(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】フック係合装置及びバキュームリフト
(51)【国際特許分類】
B66C 1/34 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
B66C1/34 N
(21)【出願番号】P 2021047051
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】511062276
【氏名又は名称】東洋工機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 敬彦
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-049479(JP,U)
【文献】登録実用新案第3192967(JP,U)
【文献】特開平9-255273(JP,A)
【文献】実開平6-25276(JP,U)
【文献】特開平3-211191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブルフックを着脱可能に係合させるフック係合装置であって、
単一の支軸と、
それぞれの下端部が
単一の前記支軸に回動可能に支持され、自然状態で第1角度をなすように斜め上方に延びる一対の回動アームと、
前記一対の回動アームの間に進入した前記ダブルフックに押圧されて、前記一対の回動アームのなす角を、前記第1角度から前記第1角度より小さい第2角度に狭めるリンク部と、
前記一対の回動アームを前記第2角度にロックするロック機構と、
前記一対の回動アームが前記第2角度にロックされた状態で、前記ダブルフックを構成する2つのフックが係合する一対の係合部と、
前記一対の回動アームのなす角を拡げる向きに移動する前記ダブルフックに押圧されて、前記ロック機構によるロックを解除する解除部とを備え
、
前記一対の回動アームは、
前記第2角度をなすときに、前記支軸に支持された下端部から上端部に向かって互いの間隔が拡がるように延設され、
前記ロック機構によるロックが解除されたときに、自重によって前記第1角度に拡がる向きに回動することを特徴とするフック係合装置。
【請求項2】
ダブルフックを着脱可能に係合させるフック係合装置であって、
支軸と、
下端部が前記支軸に回動可能に支持され、自然状態で第1角度をなすように斜め上方に延びる一対の回動アームと、
前記一対の回動アームの間に進入した前記ダブルフックに押圧されて、前記一対の回動アームのなす角を、前記第1角度から前記第1角度より小さい第2角度に狭めるリンク部と、
前記一対の回動アームを前記第2角度にロックするロック機構と、
前記一対の回動アームが前記第2角度にロックされた状態で、前記ダブルフックを構成する2つのフックが係合する一対の係合部と、
前記一対の回動アームのなす角を拡げる向きに移動する前記ダブルフックに押圧されて、前記ロック機構によるロックを解除する解除部とを備え、
前記一対の回動アームそれぞれは、
斜め上方に延びる主プレート、及び前記主プレートの延設方向と交差する方向に延びる分岐プレートを含む第1プレートと、
前記回動アームの厚み方向において前記第1プレートと所定の間隔を隔てて配置され、前記主プレートと平行に延びる第2プレートとで構成され、
前記リンク部は、前記分岐プレートの先端部から前記第2プレートに向けて突出されていることを特徴とす
るフック係合装置。
【請求項3】
前記一対の回動アームそれぞれの前記第1プレート及び前記第2プレートは、前記厚み方向の反対側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のフック係合装置。
【請求項4】
前記ロック機構は、
一方の前記回動アームの前記第1プレートに設けられた凹部と、
他方の前記回動アームの前記第2プレートに設けられて、前記一対の回動アームのなす角が前記第2角度に狭まったときに、前記凹部に進入するボールプランジャとで構成されていることを特徴とする請求項3に記載のフック係合装置。
【請求項5】
前記一対の回動アームそれぞれは、前記第1プレート及び前記第2プレートの上端部同士を接続して、前記係合部及び前記解除部として機能する接続部を備えることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載のフック係合装置。
【請求項6】
支持ブロックと、
前記支持ブロックの下面に支持されて、搬送物の表面に密着する複数の吸着パッドと、
前記支持ブロックに固定された請求項1~5のいずれか1項に記載のフック係合装置とを備えることを特徴とするバキュームリフト。
【請求項7】
前記支持ブロックは、水平方向において互いに直交する第1方向及び第2方向のうち、前記第1方向に長い長尺の部材であり、
前記支軸は、前記第1方向における前記支持ブロックの中央において、前記第2方向に延設されていることを特徴とする請求項6に記載のバキュームリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を吊り上げるダブルフックを係合させるフック係合装置、及びこのようなフック係合装置を備えるバキュームリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下面に設けられた複数の吸着パッドで搬送物を吸着した状態で、天井クレーンなどで吊り上げられることによって、搬送物を目的地まで搬送するバキュームリフトが知られている。そして、上記構成のバキュームリフトには、ダブルフックを係合させるフック係合装置が取り付けられることがある。
【0003】
フック係合装置は、例えば特許文献1~4に開示されているように、開閉可能な一対の回動アームを備える。そして、一対の回動アームを閉じることによってダブルフックを係合させ、一対の回動アームを開くことによってダブルフックとの係合を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭50-152366号公報
【文献】特開平09-255273号公報
【文献】実開昭52-004674号公報
【文献】実開昭49-084867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のフック係合装置は、ダブルフックに対して一対の回動アームを手動で着脱する必要があるので、着脱作業が煩雑になる。また、特許文献2~4のフック係合装置は、ダブルフックと一対の回動アームとの係合を解除するために外部動力を必要とするので、構成が複雑になる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ダブルフックと一対の回動アームとの着脱機構をシンプルな構成で実現したフック係合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、ダブルフックを着脱可能に係合させるフック係合装置であって、単一の支軸と、それぞれの下端部が単一の前記支軸に回動可能に支持され、自然状態で第1角度をなすように斜め上方に延びる一対の回動アームと、前記一対の回動アームの間に進入した前記ダブルフックに押圧されて、前記一対の回動アームのなす角を、前記第1角度から前記第1角度より小さい第2角度に狭めるリンク部と、前記一対の回動アームを前記第2角度にロックするロック機構と、前記一対の回動アームが前記第2角度にロックされた状態で、前記ダブルフックを構成する2つのフックが係合する一対の係合部と、前記一対の回動アームのなす角を拡げる向きに移動する前記ダブルフックに押圧されて、前記ロック機構によるロックを解除する解除部とを備え、前記一対の回動アームは、前記第2角度をなすときに、前記支軸に支持された下端部から上端部に向かって互いの間隔が拡がるように延設され、前記ロック機構によるロックが解除されたときに、自重によって前記第1角度に拡がる向きに回動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ダブルフックと一対の回動アームとの着脱機構をシンプルな構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】ダブルフックを係合させる過程のフック係合装置の状態を示す図である。
【
図6】ダブルフックの係合を解除する過程のフック係合装置の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るバキュームリフト1を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0011】
図1は、バキュームリフト1の模式図である。バキュームリフト1は、搬送物を吸着した状態でクレーン(図示省略)によって所望の位置に搬送され、搬送後の位置で搬送物を脱離することによって、所望の位置に搬送物を移動させるための装置である。バキュームリフト1は、支持ブロック2と、複数の吸着パッド3a~3gとを主に備える。
【0012】
支持ブロック2は、左右方向の長さが上下方向及び前後方向より長い長尺(例えば、10m以上)の柱状部材である。複数の吸着パッド3a~3gは、支持ブロック2の下面に所定の間隔を隔てて配置されている。そして、搬送物の表面に吸着パッド3a~3gを当接させた状態で、吸着パッド3a~3gの内部空間の空気をバキュームポンプ(図示省略)で吸引する。これにより、吸着パッド3a~3gが搬送物に吸着する。
【0013】
なお、本実施形態では、水平方向において互いに直交する第1方向及び第2方向の例として、第1方向を左右方向とし、第2方向を前後方向としたが、第1方向及び第2方向は相対的な関係であって、前述の例に限定されない。
【0014】
また、支持ブロック2には、フック係合装置10が固定される。より詳細には、支持ブロック2は、フック係合装置10を着脱可能に固定するブラケット4を備える。ブラケット4は、左右方向における支持ブロック2の中央において、支持ブロック2の上面から上方に突出している。換言すれば、ブラケット4は、支持ブロック2の重心位置Gを通り、上下方向に延びる仮想線L上に配置されている。
【0015】
また、ブラケット4は、貫通孔5と、一対の支持部6、7とを有する。貫通孔5は、ブラケット4を前後方向に貫通する。そして、貫通孔5には、後述する支軸11が挿通される。一対の支持部6、7は、貫通孔5を挟んで左右方向の反対側に配置されている。そして、一対の支持部6、7は、後述する一対の回動アーム12、13のなす角が第1角度θ1になるように、一対の回動アーム12、13を支持する。
【0016】
フック係合装置10は、天井クレーン(図示省略)などから吊り下げられたダブルフック8を係合させる装置である。フック係合装置10に係合されたダブルフック8を上昇させることによって、バキュームリフト1を吊り上げることができる。ダブルフック8は、2つのフック8a、8bを背中合わせに配置したものである。すなわち、2つのフック8a、8bの先端は、左右方向において互いに逆向きに湾曲している。
【0017】
ダブルフック8は、天井クレーンなどから垂下されたワイヤ(図示省略)の先端に取り付けられている。また、ダブルフック8は、ワイヤを繰り出すことによって下降し、ワイヤを巻き取ることによって上昇する。さらに、ダブルフック8は、ワイヤを中心として回転可能に構成されている。
【0018】
次に、
図2~
図4を参照して、本実施形態に係るフック係合装置10を説明する。
図2は、フック係合装置10の組立斜視図である。
図3は、フック係合装置10の平面図である。
図4は、ロック機構18の模式図である。
図2及び
図3に示すように、フック係合装置10は、支軸11と、一対の回動アーム12、13と、一対の接続アーム(接続部)14、15と、一対のリンクアーム(リンク部)16、17と、ロック機構18とを主に備える。
【0019】
支軸11は、ブラケット4の貫通孔5に挿通されて、前後方向に延設される。回動アーム12、13は、各々が長尺の部品である。回動アーム12、13は、下端部が支軸11に回動可能に支持されている。また、回動アーム12、13は、自然状態で第1角度θ1をなすように斜め上方に延設されている。より詳細には、回動アーム12、13の延設方向は、上下方向及び左右方向を含む仮想平面上において、支軸11を通る鉛直線に対して左右対称となる方向である。
【0020】
第1角度θ1は、左右方向において、回動アーム12、13の先端の間隔がダブルフック8の幅より大きくなる角度である。換言すれば、第1角度θ1は、回動アーム12、13の間に、ダブルフック8が上下方向に進退可能な角度である。第1角度θ1は、例えば、45°~60°に設定される。
【0021】
回動アーム12は、第1プレート21と、第2プレート22とで構成されている。第1プレート21及び第2プレート22は、いずれも長尺の板状の部品である。第1プレート21は、主プレート21aと、分岐プレート21bとで構成されている。分岐プレート21bは、主プレート21aの下端部及び上端部の間において、主プレート21aの延設方向と交差する方向に延びている。
【0022】
第1プレート21及び第2プレート22は、下端部が支軸11に回動可能に支持されている。また、第1プレート21及び第2プレート22は、回動アーム12の厚み方向(前後方向)において、所定の間隔を隔てて配置されている。第1プレート21及び第2プレート22の間隔は、ダブルフック8の厚み(前後方向の寸法)より大きく設定されている。また、第1プレート21及び第2プレート22は、斜め上方に平行に延設されている。さらに、第1プレート21は、分岐プレート21bが回動アーム13側に突出するように配置されている。
【0023】
回動アーム13は、回動アーム12と同様に、主プレート23a及び分岐プレート23bを含む第1プレート23と、第2プレート24とで構成されている。また、第1プレート23及び第2プレート24の構成及び配置は、第1プレート21及び第2プレート22と同様である。なお、第1プレート23は、分岐プレート23bが回動アーム12側に突出するように配置されている。
【0024】
但し、回動アーム12、13の厚み方向において、第1プレート21、23は反対側に配置され、第2プレート22、24は反対側に配置されている。より詳細には、前方から後方に向けて、第2プレート22、第1プレート23、第1プレート21、第2プレート24の順に支軸11に取り付けられている。そして、フック係合装置10を側面視したときに、分岐プレート21bは主プレート21aより時計回りの下流側に位置し、分岐プレート23bは主プレート23aより反時計回りの下流側に位置している。
【0025】
接続アーム14、15は、両端から中央に向かって直径が徐々に小さくなる略円柱形状の外形を呈する。接続アーム14は、回動アーム12の第1プレート21及び第2プレート22の上端部同士を接続する。接続アーム15は、回動アーム13の第1プレート23及び第2プレート24の上端部同士を接続する。
【0026】
接続アーム14、15は、ダブルフック8を構成するフック8a、8bが係合する一対の係合部として機能する。また、接続アーム14、15は、左右方向(回動アーム12、13のなす角を拡げる向き)に移動するダブルフック8に押圧されて、ロック機構18によるロックを解除する解除部として機能する。なお、係合部及び解除部としての機能は、後述する。
【0027】
リンクアーム16、17は、円柱形状の外形を呈する。リンクアーム16、17は、第1プレート21、23に取り付けられている。より詳細には、リンクアーム16は、分岐プレート21bの先端部から第2プレート22に向けて突出している。また、リンクアーム17は、分岐プレート23bの先端部から第2プレート24に向けて突出している。リンクアーム16、17は、第1角度θ1をなす回動アーム12、13の間に上方から進入したダブルフック8に押圧されることによって、回動アーム12、13のなす角を第1角度θ1から第2角度θ2に狭める。
【0028】
第2角度θ2は、左右方向において、回動アーム12、13の先端の間隔がダブルフック8の幅より小さくなる角度である。換言すれば、第2角度θ2は、回動アーム12、13の間からダブルフック8が上方に退出不能な角度である。第2角度θ2は、第1角度θ1より小さい角度である。第2角度θ2は、例えば、15°~30°に設定される。
【0029】
ロック機構18は、回動アーム12、13を第2角度θ2にロックする。本実施形態に係るロック機構18は、第1プレート23及び第2プレート22の間に配置されている。また、図示は省略するが、ロック機構18は、第1プレート21及び第2プレート24の間にも配置されている。
【0030】
ロック機構18は、例えば
図2及び
図4に示すように、凹部23cと、ボールプランジャ30とで構成される。凹部23cは、第1プレート23の前面(第2プレート22に対面する面)に形成されている。ボールプランジャ30は、第2プレート22の後面(第1プレート23に対面する面)に設けられた凹部に収容されている。
【0031】
ボールプランジャ30は、有底円筒体の筐体31と、筐体31の内部に収容されたボール32と、ボール32を筐体31の開口に向けて付勢するコイルバネ33とで構成されている。また、筐体31の開口の外縁には、ボール32が飛び出すのを阻止するリング部34が設けられている。なお、ボールプランジャ30の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0032】
そして、ボールプランジャ30は、回動アーム12、13が第1角度θ1のときに第1プレート23に対面せず、回動アーム12、13が第2角度θ2のときに第1プレート23の凹部23cに対面する位置に配置されている。これにより、回動アーム12、13が第1角度θ1から第2角度θ2に回動する過程において、ボール32は、第1プレート23の前面に押されて筐体31の内部に没入し、コイルバネ33の付勢力によって凹部23cに進入する。その結果、ロック機構18は、回動アーム12、13を第2角度θ2にロックする。換言すれば、ロック機構18は、回動アーム12、13が自重のみによって第2角度θ2から第1角度θ1に開くのを阻止する。
【0033】
次に、
図5及び
図6を参照して、フック係合装置10の動きを説明する。
図5は、ダブルフック8を係合させる過程のフック係合装置10の状態を示す図である。
図6は、ダブルフック8の係合を解除する過程のフック係合装置10の状態を示す図である。
【0034】
まず、ダブルフック8をフック係合装置10に係合させる場合、オペレータは、天井クレーンを操作して、第1角度θ1をなす回動アーム12、13の上方にダブルフック8を移動させる。次に、オペレータは、
図5(A)に示すように、ワイヤを繰り出してダブルフック8を下降させる。これにより、回動アーム12、13の間に上方からダブルフック8が進入する。
【0035】
そして、
図5(A)の位置からダブルフック8をさらに下降させると、ダブルフック8の下面がリンクアーム16、17を下向きに押圧する。これにより、回動アーム12は支軸11を中心に時計回りに回動し、回動アーム13は支軸11を中心に反時計回りに回動する。その結果、
図5(B)に示すように、回動アーム12、13のなす角が第1角度θ1から第2角度θ2に狭まる。また、
図4(B)に示すように、ボール32が凹部23cに進入して、回動アーム12、13が第2角度θ2にロックされる。
【0036】
次に、オペレータは、ワイヤを巻き取ってダブルフック8を上昇させる。これにより、
図5(C)に示すように、ダブルフック8が接続アーム14、15に係合する。より詳細には、フック8aが接続アーム14に係合し、フック8aが接続アーム15に係合する。このとき、接続アーム14、15が一対の係合部として機能する。
【0037】
そして、オペレータは、ワイヤを巻き取ってバキュームリフト1を地面から離間させ、天井クレーンを移動させてバキュームリフト1を所望の位置の直上に移動させ、ワイヤを繰り出してバキュームリフト1を所望の位置に接地させる。これにより、フック係合装置10に固定されたバキュームリフト1を所望の位置に移動させることができる。
【0038】
また、フック係合装置10に対するダブルフック8の係合を解除する場合、オペレータは、ワイヤをさらに繰り出してダブルフック8を下降させる。これにより、
図6(A)に示すように、フック8a、8bと接続アーム14、15との係合が解除され、ダブルフック8の下面がリンクアーム16、17より上方に位置する。
【0039】
次に、オペレータは、天井クレーンを操作して、ダブルフック8を左右(回動アーム12、13のなす角を拡げる向き)に移動させる。これにより、ダブルフック8の軸部で接続アーム14、15が左右方向に押圧されて、ロック機構18によるロックが解除される。このとき、接続アーム14、15が解除部として機能する。
【0040】
その結果、
図6(B)に示すように、回動アーム12、13は、自重によって角度を拡げる向きに回動し、支持部6、7に当接して停止する。このときの回動アーム12、13のなす角は、第1角度θ1である。そこで、オペレータは、ワイヤを巻き取ることによって、ダブルフック8を上昇させる。その結果、ダブルフック8は、回動アーム12、13の間から上方に退出する。
【0041】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0042】
上記の実施形態によれば、ダブルフック8でリンクアーム16、17を下方に押圧することによって、回動アーム12、13を第1角度θ1から第2角度θ2に狭めることができる。また、ダブルフック8で接続アーム14、15を左右方向に押圧することによって、回動アーム12、13を第2角度θ2から第1角度θ1に拡げることができる。このように、人手や外部動力に頼らずに、ダブルフック8の動きだけで回動アーム12、13を開閉することができるので、ダブルフック8と回動アーム12、13との着脱機構をシンプルな構成で実現することができる。
【0043】
また、上記の実施形態によれば、厚み方向に離間した第1プレート21、23及び第2プレート22、24で回動アーム12、13を構成することによって、回動アーム12、13の間に進入したダブルフック8が回動アーム12、13に干渉するのを防止できる。また、回動アーム12、13の厚み方向において、第1プレート21、23及び第2プレート22、24を逆向きに配置することによって、リンクアーム16、17の干渉を防止することができる。
【0044】
また、上記の実施形態によれば、周知の構成のボールプランジャ30を用いてロック機構18を構成することによって、シンプルな構成で回動アーム12、13のロック及びロック解除を行うことができる。また、第1プレート21及び第2プレート22を接続する機能と、係合部としての機能と、解除部としての機能とを、接続アーム14、15に持たせることによって、さらにシンプルな構成でフック係合装置10を実現できる。
【0045】
また、上記の実施形態によれば、回動アーム12、13を共通の支軸11で支持する(一軸構成)ことによって、特許文献1~4のような二軸構成と比較して、構成をさらにシンプルにすることができる。また、一軸構成のフック係合装置10は、支持ブロック2の左右方向の中央に支軸11を取り付ける。ここで、天井クレーンに取り付けられるのは、ダブルフック8に限定されず、シングルフックの場合もある。この場合、支軸11に代えて吊環を貫通孔5に取り付けるだけでシングルフックに対応できるので、使用場所(例えば、工場)の都合に応じた変更が容易になる。
【0046】
なお、リンク部、係合部、解除部、及びロック機構の具体的な構造は、前述の例に限定されない。また、ダブルフック8を昇降及び移動させるのは、天井クレーンに限定されず、ブーム式のクレーンでもよい。さらに、フック係合装置10を取り付ける対象は、バキュームリフト1に限定されない。
【符号の説明】
【0047】
1…バキュームリフト、2…支持ブロック、3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g…吸着パッド、4…ブラケット、5…貫通孔、6,7…支持部、8…ダブルフック、8a,8b…フック、10…フック係合装置、11…支軸、12,13…回動アーム、14,15…接続アーム、16,17…リンクアーム、18…ロック機構、21,23…第1プレート、21a,23a…主プレート、21b,23b…分岐プレート、23c…凹部、22,24…第2プレート、30…ボールプランジャ、31…筐体、32…ボール、33…コイルバネ、34…リング部