(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 29/128 20060101AFI20221115BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20221115BHJP
C07C 68/065 20200101ALI20221115BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20221115BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20221115BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20221115BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20221115BHJP
B01J 27/18 20060101ALI20221115BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
C07C29/128
C07C31/20 A
C07C68/065
C07C69/96 Z
B01J37/04
B01J37/03 Z
B01J37/08
B01J27/18 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020502377
(86)(22)【出願日】2018-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2018069238
(87)【国際公開番号】W WO2019016126
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プライジング,ヘンリ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・ステーン,フレデリク・ヘンドリク
(72)【発明者】
【氏名】バポルチャン,ガロ・ガルビス
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ,ボルフガング・ディルク
(72)【発明者】
【氏名】レオンハルト,ジルケ・エバ・ザビーネ
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-247520(JP,A)
【文献】特開平08-198817(JP,A)
【文献】特開昭63-265805(JP,A)
【文献】特表2005-538170(JP,A)
【文献】特表2004-529895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/00
C07C 31/00
C07C 68/00
C07C 69/00
B01J 37/00
B01J 27/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下でアルキレンカーボネートとアルカノールとを反応させることを含む、アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートを調製するためのプロセスであって、前記触媒が、リン酸アルミニウムであ
り、プロセスの条件には、温度10~200℃及び圧力0.5~50baraが含まれる、プロセス。
【請求項2】
前記リン酸アルミニウム触媒が、非晶質である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記触媒の90%
超が、非晶質である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記リン酸アルミニウム触媒が、0.1:1~20:
1のモル(または原子)比[Al]/[P]を有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記リン酸アルミニウムが、合成されたリン酸アルミニウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記リン酸アルミニウム触媒が、リン酸アルミニウム触媒を調製するためのプロセスによって得られる触媒であり、前記プロセスが、
(a)0.1:1~20:1のモル比[Al]/[P]でアルミニウム含有塩をリン酸と混合することと、
(b)塩基を、ステップ(a)で得られた前記混合物と混合し、リン酸アルミニウム沈殿物を形成させることと、
(c)任意選択的に、前記沈殿物含有混合物を加熱することと、
(d)前記沈殿物を回収することと、を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記アルキレンカーボネートが、C
2~C
6アルキレンカーボネー
トである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記アルキレンカーボネートが、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネー
トである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルカノールが、C
1~C
4アルカノー
ルである、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アルカノールが、メタノール、エタノールまたはイソプロパノー
ルである、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレンカーボネートおよびアルカノールから、アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートを調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなプロセスは、例えば、アルキレンカーボネートのアルコール分解のための亜鉛担持触媒の使用を開示しているWO2004/024658に開示されている。例えば、WO2004/024658は、プロピレンカーボネートをメタノールと反応させて(プロピレンカーボネートのメタノリシス)、モノプロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)およびジメチルカーボネートを生成する際の、様々な亜鉛担持触媒の使用を開示している。使用される触媒のうちの1つはZn.Cr2O3触媒である。
【0003】
そのような亜鉛担持触媒と関連する潜在的な問題は、触媒から金属が浸出し、時間の経過に伴って触媒活性の低下が生じることである。さらに、金属クロムは、環境の観点から望ましい金属ではない場合がある。なおさらに、一般に、改善された活性および/または選択性を有する代替触媒が使用される、アルキレンカーボネートおよびアルカノールから、アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートを調製するためのプロセスを提供することが望ましい。本発明の目的は、そのようなプロセスを提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、リン酸アルミニウムを触媒として使用することにより、上記の目的を達成できることを見出した。
【0006】
したがって、本発明は、触媒の存在下でアルキレンカーボネートとアルカノールとを反応させることを含む、アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートを調製するためのプロセスに関し、そのプロセスでは、触媒はリン酸アルミニウムである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の文脈において、触媒または組成物が2つ以上の成分を含む場合、これらの成分は、100重量%を超えない総量で選択されるべきである。
【0008】
本発明のプロセスで使用される触媒またはそのような触媒を調製するためのプロセスは、1つ以上の様々な記載の成分またはステップを「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、または「含む(including)」という用語で説明され得るが、該1つ以上の様々な記載の成分またはステップ「から本質的になる」または該1つ以上の様々な記載の成分またはステップ「からなる」こともできる。
【0009】
本明細書内で、「実質的に無い」とは、問題の成分の検出可能な量が触媒または組成物中に存在しないことを意味している。
【0010】
本発明のプロセスでは、アルカンジオールおよびジアルキルカーボネートは、リン酸アルミニウムである触媒の存在下で、アルキレンカーボネートおよびアルカノールから調製される。本明細書では、リン酸アルミニウムはまた、「AlPO」と称される場合がある。本発明では、リン酸アルミニウムの無水形態またはリン酸アルミニウムの水和物を使用し得る。リン酸アルミニウムの水和物の好適な例は、AlPO4・2H2OおよびAlPO4・1.5H2Oである。好ましくは、リン酸アルミニウムの無水形態は、本発明の触媒として使用される。
【0011】
リン酸アルミニウム触媒は、不均一触媒である。さらに、好ましくは、本発明におけるリン酸アルミニウム触媒は、非晶質である。好ましくは、触媒の90%超、より好ましくは95%超、最も好ましくは99%超が、非晶質である。好ましくは、触媒の10%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満が、結晶性である。最も好ましくは、触媒は、実質的に結晶構造を含まない。
【0012】
本プロセスで使用されるAlPO触媒は、0.1:1~20:1、より好適には0.5:1~10:1、より好適には1:1~5:1、最も好適には1.5:1~3:1のモル(または原子)比[Al]/[P]を有し得る。好ましくは、該モル比[Al]/[P]は、最大20:1、より好ましくは最大15:1、より好ましくは最大10:1、より好ましくは最大7:1、より好ましくは最大5:1、より好ましくは最大4:1、より好ましくは最大3:1、最も好ましくは最大2.5:1である。好ましくは、該モル比[Al]/[P]は、少なくとも0.1:1、より好ましくは少なくとも0.3:1、より好ましくは少なくとも0.5:1、より好ましくは少なくとも0.8:1、より好ましくは少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも1.3:1、最も好ましくは少なくとも1.5:1である。
【0013】
本発明におけるリン酸アルミニウム触媒は、例えば20~400m2/g、好適には50~300m2/g、最も好適には100~250m2/gの広い範囲内で異なる表面積(BET)を有し得る。さらに、本プロセスで使用するAlPO触媒は、任意の形状および任意の寸法を有する触媒組成物の形態で提供してもよい。例えば、触媒は、例えば円筒形などの任意の形状を有し得る錠剤形態に成形されていてもよい。さらに、触媒は、押出物の形に成形されていてもよい。AlPO触媒を含む成形触媒組成物は、ある残留量(例えば、最大2重量%)の、成形時に使用される任意の成形助剤をさらに含み得る。
【0014】
本発明では、天然に存在するリン酸アルミニウムまたは合成されたリン酸アルミニウムを触媒として使用することができる。好ましくは、合成されたリン酸アルミニウムを使用する。本プロセスで使用される触媒を作製するために、リン酸アルミニウムを合成するための任意の既知の方法を適用することができる。例えば、該リン酸アルミニウムは、US5292701、EP0598464、WO1998/018720、WO2001/74485、WO2007/002744およびWO2009/136233に開示されている方法のいずれか一つに従って合成することができ、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本発明で使用される触媒は、リン酸アルミニウム触媒を調製するためのプロセスによって得られる触媒であってもよく、そのプロセスは、
(a)0.1:1~20:1のモル比[Al]/[P]でアルミニウム含有塩をリン酸と混合することと、
(b)塩基を、ステップ(a)で得られた混合物と混合し、リン酸アルミニウム沈殿物を形成させることと、
(c)任意選択的に、沈殿物含有混合物を加熱することと、
(d)沈殿物を回収することと、を含む。
【0016】
上記のステップ(a)では、アルミニウム含有塩は、任意の塩、例えば硝酸アルミニウムであり得る。該塩の水和物、例えばAl(NO3)3・9H2OまたはAl(NO3)3・6H2Oが使用され得る。好ましくは、該塩を含有する水溶液を使用する。さらに、好ましくは、リン酸を含有する水溶液を使用する。該アルミニウム塩含有水溶液および該リン酸含有水溶液は、該ステップ(a)において混合され得る。該ステップ(a)から得られる混合物におけるモル比[Al]/[P]は0.1:1~20:1である。最終的なAlPO触媒に関して上記したこの比の選好は、該ステップ(a)で得られるこの混合物にも当てはまる。さらに、該ステップ(a)から得られる混合物中のアルミニウム(Al3+)のモル濃度(単位モル/リットル)は、0.1~1.8モルであってよく、好ましくは0.2~1.3モル、より好ましくは0.2~0.9、より好ましくは0.3~0.7、最も好ましくは0.3~0.6である。なおさらに、該ステップ(a)から得られる混合物中のホスフェート(PO4
3-)のモル濃度(単位モル/リットル)は、0.05~1.2モルであってよく、好ましくは0.1~0.8モル、より好ましくは0.1~0.6、より好ましくは0.15~0.45、最も好ましくは0.15~0.35である。
【0017】
上記のステップ(b)では、ステップ(a)から得られた混合物と塩基を混合すると、リン酸アルミニウムの沈殿が開始する。塩基を、ステップ(a)から得られた混合物に加えてもよく、またはステップ(a)から得られた混合物を、塩基に加えてもよく、またはその両方であってもよい。好ましくは、塩基は、ステップ(a)から得られた混合物に添加する。好ましくは、塩基を含有する水溶液を使用する。前記塩基は、任意の塩基、例えばアンモニアであり得る。好ましくは、ステップ(b)で使用される塩基の量は、4~7の範囲、好適には4.5~6.5の範囲、より好適には5~6の範囲のpHを達成するのに十分である。
【0018】
上記の任意選択的なステップ(c)では、リン酸アルミニウム沈殿物含有混合物は、好適には20~100℃、より好適には20~95℃、最も好適には70~95℃の温度で加熱する。前記加熱は、1~10時間、好適には1~5時間、より好適には2~4時間にわたって行うことができる。ステップ(c)のこの処理は、「エージング」と称されることもある。
【0019】
上記ステップ(d)では、リン酸アルミニウム沈殿物を回収する。これは、例えば、沈殿物含有混合物を濾過することによって行うことができる。次いで、リン酸アルミニウム(沈殿物)を水で洗浄し、続いて、例えば50~250℃、好適には70~150℃の温度で乾燥させることができる。ステップ(d)で回収されたリン酸アルミニウム沈殿物は、任意の後の焼成ステップおよび/または成形ステップの前に、(容積基準の)メジアン細孔径を有することができ、それは、1~100ナノメートル(nm)、より好適には5~80nm、より好適には10~60nm、より好適には15~45nmの範囲にある。該細孔径は、水銀(Hg)圧入法によって測定することができる。
【0020】
さらに、回収されたリン酸アルミニウムは、200~1000℃、好適には400~800℃、より好適には500~700℃の温度で熱処理することができる。該熱処理は、不活性ガス雰囲気中または空気中、好ましくは空気中で行うことができる。前記加熱は、1~10時間、好適には1~5時間、より好適には2~4時間にわたって行うことができる。この熱処理は「焼成」と称されることがある。
【0021】
なおさらに、回収されたリン酸アルミニウムは、好ましくは初期の粉砕および/またはふるいの後に、任意の形態、例えば錠剤に成形してもよい。ふるい分けの際に使用されるメッシュサイズは、600~1800μm、より好適には1000~1400μmのいずれでもよい。該メッシュサイズを下回るサイズを有するふるい分けされた材料は、そのような成形に使用することができる。上記のように触媒を焼成する場合、そのような焼成は、そのような成形の前および/または後に、好ましくはその後に行うことができる。
【0022】
本プロセスで使用されるAlPO触媒の量は、広い範囲内で異なり得、所望の反応を触媒するのに十分であるべきである。
【0023】
本発明のプロセスは、アルキレンカーボネートをアルカノールと反応させることを含む。該アルキレンカーボネートは、C2~C6アルキレンカーボネート、より好適にはC2~C4アルキレンカーボネート、最も好適にはC2~C3アルキレンカーボネートであり得る。好ましくは、該アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートであり、最も好ましくはエチレンカーボネートである。アルキレンカーボネートの性質によって、アルカンジオール生成物の性質が決まる。例えば、エチレンカーボネートとアルカノールとの反応により、1,2-エタンジオール(アルカンジオール)であるモノエチレングリコールが生成する。さらに、該アルカノールは、C1~C4アルカノール、より好適にはC1~C3アルカノール、最も好適にはC1~C2アルカノールであり得る。好ましくは、該アルカノールは、1または2つのヒドロキシ基、最も好ましくは1つのヒドロキシ基を含有する。さらに、好ましくは、該アルカノールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール、より好ましくはメタノールまたはエタノール、最も好ましくはエタノールである。アルカノールの性質によって、ジアルキルカーボネート生成物の性質が決まる。例えば、アルキレンカーボネートとエタノールとの反応により、ジエチルカーボネート(ジアルキルカーボネート)が生成する。
【0024】
本プロセスの条件には、温度10~200℃、圧力0.5~50bara(5x104~5x106N/m2)が含まれる。好ましくは、特に並流運転では、該圧力は、1~20bar、より好ましくは1.5~20bar、最も好ましくは2~15barの範囲であり、前記温度は、30~200℃、より好ましくは40~170℃、最も好ましくは50~150℃の範囲である。
【0025】
さらに、好ましくは、本プロセスでは、アルキレンカーボネートよりも過剰のアルカノールを使用する。本プロセスにおけるアルカノール対アルキレンカーボネートのモル比は、好適には1.01:1~25:1、好ましくは2:1~20:1、より好ましくは3:1~15:1、最も好ましくは3:1~13:1である。
【0026】
なおさらに、本プロセスの重量空間速度(WHSV)は、好適には0.1~100kg/kgcat.hr(「kgcat」は触媒量を指している)、より好適には0.5~50kg/kgcat.hr、より好適には1~20kg/kgcat.hr、より好適には1~10kg/kgcat.hrの範囲であり得る。
【0027】
本プロセスは、US5359118に記載されているように、反応性蒸留塔で行ってもよい。これは、反応が向流で行われることを伴うであろう。蒸留塔は、バブルキャップ付きトレイ、シーブトレイ、またはラシヒリングが含まれる場合がある。当業者は、いくつかのタイプの触媒充填物およびいくつかのトレイ構成が可能であることを理解するであろう。好適なカラムは、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5thed.Vol.B4,pp 321 ff,1992に記載されている。
【0028】
アルキレンカーボネートは、一般にアルカノールよりも高い沸点を有する。エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートの場合、大気中の沸点は240℃を超える。したがって、一般に、アルキレンカーボネートは、反応蒸留塔の上部に供給され、アルカノールはそのような塔の下部に供給される。アルキレンカーボネートは下向きに流れ、アルカノールは上向きに流れることになる。
【0029】
好ましくは、本プロセスは並流様式で行われる。好適な操作方式は、気相の反応物部分と液相の反応物部分が触媒上に滴り落ちるトリクルフロー様式で反応を行う方法である。本発明のプロセスを操作するより好ましい方式は、液体のみを有する反応器における方式である。このタイプの好適な反応ゾーンは、反応がプラグフロー様式で行われるパイプ型反応ゾーンである。例えば、本プロセスは、1つのプラグフロー反応器で、または一連の2つ以上のプラグフロー反応器で、行ってもよい。これにより、反応を平衡に近づけることができるようになる。
【0030】
連続撹拌タンク反応器(CSTR)において本発明のプロセスを行うこともさらなる可能性としてある。後者の場合、CSTRからの流出物は、好ましくは、反応が平衡に近づくことができるように、プラグフロー反応器において後反応にかけられる。
【0031】
本発明のプロセスは、好ましくは連続的に行う。さらに、本プロセスでは、未変換のアルキレンカーボネートおよびアルカノールは好ましくはリサイクルされる。
【0032】
本プロセスにより生成された流出物中のアルカンジオールおよびジアルキルカーボネート生成物は、任意の既知の方式で回収することができる。例えば、それらは、WO2011/039113に開示されているプロセスを適用することにより回収することができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0034】
A)リン酸アルミニウム(AlPO)触媒の生成
リン酸アルミニウム(AlPO)触媒を次のように調製した。
【0035】
2モルのAl(NO3)3.9H2Oを3リットルの脱イオン水に溶解させた。激しく撹拌しながら、1モルのリン酸を含有する1リットルの溶液を、2.5リットル/時の供給量で、硝酸アルミニウム溶液に供給した。激しく撹拌しながらアンモニア水(10重量%)を2.5リットル/時の供給量で、上記溶液に供給することにより、リン酸アルミニウムの沈殿を開始させた。pH5.5に達したら、アンモニアの投入を停止した。次いで、バッチ全体を90℃まで加熱した。該温度が90℃に達したら、該撹拌を2~3時間続けた。該エージングステップ後に、沈殿物を濾過し、得られた濾過ケーキを水で洗浄し、次いで130℃で乾燥させた。
【0036】
該乾燥沈殿材料の表面積(BET)は220m2/gであった。さらに、該リン酸アルミニウム沈殿材料は、Hg圧入法により測定すると、28ナノメートル(nm)の(容積基準)メジアン細孔径を有していた。なおさらに、該リン酸アルミニウム沈殿物は非晶質であり、実質的に結晶構造を含んでいなかった。
【0037】
次いで、該沈殿物材料を粉砕し、1200μmのメッシュサイズを有するふるいを使用してふるい分けした。ふるい分けされた材料(1200μm未満のサイズを有する)を、錠剤化助剤であるグラファイトと混合し、円筒形の3mm×3mmの錠剤に成形した。調製した錠剤を空気中600℃で3時間焼成した。
【0038】
最終的なAlPO触媒では、モル/原子比[Al]/[P]は1.9:1であった。最終触媒の表面積(BET)は159m2/gであった。
【0039】
B)エチレンカーボネートとエタノールとの反応におけるリン酸アルミニウム(AlPO)触媒の使用
このように調製されたリン酸アルミニウム(AlPO)触媒を、エチレンカーボネート(eC)とエタノール(EtOH)との反応に使用し、それによりモノエチレングリコール(MEG)およびジエチルカーボネート(DEC)を生成させた。1つ以上の不所望の副生成物が形成される場合がある。比較的大量の副産物の存在は、所望のMEGおよびDEC生成物に対する選択性が比較的低いことを示している。該反応における中間物は、2-ヒドロキシエチルエチルカーボネート(HEC)であり、そこから1つ以上の該不所望の副生成物が形成される場合がある。1つの副生成物は2-エトキシエタノールである。他の副生成物は、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、および重質二量体(heavy dimer)カーボネート(2つのHEC分子の二量化から形成される)である。
【0040】
実施例1では、165gの触媒を、管状ステンレス鋼反応器(内径=32.5mm、長さ=2346mm)に装填した。反応器の残りは不活性ガラスビーズ(3mm)で満たした。反応器は、加熱コイルにより外部から130℃に加熱し、反応器内の温度は、触媒床内のサーモウェルにより測定した。
【0041】
反応器には、750g/hの供給量で、エタノールとエチレンカーボネート(エタノール:ECのモル比=5:1)を含有する供給容器から上向流モードで供給した。液体時空間速度(LHSV)は3.2l/lcat.hであり、重量時空間速度(WHSV)は4.6kg/kgcat.hであり、反応器圧力は10~12baraであった。反応器に関する転化率および選択率は、反応器の入口および出口のGC分析によって測定した。
【0042】
以下のように、反応器出口流を蒸留した。
a)トップ流は、軽質成分(EtOHおよびDEC)から構成され、ボトム流は重質成分で構成されていた。
b)軽質成分を含む該トップ流をさらに蒸留すると、反応器供給槽(reactor feed vessel)にリサイクルされる、EtOHを含むトップ流と、さらに蒸留されて純度99.9+重量%のDECを生成する、DECを含むボトム流と、が生じた。
c)重質成分を含む該ボトム流をさらに蒸留すると、15~17重量%のECとの共沸混合物中にMEGを含むトップ流と、ECおよびより重質の副生成物を含むボトム流と、が生じ、後者のボトム流は反応器供給槽に部分的にリサイクルした。
【0043】
反応器と蒸留塔とを含むユニットは、クローズドリサイクルにより連続モードで運転した。新鮮なエタノールおよびECを、反応器供給槽に投入した。その反応器供給槽は、未反応/リサイクルエタノールおよびECもまた、5:1のエタノール:ECモル比を維持するように含んでいた。
【0044】
定常運転では、実施例1のEC転化率は46%であった。所望の生成物DECおよびMEGへの、HECへの、および2-エトキシエタノールへの、ならびに他の副生成物、例えばDEG、TEGおよび二量体カーボネートへの、該転化率および選択率を、以下の表1に示す。
【0045】
実施例1では、反応器出口流へのAlPO触媒の浸出は観察されなかった。ICP分析(「ICP」は「誘導結合プラズマ」を表している)によって測定すると、反応器の流出液および蒸留塔のボトム流におけるアルミニウム(Al)濃度は、Al検出限界の10億分の50重量部(ppbw)を下回った。
【0046】
実施例2~6では、以下の表1に示すように、反応器内でのECとEtOHとの反応に関するいくつかのパラメーターを変化させた。
【表1】
【0047】
実施例6で使用されるZn.Cr2O3触媒(参照)は、BASFから市販されている(Zn-0312-T1/8-HT)。該触媒は、59重量%のZn、15重量%のCrを含有し、13m2/gの表面積を有していた。上記のWO2004/024658では、プロピレンカーボネートとメタノールとの反応におけるZn・Cr2O3触媒の使用が記載されている。
【0048】
実施例1~5(本発明)の結果を実施例6(参照)の結果と比較すると、本プロセスで使用されるリン酸アルミニウム(AlPO)触媒は、参照(Zn.Cr2O3)触媒を超える以下の利点を有するようである。
【0049】
まず、上記の表1に示すように、実施例6(参照)において、実施例3(発明)と同様のEC転化率が得られた。しかしながら、実施例6(参照)では、DECおよびMEGへの選択率は、有意に低く、55対60%(DEC)および52対58%(MEG)であった。実施例6(参照)におけるDECおよびMEGへの選択率は、実施例1~5(発明)のすべてと比較すると、より低くかった。
【0050】
さらに、実施例6(参照)では、2-エトキシエタノール副生成物への選択率は、わずか0.07~0.20mol%程度であった実施例1~5(発明)におけるAlPO触媒を使用したときよりも有意に高かった(0.40mol%)。
【0051】
さらに、実施例6(参照)では、他の副生成物、例えばDEG、TEG、および二量体カーボネートへの選択率もまた、わずか5~6mol%程度であった実施例1~5(発明)におけるAlPO触媒を使用したときよりも有意に高かった(10mol%)。
【0052】
なおさらに、AlPO触媒は、参照(Zn.Cr2O3)触媒よりも活性である。同様のEC転化率を得るために、実施例1~5(発明)では、必要な触媒は有意に少ない。これは、例えば、同様のEC転化率51~52%において、実施例3のLHSVおよびWHSVを、実施例6(参照)のより低いLHSVおよびWHSVと比較すると、認めることができる。
【0053】
全体として、実施例1~5(発明)のすべてを実施例6(参照)と比較すると、所望のDECおよびMEG生成物の生産性は有利に高い。
【0054】
最後に、実施例6(参照)で使用したZn.Cr2O3触媒(参照)では、亜鉛(Zn)の浸出が、反応器出口流において20~70ppbw程度のZnで観察された。一方、すでに上述したように、実施例1~5(発明)で使用したAlPO触媒では、反応器出口流へのアルミニウム(Al)の浸出は全く観察されなかった。