(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 210/16 20060101AFI20221115BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C08F210/16
C08J5/18 CES
(21)【出願番号】P 2021520971
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 KR2019013320
(87)【国際公開番号】W WO2020080744
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0124837
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】イ インジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ジソン
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-150520(JP,A)
【文献】特開平10-298234(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0081318(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0155474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/16
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Aで表される第1遷移金属化合物および下記化学式Bで表される第2遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィン系単量体を重合して得られるオレフィン系重合体の製造方法であって、
前記オレフィン系重合体は、
(1)多分散指数(Mw/Mn)による分子量分布が5~20、
(2)密度が0.910g/cm
3~0.930g/cm
3、
(3)2.16kg荷重で190℃にて測定時、メルトインデックス(melt index)が0.5、/10分~2.0、/10分
、
(4)メルトインデックス比(MI
21.6/MI
2.16)が20~3
0、および、
(5)周波数(frequency、rad/s)による複素粘度(complex viscosity、Pa・s)のグラフを下記数式2の冪乗則(power law)でフィッティングしたときのc
2
値が-0.3~-0.2である、オレフィン系重合体の製造方法:
[数式2]
y=c
1
x
c2
【化1】
前記数式2において、xは周波数、yは複素粘度、c
1
は粘稠度指数(consistency index)、c
2
はCVインデックスと言い、
前記化学式AおよびBにおいて、
nとoはそれぞれ1または2であり、mとlはそれぞれ1であり、
Mはジルコニウム(Zr)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲンであり、
Qは炭素(C)であり、
R
1
~R
2
は、それぞれ独立して、置換または非置換のC
1-20
アルキル、置換または非置換のC
2-20
アルケニル、置換または非置換のC
6-20
アリール、置換または非置換のC
1-20
アルキルC
6-20
アリール、置換または非置換のC
6-20
アリールC
1-20
アルキル、置換または非置換のC
1-20
ヘテロアルキル、置換または非置換のC
3-20
ヘテロアリール、置換または非置換の
C1-20
アルキルアミド、置換または非置換のC
6-20
アリールアミド、または置換または非置換のC
1-20
シリルであり、
R
1
とR
2
の少なくとも一つは、独立して隣接する基が結合され置換または非置換の不飽和C
4-20
環を形成し、
R
3
~R
5
はそれぞれC
1-20
アルキルであり、
R
6
とR
7
はそれぞれC
6-20
アリールである。
【請求項2】
前記オレフィン系重合体は、重量平均分子量(Mw)が50000g/mol~250000g/molである、請求項1に記載のオレフィン系重合体
の製造方法。
【請求項3】
前記オレフィン系重合体は、下記数式1で計算される広域直交組成分布指数(Broad Orthogonal Comonomer Distribution index、BOCDインデックス)が0~3.0である、請求項1に記載のオレフィン系重合体
の製造方法:
[数式1]
BOCDインデックス=(高分子量成分中の短鎖分枝含有量-低分子量成分中の短鎖分枝含有量)/(低分子量成分中の短鎖分枝含有量)。
【請求項4】
前記オレフィン系重合体は、10000個炭素当たりの長鎖分枝の含有量が0.01個~0.1個である、請求項1に記載のオレフィン系重合体
の製造方法。
【請求項5】
前記オレフィン系重合体は、下記数式3で計算されるせん断減粘指数(shear thinning index)が10~15である、請求項1に記載のオレフィン系重合体
の製造方法:
[数式3]
せん断減粘指数=η
0/η
500
前記数式3において、η
0は周波数0.1rad/sにおける複素粘度であり、η
500は周波数500rad/sにおける複素粘度である。
【請求項6】
前記オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体との共重合体である、請求項1に記載のオレフィン系重合体
の製造方法。
【請求項7】
前記オレフィン系単量体がエチレンであり、前記オレフィン系共単量体がプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、および1-ヘキサデセンからなる群より選択される1つ以上である、請求項
6に記載のオレフィン系重合体
の製造方法。
【請求項8】
前記オレフィン系重合体は、前記オレフィン系単量体がエチレンであり、前記オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである線形低密度ポリエチレンである、請求項
7に記載のオレフィン系重合体
の製造方法。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項によるオレフィン系重合体
の製造方法により得られたオレフィン系重合体を成形して
フィルムを製造
する、フィルム
の製造方法。
【請求項10】
前記フィルムは、ヘイズが10%以下であり、落下衝撃強度が600g以上である、請求項
9に記載のフィルム
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体およびそれにより製造されるフィルムに関するものである。具体的に、本発明は、異種の遷移金属化合物を含む混成触媒により調製され、加工性に優れ、衝撃強度およびヘイズ(haze)に優れたオレフィン系重合体、特に線形低密度ポリエチレンおよびそれにより製造されるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを重合するために用いられる触媒の一つであるメタロセン触媒は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物に、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、インデニル(indenyl)、シクロヘプタジエニル(cycloheptadienyl)などのリガンドが配位結合された化合物としてサンドイッチ構造を基本的な形態として有する。
【0003】
オレフィンを重合するために用いられる他の触媒であるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒が、活性点である金属成分が不活性の固体表面に分散され活性点の性質が均一でないのに対し、メタロセン触媒は、一定の構造を有する1つの化合物であるため、すべての活性点が同一である重合特性を有する単一活性点触媒(single-site catalyst)として知られている。このようなメタロセン触媒で重合された高分子は、分子量の分布が狭く、共単量体の分布が均一な特徴を示す。
【0004】
一方、線形低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene;LLDPE)は、重合触媒を使用して低圧にてエチレンとα-オレフィンとを共重合して調製され、分子量分布が狭く、一定の長さの短鎖分枝(short chain branch;SCB)を有し、一般的に長鎖分枝(long chain branch;LCB)を有さない。線形低密度ポリエチレンで製造されたフィルムは、一般ポリエチレンの特性に加え、破断強度と伸び率が高く、引裂強度、衝撃強度などに優れ、従来の低密度ポリエチレン(low-density polyethylene)や高密度ポリエチレン(high-density polyethylene)の適用が難しいストレッチフィルム、オーバーラップフィルムなどに広く用いられている。
【0005】
メタロセン触媒により調製される線形低密度ポリエチレンは、加工性とフィルムのヘイズに優れると、フィルムの強度が低下する傾向がある。逆に、フィルムの強度が優れると、加工性とヘイズが低下する傾向がある。
【0006】
したがって、加工性に優れるだけでなく、衝撃強度とヘイズに優れるフィルムを提供できるオレフィン系重合体、特に線形低密度ポリオレフィンが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加工性に優れるだけでなく、衝撃強度とヘイズに優れるオレフィン系重合体、特に線形低密度ポリエチレンを提供するものである。
【0008】
本発明の他の目的は、オレフィン系重合体、特に線形低密度ポリエチレンを成形して製造され、衝撃強度およびヘイズに優れるフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するための本発明の一具体例により、(1)多分散指数(Mw/Mn)による分子量分布が5~20、(2)密度が0.910g/cm3~0.930g/cm3、(3)2.16kg荷重で190℃にて測定時、メルトインデックス(melt index)が0.5g/10分~2.0g/10分、および(4)メルトインデックス比(MI21.6/MI2.16)が20~30であるオレフィン系重合体が提供される。
【0010】
好ましくは、オレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)が50000g/mol~250000g/molである。
【0011】
オレフィン系重合体の下記数式1で計算される広域直交組成分布指数(BOCDインデックス:Broad Orthogonal Comonomer Distribution index)が0~3.0である。
【0012】
[数式1]
BOCDインデックス=(高分子量成分中の短鎖分枝含有量-低分子量成分中の短鎖分枝含有量)/(低分子量成分中の短鎖分枝含有量)
オレフィン系重合体の10000個の炭素当たりの長鎖分枝の含有量が0.01個~0.1個である。
【0013】
オレフィン系重合体は、周波数(frequency、rad/s)による複素粘度(complex viscosity、Pa・s)のグラフを下記数式2の冪乗則(powerlaw)でフィッティングしたときにc2値が-0.3~-0.2である。
【0014】
[数式2]
y=c1xc2
オレフィン系重合体は、下記数式3で計算されるせん断減粘指数(shear thinning index)が10~15である。
【0015】
[数式3]
せん断減粘指数=η0/η500
前記数式3において、η0は周波数0.1rad/sにおける複素粘度であり、η500は周波数500rad/sにおける複素粘度である。
【0016】
オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体との共重合体である。具体的に、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、および1-ヘキサデセンからなる群より選択される1つ以上である。
【0017】
好ましくは、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである線形低密度ポリエチレンである。
【0018】
本発明の他の具体例により、オレフィン系重合体を成形して製造されるフィルムが提供される。
【0019】
前記フィルムは、ヘイズが10%以下であり、落下衝撃強度が600g以上である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の具体例によるオレフィン重合用メタロセン触媒の存在下で調製されるオレフィン系重合体は、加工性に優れるだけでなく、衝撃強度とヘイズに優れる。したがって、それにより製造されるフィルムは、衝撃強度とヘイズに優れるため、ストレッチフィルム、オーバーラップフィルムなどとして効果的に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】
図1aは、本発明の実施例1におけるオレフィン系重合体のBOCDインデックス測定のためのGPC-FTIRグラフである。
【
図1b】
図1bは、本発明の実施例2におけるオレフィン系重合体のBOCDインデックスの測定のためのGPC-FTIRグラフである。
【
図2】
図2は、本発明の実施例と比較例におけるオレフィン系重合体の溶融強度測定のためのグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の実施例と比較例におけるオレフィン系重合体の周波数による複素粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0023】
[オレフィン重合用触媒]
本発明の一具体例によるオレフィン重合用触媒は、下記化学式Aで表される第1遷移金属化合物および下記化学式Bで表される第2遷移金属化合物を含む。
【0024】
【0025】
前記化学式AおよびBにおいて、nとoはそれぞれ0~2の整数であるが少なくとも1つはゼロ(0)ではなく、mとlはそれぞれ0~4の整数である。具体的に、nとoは、それぞれ1または2であり得、mとlはそれぞれ1であり得る。
【0026】
Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)である。具体的に、Mはジルコニウム(Zr)であり得る。
【0027】
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、C6-20アリールアミド、またはC1-20アルキリデンである。具体的に、Xはそれぞれハロゲンであり得る。より具体的に、Xはそれぞれ塩素(Cl)であり得る。
【0028】
Qは、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、または錫(Sn)である。具体的に、Qは炭素(C)であり得る。
【0029】
R1~R7は、それぞれ独立して、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、置換または非置換のC1-20アルキリデン、または置換または非置換のC1-20シリルである。ただし、R1とR2の少なくとも一つは、独立して隣接する基が結合され置換または非置換の飽和または不飽和C4-20環を形成する。また、R3~R7は、それぞれ独立して隣接する基が結合され置換または非置換の飽和または不飽和C4-20環を形成し得る。
【0030】
具体的に、R1とR2の少なくとも一つは、独立して隣接する基が結合され置換または非置換の不飽和C4-20環を形成し得る。より具体的に、R1とR2のそれぞれ隣接する基が結合され非置換の不飽和C4環を形成し得る。
【0031】
具体的に、R3はC1-20アルキルであり得る。より具体的に、R3はC1-6アルキルであり得る。好ましくは、R3はn-ブチルである。
【0032】
具体的に、R4とR5は、それぞれC1-20アルキルであり得る。より具体的に、R4とR5は、それぞれC1-6アルキルであり得る。好ましくは、R4とR5は、それぞれt-ブチルである。
【0033】
具体的に、R6とR7は、それぞれC6-20アリールであり得る。より具体的に、R6とR7は、それぞれフェニルであり得る。
【0034】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式Aで表される化合物が、下記化学式A-1で表される化合物であり得る。また、前記化学式Bに表される化合物が、下記化学式B-1で表される化合物であり得る。
【0035】
【0036】
本発明の具体例によるオレフィン重合用触媒は、前記第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とを20:1~1:20の重量比で含み得る。好ましくは、オレフィン重合用触媒が、第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とを10:1~1:10の重量比で含み得る。より好ましくは、オレフィン重合用触媒が、第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とを6:4~4:6の重量比で含み得る。第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物との含有量比が前記範囲内であると、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面から有利であり得る。さらに、前記範囲を満足するオレフィン重合用触媒の存在下で調製されたオレフィン系重合体は優れた加工性を示し、これにより製造されるフィルムは、優れた強度とヘイズを示し得る。
【0037】
一般に、少量の短鎖分枝(short chain branch;SCB)を含むオレフィン系重合体は、光学性において劣勢を示すものと知られており、多量の長鎖分枝(long chain branch;LCB)を含むオレフィン系重合体は、過度に高い弾性を有するため機械的物性において劣勢を示すものと知られている。
【0038】
前記第1遷移金属化合物を単独で使用して得られたオレフィン系重合体の場合、少量の短鎖分枝を含み、光学性において比較的劣勢を示し、前記第2遷移金属化合物を単独で使用して得られたオレフィン系重合体の場合、多量の短鎖分枝と長鎖分枝とを含み、光学性においては優れた特性を示すが、機械的物性においては比較的劣勢を示す。すなわち、第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とをそれぞれ単独で用いるか、第1遷移金属化合物または第2遷移金属化合物のいずれかの割合が高すぎると、光学性および機械的物性の両方を満足させることは難しいことが実験的に確認される。
【0039】
一方、前記第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とを0.4:1~2.5:1の重量比で含むオレフィン重合用触媒の場合、優れた強度とヘイズを示すオレフィン系重合体を得ることができる。
【0040】
好ましい実施例として、本発明の具体例によるオレフィン重合用触媒は、助触媒化合物をさらに含み得る。
【0041】
なお、助触媒化合物は、下記化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物、および化学式3で表される化合物のうち一つ以上を含み得る。
【0042】
【0043】
前記化学式1において、nは2以上の整数であり、Raはハロゲン原子、C1-20炭化水素、またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素であり得る。具体的に、Raはメチル、エチル、n-ブチル、またはイソブチルであり得る。
【0044】
【0045】
前記化学式2において、Dはアルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基、またはC1-20アルコキシ基である。具体的に、Dがアルミニウム(Al)のとき、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立してメチルまたはイソブチルであり得、Dがボロン(B)のとき、Rb、RcおよびRdはそれぞれペンタフルオロフェニルであり得る。
【0046】
[化学式3]
[L-H]+[Z(A)4]-または[L]+[Z(A)4]-
【0047】
前記化学式3において、Lは中性または陽イオン性ルイス塩基であり、[LH]+および[L]+はブレンステッド酸であり、Zは13族元素であり、Aはそれぞれ独立して置換または非置換のC6-20アリール基であるか、置換または非置換のC1-20アルキル基である。具体的に、[LH]+はジメチルアニリニウム陽イオンであり得、[Z(A)4]-は[B(C6F5)4]-であり得、[L]+は[(C6H5)3C]+であり得る。
【0048】
前記化学式1で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン等が挙げられ、メチルアルミノキサンが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記化学式2で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロン等が挙げられ、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記化学式3で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられる。
【0051】
好ましい実施例として、本発明の具体例によるオレフィン重合用触媒は、前記第1遷移金属化合物、第2遷移金属化合物、またはその両方を担持する担体をさらに含み得る。好ましくは、オレフィン重合用触媒が、前記第1遷移金属化合物、第2遷移金属化合物、および助触媒化合物のいずれも担持する担体をさらに含み得る。
【0052】
この際、担体は、表面にヒドロキシ基を含有する物質を含んでも良く、好ましくは、乾燥され表面に水分が除去された、反応性の大きいヒドロキシ基とシロキサン基とを有する物質が使用され得る。例えば、担体は、シリカ、アルミナ、および酸化マグネシウム(マグネシア)からなる群より選択される少なくとも一つを含み得る。具体的に、高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシア等が担体として用いられ得、これらは通常、Na2O、K2CO3、BaSO4、およびMg(NO3)2等の酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有し得る。また、これらは、炭素、ゼオライト、塩化マグネシウム等をも含み得る。ただし、担体は、これらに限定されるものではなく、第1および第2遷移金属化合物と助触媒化合物とを担持できるものであれば特に制限されない。
【0053】
オレフィン重合用触媒に使用され得る遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持する方法として、物理的吸着方法または化学的吸着方法が使用され得る。
【0054】
例えば、物理的吸着方法は、遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥する方法、遷移金属化合物と助触媒化合物とが溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥する方法、または遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥して、遷移金属化合物が担持されている担体を調製し、これとは別に、助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥して、助触媒化合物が担持されている担体を調製した後、これらを混合する方法等であり得る。
【0055】
化学的吸着方法は、担体の表面に助触媒化合物を先に担持させた後、助触媒化合物に遷移金属化合物を担持させる方法、または担体の表面の官能基(例えば、シリカの場合、シリカ表面のヒドロキシ基(-OH))と触媒化合物を共有結合させる方法等であり得る。
【0056】
担体に担持される第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物との総量は、担体1gを基準に、0.001mmol~1mmolであり得る。遷移金属化合物と担体との比が上記範囲を満足すると、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面から有利である。
【0057】
担体に担持される助触媒化合物の量は、担体1gを基準に2mmol~15mmolであり得る。助触媒化合物と担体との比が上記範囲を満足すると、触媒の活性維持および経済性の面から有利である。
【0058】
担体は、1種または2種以上が使用され得る。例えば、1種の担体に第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とがいずれも担持されても良く、2種以上の担体に第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とがそれぞれ担持されても良い。また、第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物との一方のみが担体に担持されても良い。
【0059】
好ましくは、オレフィン重合用触媒が、第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とがともに担持されている混成担持触媒である。より好ましくは、単一種の担体に第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とがともに担持されている混成担持触媒である。
【0060】
例えば、オレフィン重合用触媒が、第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物と助触媒化合物とがシリカにともに担持されている混成担持触媒であり得る。ただし、本発明の実施例がこれに限定されるものではない。
【0061】
本発明の他の具体例により、前述のオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィン系単量体が重合され調製されるオレフィン系重合体が提供される。
【0062】
なお、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体の単独重合体(homopolymer)またはオレフィン系単量体と共単量体との共重合体(copolymer)であり得る。
【0063】
オレフィン系単量体は、C2-20α-オレフィン(α-olefin)、C1-20ジオレフィン(diolefin)、C3-20シクロオレフィン(cycloolefin)、およびとC3-20シクロジオレフィン(cyclodiolefin)からなる群より選択される少なくとも一つである。
【0064】
例えば、オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、または1-ヘキサデセン等であり得、オレフィン系重合体は、前記例示されたオレフィン系単量体を1種のみ含む単独重合体か、または2種以上を含む共重合体であり得る。
【0065】
例示的な実施例において、オレフィン系重合体は、エチレンとC3-20α-オレフィンが共重合された共重合体であり得、エチレンと1-ヘキセンとが共重合された共重合体が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
この場合、エチレンの含有量は55重量%~99.9重量%であることが好ましく、90重量%~99.9重量%であることがより好ましい。α-オレフィン系共単量体の含有量は、0.1重量%~45重量%が好ましく、0.1重量%~10重量%であることがより好ましい。
【0067】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、例えば、フリーラジカル(free radical)、陽イオン(cationic)、配位(coordination)、縮合(condensation)、添加(addition)などの重合反応により重合され得るが、これらに限定されるものではない。
【0068】
好ましい実施例として、オレフィン系重合体は、気相重合法、溶液重合法、またはスラリー重合法などにより調製され得る。オレフィン系重合体が溶液重合法またはスラリー重合法により調製される場合、使用され得る溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体のようなC5-12脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒;およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
[オレフィン系重合体]
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、(1)多分散指数(Mw/Mn)による分子量分布が5~20、(2)密度が0.910g/cm3~0.930g/cm3、(3)2.16kg荷重で190℃にて測定時、メルトインデックス(melt index)が0.5g/10分~2.0g/10分、および(4)メルトインデックス比(MFR;MI21.6/MI2.16)が20~30を満足する。
【0070】
前記オレフィン系重合体は、前述の混成担持オレフィン重合用触媒の存在下で重合され、比較的広い分子量分布を有する。具体的に、オレフィン系重合体の多分散指数(Mw/Mn)による分子量分布は5~20である。好ましくは、オレフィン系重合体の多分散指数(Mw/Mn)による分子量分布が6~15であり得る。オレフィン系重合体が比較的広い分子量分布を有することにより、オレフィン系重合体が優れた加工性を示し、これにより得られるフィルムの耐衝撃強度が良好であり得る。
【0071】
前記オレフィン系重合体は、密度が0.910g/cm3~0.930g/cm3範囲である低密度ポリエチレン共重合体である。好ましくは、オレフィン系重合体の密度が0.915g/cm3~0.925g/cm3範囲である。オレフィン系重合体の密度がこの範囲内であると、このオレフィン系重合体から得られるフィルムの耐衝撃強度が良好であり得る。
【0072】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体を調製するにおいて、オレフィン系重合体の密度は、エチレン含有量に対するα-オレフィン、好ましくは1-ヘキセンの含有量によって調節され得る。例えば、エチレンに対するα-オレフィンの含有量が少ないほど密度は高くなり、α-オレフィンの含有量が多いほど密度は低くなる。したがって、オレフィン系重合体中のエチレン含有量に対するα-オレフィンの含有量を調節することにより、前記範囲に属する密度を有するオレフィン系重合体を調製することができる。
【0073】
本発明のオレフィン系重合体は、ASTM D1238に基づいて2.16kg荷重で190℃にて測定時、メルトインデックスが0.5g/10分~2.0g/10分である。好ましくは、オレフィン系重合体の2.16kg荷重で190℃にて測定時、メルトインデックスが0.5g/10分~1.5g/10分の範囲である。オレフィン系重合体のメルトインデックスがこの範囲内の場合、オレフィン系重合体の加工性と、これにより得られるフィルムの機械的物性とを調和させ得る。
【0074】
前記オレフィン系重合体は、ASTM D1238に基づいて21.6kgの荷重に190℃にて測定されたメルトインデックスを、2.16kg荷重で190℃にて測定されたメルトインデックスで割った値(melt flow ratio;MFR)が20~30である。好ましくは、オレフィン系重合体のMFRが22~26の範囲である。オレフィン系重合体のMFRが前記範囲内であると、優れた加工性を示し、特にインフレーションフィルム(blown-film)の製造に適している。
【0075】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、重量平均分子量(Mw)が50000g/mol~250000g/molであり得る。好ましくは、重量平均分子量が70000~g/mol150000g/molであり得る。なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;GPC)を用いて測定した標準ポリスチレン基準の換算値である。オレフィン系重合体の重量平均分子量がこの範囲内であると、これにより製造されるフィルムの機械的物性が良好であり得る。
【0076】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、BOCDインデックスが0~3.0であり得る。
【0077】
なお、BOCDインデックスとは、重合体の主鎖(main chain)に付いている炭素数2~6の短鎖分枝が相対的に高分子量の成分にどのくらい存在するかを示す尺度である。BOCDインデックスが0以下であるとBOCD構造の重合体ではなく、0よりも大きいとBOCD構造の重合体と見做せる。
【0078】
GPC-FTIR装置を利用して、重合体の分子量、分子量分布および短鎖分枝含有量を同時に連続的に測定し得るが、BOCDインデックスは、重量平均分子量(Mw)を基準に、分子量分布(MWD)の左右30%(総60%)の範囲で短鎖分枝の含有量(単位:個/1000C)を測定して下記数式1で計算できる。
【0079】
[数式1]
BOCDインデックス=(高分子量成分中の短鎖分枝含有量-低分子量成分中の短鎖分枝含有量)/(低分子量成分中の短鎖分枝含有量)
【0080】
BOCD構造を有する重合体は、低分子量成分よりも相対的に物性を担当する高分子量成分に短鎖分枝のようなタイ分子(tie molecular)が多く存在することにより、重合体が優れた耐衝撃強度などの物性を有し得る。
【0081】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、10000個の炭素当たり長鎖分枝の含有量が0.01個~0.1個であり得る。
【0082】
長鎖分枝とは、オレフィン系重合体の主鎖に付いている7以上の炭素数を有する長い枝(branch)のことを意味し、通常、共単量体として1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンのようなα-オレフィンを使用する場合形成され得る。
【0083】
長鎖分枝は、重合体間の空きスペースを満たす物理的な効果を誘発するため、一般的に溶融重合体の粘度と弾性に影響を与えるものと知られている。重合体の鎖内の長鎖分枝が増加して重合体鎖の絡みが強くなると、同一分子量における固有粘度(intrinsic viscosity)が低くなり、押出、射出の際、スクリューに負荷が低く加わり加工性が高くなる。
【0084】
本発明において、オレフィン系重合体の長鎖分枝は、文献(Macromolecules,Vol.33,No. 29,pp.7481-7488(2000))に記載された方法により測定し得る。
【0085】
アントンパール社(Anton Paar GmbH)のMCR702を用いて測定された複素粘度(complex viscosity)により分子量分布(MWD)の値をフィッティングしてその最大ピーク(maximum peak)値を取り、3D-GPCによるMWD値の最大(maximum)値を取って、その比率から長鎖分枝の余否を判断する。その比率が1未満であれば長鎖分枝値は0であり(下記関係式1a)、1を超えると下記関係式1bの計算値を取る。
【0086】
【0087】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、溶融強度(melt strength)に優れる。
【0088】
オレフィン系重合体をインフレーションフィルム(blown-film)として成形するために、溶融重合体に空気を注入してフィルムを製造する際に、製造されるフィルムが破れずに形状を維持する特性をバブル安定性という。このバブル安定性は溶融強度と関連する。
【0089】
溶融強度とは、溶融または軟化状態の重合体をブローイングや延伸のような加工を行う際、張力に耐える力のことを意味するが、本発明のオレフィン系重合体の場合、高分子量成分に短鎖分枝が比較的多く存在し、また、重合体主鎖に長鎖分枝も付いているので、高い溶融強度を示し得る。
【0090】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、周波数(frequency、rad/s)による複素粘度(complex viscosity、Pa・s)のグラフを下記数式2の冪乗則(power law)でフィッティングしたときのc2値が-0.3~-0.2である。
【0091】
[数式2]
y=c1xc2
【0092】
高分子は、溶融状態で完全な弾性の物質と粘性の液体との中間程度の性質を有するが、これを粘弾性(viscoelasticity)という。つまり、高分子は溶融状態でせん断応力を受けると、変形がせん断応力に比例せず、また、せん断応力に応じて粘性が変化する特性がある。このような特性は、高分子が巨大な分子サイズと複雑な分子間構造とを有することに起因するものと理解される。
【0093】
特に、高分子を利用して成形品を製造する場合、せん断減粘(shear thinning)現象が重要に考慮される。せん断減粘現象とは、せん断速度(shear rate)が増加するにつれ、高分子の粘性が減少する現象のことを意味するが、このようなせん断減粘の特性は、高分子の成形方法に大きな影響を与える。
【0094】
前記数式2は、オレフィン系重合体のせん断減粘特性を定量的に評価するためのモデルであり、また、周波数による複素粘度のデータを適用して、高い周波数における複素粘度を予測するためのものである。数式2において、xは周波数を、yは複素粘度のことを指し、2つの変数であるc1は粘稠度指数(consistency index)と言い、c2はCVインデックスと言い、グラフの傾きのことを指す。低い周波数において複素粘度が高いほど物性が良く、高い周波数において複素粘度が低いほど加工性が良いので、c2値が小さいほど、すなわち、グラフの負の傾きが大きいほど望ましい。
【0095】
周波数による複素粘度は、例えば、アントンパール社(Anton Paar GmbH)のMCR702を用いて190℃にて0.1rad/s~500rad/sの周波数範囲および5%の変形(strain)条件で測定し得る。
【0096】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、下記数式3で計算されるせん断減粘指数(shear thinning index)が10~15であり得る。
【0097】
[数式3]
せん断減粘指数=η0/η500
【0098】
前記数式3において、η0は周波数0.1rad/sにおける複素粘度であり、η500は周波数500rad/sにおける複素粘度である。
【0099】
せん断減粘指数が大きいほど低い周波数において複素粘度が高く、高い周波数において複素粘度が低いので、重合体の物性と加工性に優れ得る。
【0100】
[フィルム]
本発明のまた他の具体例により、オレフィン系重合体を成形して製造されるフィルムが提供される。
【0101】
本発明の具体例によるフィルムは、本発明のオレフィン系重合体を含むことにより、ヘイズのような光学性および耐衝撃強度のような機械的物性に優れる。本発明のオレフィン系重合体は、比較的広い分子量分布を有し、高分子量成分に短鎖分枝が相対的に多く存在するため、これにより製造されるフィルムのヘイズと耐衝撃強度が優れるものと理解される。
【0102】
具体的に、本発明の具体例によるフィルムはヘイズが10%以下であり、落下衝撃強度が600g以上である。
【0103】
例示的な実施例において、本発明のフィルムは、ヘイズが8%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは6.5%以下である。
【0104】
また、本発明のフィルムは、落下衝撃強度が650g以上、好ましくは700g以上、より好ましくは800g以上である。
【0105】
本発明の具体例によるフィルムの製造方法は特に制限されず、本発明が属する技術分野に公知の方法を使用し得る。例えば、本発明の具体例によるオレフィン系重合体をインフレーションフィルム(Blown-film)成形、押出成形、キャスティング成形などの通常の方法により加工してフィルムを製造し得る。中でも、インフレーションフィルム成形が最も好ましい。
【0106】
(実施例)
以下、実施例と比較例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0107】
(調製例1)
sPCI社から購入した前記化学式A-1の遷移金属化合物を精製過程なく使用しており、前記化学式B-1の遷移金属化合物は、MCN社から購入して、追加の精製過程なく使用した。
【0108】
前記化学式A-1の化合物2.7387gと、前記化学式B-1の化合物3.3741gとを、グローブボックス内でメチルアルミノキサン(MAO)10重量%のトルエン溶液991.69gと混合(Al/Zr=150)し、1時間常温で撹拌した。一方、シリカ(XP2402)250gを反応器に投入し、精製されたトルエン500mlを加えて混合した。その後、シリカスラリーに遷移金属化合物溶液を注入し、75℃のオイル槽で3時間撹拌した。担持が終わった触媒をトルエンにより3回洗浄し、60℃の真空にて30分間乾燥させ、自由流動性粉体状の混成担持触媒355gを得た。
【0109】
(調製例2)
前記化学式A-1の化合物1.8310gと、前記化学式B-1の化合物5.0754gを用いたことを除いては、調製例1と同様の方法により混成担持触媒356gを得た。
【0110】
(調製例3)
前記化学式B-1の化合物8.5302gを単独で用いたことを除いては、調製例1と同様の方法により担持触媒359gを得た。
【0111】
(実施例1)
流動層気相反応器を用いて、調製例1で得られた混成担持触媒の存在下でエチレン/1-ヘキセン共重合体を調製した。反応器内の温度は80℃~90℃の範囲に維持し、エチレンと1-ヘキセンの他に水素を添加して、調製されるエチレン/1-ヘキセン共重合体の重合度を調節した。
【0112】
次いで、40mm径のスクリュー、75mm径のダイ、およびと2mmのダイギャップを有する押出機にて、80rpmのスクリュー速度でエチレン/1-ヘキセン共重合体を押出し、2.0のブロー-アップ比でインフレーションフィルム成形により厚さ50μmのフィルムを得た。
【0113】
(実施例2)
調製例2で得られた混成担持触媒を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法によりエチレン/1-ヘキセン共重合体を調製した。次いで、実施例1と同様の方法により成形して厚さ50μmのフィルムを得た。
【0114】
(比較例1)
調製例3で得られた担持触媒を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法によりエチレン/1-ヘキセン共重合体を調製した。次いで、実施例1と同様の方法により成形して厚さ50μmのフィルムを得た。
【0115】
(比較例2)
単一メタロセン触媒で調製されたハンファケミカル社の線形低密度ポリエチレン(M1810HN)を使用した。この樹脂を、実施例1と同様の方法により成形して厚さ50μmのフィルムを得た。
【0116】
実施例1と実施例2および比較例1において、反応器内のエチレンの圧力および添加される原料ガスのモル比などの反応条件は、下記表1に示す通りである。
【0117】
【0118】
(試験例)
前記実施例および比較例の樹脂およびフィルムの物性を、下記のような方法および基準に従って測定した。その結果を、下記表2および表3にそれぞれ示した。
【0119】
(1)メルトインデックス(melt index)
ASTM D1238に基づいて2.16kgの荷重で190℃にて測定した。
【0120】
(2)メルトインデックス比(melt flow ratio;MFR)
ASTM D 1238に基づいて2.16kgの荷重と21.6kgの荷重で190℃にてそれぞれ溶融指数を測定し、その比(MI21.6/MI2.16)を求めた。
【0121】
(3)密度(density)
ASTM D1505に基づいて測定した。
【0122】
(4)分子量および分子量分布
ゲル透過クロマトグラフィー-フーリエ変換赤外分光光度計(GPC-FTIR)を用いて測定した。
【0123】
(5)BOCDインデックス
ゲル透過クロマトグラフィー-フーリエ変換赤外分光光度計(GPC-FTIR)を用いて測定した。
【0124】
(6)長鎖分枝(LCB)数
MCR702(Anton Parr社)を用いて測定された複素粘度(complex viscosity)により分子量分布(MWD)値をフィッティングして、その最大ピーク(maximum peak)値を取り、3D-GPCによるMWD値の最大(maximum)値を取って、その比率から前記関係式1aと1bを利用して長鎖分枝を求めた。
【0125】
(7)周波数による複素粘度
MCR702(Anton Parr社)を用いて、190℃にて0.1rad/s~500rad/sの周波数範囲および5%の変形(strain)条件で測定した。
【0126】
(8)フィルム加工および押出負荷
75mmΦダイ、2mmダイギャップのフィルム加工機において、40mmΦスクリューを用いて、インフレーションフィルムを製造した。スクリュー速度は80rpm、ブロー-アップ比(blow-up ratio;BUR)は2に固定して、50μmの厚さのフィルムを加工し、その際の押出負荷を測定した。
【0127】
(9)落下衝撃強度(B-type)
ASTM D1790に基づいて測定した。
【0128】
(10)エルメンドルフ(Elmendorf)引裂強度
ASTM D1922に基づいて、フィルムの機械方向(MD)および幅方向(TD)で測定した。
【0129】
(11)引張強度
ASTM D882に基づいて、フィルムの機械方向(MD)および幅方向(TD)で測定した。
【0130】
(12)ヘイズ(haze)
ASTM D1003に基づいてインフレーションフィルムのヘイズを測定した。
【0131】
【0132】
【0133】
表2、3、および
図1~
図3から確認されるように、本発明の実施例で調製された混成担持触媒の存在下で生産されたオレフィン系重合体は、分子量分布が広く、高分子量成分に短鎖分枝が相対的に多く存在し、長鎖分枝をも有する。このような構造的な特徴により、オレフィン系重合体の加工性に優れるのみならず、比較例のオレフィン系重合体から製造されたフィルムに比べて、落下衝撃強度のような機械的物性およびヘイズのような光学的特性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
したがって、本発明の具体例による混成担持触媒は、加工性に優れ、衝撃強度およびヘイズ(haze)に優れるオレフィン系重合体を提供することができ、このオレフィン系重合体により製造されるフィルムは、ストレッチフィルム、オーバーラップフィルム、ラミー(ramie)、サイレージラップ、農業用フィルムなどとして効果的に使用され得る。