(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】抗癌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102及びこれを有効成分として含む組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20221115BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20221115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221115BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20221115BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20221115BHJP
A23K 10/18 20160101ALI20221115BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
A61K35/747
A61P35/00
A23L33/135
A23K10/16
A23K10/18
(21)【出願番号】P 2021532432
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 KR2019017020
(87)【国際公開番号】W WO2020122496
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0158319
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0075612
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12356P
(73)【特許権者】
【識別番号】519359723
【氏名又は名称】コリア フード リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ハク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ミ・スン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】Proc. Int'l Symp. Microorganisms and Health, 2000年,SII-4,p.47-52
【文献】J. Cancer Sci. Ther., 2015年,Vol.7, No.7,p.224-235,doi:10.4172/1948- 5956.1000354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
A61K 35/747
A61P 35/00
A23L 33/135
A23K 10/16
A23K 10/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示される16S rRNAを有し、寄託番号KCCM12356Pのラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)WiKim0102。
【請求項2】
ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記癌は、膀胱癌、乳癌、黒色腫瘍、甲状腺癌、副甲状腺癌、直腸癌、咽喉癌、喉頭癌、食道癌、膵臓癌、胃癌、舌癌、皮膚癌、脳腫瘍、子宮癌、胆嚢癌、口腔癌、結腸癌、肛門付近癌、肝臓癌、肺癌、及び大腸癌からなる群から選択されるいずれかの癌であることを特徴とする請求項2に記載の癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記肺癌は、非小細胞肺癌であることを特徴とする請求項3に記載の癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記組成物は、経口投与又は非経口投与の方法で投与可能であることを特徴とする請求項2に記載の癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記非経口投与の方法は、静脈内注射投与であることを特徴とする請求項5に記載の癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記組成物は、生菌の形態であることを特徴とする請求項2に記載の癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項8】
ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む癌の予防又は改善用食品組成物。
【請求項9】
前記食品は、健康機能食品であることを特徴とする請求項8に記載の癌の予防又は改善用食品組成物。
【請求項10】
前記食品は、パン、餅、キャンディ、チョコレート、ガム、アイスクリーム、牛乳、チーズ、食肉加工品、魚肉加工品、キムチ、醤油、味噌、コチュジャン、春醤、納豆、酢、ケチャップ、カレー、ドレッシング、飲料、及び発酵乳からなる群から選択されるいずれか一つの食品であることを特徴とする請求項8に記載の癌の予防又は改善用食品組成物。
【請求項11】
ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む癌の予防又は改善用食品添加剤組成物。
【請求項12】
ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む家畜の癌の予防又は改善用飼料組成物。
【請求項13】
前記家畜は、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ネコ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、キジ、ウズラ、コイ、フナ、及びマスからなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項12に記載の家畜の癌の予防又は改善用飼料組成物。
【請求項14】
ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む家畜の癌の予防又は改善用飼料添加剤組成物。
【請求項15】
ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む発酵用乳酸菌スターター。
【請求項16】
請求項2~7のいずれかの組成物を、ヒトを除いた個体に投与する癌の予防又は治療方法。
【請求項17】
前記投与方法及び投与量は、静脈内注射の方法でラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を1×10
10CFU/ml濃度で0.1ml投与するものであることを特徴とする請求項16に記載の癌の予防又は治療方法。
【請求項18】
前記投与の期間及び回数は、6日おきに3回投与するものであることを特徴とする請求項17に記載の癌の予防又は治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キムチから分離された新規なラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)及びこれを有効成分として含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、世界的に高い死亡率を見せ、西欧社会では、心血管疾患の次に最も一般的な死亡原因である。特に、食生活が欧米化し、高脂肪食の摂取が一般化し、環境汚染物質の急激な増加、飲酒量の増加などにより大腸癌、乳癌、前立腺癌などが持続的に増加する傾向にあり、人口の高齢化に加え、喫煙人口の増加及び大気汚染による肺癌が増加しているのが実情である。このような実情から、癌の早期予防及び治療を可能にし、ヒトの健康増進、健康的な生活の質の向上、及び人類の保健健康増進に寄与することができる抗癌物質の創出が切実に求められている。
【0003】
一方、乳酸菌は、ヒトと動物の口腔、腸、膣、糞便、そしてキムチのような発酵食品などに広く分布しながら、ヒトと動物の健康と密接な関連がある。乳酸菌は整腸作用、有害菌の抑制、免疫調節、血中コレステロールの低下、抗癌など、様々な健康増進効果を示している。
【0004】
現在、韓国公開特許第10-2015-0068061号には、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum )PNU(KCCM11352P)又はラクトバチルス・メッセンテロイデス(Lactobacillus mesenteroides)PNU(KCCM11353P)の抗癌活性が開示されており、韓国登録特許第10-1287120号には、ラクトバチルス・プランタルムDSR CK10[寄託番号:KFCC-11433P]又はラクトバチルス・プランタルムDSR M2[寄託番号:KFCC-11432P]を有効成分として含有する癌治療用薬学組成物が開示されているが、ラクトバチルス・ファーメンタムに関する抗癌活性及び優秀性については、報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0068061号
【文献】韓国登録特許第10-1287120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抗癌活性に優れた新規なキムチ乳酸菌ラクトバチルス・ファーメンタム菌株を提供することである。
【0007】
また、本発明のもう一つの目的は、新規なキムチ乳酸菌ラクトバチルス・ファーメンタム菌株を有効成分として含む癌の予防又は治療用薬学組成物を提供することである。
【0008】
また、本発明のもう一つの目的は、新規なキムチ乳酸菌ラクトバチルス・ファーメンタム菌株を有効成分として含む癌の予防、改善用食品組成物、又は食品添加剤組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明のもう一つの目的は、新規なキムチ乳酸菌ラクトバチルス・ファーメンタム菌株を有効成分として含む癌の予防、改善用飼料組成物、又は飼料添加剤組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明のもう一つの目的は、前記組成物を、ヒトを除いた個体に投与する癌の予防又は治療方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者等は、キムチからプロバイオティクスとして優れた効果を奏するとともに癌の予防及び治療効果を奏する乳酸菌菌株を見出すべく努力した結果、抗癌活性を有する新規なラクトバチルス属乳酸菌菌株であるラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102)を分離し、同定し、本発明を完成するに至った。
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、抗癌活性に優れたラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102菌株を提供する。
【0013】
前記ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102)は、キムチに由来するラクトバチルス・ファーメンタム新規菌株である。本発明が、たとえラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102)をキムチから分離し、同定したものであっても、これの入手経路がこれに限定されるものではない。
【0014】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102は、プロバイオティクスとして、乳酸菌の一般的な整腸効果及び免疫増強効果を有する。ラクトバチルス属の乳酸菌が整腸効果、免疫増強効果を有することは周知の事実である。
【0015】
また、本発明は、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む癌の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む癌の予防又は改善用食品組成物又は食品添加剤組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む家畜の癌の予防、改善用飼料組成物、又は飼料添加剤組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む発酵用乳酸菌スターターを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記組成物を、ヒトを除いた個体に投与する癌の予防又は治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102は、従来の動物モデル及びヒトの癌細胞が移植された動物モデルにおいて優れた抗癌活性を示すので、ヒトや動物の癌の治療、予防、又は改善などの用途のための組成物として有用に用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る組成物をCT26細胞移植マウスに1回(単回:Single)又は3回(連続:Serial)静脈注射後、時間が経過するにつれて腫瘍細胞の大きさが変化することを観察するためのマウスの腫瘍部分の写真を示す図である。
【
図2】本発明に係る組成物をCT26細胞移植マウスに1回(単回:Single)又は3回(連続:Serial)静脈注射後、時間の経過につれて腫瘍細胞の体積の変化と成長率を測定したグラフを示す図である。
【
図3】本発明に係る組成物をMC38細胞移植マウスに静脈注射後、時間の経過につれて腫瘍細胞の大きさが変化することを観察するためのマウスの腫瘍部分の写真を示す図である。
【
図4】本発明に係る組成物をMC38細胞移植マウスに静脈注射後、時間の経過につれて腫瘍細胞の体積の変化及び成長率を測定したグラフを示す図である。
【
図5】本発明に係る組成物をCT26細胞移植マウスに静脈注射後、1時間及び24時間経過後、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102の組織内分布を測定したグラフを示す図である。
【
図6】本発明に係る組成物をMC38細胞移植マウスに静脈注射後、1時間及び24時間経過後、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102の組織内分布を測定したグラフを示す図である。
【
図7】本発明に係る組成物をHCT116ヒト大腸癌細胞移植マウスに1回(単回:Single)又は3回(連続:Serial)静脈注射後、時間の経過につれて腫瘍細胞の大きさが変化することを観察するためのマウスの腫瘍部分の写真を示す図である。
【
図8】本発明に係る組成物をSW620ヒト大腸癌細胞移植マウスに静脈注射後、時間の経過につれて腫瘍細胞の大きさが変化することを観察するためのマウスの腫瘍部分の写真を示す図である。
【
図9】本発明による組成物をHCT116ヒト大腸癌細胞移植マウスに静脈内注射し、時間の経過につれて腫瘍細胞の体積の変化を測定したグラフを示す図である。
【
図10】本発明に係る組成物をSW620ヒト大腸癌細胞移植マウスに静脈内注射し、時間の経過につれて腫瘍細胞の体積の変化を測定したグラフを示す図である。
【
図11】本発明に係る組成物をH1650ヒト非小細胞肺癌細胞移植マウスに静脈注射後、時間の経過につれて腫瘍細胞の大きさが変化することを観察するためのマウスの腫瘍部分の写真を示す図である。
【
図12】本発明に係る組成物をH1650ヒト非小細胞肺癌細胞移植マウスに静脈注射し、時間の経過につれて腫瘍細胞の体積の変化を測定したグラフを示す図である。
【
図13】ヒト由来の膵臓癌ASPC1細胞株及びPANC1細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施し、細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viabiliy assay)を測定したグラフを示す図である。
【
図14】ヒト由来の肝臓癌HepG2細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施し、細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viabiliy assay)を測定したグラフを示す図である。
【
図15】ヒト由来の膀胱癌T24細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施し、細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viabiliy assay)を測定したグラフを示す図である。
【
図16】マウス由来の皮膚癌黒色腫B16F10細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施し、細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viabiliy assay)を測定したグラフを示す図である。
【
図17】ヒト由来の正常な皮膚CCD-986-sk細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施し、細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viabiliy assay)を測定したグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例を通して本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、唯一本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨に基づいて、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明なことであろう。
【0023】
本発明の実施例により、キムチから分離されたラクトバチルス・ファーメンタム菌株は、微生物を同定し、分類するための16S rRNA塩基配列を解析した結果、配列番号1(SEQ ID NO:1)の核酸配列を有することが分かった。
【0024】
したがって、配列番号1(SEQ ID NO:1)の16S rRNA塩基配列を有する本発明の微生物をラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102)と命名し、韓国微生物保存センターに2018年10月31日付で寄託した(寄託番号KCCM12356P)。
【0025】
本発明において、「プロバイオティクス(probiotics)」とは、「ヒトを含む動物の消化管内で宿主の腸内微生物環境を改善し、宿主の健康に有益な影響を与える、生きている微生物」という意味で理解される。プロバイオティクスは、プロバイオティクス活性を有する、生きている微生物であって、単一又は複合菌株の形で、ヒトや動物に乾燥した細胞の形態や発酵産物の形態で供給される場合、宿主の腸内菌叢に有益な影響を及ぼすことができる。
【0026】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む組成物は、癌の予防又は治療効果を有し、薬剤学的組成物として用いられることができる。
【0027】
前記癌は、膀胱癌、乳癌、黒色腫瘍、甲状腺癌、副甲状腺癌、直腸癌、咽喉癌、喉頭癌、食道癌、膵臓癌、胃癌、舌癌、皮膚癌、脳腫瘍、子宮癌、胆嚢癌、口腔癌、結腸癌、肛門付近癌、肝臓癌、肺癌、及び大腸癌からなる群から選択されるいずれかの癌であることができ、好ましくは、大腸癌、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、膀胱癌、又は皮膚癌であることができるが、これらに限定されない。前記肺癌は、非小細胞肺癌であることができる。
【0028】
本発明に係る組成物に含まれるラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102は、生菌体又は死菌体として存在することができ、また、乾燥又は凍結乾燥された形態で存在することもできる。様々な組成物内に含ませるのに適した乳酸菌の形態及び製剤化の方法は、当業者に広く知られている。
【0029】
前記組成物は、経口又は非経口投与することができる。非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、及び直腸内投与などで投与することができ、好ましくは静脈内注入方法で投与することができるが、これらに限定されない。
【0030】
前記組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応性などの要因に応じて多様に処方することができる。
【0031】
本発明の組成物が薬剤学的組成物に活用される場合、本発明の薬剤学的組成物は、前記の有効成分の外に、薬剤学的に適切で生理学的に許容される補助剤を用いて製造することができ、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味料、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤又は香味剤などが用いられることができる。
【0032】
前記薬剤学的組成物は、投与のために、前記した有効成分に加えて、さらに薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで薬剤学的組成物として好ましく製剤化することができる。
【0033】
例えば、錠剤又はカプセル剤の形態に製剤化するために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などのような経口、非毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合することができる。また、所望する又は必要な場合、適合する結合剤、潤滑剤、崩壊剤、及び発色剤もまた混合物として含まれることができる。適合する結合剤は、これらに限定されるものではないが、澱粉、ゼラチン、グルコース又はベータ-ラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガント又はオレイン酸ナトリウムのような天然及び合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む。崩壊剤は、これらに限定されるものではないが、澱粉、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。液状溶液に製剤化される組成物において、許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して用いることができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤に製剤化することができる。
【0034】
さらに、当該分野の適切な方法として、Remington´s Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法を用いて、各疾患に応じて又は成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0035】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む組成物は、癌の予防又は改善用食品組成物又は食品添加剤組成物として用いられることができる。
【0036】
前記食品組成物は、健康機能食品の形態であることができる。
【0037】
前記「健康機能食品」は、健康機能食品に関する法律に従って人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて製造し、加工した食品を意味(第3条第1号)し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調整したり、生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ること(同条第2号)を意味する。
【0038】
前記食品組成物は、食品添加物をさらに含むことができ、「食品添加物」としての適否は、他の規定がない限り、食品薬学品安全処にて承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法等に従って当該品目に関する規格及び基準により判定する。
【0039】
前記「食品添加物公典」に収載された品目としては、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、ケイ皮酸などの化学的合成品、カキ色素、カンゾウエキス、結晶セルロース、グアーガムなどの天然添加物、L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類が挙げられる。
【0040】
本発明の有効成分が含まれた食品としては、パン、餅類、堅果類、キャンディ類、チョコレート類、チューインガム、ジャム類のような菓子類、アイスクリーム類、氷菓類、アイスクリーム粉末類のようなアイスクリーム製品類、牛乳類、低脂肪牛乳類、乳糖分解牛乳、加工乳類、ヤギ乳、発酵乳類、バター乳類、濃縮乳類、乳クリーム類、バター類、天然チーズ、加工チーズ、粉乳類、乳清類のような乳加工品類、食肉加工品、鶏卵加工品、ハンバーガーのような食肉製品類、練り物、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの魚肉加工品のような魚肉製品類、ラーメン類、乾麺類、生麺類、揚げ麺類、糊化乾麺類、改良半生類、冷凍麺類、パスタ類のような麺類、果実飲料、野菜類飲料、炭酸飲料、豆乳類、ヨーグルトなどの乳酸菌飲料、混合飲料のような飲料、醤油、味噌、コチュジャン、春醤、納豆、混合醤油、酢、ソース類、トマトケチャップ、カレー、ドレッシングのような調味食品、マーガリン、ショートニング及びピザが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記したものの他、本発明の組成物は、種々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、エフェクト酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含むことができる。その他に本発明の組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、及び野菜飲料を製造するための果肉を含むことができる。これらの成分は、独立して又は組み合わせて用いられることができる。
【0042】
本発明の有効成分を含む飲料組成物は、他の成分には特別な制限はなく、通常の飲料のように様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。前記した天然炭水化物の例は、単糖類(例えば、ブドウ糖、果糖など); 二糖類(例えば、マルトース、シュークロスなど); 及び多糖類(例えば、デキストリン、シクロデキストリンなど)のような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。
【0043】
前記したもの以外の香味剤として天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリシルヒジンなど))、及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に用いることができる。
【0044】
また、本発明のラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む組成物は、家畜の癌の予防、改善用飼料組成物、又は飼料添加剤組成物として用いられることができる。
【0045】
前記組成物が飼料添加剤として製造される場合、前記組成物は20~90%の高濃縮液、粉末、又は顆粒の形態で製造することができる。前記の飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸やリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸、ポリリン酸塩(重合リン酸塩)などのリン酸塩や、ポリフェノール、カテキン、α-トコフェロール、ローズマリーエキス、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草エキス、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤のいずれか又は一つ以上をさらに含むことができる。飼料として製造される場合、前記組成物は、通常の飼料の形態で製剤化されることができ、通常の飼料成分を共に含むことができる。
【0046】
前記飼料及び飼料添加剤は、穀物、例えば、粉砕又は破砕された小麦、オーツ麦、大麦、トウモロコシ、及び米;植物性タンパク質飼料、例えば、菜の花、大豆、及びヒマワリを主成分とする飼料;動物性タンパク質飼料、例えば、血粉、肉骨粉、骨粉、及び魚粉;糖分及び乳製品、例えば、各種粉乳及び乳清粉末からなる乾燥成分などをさらに含むことができ、それ以外にも栄養補助食品剤、消化及び吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含むことができる。
【0047】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与したり、食用担体中において他の飼料添加物と組み合わせて投与することもできる。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとして、又はこれらの動物飼料に直接混合するか、又は飼料とは別途の経口剤形として、容易に動物に投与することができる。前記飼料添加剤を動物飼料とは別途に投与する場合、当該技術分野において周知のごとく、薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、すぐに放出又は徐放性製剤で製造することができる。これらの食用担体は、固体又は液体、例えば、トウモロコシのでんぷん、ラクトース、スクロース、大豆フレーク、ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油及びプロピレングリコールであることができる。固体担体が使用される場合、飼料添加物は錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ又は含糖錠剤又は微分散性形態のトップドレッシングであることができる。液体担体が用いられる場合、飼料添加剤はゼラチン軟質カプセル剤、シロップ剤、懸濁液、エマルジョン剤、又は溶液剤の剤形であることができる。
【0048】
また、前記飼料及び飼料添加剤は補助剤、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、又は乳化剤、溶液促進剤などを含有することができる。前記の飼料添加剤は、鍼灸、噴霧、又は混合し、動物の飼料に添加して用いられることができる。
【0049】
本発明の飼料又は飼料添加剤は、哺乳類、家禽及び魚類を含む多数の動物の食餌に適用することができる。
【0050】
前記哺乳類としてブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、実験用齧歯類、及び 実験用齧歯類だけでなく、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)などに用いることができ、前記家禽としてニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、キジ、及びウズラなどにも用いることができ、前記魚類として、マスなどに用いられることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、本発明のラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102(Lactobacillus fermentum WiKim0102、寄託番号KCCM12356P)又はその培養物を有効成分として含む組成物は、発酵用乳酸菌スターターとして用いられることができる。
【実施例】
【0052】
実施例1.菌株の分離及び培養
1-1.菌株の分離及び同定
本発明者は、キムチから乳酸菌を分離した。
【0053】
初めにキムチ試料を破砕した後、キムチエキスの原液をMRS寒天(agar)培地に塗抹して30℃で24時間以上培養した。培養後、形成された単一コロニーを継代培養して菌単一集落を選別し、選別された菌単一集落は、16S rRNA塩基配列解析を通じて最終的に同定した。その中で効果に優れた1種の乳酸菌を世界キムチ研究所微生物遺伝子銀行からWiKim0102の固有番号が付与され、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)WiKim0102と命名し、韓国微生物保存センターに2018年10月31日付で寄託した(寄託番号KCCM12356P)。
【0054】
本発明の実施例を通じて分離された菌株は、微生物の同定のための16S rRNA塩基配列解析の結果、配列番号1(SEQ ID NO):1の核酸配列を有することが分かった。
【0055】
1-2.菌株の培養
前記実施例1-1にて分離し、同定したラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102菌株の単一コロニーをMRS液体培地10mlに接種した後、37℃で24時間200rpmで振とう培養した。培養後、菌体を8,000rpmで5分間遠心分離して培養液を除去し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水:Phosphate Buffered Saline)溶液で3回洗浄し、残りの培地成分を除去した。
【0056】
実施例2.実験動物(マウス)の条件
実験に用いられた実験動物は、雄5週齢のBALB/cマウス(オリエントバイオ、韓国)が供給され、室温20±2℃ 、湿度55±15%が維持されるSPF環境の動物飼育室で1週間の安定化期間を経て、実験期間の間、飼育した。飼料は、抗生物質が添加されていない一般的なペレット飼料を供給し、水は随時摂取できるようにした。実験の進行は、世界キムチ研究所の動物実験倫理委員会で承認されたプロトコルに従ってすべての動物の飼育、実験及び安楽死を行った。腫瘍の大きさの変化に関する観察は、3.14×(長さ×高さ×幅)/6の式を用いて腫瘍の体積(mm3)を測定して進めた。
【0057】
実施例3.CT26及びMC38マウス大腸癌細胞移植動物モデルでの抗腫瘍効果の分析
3-1.細胞培養
CT26マウス大腸癌細胞(韓国細胞株銀行、韓国)は、購入したものを用いており、MC38マウス大腸癌細胞(全南大学医学部)は、提供を受けたものを用いた。CT26、MC38マウス大腸癌細胞は、10%牛胎児血清と1%ペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin)を含むDMEM培地(Hyclone、米国)を用いて、5%CO2、37℃の条件で培養した。
【0058】
3-2.細胞移植癌の動物モデルの作製
CT26細胞移植動物モデルを作製するために、6週齢のBALB/cマウス(18~21g)を実験に用いており、MC38細胞移植動物モデルを作製するのには6週齢のC57BL/6マウス(18~21g)を用いた。培養したマウス大腸癌細胞CT26とMC38は、それぞれ1×105細胞を収穫(harvest)した後、50μlのPBSで再浮遊させた後、マウスの右大腿部(thigh)皮下に注入した。
【0059】
3-3.抗腫瘍効果の分析
腫瘍が約80~100mm
3の体積を有するCT26細胞移植マウスの尾にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を静脈内注射した。ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102は、PBSを用いて1×10
10 CFU/ml菌数で定量して用意し、0.1ml(1×10
9 CFU)ずつ実験動物に1回又は3回尾静脈注射し、陰性対照群にはPBSを投与した。時間の経過につれてCT26細胞移植マウスの大腸癌の腫瘍の大きさの変化を肉眼で確認した結果を
図1に示した。
【0060】
図1に示すように、陰性対照群(PBS)に比してラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を静脈内注入した場合、12日経過後、腫瘍細胞が肉眼で確認できるほどに小さくなったことが観察された。特に、1回(単回:Single)注入したときよりも、3回(連続:Serial)注入したときの方が腫瘍の大きさがより小さくなったことが確認でき、3回注入した場合、12日が経過したときは、腫瘍が肉眼で観察されないほどに小さくなったことが確認できた。
【0061】
また、時間の経過につれてCT26細胞移植マウスで腫瘍の大きさの体積の変化を測定した結果を
図2に示した。
【0062】
図2に示すように、CT26細胞移植マウスの大腸癌の腫瘍の大きさがラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を1回注射した場合、18日後に陰性対照群に比して約4.2倍の抗腫瘍効果があったことが確認でき、6日間おきに3回注射した場合、18日後に陰性対照群に比して約27.2倍の抗腫瘍効果が観察された。
【0063】
また、腫瘍が約80~100mm
3の体積を有するMC38細胞移植マウスの尾にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を静脈内注射した。ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102は、PBSを用いて1×10
10CFU/ml菌数に定量して用意し、0.1 ml(1×10
9CFU)ずつ実験動物に1回尾静脈注射し、陰性対照群にはPBSを投与した。時間の経過につれてMC38細胞移植マウスの大腸癌の腫瘍の大きさの変化を肉眼で確認した結果を
図3に示した。
【0064】
図3に示すように、陰性対照群(PBS)に比してラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を静脈内注入した場合に、腫瘍細胞が肉眼で確認できるほどに小さくなったことが観察できた。15日が経過したときには、腫瘍が肉眼で観察されない程度に小さくなったことを観察することができた。
【0065】
また、時間の経過につれてMC38細胞移植マウスで腫瘍の大きさの体積の変化を測定した結果を
図4に示した。
【0066】
図4に示すように、MC38細胞移植マウスの大腸癌の腫瘍の大きさがラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を1回注射した場合、12日後に陰性対照群に比して約23.8倍の抗腫瘍効果があることを確認することができた。
【0067】
前記の実験結果から本発明者等は、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102の抗腫瘍効果に優れており、特に連続して投与した場合、より優れた抗腫瘍効果を示すことが確認できた。
【0068】
実施例4.ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102注射後の生体内分布(biodistribution study)
ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102をCT26細胞とMC38細胞が移植されたマウスの尾に静脈注射後、1時間と24時間が経過した後に腫瘍組織を摘出して均質化した後、MRS agar培地に塗抹した。塗抹した後、37℃で24時間培養して生成されたコロニーを計数し、CFU/g組織を計算した。腫瘍組織と他の主要臓器組織のラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102標的化の程度を比較するために、肝臓及び脾臓組織も同様の条件で均質化し、細菌を計数し、その結果を
図5(CT26細胞移植マウス)及び
図6(MC38細胞移植マウス)に示した。
【0069】
図5及び
図6に示すように、CT26とMC38細胞が移植された癌動物モデルの全部の場合において、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102が注入された後、1時間後から腫瘍組織で1×10
7CFU/g以上の菌数が観察され、24時間後にも腫瘍組織の菌数が維持されることが確認された。
【0070】
前記の結果から、CT26細胞とMC38細胞が移植されたマウスモデルにおいて、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102が腫瘍組織に蓄積され、効果的に標的化されることを確認することができた。
【0071】
実施例5.HCT116、SW620(ヒト大腸癌)細胞とH1650(ヒト非小細胞肺癌)細胞移植動物モデルでの抗腫瘍効果の分析
5-1.細胞培養
HCT116ヒト大腸癌細胞とSW620ヒト大腸癌細胞(韓国細胞株銀行、韓国)は、購入したものを用いており、H1650ヒト非小細胞肺癌細胞(全南大学医学部)は、提供されたものを用いた。これらのHCT116、SW620及びH1650細胞は、10%牛胎児血清と1%ペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin)を含むRPMI 1640培地(Hyclone、米国)を用いて、5%CO2、37℃の条件で培養した。
【0072】
5-2.HCT116、SW620及びH1650細胞移植癌の動物モデルの作製
HCT116、SW620及びH1650細胞移植癌の動物モデルを作製するために週齢BALB/cマウス(17~20g)を実験に用いた。培養されたHCT116、SW620及びH1650細胞は、それぞれ5×106細胞を収穫(harvest)した後、50μlのPBSで再浮遊させた後、マウスの右大腿部(thigh)皮下に注入した。
【0073】
5-3. HCT116、SW620大腸癌細胞に対する抗腫瘍効果の分析
腫瘍が約80~100mm
3からなるHCT116及びSW620大腸癌細胞移植マウスの尾にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を静脈内注射した。ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102は、PBSを用いて1×10
10CFU/ml菌数又は5×10
9CFU/mlで定量して用意した。HCT116ヒト大腸癌細胞が移植された癌の動物モデルには、用意されたラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を0.1ml(1×10
9CFU)ずつ1回又は6日おきに3回、0.1ml(5×10
8 CFU)ずつ1回又は6日おきに3回マウスの尾に静脈注射し、SW620ヒト大腸癌細胞が移植された癌の動物モデルには、用意されたラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を0.1ml(1×10
9CFU)ずつマウスの尾に1回静脈内注射した。陰性対照群には同様にPBSを投与し、26日間、時間の経過につれて腫瘍の大きさの変化を肉眼で確認した結果及び腫瘍の大きさの体積の変化を示したグラフを
図7~
図10に示した。
【0074】
図7及び
図8に示すように、HCT116及びSW620ヒト大腸癌細胞が移植された癌動物モデルにラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を注入した場合、腫瘍の大きさが肉眼で観察可能なほどに小さくなっていることが観察され、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を0.1ml(5×10
8CFU)で投与した場合よりも0.1ml(1×10
9CFU)ずつ投与した場合に、腫瘍縮小効果に優れていることを確認した。特に、HCT116ヒト大腸癌細胞が移植された癌動物モデルでは、3回投与した場合、1回投与した場合よりも、腫瘍の大きさの縮小効果に優れていることを確認した。
【0075】
また、
図9及び
図10に示すように、HCT116及びSW620ヒト大腸癌細胞が移植された癌動物モデルにラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を注入した場合、腫瘍の大きさの体積が明確に小さくなっていることを数値的に確認することができた。HCT116ヒト大腸癌細胞が移植された癌動物モデルにラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を1×10
9CFU/0.1mlで1回又は3回注射した場合、26日後に陰性対照群に比して、それぞれ約4.2倍と約27.2倍の抗腫瘍効果に観察され、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を5×10
8CFU/0.1mlで3回注射した場合、26日後に陰性対照群に比して、約2.9倍の抗腫瘍効果が観察された。一方、SW620ヒト大腸癌細胞が移植された癌動物モデルにラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を1×10
9CFU/0.1mlで1回注射した場合、26日後に陰性対照群に比して約2.1倍の抗腫瘍効果が観察された。
【0076】
前記の結果から、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を1回注射した場合よりも、3回注射した場合の方が腫瘍の成長を阻害することにより優れた効果が示された。したがって、腫瘍の効果的な治療のためには、適切な間隔による注射投与法が1回の注射よりもより効果的であり、マウス大腸癌細胞だけでなく、ヒト大腸癌細胞が移植された動物モデルでも優れた抗癌活性を有することを確認した。
【0077】
5-4.H1650非小細胞肺癌に対する抗腫瘍効果の分析
腫瘍が約80~100mm
3の体積を有するH1650非小細胞肺癌細胞移植マウスの尾にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を静脈内注射した。ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102は、PBSを用いて1×10
10CFU/ml菌数又は5×10
9 CFU/mlで定量して用意した。H1650ヒト非小細胞肺癌細胞が移植された癌動物モデルには、用意されたラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102 0.1 ml(1×10
9CFU)を、マウスの尾に1回静脈内注射した。陰性対照群には同様にPBSを投与し、21日間、時間の経過につれて腫瘍の大きさの変化を肉眼で確認した結果及び腫瘍の大きさの体積の変化を示したグラフを
図11~
図12に示した。
【0078】
図11に示すように、H1650非小細胞肺癌細胞が移植された癌動物モデルにラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を注入した場合、腫瘍の大きさが肉眼で観察可能なほどに小さくなったことが観察された。
【0079】
また、
図12に示すように、H1650非小細胞肺癌細胞が移植された癌動物モデルにラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を注入した場合、腫瘍の大きさの体積が画然と小さくなることを数値的に確認することができた。H1650非小細胞肺癌細胞が移植された癌動物モデルにラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を注射した場合、21日後に陰性対照群に比して約1.8倍の抗腫瘍の効果が観察された。
【0080】
実施例6.In vitro抗癌活性効能分析
6-1.細胞株の調製
ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)WiKim0102の抗癌活性効果を観察するために、Cell counting Kit-8を用いて、細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viabiliy assay)を測定した。抗癌活性効能実験に用いられた細胞は、ヒト由来の膵臓癌ASPC1、PANC1細胞株、ヒト由来の肝臓癌HepG2細胞株、ヒト由来の膀胱癌T24細胞株、マウス由来の皮膚黒色腫B16F10細胞株、及び正常な皮膚細胞株であるCCD-986-sk細胞株を用いた。
【0081】
ヒト由来の癌細胞ASPC1、PANC1、HepG2、及びT24細胞株は、10%FBS(ウシ胎児血清:fetal bovine serum)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)を添加したRPMI培地を用いて、5%CO2、37℃の条件で継代培養し、成長期の細胞を用いて実験した。培養されたASPC1、PANC1、HepG2、及びT24細胞は、0.25%トリプシン(trypsin)-EDTAで培養器に37℃で3分間処理し、細胞を脱着した後、DPBSで2回洗浄した後、1×104細胞/ウェルで用意した。
【0082】
マウス由来の皮膚黒色腫B16F10細胞株は、10%FBS(ウシ胎児血清:fetal bovine serum)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)を添加したDMEM培地を用いて、5%CO2、37℃の条件で継代培養し、成長期の細胞を用いて実験した。培養されたB16F10細胞は、0.25%トリプシン(trypsin)-EDTAで培養器に37℃で3分間処理して細胞を脱着した後、DPBSで2回洗浄した後、1×104細胞/ウェルで用意した。
【0083】
ヒト由来の正常な皮膚細胞CCD-986-sk細胞株は、10%FBS(ウシ胎児血清:fetal bovine serum)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)を添加したRPMI培地を用いて、5%CO2、37℃の条件で継代培養し、成長期の細胞を用いて実験した。培養されたCCD-986-sk細胞は、0.25%トリプシン(trypsin)-EDTAで培養器に37℃で3分間処理して細胞を脱着した後、DPBSで2回洗浄した後、1×104細胞/ウェルで用意した。
【0084】
6-2.細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viabiliy assay)の測定結果
本発明は、膵臓癌(2種)、肝臓癌(1種)、膀胱癌(1種)、皮膚癌(1種)の細胞を培養した後、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施した細胞の細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viability assay)を測定し、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102が施されていない癌細胞の吸光度を100%の成長率に基づいて、抗癌活性効能を確認した。
【0085】
細胞成長率(細胞生存アッセイ:cell viability assay)は、MOI1濃度で処理した後、72時間培養し、培養後Cell counting Kit-8試薬を処理した後、吸光度(OD 450nm)を測定した。ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)WiKim0102を施していない細胞(対照:control )の吸光度を100%基準として、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum )WiKim0102を施した細胞成長率を計算し、実験結果を以下に記載した。
【0086】
ヒト由来の膵臓癌ASPC1細胞株、ヒト由来の膵臓癌細胞株PANC1にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施し、細胞成長率を測定した結果を
図13に示した。
【0087】
図13に示すように、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施したヒト由来の膵臓癌ASPC1細胞株で26.3%、ヒト由来の膵臓癌細胞株PANC1で49.4%の細胞成長率が測定された。前記の結果から、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施した膵臓癌細胞株の場合、細胞成長率が著しく阻害されるため、膵臓癌に対して優れた抗癌活性効能を有することが確認できた。
【0088】
また、ヒト由来の肝臓癌HepG2細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施し、細胞成長率を測定した結果を
図14に示した。
【0089】
図14に示すように、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施したヒト由来の肝臓癌HepG2細胞株では、31.4%の細胞成長率が測定された。前記の結果から、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施した肝臓癌細胞株の場合、細胞成長率が著しく阻害されるため、肝臓癌に対して優れた抗癌活性効能を有することが確認できた。
【0090】
また、ヒト由来の膀胱癌T24細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施して細胞成長率を測定した結果を
図15に示した。
【0091】
図15に示すように、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施したヒト由来の膀胱癌T24細胞株では、66.8%の細胞成長率が測定された。前記の結果から、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施した膀胱癌細胞株の場合、細胞成長率が著しく阻害されるため、膀胱癌に対して優れた抗癌活性効能を有することが確認できる。
【0092】
また、マウス由来の皮膚黒色腫B16F10細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施して細胞成長率を測定した結果を
図16に示した。
【0093】
図16に示すように、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施したマウス由来の皮膚黒色腫B16F10細胞株では、39.7%の細胞成長率が測定された。前記の結果から、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施した皮膚癌細胞株の場合、細胞成長率が著しく阻害されるため、皮膚癌に対して優れた抗癌活性効能を有することが確認できる。
【0094】
前記実験と対比してヒト由来の正常な皮膚CCD-986-sk細胞株にラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施して細胞成長率を測定した結果を
図17に示した。
【0095】
図17に示すように、ラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102を施した正常な皮膚細胞株では、細胞成長率が96.2%で測定されており、前記の結果からラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102が正常な皮膚細胞株に対しては、毒性を持たないことを確認することができた。
【0096】
両側検定t-検定(t-test)は、陰性対照群とラクトバチルス・ファーメンタムWiKim0102処理群間で腫瘍の成長において統計的に有意な差を決定した。P<0.05は、すべての腫瘍の成長グラフの分析に対して有意に考慮された。
【0097】
【受託番号】
【0098】
KCCM12356P
【配列表】