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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】成膜装置及び足場ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20221115BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221115BHJP
   E04G 5/08 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/31 B
E04G5/08 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020198681
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086584
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 孝史
(72)【発明者】
【氏名】加勢 翔也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功康
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-214908(JP,A)
【文献】特開2013-127962(JP,A)
【文献】特開2006-176867(JP,A)
【文献】特開2008-47728(JP,A)
【文献】特開2013-162068(JP,A)
【文献】特開2020-84251(JP,A)
【文献】特開2011-3766(JP,A)
【文献】特開2010-16144(JP,A)
【文献】特開2011-107521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/31
E04G 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する搬送ユニットと、
成膜源を含み、前記搬送ユニットの下方の第1位置と、前記第1位置に対して横方向に変位した第2位置とに移動可能な成膜源ユニットと、を備え、
基板を搬送しながら基板に対して成膜を行うインライン式の成膜装置であって、
前記成膜源ユニットとともに移動可能であり、前記成膜源ユニットにアクセスするための足場を含む足場ユニットを備え、
前記足場は、前記成膜源ユニットが前記第2位置に位置した状態において、前記成膜源ユニットに収納された収納状態と前記成膜源ユニットから展開された展開状態とに変位可能である、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記足場ユニットは、前記足場として、
床板と、
前記床板を展開可能に支持する支持部と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記足場ユニットは、前記足場を前記収納状態と前記展開状態との間で変位するように操作可能な操作部を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記足場が前記展開状態であることを検知する検知手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記検知手段により前記足場が前記展開状態であることが検知されている場合に、前記成膜源ユニットの前記第2位置から前記第1位置への移動を規制する規制手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記規制手段により成膜源ユニットの移動が規制されていることを作業者に報知する報知手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記足場ユニットは、前記成膜源ユニットの、前記第1位置と前記第2位置との間の移動方向に平行な側面に前記足場を展開する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記成膜源ユニットは、前記成膜源ユニットの移動方向と交差する交差方向に複数並んで設けられ、
前記展開状態にある前記足場は、前記足場が設けられた前記成膜源ユニットに隣接する成膜源ユニットと、前記交差方向において重なる、
ことを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記足場ユニットは、前記成膜源ユニットの長手方向の側面に前記足場を展開する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
基板を搬送する搬送ユニットと、
成膜源を含み、前記搬送ユニットの下方の第1位置と、前記第1位置に対して横方向に変位した第2位置とに移動可能な成膜源ユニットと、を備え、
基板を搬送しながら基板に対して成膜を行うインライン式の成膜装置に用いられる足場ユニットであって、
前記成膜源ユニットにアクセスするための足場を含み、
前記足場は、前記成膜源ユニットが前記第2位置に位置した状態において、前記成膜源ユニットに収納された収納状態と前記成膜源ユニットから展開された展開状態とに変位可能である、
ことを特徴とする足場ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び足場ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を搬送しながら基板に対して処理を行うインライン式の装置が知られている。特許文献1には、インライン式の基板処理装置において、複数の処理ユニットが上下方向に並んで配置されること、及び、上下方向に並んだ処理ユニットを引き出してメンテナンスを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-93087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、処理ユニットを引き出してメンテナンスを行う際には踏み台等を用意する必要があり、メンテナンス時の作業効率が低下することがある。
【0005】
本発明は、メンテナンス時の作業効率を向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、
基板を搬送する搬送ユニットと、
成膜源を含み、前記搬送ユニットの下方の第1位置と、前記第1位置に対して横方向に変位した第2位置とに移動可能な成膜源ユニットと、を備え、
基板を搬送しながら基板に対して成膜を行うインライン式の成膜装置であって、
前記成膜源ユニットとともに移動可能であり、前記成膜源ユニットにアクセスするための足場を含む足場ユニットを備え、
前記足場は、前記成膜源ユニットが前記第2位置に位置した状態において、前記成膜源ユニットに収納された収納状態と前記成膜源ユニットから展開された展開状態とに変位可能である、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メンテナンス時の作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る成膜装置を模式的に示す正面図。
図2図1の成膜装置の側面図。
図3図1の成膜装置の内部構造を模式的に示す図。
図4】移動ユニットによる蒸着源ユニットの移動動作を説明する図。
図5】足場ユニットの概略を示す斜視図。
図6】足場ユニットの概略を示す斜視図。
図7】蒸着源ユニット及び足場ユニットの位置関係を模式的に示す平面図。
図8】(A)及び(B)は足場の構造を示す斜視図。
図9】操作部及び後述する検知ユニットの構成例を示す図
図10】成膜装置のハードウェアの構成例を示す図。
図11】(A)及び(B)は制御装置の制御例を示すフローチャートである。
図12】表示部の表示画面の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、各図において、X方向は基板の搬送方向、Y方向は基板の幅方向、Z方向は上下方向を示す。
【0011】
<第1実施形態>
<成膜装置の概要>
図1は、一実施形態に係る成膜装置1を模式的に示す正面図である。図2は、図1の成膜装置1の側面図である。図3は、図1の成膜装置1の内部構造を模式的に示す図である。
【0012】
成膜装置1は、基板を搬送しながら基板に対して蒸着を行うインライン式の成膜装置である。成膜装置1は、例えばスマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられ、複数台並んで配置されてその製造ラインを構成し得る。
【0013】
本実施形態では、成膜装置1には基板保持トレイ100に保持された基板が順次搬送され、成膜装置1は搬送されてきた基板に対して有機ELの蒸着を行う。基板は、例えば成膜装置1に搬送されるよりも上流の工程でマスクと重ね合わされた状態で基板保持トレイ100に保持されて成膜装置1に搬送される。したがって、成膜装置1ではマスクにより所定のパターンの蒸着物質の薄膜が基板上に形成される。成膜装置1で蒸着が行われる基板の材質としては、ガラス、樹脂、金属等を適宜選択可能であり、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板に成膜を行う例について説明するが、成膜方法の態様はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。
【0014】
成膜装置1は、搬送ユニット2と、蒸着源ユニット3と、防着板6と、移動ユニット7と、フレーム部101とを含む。
【0015】
フレーム部101は、成膜装置1の搬送ユニット2等の構成要素を支持可能に設けられる。図1の例では、フレーム部101は、柱及び梁を含み、搬送ユニット2及び真空ポンプ102を支持している。また、フレーム部101には、作業用のクレーンや作業者がメンテナンスを行うための通路等が設けられてもよい。
【0016】
搬送ユニット2は、基板を搬送する。本実施形態では、搬送ユニット2は、基板を保持した状態の基板保持トレイ100を搬送することにより、基板の搬送を行う。搬送ユニット2は、搬送チャンバ21と、搬送ローラ22と、を含む。
【0017】
搬送チャンバ21は、内部を真空に保持可能な箱型のチャンバである。搬送チャンバ21の内部空間210は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、搬送チャンバ21は真空ポンプ102に接続されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。
【0018】
搬送チャンバ21には、基板保持トレイ100が搬入される搬入開口211及び基板保持トレイ100が搬出される搬出開口212が形成されている。また、搬送チャンバ21の下部には、内部空間210と蒸着源チャンバ31の内部空間310とを連通するための連通開口213が形成されている。なお、搬入開口211及び搬出開口212には、内部空間210を真空に保持するために不図示のゲートバルブ等が設けられてもよい。
【0019】
搬送ローラ22は、基板を保持した基板保持トレイ100を搬送する。搬送ローラ22は、搬送チャンバ21の内部空間210に設けられる。搬送ローラ22は、例えば金属材料で形成された、回転可能に支持される円筒形状の部材である。搬送ローラ22は、例えば搬送チャンバ21の外部に設けられた不図示の電動モータにより駆動する。
【0020】
また、本実施形態では、搬送ユニット2の下部には、補強用のリブ23が設けられている。
【0021】
蒸着源ユニット3は、基板に対して蒸着物質を放出する蒸着源32(成膜源)を有するユニット(成膜源ユニット)である。本実施形態では、1つの搬送ユニット2に対して3つの蒸着源ユニット3が基板の搬送方向(X方向)に並んで配置されている。しかしながら、蒸着源ユニット3の数は適宜設定可能であり、2つ以下或いは4つ以上であってもよい。また、蒸着源ユニット3は、蒸着処理の実行時には搬送ユニット2の下方に位置し搬送ユニット2の下部に接続する。蒸着源ユニット3は、蒸着源チャンバ31と、蒸着源32と、を含む。
【0022】
蒸着源チャンバ31は、内部を真空に保持可能な箱型のチャンバである。蒸着源チャンバ31の内部空間310は、搬送チャンバ21の上部に設けられた連通開口311を介して搬送チャンバ21の内部空間210と連通可能である。内部空間310は、稼働時には内部空間210と同様、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。
【0023】
蒸着源32は、搬送ユニット2により搬送される基板に対する成膜のために蒸着物質を放出する。例えば、蒸着源32はY方向に並んで配置された複数のノズル(不図示)を含み、それぞれのノズルから蒸着物質が放出される。また例えば、蒸着源32は蒸着物質を貯留する貯留部及び貯留部に貯留された蒸着物質を加熱するヒータ(いずれも不図示)を含む。貯留部に貯留された蒸着物質がヒータによって加熱されて気化することにより、蒸着源32から蒸着物質が放出される。
【0024】
また、蒸着源ユニット3は、蒸着源32の不使用時に蒸着源32を遮蔽するシャッタ又は蒸着源32による蒸着物質の蒸発量を監視する蒸発レートモニタ等(いずれも不図示)を含んでもよい。
【0025】
なお、本実施形態では、詳しくは図4に示すように、蒸着源32は、移動ユニット7により移動可能に構成される。
【0026】
防着板6は、蒸着源32から放出された蒸着物質が蒸着源チャンバ31又は搬送チャンバ21の内壁等に付着することを防止する。例えば、防着板6は蒸着源チャンバ31に支持される。本実施形態では、防着板6は、蒸着源32を覆うように内部空間310から内部空間210に渡って位置するとともに、上部には開口が形成されている。このような構成により、蒸着物質の一部は開口を介して基板へと付着する一方、残りの蒸着物質は防着板6に付着する。このように、防着板6は、蒸着物質が基板に付着することを許容しつつ、蒸着物質が蒸着源チャンバ31又は搬送チャンバ21の内壁等に付着することを防止する。
【0027】
なお、本実施形態では、防着板6は、蒸着源チャンバ31に対して上下に相対移動可能に設けられる。より具体的には、防着板6は、上側部分61と下側部分62とを含み、上側部分61が蒸着源チャンバ31に対して上下に相対移動可能に設けられる。これにより、蒸着源ユニット3が移動ユニット7によって横方向に移動する際に搬送ユニット2と防着板6との干渉を回避するために必要な蒸着源ユニット3の下降量を低減することができる。
【0028】
なお、搬送チャンバ21又は蒸着源チャンバ31には、防着板6以外にも防着板が設けられてもよい。例えば、搬送チャンバ21の内部の天面又は側面等に防着板が設けられてもよい。
【0029】
移動ユニット7は、蒸着源ユニット3を搬送ユニット2に対して移動させるユニットである。本実施形態では、移動ユニット7は蒸着源ユニット3の下方に設けられ、蒸着源ユニット3を支持しつつ蒸着源ユニット3を上下方向(Z方向)又は横方向(Y方向)に移動させる。移動ユニット7は、横方向移動部71と昇降部72とを含む。
【0030】
横方向移動部71は、蒸着源ユニット3を横方向(Y方向)に移動させる。本実施形態では、横方向移動部71は蒸着源ユニット3を基板の搬送方向(X方向)に交差する基板の幅方向(Y方向)に移動させる。横方向移動部71は、床面に設けられたガイド部711と、ガイド部711沿って蒸着源ユニット3を移動させるための駆動部712とを含む。駆動部712としては周知の技術を適宜採用可能であるが、例えば、ガイド部711としてのレール上を走行可能な駆動輪を、モータ等により回転させてもよい。
【0031】
昇降部72は、蒸着源ユニット3を昇降させる。本実施形態では、昇降部72は、蒸着源ユニット3を上下方向(Z方向)に昇降させる。昇降部72は、蒸着源ユニット3を支持する蒸着源ユニット支持部721と、蒸着源ユニット支持部721を昇降させる駆動部722とを含む。駆動部722としては周知の技術を採用可能であるが、例えば電動シリンダ等により蒸着源ユニット支持部721を昇降させてもよい。
【0032】
図4は、移動ユニット7による蒸着源ユニット3の移動動作を説明する図である。
【0033】
状態ST1は、蒸着源ユニット3が搬送ユニット2と接続する接続位置POS1に位置している状態である。すなわち、状態ST1は、成膜装置1が基板に対する蒸着を行う際の状態である。状態ST1では、蒸着源ユニット3が搬送ユニット2の下方に位置し、搬送ユニット2の下部と蒸着源ユニット3の上部とが接続している。
【0034】
状態ST2は、蒸着源ユニット3が接続位置POS1からその下方の接続解除位置POS2に移動した状態である。蒸着源ユニット3は、移動ユニット7の昇降部72により接続位置POS1から接続解除位置POS2にーZ方向に移動可能である。
【0035】
状態ST3は、蒸着源ユニット3が接続解除位置POS2から横方向への移動が完了した状態である。状態ST3において、蒸着源ユニット3は、搬送ユニット2又は蒸着源ユニット3のメンテンスが実行されるメンテナンス位置POS3に位置している。例えば、搬送ユニット2のメンテンスを行う場合には、作業者は、蒸着源ユニット3が横方向に移動したことにより生じた搬送ユニット2の下方のスペースから搬送チャンバ21の内部にアクセスすることができる。また例えば、蒸着源ユニット3のメンテナンスを行う場合には、対象の蒸着源ユニット3をメンテナンス位置POS3まで移動させることにより、作業者は蒸着源チャンバ31の長手方向の側面から蒸着源チャンバ31の内部にアクセスすることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、移動ユニット7は、複数の蒸着源ユニット3に対してそれぞれ設けられる。したがって、本実施形態の成膜装置1は、複数の蒸着源ユニット3をそれぞれ独立に移動させることができる。なお、複数の移動ユニット7を同期させて、複数の蒸着源ユニット3をまとめて移動させてもよい。また、蒸着源ユニット3よりも少ない数の移動ユニット7が設けられ、1つの移動ユニット7で複数の蒸着源ユニット3を移動させてもよい。
【0037】
<足場ユニットの構成>
(概要)
成膜装置1は、足場ユニット5を含む。図5及び図6は足場ユニット5の概略を示す斜視図であり、図5は足場51が展開された状態を示し、図6は足場51が収納された状態を示している。
【0038】
足場ユニット5は、蒸着源ユニット3にアクセスするためのユニットである。足場ユニット5は、足場51を含み、蒸着源ユニット3がメンテナンス位置POS3に位置した状態において、蒸着源ユニット3の移動を妨げないように収納された足場51を展開可能である。足場ユニット5は、足場51を展開することにより、蒸着源ユニット3のメンテナンス時に、作業者による蒸着源チャンバ31の内部へのアクセスを容易にすることができる。本実施形態では、蒸着源チャンバ31の内部には、蒸着源チャンバ31の上部に設けられた連通開口311からアクセスする必要がある。したがって、作業者は床面に立った状態では蒸着源チャンバ31の内部にアクセスしにくいことがある。作業者が床面よりも上方に配置される足場51に立つことで、蒸着源チャンバ31の上部の連通開口311を介して作業者が容易に蒸着源チャンバ31の内部にアクセスすることができる。
【0039】
また、足場ユニット5は、蒸着源ユニット3の長手方向の両側面に沿って配置される。さらに言えば、足場ユニット5は、蒸着源ユニット3の長手方向の両側面の略全域に渡って配置される。足場ユニット5が蒸着源ユニット3の長手方向の側面に配置されることにより、作業者は、蒸着源チャンバ31内部の中央部分にまでより容易にアクセスすることができる。なお、足場ユニット5が蒸着源ユニット3の長手方向の一方の側面のみに配置される構成も採用可能である。
【0040】
本実施形態では、蒸着源ユニット3の接続解除位置POS2とメンテナンス位置POS3との間の移動は、蒸着源ユニット3の長手方向(Y方向)に沿った移動である。よって、足場ユニット5は、蒸着源ユニット3の、接続解除位置POS2とメンテナンス位置POS3との間の移動方向に平行な側面において、足場51を展開及び収納可能に設けられる。
【0041】
図7は、蒸着源ユニット3及び足場ユニット5の位置関係を模式的に示す平面図である。本実施形態では、蒸着源ユニット3が接続位置POS1又は接続解除位置POS2に位置する場合(図7の上下の蒸着源ユニット3参照)、足場ユニット5は収納された状態で設けられている。このため、蒸着源ユニット3が移動する場合に、足場ユニット5が隣接する蒸着源ユニット3と干渉することがない。また、蒸着源ユニット3がメンテナンス位置POS3にある場合(図7の中央の蒸着源ユニット3参照)には、足場ユニット5を展開することができる。このとき、足場ユニット5は、隣接する蒸着源ユニット3とX方向に一部重なるように配置されている。足場ユニット5は、メンテナンス位置POS3では隣接する蒸着源ユニット3とX方向に一部重なるような位置まで展開されることで足場51のスペースをX方向に広く確保することができる。また、別の観点から見ると、足場ユニット5は蒸着源ユニット3の移動時等には収納されるので、蒸着源ユニット3の側面に沿って足場51を設けつつも蒸着源ユニット3同士の距離を近づけることができ、基板の搬送方向(X方向)に成膜装置1が大型化することがない。
【0042】
(足場)
図8(A)及び図8(B)は、足場51の構造を示す斜視図であり、図8(A)は足場51が展開された状態を示し、図8(B)は足場が収納された状態を示している。なお、図8(A)及び図8(B)では、足場51の構造を説明するために必要な足場51の一部分を示している。
【0043】
足場51は、床板511と、床板511を展開可能に支持する支持部512と、を含む。また、本実施形態では、床板511とそれに対応する支持部512が複数設けられおり、隣接する2枚の床板511の間には、これらを連結するように連結プレート513が設けられている。
【0044】
支持部512の構造について具体的に説明する。蒸着源ユニット3の側面には、固定台5120が設けられる。固定台5120には、固定台側ヒンジ5121が設けられている。固定台側ヒンジ5121は、シャフト5122を回動可能に支持している。シャフト5122には、床板側ヒンジ5123が取り付けられている。床板側ヒンジ5123は、床板511の裏面から床板511を支持している。このような構成において、シャフト5122が回動すると、床板側ヒンジ5123を介して床板511が変位する。
【0045】
また、支持部512は、可動のブラケット5124と、リニアガイド5125とを含む。ブラケット5124は、床板511を支持する。ブラケット5124は、一端において床板511の裏面から床板511を支持するとともに、もう一方の端部においてリニアガイド5125により上下方向に移動可能に案内される。なお、本実施形態では、足場ユニット5は複数の床板511とそれらを連結する連結プレート513を含むが、単一の床板511によって、作業者の移動スペースが形成されてもよい。
【0046】
(操作部)
また、足場ユニット5は、足場51を収納状態と展開状態との間で変位するように操作可能な操作部52を含む。図9は、操作部52及び後述する検知ユニット103の構成例を示す図である。本実施形態では、操作部52は、作業者によって回転可能なハンドル521と、ハンドル521の回転をシャフト5122に伝達する伝達部と522を含む。作業者がハンドル521を操作すると、伝達部522を介してシャフト5122が回転することで床板511が変位する。
【0047】
なお、本実施形態では、作業者が操作部52を操作して手動で足場51を展開するが、操作部52は、例えば足場51の展開の指示を受け付けるスイッチ等であってもよい。そして、スイッチが押下されたことに従って、電動モータ等によってシャフト5122が回転し、床板511が変位してもよい。また、伝達部522は、ハンドル521に入力された回転を減速する減速機装置を含んでいてもよい。
【0048】
<検知ユニット>
成膜装置1は、足場51が展開されていることを検知する検知ユニット103を備える。本実施形態では、検知ユニット103は、光学式のセンサであり、足場51の展開時と収納時とで異なる検知結果を出力するように設けられる。一例として、検知ユニット103は、発光部と受光部とが一体に設けられ、足場51が収納されているときには発光部からの光が足場51に反射して、受光部に入るように構成されてもよい。なお、検知ユニット103の態様は限定されず、例えば検知ユニット103は足場51の回動をメカニカルに検知してもよい。
【0049】
<ハードウェア構成>
図10は、成膜装置1のハードウェアの構成例を示す図である。なお、図10は、本実施形態の特徴に関係する構成を中心に示した図であり一部の構成を省略して示している。
【0050】
制御装置14は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置14は、処理部141、記憶部142、入出力インタフェース(I/O)143、及び通信部144を備える。処理部141は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部142に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部142は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部141が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O143は、処理部141と成膜装置1の各構成要素との間の信号を送受信するインタフェースである。通信部144は通信回線を介して上位装置(ホストコンピュータ)H等と通信を行う通信デバイスであり、処理部141は通信部144を介して上位装置Hから情報を受信し、或いは、上位装置Hへ情報を送信する。なお、制御装置14や上位装置Hの全部又は一部がPLCやASIC、FPGAで構成されてもよい。
【0051】
本実施形態では、前述した検知ユニット103の他、表示部104と、入力ユニット105と、を含む。表示部104は、各種情報を表示する。本実施形態では、表示部104は、制御装置14からの指示に基づいて、移動ユニット7の移動が規制されていることを報知する画面を表示する。入力ユニット105は、例えば、ハードキー、タッチパネル、ポインティングデバイス等であり、作業者から、移動ユニット7による蒸着源ユニット3の移動等の指示を受け付ける。
【0052】
<制御例>
図11(A)及び図11(B)は、制御装置14の制御例を示すフローチャートである。これらのフローチャートは、例えば、処理部141が記憶部142のROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0053】
図11(A)は、足場51の状態に応じて移動ユニット7による蒸着源ユニット3の移動を制御するためのフローチャートである。図7に示したように、足場51が展開されている状態で蒸着源ユニット3をメンテナンス位置POS3から接続解除位置POS2に移動させようとすると、足場51が隣接する蒸着源ユニット3と干渉してしまうことがある。そこで、本実施形態では、以下の制御により、足場51が展開されている場合には移動ユニット7による移動を規制する。本フローチャートは、蒸着源ユニット3がメンテナンス位置POS3に位置している場合に実行される。
【0054】
ステップS101(以下、単にS101と表記する。他のステップでも同様とする。)で、処理部141は、センサ値を取得する。より具体的には、処理部141は、センサ値として検知ユニット103の検知結果を取得する。
【0055】
S102で、処理部141は、検知ユニット103の検知結果に基づき足場51が展開状態か否かを確認し、足場51が展開状態(Yes)であればS103に進み、足場51が収納状態(No)であればS104に進む。
【0056】
S103で、処理部141は、移動ユニット7による蒸着源ユニット3の移動を規制する。例えば、処理部141は、入力ユニット105が蒸着源ユニット3の移動の指示を受け付けても、移動ユニット7による蒸着源ユニット3の移動を実行しない。或いは、蒸着源ユニット3が手動で移動可能な場合には、蒸着源ユニット3の移動を物理的にロック可能なロック機構等を成膜装置1に設け、処理部141がロック機構を制御して蒸着源ユニット3の移動を規制してもよい。なお、本フローチャートが周期的に実行されており、前回以前の制御周期で既に蒸着源ユニット3の移動が規制されている場合には、処理部141はその規制状態を継続する。
【0057】
S104で、処理部141は、蒸着源ユニット3の移動の規制を解除する。例えば、処理部141は、規制解除後に入力ユニット105が蒸着源ユニット3の移動の指示を受け付けると、移動ユニット7による蒸着源ユニット3の移動を実行する。或いは、蒸着源ユニット3の移動をロック機構等により物理的に規制している場合には、ロック機構を制御して蒸着源ユニット3の移動の規制を解除してもよい。なお、本フローチャートが周期的に実行されており、前回以前の制御周期で既に蒸着源ユニット3の移動の規制が解除されている場合には、処理部141はその解除状態を継続する。
【0058】
本フローチャートによれば、足場51の状態に応じて蒸着源ユニット3の移動を規制するので、足場51が周囲の物体と接触等することがない。
【0059】
図11(B)は、蒸着源ユニット3の移動が規制されている場合にその旨を作業者に報知するためのフローチャートである。本フローチャートは、蒸着源ユニット3がメンテナンス位置POS3に位置している場合に実行される。
【0060】
S201で、処理部141は、入力ユニット105が蒸着源ユニット3の移動指示を受け付けたか否かを確認し、受け付けていればS202に進み、受け付けていなければフローチャートを終了する。
【0061】
S202はS101と同様である。S203で、処理部141は、足場51が収納状態か否かを確認し、足場51が収納状態(Yes)であればS204に進み、足場51が展開状態で(No)あればS205に進む。
【0062】
S204で、処理部141は、蒸着源ユニット3を移動させる。具体的には、移動ユニット7により、蒸着源ユニット3をメンテナンス位置POS3から接続解除位置POS2に移動させる。
【0063】
S205で、処理部141は、作業者に報知を行う。例えば、処理部141は、表示部104に蒸着源ユニット3の移動が規制されている旨の表示を行わせることにより、作業者に蒸着源ユニット3の移動の規制を報知する。図12は、表示部104の表示画面104aの構成例を示す図である。
【0064】
本フローチャートによれば、作業者が蒸着源ユニット3を移動させようとした場合において、蒸着源ユニット3の移動が規制されているときは、作業者に蒸着源ユニット3の移動が規制されていることが報知される。よって、蒸着源ユニット3の移動が規制されていることを作業者が認識することができる。なお、処理部141は、スピーカ等を用いて音声により蒸着源ユニット3の移動が規制されていることを作業者に報知してもよい。
【0065】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 成膜装置、2 搬送ユニット、3 蒸着源ユニット、5 足場ユニット、51 足場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12