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  • 特許-2,3-ブタンジオールの連続製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】2,3-ブタンジオールの連続製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/145 20060101AFI20221115BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20221115BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
C07C29/145
C07C31/20 B
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020524738
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2018080627
(87)【国際公開番号】W WO2019092112
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】17382756.9
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517074303
【氏名又は名称】ファンダシオン テクナリア リサーチ アンド イノベイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オチョア ゴメス,ホセ ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ペレス ジル,スサーナ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス デ ゲレニュ ザバルテ,マリア デル マー
(72)【発明者】
【氏名】リンコン アロヨ,アイネス
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-523238(JP,A)
【文献】特開2015-227298(JP,A)
【文献】特表2016-504334(JP,A)
【文献】特表2016-529092(JP,A)
【文献】特開2007-105668(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044271(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B61/00
B01J 8/00
B01J19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各管の内径が1mm~6mmである1又は複数の管を含む1又は複数の固定床流通式管式反応器システムに充填された不均一系水素化触媒の存在下での、水素を用いた3-ヒドロキシブタノンの水素化による、2,3-ブタンジオールの連続製造方法であって、3-ヒドロキシブタノンと水素とを前記固定床流通式管式反応器システムに供給することを含む製造方法。
【請求項2】
各反応器システムにおける管の数が1~25,000である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記固定床流通式管式反応器システムが、同じ長さ及び同じ内径を有する2以上の平行管を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
各管の内径が1.5mm~4mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
各管の長さが5cm~5mである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
3-ヒドロキシブタノンを液体として前記反応器システムに供給することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
水、(C-C)-アルキルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒の溶液として3-ヒドロキシブタノンを前記反応器システムに供給することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記(C-C)-アルキルアルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、sec-ブタノール及びtert-ブタノールからなる群から選択される、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
反応温度が75℃~275℃である、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
反応圧力が0.1MPaから5MPaの水素である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
反応物質と前記触媒との間の接触時間が0.5秒~10秒である、請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
/3-ヒドロキシブタノンのモル比が1~5である、請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記触媒が、Raney Ni及び金属担持触媒からなる群から選択され、前記金属担持触媒の金属が、Ru、Pt、Pd及びRhからなる群から選択され、担体が炭素、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、アルミナ及びシリカからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記方法は複数の反応器システムで実行され、前記システムは並列又は直列のどちらにも配置される、請求項1~13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
直列に連結された複数の反応器システムで実行され、各反応器の圧力、温度及び接触時間の反応条件が同じであるか、または異なる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月9日出願の欧州特許出願第17382756.9号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、不均一系水素化触媒の存在下で、内径が1~6mmの固定床流通式多(管式)反応器システムを使用して、3-ヒドロキシブタノンを水素によって水素化することによる、2,3-ブタンジオールの連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2,3-ブタンジオール(これ以降2,3-BDOと名付ける)は、例えば不凍液として、脱水により製造されるメチルエチルケトン及び1,3-ブタジエンの原料として、さらにメタノール(22081kJ.kg-1)及びエタノール(29055kJ.kg-1)に匹敵する発熱量27198kJ.kg-1の液体燃料としての重要な潜在的産業用途を有する化学物質である。他の潜在的用途には、印刷インク、香水、燻蒸剤、加湿剤及び軟化剤、爆発物及び可塑剤の製造、並びに医薬品の担体としての製造が含まれる。また、ポリウレタン、ポリエステル及びポリカーボネートなどのポリマーの製造における鎖延長剤としても使用することができる。
【0004】
記載されている2,3-BDO製造方法のほとんどすべてが、多くの細菌種を使用した炭水化物の発酵に基づいている。しかし、これらの方法すべてに共通する主な欠点として、通常1~3g/L/hの非常に低い2,3-BDOの生産性及び、通常120g/L未満、より一般的には100g/L未満の最終培養液中の2,3-BDO滴定量の低さが挙げられる。後者の事実は、培養液の非常に複雑な化学組成と相まって、対応する経済的不利益を伴う2,3-BDOの分離及び精製のための面倒な方法につながる。
【0005】
2,3-BDOを得るための化学経路もいくつか存在する。近年、アセトイン(別名3-ヒドロキシブタノン)からの2,3-BDOの3つの製造方法が記載されている。
【0006】
例えば、特許文献1は、(電気化学的還元に適した導電率を提供する)無機塩の存在下で金属水素化触媒でコーティングされた多孔質カソードを使用した、水性媒体中でのアセトインの電気還元による2,3-BDOの製造を開示している。この方法は、分割セル及び非分割セルのどちらでも、室温において機能する。しかし、95%より高いアセトイン選択性を得るにはアセトイン変換を72%の不完全なものにしなければならない(特許文献1の実施例6を参照されたい)。したがって、不完全なアセトイン変換と無機塩の使用との組み合わせは、厄介な回収及び精製手順につながる。
【0007】
さらに、特許文献2は、ニッケル及び貴金属に基づく不均一系触媒を使用して、水性媒体中での3-ヒドロキシブタノン(すなわち、アセトイン)の水素化によって2,3-BDOを得る方法を開示している。この方法により、2MPaを超える水素圧力及び75℃を超える温度で、2,3-BDOを98%もの高い収率及び選択性で得ることができる。しかし、完全な変換には、2時間を超える反応時間が必要であり、2,3-BDOの生産性が低くなる。
【0008】
最後に、Duanらは、固定床流通式管式反応器において、Ni、Co、Cu及びAgなどの担持金属触媒を通すアセトイン及びジアセチルの気相接触水素化により、2,3-ブタンジオールを生産する方法を開示している。著者は反応器の寸法については開示していない。この方法では、150℃での0.1MPaのH流通においてNi/SiOを触媒として使用して、90.2%のアセトインの変換及び90.1%の2,3-ブタンジオールの収率を得ることができる。ただし、これらの結果は、16.4という高いH/アセトインモル比(化学量論比の16.4倍)において、0.5時間~1.67時間の接触時間で得られる。その結果、2,3-BDOの生産性は低く、2,3-BDOからアセトインを分離するためにさらに精製手順が必要である(非特許文献1)。
【0009】
したがって、当技術分野で公知のことがらから、アセトインからより高い収率及び選択性で2,3-BDOを得る高生産性方法を提供する必要性が依然として存在することが導き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2016097122
【文献】WO2016012634
【非特許文献】
【0011】
【文献】H.Duanら、「Vapor-phase hydrogenation of acetoin and diacetyl into2,3-butanediol over supported metal catalysts」Catalysis Communications、2017年99巻、53-56頁
【発明の概要】
【0012】
発明者らは、3-ヒドロキシブタノンの水素化による2,3-ブタンジオールの連続生産のための生産性の高い方法を提供している。特に、本発明者らは、驚くべきことに、内径1mm~6mmを有する1又は複数の固定床流通式(多)管式反応器システムを使用することにより、不均一系水素化触媒の存在下において、水素でのアセトインの液相又は気相水素化により、接触時間及び水素/アセトインのモル比がそれぞれ6秒および2.3という低さで、2,3-BDOが高変換率及び高収率で連続的に生成され、非常に高い生産性をもたらすことを見出した。
【0013】
本発明の方法において、一般的な操作モードは、水素化触媒が充填された1又は複数の固定床流通式(多)管式反応器の上部を通して、純粋な溶融アセトイン又は溶媒中のアセトイン溶液を水素流と共に連続的に供給することを含む。反応器を適切な温度で加熱して水素化を加速させる。反応器を出る流れを室温に冷却し、液体画分をHPLCによりアセトインと2,3-BDOの含有量について分析する。
【0014】
以下に提供される実施例に示されるように、本発明の方法により、接触時間10秒未満で95%より高いアセトイン変換及び100%の2,3-BDO選択性の両方を達成し、当技術分野における現状の方法より少なくとも70倍高い生産性をもたらすことが可能である。特に、本発明の方法は、内径1.75mmの固定床流通式管式反応器を使用して、250℃及び水素圧力5MPaで実施した場合、100%のアセトイン変換及び100%の2,3-BDO選択性を達成できる。
【0015】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、これらの驚くべき非常に良好な結果は、反応物質と触媒部位との間の密接な接触に有利な小さい直径の管式反応器によるものであり、それにより、反応物質と触媒との接触不足につながる不十分な物質移動及び優先的な流路の存在による反応制限を防ぐと考えられる。
【0016】
したがって、本発明の第1の態様は、1又は複数の固定床流通式管式反応器システムに充填された不均一系水素化触媒の存在下において、水素での3-ヒドロキシブタノンの水素化による、2,3-ブタンジオールの連続製造方法であって、各反応器システムが1又は複数の管を含み、各管の内径が1mm~6mmであり、本発明の方法は、3-ヒドロキシブタノンと水素とを固定床流通式管式反応器システムに連続的に供給することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】それぞれ長さ10cm、内径1.75mmの16本の管を含む固定床流通式多管式反応器システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願の本明細書において使用されるすべての用語は、特に明示されない限り、当技術分野において公知の普通の意味で理解されるべきである。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は以下に示すとおりであり、特に明示的に述べた定義がより広い定義を提供しない限り、本明細書および特許請求の範囲全体に一律に適用されることを意図している。
【0019】
本発明の目的のために、所与の任意の範囲は、その範囲の下限と上限の両方を含む。具体的に述べられていない限り、温度、圧力、時間などの所与の範囲は、近似値と見なされるべきである。
【0020】
上記のように、本発明は、1又は複数の固定床管式反応器システムを使用した、3-ヒドロキシブタノンの水素化により、2,3-ブタンジオールを連続的に生産するためのより生産性の高い方法に関する。
【0021】
「2,3-BDO」又は「2,3-ブタンジオール」という用語は同じ意味を有し、互換的に使用される。
【0022】
「アセトイン」又は「3-ヒドロキシブタノン」という用語は同じ意味を有し、互換的に使用される。
【0023】
「分子水素」、「水素」又は「H」という用語は同じ意味を有し、互換的に使用される。
【0024】
「アセトイン変換」という用語は、アセトインの初期量に対する別の化合物に転化されたアセトインの量を指す。連続法の特定の事例では、アセトインの初期量に対する、反応器を1回通過させた後に別の化合物に転化されたアセトインの量を指す。本発明の文脈において、変換はパーセンテージとして表され、式(1)によって計算することができる:
C(%)=(N-Nout)×100/N (1)
式中、Cはアセトイン変換であり、Nは反応器システムへ供給されるアセトインのモル/hであり、Noutは反応器システムの出口でのアセトインのモル/hである。
【0025】
「2,3-BDO形成への選択性」という用語は、変換されるアセトインのモルに対して得られた2,3-BDOのモル数を指す。本発明の文脈において、選択性はパーセンテージとして表され、式(2)によって計算することができる:
S(%)=NBDO×100/(N-Nout) (2)
式中、Sは2,3-BDOの選択性であり、NBDOは反応器システムの出口での2,3-BDOのモル/h、N及びNoutは先に定義したとおりである。
【0026】
反応器システムの管の数は、この方法の所望の生産性に依存する。一実施形態では、本方法は、1~25,000の管を含む1又は複数の固定床流通式管式反応器システムで実行される。一実施形態では、本方法は、同じ長さと同じ内径を有する2以上の平行な管を含む1又は複数の固定床流通式管式反応器システムで実行され、この管を通して、供給量が均等に分配される。一実施形態では、各管の内径は1.5mm~4mmである。一実施形態では、各管の長さは5cm~5m、好ましくは、8cm~1mである。一実施形態では、本方法は、複数の反応器システムで実行され、前記システムは、並列又は直列のどちらにも配置される。一実施形態では、本方法は、直列に連結された複数の反応器システムで実行され、各反応器の圧力、温度及び接触時間の反応条件は同じである。別の実施形態では、本方法は、直列に連結された複数の反応器システムで実行され、各反応器の圧力、温度及び接触時間の反応条件は異なる。具体例として、それぞれ長さ10cm及び内径1.75mmの16本の管を含む管式反応器システムを図1に示す。本発明の実施例2の実験条件を使用して、手の中に収まる実験室サイズのこの小さな反応器システムは、0.942kg/日の2,3-BDOを生成することができる。このタイプの反応器システムを100個並列に配置すると1600本の管を提供し、94.2kg/日、すなわち8000h/年作動して31.4トン/年、生産することになる。3.5m×0.15m×0.05cm、すなわち0.02625mの小さな部屋には100基の反応器システムを収容することができる。1600本の管の総有効容積は3.85.10-4であり、生産性は10.20トン/h/mである。
【0027】
本発明の方法は、下記のパーセント以上のアセトイン変換をもたらすことができる:90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%及び100%。さらに、本発明の方法は、下記のパーセンテージ以上の2,3-BDO形成への選択性をもたらすことができる:95%、96%、97%、98%、99%及び100%。
【0028】
一実施形態では、本方法は、純粋な溶融3-ヒドロキシブタノンを反応器システムに供給することを含む。一実施形態では、本方法は、水、(C-C)-アルキルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒の溶液として、3-ヒドロキシブタノンを反応器システムに供給することを含む。一実施形態では、本方法は、水溶液として3-ヒドロキシブタノンを反応器システムに供給することを含む。一実施形態では、本方法は、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、sec-ブタノール及びtert-ブタノールからなる群から選択される(C-C)-アルキルアルコールの溶液として3-ヒドロキシブタノンを反応器システムに供給することを含む。
【0029】
一実施形態では、本方法は、75℃~275℃、好ましくは100℃~250℃の反応温度で実行される。
【0030】
一実施形態では、本方法は、0.1MPa~5MPaの水素、好ましくは0.1MPaから2.5MPaの水素の反応圧力で実行される。
【0031】
一実施形態では、本方法は、反応物質と触媒との間の接触時間が、0.5秒~10秒、好ましくは1秒~8秒で実行される。
【0032】
一実施形態では、本方法は、H/アセトインのモル比が1~5、好ましくは1.5~3で実行される。
【0033】
触媒は、ケトンをアルコールに還元するために典型的に使用される水素化触媒のいずれか1つであってよい。水素化触媒の非限定的な例は、Raney Ni及び金属担持触媒からなる群から選択され、金属担持触媒の金属は、Ru、Pt、Pd及びRhからなる群から選択され、担体は、炭素、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、アルミナ及びシリカからなる群から選択される。一実施形態では、触媒は、金属担持触媒であって、金属がRuであり、担体が炭素、シリカ又はアルミナである金属担持触媒である。
【0034】
説明及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という単語及びその変形は、他の技術的特徴、添加物、構成要素、又はステップを除外することを意図していない。さらに、「含む」という単語は、「からなる(consisting of)」の場合を包含する。本発明のさらなる目的、利点及び特徴は、説明を検討することにより当業者に明らかになるか、又は本発明の実施により習得することができる。以下の実施例及び図面は、例示として提供され、それらは本発明を限定する意図のものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載される特定の及び好ましい実施形態のすべての可能な組み合わせを含む。
【実施例
【0035】
実施例1~5
上記の一般的な操作モードに従って、アセトイン(純度≧98%)の水溶液である50wt%水溶液を、Ru充填が5wt%のRu担持炭素(Ru(5%)/C)の市販の触媒を完全に充填した長さ10cmの管からなる固定床流通式(多)管式反応器システムに、表1に示す実験条件下で供給した。触媒のかさ密度は0.50g.mL-1であった。管の内径及び結果も表1に示す。変換及び選択性は、式(1)及び(2)に従って計算し、その式中のNBDO及びNoutは、HPLCによって測定した、反応器システムの出口での凝縮画分液のアセトイン及び2,3-BDOの濃度から計算した。
【0036】
表1からわかるように、すべての事例で100%の選択性が達成され、変換は接触時間5.2秒以下で90%~99%の範囲である。
【0037】
非常に優れた2,3-BDO生産性が得られている。例えば、実施例4の実験条件下で2.89トン/h/mの2,3-BDO生産性が達成されている。WO2016012634A1(実施例37)による方法を使用すると、125℃において74.5分の1である0.04トン/h/mの2,3-BDO生産性が得られ、水素圧力が10倍高い5MPaであるという不利益がある。Duanらによって記載された方法に使用された管式反応器の寸法についてのデータは示されていない。しかし、使用された0.5hという比較的短い接触時間及びこれらの研究者によって150℃で報告された2,3-BDO収率の最高値(90.1%)を考慮すると、2,3-BDO生産性は本発明の実施例3で得られたものの562.5分の1であると推定することができる。本発明の方法は、当技術分野の現状の方法と比較して驚くほど大きな生産性を有する。
【0038】
【0039】
実施例6
この実施例は、本発明の方法が0.1MPaという低い水素圧力で効果的に実行できることを示している。上記の一般的な操作モードに従って、50wt%のアセトイン水溶液を、直列に配置された長さ10cmの6本の管からなる反応器システムに供給した。各管の内径は1.75mmであった。すべての管を150℃において稼働し、前述の実施例と同じ触媒を完全に充填した。供給流量は管の断面に対して1.047トン/h/mであった。H/アセトインモル比は2.3、水素圧力は0.1MPaであった。結果を表2に示す。変換及び選択性は、実施例1~5に記載のようにHPLCにより測定した。表からわかるように、総接触時間9秒で96.6%の変換及び100%の選択性が達成されている。
【0040】
当業者であれば、管の数を増やすことによって、最初の管から最後の管まで接触時間を連続的に増加することによって、若しくは各管の温度を同じように上昇させることによって、又は両方の組み合わせによって100%の変換を達成できることが明らかである。これらの実施例で使用されるよりも少ない数の管で、最初の管から最後の管まで各管において接触時間及び/又は温度を連続的に増加させることによって、100%の変換を達成できることも当業者には明らかである。
【0041】
【0042】
本明細書において引用された参考文献
1.PCT出願WO2016097122
2.PCT出願WO2016012634
3.H.Duanら、「Vapor-phase hydrogenation of acetoin and diacetyl into2,3-butanediol over supported metal catalysts」Catalysis Communications、2017年99巻、53-56頁)。
図1