(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】携帯用パーソナルレスピレータおよびその使用
(51)【国際特許分類】
A62B 18/02 20060101AFI20221115BHJP
A62B 7/10 20060101ALI20221115BHJP
G06Q 50/00 20120101ALI20221115BHJP
【FI】
A62B18/02 Z
A62B7/10
G06Q50/00
(21)【出願番号】P 2020518472
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 AU2018050991
(87)【国際公開番号】W WO2019060947
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520103551
【氏名又は名称】クリーンスペース アイピー ピーティーワイ エルティディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィル,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】スノー,ジョン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ダミアン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】オラピンパティパット,チャユット
(72)【発明者】
【氏名】ラス-メイ,ミレン ジェームス
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157159(WO,A1)
【文献】特開2002-199777(JP,A)
【文献】特開平05-260786(JP,A)
【文献】特開2011-155802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246486(US,A1)
【文献】国際公開第2017/098329(WO,A1)
【文献】特表2015-516266(JP,A)
【文献】特表2017-527714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気フィルタ、センサレスDCモータを備える流れ発生装置、マスク、プロセッサ、
圧力センサ、電源、および第1の無線トランシーバを含むレスピレータであって、前記レスピレータは、周囲の空気を前記空気フィルタを通して引き込み、前記空気の圧力を高め、前記空気を前記マスクに大気より高い圧力で送達し、前記レスピレータの動作につい
てデータを収集し、前記データを前記第1の無線トランシーバで送信
し、前記プロセッサは、モータ速度、モータ電流、および電源電圧を監視する構成とされ、前記データの一部は前記圧力センサで収集される、レスピレータと、
プロセッサ、メモリ、第2の無線トランシーバおよび第1のネットワークトランシーバを備える中継電子デバイスであって、前記中継電子デバイスは、分離され、前記レスピレータから遠隔であり、前記中継電子デバイスが、前記第1の無線トランシーバにて送信された前記データを受信し、前記データを処理し、前記データを前記第1のネットワークトランシーバで再送する構成の、中継電子デバイスと、
第2のネットワークトランシーバ、プロセッサ、および実行された場合に、前記コンピュータに前記データを受信させ、前記データを処理させ、かつ前記レスピレータまたは前記レスピレータのユーザに関する少なくとも1つのレポートを生成させる命令を格納するメモリを備えるコンピュータと、
を備え、
前記空気フィルタを通る流量は、前記レポートを生成するために計算されるものであり、
前記空気フィルタを通る流量は、前記レスピレータの所定の特徴評価および定常力を用いて計算され、
前記定常力は、生のモータ力から加速力を減算することにより判定される、
レスピレータシステム。
【請求項2】
前記圧力センサは、前記空気の前記圧力を前記マスクで測定する構成
であり、
前記データは、前記モータ速度、前記モータ電流、マスク圧および前記電源電圧を含み、かつ
前記レスピレータは、前記データを所定の周波数で送信する構成とされた、
請求項1に記載のレスピレータシステム。
【請求項3】
前記所定の周波数は、100Hzである、
請求項2に記載のレスピレータ
システム。
【請求項4】
前記所定の周波数は、呼吸毎である、
請求項2に記載のレスピレータ
システム。
【請求項5】
前記
圧力センサは、前記空気の前記圧力を前記マスクで測定する構成
であり
、
前記データは、前記モータ速度、前記モータ電流、マスク圧および前記電源電圧を含み、かつ
前記レポートは
、前記フィルタを通る流量を含む、
請求項1に記載のレスピレータシステム。
【請求項6】
前記レスピレータは、フローセンサを含まない、
請求項5に記載のレスピレータシステム。
【請求項7】
前記
圧力センサは、前記空気の前記圧力を前記マスクで測定する構成
であり
、
前記データは、前記モータ速度、前記モータ電流、マスク圧および前記電源電圧を含み、かつ
前記レポートは
、前記フィルタを通る流量に基づく前記フィルタを交換する推奨を含む、
請求項1に記載のレスピレータシステム。
【請求項8】
前記
圧力センサは、前記空気の前記圧力を前記マスクで測定する構成
であり、
前記プロセッサは
、マスク圧
を監視する構成とされ、
前記データは、前記モータ速度、前記モータ電流、前記マスク圧および前記電源電圧を含み、かつ
前記レポートは、防護係数を含む、
請求項1に記載のレスピレータシステム。
【請求項9】
前記防護係数は、前記マスクの内側および外側の粒子の濃度比である、
請求項8に記載のレスピレータシステム。
【請求項10】
前記防護係数は、ほぼリアルタイムに生成される、
請求項8に記載のレスピレータシステム。
【請求項11】
前記防護係数は、中継デバイスに表示される、
請求項10に記載のレスピレータシステム。
【請求項12】
前記防護係数は、ユーザの各呼吸に対応して生成される、
請求項8に記載のレスピレータシステム。
【請求項13】
前記防護係数は、ユーザの呼吸速度より速い周波数で抽出された前記マスクでの前記空気の前記圧力を用いて計算される、
請求項8に記載のレスピレータシステム。
【請求項14】
前記周波数は、300m秒~500m秒以内で生じる流量の変化を区別するために十分速い、
請求項13に記載のレスピレータシステム。
【請求項15】
前記中継デバイスは、GPSを含み、前記中継デバイスがGPS情報を前記データに加えた後、前記データが再送される、
請求項1に記載のレスピレータシステム。
【請求項16】
前記レポートは、ユーザの
前記レスピレータの使用に関する順応性の兆候を含む、
請求項1に記載のレスピレータシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般の人々にとって、日々の生活における公害および病気からの保護は、防塵マスクや外科用マスクに大きく依存している。しかし、これらマスクは、この種のマスクを製造する際に使用するフィルタ材料が、高効率のフィルタリングに適していることが通常ラベル付けされている場合においても、マスクの周囲からの漏れにより、基本的な保護を単に提供するにすぎない。フィルタ媒体にて生じる余分な抵抗によって、ユーザは、普段マスクをしない場合よりも、かなり強く息をする必要がある。このように、誰にとっても、この種のマスクを快適に長期間使用することは、非常に困難である。さらに、マスクの内部に二酸化炭素や湿気が溜まり、それが状況をさらに悪くしがちである。加えて、フィルタ媒体の効率が良いほど、それによって生じる流れ抵抗も高くなり、これらのマスクの長期間の使用をさらに不快にさせる。こうした影響は、お年寄り、子供、ならびに喘息患者およびCOPD患者などの病人など、呼吸器系が弱い、または呼吸器系に障害がある人にとっては、特に明らかである。
【0002】
このため、防塵マスクおよび外科用マスクは、一般の人々に広く使用されており、それは主に、それらの使用が手軽であり、誰もがより効率の良い快適な装置があればそれを使いたいと望んだ場合に、入手可能で満足のいく電動ファン付呼吸用保護具(PAPR:powered air purifying respirator)による解決方法がないということによる。
【0003】
しかし、多くの日々の状況において、空気の質が非常に悪い可能性があることは明らかである。大都市では、自動車、バス、トラックおよびオートバイの密度が高く、過剰な毒性汚染物質を排出していることが多い。発電所は、公害の別の主要源である。砂嵐、いずれの種類の火事などの自然災害、または人災も、人々の呼吸器系に害を与える。これらの公害には、ほこり(懸濁粒子)、鉛、および二酸化窒素、亜硫酸ガス、一酸化炭素、オゾン、揮発性有機化合物、煙などの有害ガスが含まれる。これらの公害に長期間さらされることは、有害であることは明らかであり、生命を脅かす病気を引き起こす場合がある。SARS、鳥および豚インフルエンザといった最近の3つの病気に関連した人間に対する脅威もまた、汚染物質病または空気伝染病であり、人類にとって潜在的に致命的である。
【0004】
同様の水準の保護および快適さを提供し、さらに普通の人々、または軽工業/専門職のユーザによる使用を満足できる防護装置は、明らかに必要である。
【0005】
その全体が参照にて本明細書に組み入れられるVirrらによる米国特許出願公開第2012/0174922号明細書は、マスクおよび首側構成部品を含む呼吸装置を開示している。マスクは、少なくともユーザの口または鼻の孔をほぼ覆うように適合している。首側構成部品は、上記マスクに取り付けられ、ユーザの首の後ろをほぼ覆うように適合している。首側構成部品は、流れ発生装置を含んでおり、周りの環境から濾過されていない空気を受け取り、その濾過されていない空気を濾過して、濾過された空気を上記マスクにもたらす。呼吸装置は、従来の装置に比べて薄型の外観を有し、ユーザの首の周りに快適に位置するように適合している。
【0006】
その全体が参照にて本明細書に組み入れられるKaoらによる米国特許出願公開第2014/0373846号明細書は、汚染環境で一般に使用する電動ファン付き呼吸用保護具を開示している。電動ファン付き呼吸用保護具は、空気を大気から引き込むように配置された電動インペラ、フィルタ要素およびマスクを含んでおり、濾過された圧縮空気をユーザに供給する。電動ファン付き呼吸用保護具は、ユーザの頭部後ろにフィルタおよび空気を加圧するためのインペラを備える発電機ユニットを含んでおり、ユーザへの空気の送達を改善し、その質を改善する構成部品を含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国特許出願公開第2012/0174922号明細書および米国特許出願公開第2014/0373846号明細書に記載の装置は、当技術分野において著しい進歩を含んでいた。しかしながら、サイズの縮小、データ収集および収集したデータの分析などの分野でのさらなる進歩が望まれる。本願は、こうした望ましい進歩を開示し、かつ/または従来技術の不足を克服することを求めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例えば、レスピレータシステムは、空気フィルタ、センサレスDCモータを備える流れ発生装置、マスク、プロセッサ、センサ、電源、および第1の無線トランシーバを含むレスピレータであって、周囲の空気を空気フィルタを通して引き込み、空気の圧力を高め、周囲より高い圧力でマスクに空気を送達し、レスピレータの動作についてセンサでデータを収集し、そのデータを第1の無線トランシーバで伝送する構成とされたレスピレータと、プロセッサ、メモリ、第2の無線トランシーバおよび第1のネットワークトランシーバを備える中継電子デバイスであって、分離され、レスピレータから遠隔であり、第1の無線トランシーバにて伝送されたデータを受信し、そのデータを処理し、かつそのデータを第1のネットワークトランシーバで再送する構成とされた中継電子デバイスと、第2のネットワークトランシーバ、プロセッサ、および実行されると、コンピュータにデータを受信させ、そのデータを処理させ、かつレスピレータまたレスピレータのユーザに関する少なくとも1つのレポートを生成させる命令を格納するメモリを備えるコンピュータと、を備える。
【0009】
例えば、レスピレータシステムは、フィルタ、モータ、第1のデータトランシーバ、および第1のプロセッサであって、定常モータ力およびレスピレータの所定の特徴評価を用いてレスピレータを通る流量を判定し、第1のデータトランシーバに上記流量およびレスピレータ内の圧力に対応するデータを送信させる構成とされた第1のプロセッサを含むレスピレータと、第2のデータトランシーバおよび第2のプロセッサであって、第2のデータトランシーバによるデータの受信後、データを読み取り、そのデータを用いてレスピレータの状態を判定する構成とされた第2のプロセッサを含む電子デバイスと、を備える。
【0010】
例えば、フィルタおよびモータを含むレスピレータの状態を判定する方法は、定常モータ力およびレスピレータの所定の特徴評価を使用してレスピレータを通る流量を計算することと、その流量およびレスピレータ内の圧力に対応するデータを伝送することと、電子デバイスでそのデータを受信することと、そのデータおよび電子デバイスを用いてレスピレータの状態を判定することと、を含む。
【0011】
本開示の一部であり、例として、本技術の原理を示す添付の図面と共に取り組むと、本技術の他の態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【0013】
【
図2】本技術によるレスピレータのシステムの図である。
【0014】
【
図3A】電池に関連する様々な計算および動作を示す。
【
図3B】電池に関連する様々な計算および動作を示す。
【0015】
【
図4】レスピレータを通るフローを計算するアルゴリズムを示す。
【0016】
【
図5A】フィルタの状態を判定するアルゴリズムを示す。
【
図5B】フィルタの状態を判定するアルゴリズムを示す。
【0017】
【
図6】レスピレータにて除去される微粒子を判定するアルゴリズムを示す。
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明を、共通の特性および特徴を共有するいくつかの例に関して行う。任意の例のうちの1つ以上の特徴は、他の例の1つ以上の特徴と組み合わせてもよいことが理解されよう。加えて、任意の例のうちの任意の単一の特徴または特徴の組合せは、追加の例を構成してもよい。
【0020】
図1は、レスピレータ100、中継電子デバイス200、遠隔データ処理のための中継手段300、および生成されたレポート400を有するシステムの構造の一実施形態を示す。レスピレータ100は、中継電子デバイス200と、好ましくは無線通信で通信するが、有線通信で使用されてもよい。比較的電力消費が低く、広範囲で利用できるため、ブルートゥース(登録商標)などの比較的短い距離の無線通信が、レスピレータ100と中継電子デバイス200との間で望ましい可能性がある。中継電子デバイス200は、携帯電話またはドングルなどの何か他のデバイスでもよく、汎用コンピュータまたはレスピレータに取り付けることができる。携帯電話は、広範囲での利用可能性、(ダウンロード可能なアプリケーションを介しての)適応性、ならびにブルートゥース(登録商標)およびWi-Fiなどの複数の無線プロトコルを介し、かつセルラーネットワーク上で通信する能力のため有利である。ドングルまたは類似のデバイスは、携帯電話が利用できず、または特定の場所で望ましくない場合に有利である。例えば、職場のプライバシーまたはデータの安全性が十分重要である場合は、ドングルが携帯電話より望ましい場合がある。ドングルは、携帯電話より複雑でない可能性がある。例えば、ドングルは、通信およびメモリ機能を有するが、比較的限られた処理機能である。
【0021】
レスピレータ100は、データを中継電子デバイス200に送信する。中継電子デバイス200の使用により、レスピレータ100のコスト、複雑さ、重量および電力消費のうちの少なくとも1つを低減できる。より高い水準のコンピュータ処理、より大きいメモリおよびより長い距離のデータ伝送は、中継電子デバイス200の必須の態様になる。したがって、レスピレータ100は、機能するためレスピレータ100内に配置されていなければならないか、または中継電子デバイス200に含まれていないかのいずれかであり、データの取得に関係する構成部品および監視に関係する構成部品(センサ(例えば、圧力センサ)が両方の例である)を含むことのみを必要とする。または、携帯電話を、レスピレータ100のユーザがすでに所持していてもよい。中継電子デバイス200として携帯電話を利用すると、未活用のコンピューティングソースの効率的な使用が実現する場合があり、まだそばにないか、またはユーザが所持していない機器を必要としない。
【0022】
データが中継電子デバイス200に送信されると、少なくとも2つの選択肢が起こる。第1に、中継電子デバイス200は、遠隔データ処理のためインターネット経由でデータを生の形態で中継手段300に伝達してもよい。この筋書きでは、すべてのデータ処理は、中継手段300で生じる。第2に、中継電子デバイス200は、データの一部またはすべてを中継手段300に伝送する前に処理してもよい。もちろん、生データおよび加工データのそれぞれは、中継電子デバイス200から中継手段300に伝送できる。データが生の形態で送られるか、または送る前に処理されるか否かは、データ速度、電池の寿命、および加工データをすぐにユーザにフィードバックすることの有用性などの要因に基づいて決定される。
【0023】
中継手段300において、生データ302は、解析エンジン304にて処理される。解析エンジン304は、汎用コンピュータまたはサーバ上で動作するソフトウェアまたは他の論理を含む。解析エンジンにて処理された後、生データ302は、加工データ306に変換される。様々な種類のデータおよびそれが処理される方法は、以下でさらに論じる。データが処理されると、それは、レポート400を生成するために使用される。レポート400の生成は、生データ302または加工データ306とは分離された、ユーザ特定データまたは他のレスピレータからのデータなどの他のデータを利用してもよい。例えば、ユーザ特定データは、加工データと組み合わされた場合、ユーザの健康に関する予測または分析をするために使用できるユーザの生理学上のパラメータを含んでもよい。この種のデータは、特定の法律権限またはユーザにて機密情報308とみなされる場合があり、この種の機密情報308は、より高度な異なる水準の安全性を必要とする可能性がある。他のレスピレータからのデータは、保守、修理、予備部品の発注、資産の配分などのプランニングを提供するために組合せできる。この種のデータは、データを機密情報308ともさせる管理会社の情報でもよい。レポート400は、加工データ306の視覚化を実現でき、かつ/または加工データ306を閲覧するためのオンラインポータルでもよい。加工データ306の交換は、中継電子デバイス200と中継手段300との間でいずれの方向にも起こる。例えば、中継電子デバイスを用いて、データの一部またはすべてを処理する場合、解析エンジン304は、バイパスされてもよい。あるいは、一部の加工データ306は、ユーザが使用するため中継電子デバイス200に送り戻されてもよい。
【0024】
図2は、レスピレータ100の構成部品およびレスピレータ100と相互に作用する構成部品の実施形態を含むシステムの図である。レスピレータ100は、モータ102、モータ制御部104、通信モジュール106、圧力センサ108、ユーザインタフェース110、電池112(電源の一例)、充電/制御回路114、外部電源監視回路116、主制御ユニット118、電源管理回路120、保護回路122、およびユーザマスク124を含む。モータ102は、流れ発生装置のインペラを駆動するセンサレスDCモータが好ましい。
【0025】
システムは、1秒当たり約100回(100Hz)のマスク圧を測定できる。主制御ユニット118は、断続的に(例えば、100Hzの周波数で)マスク圧を通常約10mmH2Oの目標値に維持する目的から、モータ(およびしたがって、関連する流れ発生装置)の速度を調整できる。
【0026】
CPUは、センサレスDCモータを制御するため、モータ速度、モータ電流、電池電圧、およびレスピレータ100内の温度パラメータ(これも100Hz)を監視することが好ましい。
【0027】
レスピレータは、断続的に(100Hz)データの流れを通信モジュール106に書き込む。この流れは、モータ速度、モータ電流、マスク圧および電池電圧を含む。
【0028】
通信モジュール106は、中継電子デバイス200と通信するために使用されるブルートゥース(登録商標)を含んでもよい。レスピレータは、そのシリアルデータ列をブルートゥースにて中継電子デバイス200に書込みできる。また、呼吸毎に計算される簡易統計からなる低周波数のデータ列、例えば呼吸持続期間、最小および最大モータ速度、ならびにマスク圧が、所定の閾値未満に維持される長さなどの、様々なパラメータを書き込むこともできる。
【0029】
一部の実施形態において、通信は、レスピレータ100と中継電子デバイスとの間で双方向であってもよい。携帯電話上で実行されるアプリケーションを含み得る中継電子デバイス200は、レスピレータ100のメモリにデータを書き込みできてもよい。中継電子デバイス200はまた、例えばある一定のモータ速度またはマスク圧を維持、あるいは必要に応じて任意の他の行為を維持するように命令するなど、モータ102の制御を担うことができる。
【0030】
中継電子デバイス200は、特に携帯電話である場合、GPSからユーザの現在位置(緯度、経度および高さ)にアクセスできる。
【0031】
少なくとも一実施形態において、レスピレータ100は、(磁気センサなどの)センサを含み、フィルタがないとき、ならびにフィルタが変えられたおよび/または取り外された、および交換されたときを検出できる。レスピレータ内のセンサは、磁界の除去によりフィルタの除去および/または交換を示す、フィルタ内の1つまたは複数の磁石を読み取ることができる。
【0032】
上述の構成部品の1つ以上で、以下の計算の1つ以上を実施できる。
【0033】
図3Aおよび
図3Bは、電池112に関連する様々な計算および動作を示す。
【0034】
図3Aの502で、レスピレータ100の実施形態は、電池電圧を判定できる。504で、電池の残存容量の割合を判定できる。例えば、最大電池電圧が12.6Vであり、最小電圧が9.0Vである場合、現在の電圧は、その範囲のうちの割合として判定される。この計算は、レスピレータ100または中継手段300で行ってもよいが、特に、中継電子デバイス200が携帯電話である場合、中継電子デバイス200で計算されることが好ましい。506で、電池の残存割合を表示でき、それにより、携帯電話は、ディスプレイ内蔵であるため、中継電子デバイス200として好ましいことを示す。
【0035】
508で、異なるタイムスタンプでの以前の電池電圧の記録にアクセスできる。510で、以前の電池電圧およびタイムスタンプは、前の電池電圧読み取りおよびタイムスタンプと比較できる。電池電圧および時間の違いを比較することによって、残存実行時間の推測を生成できる。この計算は、レスピレータ100または中継手段300で行ってもよいが、特に、中継電子デバイス200が携帯電話である場合、中継電子デバイス200で計算されることが好ましい。512で、残存実行時間を表示でき、それにより、携帯電話は、ディスプレイ内蔵であるため、中継電子デバイス200として好ましいことを示す。
【0036】
図3Bは、
図3Aと同様であるが、いくつかの追加のステップを含む。追加のステップのみを記す。514で、中継電子デバイス200の実施形態は、電池低下の記録にアクセスできる。これは、アンペア時毎電圧の変化の形態で、または経時的電圧の低下もしくはサイクル毎電圧の低下の形態でもよい。516で、中継電子デバイス200は、不十分な電力によりレスピレータ100が最後に停止したときの記録された電池電圧を判定できる。518で、514および516で判定されたデータを比較して、現在の(例えば、mmA時の)電池容量の推測を生成できる。電池の残存容量対元の電池容量の割合であり得る電池の健康の判定が、実施され得る。この判定は、レスピレータ100または中継手段300で行ってもよいが、特に、中継電子デバイス200が携帯電話である場合、中継電子デバイス200で計算されることが好ましい。520で、電池の健康要因を表示でき、それにより、携帯電話は、ディスプレイ内蔵のため、中継電子デバイス200として好ましいことを示す。
【0037】
一部の実施形態において、レスピレータ100は、前の停止とは異なる電池電圧で不十分な電力により停止した場合に、電池のセル不整合があると判定される。この判定は、レスピレータ100または中継手段300で行ってもよいが、特に中継電子デバイス200が携帯電話である場合、中継電子デバイス200で計算されることが好ましい。522で、電池の健康要因を表示でき、それにより、携帯電話は、ディスプレイ内蔵であるため、中継電子デバイス200として好ましいことを示す。
【0038】
図4は、少なくとも吸入の間、レスピレータ100を介してフローを計算するアルゴリズムを示す。この計算は、すべてがレスピレータで実施される。524で、モータ速度が判定される。526で、電池の電圧が判定される。528で、モータの電流が判定される。530で、生のモータ電力が、電池電圧とモータ電流とを掛けることで計算される。532で、モータの制御パラメータが判定される。534で、定常モータ力が判定される。モータ制御パラメータから、モータの加速に使用される電力が計算され得る。モータ速度が一定の場合、加速力はゼロであろう。定常モータ力は、生のモータ力から加速力を引くことで判定される。536で、フローおよび圧力が判定される。フローは、所与の流れ発生装置に対する定常モータ力とモータ速度との関数である。生産中、各レスピレータは、流量計、流量制御弁、圧力メータおよびレスピレータのシリアル通信ポートに接続されたコンピュータから成る試験装置に取り付けられる。レスピレータは、その後、複数(例えば、100個)の速度フロー点(例えば、25000rpm-100リットル/分)を介して動作される。各速度フロー点で、マスク圧、モータ電流および電池電圧は、レスピレータ内のフィルタなしで記録される。このキャリブレーション工程の出力は、モータ速度およびモータ力へのフローに関連するデータ点または曲線の一群である。したがって、実行中の任意の時間で、流れ発生装置、よってレスピレータを通るフローは、瞬間のモータ速度およびモータ力の知識を用いて計算される。同じ計算はまた、レスピレータにて生成(例えば、デバイスの入口、すなわち直接フィルタの後ろからマスクの内側まで)され、現在の圧力の差異をもたらす。
【0039】
フローおよび圧力を判定するこの方法の実施形態を用いて、レスピレータ100の簡略化およびコスト低減が達成される。この方法により、センサレスDCモータの使用が可能になり、流量計を無くすことができる。流量計は、普通、システム内のある狭窄中の圧力変化を監視する高感度の圧力変換器を含んでいる。この種の流量計は、正確であるが追加の圧力変換器を必要とするため高価である。しかしながら、上述の方法の実施形態を用いると、圧力変換器および狭窄は必要なくてもよい。したがって、伝統的な意味での流量計を省略することができる。
【0040】
図5Aは、フィルタの状態を判定するアルゴリズムを示す。538で、レスピレータを通る流量が判定される。流量は、レスピレータ100によって判定される。540で、フィルタを通る圧力の低下がレスピレータ内で測定される。こうした測定は、レスピレータ100内の圧力変換器にて可能である。542で、現在のフィルタ詰まり係数が計算される。これは、538で判定された流量によって540で測定されたフィルタを通る圧力の低下を割ることで計算される。現在の詰まり係数の計量法の1つの例示的な単位は、mmH
2O/リットル/分である。544で、詰まったフィルタ係数は、中継電子デバイスまたは中継手段300内のメモリなどのメモリから読み取られる。詰まったフィルタ係数は、前もって判定されることが好ましく、研究所での試験に基づいて、または屋外での使用の結果として判定され得る。詰まったフィルタ係数は、現在の詰まり係数の計算法と同じ単位を有することが好ましい。546で、現在の詰まり係数は、詰まったフィルタ係数と比較されて、フィルタが詰まる相対量を判定する。548で、詰まり割合またはフィルタの抵抗が表示され、それにより、携帯電話は、ディスプレイ内蔵であるため、中継電子デバイス200として好ましいことを示す。
【0041】
542で判定された現在のフィルタ詰まり係数に基づいて、フィルタの残存耐用寿命の推測が判定される。550で、以前の現在フィルタ詰まり係数に、タイムスタンプと共にアクセスできる。552で、現在の値と前の値とを比較する。変化した耐用時間の割合および値の間の時間に基づいて、フィルタの残存使用時間の推測が判定される。554で、フィルタの残存時間を表示でき、それにより、携帯電話は、ディスプレイ内蔵であるため、中継電子デバイス200として好ましいことを示す。
【0042】
代替のフィルタの状態のアルゴリズムが、
図5Bに示される。このアルゴリズムは、フィルタ中の圧力低下が、測定する代わりに推測される
図5Aのアルゴリズムとは異なる。
【0043】
556で、モータ速度が判定される。558で、流量が判定される(例えば、524~536および関連する上記記述を参照)。560で、レスピレータの圧力(例えば、フィルタの下流からマスクへの圧力上昇)が判定される。562で、マスク圧が、レスピレータ100にて測定される。564で、フィルタの圧力低下が、レスピレータの圧力からマスク圧を引くことで推測される。542~554は、
図5Aと同じであり、その記載をここで繰り返さない。
【0044】
図6は、レスピレータ100にて除去される微粒子を判定するアルゴリズムを示す。566で、呼吸量が判定され、それは、10m秒毎の量、一呼吸毎の量、または任意の他の適切な呼吸の量の表示であってもよい。これは、
図4に関連して、上述したように、レスピレータにて判定され得る。568で、呼吸の総量が計算される。呼吸の総量は、経時的呼吸量の積分計算にて判定でき、所与の使用期間(一日など)に対し計算できる。570で、レスピレータ100の位置を判定する。位置は、ユーザにて入力され、または位置システム(GPSまたは携帯電話内にある他の位置システム)にて自動的に判定されてもよく、位置データは、中継電子デバイス200にて伝送された任意のデータに加えるか、またはそれと共に送信できる。位置データはまた、単独で伝送されてもよい。
【0045】
572で、レスピレータの位置の汚染濃度が判定される。これは、例えばデータベース、遠隔測定システムなどから公害データを取得する中継電子デバイス200または中継手段300にて判定される。574で、粒子の重量は、呼吸総量を汚染濃度に掛けることで計算される。576で、レスピレータ100で使用中のフィルタの種類が、フィルタの性能データと共に判定される。この情報は、例えば中継電子デバイス200に格納できる。もちろん、この情報はまた、レスピレータ100または中継手段300によって任意の他の適切な場所に格納されてもよい。578で、除去された粒子の重量が、フィルタの効率を粒子の重量に掛けることにより計算される。580で、所与の期間の間に除去された汚染物質の重量を表示する。これは、中継手段のデバイスで表示でき、それにより、携帯電話は、ディスプレイ内蔵であるため、中継電子デバイス200として、またはレポート400の一部として好ましいことを示す。このアルゴリズムは、呼吸量が、初期の研究所の試験から推論される従来の方法よりかなり正確である。言い換えると、正確さを使用中の呼吸の実測定により得ることができる。
【0046】
フィルタが詰まる割合、フィルタの残存時間、および除去された汚染物質の量は、それぞれレスピレータの状態例である。
【0047】
フィルタのモデル番号または部品番号および/またはフィルタの濾過係数は、フィルタに関連付けられた所定の値の例である。
【0048】
レスピレータの制御の種類(高速、超反応)は、物理的な変化がマスクに起こる速度を反映する周波数でパラメータの範囲(マスク圧、モータ速度、モータ電流、電池電圧など)を測定する。例えば、漏れは発達し、1秒の何分の1かの期間(ユーザの呼吸における生理学的に重要な変化は、吸入の300ms~500msの期間に亘って起こる流量の変化にて示される)に亘って再封止できる。したがって、レスピレータ100は、マスクからのフローパターンの変化(例えば、漏れ)またはユーザの呼吸パターン(例えば、排気、短い呼吸、フロー制限、肺の容量など)の検出も可能な速度で制御される。マスク圧の知識(および上述の他のパラメータのうちの1つ以上)を用いて、マスクへの漏れ(その結果、マスクの「フィット」または「防護係数」)を直接推測できる。
【0049】
例えば、
図6のアルゴリズムを用いて、濾過しない粒子量を判定できる。これは、例えばマスクの内側と外側との粒子の濃度比など、防護係数に関連付けできる。また、推測というこの方法を用いて、専用の器具を用いた一年に一度の試験の部分の代わりに連続的に(使用中すべての呼吸を)防護係数を評価できる。従来のシステムは、マスク内の真空の衰退に基づくマスクのフィットを評価する方法を用いることができる。本技術は、(1)試験目的で特別に生成された真空ではなく普通のマスク圧を測定する、(2)追加のアダプタまたは監視機器を必要としない、(3)圧力は連続的に高周波数で測定されるが、真空試験測定は1つの長い圧力衰退に基づく、という点が異なる。
【0050】
中継電子デバイス200ならびに/あるいは中継手段300の計算、通信および/または記憶機能を備え、データのフローは、レスピレータ100からクラウドまたは特定のコンピュータもしくはサーバに生じる。これにより、個々のレスピレータ100のデータ解析(および/または関連のユーザ)あるいはレスピレータの収集が可能になる。これにより、呼吸の速度と、毎分呼吸量と、呼吸量と、呼吸運動と、疲労水準および警告と、苦痛水準と、他の装置に対するベンチマークと、保守点検または機器の問題に対する警報と、フィルタの交換の警報および督促と、連続自動監視ならびに機器の性能の通知および保守点検通知と、推奨の範囲外で動作する装置に対する警報と、時間当たりもしくは経時的な使用にて選別された危険の量と、圧力と、温度と、電池の負荷および電池の使用と、電池の状態/寿命と、フィルタの付加と、フィルタの抵抗と、フィルタの性能と、モータの性能および故障と、防護係数の測定と、リアルタイムでのマスクおよびシステムのフィットと、ユーザ毎の使用および経時的な順応性と、携帯電話のアプリケーションを介したユーザへのリアルタイムのデータ(機器のチェック、保護、性能)と、経時的な負荷に基づくフィルタの推奨と、使用者の健康、機器の性能、スポーツなどの縦断的研究のデータと、健康診断、呼吸パターンおよび呼吸パソロジまたは深刻な呼吸の変化の予測と、フロー制限と、経時的な呼吸パターンの変化と、スポーツまたはフィットネスの性能および消費者の汚染などの計算を可能にする。また、レスピレータにデータを書き込む能力などの行為(例えば、最後のフィルタの負荷、フィルタの種類)が起こる。
【0051】
図7は、上述の方法を実施するために適切な、例示的なレスピレータ100の例であり、
図2に関連して説明された特徴を含む。ユーザのマスク124は、ユーザの鼻および口を覆う例示的なマスクである。ユーザの顔のいくらかを覆う他のマスクの種類が使用されてもよい。例えば、マスクは、鼻または口だけを覆ってもよい。あるいは、マスクは、ユーザの目を覆うことを含んでもよい。マスクは、コネクタ128で取り外し可能である。
【0052】
レスピレータ100の後部126は、一部の実施形態において、
図2の一点鎖線に対応する中に含まれるすべての構成部品を含むことができる。マスク124は、後部126から取り外し可能であるので、後部126は、機能的な意味でレスピレータ100であり、マスク124は、レスピレータと共に使用するユーザインタフェースである。
【0053】
レスピレータ100は、左アーム130および右アーム132を含む。一部の実施形態においては、一方のアームのみをマスク124へのフロー用に使用し、フローダクトを含み、他方のアームは、フロー用に使用されるアーム(フローダクトなし)とほぼ同じサイズである圧力感知線を備える。さらに小さい圧力感知線を使用してもよいが、少なくとも1つの実施形態においては、1つのみアームを有し、または他方よりさらに小さな1つのアームは、ユーザに良く受け入れられないが、フロー線と同じサイズの圧力感知線を有することは有利であることが分かっている。例えば、圧力センサは、後部126に配置でき、マスク124から比較的遠いが、まだほぼ瞬間的にマスク124の圧力および圧力変化を測定できる。マスク圧は、ファン出口近くの圧力での読み取りから推測するより、フローダクトなしで、事実上マスクで直接読み取れられる。マスクに圧力センサを含むと、ファン出口近くで圧力を読み取ることで圧力を推測する必要も回避できるが、これは、追加の電気接続など圧力変換器をマスク124に含むことに関連する複雑さと費用をもたす。
【0054】
本技術は、いくつかの実施例と共に記載されているが、本技術は、開示された例に制限されることなく、むしろ、本技術の精神および範囲内に含まれる様々な変更および同等の構成を網羅することが意図されると理解されたい。
【0055】
本明細書で、その内容にて明らかに別途定められている場合を除き、「備えている(comprising)」という用語は、「それだけからなる」などの用語の排他的な意味を持つことを意図せず、むしろ、「少なくとも含む」の意味で非排他的な意味を持つ。同じことが、対応する文法の変化に関して、「備える(comprise)」などの用語の他の形態にも適用される。
【0056】
本明細書に使用される選択された用語に対する他の定義は、本発明の詳細な説明に見ることができ、それを通して適用される。別段の定義がない限り、本明細書に使用されるすべての他の科学的および技術的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0057】
本書類になされるいずれの誓約も本発明の一部の実施形態に関連するものと理解されるべきであり、本発明についてのすべての実施形態に対して誓約がなされることを意図するものではない。本発明のすべての実施形態に適用すると思われる誓約がある場合、出願人/特許権者は、後にそれを記述から削除する権利を保持し、いずれの国の特許の受理またはその後の譲渡に対してもこれら誓約に依拠しない。