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  • 特許-中性PHで水溶性の共重合体組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】中性PHで水溶性の共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/06 20060101AFI20221115BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20221115BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20221115BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20221115BHJP
   B29C 64/00 20170101ALI20221115BHJP
【FI】
C08F220/06
C08F220/18
C08F212/08
C08F212/14
B29C64/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020545891
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 FR2018052966
(87)【国際公開番号】W WO2019106265
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】1761283
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブロカ, アンヌ-ロール
(72)【発明者】
【氏名】カゾマユ, シルヴィー
(72)【発明者】
【氏名】ブーリゴー, シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ドクレヴォワジエ, ギヨーム
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/175682(WO,A1)
【文献】特開昭59-050056(JP,A)
【文献】特開平07-291691(JP,A)
【文献】特表2015-513475(JP,A)
【文献】特開平11-247099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 - 220/70
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のモノマー:
スチレン、上下限を含めて1~45重量%;
メタクリル酸、上下限を含めて35~45重量%;
アクリル酸ブチル、上下限を含めて15~35重量%;
スチレンスルホン酸またはその塩、ビニル安息香酸またはその塩、N-ビニルピロリドンから、単独でまたは組み合わされて選択されるモノマー、上下限を含めて1~45重量%の割合で、
を含むランダム共重合体を含む組成物であって、
DMAによって測定される共重合体のガラス転移温度が60℃を超える、組成物。
【請求項2】
ランダム共重合体を含む組成物を製造するための方法であって、
制御ラジカル重合によってランダム共重合体を調製することを含み、
ランダム共重合体が、以下のモノマー:
スチレン、上下限を含めて1~45重量%;
メタクリル酸、上下限を含めて35~45重量%;
アクリル酸ブチル、上下限を含めて15~35重量%;
スチレンスルホン酸またはその塩、ビニル安息香酸またはその塩、N-ビニルピロリドンから、単独でまたは組み合わされて選択されるモノマー、上下限を含めて1~45重量%の割合で、
を含む、方法。
【請求項3】
共重合体の重量平均分子量が、30,000~300,000g/molの間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
制御ラジカル重合がRAFTタイプの制御ラジカル重合によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
制御ラジカル重合がATRPタイプの制御ラジカル重合によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ランダム共重合体を含む組成物を製造するための方法であって、
NMPタイプの制御ラジカル重合を実施することを含み、
ランダム共重合体が、以下のモノマー:
スチレン、上下限を含めて1~45重量%;
メタクリル酸、上下限を含めて35~45重量%;
アクリル酸ブチル、上下限を含めて15~35重量%;
スチレンスルホン酸またはその塩、ビニル安息香酸またはその塩、N-ビニルピロリドンから、単独でまたは組み合わされて選択されるモノマー、上下限を含めて1~45重量%の割合で、
を含む、方法。
【請求項7】
ニトロキシドが、安定なラジカル(1)
[式中、ラジカルRは、15.0342g/molを超えるモル質量を有する]から誘導されるアルコキシアミンから得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アルコキシアミンが、以下の安定なラジカル:
N-(tert-ブチル)-1-フェニル-2-メチルプロピルニトロキシド、
N-(tert-ブチル)-1-(2-ナフチル)-2-メチルプロピルニトロキシド、
N-(tert-ブチル)-1-ジベンジルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド、
N-フェニル-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド、
N-フェニル-1-ジエチルホスホノ-1-メチルエチルニトロキシド、
N-(1-フェニル-2-メチルプロピル)-1-ジエチルホスホノ-1-メチルエチルニトロキシド、
4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、
2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノキシニトロキシド、
N-(tert-ブチル)-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド
から誘導される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アルコキシアミンが、N-(tert-ブチル)-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシドから誘導される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
顔料用の分散剤としての、レオロジー調整剤としての、あるいは植物衛生の分野における粗粒の無機または有機の充填剤用の沈降防止剤および/または懸濁剤としての、しかしまた、FDM(熱溶解積層法)タイプの物体の三次元印刷(または3D印刷)の分野における犠牲ポリマーとしての、請求項1又は3に記載の組成物あるいは請求項2及び4から9のいずれか一項に記載の方法により製造される組成物の使用。
【請求項11】
請求項1又は3に記載の組成物から押出されるフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル酸と、アクリル酸ブチルと、スチレンと、スチレンスルホン酸またはその塩、ビニル安息香酸またはその塩、2-アクリルアミド-2-メタンスルホン酸またはその塩、N-ビニルピロリドンから、単独でまたは組み合わされて選択されるモノマーとを含む、少なくとも1つのランダム共重合体を含む、中性pHまたは中性に近いpH、すなわち5.5~9.5の間で、水溶性または水分散性である共重合体の分野に関する。
【0002】
そのような共重合体は、中性pHまたは中性に近いpHで、先行技術において知られている共重合体より速く水に可溶化または分散する。
【0003】
本発明は、顔料用の分散剤としての、掘削泥水、捺染糊、化粧品工業、または洗剤工業、ペンキなどの塗料まで多岐にわたる用途におけるレオロジー調整剤としての、例えば植物衛生の用途における粗粒の無機または有機の充填剤用の沈降防止剤および/または懸濁剤、しかし特に物体の三次元印刷(または3D印刷)における、より特定すると熱溶解積層法の犠牲材料としての、これらの共重合体の様々な使用において価値がある。
【0004】
より特定すると三次元印刷(または3D印刷)の分野について言えば、この技術は、仮想物体からの実物体の付加製造(またはAM)を可能にする。これは、3D仮想物体を、厚みがきわめて薄い2Dスライスにカットすることに基づいている。これらの薄いスライスが、直前のスライスの上に固定されることによって1つずつ堆積し、それにより、実物体が再構成される。物体の構成材料には、プラスチック(特に、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(またはABS)およびポリ乳酸(またはPLA))、ワックス、金属またはセラミックがある。付加技術の例として、熱溶解積層方式(またはFDM)およびレーザー焼結がある。
【0005】
熱溶解積層法とは、合成材料(一般に、ABSまたはPLAタイプのプラスチック)のフィラメントを、160~270℃の間の範囲の温度に加熱した押出ノズルを通して溶融するという機械技術である。直径がミリメートルの10分の1のオーダーの溶融したフィラメントが、前記ノズルから出てくる。この糸は線上に堆積し、再溶融することによって、直前に堆積した糸の上に結合する。この技術は、適切な材料で作製されるパーツを作出することを可能にし、そのパーツは、射出成形された熱可塑性のパーツと同じ機械的特性および熱的特性ならびに安定性を有する。この技術はまた、パーツの製造に必要な支持構造体に関しても大きな利点を有する。なぜなら、この構築用支持体は、通常、作出される物体を構成する材料以外の材料からなり、前記物体の構築のプロセスが終了すると、前記材料は前記物体から除去されるからである。
【0006】
構築用支持体は、一般に、きわめて精密な規格に対応する水溶性または水分散性のポリマー組成物である。望ましい特性のうち、機械的強度に加えて、ポリマーのガラス転移温度、その熱安定性またはその使いやすさ、水溶性または水分散性の動態が最重要である。
【背景技術】
【0007】
EP2447292、EP2699611およびEP2041192は、3D印刷の分野で使用される水分散性で可溶性の組成物または共重合体について記載している。
【0008】
これらの組成物は、ラジカル重合によって重合した、無水マレイン酸(EP2699611)、メタクリル酸(EP2041192)、より一般的には不飽和のα,β-モノカルボン酸(EP2447292)などのモノマーを含むランダム共重合体からなる。WO2015175682は、アルカリ性水溶液に可溶性である、中和したカルボン酸基を含む共重合体について記載している。
【0009】
しかしながら、そのような組成物は、水溶性または水分散性の動態がなおきわめて遅く、中性pHではさらに遅い。親水性モノマーの割合を増加すれば溶液を構成することができるであろうが、この場合、他の重要な特性、例えば、Tg、熱安定性、メルトフローインデックスまたは機械的特性などが低下する。
【0010】
本出願人は、今般、メタクリル酸、アクリル酸ブチル、スチレン、および適切に選択された親水性の追加のモノマーを含むランダム共重合体を含む組成物が、中性pHまたは中性に近いpH、すなわち5.5~9.5の間で、先行技術において知られている組成物よりきわめて速く溶解または分散することを発見した。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明は、以下のモノマー:
- スチレン、上下限を含めて1~45重量%;
- メタクリル酸、上下限を含めて35~45重量%;
- アクリル酸ブチル、上下限を含めて15~35重量%;
- スチレンスルホン酸またはその塩、ビニル安息香酸またはその塩、2-アクリルアミド-2-メタンスルホン酸またはその塩、N-ビニルピロリドンから、単独でまたは組み合わされて選択されるモノマー、上下限を含めて1~45%の割合で、
を含むランダム共重合体を含む組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】pH=7および60℃での、コントロールの共重合体および本発明の共重合体(試験1)の溶解を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「水溶性または水分散性」という用語は、40~70℃の間の温度範囲でpHが5.5~9.5の間である水性相における可溶性(solublization)または分散性を意味するものとする。
【0014】
ポリマーは、溶媒中5重量%の濃度で、25℃にて、微細な略球状の粒子の安定な懸濁液を形成する場合に「分散性」であると言われる。前記分散体を構成する粒子の平均サイズは、1μm未満であり、より一般的には、5~400nmの間の範囲であり、好ましくは重量で10~250nmの範囲である。これらの粒径は光散乱法により測定される。
【0015】
溶媒が水である場合、使用される用語は「水分散性」のポリマーである。
【0016】
本発明の共重合体は、ラジカル重合によって、または制御ラジカル重合によって調製することができる。しかしながら、水溶性または水分散性の共重合体を得ることが課題である場合、本出願人は、制御ラジカル重合を使用するのが好ましいこと、およびそのように調製された共重合体は水溶液中でより速く可溶化または分散することを特筆する。
【0017】
この趣旨で、本発明の文脈において、NMP(「ニトロキシド媒介重合」)、RAFT(「可逆的付加および開裂移動」)、ATRP(「原子移動ラジカル重合」)、INIFERTER(「開始剤-移動-停止」)、RITP(「逆ヨウ素移動重合」)またはITP(「ヨウ素移動重合」)などの、いずれの種類の制御ラジカル重合でも使用することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、共重合体は、ニトロキシド媒介重合(NMP)によって調製される。
【0019】
より特定すると、安定なフリーラジカル(1)
[式中、ラジカルRは、15.0342g/molを超えるモル質量を有する]から誘導されるアルコキシアミンから得られるニトロキシドが好ましい。ラジカルRは、15.0342を超えるモル質量を有する限り、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子、飽和または不飽和の、直鎖、分岐または環式の炭化水素系基、例えば、アルキルもしくはフェニルラジカル、またはエステル基-COOR、またはアルコキシル基-OR、またはホスホネート基-PO(OR)とすることができる。一価のラジカルRは、ニトロキシドラジカルの窒素原子に対してβ位にあると言われる。式(1)における炭素原子および窒素原子の残りの原子価は、種々のラジカル、例えば、水素原子または炭化水素系ラジカル、例えば、1~10個の炭素原子を含むアルキル、アリールまたはアリールアルキルラジカルに結合していることが可能である。式(1)における炭素原子および窒素原子が、二価のラジカルを介して一緒に結合して環を形成することは除外されない。しかしながら、好ましくは、式(1)の炭素原子および窒素原子の残りの原子価は、一価のラジカルに結合している。好ましくは、ラジカルRは、30g/molを超えるモル質量を有する。ラジカルRは、例えば、40~450g/molの間のモル質量を有していてもよい。例として、ラジカルRは、ホスホリル基を含むラジカルとしてもよく、前記ラジカルRは、次式:
[式中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、アリール、アラルキルオキシル、ペルフルオロアルキルまたはアラルキルの各ラジカルから選択されてもよく、1~20個の炭素原子を含んでいてもよい]で表されることが可能である。Rおよび/またはR(R and/or R)はまた、ハロゲン原子、例えば、塩素原子または臭素原子またはフッ素原子またはヨウ素原子とすることもできる。ラジカルRはまた、少なくとも1つの芳香族環、例えば、フェニルラジカルまたはナフチルラジカルなども含んでいてもよく、前記環は、例えば1~4個の炭素原子を含むアルキルラジカルで置換されていることが可能である。
【0020】
より特定すると、以下の安定なラジカル:
- N-(tert-ブチル)-1-フェニル-2-メチルプロピルニトロキシド、
- N-(tert-ブチル)-1-(2-ナフチル)-2-メチルプロピルニトロキシド、
- N-(tert-ブチル)-1-ジベンジルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド、
- N-フェニル-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド、
- N-フェニル-1-ジエチルホスホノ-1-メチルエチルニトロキシド、
- N-(1-フェニル-2-メチルプロピル)-1-ジエチルホスホノ-1-メチルエチルニトロキシド、
- 4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、
- 2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノキシニトロキシド、
- N-(tert-ブチル)-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド
から誘導されるアルコキシアミンが好ましい。
【0021】
制御ラジカル重合に使用するアルコキシアミンは、モノマーの結合の良好な制御を可能にしなければならない。したがって、アルコキシアミンはそのすべてがある特定のモノマーの良好な制御を可能にするわけではない。例えば、TEMPOから誘導されるアルコキシアミンは、限られた数のモノマーしか制御できず;2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン-3-ニトロキシド(TIPNO)から誘導されるアルコキシアミンについても同様である。他方で、式(1)に相当するニトロキシドから誘導される他のアルコキシアミン、特に式(2)に相当するニトロキシドから誘導されるアルコキシアミン、さらにより特定すると、N-(tert-ブチル)-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシドから誘導されるアルコキシアミンは、これらのモノマーの制御ラジカル重合を多数のモノマーへと広げることを可能にする。
【0022】
加えて、アルコキシアミンの開始温度もまた、経済的要因に影響を及ぼす。工業的な問題を最小限にするためには低温を使用するのが好ましい。したがって、式(1)に相当するニトロキシドから誘導されるアルコキシアミン、特に式(2)に相当するニトロキシドから誘導されるアルコキシアミン、さらにより特定すると、N-(tert-ブチル)-1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシドから誘導されるアルコキシアミンは、TEMPOまたは2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン-3-ニトロキシド(TIPNO)から誘導されるアルコキシアミンより好ましい。
【0023】
モノマーの重量の割合は、以下の範囲:
- スチレン、上下限を含めて1~45重量%、好ましくは上下限を含めて5~30%;
- メタクリル酸、上下限を含めて35~45重量%、好ましくは上下限を含めて35~40%;
- アクリル酸ブチル、上下限を含めて15~35重量%、好ましくは上下限を含めて20~30%;
- スチレンスルホン酸もしくはその塩、ビニル安息香酸もしくはその塩、2-アクリルアミド-2-メタンスルホン酸もしくはその塩、またはN-ビニルピロリドンから、単独でまたは組み合わされて選択されるモノマー、上下限を含めて1~45%、好ましくは上下限を含めて15~45%の割合で;
から選択される。
【0024】
好ましくは、好ましいモノマーはスチレンスルホン酸またはその塩である。
【0025】
本発明の主題である水溶性または水分散性の共重合体の、SECによって測定される重量平均分子量は、30,000g/mol~300,000g/molの間、好ましくは70,000~170,000g/molの間、より好ましくは80,000~130,000g/molの間である。
【0026】
水溶性または水分散性の共重合体の分散度は、2.2未満、好ましくは2未満である。
【0027】
本発明の主題である組成物中に存在するランダム共重合体の、DMA(動的機械分析)によって測定されるガラス転移温度(Tg)は、60℃を超え、好ましくは110℃を超える。
【0028】
本発明の主題である水溶性または水分散性の組成物は、ランダム共重合体タイプもしくはブロック共重合体タイプ、またはコア-シェル粒子のうち、これらの単独の組成物であっても、組み合せた組成物であっても、耐衝撃性改良剤を含有することができる。
【0029】
本発明の組成物は、顔料用の分散剤として、または掘削泥水、捺染糊、化粧品工業、もしくは洗剤工業、および他のペンキなどの塗料組成物などの用途におけるレオロジー調整剤として、ならびに植物衛生の分野における粗粒の無機または有機の充填剤用の沈降防止剤および/または懸濁剤として、しかしまた、FDM(熱溶解積層法)タイプの物体の三次元印刷(または3D印刷)の分野における犠牲ポリマーとしても、使用することができる。この点で、本発明の組成物は、耐衝撃性改良剤を含むまたは含まない押出フィラメントの形態に形成することができ、これらの押出フィラメントもまた、本発明の主題である。
【0030】
本発明はまた、本発明の組成物を用いて得られる物体にも関する。
【実施例
【0031】
試薬の混合物は次のとおりである:
- 開始剤:BlocBuilder(登録商標)(Arkema製)
- スチレン(St)(Aldrich製)
- メタクリル酸(MAA)(Aldrich製)
- スチレンスルホン酸ナトリウム(Aldrich製)
- アクリル酸ブチル(BuA)(Aldrich製)
- エタノール(Aldrich製)
【0032】
- 開始剤:BlocBuilder(登録商標)(Arkema製)
- スチレン(St)(Aldrich製)
- メタクリル酸(MAA)(Aldrich製)
- スチレンスルホン酸ナトリウム(Aldrich製)
- アクリル酸ブチル(BuA)(Aldrich製)
- エタノール(Aldrich製)
- トルエン(Aldrich製)
- DMSO(ジメチルスルホキシド)、(Aldrich製)
【0033】
すべての試薬および溶媒を、窒素雰囲気下で、2lの密閉ステンレス鋼反応器の中に導入する。この混合物を、180分間、200rpmで撹拌しながら加熱する。
【0034】
最終変換率は71%である。本発明の共重合体を、沈殿により、アセトンから回収する。コントロール共重合体については、残留モノマーおよび溶媒を、オーブンの中で、減圧下にて100℃で除去する。2つのケースにおいて、得られた残留物を乾燥させ、次いで、粉末形態で使用されるように、乳鉢の中で粉砕する。
【0035】
3つの共重合体(three copolymers)の組成を、H NMRによって解析し、以下の結果を重量%として得る。表2:
【0036】
溶解試験
得られた共重合体を、圧縮圧下で160℃の温度に加熱し、直径2.5cmおよび厚さ1mmのペレットを形成させる。次いで、このペレットをpH7の水中で60℃の温度で撹拌しながら、ビーカーに入れる。
【0037】
試料を定期的に除去し、ポリマーの溶解に関連する重量減少を評価するために、秤量する。試験はpH7、60℃で行われる;表1(table 1):
【0038】
図1は、pH=7および60℃での、コントロールの共重合体および本発明の共重合体(試験1)の溶解を示す。
【0039】
4種のモノマー、Abu/STY/AMA/スチレンスルホン酸ナトリウムを使用して調製した共重合体(本発明)は、スチレンスルホン酸ナトリウムを含まずに調製したものより速く溶解することに留意されたい。
図1