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特許7177269改良されたリン回収プロセス及びプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】改良されたリン回収プロセス及びプラント
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20221115BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20221115BHJP
   C02F 11/08 20060101ALI20221115BHJP
   C02F 11/12 20190101ALI20221115BHJP
   C02F 11/127 20190101ALI20221115BHJP
【FI】
C02F11/00 C ZAB
C02F11/04
C02F11/08
C02F11/12
C02F11/127
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021527820
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2019082131
(87)【国際公開番号】W WO2020104610
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】18207649.7
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18211017.1
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521213211
【氏名又は名称】キャンビ テクノロジー エイエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルテ、ハンス ラスマス
(72)【発明者】
【氏名】リングート、デイヴィー ペー.エム.
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-510809(JP,A)
【文献】特表2016-508876(JP,A)
【文献】特開2003-275789(JP,A)
【文献】特開平04-131195(JP,A)
【文献】米国特許第05141646(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0134089(US,A1)
【文献】特開2004-000941(JP,A)
【文献】特開2003-094014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
C02F 3/28- 3/34
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸をバイオマス材料から回収するための方法であって、下記の工程:
(a)接触タンクにおいて、前記バイオマス材料を、混合汚泥を生成させるために、工程(g)からの液体濃縮物流(g2)と一緒にして接触させる工程、
(b)シックナーユニットにおいて、工程(a)の前記混合汚泥を、P及びMgのレベルが低下している濃縮された濃厚化汚泥生成物(b1)と、P及びMgに富む液体濃縮物流(b2)とに分離する工程、
(c)前記濃縮された濃厚化汚泥生成物(b1)を、バイオガス流と消化汚泥生成物とを生成させ、前記バイオガスを回収するために、嫌気的消化槽における嫌気的消化段階に供する工程、
(d)(第1の脱水段階において)前記消化汚泥生成物を、固体粒子を含有する第1の消化汚泥生成物(d1)と、PO-P及びNH-Nに富む液体濃縮物(d2)とに分離する工程、
(e)工程(b)からの、P及びMgに富む前記液体濃縮物(b2)と、工程(d)からの、PO-P及びNH-Nに富む前記液体濃縮物(d2)とを、リン酸塩を生成させるためのリン酸回収プロセスに移す工程、
(f)工程(d)からの前記第1の消化汚泥生成物(d1)を熱加水分解ユニットにおける熱加水分解段階に供して、前記第1の消化汚泥生成物(d1)の前記固体粒子を少なくとも部分的に可溶性有機物に転換し、それにより、熱加水分解された汚泥生成物(f1)を形成させる工程、
(g)第2の脱水段階において、前記消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物(f1)を、第2の消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物(g1)と、揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P、及び任意選択でコロイド状有機物に富む液体濃縮物流(g2)とに分離し;前記液体濃縮物(g2)の少なくとも一部を、ケーク生成物と、固形物含有量が低下している液体濃縮物流とに分離し;前記ケーク生成物を、工程(c)の嫌気的消化段階にリサイクルする、工程、
(h)工程(g)に由来する前記液体濃縮物流(g2)の少なくとも一部を工程(a)にリサイクルする工程
を含む方法。
【請求項2】
前記バイオマス材料が、EBPR(強化生物学的P除去)プロセスから生じる湿潤活性汚泥(WAS)であり、前記WASが、0.5~3.0%のDS(乾燥固形物)を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(g)の前記第2の脱水段階に由来する前記液体濃縮物流(g2)の少なくとも一部を、工程(c)の前記嫌気的消化段階にリサイクルすることをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオマス材料を生成させるために、嫌気的段階を含む上流側廃水処理プロセスにおける生物学的P除去及び/又は生物学的N除去を助けることにおいて、前記第2の脱水段階からの前記液体濃縮物(g2)の少なくとも一部、又は固形物含有量が低下している前記液体濃縮流の少なくとも一部を使用することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1時間~3時間の前記接触工程(a)の前記接触タンクでの滞留時間を提供することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)の前記接触タンクに、工程(b)の前記シックナーユニットからのオーバーフロー、及び/又は一次汚泥を加えることをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リン酸塩を工程(e)において生成させるための前記リン酸回収プロセスが、少なくとも下記のプロセス工程:
・前記液体濃縮物をストルバイト形成反応槽において結晶化プロセスに供する工程、
・前記ストルバイト形成反応槽において形成されるストルバイト結晶を、沈降技術又はサイクロン技術によって単離する工程
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
COを前記液体濃縮物から除去し、それによりpHを上昇させるための脱ガス工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ストルバイトの結晶化を増強するために、下記の工程:
・さらなるMgを前記ストルバイト形成反応槽に加える工程、
及び/又は
・塩基又は酸を前記ストルバイト形成反応槽に加える工程
をさらに含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
リン酸をバイオマス材料から回収するためのプラントであって、
・前記バイオマス材料と、第2の脱水ユニット(16)からのリサイクル流とを受け入れ、それにより混合汚泥を生成させるための接触タンク(3)、
・前記混合汚泥を濃厚化し、かつ、それにより、濃縮された濃厚化汚泥生成物と、P(PO)及びMgに富む液体濃縮物流とを生成させるためのシックナーユニット(5)、
・前記濃縮された濃厚化汚泥生成物を消化し、それにより、バイオガス流と、消化汚泥生成物とを生成させるための嫌気的消化槽(8)、
・前記消化汚泥生成物を脱水し、それにより、第1の消化汚泥生成物と、PO-P及びNH-Nに富む液体濃縮物流とを生成させるための第1の脱水ユニット(10)、
・P及びMgに富む前記液体濃縮物と、PO-P及びNH-Nに富む前記液体濃縮物とを受け取り、それによりストルバイトを生成させるためのストルバイト形成反応槽(22)、
・前記第1の消化汚泥生成物を加水分解し、それにより、消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物を生成させるための熱加水分解ユニット(14)、
・前記消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物を脱水し、それにより、第2の消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物と、揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む液体濃縮物流とを生成させるための第2の脱水ユニット(16)、
・揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物の少なくとも一部を、前記バイオマス材料との接触のために前記接触タンク(3)に導くための導管、
・揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P、並びにコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物流をケーク生成物と、固形物含有量が低下している液体濃縮物流とに分離するための分離ユニット(19)、
・前記ケーク生成物を前記嫌気的消化槽に導くための導管又は輸送手段
を含むプラント。
【請求項11】
揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P及びコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物の少なくとも一部を前記嫌気的消化槽(8)に導くための導管をさらに含む、請求項10に記載のプラント。
【請求項12】
生物学的P除去を含む既存の廃水処理プラント(WWTP)を改造する方法であって、
前記廃水処理プラントは、嫌気的ユニット、無酸素ユニット及び好気的ユニット、活性汚泥を生成させるために直列に配置された清澄器、前記好気的ユニットからの混合液を前記無酸素ユニットにリサイクルするための内部リサイクル手段、前記活性汚泥の一部を返送活性汚泥(RAS)として前記嫌気的ユニットに返送するためのリサイクル手段、並びに前記活性汚泥の一部を廃棄活性汚泥(WAS)として取り出すための手段を含み、
前記改造する方法は、下記の工程:
・バイオマス材料が前記廃水処理プラントにおいて生じるバイオマス材料入口導管と、下流側に設置される第2の脱水ユニットからのリサイクル流導管であって、VFA及び可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む液体濃縮物流を搬送するリサイクル流導管とを受け入れるために適合化される接触タンクを据え付ける工程、
・前記接触タンクにおいて生じる混合汚泥を濃厚化するためのシックナーユニットを据え付ける工程、
・前記シックナーユニットにおいて生じる濃縮された濃厚化汚泥生成物を消化するための嫌気的消化槽を据え付ける工程、
・前記嫌気的消化槽において生じる消化汚泥生成物を脱水するための第1の脱水ユニットを据え付ける工程、
・前記シックナーユニットからの、P及びMgに富む液体濃縮物を輸送するための第1の導管を据え付ける工程、
・前記第1の脱水ユニットからの、P及びNH-Nに富む液体濃縮物を輸送するための第2の導管を据え付ける工程、
・ストルバイトを生成させるためのストルバイト反応槽であって、Pに富む、又はNH-Nに富む前記液体濃縮物を含有する前記第1及び第2の導管のどれでも入口として受け入れるように適合化されるストルバイト反応槽を据え付ける工程、
・前記第1の脱水ユニットにおいて生じる第1の汚泥生成物を加水分解するための熱加水分解ユニットを据え付ける工程、
・前記熱加水分解ユニットにおいて生じる消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物を脱水するための前記第2の脱水ユニットを据え付ける工程、
・VFA及び可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物流を前記接触タンクにリサイクルするためのリサイクル流導管を据え付ける工程、
・揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物流をケーク生成物と、固形物含有量が低下している液体濃縮物流とに分離するための分離ユニットを据え付ける工程、
・前記ケーク生成物を前記嫌気的消化槽に導くための導管又は輸送手段を据え付ける工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記既存の廃水処理プラントがさらに、前記嫌気的ユニットの上流側に、廃水流入物を受け取り、浮遊した固形物及び有機物をそれにより捕捉し、かつ、一次汚泥をそれにより形成させるための一次清澄器を含む、請求項12に記載の既存の廃水処理プラント(WWTP)を改造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水からのリン(P)の回収を、汚泥(sludge)量の減少及び汚泥からの増強されたバイオガス生成との組合せで行うためのプロセス及びプラントに関する。具体的には、本発明は、従来の生物学的リン除去プロセスを含む廃水処理プラントにおいて生じる汚泥からのリンのさらなる除去及び回収に関する。より具体的には、本発明は、従来の生物学的リン除去において生じる汚泥からPをさらに除去すること、及び前記Pを、ストルバイト(MgNHPO.6HO)、リン酸カルシウム(CaPO)、ビビアナイト(Fe(PO.8HO)、リン酸マグネシウム(MgPO)又は類似物として密な(compacted)形態で回収することに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの欧州市場では、法的枠組みが、リン(P)を廃水処理プラントから回収するために策定中である。リンは、有限の資源であると考えられており、政治的に不安定な市場で採掘されている。欧州は、戦略上重要である考えられるいくつかの重要な化学元素を定義しており、Pはそれらの1つである。
【0003】
通常、廃水処理時において、Pは廃水汚泥中に濃縮され、そのため、Pの回収は汚泥処理ラインに向けられている。Pは、Fe又はAlによる沈殿を介して化学的に、あるいは、いわゆるBio-Pプロセスによって、すなわち、強化生物学的P除去(Enhanced Biological P Removal、EBPR)によって生物学的に、廃水処理から除去される。汚泥ラインからのP回収を検討するときには、Bio-Pプロセスが廃水ラインに適用されることが一般に想定される。
【0004】
従来のBio-Pは、一部の細菌が、特定の条件にさらされたとき、過剰なポリPをそれらの細胞に蓄積することになるという観察結果に基づいている。bio-Pプロセスを選択するためには、下記のことが必要となる:
・当該細菌を揮発性脂肪酸(VFA)の存在下において嫌気的条件(O又はNO/NOを有しないこと)にさらすこと。これにより、(ortho-Pとしての)貯蔵されているPの放出、及びPHA(ポリヒドロキシアルカン酸)に転換されるVFAの取り込みが引き起こされる。嫌気的条件の期間中には、Mgもまた放出される。
・当該細菌を、PHAが消費され、かつ、PO-P(及びMg)が取り込まれ、ポリPとして細胞内部に貯蔵される好気的条件にさらすこと、
・EBPRプラントにおいて、汚泥は大抵の場合、周囲温度(これは気候及び季節に依存して5℃~40℃であり得る、しかし、一般には10~20℃である)でこれらの嫌気的及び好気的なサイクルを介して循環され、これにより、EBPR細菌の成長をもたらすこと、
・適切に設計され、管理されると、最終結果が、廃水からのPの取り込み、及びPが細胞塊の内部に蓄積している汚泥である。得られたバイオマス材料の典型的なP含有量が、非EBPR汚泥についての1.5%と比較して、乾燥重量に基づいて5%前後である。
【0005】
典型的なEBPRプロセスを図1に示す。
【0006】
EBPRプロセスからの汚泥(sludge)に関連して懸念される特定事項の1つが、ストルバイト形成である。ストルバイトは、MgNHPO.6H0の化学式を有する結晶である。ストルバイトは、その成分(PO 3-、NH 及びMg2+)が高い十分な濃度で存在し、かつpHが十分に高い(8超の)ときにはいつでも形成される。ストルバイトは多くの場合、上記3つの成分が汚泥から放出される嫌気的消化槽(anaerobic digesters)において望まれずに、又は制御されずに形成される。このことは、EBPR汚泥についてはとりわけ当てはまり、様々な大きな問題、すなわち、消化槽がストルバイトで満たされ、パイプ及び設備が完全に塞がれ、過度の摩耗及び損傷が生じるなど、様々な問題を引き起こす可能性がある。
【0007】
汚泥の嫌気的消化(anaerobic digestion)は、EBPR汚泥などの下水汚泥を安定化させるための、また、再生可能エネルギーを生成させるための一般的な技術である。嫌気的消化段階の期間中において、汚泥中のPの一部が放出され、それにもかかわらず、かなりの量が、消化期間中に同様に放出されるMgイオン又はCaイオンと一緒に沈殿する。したがって、嫌気的消化流からのP回収の効率は通常は非常に低く、それにより、EBPR汚泥消化は通常、消化槽の内部だけでなく、周囲の配管及び設備においてもまた、ストルバイト(MgNHPO)形成に起因するスケーリング問題に悩まされる。
【0008】
米国特許出願公開第2014178281号は、廃水からのPの除去及び回収、並びに消化物リサイクルを含む無機P複合体を生成させることを、最終脱水流を、リン及び窒素を混合するためにリサイクルして予備的濃厚化(pre-thickening)に戻すことによって行うための方法を開示している。
【0009】
米国特許出願公開第2013196403号は、消化物からのアンモニアをリサイクルして予備的濃厚化流に戻すことによって、それにもかかわらず、アンモニアストリッパーを使用することによって、Pを廃水から回収するためのプロセス及びシステムを開示している。
【0010】
ドイツ国特許出願公開第102005002066号(A1)は、ストルバイトなどのリン酸塩を安定化汚泥から得るための方法であって、前記安定化汚泥を脱水すること、リン酸を含有する汚泥液を、前記脱水された安定化汚泥にアンモニア及び/又は高温のプロセス液を導入することによって取り出すこと、及びリン酸塩を、金属イオンを含有する化合物を加えることによってリン酸含有の汚泥液から沈殿させることによる方法を開示している。
【0011】
ドイツ国特許出願公開第102015203484号は、Mgが添加剤の形態で添加される、したがって、内部プロセス流を混合することに依拠することによって添加されないストルバイト形成を開示している。
【0012】
米国特許出願公開第2010170845号は、廃棄活性汚泥が、内部Pを除去するためにストリッピングされ、それにより、予備的脱水の液体と、後脱水の液体とが、適切な混合を得るために一緒にされ、一方で、Pが、一次汚泥を発酵することによって放出されるプロセスを開示している。この引用文献は、消化された汚泥に対する熱加水分解の使用については何ら言及していない。また、記載されているプロセスは、VFAの供給源を提供するためのP富化の生物学的汚泥そのものに基づく一次汚泥の生物学的加水分解に依拠している。
【0013】
国際公開WO2018036987は、高度な汚泥処理を伴う廃水処理プラントにおいてPを回収するためのプロセスであって、i)Pを流出物(廃水)から生物学的に除去する工程、ii)水と汚泥とを分離する工程、iii)この汚泥の少なくとも一部の嫌気的加水分解の工程を行う工程、iv)工程iii)からの流出物の固液分離の工程を行う工程、v)iv)からの汚泥の少なくとも一部の高度処理を行う工程、vi)工程からの液体流出物の少なくとも一部を工程iiiに再循環する工程、及びvii)工程iv)からの流出物に存在するPを回収する工程を含むプロセスを開示している。このプロセスはまた、嫌気的消化工程を工程iv)と工程v)との間に含む場合がある。この引用文献は、リン除去段階において使用される別個の液体濃縮物流を生成させるための嫌気的消化段階の後における脱水段階の提供については何ら言及しておらず、また、熱加水分解段階からの液体濃縮物を嫌気的段階にリサイクルすることについても何ら言及していない。
【0014】
一次汚泥を該一次汚泥の発酵によりVFAの供給源として使用するプロセスに従ってPを廃水から除去することもまた、米国特許出願公開第2009194476号から知られている。このプロセスは、熱加水分解を消化汚泥に適用することについては少なくとも何ら言及しておらず、また、増大したバイオガス形成又は改善された脱水に関してはいかなる利益も達成することができず、特にこのプロセスは、生物学的プロセスの結果として放出されるPを回収することができるだけである。
【0015】
米国特許出願公開第20140251902号(A1)には、熱加水分解を消化汚泥に適用すること、続いて、加水分解された汚泥をケーク生成物と濃縮物とに脱水することを伴い、該濃縮物が消化槽に返送される方法が記載されている。濃縮物を消化槽に返送するため以外の目的のために濃縮物を使用することについては何ら言及しておらず、また、この文書は、汚泥からのPの放出又は回収に関する問題には対処していない。
【0016】
米国特許第5141646号(A)には、多くの他の先行技術文献のように、加水分解が続く下水汚泥の好気的安定化のためのプロセスが記載されている。可溶性PがEBPR汚泥の好気的処理の期間中に蓄積することが予想されるため、そのようなプロセスは出発点として本質的に、本発明に関連した問題を解決するという文脈において、すなわち、総P放出を並外れた高レベルにまで促進させるためには関係がないであろう。また、例えば、米国特許第5141646号(A)は、どのようなBio-P目的のためであれ加水分解汚泥の可能な使用について何ら言及していないのと同様に、どのようなVFAであれ加水分解からのVFAの起こり得る生成、又は加水分解期間中のPの起こり得る放出について何ら言及していない。
【0017】
結論として、先行技術は主に、下流側の設備におけるストルバイト沈殿の問題を最小限に抑えるという目的でのEBPR汚泥からのPの放出に集中している。しかしながら、先行技術は、関係した汚泥からのP回収を、例えば、ある特定の最小効率基準(例えば、ドイツの法令によって要求されるように少なくとも50%の回収及び/又は汚泥中の2%未満のP)を満たすという状況において最大化することには向けられていない。また、最近の総説(Phosphorus recovery from municipal wastewater:An integrated comparative technological,environmental and economic assessment of P recovery technologies、L.Egle編、Institute for Water Quality、Resource and Waste Management、TU Wien、Karlsplatz 13/226、1040 Vienna、Austria)によれば、The Centre for Water Resource Systems(CWRS)(TU Wien、Karlsplatz 13/222、1040 Vienna、Austria)は、「Pを消化槽上清から回収する技術について、回収率が最大で40%に達するDHV Crystalactor(登録商標)を除いては、10%から最大で25%までのかなりの回収率が、生物学的リン除去が強化されているWWTPにおいて達成可能であるにすぎない」と発表している。言い換えれば、利用可能である先行技術プロセスは、関連した汚泥又はバイオマスに存在するPの最大でも40%を除去することができただけであり、これに対して、本発明による方法及びプラントでは、関連した汚泥又はバイオマスに存在するPの少なくとも50%を除去することが可能となる。
【発明の概要】
【0018】
したがって、本発明の目的は、汚泥からのP負荷の少なくとも50%を取り出し、かつ縮約(contracted)形態で、例えば、ストルバイト、CaPO、MgPO又は類似物などで回収することを可能にするプロセス及びプラントを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、汚泥からのP負荷の少なくとも50%を、外部由来の化学物質、例えば、異なるアンモニア源及び金属イオン源の形態での外部由来の化学物質の添加を用いることなく取り出すことを可能にするプロセス及びプラントを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、有機物のバイオガス(再生可能エネルギー)への転換を最大化することを可能にするプロセス及びプラントを提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、汚泥脱水性能を最適化し、かつ処分する必要がある汚泥ケークの量を制限することを可能にするプロセス及びプラントを提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、低いP含有量を有する安定化された衛生的な濃縮バイオ肥料(脱水汚泥)を製造するプロセス及びプラントを提供することである。汚泥の農業用途において、Pの量に対する規制上限が通常、制限となる工程である。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、生物学的P除去を含む既存の廃水処理プラントに統合することが簡単かつ容易であるプロセス及びプラントを提供することである。
【0024】
上述の目的を達成するために、本発明は、いくつかの異なる専門分野からの要素を組み合わせている:
・「水ライン」対「汚泥ライン」:廃水処理科学において、技術者及び科学者は、水ライン又は汚泥ラインのどちらかに特化することが一般的である。この特化は、これら2つの異なった処理ラインにおいて大抵の場合に適用される異なる科学及び技術の結果である。
・「生物学的」対「熱化学的」:生物学的廃水処理、とりわけBio-Pプロセス(EBPR汚泥の生成において適用されるようなプロセス)は、微生物学及び化学の詳細な理解を必要とする。対照的に、汚泥処理、とりわけ、熱加水分解を応用する高度処理は、熱力学及び熱化学の詳細な理解を必要とする。
【0025】
したがって、本発明は、いくつかの異なる技術分野及びいくつかの専門分野(微生物学、化学、熱化学、熱力学など)からの様々な要素及び識見の独特の組合せを表す。
【0026】
汚泥からのP負荷の50%超の目標とする回収を可能にするのは、様々な要素及び識見のこの独特の組合せであり、上述した先行技術のいずれを用いても可能となっていない。
【0027】
[発明の詳細な説明]
上述の目的及び他の目的は、下記のようにして本発明によって解決される。
【0028】
したがって、本発明の第1の態様では、バイオマス材料からのリン酸負荷の少なくとも50%を回収するための方法であって、下記の工程を含む方法が提供される:
(a)接触タンクにおいて、前記バイオマス材料を、混合汚泥(mixed sludge)を生成させるために、工程(g)からの液体濃縮物流(好ましくは高温の液体濃縮物流)(g2)と一緒にして接触させる工程、
(b)シックナーユニットにおいて、工程(a)の前記混合汚泥を、P及びMgのレベルが低下している濃縮された濃厚化汚泥生成物(concentrated thickened sludge product)(b1)と、P及びMgに富む液体濃縮物(b2)とに分離する工程、
(c)前記濃厚化汚泥生成物(b1)を、i)バイオガス流と消化汚泥生成物(digested sludge product)とを生成させ、前記バイオガスを回収するために、及びii)有機的に結合したPを有機物の生物学的分解によって可溶性Pに転換し、それによりPの可能な全体的な回収率を増大させるために、嫌気的消化槽における嫌気的消化段階に供する工程、
(d)第1の脱水段階において、前記消化汚泥生成物を、固体粒子を含有する第1の消化汚泥生成物(d1)と、PO-P及びNH-Nに富む液体濃縮物(d2)とに分離する工程、
(e)工程(b)からの、P及びMgに富む前記液体濃縮物(b2)と、工程(d)からの、PO-P及びNH-Nに富む前記液体濃縮物(d2)とを、リン酸塩を生成させるためのリン酸回収プロセスに移す工程、
(f)工程(d)からの前記第1の消化汚泥生成物(d1)を熱加水分解ユニットにおける熱加水分解段階に供して、前記第1の消化汚泥生成物(d1)の前記固体粒子を少なくとも部分的に可溶性有機物に転換し、それにより、消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物(f1)を形成させ、また、有機結合P及び化学結合Pの一部を可溶性Pに転換し、それにより、Pの可能な全体的回収率を増大させる工程(加水分解された汚泥は典型的には低いpH(例えば、3~6.5など、典型的には5~6)を有しており、このことは、化学的に沈殿させたPのいくつかの可溶化、例えば、FePO、AlPO、CaPO、MgPO、アパタイト無機物及び類似無機物などを可溶化させることに寄与し得る)、
(g)第2の脱水段階において、前記消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物(f1)を、第2の消化され、かつ加水分解された汚泥生成物(g1)と、揮発性脂肪酸(volatile fatty acids、VFA)に富み、かつ前記さらに放出されたP及び任意選択でコロイド状有機物を含有する液体濃縮物流(好ましくは高温の液体濃縮物流)(g2)とに分離する工程、
(h)工程(g)に由来する前記液体濃縮物(g2)の少なくとも一部を工程(a)に、例えば、工程(a)の接触タンクにリサイクルする工程。
【0029】
したがって、本発明による方法又はプロセスでは、Pの放出が、いくつかの段階の組合せを介して、すなわち、上流側での生物学的P除去プロセスにおいて、接触タンクにおいて、嫌気的消化槽において、及び最終的には、放出されたPが接触タンクに前記液体濃縮物流(g2)の一部としての可溶性Pとしてリサイクルされる熱加水分解ユニットにおいて生じる。このことにより、先行技術とは対照的に、バイオマス材料に存在するPの50%以上を回収することが可能となる。
【0030】
本発明の第1の態様の一実施形態では、前記バイオマス材料は、EBPRプロセスから生じる湿潤活性汚泥(wet activated sludge、WAS)であり、これは以下ではEBPR汚泥としてもまた示される。好ましくは、WASは0.5~3.0%のDS(乾燥固形物)を含有し、より好ましくは0.8~2.0%のDSを含有する。
【0031】
前記EBPRプロセスは好ましくは上流側廃水処理プロセスであり、任意選択で、流入物(すなわち廃水)を、任意選択で一次清澄器(clarifier)において、浮遊した固形物及び有機物を捕捉するための一次処理に供し、それにより一次汚泥を生成し、その後、流入物を嫌気的ユニットにおける嫌気的段階に通し、続いて無酸素ユニットにおける無酸素段階に通し、その後、曝気タンクなどの好気的ユニットにおける好気段階に通し、最後に、浮遊した固形物を好ましくは二次清澄器において捕捉するための二次処理に通し、それにより、清澄化された流出物を活性汚泥から分離することを含む。この活性汚泥の一部が嫌気的段階に返送され、残りの部分が前記廃棄活性汚泥(waste activated sludge、WAS)として回収される。
【0032】
本発明によれば、バイオマス材料、すなわち、EBPR汚泥が、その貯蔵されたPを放出するためには、バイオマス材料、すなわち、EBPR汚泥は、有機物(COD又はBODとして表されるもの)、より具体的には揮発性脂肪酸(VFA)、及び任意選択でコロイド状有機物の存在下において嫌気的条件に置く必要がある。これは、EBPR汚泥、好ましくは沈降EBPR汚泥又は濃厚化EBPR汚泥と、第2の脱水工程からの液体濃縮物流からもたらされるVFAとが供給される接触タンクにおいて達成される。上記において説明されるように、第2の脱水工程からの液体濃縮物はまた、前段の熱加水分解段階によって放出されるさらなるPをもたらす。
【0033】
プロセスが可能な限り迅速に、かつ可能な限り高い効率で行われるためには、熱が、例えば、好ましくは高温の濃縮物(g2)を加えることを介して加えられる場合がある。P放出プロセスをより高い温度で実施することは、少なくとも下記の2つの効果を生じさせるであろう:
・放出反応槽のサイズを小さくすることが可能であること、
・可溶性形態へのリンの改善された放出。
【0034】
第1の態様による別の実施形態では、方法はさらに、工程(g)の前記第2の脱水段階に由来する前記液体濃縮物流(g2)の少なくとも一部を工程(c)の嫌気的消化段階にリサイクルすることを含む。この結果、有機物のバイオガスへのより高い転換度がもたらされる。嫌気的消化槽は滞留時間が10日~40日であり、例えば、15日~30日などであり、好ましくは20日である。すべての液体濃縮物が接触タンクに行くことが可能であるかもしれないが、接触タンクにおけるP放出のために必要とされるVFAの量を提供するその量のみを送り、残りをバイオガス生成のために消化槽に送ることがより好ましい。このことは、接触タンクに行く濃縮物の一部を制御することを可能にし、bio-P放出のために必要とされるものを加えるだけである。したがって、供給されるVFAの量、より具体的にはバイオマス材料(EBPR汚泥)に対するVFAの比率を、第2の脱水段階に由来する液体濃縮物流の接触タンクへの流れを制御することによって制御することができ、ただし、この液体濃縮物流の残りの部分は嫌気的消化槽に向けられる。このことは、再度ではあるが、EBPR汚泥からのPの制御された生物学的放出を可能にする。P放出と同時に、Mgもまた、EBPR汚泥から放出される。
【0035】
加えられたVFAはEBPR汚泥によって吸収され、PHAに転換される。この物質は大部分が嫌気的消化の期間中に分解され、バイオガスに転換されることになる。したがって、VFAを接触タンクに加え、任意選択で嫌気的消化槽にも加えることは、第2の脱水段階からのすべての液体濃縮物を嫌気的消化槽に送ることと比較したときには、バイオガス生成の喪失を必ずしも表していないことが見出された。
【0036】
第1の態様の別の実施形態では、工程(g)はさらに、
・前記液体濃縮物(g2)の少なくとも一部を、ケーク生成物と、固形物含有量が低下している液体濃縮物流とに分離すること、
及び
・前記ケーク生成物を工程(c)の嫌気的消化段階にリサイクルすること
を含む。
【0037】
そのような実施形態では、第2の脱水工程からの濃縮物におけるすべてのPが放出タンクにリサイクルされるとは限らない。しかしながら、そのようなさらなる可溶性Pはどのようなものであれ、最終的には第1の脱水工程からの濃縮物に存在することになり、この濃縮物はストルバイト反応槽に送られ、その結果、全体的なP回収率は同じままであるであろう。
【0038】
固形物含有量が低下している、すなわち、コロイド状有機物を含まないこの液体濃縮物流は、工程(a)の接触タンクにリサイクルされる。実際、コロイド物は全く必要とされず、したがって、この実施形態は、コロイド物が工程(a)の接触タンクに全く加えられないことを可能にすることが見出された。可溶性Pはどのようなものであれ、コロイド物の除去によって除去されないであろうし、その結果、そのような可溶性Pはどのようなものであれ依然として、最終的には接触タンクに存在するであろう。
【0039】
工程(g)における第2の脱水段階に由来する液体濃縮物流(g2)は、VFA及び他の有機化合物の形態での多量の可溶性COD、同様にまた、比較的容易に生分解され得るコロイド状有機物を含有する。上記において説明されるように、液体濃縮物流(g2)はまた、さらなるPを含有するであろう。この液体濃縮物流は接触タンク及び嫌気的消化槽にそのままリサイクルすることができ(この場合、比率は接触タンクのVFAの必要性に依存する)、あるいは、上記の特定の実施形態によれば、この流れは、嫌気的消化槽に送られるケーク生成物と、接触タンクにおけるP放出のために非常に効率的に使用することができる可溶性有機物を主に含む、固形物含有量が低下している液体濃縮物流、すなわち、固形物を含まない液体とに分離することができる。液体濃縮物流をケークと、固形物含有量が低下している濃縮された液体とに分離することが好ましくは、ディスク遠心分離機によって行われる。他の類似した設備が使用される場合がある。
【0040】
第1の態様の別の実施形態では、方法はさらに、前記バイオマス材料を生成させるために、嫌気的段階を含む上流側廃水処理プロセスにおける生物学的P除去及び/又は生物学的N除去を助けることにおいて、前記第2の脱水段階からの前記液体濃縮物(g2)の少なくとも一部、又は固形物含有量が低下している前記液体濃縮流の少なくとも一部を使用することを含む。これにより、前記嫌気的段階のための高価な外部炭素源を入手する必要性を低減させること、又は排除することが可能になる。好ましくは、前記上流側廃水処理プロセスはEBPRプロセスである。
【0041】
第1の態様の別の実施形態では、方法はさらに、1時間~3時間の接触工程(a)の接触タンクでの滞留時間を提供することを含む。工程(g)の前記第2の脱水段階に由来する液体濃縮物流(g2)は温度が70~100℃の範囲にある。したがって、この流れはまた熱を接触タンクに提供しており、汚泥の平均温度を上げることによって、Pの放出が増強される。十分なVFA及び熱が利用可能であることにより、短い滞留時間が、接触タンクにおけるP放出のために十分である。好ましくは、滞留時間(HRT)は0.5時間~1日超の範囲にあり、例えば、最大で2日の範囲である。より好ましくは、滞留時間は1時間~3時間であり、最も好ましくは1.2時間~2.0時間であり、例えば、1.5時間である。この狭い範囲の滞留時間により、バイオマス材料(EBPR汚泥)に貯蔵されるPの25~35%もの多くが放出されることがこの段階において可能となるので、最良の結果が得られることが見出された。
【0042】
第1の態様の別の実施形態では、方法はさらに、工程(a)の接触タンクに、工程(b)のシックナーユニットからのオーバーフロー、及び/又は一次汚泥を加えることを含む。好ましくは、この一次汚泥は、上流側の廃水処理プラント又は廃水処理プロセスからのものであり、2~5%のDSを含有する。シックナーユニットからのオーバーフローはVFAに富み、一方で、一次汚泥は同時でのさらなる濃厚化(thickening)が可能であり、だが、プロセスはこれらのさらなる流れに依拠していない。一次汚泥を工程(a)の接触タンクに加えることによって、この汚泥が加水分解されると、Pの放出のためのVFAが生成する。
【0043】
分離工程(b)において、生物学的P放出の後でのバイオマス材料の重力的濃厚化又は機械的濃厚化が行われる。接触タンクからの混合汚泥が、濃縮された濃厚化汚泥生成物流と、P及びMgに富む液体濃縮物流とに分離される。重力的濃厚化又は機械的濃厚化は好ましくは、ベルトシックナー、ドラムシックナー、スクリュープレス、遠心分離機又は類似機器において行われる。その後、濃縮された濃厚化汚泥は嫌気的消化段階に導かれ、一方で、濃厚化からの不合格物、すなわち、P及びMgに富む液体濃縮物流が、リン酸塩を生成させるためのリン酸回収プロセスに送られる。
【0044】
工程(c)における嫌気的消化段階は、有機物をバイオガスに、すなわち、CH及びCO並びにいくつかの微量ガスの混合物に転換する生物学的プロセスである。有機物が転換されることの結果として、P(PO-Pとして)、窒素N(NH-Nとして)及び無機物(例えば、Mg)のような他の細胞成分が放出され、可溶化される。通常、EBPR汚泥消化は多くの場合、すべての重要な構成成分(PO-P、NH-N及びMg)が存在するので消化期間中のストルバイト形成に悩まされており、しかしながら、本発明によれば、相当量のMg及びPO-Pが接触タンクでの消化及び濃厚化プロセスに先立って除去されるため、ストルバイト形成が低減され、又は排除される。このことは、放出されたPO-Pの大部分が可溶性形態のままであり、その後、工程(d)の第1の脱水段階、すなわち、予備的脱水段階の後でのリン酸回収プロセスに向けられることを可能にする。
【0045】
有機物の転換に関しての嫌気的消化段階における嫌気的消化槽の成績は40~60%の範囲にあり、例えば、50%前後などである。工程(f)の熱加水分解段階を加えることによって、より多くの有機物が転換されることが可能であり(50~80%)、また、より多くのリンがリン酸回収プロセスにおける回収のために利用可能になるであろう。
【0046】
嫌気的消化段階は、熱及び電気をガスエンジン、タービン又は燃料電池において生成させるために使用することができる、あるいは天然ガス又は車両燃料にアップグレードすることができる再生可能な燃料であるバイオガス流をもたらす。
【0047】
嫌気的消化の後、消化汚泥生成物、すなわち、バイオガスでない生成物が、工程(d)の第1の脱水段階において液相から分離される(すなわち、予備的脱水)。この第1の脱水は好ましくは、デカンター、遠心分離機、フィルタープレス、スクリュープレスにおいて行われる。他の従来の脱水設備が使用される場合がある。第1の脱水は、固体粒子を含有する第1の消化汚泥生成物(すなわち、第1のケーク生成物)をもたらす。好ましくは、固体粒子の含有量が10~25%のDS(例えば、10~20%のDSなど)であり、より好ましくは16%~17%のDSである。その後、第1の消化汚泥生成物は工程(f)の熱加水分解段階に供給され、一方で、PO-P及びNH-Nに富む液体濃縮物がリン酸回収プロセスに送られる。
【0048】
工程(f)の熱加水分解段階は、第1の脱水段階において形成される第1の消化汚泥生成物を、130~200℃、多くの場合には150~170℃、例えば、160℃などの高い温度、及び2~20バールの圧力、多くの場合には4~8バール、例えば、6バールなどの圧力において加熱することを含み、これにより、有機物の一部が可溶性物及びコロイド状物に加水分解されることになる。熱加水分解はまた、第1の消化汚泥生成物の物理的性質を、その粘度を低下させ、その「脱水性」を改善することによって変化させる。加えて、熱加水分解システムにより、非生分解性材料が、可溶性で、かつより容易に生分解され得る材料に転換される。熱加水分解の期間中に、残りのリン酸の一部、すなわち、残りの粒子状リンの一部もまた可溶化され、あるいは、接触工程(a)における接触タンク及び/又は嫌気的消化段階(c)における嫌気的消化槽に再循環される液体濃縮物流に最終的にはなるコロイド状物に少なくとも転換される。
【0049】
熱加水分解後の処理された汚泥は、工程(g)の第2の、好ましくは最終的な脱水段階(すなわち、後脱水)に送られ、それにより、比較的高い乾燥固形分のケーク、すなわち、20~60%のDS、多くの場合には25~50%のDS、例えば、35~45%のDSなどを有する第2の消化され、かつ加水分解された汚泥生成物、すなわち、第2のケーク生成物をもたらす。この第2の脱水は好ましくは、デカンター、遠心分離機、フィルタープレス、スクリュープレスにおいて行われる。他の従来の脱水設備が利用される場合がある(例えば、ベルトフィルターなど)。特定の実施形態において、ポリマーが、液体濃縮物流の特性を制御するために第2の脱水段階に加えられる。
【0050】
上記において説明されるように、工程(g)の最終脱水に由来する液体濃縮物流は、もしそうでなかったとしたら有機結合P及び/又は化学結合Pのいくつかを可溶性Pの形態で含み(加水分解された汚泥は典型的には低いpH(例えば、3~6.5など、典型的には5~6)を有しており、このことは、化学的に沈殿させたPのいくつかの可溶化、例えば、FePO、AlPO、CaPO、MgPO、アパタイト無機物及び類似無機物などを可溶化させることに寄与し得る)、そのうえ、高い温度、すなわち70~100℃の範囲での高い温度を有する。
【0051】
したがって、この流れのすべて又は一部を嫌気的消化段階に返送することにより、この嫌気的消化のためのエネルギー要求が低減される。バイオガス生成が実質的に増大することもまた考慮に入れると、全体的なエネルギー収支が著しく改善される。
【0052】
さらに、工程(g)の最終脱水からの高温の液体濃縮物流を接触工程(a)における接触タンクにリサイクルすることは、上記において既に述べられているように、それにより利用可能である可溶性Pの量を増大させるだけでなく、P放出の効率をそれにより改善するこのタンクにおける温度もまた上昇させる。さらに、(濃厚化後の)その処理された流れの一部が、濃縮された濃厚化汚泥として嫌気的消化段階に供給されるので、これはまた、嫌気的消化槽の熱要求のさらなる低減を表している。工程(b)の汚泥シックナーユニットからの液体濃縮物流における熱が好ましくは、EBPRプロセスから生じる湿潤活性汚泥(WAS)との熱交換によって、すなわち、接触タンクに供給されるバイオマス材料との熱交換によって回収される。この熱はまた、プロセスにおける別の流れとの熱交換によって回収される場合がある。
【0053】
第1の態様の別の実施形態では、リン酸塩を工程(e)において生成させるための前記リン酸回収プロセスは、少なくとも下記のプロセス工程:
・前記液体濃縮物をストルバイト形成反応槽において結晶化プロセスに供する工程、
・前記ストルバイト形成反応槽において形成されるストルバイト結晶を、沈降技術又はサイクロン技術によって単離する工程
を含む。
【0054】
このリン酸回収プロセスにおいて、リン酸に富むすべての流れが、価値のあるリンを回収するために集められ、処理される。2つの主要な流れが集められる:
・P(PO-P)及びMgに富む、分離工程(b)からの液体濃縮物、すなわち、シックナーユニットからの液体濃縮物、
・PO-P及びNH-Nに富む、工程(d)における第1の脱水段階からの液体濃縮物。
・加えて、重要な成分(PO-P、NH-N、Mg)の1つに富むならば、シックナーユニット又は他のユニットからのいくつかの内部の流れを加えることが可能である。
【0055】
それぞれの流れが別々に、ストルバイト形成のための適切な化学物質を含有しない場合でさえ、本発明による方法又はプロセスは、ストルバイト形成のための外部由来の化学物質を加えることが必要であることを回避する。このように、工程(b)におけるシックナーユニットからの液体濃縮物はアンモニア(NH-N)を欠いており、工程(d)における第1の脱水段階からの液体濃縮物はMgを欠いている。しかしながら、組み合わせられると、両方の流れは、ストルバイト形成のための適切な化学物質を含有する。ストルバイト形成の期間中に、PO-Pのほとんどが除去される。アンモニアはほんの一部が除去されるだけであり、しかしながら、アンモニアの除去により、消化期間中の必要以上のアンモニア放出が、改善された全体的な有機物転換の結果として少なくとも部分的に相殺される。
【0056】
特定の実施形態では、前記リン酸回収プロセスはさらに、COを液体濃縮物から、すなわち、液相から除去し、それによりpHを増大させるための脱ガス工程を含む。これにより、ストルバイトの生成が増強される。
【0057】
別の特定の実施形態では、前記リン酸回収プロセスはさらに、下記の工程:
・さらなるMgを前記ストルバイト形成反応槽に加える工程、及び/又は
・塩基又は酸を前記ストルバイト形成反応槽に加える工程
を含む。
【0058】
これにより、前記ストルバイトの結晶化が増強される。
【0059】
したがって、混合された液体濃縮物流はさらに、下記のプロセス工程を使用して処理される:
・脱ガス:脱ガスにより、COが水から除去され、pHが上昇する;
・ストルバイト形成反応槽:結晶化反応槽は、化学物質間の十分な接触と、結晶が成長するための時間とを可能にする。常に1つの化学物質が存在し、しかし、Mgの存在が最大のストルバイト形成のために限定的であるので、この化学物質が加えられる。また、必要ならば、いくらかのpH制御を実行することができる;
・形成されたストルバイトが、沈降技術又はサイクロン技術又は類似技術を使用して液体から分離される。処理された液体濃縮物流はストルバイト形成後、ポリシング(polishing)のために上流側廃水処理プラントに返送される。
【0060】
代替において、リン酸はまた、P肥料の市場要求に依存して他の化学的形態で回収することができる。したがって、代替となるP生成物が、MgPO、CaPO又は類似物である。それによれば、可能な解決策が、カルシウム源を沈殿ユニットの前に加えることによってリン酸カルシウムを沈殿させることである。
【0061】
本発明の第2の態様では、リン酸をバイオマス材料から、好ましくは廃棄活性汚泥(WAS)から回収するためのプラントであって、下記のものを含むプラントもまた提供される:
・前記バイオマス材料と、第2の脱水ユニットからのリサイクル流、すなわち、下流側の第2の脱水ユニットからのリサイクル流とを受け入れ、それにより混合汚泥を生成させるための接触タンク、
・前記混合汚泥を濃厚化し、かつ、それにより、濃縮された濃厚化汚泥生成物と、P(PO)及びMgに富む液体濃縮物流とを生成させるためのシックナーユニット、
・前記濃縮された濃厚化汚泥生成物を消化し、それにより、バイオガス流と、消化汚泥生成物とを生成させるための嫌気的消化槽、
・前記消化汚泥生成物を脱水し、それにより、第1の消化汚泥生成物と、PO-P及びNH-Nに富む液体濃縮物流とを生成させるための第1の脱水ユニット、
・P及びMgに富む前記液体濃縮物と、PO-P及びNH-Nに富む前記液体濃縮物とを受け取り、それによりストルバイトを生成させるためのストルバイト反応槽、
・前記第1の消化汚泥生成物を加水分解し、それにより、消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物を生成させるための熱加水分解ユニット、
・前記消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物を脱水し、それにより、第2の消化され、かつ加水分解された汚泥生成物と、揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む液体濃縮物流とを生成させるための第2の脱水ユニット、及び
・揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物の少なくとも一部を、前記バイオマス材料との接触のための前記接触タンクに導くための導管。
【0062】
本発明の第2の態様の一実施形態では、プラントはさらに、揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P及びコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物の少なくとも一部を前記嫌気的消化槽に導くための導管を含む。
【0063】
第2の態様の別の実施形態では、プラントはさらに、下記のものを含む:
・揮発性脂肪酸(VFA)、可溶化P及びコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物流をケーク生成物と、固形物含有量が低下しているが、可溶化Pを含有する液体濃縮物流とに分離するための分離ユニット、好ましくはディスク遠心分離機、
・前記ケーク生成物を前記嫌気的消化槽に導くための導管又は輸送手段。
【0064】
第2の態様の別の実施形態では、前記バイオマス材料は、上流側廃水処理プラント(WWTP)において生じる廃棄活性汚泥(WAS)であり、この場合、前記廃水処理プラントは、嫌気的ユニット(すなわち、反応槽又は帯域)、無酸素ユニット及び好気的ユニット、それに続く、活性汚泥を生成させるための清澄器、内部リサイクル手段、例えば、好気的ユニットからの混合液を無酸素ユニットにリサイクルするための内部リサイクル導管、前記活性汚泥の一部を返送活性汚泥(return activated sludge、RAS)として嫌気的ユニットに返送するためのリサイクル手段、並びに前記活性汚泥の一部を前記廃棄活性汚泥(WAS)として取り出すための手段を含む。
【0065】
好ましくは、嫌気的ユニット、無酸素ユニット、好気的ユニット及び清澄器は、強化生物学的リン除去プラント(EBPRプラント)においては典型的であるように連続して配置される。したがって、好適には、前記上流側WWTPは強化生物学的リン除去プラントを含む。
【0066】
第2の態様の別の実施形態では、前記上流側WWTPはさらに、前記嫌気的ユニットの上流側に、廃水流入物を受け取り、浮遊した固形物及び有機物をそれにより捕捉し、かつ、一次汚泥をそれにより形成させるための一次清澄器を含む。それによって、一次汚泥がEPBRプロセスの生物学的処理に先立って生じる。
【0067】
したがって、廃水からのPの取り込みと、細胞塊の内部におけるPの蓄積を有する汚泥とが存在する。得られたバイオマス材料は、この場合にはWASであるが、0.8%~2%のDSと、DSに基づいて約5%、より具体的には2~6%、多くの場合には約4~5%であるP含有量とを含有することになる。本発明は、可能な限り多くのPをWASから取り出すことを可能にし、かつ、エネルギー生成を最大化することもまた可能にする。
【0068】
本発明の第1の態様の任意の実施形態は、第2の態様の任意の実施形態と組み合わせてもよい。
【0069】
本発明の第3の態様では、生物学的P除去を含む、好ましくはEPRPを含む既存の廃水処理プラントを改造するための方法であって、下記の工程を含む方法もまた提供される:
・バイオマス材料が前記廃水処理プラントにおいて生じるバイオマス材料入口導管と、下流側に設置される第2の脱水ユニットからのリサイクル流導管であって、VFA及び可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む液体濃縮物流を搬送するリサイクル流導管とを受け入れるために適合化される接触タンクを据え付ける工程、
・前記接触タンクにおいて生じる混合汚泥を濃厚化するためのシックナーユニットを据え付ける工程、
・前記シックナーユニットにおいて生じる濃縮された濃厚化汚泥生成物を消化するための嫌気的消化槽を据え付ける工程、
・前記嫌気的消化槽において生じる消化汚泥生成物を脱水するための第1の脱水ユニットを据え付ける工程、
・前記シックナーユニットからの、P及びMgに富む液体濃縮物を輸送するための第1の導管を据え付ける工程、
・前記第1の脱水ユニットからの、P及びNH-Nに富む液体濃縮物を輸送するための第2の導管を据え付ける工程、
・ストルバイトを生成させるためのストルバイト反応槽であって、Pに富む、又はNH-Nに富む前記液体濃縮物を含有する前記第1及び第2の導管のどれでも入口として受け入れるように適合化されるストルバイト反応槽を据え付ける工程、
・前記第1の脱水ユニットにおいて生じる第1の汚泥生成物を加水分解するための熱加水分解ユニットを据え付ける工程、
・前記熱加水分解ユニットにおいて生じる消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物を脱水するための前記第2の脱水ユニットを据え付ける工程、
・VFA及び可溶化P及び任意選択でコロイド状有機物に富む前記液体濃縮物流を前記接触タンクにリサイクルするためのリサイクル流導管を据え付ける工程。
【0070】
本発明の第1の態様及び第2の態様の実施形態のいずれも、第3の態様に従って本発明に関連して使用してもよい。
【0071】
本発明は、先行技術に関していくつかの明確な利点を提供する:
・本接触プロセスでは、リン酸の一部が、労力をほとんど用いることなく除去される。 本接触プロセスではまた、汚泥からのMgも除去され、このことにより、消化槽におけるストルバイト形成の危険性が低減される。
・P放出のために要求されるVFAが、熱加水分解後の最終脱水からの濃縮物(流れ)によって提供される。VFAは失われるのではなく、消化期間中にバイオガスにさらに転換されるPHAに転換される。
・本プロセスは一次汚泥の添加の有無にかかわらず働くことができ、その結果、いくつかの他のプロセスのような一次汚泥の発酵に依拠していない。
・本プロセスでは、接触タンクの効率を改善し、かつ、より短いHRTを可能にする熱がリサイクルされる。
・本プロセスでは、嫌気的消化に起因するP放出、及び熱加水分解プロセスの結果としてのさらなるP放出と同様に、Pが(嫌気的)接触タンクにおけるEBPR汚泥の嫌気的生物活性の結果として放出される。
・全体として、本プロセスでは、リン酸の可溶化が最大化され、回収され得るPの量が、生汚泥(WAS)に存在するPの50%以上を回収することによって増大する。
・本プロセスでは、ストルバイト形成の可能性をともに個々に欠く2つの別個の濃縮物が生じる。しかしながら、組み合わされると、それらはストルバイト形成のためのすべての成分を有する。
・本プロセスは非常に効率的なエネルギー収支をもたらす。 熱加水分解段階において供給される熱は、高温の濃縮物の一部を返送して消化槽に戻すことによって(一部が)再使用される。このことは消化槽の余分なエネルギー要求を減らし、さらには、有機物を返送することによって、バイオガスの生成が増大する。
・本プロセスでは、汚泥の脱水性が強く改善され、処分する必要がある汚泥ケークの量が少なくなる:このことは(湿潤物基準で)ケークの処分費用を低下させ、かつケークの発熱量を増大させる。
・本プロセスでは、汚泥に存在するすべての化合物(例えば、有機物、窒素、リン、マグネシウムなど)が最大量にまで使用され、有価生成物に転換される。
・全体として、本プロセスは、既存の廃水処理プラントにおいて統合することが比較的簡便であり、かつ直截的であり、かつ容易である。本概念により、様々な付加要素が既存の設備基盤に適用される。先行技術による技術は通常、はるかにより複雑であり、別個又は多数の消化段階、多数のストルバイト反応槽などを必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】典型的なEBPRプロセスを示す。
図2】本発明の特定の実施形態によるプラントのプロセススキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
[実施例]
図2に提供されるスキームに従うプロセスが実施される。上流側WWTP(図示せず)において生じ、0.8~2%のDSを含有する廃棄活性汚泥(waste activated sludge、WAS)流1が、その貯蔵されたPの放出のために1時間~3時間の滞留時間を有する接触タンク3に入る。このために、揮発性脂肪酸(VFA)としての可溶性CODと、可溶性Pとを含有する液体濃縮物流20のリサイクル流20’もまた、接触タンク3に加えられる。任意選択で、例えば、上流側WWTPからの、多くの場合には2~5%のDSを有する一次汚泥流2’もまた、接触タンク3に加えられる。P放出と一緒に、Mgもまた、WASから放出される。
【0074】
混合汚泥4が形成され、これはシックナーユニット5(例えば、ベルトシックナーなど)に供給され、それにより、P及びMgの低下したレベルを有し、かつ、約5%のDSを有する濃縮された濃厚化汚泥6と、PO及びMgに富む液体濃縮物流7とが形成される。濃縮された濃厚化汚泥6は、15日~30日の滞留時間、好ましくは20日の滞留時間を有する嫌気的消化槽8における嫌気的消化に供される。揮発性脂肪酸(VFA)を含有する液体濃縮物流20の別の一部20’’もまた、嫌気的消化槽8に加えられる。任意選択で、一次汚泥2’’もまた、消化槽8に供給される。この結果、消化汚泥生成物9と、バイオガス(図示せず)との生成がもたらされる。
【0075】
消化汚泥生成物9は第1の脱水ユニット10において、PO-P及びNH-Nに富む液体濃縮物流11と、15~17%のDSを有する第1の消化汚泥生成物(第1のケーク生成物)13とに分離される。PO及びMgに富む液体濃縮物流7と、PO-P及びNH-Nに富む液体濃縮物流11とは、共通の流れ12として組み合わされて、又は独立して、有価生成物としてストルバイトを形成させるために、ストルバイト形成反応槽を好適には含むリン酸回収プロセスユニット22に供給される。
【0076】
第1の消化汚泥生成物13は熱加水分解ユニット14に導かれ、消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物15をもたらし、これはその後、第2の脱水ユニット16に供給される。この脱水ユニット(後脱水)、例えば、デカンターは、焼却、さらなる乾燥、又は他の形態の処分にすぐに対応できる、35~40%のDSを有する第2の消化され、かつ熱加水分解された汚泥生成物17と、可溶性COD、例えば、VFA、並びにコロイド状有機物に富む液体濃縮物流18とを生成させる。
【0077】
分離ユニット、好ましくはディスク遠心分離機19が、前記液体濃縮物18の少なくとも一部を、嫌気的消化槽8にリサイクルされるケーク生成物21と、固形物含有量が低下している液体濃縮物流20とに分離するために設けられる。
図1
図2