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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】電池電気推進船給電システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/17 20060101AFI20221115BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20221115BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20221115BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20221115BHJP
【FI】
B63H21/17
B63B35/00 T
B63B49/00 Z
B63J99/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020540026
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005685
(87)【国際公開番号】W WO2020044601
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】P 2018163970
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 達也
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 達也
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204587242(CN,U)
【文献】国際公開第2016/121089(WO,A1)
【文献】特開2016-006400(JP,A)
【文献】中国実用新案第204587243(CN,U)
【文献】中国実用新案第204239131(CN,U)
【文献】特開2016-100970(JP,A)
【文献】特開2013-5593(JP,A)
【文献】特開2006-148257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/17
B63B 35/00
B63B 49/00
B63J 99/00
H02J 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電池電気推進船と、
前記電池電気推進船の蓄電池を充電可能な少なくとも1つの洋上給電設備と、
を備え
前記洋上給電設備は、液化ガスを用いて発電する洋上発電船であり、
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、
前記複数の電池電気推進船および前記洋上発電船と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データに基づいて、前記複数の電池電気推進船への給電に最適な前記洋上発電船の待機位置を決定し、決定した待機位置を前記洋上発電船に送信し、
前記管理装置は、前記洋上発電船の待機位置を、前記複数の電池電気推進船の運航データならびに、蓄電池、プロペラ駆動モータおよびプロペラの作動状態データに対する機械学習結果に基づいて決定する、電池電気推進船給電システム。
【請求項2】
少なくとも1つの電池電気推進船と、
前記電池電気推進船の蓄電池を充電可能な少なくとも1つの洋上給電設備と、
を備え、
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、
前記少なくとも1つの洋上給電設備は、複数の洋上給電設備を含み、
前記複数の電池電気推進船と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、前記複数の電池電気推進船のそれぞれに対し、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データに基づいて、充電タイミングおよび充電を受けるべき洋上給電設備の特定を含む充電スケジュールを決定し、決定した充電スケジュールを対応する電池電気推進船へ送信し、
前記管理装置は、前記複数の電池電気推進船のそれぞれの充電スケジュールを、前記複数の電池電気推進船の運航データならびに、蓄電池、プロペラ駆動モータおよびプロペラの作動状態データに対する機械学習結果に基づいて決定する、電池電気推進船給電システム
【請求項3】
少なくとも1つの電池電気推進船と、
前記電池電気推進船の蓄電池を充電可能な少なくとも1つの洋上給電設備と、
を備え、
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、
前記複数の電池電気推進船と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データに基づいて、前記複数の電池電気推進船に対する配船計画を行って前記複数の電池電気推進船のそれぞれに対するオペレーションを含む航行スケジュールを決定し、決定した航行スケジュールを対応する電池電気推進船へ送信し、
前記管理装置は、前記複数の電池電気推進船のそれぞれの航行スケジュールを、前記複数の電池電気推進船の運航データならびに、蓄電池、プロペラ駆動モータおよびプロペラの作動状態データに対する機械学習結果に基づいて決定する、電池電気推進船給電システ
【請求項4】
前記洋上給電設備は、液化ガスを用いて発電する洋上発電船である、請求項2または3に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項5】
前記洋上発電船へは、陸上の液化ガス供給装置から液化ガスが供給される、請求項1又は4に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電池電気推進船の蓄電池を充電可能な少なくとも1つの陸上給電設備を備える、請求項1乃至5の何れか一項に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの陸上給電設備および前記洋上給電設備と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、前記陸上給電設備における所定時間ごとの電力価格データを取得し、前記少なくとも1つの電池電気推進船から受信する運航データ及び前記電力価格データに基づいて、前記少なくとも1つの電池電気推進船が前記洋上給電設備および前記陸上給電設備のうちのいずれの給電設備で給電を受けることを優先するべきかを決定する、請求項に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備における給電価格よりも低い場合には、前記洋上給電設備および前記陸上給電設備のうちの前記陸上給電設備で給電を受けることを優先するような給電指令を生成し、生成した給電指令を前記少なくとも1つの電池電気推進船に送信し、
前記陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備の給電価格よりも高い場合には、前記洋上給電設備および前記陸上給電設備のうちの前記洋上給電設備で給電を受けることを優先するような給電指令を生成し、生成した給電指令を前記少なくとも1つの電池電気推進船に送信する、請求項に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項9】
前記洋上給電設備は、余剰電力を前記陸上給電設備に給電可能に構成された洋上発電船であって、
前記管理装置は、前記陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備における給電価格よりも高い場合には、前記少なくとも1つの電池電気推進船から受信する運航データに基づいて、前記少なくとも1つの電池電気推進船への給電に最適な前記洋上発電船の待機位置を決定し、決定した待機位置を前記洋上発電船に送信し、
前記管理装置は、前記洋上発電船が前記少なくとも1つの電池電気推進船への給電後、余剰電力を有する場合には、当該余剰電力を前記陸上給電設備に売電するような売電指令を前記洋上発電船に送信する、請求項7又は8に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、
前記複数の電池電気推進船は、余剰電力を前記陸上給電設備に給電可能に構成され、
前記管理装置は、前記陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備における給電価格よりも高い場合には、前記複数の電池電気推進船のうちの余剰電力を有する電池電気推進船に対し、当該余剰電力を前記陸上給電設備に売電するような売電指令を送信する、請求項に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、
前記少なくとも1つの洋上給電設備は、複数の洋上給電設備を含み、
前記複数の電池電気推進船と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、前記陸上給電設備における所定時間ごとの電力価格データを取得し、前記複数の電池電気推進船のそれぞれに対し、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データおよび前記電力価格データに基づいて、充電タイミングおよび充電を受けるべき洋上給電設備又は前記陸上給電設備の特定を含む充電スケジュールを決定し、決定した充電スケジュールを対応する電池電気推進船へ送信する、請求項6乃至10の何れか一項に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、
前記複数の電池電気推進船と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、前記陸上給電設備における所定時間ごとの電力価格データを取得し、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データおよび前記電力価格データに基づいて、前記複数の電池電気推進船に対する配船計画を行って前記複数の電池電気推進船のそれぞれに対するオペレーションを含む航行スケジュールを決定し、決定した航行スケジュールを対応する電池電気推進船へ送信する、請求項6乃至11の何れか一項に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの洋上給電設備は、前記陸上給電設備から給電を受けることが可能な構成を備える、請求項6乃至12の何れか一項に記載の電池電気推進船給電システム。
【請求項14】
前記洋上給電設備は、発電機を備えた洋上発電船であって、
前記少なくとも1つの陸上給電設備および前記洋上発電船と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、前記陸上給電設備における所定時間ごとの電力価格データを取得し、前記洋上発電船から受信する運航データ及び前記電力価格データに基づいて、前記洋上発電船の発電電力が不足している場合には、前記洋上発電船で発電をするか、あるいは、前記陸上給電設備から給電を受けるかのいずれかを決定する、請求項13に記載の電池電気推進船給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池電気推進船給電システムに関する。また、本発明は、その電池電気推進船給電システムに好適に用いられる洋上給電設備および電池電気推進船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電池電気推進船が知られている(例えば、特許文献1参照)。電池電気推進船は、船舶内で推進電力を発電せずに蓄電池に蓄電した電力によって推進する船舶である。このような電池電気推進船は、内燃機関を用いた機械推進式の船舶のように燃焼ガスを排出することがないため、環境への影響が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-14222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、電池電気推進船へ給電する際は、電池電気推進船が岸壁に係留され、陸上の給電装置によって電池電気推進船の充電池が充電されていた。
【0005】
そこで、本発明は、電池電気推進船を岸壁に係留せずに電池電気推進船の充電池を充電することができる電池電気推進船給電システムを提供することを目的とする。また、本発明は、その電池電気推進船給電システムに好適に用いられる洋上給電設備および電池電気推進船を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の電池電気推進船給電システムは、少なくとも1つの電池電気推進船と、前記電池電気推進船の蓄電池を充電可能な少なくとも1つの洋上給電設備と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、電池電気推進船を岸壁に係留することなく、洋上で電池電気推進船の充電池を充電することができる。
【0008】
前記洋上給電設備は、液化ガスを用いて発電する洋上発電船であってもよい。この構成によれば、状況に応じて洋上給電設備の位置を変更することができる。
【0009】
前記洋上発電船へは、陸上の液化ガス供給装置から液化ガスが供給されてもよい。この構成によれば、陸上の液化ガス供給装置には一般的に液化ガス貯留用の大容量のタンクが複数装備されるので、洋上発電船へ液化ガスを必要なときに安定的に供給することができる。
【0010】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、上記の電池電気推進船給電システムは、前記複数の電池電気推進船および前記洋上発電船と通信可能な管理装置を備え、前記管理装置は、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データに基づいて、前記複数の電池電気推進船への給電に最適な前記洋上発電船の待機位置を決定し、決定した待機位置を前記洋上発電船に送信してもよい。この構成によれば、複数の電池電気推進船への給電に最適な待機位置に洋上発電船を移動することができる。これにより、各電池電気推進船が充電のために航行する距離を少なくすることができる。
【0011】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、前記少なくとも1つの洋上給電設備は、複数の洋上給電設備を含み、上記の電池電気推進船給電システムは、前記複数の電池電気推進船と通信可能な管理装置を備え、前記管理装置は、前記複数の電池電気推進船のそれぞれに対し、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データに基づいて、充電タイミングおよび充電を受けるべき洋上給電設備の特定を含む充電スケジュールを決定し、決定した充電スケジュールを対応する電池電気推進船へ送信してもよい。この構成によれば、各電池電気推進船が充電スケジュールに従って充電を受けることができ、各電池電気推進船が効率的にオペレーションを実施することができる。
【0012】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、上記の電池電気推進船給電システムは、前記複数の電池電気推進船と通信可能な管理装置を備え、前記管理装置は、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データに基づいて、前記複数の電池電気推進船に対する配船計画を行って前記複数の電池電気推進船のそれぞれに対するオペレーションを含む航行スケジュールを決定し、決定した航行スケジュールを対応する電池電気推進船へ送信してもよい。この構成によれば、配船計画を自動化することができる。
【0013】
前記管理装置は、前記洋上発電船の待機位置、前記複数の電池電気推進船のそれぞれの充電スケジュール、および/または前記複数の電池電気推進船のそれぞれの航行スケジュールを、前記複数の電池電気推進船の運航データならびに、蓄電池、プロペラ駆動モータおよびプロペラの作動状態データに対する機械学習結果に基づいて決定してもよい。この構成によれば、各電池電気推進船の充電時間が最小になるように、および/または各電池電気推進船の運用効率が最大になるように、および/または各電池電気推進船の蓄電池の寿命が最大になるようにすることができる。
【0014】
上記の電池電気推進船給電システムは、前記少なくとも1つの電池電気推進船の蓄電池を充電可能な少なくとも1つの陸上給電設備を備えてもよい。この構成によれば、電池電気推進船は、洋上においてだけでなく陸上においても充電することができる。
【0015】
上記の電池電気推進船給電システムは、前記少なくとも1つの陸上給電設備および前記洋上給電設備と通信可能な管理装置を備え、前記管理装置は、前記陸上給電設備における所定時間ごとの電力価格データを取得し、前記少なくとも1つの電池電気推進船から受信する運航データ及び前記電力価格データに基づいて、前記少なくとも1つの電池電気推進船が前記洋上給電設備および前記陸上給電設備のうちのいずれの給電設備で給電を受けることを優先するべきかを決定してもよい。具体的には、前記管理装置は、前記陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備における給電価格よりも低い場合には、前記洋上給電設備および前記陸上給電設備のうちの前記陸上給電設備で給電を受けることを優先するような給電指令を生成し、生成した給電指令を前記少なくとも1つの電池電気推進船に送信し、前記陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備の給電価格よりも高い場合には、前記洋上給電設備および前記陸上給電設備のうちの前記洋上給電設備で給電を受けることを優先するような給電指令を生成し、生成した給電指令を前記少なくとも1つの電池電気推進船に送信してもよい。この構成によれば、電池電気推進船は、陸上給電設備(商用系統)の電力価格が洋上発電船の給電価格(洋上発電船の発電単価から算出される電力価格)よりも低い場合は、陸上給電設備から給電をうけ、陸上給電設備の電力価格が洋上発電船の給電価格よりも高い場合には、洋上発電船から給電をうけることができるので、運用コストを改善することができる。
【0016】
前記洋上給電設備は、余剰電力を前記陸上給電設備に給電可能に構成された洋上発電船であって、前記管理装置は、前記陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備における給電価格よりも高い場合には、前記少なくとも1つの電池電気推進船から受信する運航データに基づいて、前記少なくとも1つの電池電気推進船への給電に最適な前記洋上発電船の待機位置を決定し、決定した待機位置を前記洋上発電船に送信し、前記管理装置は、前記洋上発電船が前記少なくとも1つの電池電気推進船への給電後、余剰電力を有する場合には、当該余剰電力を前記陸上給電設備に売電するような売電指令を前記洋上発電船に送信してもよい。この構成によれば、陸上給電設備の電力価格が洋上発電船の給電価格よりも高い場合には、洋上発電船が各電池電気推進船への給電に最適な位置に移動するので、各電池電気推進船が充電のために航行する距離を少なくすることができる。さらに、洋上発電船は、各電池電気推進船への給電後、余剰電力を陸上給電設備に売電することができるので、運用コストを改善することができる。
【0017】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、前記複数の電池電気推進船は、余剰電力を前記陸上給電設備に給電可能に構成され、前記管理装置は、前記陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備における給電価格よりも高い場合には、前記複数の電池電気推進船のうちの余剰電力を有する電池電気推進船に対し、当該余剰電力を前記陸上給電設備に売電するような売電指令を送信してもよい。この構成によれば、陸上給電設備における電力価格が前記洋上給電設備における給電価格よりも高い場合には、余剰電力を有する電池電気推進船は、余剰電力を陸上給電設備に売電することができる。運用コストを改善することができる。
【0018】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、前記少なくとも1つの洋上給電設備は、複数の洋上給電設備を含み、上記の電池電気推進船給電システムは、前記複数の電池電気推進船と通信可能な管理装置を備え、前記管理装置は、前記陸上給電設備における所定時間ごとの電力価格データを取得し、前記複数の電池電気推進船のそれぞれに対し、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データおよび前記電力価格データに基づいて、充電タイミングおよび充電を受けるべき洋上給電設備又は前記陸上給電設備の特定を含む充電スケジュールを決定し、決定した充電スケジュールを対応する電池電気推進船へ送信してもよい。この構成によれば、各電池電気推進船が、運航データ及び電力価格データに基づいて決定された充電スケジュールに従って、洋上給電設備又は陸上給電設備のいずれかの設備において最適なタイミングで充電することができ、各電池電気推進船が経済的且つ効率的にオペレーションを実施することができる。
【0019】
前記少なくとも1つの電池電気推進船は、複数の電池電気推進船を含み、上記の電池電気推進船給電システムは、前記複数の電池電気推進船と通信可能な管理装置を備え、前記管理装置は、前記陸上給電設備における所定時間ごとの電力価格データを取得し、前記複数の電池電気推進船から受信する運航データおよび前記電力価格データに基づいて、前記複数の電池電気推進船に対する配船計画を行って前記複数の電池電気推進船のそれぞれに対するオペレーションを含む航行スケジュールを決定し、決定した航行スケジュールを対応する電池電気推進船へ送信してもよい。この構成によれば、配船計画を自動化することができるとともに、電池電気推進船は、運航データ及び電力価格データに基づいて決定された航行スケジュールに従って、航行することにより、運用コストを改善することができる。
【0020】
前記少なくとも1つの洋上給電設備は、前記陸上給電設備から給電を受けることが可能な構成を備えてもよい。具体的には、前記洋上給電設備は、発電機を備えた洋上発電船であって、上記の電池電気推進船給電システムは、前記少なくとも1つの陸上給電設備および前記洋上発電船と通信可能な管理装置を備え、前記管理装置は、前記陸上給電設備における所定時間ごとの電力価格データを取得し、前記電力価格データに基づいて、前記洋上発電船の発電電力が不足している場合には前記洋上発電船で発電をするか、あるいは、前記陸上給電設備から給電を受けるかのいずれかを決定してもよい。この構成によれば、電力価格に応じて、洋上発電船で発電される電力を電池電気推進船に供給するか、陸上給電設備から給電される電力を電池電気推進船に供給するかが決定されるので、運用コストを改善することができる。
【0021】
また、本発明の洋上給電設備は、電池電気推進船の蓄電池を充電する洋上給電設備であって、発電機と、前記発電機で生成された電力を蓄電する蓄電池と、前記蓄電池に接続された給電装置と、を備える、ことを特徴とする。このような洋上給電設備であれば、上記の電池電気推進船給電システムに好適に用いることができる。
【0022】
例えば、上記の洋上給電設備は、液化ガスを貯留するタンクと、前記液化ガスまたはその気化ガスを燃焼させる、前記発電機と連結された内燃機関と、をさらに備えてもよい。
【0023】
また、本発明の電池電気推進船は、当該電池電気推進船の運航データを送信する通信装置を備える、ことを特徴とする。このような電池電気推進船であれば、上記の電池電気推進船給電システムに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電池電気推進船を岸壁に係留せずに電池電気推進船の充電池を充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る電池電気推進船給電システムの概略構成図である。
図2】陸上給電設備における電力需給状況の一例を示すグラフである。
図3】本発明の第2実施形態に係る電池電気推進船給電システムの概略構成図である。
図4】充電スケジュールに従って給電設備が特定される様子を示す図である。
図5】電池電気推進船の航行スケジュールの一例を示すグラフである。
図6】航行スケジュールに従った航路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る電池電気推進船給電システム1を示す。この給電システム1は、複数の電池電気推進船2と、複数の洋上発電船3(本発明の、洋上給電設備に相当)と、管理装置5を含む。ただし、電池電気推進船2の数が1つであってもよいし、洋上発電船3の数が1つであってもよい。
【0027】
図1では、給電システム1が2つの港12,13を含む1つの湾11に対して構築されているが、給電システム1は、複数の湾に跨って構築されてもよい。
【0028】
本実施形態では、各電池電気推進船2が国内海域を航行する内航船である。国内海域は、日本国内海域であってもよいし、外国国内海域であってもよい。あるいは、複数の国が隣接する場合は、国内海域は、それらの国の国内海域であってもよい。さらには、各電池電気推進船2は、国際航海に従事する外航船であってもよい。
【0029】
例えば、電池電気推進船2は、タグボート、フェリー、各種の物流船(コンテナ船、油送船、一般貨物船、ケミカル船)などである。例えば、タグボートは、大型船を牽引するオペレーションを実施し、コンテナ船は、港間でコンテナを輸送するオペレーションを実施する。各電池電気推進船2に対するオペレーションは、日々変更される。
【0030】
具体的に、図示は省略するが、各電池電気推進船2は、プロペラを駆動するプロペラ駆動モータと、プロペラ駆動モータへ電力を供給する蓄電池を含む。蓄電池は、洋上発電船3の後述する給電装置に接続されることによって充電される。
【0031】
各洋上発電船3は、液化ガスを用いて発電する、電池電気推進船2の蓄電池を充電可能な船である。液化ガスは、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、液化水素、などである。本実施形態では、各洋上発電船3が各電池電気推進船2へ給電して当該電池電気推進船2の蓄電池を充電する。ただし、電池電気推進船2の蓄電池の充電は必ずしも電池電気推進船2上で行われる必要はない。例えば、電池電気推進船2が航行している間に、交換用の蓄電池が洋上発電船3上で充電され、電池電気推進船2が洋上発電船3に係留されたときに、電池電気推進船2の蓄電池が充電済みの蓄電池と交換されてもよい。
【0032】
具体的に、図示は省略するが、各洋上発電船3は、液化ガスを貯留するタンクと、液化ガスまたはその気化ガスを燃焼させる内燃機関と、内燃機関と連結された発電機と、発電機で生成された電力を蓄電する蓄電池と、蓄電池に接続された給電装置を含む。
【0033】
各洋上発電船3の内燃機関は、レシプロエンジンであってもよいし、ガスタービンエンジンであってもよい。あるいは、内燃機関に代えて、ガス焚きボイラおよび蒸気タービンが採用されてもよい。また、液化ガスが液化水素である場合は、各洋上発電船3は、水素と酸素を反応させて発電する燃料電池を含んでもよい。
【0034】
本実施形態では、給電システム1が、さらに、陸上に設置された複数の液化ガス供給装置4を含む。各液化ガス供給装置4は、いずれかの洋上発電船3へ液化ガスを供給する。例えば、各液化ガス供給装置4は、液化ガスを貯留する複数の大容量のタンクを含む。
【0035】
図1では、2つの液化ガス供給装置4が港12,13にそれぞれ設けられており、1つの液化ガス供給装置4が港ではない岸壁に設けられている。そして、それらの液化ガス供給装置4の近傍で、洋上発電船3が岸壁に係留されている。
【0036】
一方、岸壁から離れた位置に配置された洋上発電船3も存在する(図1では、最も下方に位置する洋上発電船3)。この洋上発電船3は、アンカーによってその位置に係留されてもよいし、アンカーを用いずにスラスターによってその位置に保持されてもよい。この洋上発電船3への液化ガスの供給は、当該洋上発電船3が別の洋上発電船3と入れ替えられることで行われる。
【0037】
管理装置5は、本実施形態では陸上に設置されているが、例えば、浮体式の洋上基地に設置されてもよい。あるいは、管理装置5は、いずれかの洋上発電船3に搭載されてもよい。その他、管理装置5は、複数の電池電気推進船2又は洋上発電船3の各々に搭載されてもよい。さらに、個々の船に搭載された各管理装置5が互いの情報を共有するような情報共有システムを構築するとともに、各管理装置5を搭載した船が、共有した情報に基づいて自律的に管理するような構成を備えてもよい。
【0038】
管理装置5は、電池電気推進船2および洋上発電船3と通信可能なものである。図示は省略するが、各電池電気推進船2は、上述した構成に加え、通信装置および処理装置を含む。同様に、各洋上発電船3および管理装置5も、通信装置および処理装置を含む。例えば、処理装置は、ROMやRAMなどのメモリと、HDDなどのストレージと、CPUを有するコンピュータであり、ROMまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。
【0039】
各電池電気推進船2の操船者は、日々、当該電池電気推進船2のオペレーション情報を処理装置に入力する。オペレーション情報には、出港する港および時間、入港する港および時間、オペレーション内容などが含まれる。
【0040】
各電池電気推進船2の通信装置は、処理装置に入力されたオペレーション情報を運航データとして管理装置5へ送信する。また、各電池電気推進船2の通信装置は、当該電池電気推進船2の蓄電池の容量および電池残量も運航データとして管理装置5へ送信する。さらに、運航データには、各電池電気推進船2の推進電力負荷、推進以外の船内電力負荷、船速などが含まれてもよい。
【0041】
さらに、各電池電気推進船2の通信装置は、当該電池電気推進船2の運航データと共に、蓄電池、プロペラ駆動モータおよびプロペラの作動状態データを管理装置5へ送信してもよい。
【0042】
各電池電気推進船2から送信される運航データは、管理装置5の通信装置により受信される。管理装置5の処理装置は、各電池電気推進船2の運航データに基づいて、全ての電池電気推進船2への給電に最適な各洋上発電船3の待機位置を決定する。管理装置5の通信装置は、処理装置が決定した各洋上発電船3の待機位置を、各洋上発電船3へ送信する。
【0043】
管理装置5から送信される待機位置は、各洋上発電船3の通信装置により受信され、処理装置によりモニタなどに出力される。各洋上発電船3の操船者は、その待機位置へ当該洋上発電船3を移動する。
【0044】
また、管理装置5の処理装置は、全ての電池電気推進船2の運航データに基づいて、各電池電気推進船2に対する充電スケジュールを決定する。充電スケジュールは、充電タイミングおよび充電を受けるべき洋上発電船3の特定を含むものである。管理装置5の通信装置は、処理装置が決定した各電池電気推進船2の充電スケジュールを、対応する電池電気推進船2へ送信する。
【0045】
管理装置5から送信される充電スケジュールは、各電池電気推進船2の通信装置により受信され、処理装置によりモニタなどに出力される。各電池電気推進船2の操船者は、その充電スケジュールに従って、オペレーションの間に、特定された洋上発電船3から充電を受けるように電池電気推進船2を操船する。
【0046】
また、管理装置5の処理装置は、インターネットなどを経由して、気象庁などの外部機関から、波情報および風情報を含む海気象データを取得する。そして、処理装置は、海気象データに基づいて、洋上発電船3から電池電気推進船2への給電が可能か否かを決定する。
【0047】
以上説明した構成の給電システム1では、電池電気推進船2を岸壁に係留することなく、洋上で電池電気推進船2の充電池を充電することができる。
【0048】
また、本実施形態では、管理装置5が全ての電池電気推進船2への給電に最適な待機位置を決定するので、洋上発電船3をその待機位置に移動することができる。これにより、各電池電気推進船2が充電のために航行する距離を少なくすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、管理装置5が各電池電気推進船2の充電スケジュールを決定するので、各電池電気推進船2が充電スケジュールに従って充電を受けることができる。従って、各電池電気推進船2が効率的にオペレーションを実施することができる。
【0050】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、本発明の洋上給電設備は、必ずしも液化ガスを用いて発電する洋上発電船3である必要はなく、洋上風力により発電する、一定位置に固定される浮体式の発電設備であってもよい。ただし、前記実施形態のように洋上給電設備が洋上発電船3であれば、状況に応じて洋上給電設備の位置を変更することができる。また、液化ガスを用いて発電する洋上発電船3であれば、重油などの油を燃料とする場合と異なり、昨今の厳しい環境規制にも対応することができる。
【0052】
また、洋上発電船3へは、必ずしも陸上の液化ガス供給装置4から液化ガスが供給される必要はなく、洋上の液化ガス供給装置から液化ガスが供給されてもよい。このような洋上の液化ガス供給装置としては、例えば、浮体式の液化ガス基地、液化ガス輸送船などが挙げられる。ただし、前記実施形態のように陸上の液化ガス供給装置4から洋上発電船3へ液化ガスが供給されれば、陸上の液化ガス供給装置4には一般的に液化ガス貯留用の大容量のタンクが複数装備されるので、洋上発電船3へ液化ガスを必要なときに安定的に供給することができる。
【0053】
また、管理装置5は、日々、全ての電池電気推進船2の運航データに基づいて、全ての電池電気推進船2に対する配船計画を行って各電池電気推進船2に対するオペレーションを含む航行スケジュールを決定し、決定した航行スケジュールを対応する電池電気推進船2へ送信してもよい。この構成によれば、配船計画を自動化することができる。
【0054】
また、管理装置5は、各洋上発電船3の待機位置、各電池電気推進船2の充電スケジュール、および/または各電池電気推進船2の航行スケジュールを、全ての電池電気推進船2の運航データならびに、蓄電池、プロペラ駆動モータおよびプロペラの作動状態データに対する機械学習結果に基づいて決定してもよい。この構成によれば、各電池電気推進船2の充電時間が最小になるように、および/または各電池電気推進船2の運用効率が最大になるように、および/または各電池電気推進船2の蓄電池の寿命が最大になるようにすることができる。
【0055】
また、前記実施形態では、各電池電気推進船2に操船者が搭乗することを前提としているが、各電池電気推進船2は無人船であってもよい。この場合、管理装置5から送信される充電スケジュールおよび航行スケジュールなどに基づいて、電池電気推進船2が自動操縦される。同様に、各洋上発電船3も無人船であってもよい。
【0056】
(第2実施形態)
本発明者等は、給電システム1の運用コストの効率化を図るべく鋭意検討した。近年では、原子力エネルギーの利用が大きく制限される一方、太陽光発電などの再生可能エネルギーが積極的に利用され始めている。そこで、本発明者等は、そのような陸上の給電設備に着目し、その適用性について検討した。
【0057】
図2は、陸上給電設備における電力需給状況の一例を示すグラフである。ここでは夏季のある一日の電力需給状況を示している。この陸上給電設備では、火力発電、太陽光発電、風力発電、水力発電が実施されており、原子力発電は実施されていない。図2に示すように、この陸上給電設備は、火力発電と太陽光発電に依存しているため、昼間(6:00~18:00)では、陸上で電力が余り、陸上給電設備における電力価格が低くなる。一方、夜間(18:00~6:00)では、陸上で電力が足りなくなり、陸上給電設備における電力価格が高くなる。そこで、発明者等は、時刻や気象条件等によって変動する陸上給電設備の電力価格と、洋上発電船の発電単価から算出される電力価格とを比較検討した。その結果、電池電気推進船から受信する運航データ、及び、洋上給電設備における給電価格と陸上給電設備における電力価格に応じて、電池電気推進船がいずれの給電設備で給電を受けることを優先すべきかを決定することにより、給電システム全体の運用コストを改善することができることを見出した。
【0058】
また、図2の陸上給電設備において発電した電力を安定的に供給するためには発電効率が最も高い状態で運転を持続させるという観点が必要になる。一方で、火力発電が停止したことを想定した場合、太陽光発電がなされない夜間の場合、又は、昼間でも日照条件により期待される太陽光発電量が得られない場合には、必要な電力量を確保できないという問題が発生する。そこで、発明者等は、システム運用時における洋上給電船及び電池電気推進船の余剰電力を想定し、これらの余剰電力を陸上給電設備に売電した場合の費用対効果について検討した。その結果、洋上給電船及び電池電気推進船のそれぞれが余剰電力を有する場合には、洋上給電設備における給電価格と陸上給電設備における電力価格とに応じて、それらを陸上給電設備に売電することにより、給電システム全体の運用コストを更に改善することができることを見出した。
【0059】
本発明者等は、以上の知見に基づいて本発明を想到した。以下、本発明を具体化した実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。
【0060】
図3に、本発明の第2実施形態に係る電池電気推進船給電システム1Aを示す。図3に示すように、本実施形態の給電システム1Aは、陸上に設置された陸上給電設備20を備える点が第1実施形態(図1)と異なる。図3では、電池電気推進船2の蓄電池を充電可能な1つの陸上給電設備20が港13に設けられている。ただし、陸上給電設備20の数が複数であってもよい。
【0061】
陸上給電設備20は、例えば商用系統である。陸上給電設備20は、電力供給ステーション21と、火力発電システム22と、太陽光発電システム23と、風力発電システム24と、水力発電システム25とを備える。ただし、陸上給電設備20は、その他の自然エネルギーを利用した発電システムを備えてもよい。電力供給ステーション21は、各発電システム22~25で発電した電力を電池電気推進船2へ給電して、当該電池電気推進船2の蓄電池を充電可能な構成を備える。ただし、電池電気推進船2の蓄電池の充電は必ずしも電力供給ステーション21で行われる必要はない。例えば、電池電気推進船2が航行している間に、交換用の蓄電池が電力供給ステーション21で充電され、電池電気推進船2が港13に係留されたときに、電池電気推進船2の蓄電池が充電済みの蓄電池と交換されてもよい。尚、図示は省略するが、電力供給ステーション21は、上述した構成に加え、通信装置および処理装置を含む。
【0062】
また、陸上給電設備20において、電池電気推進船2及び洋上発電船3は、蓄電池に充電された余剰電力を売電することができる。つまり、各電池電気推進船2は、余剰電力を陸上給電設備20(電力供給ステーション21)に対して給電可能に構成されている。同様に、洋上発電船3もまた、余剰電力を陸上給電設備20に対しても給電可能に構成されている。
【0063】
管理装置5は、陸上給電設備20と通信可能に構成され、陸上給電設備20における所定時間ごとの電力価格データを陸上給電設備20から取得可能に構成されている。管理装置5は、陸上給電設備20から電力価格データを直接受信してもよいし、その他の設備からネットワークを介して間接的に受信してもよい。
【0064】
本実施形態では、管理装置5は、陸上給電設備20における所定時間ごとの電力価格データを取得し、陸上給電設備20における電力価格と洋上発電船3における給電価格とを比較する。尚、洋上発電船3の給電価格は、洋上発電船3の発電単価から算出される電力価格をいう。管理装置5は、陸上給電設備20における電力価格が洋上発電船3における給電価格よりも低い場合には、全ての電池電気推進船2から受信する運航データに基づいて、洋上発電船3および陸上給電設備20のうちの陸上給電設備20で給電を受けることを優先するような給電指令を生成し、生成した給電指令を各電池電気推進船2に送信する。管理装置5から送信される給電指令は、各電池電気推進船2の通信装置により受信され、処理装置によりモニタなどに出力される。各電池電気推進船2の操船者は、その給電指令に従って、オペレーションの間に、陸上給電設備20から充電を受けるように電池電気推進船2を操船する。
【0065】
一方、管理装置5は、陸上給電設備20における電力価格が洋上発電船3の給電価格よりも高い場合には、全ての電池電気推進船2から受信する運航データに基づいて、洋上発電船3および陸上給電設備20のうちの洋上発電船3で給電を受けることを優先するような給電指令を生成し、生成した給電指令を各電池電気推進船2に送信する。管理装置5から送信される給電指令は、各電池電気推進船2の通信装置により受信され、処理装置によりモニタなどに出力される。各電池電気推進船2の操船者は、その給電指令に従って、オペレーションの間に、特定された洋上発電船3から充電を受けるように電池電気推進船2を操船する。尚、管理装置5は、余剰電力が有る電池電気推進船2に対しては、オペレーションの合間に、余剰電力を陸上給電設備20に売電するような売電指令を送信してもよい。
【0066】
このとき、管理装置5は、全ての電池電気推進船2から受信する運航データに基づいて、全ての電池電気推進船2への給電に最適な洋上発電船3の待機位置を決定し、決定した待機位置を洋上発電船3に送信する。管理装置5から送信される待機位置は、各洋上発電船3の通信装置により受信され、処理装置によりモニタなどに出力される。各洋上発電船3の操船者は、その待機位置へ当該洋上発電船3を移動する。さらに、管理装置5は、洋上発電船3から全ての電池電気推進船2への給電後、洋上発電船3が余剰電力を有する場合には、当該余剰電力を陸上給電設備20に売電するような売電指令を洋上発電船3に送信する。
【0067】
以上説明した構成の給電システム1Aでは、電池電気推進船2が、陸上給電設備20の電力価格が洋上発電船3の給電価格よりも低い場合は、陸上給電設備20から給電をうけ、陸上給電設備20の電力価格が洋上発電船3の給電価格よりも高い場合には、洋上発電船3から給電をうけることができるので、運用コストを改善することができる。
【0068】
また、本実施形態では、陸上給電設備20の電力価格が洋上発電船3の給電価格よりも高い場合には、洋上発電船3が各電池電気推進船2への給電に最適な位置に移動するので、各電池電気推進船2が充電のために航行する距離を少なくすることができる。さらに、洋上発電船3は、各電池電気推進船2への給電後、余剰電力を陸上給電設備20に売電することができるので、運用コストを改善することができる。
【0069】
また、本実施形態では、各電池電気推進船2は、陸上給電設備20における電力価格が洋上発電船3における給電価格よりも高い場合には、複数の電池電気推進船2のうちの余剰電力が有る電池電気推進船2に対して、当該余剰電力を陸上給電設備20に給電することにより、陸上給電設備20において、夜間や日照条件により期待される太陽光発電量が得られない場合でも、必要な電力量を確保することができる。運用コストを改善することができる。
【0070】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0071】
例えば管理装置5は、陸上給電設備20における所定時間ごとの電力価格データを取得し、全ての電池電気推進船2から受信する運航データおよび電力価格データに基づいて、各電池電気推進船2に対する充電スケジュールを決定してもよい。ただし、充電スケジュールは、充電タイミングおよび充電を受けるべき洋上発電船3又は陸上給電設備20の特定を含むものである。管理装置5の通信装置は、処置装置が決定した各電池電気推進船2の充電スケジュールを、対応する電池電気推進船2へ送信する。
【0072】
図4では、充電スケジュールに従って、給電設備が特定される様子を示している。ここでは説明の都合上、洋上には、充電が必要な1つの電池電気推進船2と、1つの洋上発電船3のみ示している。図4では、移動経路30は電池電気推進船2から洋上発電船3までの経路を示し、経路31は電池電気推進船2から陸上給電設備20までの経路を示している。経路30及び経路31の移動量は等しい。充電スケジュールは電力価格データを反映しているので、ここでは電池電気推進船2が給電を受けるべき給電設備として、電力価格の低い給電設備(例えば洋上発電船3)が特定される。この構成によれば、各電池電気推進船2が、運航データ及び電力価格データに基づいて決定された充電スケジュールに従って、洋上発電船3又は陸上給電設備20のいずれかの設備において最適なタイミングで充電することができ、各電池電気推進船2が経済的且つ効率的にオペレーションを実施することができる。
【0073】
また、管理装置5は、日々、全ての電池電気推進船2から受信する運航データおよび電力価格データに基づいて、全ての電池電気推進船2に対する配船計画を行って各電池電気推進船2に対するオペレーションを含む航行スケジュールを決定し、決定した航行スケジュールを対応する電池電気推進船2へ送信してもよい。
【0074】
図5は、電池電気推進船2の一日の航行スケジュールの一例を示すグラフである。図5の縦軸は、電池電気推進船2の各オペレーションに必要な電力を示している。図6は、航行スケジュールに従った航路32の一例を示す図である。ここでも説明の都合上、電池電気推進船2および洋上発電船3は1つずつ示し、航路32は午前中のスケジュールを示している。まず、図6に示すように、電池電気推進船2は、航行スケジュールに従って、朝方、一方の港12から出航する(トランジット)。そして、電池電気推進船2は、湾11の入り口付近の沖合で待機する。次に、電池電気推進船2は、沖合に到着した大型船6を他方の港13までエスコートする。最後に、電池電気推進船2は、港13の岸壁に設置して大型船6を繋留する(ボラード)。以上で、午前中の作業は終了する。電池電気推進船2は、港13において一定期間の休止後、再び、午後の作業が開始される。ここで電池電気推進船2は、蓄電池の容量の制約により、一日に数回の充電が必要になるが、航行スケジュールに従って、出航前後の港12、13や、洋上での待機中等のオペレーションの合間の時間帯において、洋上発電船3における給電価格と陸上給電設備20における電力価格に応じて、いずれかの給電設備で給電を受けることができる。
【0075】
この構成によれば、配船計画を自動化することができるとともに、電池電気推進船2は、運航データ及び電力価格データに基づいて決定された航行スケジュールに従って、航行することにより、運用コストを改善することができる。
【0076】
尚、上記実施形態では、洋上発電船3は、専ら、発電機で生成した電力を電池電気推進船2や陸上給電設備20に供給したが、洋上発電船3は、陸上給電設備20から給電を受けることが可能な構成を備えてもよい。例えば陸上給電設備20の各発電システム22~25で発電された電力が洋上発電船3へ給電され、当該洋上発電船3の蓄電池が充電されてもよい(図3参照)。
【0077】
管理装置5は、洋上発電船3と通信可能に構成され、洋上発電船3のオペレーション情報、当該洋上発電船3の蓄電池の容量および電池残量等を含んだ運航データを受信する。
【0078】
管理装置5は、陸上給電設備20における所定時間ごとの電力価格データを取得し、洋上発電船3から受信する運航データ及び電力価格データに基づいて、洋上発電船3の発電電力が不足している場合には、洋上発電船3で発電をするか、あるいは、陸上給電設備20から給電を受けるかのいずれかを決定する。具体的には、管理装置5は、陸上給電設備20における電力価格が洋上発電船3における給電価格よりも低い場合には、陸上給電設備20で給電を受けることを優先するような指令を生成し、生成した給電指令を洋上発電船3に送信する。一方、陸上給電設備20における電力価格が洋上発電船3の給電価格よりも高い場合には、洋上発電船3で発電することを優先するような指令を生成し、生成した指令を洋上発電船3に送信する。このように、電力価格に応じて、洋上発電船3で発電される電力を電池電気推進船2に供給するか、陸上給電設備20から給電される電力を電池電気推進船2に供給するかが決定されるので、運用コストを改善することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、洋上発電船3は、液化ガスを用いて発電したが、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、バイオ燃料や水素を用いて発電してもよい。その他、本発明の「洋上給電設備」は、必ずしも発電設備を備えていなくてもよい。例えば洋上船に予め充電された交換用の蓄電池を積み込んでおき、電池電気推進船2が当該洋上船に係留されたときに、充電済みの蓄電池が電池電気推進船2の蓄電池と交換されてもよい。また、洋上船の蓄電池に充電された電力が電池電気推進船2の蓄電池にケーブルを介して給電されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1,1A 電池電気推進船給電システム
2 電池電気推進船
3 洋上発電船(洋上給電設備)
4 液化ガス供給装置
5 管理装置
6 大型船
20 陸上給電設備
21 電力供給ステーション
22 火力発電システム
23 太陽光発電システム
24 風力発電システム
25 水力発電システム
30,31 経路
32 航路
図1
図2
図3
図4
図5
図6