(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】組立玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/16 20060101AFI20221115BHJP
A63H 33/10 20060101ALI20221115BHJP
A63H 9/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A63H3/16
A63H33/10 H
A63H9/00 Q
(21)【出願番号】P 2021013568
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
(72)【発明者】
【氏名】寺島 塁
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044100(JP,A)
【文献】実開昭57-074091(JP,U)
【文献】特表2007-517533(JP,A)
【文献】特開2018-089538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0111107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立玩具であって、
複数のパーツから組み立てられる、前記組立玩具の一部品となる一次組立品と、
前記一次組立品と組み合わされて前記組立玩具の最終組立品を形成する組立部材と
を備え、
前記一次組立品は、
第1面と該第1面と異なる第2面とを有し、
前記複数のパーツが正確に組み立てられると
、前記第1面には前記組立玩具の外観の一部が形成され、前記第2面には前記組立玩具の外観の一部が形成されることなく前記組立玩具とは異なる所定物の模型
が形成
されることを特徴とする組立玩具。
【請求項2】
前記複数のパーツが正確に組み立てられなければ、前記所定物の模型が形成されないことを特徴とする請求項1に記載の組立玩具。
【請求項3】
前記一次組立品は、前記所定物の模型が正確に組み立てられなければ、前記組立玩具の一部品として機能しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の組立玩具。
【請求項4】
前記組立部材には、少なくとも第1組立部材と第2組立部材とが含まれ、
前記第1組立部材の内側から前記一次組立品が嵌め込まれた状態で、該第1組立部材と前記第2組立部材とを前記一次組立品
の前記第2面を覆うように組み合わせることにより前記組立玩具の最終組立品を形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の組立玩具。
【請求項5】
前記第1面に形成された前記一次組立品の一部は、前記第1組立部材の一部に形成された開口部から露出されることを特徴とする請求項4に記載の組立玩具。
【請求項6】
前記第2組立部材の一部には、前記一次組立品の前記所定物の模型を視認可能な覗き穴が設けられることを特徴とする請求項4
又は5に記載の組立玩具。
【請求項7】
前記第2組立部材の一部は、前記一次組立品の前記所定物の模型を視認可能な透明部材で成形されることを特徴とする請求項4
又は5に記載の組立玩具。
【請求項8】
前記第1面に形成された前記一次組立品の一部は、
前記第2面に形成された前記所定物の模型の背面に設けられることを特徴とする請求項
1乃至7の何れか1項に記載の組立玩具。
【請求項9】
前記複数のパーツのそれぞれは、前記第1面と同じ面側の部分と、前記第2面と同じ面側の部分とを有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の組立玩具。
【請求項10】
前記所定物の模型は、複数の所定物を含むことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の組立玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
初心者や年少者にとっても容易に組み立て可能な組立玩具が知られている。例えば、特許文献1には、ランナーが無く隣接した2つの主要パーツがゲートで繋がれ、当該ゲートを折り曲げるだけでほぼ完成する組立玩具が提案されている。ランナーから切り離して組み立てる必要がないため、切り離したパーツがどの部分のパーツかを把握する必要がなく、容易に組み立てることができる。
【0003】
また、特許文献2には、一直線に配置可能な複数の構成部材を重ねて、それぞれの貫通孔に棒状の支持部材を挿入して組み立てを行う組み立て玩具が提案されている。この組み立て玩具では支持部材を挿入して軸中心に回動させることにより各構成部材をロックすることができる。したがって、年少者にとっても容易に組み立てることができ、かつ安全で、楽しく、知育遊びにもなる組み立て玩具が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平8-7915号公報
【文献】特開2012-148172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、容易に組み立て可能であるものの、複数のパーツを組み立てること自体に興味を抱かせることが難しく、さらに複雑なパーツを組み立てたいという欲求を与えることは難しい。例えば上記特許文献1では、隣接して配置された2つの主要パーツを、互いが繋がったゲートを折り曲げるだけでほぼ完成となる。これでは、パーツを切り離す必要がないため容易に組み立可能であるものの、あまりにも組み立てが簡単すぎて、組み立てること自体に興味を抱かせることが難しい。一方、特許文献2では複数のパーツを重ねて棒状の支持部材を挿入することにより各パーツをロックすることができ、面白味のある知育玩具が提供されている。しかし、支持部材の挿入により各パーツを一括で組み立てるものであり、複数のパーツを組み立てて作り上げていく工程の楽しさや達成感を感じることができず、さらに難しい組立玩具へ挑戦するという意欲を与えることができない。このような従来技術では、プラスチックモデル等の組立工程の楽しさを知り、次の玩具への販売促進効果を得ることができない。
【0006】
本発明は、例えば、容易に組み立て可能であって、更には組立工程の興趣性を高める仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば組立玩具であって、複数のパーツから組み立てられる、前記組立玩具の一部品となる一次組立品と、前記一次組立品と組み合わされて前記組立玩具の最終組立品を形成する組立部材とを備え、前記一次組立品は、前記複数のパーツが正確に組み立てられると所定物の模型を形成することを特徴とする。
また、本発明は、例えば組立玩具であって、複数のパーツから組み立てられる、前記組立玩具の一部品となる一次組立品と、前記一次組立品と組み合わされて前記組立玩具の最終組立品を形成する組立部材とを備え、前記一次組立品は、第1面と該第1面と異なる第2面とを有し、前記複数のパーツが正確に組み立てられると、前記第1面には前記組立玩具の外観の一部が形成され、前記第2面には前記組立玩具の外観の一部が形成されることなく前記組立玩具とは異なる所定物の模型が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容易に組み立て可能であって、更には組立工程の興趣性を高める仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る組立玩具の(a)外観正面及び(b)外観側面の一例を示す図。
【
図3】一実施形態に係る組立玩具における一次組立品の(a)背面図及び(b)背面図。
【
図4】一実施形態に係る組立玩具における一次組立品の分解図。
【
図5】一実施形態に係る一次組立品が最終組立品の筐体に覆われる様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<組立玩具の外観>
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る組立玩具100の外観構成の一例について説明する。
図1(a)は組立玩具100の外観正面を示し、
図1(b)は組立玩具100の外観側面を示す。なお、上下、左右、前後の矢印については図における組立玩具の向きを示し、他の図面についても同様である。
【0012】
組立玩具(人形玩具)100は、組立後の最終組立品を示す。組立玩具100は本体部101で構成され、本体部101には、左右の眼102a、102b、口103、及び左右の頬104a、104bを含んで構成される。
図1(b)の外観側面に示すように、本体部101は第1組立部材である正面部材101aと第2組立部材である背面部材101bとが組み合わされて構成される。なお、本実施形態では、2つの組立部材によって組立玩具100の筐体等を構成する例について説明するが、本発明を限定する意図はない。例えば、1つの組立部材と後述する一次組立品200とが組み合わされることにより組立玩具を構成してもよいし、さらに多くの組立部材と後述する一次組立品200とが組み合わされることにより組立玩具を構成してもよい。
【0013】
また、
図1(a)に示すように、眼102a、102b、口103、及び頬104a、104bが正面部材101aの表面に確認できる。しかし、正面部材101a自体は眼102a、102b、口103、及び頬104a、104bのそれぞれの形状の外形に沿った開口部を有しているのみであり、他の部品がそれぞれの開口部に嵌め込まれることによって眼102a、102b、口103、及び頬104a、104bが形成されている。また、それぞれの開口部から視認できるそれらの他の部品は後述する一次組立品200の一部であり、正面部材101aの内側から嵌め込まれて正面部材101a及び背面部材101bによって覆われるため、外部から確認できないようになっている。
【0014】
<最終組立品の組立構成>
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る組立玩具100の組立構成について説明する。
図2は組立玩具100の分解図を示す。
【0015】
正面部材101aには、開口部112a、112b、113、114a、114bが形成される。200は一次組立品を示し、それぞれ点線に沿って不図示の突起部が正面部材101aの対応する孔部に嵌め込まれる。一次組立品200が嵌め込まれた状態において、開口部112a、112b、113、114a、114bから一次組立品200の一部が露出して、眼102a、102b、口103、及び頬104a、104bが組立玩具100の正面から視認可能となる。一次組立品200は、最終の組立品である組立玩具100を組み立てる際に第1段階で組み立てられる部品である。このように、本実施形態に係る組立玩具100は、一次組立品200を一部品として含むものである。一次組立品200が正確に組み立てられなければ、組立玩具100も正確に組み立てることができない。なお、一次組立品200の詳細については
図3を用いて後述し、その組立構成については
図4を用いて後述する。
【0016】
<一次組立品の外観>
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る一次組立品200の外観構成について説明する。
図3(a)は一次組立品200の外観背面を示し、
図3(b)は一次組立品200の外観正面を示す。
【0017】
図3(a)に示すように、組み立て後の一次組立品200の背面には
図2に示した開口部112a、112b、113、114a、114bにそれぞれ対応する部材122a、122b、123、124a、124bが設けられる。また、一次組立品200の背面には、正面部材101aに組み付けられるための突起部125a、125b、125cが設けられる。一次組立品200が正面部材101aに組み合わされると、部材122a、122b、123、124a、124bがそれぞれ開口部112a、112b、113、114a、114bから組立玩具100の正面に露出する。露出した部材122a、122bはそれぞれ組立玩具100の左右の眼102a、102bを形成し、部材123は組立玩具100の口103を形成し、部材124a、124bは組立玩具100の左右の頬104a、104bを形成する。このように、本実施形態によれば、一次組立品200の一部が組立玩具の一部を構成するものであり、複数のパーツから構成される一次組立品200が正確に組み立てられなければ上記一次組立品200の一部も正確に形成されず、各開口部から正確に露出されない。つまり、組立玩具100も正確に組み立てられない。
【0018】
図3(b)に示すように、組み立て後の一次組立品200の正面には、所定物の模型201~205が形成される。ここで「所定物の模型」とは、特定のデザイン、例えば、組立ユーザによって識別可能な物体、図形、文字、記号、模様などを具象化したものである。つまり、本実施形態に係る所定物の模型とは、組立玩具の組立途中において組み立てられる複数のパーツによる部品ではあるものの、例えばそれ自体では意味を成さない人形体の腰部や関節部などとは異なり、それ単体で完成された所定物を具象化するものである。本実施形態では、これらの模型は例えば、トマト201、キャンディ202、飴玉203、リンゴ204、及びおむすび205を示している。これらの模型201~205は所定物の模型を示す一例であり特に限定するものではなく、種々の他の物体が表されてもよい。これらの所定物の模型201~205は、一次組立品200の組み立てが正確に行われると形成されるものであり、即ち、正確に組み立てられなければ現れないものである。したがって、組立玩具100を組み立てているユーザにとっては、上記所定物の模型201~205が形成されると、これまでの組立工程が正確に行われていることを認識することができ、更には年少者などにとっては、組立工程の途中段階で達成感を得ることができ、組立工程に対して興味を抱かせることができる。なお、本実施形態では、このような一次組立品が1つのみの例について説明するが、複数の一次組立品が設けられてもよい。これにより、より複雑で多くのパーツを含む組立玩具であっても、組立ユーザは少数のパーツの組み合わせを繰り返すことにより、容易に組立玩具を完成させることができる。
【0019】
<一次組立品の組立構成>
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る一次組立品200の組立構成について説明する。
図4は一次組立品200の分解図である。
【0020】
図4に示すように、一次組立品200は、複数のパーツ401~404によって構成される。複数のパーツ401~404は、点線矢印の方向にそれぞれが組み合わされるものである。各パーツは、
図3(b)を用いて説明した所定物の模型201~205の一部分を含むものであり、1つのパーツで所定物の模型201~205の何れかを示すものではない。つまり、複数のパーツ401~404を正確に組み立てることによって初めて、所定物の模型201~205が形成されるものである。これにより、ユーザは最初から組立玩具100を意識して組み立てを行うのではなく、より小さい規模の所定物の模型201~205を意識して組み立てることができ容易に組立作業を行うことができる。
【0021】
<一次組立品と最終組立品の関係>
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る一次組立品200と最終組立品である組立玩具100の関係について説明する。
図5(a)は組立玩具100の最終の組立工程を示し、
図5(b)は組立後の組立玩具100の外観背面を示す。
【0022】
図5(a)に示すように、まず一次組立品200の背面に設けられた突起部125a、125b、125cが正面部材101aの内側から対応する孔に嵌め込まれることにより、両部品が組み合わされる。この状態において、一次組立品200の正面は正面部材101aの裏側と接していないため露出した状態となる。その後、正面部材101aに一次組立品200が嵌め込まれた状態で、最終的に背面部材101bが正面部材101aに組み合わされる。これにより、
図1に示すような組立玩具100の最終組立品が完成する。なお、本実施形態では、正面部材101aと背面部材101bとが組み合わされて球形の組立玩具の本体を形成する。また、球形の本体の中は少なくとも一部が空洞になっており、その空洞内において一次組立品200の正面、即ち、所定物の模型201~205が露出した状態となっている。しかし、
図5(b)に示すように、組み立て後の組立玩具100において、一次組立品200は正面部材101aと、背面部材101bとに覆われて、外部から確認できない構成となる。このように、一次組立品200は組立玩具100の内部に包含されるため、組立玩具100とは関連のない所定物の模型を形成したとしても組立玩具100の最終組立品においては違和感を与えることがない。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係る組立玩具は、複数のパーツから組み立てられる、組立玩具の一部品となる一次組立品と、一次組立品と組み合わされて組立玩具の最終組立品を形成する組立部材とを備え、一次組立品は、複数のパーツが正確に組み立てられると所定物の模型を形成する。また、複数のパーツが正確に組み立てられなければ、上記所定部の模型が正確に形成されず、更には組立玩具の一部品としても機能しない。したがって、ユーザは最初から最終組立品である組立玩具100を意識して組み立てるのではなく、より小規模の一次組立品200を意識して組み立てることができ、容易に組立作業を行うことができる。また、ユーザにとっては所定部の模型を正確に組み上げることにより達成感を得るとともに、これまでの組立工程が正確に行われることを確認することができる。このように、本実施形態によれば、容易に組み立て可能であって、更には組立工程の興趣性を高める仕組みを提供することができる。
【0024】
<変形例>
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。上記実施形態では、一次組立品200が正面部材101aと背面部材101bとに覆われて完全に隠れる構成について説明した。一方で、年少者などは、最終的に組立玩具を組み立てた後に、その過程で組み立てた一次組立品200を再度確認したいと望む可能性がある。このような要望を満たすため、組立玩具の筐体の一部に覗き穴を設けてもよい。詳細について
図6を用いて説明する。
【0025】
図6(a)は覗き穴を設けた組立玩具の変形例を示す。図示するように、背面部材600の一部に覗き穴601が設けられる。覗き穴601の形状やサイズについては特に限定することを意図しておらず、任意の形やサイズが適用されてもよい。ユーザは覗き穴601から組立玩具の中を覗くことにより、一次組立品200の正面、即ち、所定物の模型201~205を確認することができる。
【0026】
一方、
図6(b)は上記覗き穴601に代えて、部材の一部を透明部材で形成した変形例を示す。図示するように、背面部材610は透明部材(半透明部材でもよい。)で成形されており、一次組立品200の正面、即ち、所定物の模型201~205を確認することができる。なお、背面部材610では全体が透明部材で成形されている例を示しているが、本発明を限定する意図はなく、例えばその一部のみが透明部材で成形されてもよい。
【0027】
このように、背面部材の一部に覗き穴を設けたり、背面部材の少なくとも一部を透明部材で成形することにより、組立工程の途中で完成した一次組立品200を組立玩具の組み立て後においても確認することができる。
【0028】
また、組立玩具の形状は、特に限定されるものではなく、人、動物、ロボット、昆虫、恐竜等、様々な形状を含むものである。
【符号の説明】
【0029】
100:組立玩具、101a:正面部材、101b:背面部材、102a、102b:眼、103:口、104:頬、200:一次組立品