と
を備え、
一の前記基板に対する前記気体の噴射量を経時的に変化させる現像方法。
【請求項9】
前記噴射量を経時的に減少させる請求項8に記載の現像方法。
【請求項10】
前記基板を一定速度で搬送しつつ、前記液膜の形成、前記気体の噴射および前記現像液の二次供給を順番に実行する請求項8または9に記載の現像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置用ガラス基板、半導体ウェハ、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルター用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板等の基板を、現像液により現像する現像方法および現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の製造工程においては、フォトリソグラフィによりパターンを形成する基板処理技術が多用されている。この基板処理技術における基本的な工程は、成膜工程、塗布工程、露光工程、現像工程およびエッチング工程である。これらの工程のうち現像工程は、薄膜および露光処理されたフォトレジスト層が積層された基板に対して現像液を供給することでフォトレジスト層を現像してマスクパターンを形成する工程である。
【0003】
例えば特許文献1に記載の現像装置においては、フォトレジスト膜を上にして水平搬送される基板に対し一様に現像液を供給することでフォトレジスト膜を現像しつつ、他の箇所よりも高い現像能力が必要とされる部分に対しては局所的に現像液を追加供給することにより、現像処理の面内均一性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-120976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、基板の搬送方向に直交する幅方向における一部範囲でのみ現像液の追加供給が行われているが、このような現像液の追加供給は、例えば幅方向の全体に亘り一様に行われることも有効であると考えられる。その理由は以下の通りである。現像が進むにつれて基板を覆う現像液の液膜にフォトレジスト材料や空気中の酸素が溶け込むことによって現像液の現像能力が低下するという現象があり、このことが現像処理の面内均一性の低下の一因となっている。これは基板上のどの位置においても起こり得るから、搬送される基板の幅方向に亘り一様に現像液を追加供給してこのような現像能力の低下を補完することで、処理の均一性が向上することが期待される。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に形成されたフォトレジスト膜を現像する技術において、現像液の追加供給を行うことで現像処理の面内均一性のさらなる向上を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、露光されたフォトレジスト膜を表面に有する基板を、前記フォトレジスト膜を上にして水平姿勢に支持しつつ水平方向に搬送する搬送部と、前記搬送部に支持される前記基板の上面に現像液を供給して、前記基板の上面を前記現像液の液膜で覆う一次供給部と、前記基板の搬送方向において前記一次供給部よりも下流側で、搬送される前記基板の上面に前記現像液を追加的に供給する二次供給部とを備える現像装置である。ここで、前記二次供給部は、前記基板の上面に対し前記現像液を吐出する液体吐出口を有する二次供給ノズルと、前記搬送方向において前記一次供給部よりも下流側かつ前記液体吐出口よりも上流側で前記液体吐出口に近接配置された気体吐出口から、前記基板上の前記液膜に向けて気体を噴射して、前記搬送方向に直交する幅方向に延びるエアカーテンを形成する気体噴射ノズルと、前記気体噴射ノズルからの前記気体の噴射量を制御する噴射制御部とを有し、前記噴射制御部は、一の前記基板に対する前記気体の噴射量を経時的に変化させる。
【0008】
また、この発明の他の一の態様は、露光された基板表面のフォトレジスト膜を現像液により現像する現像方法であって、前記フォトレジスト膜を上にして水平姿勢に支持された前記基板の上面に現像液を一次供給して、前記基板の上面を前記現像液の液膜で覆う工程と、前記液膜が形成された前記基板を水平方向に搬送する工程と、搬送される前記基板上の前記液膜に向けて気体を噴射し、前記基板の搬送方向に直交する幅方向に延びるエアカーテンを形成する工程と、前記気体が吹き付けられた前記基板の上面に対し前記現像液を二次供給する工程とを備え、一の前記基板に対する前記気体の噴射量を経時的に変化させる。
【0009】
以下の説明において単に「上流側」という場合、基板の搬送方向における上流側を指すものとする。また、単に「下流側」という場合、基板の搬送方向における下流側を指すものとする。搬送される基板から見た場合、その下流側端部が搬送方向における先端部に該当する。また上流側端部が、搬送方向における後端部に該当する。
【0010】
上記のように構成された発明では、現像液の液膜で覆われた基板に対し、追加的な現像液の供給(二次供給)が行われる。これにより液膜中での現像が促進され、処理の均一性が向上することが期待されるが、本願発明者の知見によれば、単に現像液の二次供給を行うというだけでは十分な改善が見られない。特に搬送方向に沿った方向における均一性の改善効果が小さい。これは以下のような理由によると考えられる。
【0011】
基板を覆う現像液の液膜に現像液が二次供給されると、新たな現像液の成分が液膜中に拡散することで、現像能力の回復効果は追加供給位置の液膜だけでなくその周囲の液膜にも波及すると考えられる。基板を搬送しつつ二次供給を行う場合、搬送方向における基板の先端部と後端部とで比較すると、先端部付近ではもともと液膜を形成していた既存の現像液に新たな現像液が追加されるだけであるのに対し、後端部付近では、それまでの二次供給による影響を既に受けている既存の現像液に、さらなる現像液の追加が行われることになる。このことが、搬送方向における処理の不均一性、つまり基板の先端に近い側と後端に近い側との間で処理結果に差が生じる原因の一つになっていると考えられる。
【0012】
そこで本発明では、現像液の二次供給が行われる位置よりも上流側に、幅方向に延びるエアカーテンを形成する。これにより、二次供給された現像液が気体の吹き付け位置を超えて上流側、つまり基板の後端部側にまで広がることが抑制される。そのため、上記のような搬送方向における処理の不均一性が改善される。また、気体の吹き付けにより液膜の厚さが低減されることで、二次供給された現像液に既存の現像液が混入する比率を抑えることができる。これにより、二次供給される現像液の高い現像能力を有効に利用することができる。
【0013】
一方、基板の搬送方向においてエアカーテンの吹き付け位置よりも上流側では、気体の風圧によって、基板上で液膜を構成する既存の現像液が上流側に押し流されるという現象が生じる。ここではこの現象を、現像液の「逆流」と称することとする。
【0014】
ここで、液膜中の現像液の現像能力の低下の度合いは、現像すべきパターンの影響を受けている。つまり、除去すべきフォトレジスト膜の量が多いパターンでは、現像液中に溶け込むレジスト材料の量が多くなるため現像能力の低下も顕著である。このように現像能力の低下した現像液が逆流すると、既存の現像液に混入してその現像能力を低下させることになる。このことは、特に除去すべきフォトレジスト膜の量が多いパターンにおいて現像不足を生じさせる。
【0015】
これに対し、除去すべきフォトレジスト膜の量が少ないパターンでは、現像液中に溶け込むレジスト材料の量も少ないため現像能力の低下は抑えられている。このように現像能力を維持した現像液が逆流して既存の現像液に混入すると、液量を増加させた場合と同様の効果が生じ、特に除去すべきフォトレジスト膜の量が少ないパターンにおいて過現像(現像過多)を生じさせる。
【0016】
必要に応じ気体の噴射量を増減するようにすれば、二次供給された現像液が気体吹き付け位置を超えて液膜に流入する流入量、および、上流側の液膜中での現像液の逆流の程度を制御することが可能である。これにより、現像の進行の程度を制御することが可能となる。すなわち、処理の進行に応じて気体の噴射量を経時的に変化させることで、基板の搬送方向に沿った方向での処理の均一性を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明においては、基板上に形成された現像液の液膜に対し現像液を二次供給するのに際してエアナイフを形成し、しかもその気体の噴射量を経時的に可変としている。このような構成により、現像処理の面内均一性のさらなる向上を図ることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る現像装置の一実施形態を示す図である。
図2】この現像装置による現像処理の概要を示すフローチャートである。
図3】現像液の一次供給による液膜形成処理を模式的に示す図である。
図4】第2現像部での処理を説明するための図である。
図5】第2現像部での処理を説明するための図である。
図6】現像液の逆流現象を説明するための図である。
図7】気体噴射量の変化プロファイルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明に係る現像装置の一実施形態を示す図である。より具体的には、図1(a)は本実施形態の現像装置1の概略構成を示す平面図であり、図1(b)は現像装置1の側面断面図である。以下の各図における方向を統一的に示すために、図1(a)に示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面が水平面を表し、Z方向は鉛直方向を表す。(-Z)方向が重力方向である。
【0020】
この現像装置1は、前工程を受けた基板Sを筐体2の内部で搬送方向Xに搬送しながら、第1現像部3での現像処理、第2現像部4での現像処理、リンス部5でのリンス処理および乾燥部6での乾燥処理をこの順序で行う基板処理装置である。基板Sとしては、例えば半導体基板や、フォトマスク用、表示装置用、太陽電池用等の各種の用途向けのガラス基板などを適用することができ、その表面に担持された露光済みのフォトレジスト膜を現像する目的に、この現像装置1を用いることができる。ただし、基板の種類や用途は特にこれらに限定されるものではない。
【0021】
筐体2の中間部には3つの仕切板21~23が設けられ、これらによって筐体2の内部が4つの処理空間に区画されている。また、各仕切板21~23の中央部には、基板Sを搬送するための搬送通路口24が設けられている。これらの搬送通路口24によって4つの処理空間は搬送方向Xに連通され、それらのうち最上流に位置する処理空間に第1現像部3が配置され、最上流側から2番目に位置する処理空間に第2現像部4が配置され、さらに3番目および4番目に位置する処理空間にリンス部5および乾燥部6がそれぞれ配置されている。
【0022】
また、筐体2では、搬送方向Xにおける上流側端部に露光装置(図示省略)で処理された基板Sを搬入するための搬入口25が設けられる一方、下流側端部に上記現像処理、リンス処理および乾燥処理を受けた基板Sを次の処理装置(例えば現像処理後のポストベーク処理を行うポストベーク部やエッチング装置)に搬出するための搬出口26が設けられている。
【0023】
また、筐体2の内部では、搬入口25、搬送通路口24および搬出口26を介して基板Sを搬送するための基板搬送部7が設けられている。この基板搬送部7は、複数の搬送ローラ71と、搬送ローラ71を駆動する搬送駆動機構72を有している。複数の搬送ローラ71は、図1(b)に示すように、搬入口25、搬送通路口24および搬出口26を結ぶ搬送経路に沿って所定の間隔をあけて配列されている。各搬送ローラ71は搬送方向Xに直交する水平方向、つまり基板Sの幅方向Yに延びる回転軸711と、中心部が当該回転軸に固定された複数の車輪712とで構成されている。複数の車輪712は回転軸711に対して幅方向Yに所定の間隔をあけて配列されており、基板Sを下面側から支持可能となっている。
【0024】
各回転軸711は搬送駆動機構72に連結されている。そして、装置全体を制御する制御部8からの動作指令に応じて搬送駆動機構72の駆動モータ(図示省略)が作動すると、当該駆動モータで発生した回転駆動力が回転軸711に伝達されて車輪712を回転させる。したがって、図1(b)に示すように、車輪712により鉛直下方から支持された基板Sはその表面(薄膜およびレジスト膜が積層された面)を上方に向けた水平姿勢で第1現像部3、第2現像部4、リンス部5および乾燥部6の順に搬送可能となっている。
【0025】
第1現像部3は、搬送ローラ71により搬送される基板Sの上方に配置されたスリットノズル31,32を備えている。スリットノズル31は、幅方向Yに延設されたノズル本体311と、ノズル本体311の下面において幅方向Yに細長く延びるスリット状の吐出口312とを有している。図1(a)に示すように、幅方向Yにおいてノズル本体311,321は基板Sよりも長いのに対し、吐出口311,312は基板Sの幅寸法と同程度の幅を有している。そして、吐出口312,322が基板Sの上面に対向するようにスリットノズル31,32が配置されている。このうちスリットノズル31は上端部を(-X)方向に向けて45度傾けた状態で保持されている。このようにする理由については後述する。
【0026】
スリットノズル31,32は現像液供給源81に接続されており、制御部8からの吐出指令に応じて現像液供給源81が現像液をスリットノズル31,32に圧送すると、搬送ローラ71により搬送される基板Sに向けて吐出口312,322から現像液が幅方向Yに亘って基板Sに供給される。この第1現像部3では、基板Sがスリットノズル31,32の下を通過することによって、基板Sの表面全体に対し、表面張力を利用して現像液が盛られる、すなわち現像液によるパドル状の液膜が形成される。こうして現像液が供給された時点より、基板S上のレジスト膜に対する現像処理が開始される。そして、このように第1現像部3による現像処理を受けた基板Sは第2現像部4に搬送される。
【0027】
第2現像部4は、搬送ローラ71により搬送される基板Sの上方に配置されたエアノズル41およびスリットノズル42を備えている。スリットノズル42は、スリットノズル31と概ね同等の構造を有している。すなわち、スリットノズル42は、幅方向Yに延設されたノズル本体421と、ノズル本体421の下面において幅方向Yに細長く延びるスリット状の吐出口422とを有している。スリットノズル42は現像液供給源81に接続されており、制御部8からの吐出指令に応じて現像液供給源81が現像液をスリットノズル42に圧送すると、搬送ローラ71により搬送される基板Sに向けて吐出口422から現像液が幅方向Yに亘って基板Sに供給される。
【0028】
このとき、基板Sの上面には既に現像液による液膜が形成されており、したがってスリットノズル422は、基板S上の液膜に対し、さらに追加的に現像液を供給する機能を有している。これらの現像液供給を区別するために以下では、スリットノズル31,32による液膜形成のための現像液供給を「一次供給」、スリットノズル42による追加的な現像液供給を「二次供給」と称することとする。
【0029】
環境負荷の低減の観点から、第1現像部3および第2現像部4で基板Sに供給された現像液のうち基板Sから零れ落ちたものについては、図示しない回収経路を介して回収し、液に溶け込んだレジスト材料や溶存酸素等を除去し薬剤成分を補充する再生処理を施した上で現像液供給源81に戻されることが望ましい。
【0030】
二次供給用のスリットノズル42に対し搬送方向Xにおける上流側、つまり(-X)側に隣接して、気体を噴射することでエアナイフとして機能するエアノズル41が配置されている。エアノズル41は、幅方向Yに基板Sの幅よりも大きく延設されたノズル本体411と、その下部に基板Sの上面に向けて開口するスリット状の吐出口412とを有している。
【0031】
エアノズル41は、例えばマスフローコントローラなどの流量制御機構84を介してエア供給源83に接続されている。制御部8からの制御指令に応じてエア供給源83が例えばドライエアのような気体を送出すると、気体は流量制御機構84を経由してエアノズル41の吐出口412から基板Sに向けて噴射される。吐出口412は、幅方向Yに沿って基板Sの幅よりも長く、細長いスリット状に延びている。したがって吐出口412から噴射される気体は、スリットノズル42から現像液の二次供給が行われる直前の位置において、Y方向には基板Sの幅方向全体に亘り一様でX方向には吐出範囲が規制されたエアカーテンを形成する。このようにする理由については後に詳しく説明する。
【0032】
リンス部5は、搬送ローラ71により搬送される基板Sの上方に配置されたスリットノズル(リンス液ノズル)51を備えている。スリットノズル51は、第1現像部3で採用しているスリットノズル31と同様の構成を有しており、ノズル本体511の下面に設けられた吐出口512が基板Sの表面G1に対向するように配置されている。スリットノズル51はリンス液供給源52に接続されている。制御部8からの吐出指令に応じてリンス液供給源52がリンス液をスリットノズル51に圧送すると、搬送ローラ71により搬送される基板Sに向けて吐出口512からリンス液が幅方向Yに亘って基板Sに供給される。このリンス液の供給によって基板Sの表面G1に付着している現像液が溶解されたレジスト成分とともに洗い流され、現像処理が停止される。こうしてリンス液により濡れた基板Sは乾燥部6に搬送される。
【0033】
乾燥部6は、一対のエアノズル61、62を備えている。エアノズル61、62はそれぞれ搬送ローラ71の上方側および下方側に配設されている。また、エアノズル61、62には、エア供給源63が接続されている。このため、制御部8からの乾燥指令に応じてエア供給源63が作動して乾燥用エアをエアノズル61、62に圧送すると、搬送ローラ71により搬送される基板Sの表面G1および裏面G2に対してカーテン状の乾燥用エアが供給され、基板Sに付着しているリンス液が除去される。こうして乾燥処理を受けた基板Sは搬送ローラ71によって搬出口26を介して現像装置1から搬出される。
【0034】
図2はこの現像装置による現像処理の概要を示すフローチャートであり、より具体的には、現像装置1に投入された1枚の基板Sに対して施される一連の処理を記述したものである。実際には、現像装置1には複数枚の基板Sが1枚ずつ順に投入され、これらの基板Sに対し装置各部での処理が並行して実行される。
【0035】
前工程の露光装置で露光された基板Sが現像装置1に搬入されると、基板搬送部7が基板SのX方向への搬送を開始する(ステップS101)。そして、第1現像部3においてスリットノズル31,32から現像液の一次供給が行われる(ステップS102)。これにより現像液の液膜Pが形成された基板Sは第2現像部4へ搬送される。第2現像部4では、エアノズル41からカーテン状エアが基板S上の液膜Pに吹き付けられた直後に(ステップS103)、スリットノズル42から現像液の二次供給が行われる(ステップS104)。
【0036】
その後、基板Sはリンス部5におけるリンス処理(ステップS105)および乾燥部6における乾燥処理(ステップS106)を経て搬出される(ステップS107)。これらの処理内容は公知であるため説明を省略する。
【0037】
図3は現像液の一次供給による液膜形成処理を模式的に示す図である。現像液の一次供給は、互いに近接配置されたスリットノズル31,32により行われる。図3(a)に示すように、上流側のスリットノズル31は上端を(-X)側、つまり基板Sの搬送方向の上流側に向けて傾けられており、ノズル本体311の下側のリップ面313が略水平となっている。図3(a)に示す点線は、搬送されてくる基板Sの上面の高さを表している。図からわかるように、スリットノズル31はそのリップ面313が基板の上面に対し比較的近接するように配置される。これに対し、下流側のスリットノズル32は吐出口322を下に向けた直立状態で、かつ吐出口322と基板上面とのギャップはスリットノズル31よりも大きい。
【0038】
図3(b)に示すように、基板Sの先端部Saがスリットノズル31の直下位置を通過するタイミングでスリットノズル31から現像液が吐出される。吐出された現像液は表面張力の作用によりリップ面313と基板S上面とのギャップを液密状態とし、この状態で基板SがX方向に搬送されることにより、基板Sの表面(上面)に現像液による一様な薄い液膜が形成される。スリットノズル31と基板Sとのギャップを小さくし、リップ面413と基板Sの上面との間を液密状態とすることにより、現像液の吐出量が比較的少なくても一様な液膜を形成することが可能である。
【0039】
図3(c)に示すように、基板Sの先端部Saがスリットノズル32の直下位置を通過するときに、スリットノズル32から現像液が供給される。これにより、基板S上の液膜の厚さが増大される。これを基板Sの後段部Sbがスリットノズル32の直下位置を通過するまで継続することにより、図3(d)に示すように、基板Sの上面全体に、均一かつ十分な厚さの液膜Pを形成することができる。
【0040】
レジスト膜を良好に現像するのに十分な量の現像液を供給するためには、液膜Pの厚さを適正なものとする必要がある。しかしながら、十分な厚さの液膜Pを形成するために最初から多くの現像液を供給しようとすると、ノズルと基板Sとの距離を比較的大きくしておくことが必要となる。そうすると基板S上での現像液の流動が大きくなり、連続した一様な液膜を安定的に形成することが難しくなる。上記のように、基板Sに近接させたスリットノズル31により薄い液膜を形成し、スリットノズル32からの液供給により液膜の厚さを増大させるという方法を採ることで、十分な厚さを有する液膜Pを安定して形成することが可能となる。
【0041】
図3(d)に示すように、下流側のスリットノズル32の吐出口322と、第2現像部4のエアノズル41の吐出口412とのX方向の水平距離Dを、同方向における基板Sの長さLxよりも大きくしておくと、基板S上の液膜Pを静穏に保ったまま搬送することができる。この間、基板S上のフォトレジスト膜が現像液に触れ続けることで現像処理が進行する。
【0042】
図4および図5は、第2現像部での処理を説明するための図である。基板Sが上面に液膜Pを形成された状態で搬送されることにより現像が進行する。このとき、現像機には基板Sから遊離したレジスト材料や空気中の酸素等が次第に溶け込んでゆくことで、現像液の現像能力は次第に低下する。ここでいう現像液の「現像能力」とは、当該現像液が如何に多くのレジスト膜を除去することができるかを表す概念である。定量的には、例えば単位時間当たりに溶解させることのできるレジストの量により現像能力を表すことが可能である。現像が進行するにつれてレジスト材料や酸素の溶存量が増大し、さらには液温の低下等によって、現像液の現像能力は時間とともに低下してゆくことが避けられない。
【0043】
図4(a)に示すように、静穏状態で搬送される基板S上の液膜Pは、基板Sの先端部Saに近い側、つまり搬送方向の下流側ほど現像能力が低下するようなプロファイルを有していると考えられる。これは、前記のように第1現像部3では搬送される基板Sの先端部Saから順に現像液が供給されるため、先端部Saに近い部分ほど供給から時間が経過しているためである。
【0044】
このような現像能力の低下に起因する現像効率の低下を補うために、この現像装置1では第2現像部4において現像液の追加的な供給(二次供給)を行う。図4(b)に示すように、基板Sのうちスリットノズル42から現像液が新たに供給された箇所では、図4(b)下部のグラフに実線で示すように、フレッシュな現像液による高い現像能力が得られることが期待される。しかしながら実際には点線で示すように、新しい現像液が液膜P中の既存の現像液と混じり合うことにより、基板S上での現像力は低下し、しかも上流側に向けて広がりを有することとなる。
【0045】
このまま基板Sの搬送を継続すると、液膜Pに占める新しい現像液の比率が次第に上昇し、液膜Pは本来意図したものとは異なる現像能力のプロファイルを有するものとなる。このことが現像処理結果の面内均一性、特に搬送方向における均一性の低下の一因となる。
【0046】
この問題を解消するため、本実施形態では図5(a)に示すように、スリットノズル42から現像液が二次供給される直前に、エアノズル41による液膜Pへのエアナイフの吹き付けを行う。エアナイフの吹き付けは、その吹き付け位置の上流側と下流側との間における現像液の行き来を遮断するために行われ、具体的には以下の2つの効果を有している。第1には、液膜Pの厚さを低減することにより、既存の、つまり現像能力の低下した現像液が新たに供給される現像液に混入する比率を低下させることができる。これにより、新たに供給される現像液は当初の現像能力を維持したまま基板Sを処理することができる。
【0047】
第2には、新たに供給された現像液がエアナイフの吹き付け位置を超えて上流側に流れ込むこと(以下ではこの現象を「オーバーフロー」と称する)が防止される。これにより、現像液の二次供給が行われる前の上流側における現像能力のプロファイルの変動が回避される。
【0048】
図5(a)の点線はこのときの現像能力のプロファイルを模式的に示している。二次供給される現像液への既存の現像液の混入を減らし、かつ、二次供給される現像液の上流側へのオーバーフローを抑制することにより、実線で示される理想的なプロファイルに近いプロファイルが得られる。
【0049】
この状態で基板Sが搬送された場合でも、図5(b)に示すように、新しく供給される現像液Lnと既存の現像液Loとの境界付近におけるプロファイルは、概ね元の形状を保ったまま基板Sの移動に伴い上流側へシフトしてゆくこととなる。このため、基板Sの先端部Saから後端部Sbまでの間で現像条件が略一定に保たれ、現像処理結果において優れた面内均一性を得ることが可能となる。
【0050】
図6は現像液の逆流現象を説明するための図である。以下ではエアナイフ吹き付けによるもう1つの作用について検討する。上記のように、エアナイフの吹き付けによって既存の液膜Pの厚さを減らすことが可能であるが、エアナイフの風圧によって押し出された液膜P中の現像液は、図6(a)に矢印で示すように上流側へ流れ込むこととなる(以下ではこの現象を「逆流」と称する)。このようにエアナイフ吹き付け位置の上流側では、現像液が逆流することによる現像能力のプロファイルの乱れが生じる。
【0051】
このような乱れの影響としては、液膜Pにおける現像能力が低下する場合と増大する場合とがあり得る。例えば現像により形成されるパターンが、比較的多くのレジスト膜を除去する必要があるようなものであるときには、逆流の影響は現像能力を低下させる方向に作用し得る。
【0052】
すなわち、除去すべきレジストの量が多いパターンでは、液膜P中に多くのレジスト材料が溶け込むことで、図6(b)に実線で示すように現像能力の低下が顕著である。この状態で下流側からより現像能力の低下した現像液が逆流してくると、点線で示すように、液膜Pの現像能力がさらに低下することになる。このことは、除去すべきレジストが取りきれない、すなわち現像不足の状態を惹き起こす。
【0053】
一方、除去すべきレジストの量が比較的少ないパターンでは、図6(b)に実線で示すように現像能力の低下も少ない。つまり、液膜P中の現像液は高い現像能力を維持している。ここに高い現像能力を維持したままの現像液が逆流してくると、現像液の液量を増加させた場合と同様の作用により、点線で示すように現像能力の低下が緩やかになり、場合によっては上昇することがあり得る。このことは、残すべきレジストまで除去されてしまう、いわゆる現像過多の状態を惹き起こす。
【0054】
このように、エアナイフ吹き付けに起因する液膜P中の現像液の逆流は、上記いずれのタイプのパターンにおいても上流側での現像処理に対して好ましくない影響を与える。そのため、この逆流をできるだけ抑えることが望ましい。エアノズル41からの噴射量が大きいほど、逆流する現像液の量も多くなる。したがって、この観点からは気体の噴射量は小さい方がよいが、小さすぎると二次供給される現像液のオーバーフローを抑止することができなくなる。
【0055】
このことから、エアノズル41からの気体の噴射量あるいはその流速については、オーバーフローを阻止することができる範囲においてできるだけ小さい方がよい、ということができる。なお基板Sの表面が露出してしまうような強い気流を吹き付けることは、当然に避けるべきである。
【0056】
それでも、エアナイフの吹き付けを行う以上ある程度の逆流が生じることは避けられない。特に基板Sの後端部Sbに近い部分は逆流の影響を長く受け続け、かつその影響が蓄積されてゆくから、先端部Saに近い側との間で現像処理結果に差が生じてしまうことになる。
【0057】
このことに鑑み、この実施形態では、エアナイフとして噴射される気体の量を一定とせず、1つの基板Sへの処理の期間中にその噴射量を経時的に変化させることにより、逆流による現像不良を抑制するようにしている。
【0058】
エアナイフ用の気体の噴射量の適正値については、レジスト材料および現像液の物性値やパターンの種類、搬送速度等の種々のパラメータによって変わり得るため、予め実験を行って最適条件を定めておく必要がある。同様に、逆流の影響についても種々の条件で変わり得るため、噴射量の変化プロファイルについても事前に実験的に定めておくことになる。
【0059】
こうして得られた適正なプロファイルについては、処理レシピとして予め準備し登録しておくことができる。現像装置1を動作させる際には、制御部8が流量制御機構84を制御し、その処理レシピに応じてエアノズル41からの気体噴射量を経時的に変化させることで、目的とする処理が実現される。
【0060】
図7は気体噴射量の変化プロファイルの例を示す図である。図において、時刻Tsは1つの基板Sに対し気体の噴射が開始される時刻であり、基板Sの先端部Saがエアナイフの吹き付け位置に到達する時刻に相当する。一方、事項Teは、同じ基板Sに対する気体の噴射が終了する時刻であり、基板Sの後端部Sbがエアナイフの吹き付け位置に到達する時刻に相当する。
【0061】
図7(a)に示す例では、エアノズル41からの気体の噴射量が連続的に漸減する。実線で示すように、時刻Teにおいてもある程度の吹き付けが継続されていてもよく、また点線で示すように最終的には噴射が停止される態様であってもよい。なお、この例では噴射量の変化が時刻に対し線形であるが、適宜の曲線に沿った非線形の変化態様であってもよい。
【0062】
噴射を停止した場合には、二次供給される現像液に対するオーバーフロー阻止効果が失われることになる。基板Sの後端部Sbではその影響は小さいと考えられる。また、現像不足を回避するために意図的に新しい現像液を液膜Pに注入することが有効な場合もあり得る。これらのことから、噴射が事後的に停止されるような変化プロファイルも採用可能である。
【0063】
図7(b)に示す例では、ある時刻において噴射量がステップ状に変化する。この場合においても、実線で示すように時刻Teにおいてもある程度の吹き付けが継続されていてもよく、また点線で示すように最終的には噴射が停止されてもよい。また、曲線に沿った変化態様を示すものでもよい。
【0064】
このように、一般的には気体の噴射量が経時的に減少するような変化態様が好ましいと考えられる。エアナイフ吹き付けによる現像液の逆流は現像不良を増大させる方向に作用するから、これを抑制するには噴射量を減少させることが有効であるからである。
【0065】
しかしながら、図7(c)に示すように、噴射量を増加させる局面を含むような変化態様が好ましい場合もあり得る。例えば、基板Sのうち先端部Saに近い部分と後端部Sbに近い部分との間でパターンの密度が異なるようなケースである。具体的には、基板Sの先端部Saに近い部分に除去すべきレジスト量が少ないパターンが配置され、これより後端部Sb側に除去すべきレジスト量が多いパターンが配置されるようなケースでは、高い現像能力を維持する現像液の逆流量を増加させることで、後端側のパターンの現像不足を回避することができる場合がある。
【0066】
このように、噴射量の好ましい変化態様はケース・バイ・ケースであり、現像処理の仕様に合わせて個々に調整することが必要である。
【0067】
以上説明したように、この実施形態の現像装置1においては、基板搬送部7が本発明の「搬送部」として機能しており、第1現像部3および第2現像部4が本発明の「一次供給部」および「二次供給部」としてそれぞれ機能している。そして、二次供給部たる第2現像部4においては、スリットノズル42が本発明の「二次供給ノズル」として、エアノズル41が本発明の「気体噴射ノズル」として、流量制御機構84および制御部8が一体的に本発明の「噴射制御部」としてそれぞれ機能している。また、スリットノズル42の吐出口422が本発明の「液体吐出口」に相当し、エアノズル41の吐出口412が本発明の「気体吐出口」に相当している。さらに、スリットノズル32の吐出口322が、本発明における一次供給部の「液体吐出口」に相当している。
【0068】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、基板Sに現像液の液膜Pを形成するのに際して2つのスリットノズル31,32を組み合わせている。しかしながら、液膜形成のための構成はこれに限定されず任意である。例えば単一のスリットノズルにより液膜が形成されてもよく、またスリットノズル以外の液供給機構により液膜が形成されてもよい。例えば、基板Sを一方向に搬送せずに(例えば停止させた状態や回転させた状態で)液膜を形成するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態ではエアノズル41とスリットノズル42とが別体に形成されているが、これらが一体に形成されていてもよい。この場合には、気体吐出口と液体吐出口との位置関係や流路形状等をより高い自由度で設定することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、基板Sが本発明の「基板」の一例に相当しているが、本発明の「基板」としては、基板S以外の基板、例えば半導体ウェハや太陽電池用基板なども含まれる。
【0071】
また、上記実施形態では、固定配置されたノズルの直下で基板Sを搬送することで基板Sをノズルに対して相対移動させている。しかしながら、基板Sを固定した状態あるいは搬送した状態でノズルを移動させて現像処理を行うような現像装置においても、上記と同様の手法を採用することが可能である。
【0072】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る現像装置および現像方法においては、例えば予め定められた処理レシピに応じて噴射量が変化させる態様とすることができる。液膜中の現像液の現像能力がどのように変化するか、また二次供給された現像液の影響が液膜中にどのように現れるかについては種々の条件によって変わり得る。このため、例えば予め実験に基づき処理レシピを作成しておき、それに基づき噴射量の変化態様を決定するようにすれば、同じ現像条件での処理結果を安定したものとすることができる。
【0073】
噴射量の具体的な変化態様としては、例えば噴射量が経時的に減少するようなものとすることができ、例えば一の基板に対する気体の噴射量を最終的にゼロにするようなものであってもよい。気体の噴射により上流側へ押し流される現像液は現像不良を増大させる方向に作用し、しかもその影響は次第に蓄積されてくる。このことから、一般的には噴射量を低下させるような変化とすることで、現像不良を低減することができると考えられる。
【0074】
また例えば、二次供給される現像液は、基板の幅方向の全体に亘り一様に吐出されてもよい。こうすることで、幅方向における処理の均一性の向上を図ることができる。具体的には、幅方向における現像ムラの発生を抑制することができる。
【0075】
また例えば、気体は基板の幅方向の全体に亘り一様に噴射されてもよい。こうすることによっても、幅方向における処理の均一性の向上を図ることができる。具体的には、気体に押し流された既存の現像液や新たに供給された現像液が幅方向に流動して現像ムラが発生するのを抑制することができる。
【0076】
また、一次供給のための現像液を吐出する液体吐出口については、気体吐出口との最短の距離が、搬送方向における基板の長さよりも大きくなるようにしてもよい。このような構成によれば、この間を搬送中には基板上の液膜を乱すような外部要因がない状態で液膜を静穏に維持することができる期間が生じるため、液膜による現像処理を良好にかつ安定的に進行させることが可能になる。
【0077】
また、基板を一定速度で搬送しつつ、液膜の形成、気体の噴射および現像液の二次供給が順番に実行されてもよい。このような構成によれば、基板の各部に対する処理を位置によらず一定の処理ピッチで進行させることができるので、均一な現像処理を実現することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明は、露光されたフォトレジスト膜を有する基板に現像液を供給して現像を行う現像技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 現像装置
3 第1現像部(一次供給部)
4 第2現像部(二次供給部)
7 基板搬送部(搬送部)
8 制御部(噴射制御部)
41 エアノズル(気体噴射ノズル)
42 スリットノズル(二次供給ノズル)
84 流量制御機構(噴射制御部)
322 (スリットノズル32の)吐出口(一次供給部の液体吐出口)
412 (エアノズル41の)吐出口(気体吐出口)
422 (スリットノズル42の)吐出口(液体吐出口)
P 液膜
S 基板
X 搬送方向
Y 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7