(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】油圧流体
(51)【国際特許分類】
C10M 133/02 20060101AFI20221115BHJP
C10M 141/10 20060101ALI20221115BHJP
C10M 141/08 20060101ALI20221115BHJP
C10M 133/44 20060101ALN20221115BHJP
C10M 133/06 20060101ALN20221115BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20221115BHJP
C10M 137/04 20060101ALN20221115BHJP
C10M 129/10 20060101ALN20221115BHJP
C10M 135/10 20060101ALN20221115BHJP
C10M 129/54 20060101ALN20221115BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20221115BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20221115BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20221115BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
C10M133/02
C10M141/10
C10M141/08
C10M133/44
C10M133/06
C10M133/16
C10M137/04
C10M129/10
C10M135/10
C10M129/54
C10N40:08
C10N10:04
C10N30:12
C10N30:04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022116991
(22)【出願日】2022-07-22
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン・ダイアー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン、ベル
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭62-24427(JP,B2)
【文献】米国特許第5885942(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧流体であって、
式(I)の1つ以上の化合物、
【化1】
および/またはその摩擦学的に許容される塩である、窒素含有量に関して40~2000重量ppmの腐食防止剤であって、式(I)中、
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、
-xが、0または1であり、
-R
2およびR
3のそれぞれが、独立して、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、
-R
4が、-NR
5R
6であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基で置換されたフェニル基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する前記ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖が、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得る、腐食防止剤と、
0.1~1重量%の無灰窒素含有分散剤と、
多量の基油とを含む、油圧流体。
【請求項2】
前記式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩の量が、窒素含有量に関して50~200重量ppmである、請求項1に記載の油圧流体。
【請求項3】
前記無灰分散剤が、1500~4000重量ppmの量で存在し、窒素含有無灰分散剤である、請求項1に記載の油圧流体。
【請求項4】
1つ以上のリン酸摩耗防止剤をさらに含み、前記1つ以上のリン酸摩耗防止剤の総量が、100~3000重量ppmである、請求項1に記載の油圧流体。
【請求項5】
フェネート洗浄剤、置換ベンゼンスルホン酸洗浄剤、およびサリチル酸洗浄剤から選択される1つ以上のアルカリ土類金属洗浄剤をさらに含み、前記1つ以上のアルカリ土類金属洗浄剤の総量が、50~2000重量ppmである、請求項1に記載の油圧流体。
【請求項6】
1つ以上の酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載の油圧流体。
【請求項7】
100~2000ppmの量で防錆剤をさらに含む、請求項1に記載の油圧流体。
【請求項8】
解乳化剤をさらに含む、請求項1に記載の油圧流体。
【請求項9】
粘度調整剤および/または流動点降下剤をさらに含む、請求項1に記載の油圧流体。
【請求項10】
添加剤濃縮物であって、
(a)式(I)の1つ以上の化合物、
【化2】
および/またはその摩擦学的に許容される塩である、2.0~20重量%の腐食防止剤であって、式(I)中、
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、
-xが、0または1であり、
-R
2およびR
3のそれぞれが、独立して、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、
-R
4が、-NR
5R
6であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基で置換されたフェニル基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する前記ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖が、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得る、腐食防止剤と、
(b)11~50重量%の無灰窒素含有分散剤と、任意に、希釈剤とを含む、添加剤濃縮物。
【請求項11】
前記式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩の量が、3.0~14重量%である、請求項10に記載の添加剤濃縮物。
【請求項12】
前記無灰窒素含有分散剤が、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換されたコハク酸および/または無水コハク酸との反応から取得可能である生成物であり、前記反応が、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシロキシアンモニウム結合の形成を伴い、前記生成物が、少なくとも300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される、請求項10に記載の添加剤濃縮物。
【請求項13】
前記腐食防止剤が、2.3~9.0重量%の量で存在し、および/または前記分散剤が、13~45重量%の量で存在する、請求項10に記載の添加剤濃縮物。
【請求項14】
(i)0.7~8.0重量%の量における1つ以上の金属洗浄剤と、
(ii)0.7~23重量%の量における1つ以上のリン酸摩耗防止剤と、
(iii)3.7~37重量%の量における1つ以上の酸化防止剤と、
(iv)0.07~15重量%の量における1つ以上の防錆剤と、
(v)0.007~3.7重量%の量における解乳化剤とを含む、請求項10に記載の添加剤濃縮物。
【請求項15】
少なくとも1つのフルオロポリマーシールと、前記シールと接触する油圧流体とを含む、油圧システムであって、前記油圧流体が、請求項1に定義される通りである、油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、油圧流体の機能特性ならびにフルオロポリマーシールおよび黄色金属(例えば、銅)成分とのその適合性に関して、望ましい特性のバランスが向上した油圧流体の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧流体は、優れた動力伝達を示すことが望ましいが、また、熱安定性、防錆、および摩耗防止性能などの他の重要な特性を示すことも望ましい。したがって、様々な異なる点で満足のいく性能を達成することを助けるために、添加剤が油圧流体に添加され得る。
【0003】
しかしながら、複数の異なる望ましい特性の達成に関しては、トレードオフが存在し得る。例えば、摩耗防止添加剤が、いくつかの状況ではポンプの性能を向上させるために添加され得るが、すべての摩耗防止添加剤が熱的に安定しているわけではないため、より高い濃度において、スラッジもしくはワニスの形成に寄与し得、および/または分解してフィルターの目詰まりにつながり得る酸性種を形成し得る。
【0004】
一方、機械の信頼性を向上させ、保守要件を最小限化するという目標は、油圧流体がますます長期間機能し続けることが望ましいことを意味する。油圧流体が長期間効果的に機能するだけでなく、それが接触する材料との良好な適合性を有することも有利である。
【0005】
例えば、油圧流体と、銅などのいわゆる黄色金属を含有する表面を含む、それが接触し得る任意の金属表面との間の適合性が、所望される。特に、そのような金属の腐食/溶解を回避または最小限化することが望ましい。これに取り組むための1つの過去のアプローチは、カルボン酸、ベンゾトリアゾール、金属スルホン酸塩、およびアルキル化カルボン酸から選択された典型的な化学構造を伴う0.05~1.0重量%の腐食防止添加剤を採用することであった(Hydraulic Fluids,1996,P.K.B Hodges)。例えば、この目的のために記載されているカルボン酸には、アリールカルボン酸および脂肪族カルボン酸の両方が含まれる。例えば、WO1999035219を参照されたいが、GB867181は、好ましくは、0.25重量%の量におけるベンゾトリアゾールの使用を記載している。但し、Irgamet(登録商標)39の商品名で販売されている製品、また、トリルトリアゾールなどのベンゾトリアゾールの誘導体も提案されている(例えば、US6406643を参照)。Irgamet(登録商標)39腐食防止剤は、以下に記載される構造を有する。
【化1】
【0006】
このジアルキルアミノメチル芳香族トリアゾール構造を伴う化合物は、酸性環境でさえも優れた腐食防止特性を提供するものとして報告されている(例えば、US4522785を参照)。それらはまた、例えば、室温で固体であるトリルトリアゾールとは対照的に、室温で液体であるという利点も有する。
【0007】
1H-1,2,4-トリアゾールは、同等の腐食防止を提供するが、コーティングのない金属表面および堆積物形成の低減を提供するということに基づいて、ベンゾトリアゾール化合物よりも好ましいものとして報告されている(CA2442697)。1H-1,2,4-トリアゾールとベンゾトリアゾール誘導体との組み合わせも記載されており(WO0046325)、様々なトリアゾール誘導体およびイミダゾール誘導体(例えば、WO2010021643を参照)、ならびに0.1~5重量%の量におけるベンゾトリアゾール化合物および/またはチアジアゾール化合物の使用(例えば、US2010130394を参照)も記載されている。
【0008】
より一般的には、潤滑剤および油圧流体に関して、他のさらに最近記載されている腐食防止物質には、(i)PおよびSを含まない有機タングステン酸塩、(ii)油溶性2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体、(iii)ジノニルナフタレンスルホン酸のNaまたはCa塩、ならびに(iv)ヒドロカルビル置換1,2,4-トリアゾール、(v)酸化ランタン、高級カルボン酸のトリグリセリド、アルキルベンゼンスルホン酸、アルカノールアミン、硝酸ランタン、および有機溶媒の組み合わせが含まれる(例えば、“A Review on Recent Patents in Corrosion Inhibitors”,Viswanathan S.Saji,Recent Patents on Corrosion Science,2010,2,6-12を参照)。
【0009】
油圧流体が接触する材料との油圧流体の適合性に関する別の考慮事項は、シール、特に、油圧システムで使用されるポリマー材料とのその適合性である。シールは、以前は、ニトリルゴムおよびその水素化類似体、アクリレート、ならびにビニル変性アクリルポリマーなどの材料から作製されており、接触流体には、シールを膨張および軟化させて効果的な動作を促進するために、フタル酸エステル、スルホラン誘導体、およびナフテン油などのシール膨張潤剤が提供されていた。しかしながら、より最近では、いくつかのシステムは、「FKM」と指定され得るフルオロポリマーのサブセットを含む、フルオロポリマーなどの材料から製造されたシールを使用することに移行している。そのようなフルオロポリマーシールは、利点を提供することができるが、例えば、解重合または架橋反応を介して、分解を起こしやすくあり得る。特に、油圧流体に含まれ得る異なるタイプの添加剤のうちのいくつかが、そのような分解反応を引き起こすか、または促す可能性がある。例えば、FKMフルオロポリマーは、エーテル、ケトン、エステル、およびアミン、またはリン酸エステルに基づく油圧流体に対して常に良好な耐性を示すとは限らない。したがって、良好な機能性および良好なシール適合性を提供するという潜在的に競合する目的の間にトレードオフが存在し得る。したがって、機能性を損なうことなく良好なシール適合性を達成することは、困難であり得る。
【0010】
フルオロポリマーシール適合性を向上させるいくつかの方法は、他の流体との関連で記載されている。例えば、潤滑剤組成物に関連してWO2014078702に記載されている1つのアプローチは、(ASTM D4739に従って試験されたときに)少なくとも80mg KOH/gの全塩基価を有するアミン化合物と組み合わせて、以下に描写されるものなどのエポキシド化合物を添加することを伴う。
【化2】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、シール適合性を向上させるために追加の薬剤を導入することは、とりわけ複雑な事態を生じさせ得るため、理想的な解決策ではない。例えば、WO2014178702では、上記に描写されるものなどのエポキシド化合物が、酸、アミン、無水物、トリアゾール、および/または酸化物などの他の添加剤と反応する可能性を有することに留意されたい。
【0012】
より最近では、US2016/0122680は、2つの異なる一般的な市販の摩擦調整剤のいずれか(一方はテトラエチレンペンタミンをイソステアリン酸と反応させることによって作製され、他方はテトラエチレンペンタミンをイソオクタデセニルコハク酸無水物と反応させることによって作製される)とともに、分散剤、摩耗防止剤、摩耗防止剤、および酸化防止剤を含有する、動力伝達流体のシール適合性は、エステル化触媒の存在下で、(a)イソステアリン酸またはオレイン酸を(b)400分子量の重量ポリエチレングリコールまたはETHOMEEN(登録商標)C-15(ポリアルコキシル化アルキルアミン化合物を含むと言われている)と反応させることによって作製される代替的摩擦調整剤で市販の摩擦調整剤を置き換えることによって向上され得ることを報告している。しかしながら、他のタイプの流体のシール適合性を向上させる必要性が依然として存在する。
【0013】
本発明は、少量の特定のタイプの腐食防止剤の使用が、特に、良好な機能性(良好な腐食防止など)および良好なフルオロポリマー適合性という潜在的に競合する目標に関して、予想外に有利な特性のバランスの提供を可能にし得るという驚くべき発見に基づく。したがって、本明細書で定義される腐食防止剤は、特に、特定の他の添加剤と組み合わせられたときにも、非常に低い濃度で強力な腐食防止を提供することが見出されている。これの利点の中には、腐食防止剤がフルオロポリマーシールに及ぼし得る潜在的な悪影響が最小限化されることを可能にすることがある。さらに、腐食防止剤がシールに及ぼす最小限の影響(すなわち、その良好なシール適合性)は、フルオロポリマーシールに劣化の影響を及ぼし得るという懸念により、別様に回避されているか、または比較的控えめに使用されている場合がある他の添加剤のレベルを上げることが可能にし、したがって、良好なフルオロポリマーシール適合性を伴って、油圧流体のための新しい向上したレベルの機能性の達成を可能にする。
【0014】
本発明に従って使用するための腐食防止剤は、式(I)の1つ以上の化合物、
【化3】
および/またはその摩擦学的に許容される塩であり、式(I)中、
-各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれは、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
4は、-NR
5R
6または-OR
7であり、
-R
5およびR
6のそれぞれは、独立して、1~20個の炭素原子を含む1つ以上のヒドロカルビル基で任意に置換される、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、
-R
7は、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖は、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得る。
【0015】
非常に少量の上記の腐食防止剤を使用することが、フルオロポリマーシール適合性および油圧流体の様々な他の機能要件の両方に関して優れた性能の達成を可能にすることができるという発見は、既知の腐食防止剤Irgamet(登録商標)39(その構造は背景技術の節で上記に記載される)を使用して達成され得る特性のバランスと比較すると、特に際立っている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1の反応生成物のGC-MSプロットである。
【
図2】
図2は、実施例1の反応生成物のFT-IRプロットである。
【
図3a】
図3aは、それぞれ、実施例2からのIrgamet 39および化合物1を含む溶液の引張応力プロットである。
【
図3b】
図3bは、それぞれ、実施例2からのIrgamet 39および化合物1を含む溶液の引張応力プロットである。
【
図4】
図4は、14日間の応力・ひずみ曲線のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、
(a)式(I)の1つ以上の化合物、
【化4】
および/またはその摩擦学的に許容される塩である、窒素含有量に関して40~2000重量ppmの腐食防止剤であって、式(I)中、
-各R
1が、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xが、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれが、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
4が、-NR
5R
6または-OR
7であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、1~20個の炭素原子を含む1つ以上のヒドロカルビル基で任意に置換される、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、
-R
7が、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖が、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得る、腐食防止剤と、
(b)0.1~1重量%の無灰窒素含有分散剤と、
(c)多量の基油とを含む、油圧流体を提供する。
【0018】
本発明はまた、
(a)本明細書で定義される式(I)の1つ以上の化合物である、2.0~20重量%の腐食防止剤と、
(b)11~50重量%(好ましくは11~45重量%)の無灰窒素含有分散剤と、任意に、
(c)希釈油とを含む、添加剤濃縮物も提供する。
【0019】
上記の式(I)のいくつかの化合物および塩は、新規であると考えられる。したがって、本発明はまた、式(II)の化合物、
【化5】
またはその摩擦学的に許容される塩も提供し、式(II)中、
-各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれは、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
7は、1~20個の炭素原子を含む基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖は、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得るが、
但し、
(a)それらの間で、R
2およびR
3が少なくとも7個の炭素原子を有し、R
7が少なくとも2個の炭素原子を有するか、
(b)それらの間で、R
2およびR
3が少なくとも5個の炭素原子を有し、R
7が少なくとも2個の炭素原子を有し、シクロアルキル基ではないか、
(c)R
2およびR
3のいずれもHではなく、それらの間でR
2およびR
3が少なくとも3個の炭素原子を有するか、
(d)xが1~4であり、R
1が少なくとも2個の炭素原子を有し、(i)R
7が少なくとも2個の炭素原子を有するか、(ii)R
2およびR
3のいずれもHではないか、もしくは(iii)それらの間でR
2およびR
3が少なくとも3個の炭素原子を有するか、または
(e)xが2~4であることを条件とする。
【0020】
本発明はまた、少なくとも1つのフルオロポリマーシールと、シールと接触する本明細書で定義される本発明の油圧流体とを含む、油圧システムも提供する。
【0021】
本発明はまた、動力伝達流体としての本明細書で定義される本発明の油圧流体の使用も提供する。
【0022】
本発明はまた、油圧流体において、フルオロポリマーシール適合性を向上させるため、または該油圧流体と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素に関して40~200重量ppmの、
-本明細書で定義される腐食防止剤、または
-本明細書で定義される本発明の化合物もしくは塩の使用も提供する。
【0023】
本発明はまた、油圧流体において、腐食を防止しながら、また、(a)フルオロポリマーシール適合性を向上させるか、または(b)該油圧流体と接触する1つまたは以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素に関して40~200重量ppmの、
-本明細書で定義される式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩、または
-本明細書で定義される本発明の化合物もしくは塩の使用も提供する。
【0024】
成分(a):式(I)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩
本発明の油圧流体は、上記で定義される式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩である、(油圧流体の総重量に基づいて)窒素に関して40重量ppm~2000重量ppmの腐食防止剤を含む。
【0025】
この点に関して、誤解を避けるために、油圧流体は、1つを超える異なるタイプの式(I)の化合物および/またはその塩を含み得るが、但し、該化合物/塩の総量が窒素含有量に関して2000重量ppmの上限を超えないことを条件とする。換言すると、成分(a)は、式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩であり得る(40~2000ppmは、それらの窒素含有量に関してすべてのそのような化合物および/または塩の総濃度を指す)。この点に関して、「1つ以上」という用語は、好ましくは、1つ、2つ、または3つを意味し、より好ましくは、1つまたは2つを意味する。但し、典型的には、式(I)の1つの化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩を含むことだけが必要である。
【0026】
好ましくは、式(I)では、各R1は、独立して、直鎖もしくは分枝アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、各R1は、独立して、直鎖または分枝アルキル基である。
【0027】
好ましくは、各R1は、独立して、1~8個の炭素原子、より好ましくは、1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは、1~4個の炭素原子を含む。R1の好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルなどのアルキル基である。メチルおよびエチルが特に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0028】
部分xの上限は、好ましくは3、より好ましくは2である。xの下限は、好ましくは1である。xが0または1であることが特に好ましい。最も好ましくは、xは、1である。
【0029】
R4が-NR5R6であるとき、R2は、好ましくは、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、R2は、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基である。最も好ましくは、R2は、水素である。
【0030】
R4が-NR5R6であり、R2が1~20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であるとき、R2は、好ましくは、1~8個の炭素原子、より好ましくは、1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは、1~4個の炭素原子を含む。この点に関するR2の好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルなどのアルキル基であり、メチルおよびエチルが特に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0031】
R4が-OR7であるとき、R2は、好ましくは、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、R2は、直鎖または分岐アルキル基である。
【0032】
R4が-OR7であり、R2が1~20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であるとき、R2は、好ましくは、2~16個の炭素原子、より好ましくは、4~12個の炭素原子、さらにより好ましくは、6~10個の炭素原子を含む。この点に関するR2の好ましい例は、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルの直鎖および分枝形態などのアルキル基であり、n-オクチルが最も好ましい。
【0033】
R4が-OR7であるとき、式(I)の化合物は、好ましくは、以下でさらに定義される式(II)の化合物である。
【0034】
R3は、好ましくは、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、R3は、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基である。最も好ましくは、R3は、水素である。
【0035】
R3が1~20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であるとき、それは、好ましくは、1~8個の炭素原子、より好ましくは、1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは、1~4個の炭素原子を含む。この点に関するR3の好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルなどのアルキル基であり、メチルおよびエチルが特に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0036】
好ましくは、R5およびR6のそれぞれは、独立して、1つ以上のヒドロカルビル基で置換されたアリール基である。より好ましくは、R5およびR6のそれぞれのアリール基は、独立して、1、2、または3個のヒドロカルビル基、さらにより好ましくは、1または2個のヒドロカルビル基、最も好ましくは、1個のヒドロカルビル基で置換される。
【0037】
好ましくは、R5およびR6のそれぞれのアリール基は、独立して、6~10個の炭素原子、最も好ましくは、6個の炭素原子を含む。R5およびR6のそれぞれのアリール基が、独立して、1つ以上のヒドロカルビル基で置換されるとき、各ヒドロカルビル基は、独立して、好ましくは、2~16個の炭素原子、より好ましくは、4~12個の炭素原子、さらにより好ましくは、6~10個の炭素原子を含む。この点に関するヒドロカルビル基の好ましい例は、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルの直鎖および分岐形態などのアルキル基であり、n-オクチルが最も好ましい。
【0038】
好ましくは、R5およびR6のそれぞれは、独立して、1つ以上のヒドロカルビル基(典型的にはアルキル基)で置換されたフェニル基であり、該ヒドロカルビル基は、6~10個の炭素原子を含有する。好ましくは、ヒドロカルビル基(典型的にはアルキル基である)は、パラ位に位置する。
【0039】
好ましくは、R7は、直鎖もしくは分岐アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、R7は、直鎖または分岐アルキル基である。
【0040】
好ましくは、R7は、1~10個の炭素原子、より好ましくは、2~8個の炭素原子、さらにより好ましくは、3~6個の炭素原子を含む。R7の好ましい例は、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルの直鎖および分枝形態などのアルキル基であり、n-ブチルが最も好ましい。
【0041】
特に好ましい実施形態では、xは、0または1であり、R1は、メチルまたはエチル(典型的にはメチル)などの1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、R2は、水素、またはメチルもしくはエチルなどの1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり(典型的には、R2は水素である)、R3は、水素、またはメチルもしくはエチルなどの1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり(典型的には、R3は水素である)、R4は、-NR5R6であり、R5は、6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基で置換されたフェニル基(典型的にはn-オクチル)であり、R6は、6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基で置換されたフェニル基(典型的にはn-オクチル)である。この点に関してより好ましくは、xは、1である。6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基がパラ位にあることも好ましい。
【0042】
別の特に好ましい実施形態では、xは、0または1であり、R1は、メチルまたはエチル(典型的にはメチル)などの1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、R2は、4~12個の炭素原子、好ましくは、6~10個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基(典型的にはn-オクチル)であり、R3は、水素、またはメチルもしくはエチルなどの1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり(典型的には、R3は水素である)、R4は、-OR7であり、R7は、2~8個の炭素原子、好ましくは、3~6個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基(典型的にはn-ブチル)である。この点に関してより好ましくは、xは、1である。
【0043】
式(I)の好ましい化合物の例は、化合物1および化合物2である。
【化6】
【0044】
成分(a)として使用するために好適ないくつかの化合物および塩は、既知であり、一般に市販されており、および/または周知の方法によって調製されることができる。例えば、化合物2は、市販の製品Vanlube(登録商標)887として希釈形態で入手可能である。
【0045】
油圧流体中の腐食防止剤の濃度は、(全体的な油圧流体中の)窒素含有量に関して40重量ppm~2000重量ppmである。窒素含有量に関する量は、好ましくは、少なくとも50ppm、少なくとも55ppm、少なくとも60ppm、少なくとも65ppm、少なくとも70ppm、少なくとも75ppm、または少なくとも80ppmなどの少なくとも45ppmである。窒素含有量に関する量の上限は、好ましくは、最大1000ppm、最大800ppm、最大600ppm、最大400ppm、または最大200ppmなどの最大1500ppmである。いくつかの実施形態では、量は、好ましくは、最大180ppm、最大170ppm、最大160ppm、最大150ppm、最大140ppm、最大130ppm、または最大120ppmなどの最大190ppmである。好ましい範囲の例は、50~140ppm、60~130ppm、および70~120ppmである。
【0046】
油圧流体中の腐食防止剤の量(すなわち、窒素含有量に関していない)は、x、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7の同一性に応じて変化し得る。典型的には、量は、少なくとも400ppm、少なくとも500ppm、少なくとも600ppm、または少なくとも700ppmなどの少なくとも300ppmである。量の上限は、(例えば)4000ppmまで、3500ppmまで、3000ppmまで、2500ppmまで、2000ppmまで、1800ppmまで、1600ppmまで、1400ppmまで、または1200ppmまでであり得る。いくつかの実施形態では、量は、好ましくは、1000ppmまで、950ppmまで、900ppmまで、880ppmまで、または860ppmまでである。好ましい範囲の例は、300~1900ppm、500~1300ppm、および700~900ppmである。可能な上限の下限値は、(a)xが、0または1であり、R1が、メチルまたはエチル(典型的にはメチル)などの1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、R2が、水素、またはメチルもしくはエチルなどの1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり(典型的には、R2は水素である)、R3が、水素、またはメチルもしくはエチルなどの1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり(典型的には、R3は水素である)、R4が、-NR5R6であり、R5が、6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基で置換されたフェニル基(典型的にはn-オクチル)であり、R6が、6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基で置換されたフェニル基(典型的にはn-オクチル)である、実施形態、(b)xが、0または1であり、R1が、メチルまたはエチル(典型的にはメチル)などの1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、R2が、4~12個の炭素原子、好ましくは、6~10個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基(典型的にはn-オクチル)であり、R3が、水素、またはメチルもしくはエチルなどの1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり(典型的には、R3は水素である)、R4が、-OR7であり、R7が、2~8個の炭素原子、好ましくは、3~6個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基(典型的にはn-ブチル)である、実施形態、および(c)式(I)の化合物が化合物1および化合物2から選択される、実施形態などの、xがより小さい、および/またはR1ならびにR3がより小さい基である実施形態に特に関連性がある。
【0047】
本発明の油圧流体では、好ましくは、(任意の種類の、すなわち、式(I)によって包含されない化合物を含む)置換または非置換ベンゾトリアゾール化合物、および存在する場合、好ましくは同様に、任意の置換または非置換トリアゾール化合物の全含有量は、最大5000ppm、最大4000ppm、最大3000ppm、最大2000ppm、最大1000ppm、または最大900ppmである。(全体的な流体中の)窒素含有量に関して、全含有量は、好ましくは、最大180ppm、最大170ppm、最大160ppm、最大150ppm、最大140ppm、最大130ppm、最大120ppm、または最大110ppmなどの最大190ppmである。そのような濃度レベルの使用は、フルオロポリマー適合性および腐食防止のバランスを保つことに役立つために有用である。典型的には、置換または非置換ベンゾトリアゾール化合物(および存在する場合、好ましくは同様に、任意の置換または非置換トリアゾール化合物)の全窒素含有量は、式(I)の化合物の濃度に本質的に対応する。
【0048】
油圧流体は、好ましくは、成分(a)以外の任意の置換または非置換ベンゾトリアゾール化合物を実質的に含まない。より好ましくは、油圧流体は、成分(a)以外の任意の置換または非置換ベンゾトリアゾールもしくはトリアゾール化合物を実質的に含まない。さらにより好ましくは、油圧流体は、好ましくは、成分(a)以外の任意の腐食防止剤を実質的に含まない。
【0049】
成分(b):無灰窒素含有分散剤
本発明の油圧流体は、0.1~1重量%の無灰窒素含有分散剤を含む。
【0050】
この点に関して、誤解を避けるために、油圧流体は、1つを超える異なるタイプの無灰窒素含有分散剤を含み得るが、但し、該分散剤の総量が1重量%の上限を超えないことを条件とする。換言すると、成分(b)は、1つ以上の窒素含有分散剤であり得る(0.1~1%は、すべてのそのような分散剤の総濃度を指す)。この点に関して、「1つ以上」という用語は、好ましくは、1つ、2つ、または3つを意味し、より好ましくは、1つまたは2つを意味する。但し、典型的には、1つの分散剤を含むことだけが必要である(この分野では通常であるが、そのような単一の分散剤は、一般に単一の化合物ではなく、むしろ化合物の混合物であろう)。
【0051】
無灰窒素含有分散剤の好ましい選択肢は、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換されたコハク酸および/または無水コハク酸(好ましくは無水コハク酸)との反応から取得可能である生成物であり、該反応は、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシロキシアンモニウム結合の形成を伴い、生成物は、少なくとも300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される。
【0052】
より好ましくは、無灰窒素含有分散剤は、(a)アミノ化合物と、(b)500~5000の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換されたコハク酸および/または無水コハク酸(好ましくは無水コハク酸)との反応から取得可能である生成物であり、該反応は、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシロキシアンモニウム結合の形成を伴い、生成物は、500~5000の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される。
【0053】
典型的には、分散剤は、ヒドロカルビル置換スクシンイミドであり、ヒドロカルビル基は、少なくとも300、好ましくは、500~5000の数平均分子量を有する。
【0054】
分散剤成分の上記の実施形態におけるヒドロカルビル基は、好ましくは、PIB基である。
【0055】
ヒドロカルビル基(好ましくはPIB基)の数平均分子量は、好ましくは、少なくとも700、少なくとも800、または少なくとも900などの少なくとも500である。数平均分子量は、好ましくは、最大4000、最大3000、最大2000、最大1500、または最大1200などの最大5000である。好ましい範囲の例は、700~4000、700~3000、800~2000、800~1500、および900~1200である。
【0056】
無灰窒素含有分散剤の作製に使用するためのアミノ化合物は、ポリアミン、例えば、ポリアルキレンポリアミンであるポリアミン、および/またはヒドロキシアルキル、複素環式、ならびに/もしくは芳香族基によって置換されたポリアミンであり得る。
【0057】
ヒドロキシアルキルによっても置換され得る好適なポリアルキレンポリアミンには、式(R3)2N-(Z-N(R3))nR3の化合物が含まれ、式中、各R3は、独立して、水素、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基、および1~20個の炭素原子を含有するヒドロキシ置換ヒドロカルビル基から選択されるが、但し、少なくとも1つのR3が水素であることを条件とし、nは、1~10であり、各Zは、独立して、1~18個の炭素原子を含むアルキレン基である。好ましくは、各R3は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルから選択される。最も好ましくは、各R3は、水素である。Zは、好ましくは、1~4個の炭素原子を含むアルキレン基、より好ましくは、エチレンであり、すなわち、より好ましくは、ポリアルキレンポリアミンは、ポリエチレンポリアミンである。部分nは、好ましくは、2~6または2~5などの2~8である。
【0058】
ポリアルキレンポリアミンの例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、トリ-(トリメチレン)テトラミン、1,2-プロピレンジアミン、およびそれらの混合物が挙げられる。8個以上の窒素原子を含有する1つ以上のさらなる高沸点画分も任意に含む、そのようなポリアミンの混合物が、便宜的に使用され得る。
【0059】
ヒドロキシアルキルによって置換されたポリアルキレンポリアミンの例としては、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(3-ヒドロキシブチル)テトラメチレンジアミン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0060】
複素環置換ポリアミンには、ポリアミンが、上記に記載されるようなポリアルキレンポリアミンであり、複素環置換基が、窒素含有脂肪族および芳香族複素環、例えば、ピペラジン、イミダゾリン、ピリミジン、および/またはモルホリンから選択される、ヒドロキシアルキル置換ポリアミンが含まれる。
【0061】
複素環置換ポリアミンの例は、N-2-アミノエチルピペラジン、N-2およびN-3アミノプロピルモルホリン、N-3(ジメチルアミノ)プロピルピペラジン、2-ヘプチル-3-(2-アミノプロピル)イミダゾリン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、および2-ヘプタデシル1-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾリンである。
【0062】
芳香族ポリアミンには、フェニレンジアミンおよびナフタレンジアミンが含まれる。
【0063】
芳香族ポリアミンの例としては、式Ar(N(R3)2)yの化合物が挙げられ、式中、Arは、6~20個の炭素原子を含む芳香族部分であり、各R3は、独立して、上記に定義される通りであり、yは、2~8である。
【0064】
好ましくは、ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、およびそれらの混合物から選択される。
【0065】
無灰窒素含有分散剤は、10:1~1:10、好ましくは、5:1~1:5、より好ましくは、2:1~1:2、最も好ましくは、1:1~1:2の(a):(b)のモル比において、(a)アミノ化合物を、(b)少なくとも300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換されたコハク酸および/または無水コハク酸(好ましくは無水コハク酸)と反応させることによって、作製され得る。このタイプのアシル化反応は、当業者に周知である。
【0066】
好ましくは、無灰窒素含有分散剤は、1000~8000重量ppm、より好ましくは、1500~8000重量ppm、さらにより好ましくは、1500~6000重量ppm、なおもより好ましくは、1500~4000重量ppmの量で存在する。
【0067】
無灰窒素含有分散剤の量は、好ましくは、少なくとも1700重量ppmまたは少なくとも1800重量ppmなどの少なくとも1600重量ppmである。無灰窒素含有分散剤の量は、好ましくは、3900重量ppm以下、3800重量ppm以下、3700重量ppm以下、または3600重量ppm以下である。量の好ましい範囲の例としては、1600~3900重量ppm、1700~3800重量ppm、1700~3700重量ppm、および1800~3600重量ppmが挙げられる。
【0068】
任意選択的な金属洗浄剤
好ましい実施形態では、本発明の油圧流体は、2000ppmまでの金属洗浄剤をさらに含み得る。より好ましくは、本発明の油圧流体は、50~2000重量ppmの金属洗浄剤を含む。
【0069】
この点に関して、誤解を避けるために、金属洗浄剤は、1つを超える異なるタイプの金属洗浄剤を含み得るが、但し、(存在する場合)金属洗浄剤の総量が2000重量ppmの上限を超えないことを条件とする。換言すると、油圧流体は、1つ以上の金属洗浄剤をさらに含み得る。この点に関して、「1つ以上」という用語は、好ましくは、1つ、2つ、または3つを意味し、より好ましくは、1つまたは2つを意味する。但し、典型的には、1つの金属洗浄剤を含むことだけが必要である。
【0070】
金属洗浄剤は、好ましくは、アルカリ土類金属洗浄剤である。より好ましくは、油圧流体は、フェネート洗浄剤、置換ベンゼンスルホン酸洗浄剤、およびサリチル酸洗浄剤から選択される1つ以上のアルカリ土類金属洗浄剤を含み、該1つ以上のアルカリ土類金属洗浄剤の総量は、(油圧流体の総重量に基づいて)50~2000重量ppmである。
【0071】
置換ベンゼンスルホン酸洗剤という用語は、ベンゼン置換基が1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つであるが、典型的には1つ)の疎水性基を含む、ベンゼンスルホン酸部分を有する洗浄剤化合物を指す。好ましくは、該疎水性基は、ヒドロカルビル基から選択され、より好ましくは、それらは、アルキル基から選択される。典型的には、置換ベンゼンスルホン酸洗浄剤は、アルキルベンゼンスルホン酸洗浄剤である。
【0072】
好ましくは、アルカリ土類金属は、カルシウムまたはマグネシウム、より好ましくは、カルシウムである。したがって、好ましくは、該金属洗浄剤は、(i)カルシウム洗浄剤、(ii)マグネシウム洗浄剤、または(iii)カルシウム洗浄剤およびマグネシウム洗浄剤である。より好ましくは、該金属洗浄剤は、1つのカルシウム洗浄剤などの1つ以上のカルシウム洗浄剤である。
【0073】
好ましくは、該金属洗浄剤は、アルカリ土類金属フェネート(例えば、カルシウムフェネート)を含む。より好ましくは、該金属洗浄剤は、カルシウムフェネートである。
【0074】
好ましくは、カルシウムフェネートは、少なくとも200mg KOH/g、例えば、200~300mg KOH/gなどの少なくとも100mg KOH/gの全塩基価(TBN)を有するカルシウムフェネートである。TBNは、好ましくは、ASTM D2896によって測定され得る。
【0075】
好ましくは、カルシウムフェネートは、8~11重量%などの5~14重量%のカルシウム含有量を有する。典型的には、それは、約9.2重量%である。
【0076】
該金属洗浄剤の総量の下限は、典型的には、50ppmであるが、好ましくは、より高く、例えば、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、または100ppmであり得る。該1つ以上のアルカリ土類金属洗浄剤の総量の上限は、2000ppmであるが、好ましくは、より低く、例えば、1800ppm、1700ppm、1600ppm、1500ppm、1400ppm、1300ppm、1200ppm、1100ppm、1050ppm、または1030ppmである。典型的な好ましい濃度範囲は、例えば、50~1500ppm、70~1200ppm、90~1100ppm、または100~1030ppmである。
【0077】
該金属洗浄剤の総量の下限は、典型的には、金属含有量に関して(油圧流体の総重量に基づいて)4ppmであり得るが、好ましくは、より高く、例えば、10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、または100ppmであり得る。金属含有量に関する該金属洗浄剤の総量の上限は、典型的には、200ppmであり得るが、好ましくは、より低く、例えば、190ppm、180ppm、170ppm、160ppm、150ppm、140ppm、または130ppmであり得る。典型的な好ましい濃度範囲は、例えば、35~115ppm、または40~80ppmである。金属の含有量は、好ましくは、ASTM D4951によって測定され得る。
【0078】
好ましくは、存在する場合、アルカリ土類金属洗浄剤の全含有量は、最大で1600ppm、最大で1400ppm、最大で1200ppm、最大で1100ppm、最大で1050ppm、または最大で1030ppmなどの最大で1800ppmである。
【0079】
好ましくは、本発明の油圧流体は、80~1500重量ppmまたは100~1030重量ppmなどの50~2000重量ppmの1つ以上のアルカリ土類金属(好ましくはカルシウム)フェネートを含む。
【0080】
任意選択的なリン含有摩耗防止剤
本発明の油圧流体は、好ましくは、リン含有摩耗防止剤を含み、該リン含有摩耗防止剤の総量は、(油圧流体の総重量に基づいて)100~3000重量ppmである。リン含有摩耗防止剤は、無灰リン酸塩および/または無灰亜リン酸塩を含み得る(好ましくはそうである)。
【0081】
好ましくは、リン含有摩耗防止剤は、リン酸塩である。したがって、本発明の油圧流体は、好ましくは、1つ以上のリン酸摩耗防止剤を含み、該1つまたは以上のリン酸摩耗防止剤の総量は、(油圧流体の総重量に基づいて)100~3000重量ppmである。
【0082】
この点に関して、「1つ以上」という用語は、好ましくは、1つ、2つ、または3つのリン酸摩耗防止剤、より好ましくは、1つまたは2つのリン酸摩耗防止剤、最も好ましくは、2つのリン酸摩耗防止剤を意味する。
【0083】
好ましくは、該1つ以上のリン酸摩耗防止剤は、1つ以上のジチオリン酸摩耗防止剤である。
【0084】
好ましくは、リン酸摩耗防止剤は、亜鉛を含まず、より好ましくは、無灰である。したがって、好ましくは、該1つ以上のリン酸摩耗防止剤は、1つ以上の無灰リン酸摩耗防止剤である。典型的には、該1つ以上の無灰リン酸摩耗防止剤は、1つ以上の有機リン酸摩耗防止剤であり、好ましくは、1つ以上の無灰有機ジチオリン酸摩耗防止剤である。
【0085】
好ましくは、該1つ以上のリン酸摩耗防止剤は、式(III)の1つ以上のリン酸化合物、
【化7】
および/またはその摩擦学的に許容される塩であり、式中、
-各R
AおよびR
Bは、独立して、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-各X
1、X
2、X
3、およびX
4は、独立して、SまたはOであり、
-R
Cは、1~20個の炭素原子を含む二価のヒドロカルビル基であり、
-X
5は、-C(O)O-または-O-であり、
-R
Dは、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。
【0086】
好ましくは、各RAおよびRBは、独立して、直鎖もしくは分枝アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、各RAおよびRBは、独立して、直鎖または分枝アルキル基である。
【0087】
好ましくは、各RAおよびRBは、独立して、1~12個の炭素原子、より好ましくは、1~8個の炭素原子、さらにより好ましくは、2~6個の炭素原子を含む。RAおよびRBの好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルなどのアルキル基である。i-プロピル基およびi-ブチル基が、特に好ましい。
【0088】
X1は、好ましくは、Sである。
【0089】
X2は、好ましくは、Oである。
【0090】
X3は、好ましくは、Oである。
【0091】
X4は、好ましくは、Sである。
【0092】
好ましくは、RCは、直鎖もしくは分枝アルキレン基、またはフェニレンなどのアリーレン(すなわち、二価のアリール)基である。より好ましくは、RCは、直鎖または分岐アルキレン基である。
【0093】
好ましくは、RCは、1~12個の炭素原子、より好ましくは、1~8個の炭素原子、さらにより好ましくは、2~6個の炭素原子を含む。RCの好ましい例は、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(CH3)-CH2-、-CH2-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH(CH3)-CH2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-CH2-、-CH2-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH(CH3)-、-C(CH3)2-CH2-、および-CH2-C(CH3)2-などのアルキレン基である。これらのうち、2または3個の炭素原子を含有する基、特に、-CH2-CH2-および-CH2-CH(CH3)-が好ましい。
【0094】
X5は、好ましくは、-C(O)O-である。
【0095】
特に好ましい実施形態では、X1およびX4は、Sであり、X2およびX3は、Oである。
【0096】
RDが1~20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であるとき、それは、好ましくは、1~12個の炭素原子、より好ましくは、1~8個の炭素原子、さらにより好ましくは、2~6個の炭素原子を含む。
【0097】
好ましくは、RDは、水素、直鎖もしくは分岐アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、RDは、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基である。
【0098】
RDが直鎖または分枝アルキル基であるとき、RDの好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルである。エチル、n-プロピル、およびi-プロピルが特に好ましく、i-プロピルが最も好ましい。
【0099】
特に好ましい実施形態では、
-各RAおよびRBは、独立して、2~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、
-X1およびX4は、Sであり、
-X2およびX3は、Oであり、
-RCは、2~6個の炭素原子を含む二価のアルキル基であり、
-X5は、-C(O)O-であり、
-RDは、水素、または2~6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0100】
さらにより好ましい実施形態では、該式(III)の1つ以上のリン酸化合物は、以下の2つの化合物のうちの1つ以上(好ましくは両方)を含む。
【化8】
【0101】
該リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である)の総量の下限は、100ppmであるが、好ましくは、より高く、例えば200ppm、300ppm、400ppm、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppm、1100ppm、1200ppm、1300ppm、または1400ppmであり得る。該リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である)の総量の上限は、3000ppmであるが、いくつかの(低リン)実施形態では、より低く、例えば2900ppm、2800ppm、2700ppm、2600ppm、2500ppm、2400ppm、2300ppm、2200ppm、2100ppm、2000ppm、1900ppm、1800ppm、1700ppm、1600ppm、または1500ppmであり得る。好ましい濃度範囲は、例えば、500~2500ppm、または750~2000ppm、もしくは900~1600ppmである。
【0102】
リン含有量に関する(油圧流体の総重量に基づく)該リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である)の総量の下限は、典型的には、10ppmであるが、好ましくは、より高く、例えば、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、110ppm、120ppm、または130ppmであり得る。リン含有量に関する(油圧流体の総重量に基づく)該リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である)の総量の上限は、典型的には、300ppmであるが、いくつかの(低リン)実施形態では、より低く、例えば、290ppm、280ppm、270ppm、260ppm、250ppm、240ppm、230ppm、220ppm、210ppm、200ppm、190ppm、または180ppmであり得る。好ましい濃度範囲は、例えば、50~250ppm、または75~200ppm、もしくは100~160ppmである。
【0103】
特に好ましい実施形態では、該リン含有摩耗防止剤(典型的には、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である)は、(i)各RAおよびRBが、独立して、2~6個の炭素原子を含むアルキル基(典型的には、イソブチルなどの4個の炭素原子)であり、X1およびX4が、Sであり、X2およびX3が、Oであり、RCが、2~6個の炭素原子を含む二価のアルキル基(典型的には、-CH2-CH(CH3)-)であり、X5が、-C(O)O-であり、RDが、水素である、式(III)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩、ならびに(ii)各RAおよびRBが、独立して、2~6個の炭素原子を含むアルキル基(典型的には、イソプロピルなどの3個の炭素原子)であり、X1およびX4が、Sであり、X2およびX3が、Oであり、RCが、2~6個の炭素原子を含む二価のアルキル基(典型的には、エチレン)であり、X5が、-C(O)O-であり、RDが、2~6個の炭素源巣を含むアルキル基である、式(II)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩の組み合わせである。この点に関して、薬剤(i)は、100~2000ppm、好ましくは、200~1500ppm、より好ましくは、250~1200ppmの量で使用され、および/または(好ましくはおよび)薬剤(ii)は、400~2800ppm、好ましくは、600~2500ppm、より好ましくは、750~2000ppm、なおもより好ましくは、750~1500ppmの量で使用されることが好ましい。
【0104】
好ましくは、油圧流体は、上記に記載されるリン含有摩耗防止剤以外の摩耗防止剤を実質的に含まない。
【0105】
好ましくは、油圧流体は、上記に記載されるリン含有摩耗防止剤以外のリン含有化合物を実質的に含まない。
【0106】
好ましくは、油圧流体は、上記に記載されるリン含有摩耗防止剤以外の摩耗防止剤およびリン含有化合物を実質的に含まない。
【0107】
例えば、上記に記載されるリン含有摩耗防止剤が、特定のサブセット/タイプのリン酸摩耗防止剤またはそれらの組み合わせである、本発明の好ましい態様では、油圧流体は、好ましくは、任意の他のリン酸摩耗防止剤を実質的に含まない。
【0108】
好ましくは、油圧流体中の(任意の種類の)リン含有化合物の全含有量は、100~3000重量ppmである。より好ましくは、リン含有化合物の全含有量は、最大2400ppm、最大2200ppm、最大2100ppm、または最大2000ppmなどの最大2600ppmである。典型的には、(存在する場合)リン含有化合物の全含有量は、上記のリン含有摩耗防止剤の濃度に本質的に対応する。
【0109】
好ましくは、油圧流体の全リン含有量は、最大1000ppm、最大800ppm、最大500ppm、最大400ppm、または最大300ppmなどの最大2000ppmである。本発明はまた、低リン含有流体の配合も可能にする。したがって、さらなる好ましい実施形態では、油圧流体の全リン含有量は、最大250ppm、最大220ppm、最大200ppm、または最大180ppmである。典型的には、油圧流体の全リン含有量は、少なくとも40ppm、少なくとも60ppm、少なくとも80ppm、少なくとも100ppm、または少なくとも120ppmなどの少なくとも20ppmである。特に好ましい態様では、油圧流体の総リン含有量は、50~500ppm、100~300ppm、または120~180ppmである。リン含有量は、好ましくは、ASTM D4951によって測定され得る。
【0110】
上述のように、リン含有摩耗防止剤は、好ましくは、無灰である。さらに、好ましくは、油圧流体の全亜鉛含有量は、最大で500ppm、より好ましくは、最大で400ppm、なおもより好ましくは、最大で200ppm、最大で100ppm、最大で50ppm、最大で20ppm、または最大10ppmなどの最大で300ppmである。特に好ましい実施形態では、油圧流体は、本質的に亜鉛を含まない。亜鉛含有量は、好ましくは、ASTM D4951によって測定され得る。
【0111】
任意選択的な防錆剤成分
本発明の油圧流体は、好ましくは、1つ以上の防錆剤をさらに含む。好ましくは、該1つ以上の防錆剤は、少なくとも1つのスルホン酸防錆剤、より好ましくは、任意に置換されたナフタレンスルホン酸の少なくとも1つの誘導体を含み、その誘導体は、
(i)ナフタレンスルホン酸の中性金属塩、
(ii)ナフタレンスルホン酸の塩基性金属塩、
(iii)ナフタレンスルホン酸のアミン塩の金属錯体、および
(iv)ナフタレンスルホン酸のエステルからなる群から選択され、
ナフタレンスルホン酸は、好ましくは、以下の式の化合物であり、
【化9】
式中、各R
1および各R
2は、独立して、1~30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、xは、0~4であり、yは、0~3である。好ましくは、x+y≧1である。好ましくは、ヒドロカルビル基は、アルキル基である。したがって、好ましくは、任意に置換されたナフタレンスルホン酸は、モノ、ジ、またはポリアルキル化ナフタレンスルホン酸である。好適な誘導体は、US6436882に記載されている。そのような薬剤は、本発明の流体の腐食防止特性を高めることに特に有用であり得る。この点に関して好ましくは、該ヒドロカルビル基は、少なくとも4個の炭素原子、より好ましくは、少なくとも10個の炭素原子を有する。好ましくは、該ヒドロカルビル基は、20個までの炭素原子、より好ましくは、14個までの炭素原子を有する。好ましくは、該ヒドロカルビル基は、直鎖または分岐アルキル基、より好ましくは、直鎖アルキル基である。
【0112】
好ましくは、誘導体は、Caアルキルナフタレンスルホネート/カルボキシレート錯体である。錯体のCa含有量は、好ましくは、2.0~2.5重量%などの1.5~3.0重量%である。典型的には、それは、約2.2重量%である。
【0113】
存在する場合、該1つ以上の防錆剤の総量の下限は、好ましくは、10ppmであるが、より好ましくは、より高く、例えば、20ppm、40ppm、60ppm、80ppmまたは100ppmである。総量の上限は、好ましくは、2000ppmであるが、より好ましくは、より低く、例えば、1800ppm、1700ppm、1600ppm、1500ppm、1400ppm、1300ppm、1200ppm、1100ppm、1000ppm、または900ppmであり得る。典型的な好ましい濃度範囲は、例えば、40~1500ppm、または100~1000ppmである。
【0114】
任意選択的な酸化防止剤成分
本発明の油圧流体は、好ましくは、1つ以上の酸化防止剤をさらに含む。
【0115】
この点に関して、用語「1つ以上の酸化防止剤」は、好ましくは、1つ、2つ、または3つの酸化防止剤、より好ましくは、1つまたは2つの酸化防止剤、最も好ましくは、2つの酸化防止剤を意味する。但し、誤解を避けるために、「1つ以上」という用語が特定の数、例えば、2として定義される状況では、これは、さらなる酸化防止剤の存在を排除しない。
【0116】
好ましくは、該1つ以上の酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤(典型的にはヒンダードフェノール酸化防止剤)および/またはアミン酸化防止剤(典型的には芳香族アミン酸化防止剤)から選択される。特に好ましい実施形態では、該1つ以上の酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびアミン酸化防止剤である。
【0117】
好ましいフェノール系酸化防止剤は、アルキル化モノフェノールである。アルキル化モノフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチル-フェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-イソブチルフェノール、2,6-ジシクロペンチル-4-メチルフェノール、2-(α-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジオクタデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリシクロヘキシルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシメチルフェノール、2,6-ジ-ノニル-4-メチルフェノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0118】
アミン酸化防止剤の例としては、N,N’-ジノニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジオクチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジデシル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(2-ナフチル)-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチル-ブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1-メチルヘプチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、4-(p-トルエンスルファモイル)ジフェニルアミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N-アリルジフェニルアミン、4-イソプロポキシジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、例えば、p,p’-ジ-tert-オクチルジフェニルアミン、4-N-ブチルアミノフェノール、4-ブチリルアミノフェノール、4-ノナノイルアミノプヘノール、4-ドデカノイルアミノフェノール、4-オクタデカノイルアミノフェノール、ビス(4-メトキシフェニル)アミン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,2-ビス[(2-メチル-フェニル)アミノ]エタン、1,2-ビス(フェニルアミノ)プロパン、(o-トリル)ビグアニド、ビス[4-(1’,3’-ジメチルブチル)フェニル]アミン、tert-オクチル化N-フェニル-1-ナフチルアミン、モノおよびジアルキル化tert-ブチル/tert-オクチルジフェニルアミンの混合物、モノおよびジアルキル化イソプロピル/イソヘキシルジフェニルアミンの混合物、モノおよびジアルキル化tert-ブチルジフェニルアミンの混合物、2,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-4H-1,4-ベンゾチアジン、フェノチアジン、N-アリルフェノチアジン、N,N,N’,N’-テトラフェニル-1,4-ジアミノブト-2-エン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0119】
好ましいアミン酸化防止剤は、芳香族アミン酸化防止剤、特に、ジアルキル化/ジアリール化ジフェニルアミン酸化防止剤などのジアルキル化またはジアリール化ジアリールアミン酸化防止剤である。したがって、好ましくは、アミン酸化防止剤は、N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミンまたはN,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミンである。この点に関してより好ましくは、アリール部分は、非置換または置換フェニルであり、アルキル部分は、4~15個の炭素原子、または7~12個の炭素原子などの1~20個の炭素原子を含有する。なおもより好ましくは、アミン酸化防止剤は、アルキル部分が、4~15個の炭素原子、または7~12個の炭素原子などの1~20個の炭素原子を含有する、N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミンである。
【0120】
該1つ以上の酸化防止剤(好ましくは、フェノール系酸化防止剤およびアミン酸化防止剤)の総量は、存在する場合、好ましくは、500ppm~5000ppmである。下限は、好ましくは、例えば、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppm、1100ppm、または1200ppmであり得る。上限は、好ましくは、例えば、4500ppm、4000ppm、3500ppm、3200ppm、3000ppm、2900ppm、2800ppm、2700ppm、または2600ppmであり得る。典型的な好ましい濃度範囲は、例えば、1000~3500ppm、または1500~2600ppmである。
【0121】
特に好ましい実施形態では、該1つ以上の酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびアミン酸化防止剤であり、フェノール系酸化防止剤は、アルキル化モノフェノール(好ましくは、2,6-ジ-tert-ブチル-フェノール)であり、アミン酸化防止剤は、アルキル部分が7~12個の炭素原子を含有する、N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミン(好ましくは、N,N’-ジノニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0122】
該1つ以上の酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤およびアミン酸化防止剤である、好ましい態様では、フェノール系酸化防止剤の量は、好ましくは、400~4000ppmであり、アミン酸化防止剤の量は、好ましくは、100~1000ppmである。フェノール系酸化防止剤の量の下限は、好ましくは、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、または1000ppmである。場合によっては、それは、1200ppmまたは1500ppmなど、さらに高くあり得る。フェノール系酸化防止剤の量の上限は、好ましくは、3500ppm、3000ppm、2500ppm、2300ppm、2200ppm、2100ppm、または2000ppmである。アミン酸化防止剤の量の下限は、好ましくは、150ppm、180ppm、200ppm、220ppm、240ppm、または250ppmである。場合によっては、それは、280ppm、300ppm、または320ppmなど、さらに高くあり得る。アミン酸化防止剤の量の上限は、好ましくは、600ppm、550ppm、500ppmなどの700ppmである。場合によっては、それは、450ppm、400ppm、または380ppmなど、さらに低くあり得る。
【0123】
基油
本発明の油圧流体は、多量の基油を含む。「多量」という用語は、基油が重量に関して油圧流体の大部分を占める、すなわち、少なくとも50重量%を占めることを意味する。典型的には、基油は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも93%などの少なくとも60%を占める。基油は、99.6%まで、99.5%まで、99.4%まで、99.3%まで、または99.2%までなどの油圧流体の大部分を占め得る。典型的には、基油は、油圧流体の92.0~99.6重量%または93.0~99.2重量%などの90.0~99.6重量%を占める。
【0124】
基油は、天然油、合成油、または1つ以上の天然油および/もしくは1つ以上の合成油の混合物であり得る。
【0125】
基油は、特に鉱油であるとき、100℃で2.0mm2/s(cSt)~25.0mm2/s(cSt)の動粘度を有し得る。油圧流体はまた、他の粘度を伴う特定の量の油、例えば、添加剤の一部を送達するために使用される分散媒に由来する油を含み得る。したがって、油圧流体は、32~68の動粘度を伴う送達流体を含み得る。
【0126】
好適な天然油は、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、または石炭もしくは頁岩由来の油である。好ましくは、天然油は、鉱油である。
【0127】
好ましい実施形態では、基油は、鉱油である。好適な鉱油には、すべての一般的な鉱油ベースストックが含まれる。
【0128】
鉱油は、好ましくは、2000ppm以下、好ましくは、1500ppm以下、より好ましくは、1200ppm以下の硫黄含有量を有する。いくつかの実施形態では、硫黄含有量は、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下、20ppm以下、または10ppm以下など、さらに低くあり得る。
【0129】
鉱油は、好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも98%の飽和含有量を有する。
【0130】
鉱油は、好ましくは、グループI、グループII、もしくはグループIIIの基油、またはグループI、グループII、およびグループIIIの基油から選択される2つ以上の基油の混合物である。
【0131】
鉱油は、ナフテン系またはパラフィン系であり得る。鉱油は、酸、アルカリ、および粘土、または塩化アルミニウムなどの他の薬剤を使用する従来の方法によって精製され得るか、または、例えば、フェノール、二酸化硫黄、フルフラール、もしくはジクロロジエチルエーテルなどの溶媒を用いた溶媒抽出によって生産される抽出油であり得る。鉱物油は、水素化処理もしくは水素化精製されるか、冷却もしくは接触脱ろうプロセスによって脱ろうされるか、またはSK Innovation Co.,Ltd(Seoul,Korea)からの水素化分解基油のYubase(登録商標)ファミリーなど、水素化分解され得る。鉱油は、天然原油源から生産されるか、または異性化ろう材料もしくは他の精製プロセスの残留物から構成され得る。
【0132】
合成油の可能な選択肢には、オリゴマー化、重合、および共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、イソブチレンコポリマー、塩素化ポリラクトン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)、およびそれらの混合物)、アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、およびジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン)、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、およびアルキル化ポリフェニル)、アルキル化ジフェニルエーテル、ならびにアルキル化ジフェニルスルフィドなどの炭化水素油およびハロ置換炭化水素油が含まれる。好ましい合成油は、α-オレフィンのオリゴマー、特に、1-デセンのオリゴマーである。
【0133】
合成油の他の可能な選択肢には、末端ヒドロキシル基が、例えば、エステル化またはエーテル化によって修飾されている、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、およびそれらの誘導体が含まれる。例としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合によって調製されるポリオキシアルキレンポリマー、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば、約1000の平均分子量を有する、例えば、メチルポリイソプロピレングリコールエーテル、および例えば、1000~1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジフェニルエーテル)、ならびにそれらのモノおよびポリカルボン酸エステル(例えば、酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル、およびテトラエチレングリコールのC12オキソ酸ジエステル)が挙げられる。
【0134】
合成油の他の可能な選択肢には、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、またはプロピレングリコール)を伴うジカルボン酸のエステル(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、またはアルケニルマロン酸)が含まれる。これらのエステルの例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、ならびに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2-エチルーヘキサン酸と反応させることによって形成される複合エステルが挙げられる。このクラスの合成油で好ましいのは、C4-C12アルコールのアジピン酸塩である。
【0135】
合成基油として有用なエステルには、C5-C12モノカルボン酸、ならびにネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリペンタエリスリトールなどのポリオールおよびポリオールエーテルから製造されるものも含まれる。
【0136】
合成油の他の可能な選択肢には、ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-、またはポリアリールオキシ-シロキサン油およびケイ酸油などのシリコン系油が含まれる。例としては、ケイ酸テトラエチル、ケイ酸テトライソプロピル、ケイ酸テトラ-(2-エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ-(p-tert-ブチルフェニル)、ヘキサ-(4-メチル-2-ペントキシ)-ジシロキサン、ポリ(メチル)-シロキサン、およびポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。
【0137】
他の合成油には、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデシルホスホン酸のジエチルエステル)、高分子テトラヒドロフラン、およびポリ-α-オレフィンが含まれる。但し、当然ながら、リン含有酸の液体エステルは、油圧流体が比較的低レベルのリンを含有する、上記に記述される本発明の好ましい実施形態のための基油の適切な選択ではないであろう。
【0138】
油は、未精製、精製、再精製され得るか、または未精製/精製/再精製油の混合物を含有し得る。未精製油は、さらに精製または処理することなく、天然源または合成源(例えば、石炭、頁岩、もしくはタールサンド瀝青)から直接取得される。未精製油の例としては、乾留動作から直接取得されるシェール油、蒸留から直接取得される石油、またはエステル化プロセスから直接取得されるエステル油が挙げられ、これらのそれぞれは、次いで、さらに処理することなく使用される。精製油は、精製油が1つ以上の特性を向上させるために1つ以上の精製ステップでさらに処理されていることを除いて、未精製油と同様である。好適な精製技法には、蒸留、水素化処理、脱ろう、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過、およびパーコレーションが含まれ、これらのすべては当業者に公知である。再精製油は、精製油を取得するために使用されるものと同様のプロセスで使用済み油を処理することによって取得される。これらの再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、しばしば、使用済み添加剤および油分解生成物を除去するために追加で処理される。本発明で使用するための基油は、好ましくは、精製油または再精製油であり、より好ましくは、精製油である。
【0139】
基油の他の可能な選択肢には、ガス・ツー・リキッド(GTL)ベースストックと称されることもある、フィッシャー・トロプシュ反応などのプロセスによって、天然ガスから導出される油が含まれる。
【0140】
基油が1つ以上の天然油と1つ以上の合成油との混合物である実施形態では、天然油は、好ましくは、鉱油であり、および/または(典型的には、および)合成油は、好ましくは、ポリ-α-オレフィン(PAO)に基づく油、例えば1-デセンのオリゴマーである。
【0141】
油圧流体のさらなる態様
本発明の油圧流体は、好ましくは、解乳化剤を含む。好ましくは、解乳化剤は、非イオン性界面活性剤である。より好ましくは、それは、ヒドロキシル基で終端するブロックコポリマーである。
【0142】
油圧流体中の解乳化剤の濃度は、好ましくは、1重量ppm~500重量ppmである。量は、好ましくは、少なくとも5ppm、少なくとも8ppm、または少なくとも10ppmなどの少なくとも2ppmである。量の上限は、好ましくは、最大300ppm、最大200ppm、最大150ppm、最大120ppm、または最大100ppmなどの400ppmである。
【0143】
本発明の油圧流体は、粘度指数向上剤(VII)とも称され得る、粘度調整剤(VM)を含み得る。VIIの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー、ポリエーテル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、VIIは、100~250の粘度指数(VI)を実現する量で使用されることができる。より好ましくは、VIIは、向上した低温特性および/またはシステム動作効率のために145~190のVIを実現する量で使用されることができる。
【0144】
本発明の油圧流体は、100℃で15mm2/s(cSt)~150mm2/s(cSt)の動粘度を有し得る。
【0145】
本発明の油圧流体は、流動点降下剤(PPD)を含み得る。PPDの例としては、ポリメタクリレートおよびアルキル化ナフタレン誘導体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、PPDは、向上した低温特性のために0.001~1.0重量%の油圧流体の量で使用されることができる。
【0146】
本発明の油圧流体は、(とりわけ)腐食防止剤のための担体または溶媒を含み得る。本発明の腐食防止剤は、固体形態であってもよく、その場合、それを油圧流体の他の成分と接触させる前に担体または溶媒中で溶解させることが好ましい。したがって、本発明の油圧流体は、典型的には、腐食防止剤(すなわち、成分(a))を溶解させるために好適である50~1000ppmの担体または溶媒を含む。存在する場合、担体(または溶媒)の量は、少なくとも200ppmまたは少なくとも300ppmなどの少なくとも100ppmであり得る。存在する場合、担体(または溶媒)の量は、好ましくは、最大600ppm、最大500ppm、または最大400ppmなどの最大800ppmである。好ましくは、担体/溶媒は、アルコール、典型的には、アルカノール(すなわち、非芳香族アルコール)である。好ましくは、担体/溶媒は、第一級アルコールである。アルコールの好ましい例は、4~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルアルコールである。適切な例としては、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、1-オクタノール、および1-デカノールが挙げられる。
【0147】
別段の指示がない限り(例えば、特定のタイプの化合物の量の上限を導入する実施形態に関して)、原則として、本発明の油圧流体は、0.2~1.5%の量で使用され得る酸化防止剤(例えば、金属ジチオリン酸塩および/または硫化オレフィン)、0.05~1.0%の量で使用され得る腐食防止剤(例えば、カルボン酸、金属スルホン酸塩、および/またはアルキル化カルボン酸)、0.5~50ppmの量で使用され得る消泡剤(例えば、ポリシロキサンおよび/または有機エステル)、0.5~2.0%の量で使用され得る摩耗防止剤(例えば、リン酸アリール、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、および/または有機硫黄/リン化合物)、3~25%の量で使用され得る粘度指数向上剤(例えば、ポリメタクリレートエステル、スチレンイソプレンコポリマー、および/またはポリオレフィン)、0.05~1.5%の量で使用され得る流動点降下剤(例えば、ポリメタクリレートエステルおよび/またはナフタレンワックス縮合生成物)、0.1~1%の量で使用され得る摩擦調整剤(例えば、脂肪酸および/または脂肪酸のエステル)、0.02~0.2%の量で使用され得る洗浄剤(例えば、金属サリチル酸塩および/または金属スルホン酸塩)、ならびに/または(好ましくはならびに)1~5%の量で使用され得るシール膨張剤(例えば、有機エステルおよび/または芳香族)などの当技術分野で公知である1つ以上のさらなる添加剤を任意に含み得る。
【0148】
本発明の油圧流体は、様々な任意選択的な添加剤を含み得るが、本明細書に記載の本発明の有益な効果を損なうであろう添加剤の不必要な使用を回避することが好ましい。したがって、シールおよび/または黄色金属に有害である添加剤の使用を回避または最小限化することが好ましい(例えば、シールに悪影響を及ぼし得る脂肪族イミダゾリンの使用を回避することが好ましい)。これに沿って、流体は以下に記述されるものなどの性能レベルを享受し得ることが好ましい。
【0149】
本発明の油圧流体は、好ましくは、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRに従って決定可能な以下の特性、すなわち、体積の変化、重量の変化、硬度の変化、引張強度の変化、および/または破断点伸びの変化のうちの1つ以上(好ましくはすべて)に関して、合格スコア、すなわち、許容限界内(より好ましくは理想的限界内)のスコアを提供する。この点に関して好ましくは、使用されるシールは、75 FKM 595などのFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0150】
本発明の油圧流体は、ASTM D130銅ストリップ試験に従って試験されると、好ましくは少なくとも1B、より好ましくは1Aの等級を得点し、試験は、3時間の期間にわたって100℃の温度で実行される。
【0151】
本発明の油圧流体は、ASTM D130銅ストリップ試験に従って試験されると、好ましくは少なくとも1B、より好ましくは少なくとも1Aの等級を得点し、試験は、3時間の期間にわたって121℃の温度で実行される。
【0152】
本発明の油圧流体は、ASTM D2619に従って試験されると、好ましくは、(i)0.15未満、より好ましくは0.10未満の銅重量減少、および/または(ii)少なくとも2B、より好ましくは少なくとも1Bの銅等級を提供する。
【0153】
本発明の油圧流体は、ASTM D664に従って試験されると、好ましくは、ゼロのH2O TANスコアを提供する。
【0154】
本発明の油圧流体は、回転圧力容器による蒸気タービン油の酸化安定性についてのASTM D2272標準試験方法に従って試験されると、好ましくは、少なくとも300分、より好ましくは、少なくとも350分のRPVOTスコアを提供する。
【0155】
本発明の油圧流体は、好ましくは、水の存在下での抑制鉱油の防錆特性についてのASTM D665標準試験方法で合格を達成する。
【0156】
本発明の油圧流体は、抑制鉱油のスラッジングおよび腐食傾向の決定のためのASTM D4310標準試験方法に従って試験されると、好ましくは、(i)15mg以下、好ましくは13mg以下の銅重量、および/または(ii)1.0mg以下、好ましくは0.7mg以下の鉄重量を達成する。
【0157】
添加剤濃縮物
油圧流体などの潤滑油組成物は、基油を、複数の添加剤を比較的高い濃度で含有する添加剤濃縮物と組み合わせることによって、調合者によって日常的に調製される。本発明は、
(a)式(I)の1つ以上の化合物、
【化10】
および/またはその摩擦学的に許容される塩である、2.0~20重量%の腐食防止剤であって、式(I)中、
-各R
1が、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xが、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれが、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
4が、-NR
5R
6または-OR
7であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、1~20個の炭素原子を含む1つ以上のヒドロカルビル基で任意に置換される、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、
-R
7が、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖が、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得る、腐食防止剤化と、
(b)11~50重量%(好ましくは11~45重量%)の無灰窒素含有分散剤と、任意に、
(c)希釈剤とを含む、添加剤濃縮物を提供する。
【0158】
好ましくは、腐食防止剤は、少なくとも2.3重量%、より好ましくは、少なくとも2.6重量%、なおもより好ましくは、少なくとも2.8重量%、典型的には、少なくとも3.0重量%の量で存在する。腐食防止剤の量の上限は、好ましくは、15重量%、より好ましくは、13重量%、なおも好ましくは、11重量%であり、典型的には、9.0重量%である。典型的には、腐食防止剤は、2.3~15重量%、より典型的には、3.0~9.0%の量で存在する。
【0159】
R4が-NR5R6であるとき、腐食防止剤は、好ましくは、少なくとも2.3重量%、より好ましくは、少なくとも2.6重量%、なおもより好ましくは、少なくとも2.8重量%、典型的には、少なくとも3.0重量%の量で存在する。R4が-NR5R6であるとき、腐食防止剤の量の上限は、好ましくは、18重量%、より好ましくは、16重量%、さらに好ましくは、15重量%、典型的には、14重量%である。R4が-NR5R6であるとき、腐食防止剤は、典型的には、3.0~14重量%の量で存在する。
【0160】
R4が-OR7であるとき、腐食防止剤は、好ましくは、少なくとも2.1重量%、より好ましくは、少なくとも2.2重量%、典型的には、少なくとも2.3重量%の量で存在する。R4が-OR7であるとき、腐食防止剤の量の上限は、好ましくは、15重量%、より好ましくは、13重量%、なおも好ましくは、11重量%、典型的には、9.0重量%である。R4が-OR7であるとき、腐食防止剤は、典型的には、2.0~11重量%、より典型的には、2.0~9.0重量%、さらにより典型的には、2.3~9.0重量%の量で存在する。
【0161】
好ましくは、分散剤は、少なくとも11重量%、より好ましくは、少なくとも12重量%、典型的には、少なくとも13重量%の量で存在する。分散剤の量の上限は、好ましくは、48重量%、より好ましくは、46重量%、典型的には、45重量%である。典型的には、分散剤は、13~45重量%の量で存在する。
【0162】
好ましくは、腐食防止剤は、2.3~15重量%の量で存在し、分散剤は、13~45重量%の量で存在する。
【0163】
好ましくは、添加剤濃縮物は、1つ以上の金属洗浄剤をさらに含む。該1つ以上の金属洗浄剤は、好ましくは、少なくとも0.4重量%、より好ましくは、少なくとも0.5重量%、なおもより好ましくは、少なくとも0.6重量%、典型的には、少なくとも0.7重量%の量で存在する。該1つ以上の金属洗浄剤の量の上限は、好ましくは、15重量%、より好ましくは、12重量%、なおもより好ましくは、10重量%、典型的には、8.0重量%である。典型的には、該1つ以上の金属洗浄剤は、0.7~8.0重量%の量で存在する。
【0164】
好ましくは、添加剤濃縮物は、リン含有摩耗防止剤をさらに含む。より好ましくは、リン含有摩耗防止剤は、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である。該リン含有摩耗防止剤(好ましくは、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である)は、好ましくは、少なくとも0.7重量%、より好ましくは、少なくとも3.7重量%、なおもより好ましくは、少なくとも5.5重量%、典型的には、少なくとも6.5重量%の量で存在する。該リン含有摩耗防止剤(好ましくは、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である)の量の上限は、好ましくは、23重量%、より好ましくは、19重量%、なおもより好ましくは、15重量%である。典型的には、該リン含有摩耗防止剤(好ましくは、1つ以上のリン酸摩耗防止剤である)は、6.5~15重量%の量で存在する。
【0165】
好ましくは、添加剤濃縮物は、1つ以上の酸化防止剤をさらに含む。該1つ以上の酸化防止剤は、好ましくは、少なくとも3.7重量%、より好ましくは、少なくとも7.5重量%、典型的には、少なくとも11重量%の量で存在する。該1つ以上の酸化防止剤の量の上限は、好ましくは、37重量%、より好ましくは、30重量%、典型的には、26重量%である。典型的には、該1つ以上の酸化防止剤は、11~26重量%の量で存在する。
【0166】
好ましくは、添加剤濃縮物は、1つ以上の防錆剤をさらに含む。該1つ以上の防錆剤は、好ましくは、少なくとも0.07重量%、より好ましくは、少なくとも0.3重量%、典型的には、少なくとも0.7重量%の量で存在する。該1つ以上の防錆剤の量の上限は、好ましくは、15重量%、より好ましくは、13重量%、典型的には、11重量%である。典型的には、該1つ以上の防錆剤は、0.7~11重量%の量で存在する。
【0167】
好ましくは、添加剤濃縮物は、解乳化剤をさらに含む。該解乳化剤は、好ましくは、少なくとも0.007重量%、より好ましくは、少なくとも0.04重量%、典型的には、少なくとも0.07重量%の量で存在する。該1つ以上の解乳化剤の量の上限は、好ましくは、3.7重量%、より好ましくは、2.3重量%、典型的には、1.0重量%である。典型的には、該1つ以上の解乳化剤は、0.07~1.0重量%の量で存在する。
【0168】
典型的な実施形態では、添加剤濃縮物は、
(i)0.7~8.0重量%の量における1つ以上の金属洗浄剤、
(ii)0.7~23重量%の量における1つ以上のリン酸摩耗防止剤、
(iii)3.7~37重量%の量における1つ以上の酸化防止剤、
(iv)0.07~15重量%の量における1つ以上の防錆剤、および/または
(v)0.007~3.7重量%の量における解乳化剤を(さらに)含む。
【0169】
本発明の油圧流体に存在し得る添加剤(すなわち、腐食防止剤、分散剤、洗浄剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、防錆剤、および解乳化剤成分)の性質に関して上記/本明細書に記載される特徴はまた、本発明の添加剤濃縮物で使用するための添加剤にも(独立して)適用される。
【0170】
添加剤濃縮物は、好ましくは、希釈剤を含む。
【0171】
希釈剤が存在するとき、希釈剤を構成する任意の物質の同一性は、特に限定されない。存在する添加剤成分のうちの1つ以上のための担体としての役割を果たすために好適である、任意の物質が使用され得る。典型的には、希釈剤は、基油である。本発明の油圧流体に存在する基油の性質に関して上記/本明細書に記載される特徴はまた、本発明の添加剤濃縮物中の希釈剤としての可能な使用のための基油にも(独立して)適用される。
【0172】
本発明の添加剤濃縮物は、好ましくは、(例えば、適切な量の添加剤濃縮物を基油と組み合わせることによって)本明細書で定義される本発明の油圧流体を調製する際に使用するために好適である。
【0173】
式(II)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩
本発明はまた、式(II)の化合物、
【化11】
またはその摩擦学的に許容される塩も提供し、式(II)中、
-各R
1は、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xは、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれは、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
7は、1~20個の炭素原子を含む基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖は、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得るが、
但し、
(a)それらの間で、R
2およびR
3が少なくとも7個の炭素原子を有し、R
7が少なくとも2個の炭素原子を有するか、
(b)それらの間で、R
2およびR
3が少なくとも5個の炭素原子を有し、R
7が少なくとも2個の炭素原子を有し、シクロアルキル基ではないか、
(c)R
2およびR
3のいずれもHではなく、それらの間でR
2およびR
3が少なくとも3個の炭素原子を有するか、
(d)xが1~4であり、R
1が少なくとも2個の炭素原子を有し、(i)R
7が少なくとも2個の炭素原子を有するか、(ii)R
2およびR
3のいずれもHではないか、もしくは(iii)それらの間でR
2およびR
3が少なくとも3個の炭素原子を有するか、または
(e)xが2~4であることを条件とする。
【0174】
好ましくは、式(II)では、各R1は、独立して、直鎖もしくは分枝アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、各R1は、独立して、直鎖または分枝アルキル基である。
【0175】
好ましくは、各R1は、独立して、1~8個の炭素原子、より好ましくは、1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは、1~4個の炭素原子を含む。R1の好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルなどのアルキル基である。メチルおよびエチルが特に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0176】
部分xの上限は、好ましくは3、より好ましくは2である。xの下限は、好ましくは1である。xが0または1であることが特に好ましい。最も好ましくは、xは、1である。
【0177】
R2は、好ましくは、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、R2は、直鎖または分岐アルキル基である。
【0178】
R2が1~20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であるとき、R2は、好ましくは、2~16個の炭素原子、より好ましくは、4~12個の炭素原子、さらにより好ましくは、6~10個の炭素原子を含む。この点に関するR2の好ましい例は、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルの直鎖および分枝形態などのアルキル基であり、n-オクチルが最も好ましい。
【0179】
R3は、好ましくは、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、R3は、水素、または直鎖もしくは分枝アルキル基である。最も好ましくは、R3は、水素である。
【0180】
R3が1~20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であるとき、それは、好ましくは、1~8個の炭素原子、より好ましくは、1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは、1~4個の炭素原子を含む。この点に関するR3の好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、およびt-ブチルなどのアルキル基であり、メチルおよびエチルが特に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0181】
好ましくは、R7は、直鎖もしくは分岐アルキル基、またはフェニルなどのアリール基である。より好ましくは、R7は、直鎖または分岐アルキル基である。
【0182】
好ましくは、R7は、1~10個の炭素原子、より好ましくは、2~8個の炭素原子、さらにより好ましくは、3~6個の炭素原子を含む。R7の好ましい例は、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルの直鎖および分枝形態などのアルキル基であり、n-ブチルが最も好ましい。
【0183】
特に好ましい実施形態では、xは、0または1であり、R1は、メチルまたはエチル(典型的にはメチル)などの1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、R2は、4~12個の炭素原子、好ましくは、6~10個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基(典型的にはn-オクチル)であり、R3は、水素、またはメチルもしくはエチルなどの1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり(典型的には、R3は水素である)、R7は、2~8個の炭素原子、好ましくは、3~6個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基(典型的にはn-ブチル)である。この点に関してより好ましくは、xは、1である。
【0184】
特に好ましい実施形態では、R
1、R
2、R
3、およびR
7は、以下の番号付けされた実施形態のうちの1つに従って定義される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0185】
式(II)の好ましい化合物の例は、化合物1である。
【化12】
【0186】
式(II)の化合物は、以下の実施例の節でさらに例証されるように、既知の方法によって調製されることができる。
【0187】
本発明はまた、式(II)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩を含む、油圧流体を提供し、好ましくは、油圧流体は、本明細書に記載される通りである。
【0188】
定義
別段の指示がない限り、本明細書におけるppmまたは%のすべての言及は、重量に関してppmまたは%を指すことを意図している。また、別段の指示がない限り、すべてのそのような言及は、油圧流体の総重量に対する所与の物質の量を指すことを意図している。
【0189】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」という用語は、分子の残りの部分に直接付着した炭素原子を有し、ヒドロカルビルまたは主にヒドロカルビルの性質を有する基を指す。非炭化水素(ヘテロ)原子、基、または置換基は、それらの存在が基の主にヒドロカルビルの性質を変えないことを条件として、存在し得、例えば、好ましくは、すべてのヘテロ原子、ヘテロ原子含有基、またはヘテロ原子含有置換基について(好ましくは、すべてのヘテロ原子)について、少なくとも4個、より好ましくは、少なくとも6個、さらにより好ましくは、少なくとも8個、なおもより好ましくは、少なくとも10個の炭素原子が存在するべきである。好ましいヘテロ原子は、O、S、N、およびハロであり、より好ましいものは、O、S、およびNである。好ましいヘテロ原子含有基または置換基は、アミン、ケト、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アルコキシ、およびアシルである。好ましいものは、最大1つもしくは2つのヘテロ原子、ヘテロ原子含有基、またはヘテロ原子含有置換基を含有する、ヒドロカルビル基である。より好ましいものは、炭素および水素原子のみに基づくヒドロカルビル基であり、最も好ましいものは、脂肪族基、特に、アルキル基である。
【0190】
本明細書で使用される場合、「摩擦学的に許容される塩」という語句は、別段の指示がない限り、酸性および/または塩基性基の塩を含む。したがって、塩基付加塩および酸付加塩が、企図され得る。当業者によって認識されるように、摩擦学は、特に、摩擦、潤滑、および摩耗に関して、相対運動における表面の相互作用を扱う研究を定義する用語である。摩擦学的に許容される塩は、化合物の摩擦学的活性を無効にしないか、または妨害しない塩である。
【0191】
本質的に酸性である本明細書の化合物について企図される塩基付加塩を調製するために使用され得る塩基は、そのような化合物と摩擦学的に許容される塩基付加塩(すなわち、摩擦学的に許容されるカチオンを含有する塩)を形成するものである。そのようなカチオン/塩基塩には、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)ならびにアルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)などのカチオン、N-メチルグルカミン-(メグルミン)などのアンモニウムまたはアミン付加塩、ならびにオクチルアミンおよびオレイルアミンなどのアルキルアミンを含むがこれらに限定されない、アルカノールアンモニウムおよび摩擦学的に許容される有機アミンの他の塩基塩、また、アルカノールアミンが含まれ得るが、これらに限定されない。しかしながら、ある特定の実施形態では、(特に、式(I)の化合物について)化合物の塩基付加塩は、アミン塩ではない。この点に関して、一般に本発明の油圧流体中にあるアミン塩の含有量を最小限化することも好ましくあり得る。したがって、アミン塩の形態で存在する任意の他の成分(特に、摩耗防止剤)は、好ましくは、約1.0重量%以下、約1.0重量%以下、約0.5重量%、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.01重量%以下、または約0.005重量%以下の量で本発明の油圧流体中に存在する。
【0192】
本質的に塩基性である本明細書の化合物について企図される酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、そのような化合物と摩擦学的に許容される酸付加塩(すなわち、摩擦学的に許容されるアニオンを含有する塩)を形成するものである。そのような酸性塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、過クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]塩が含まれるが、これらに限定されない。アミノ基などの塩基性部分を含む本開示の化合物は、上述の酸に加えて、様々なアミンと摩擦学的に許容される塩を形成し得る。
【0193】
本明細書に記載の化合物および/またはその塩のうちのいくつかは、式(I)の化合物について以下に例証されるように、異なる互変異性型で存在することが可能であり得る。すべてのそのような互変異性型は、本開示の範囲内に含まれる。式(I)では、これは、トリアゾール環内の隣接する窒素原子間の点線、およびこの環上の-CR
2R
3R
4基の位置が開いたままになっているという事実によって反映される。原則として、ただ1つの互変異性体が記載され得る本明細書の任意の事例において、代替の可能な互変異性型も想定される。
【化13】
【0194】
本明細書に記載の化合物が1つを超える異なる立体異性型で存在し得る事例では、すべてのそのような立体異性型(例えば、光学異性体、すなわち、RおよびS鏡像異性構成)、位置異性体、ならびにそのような異性体のラセミ、ジアステレオマー、および他の混合物が想定され、本発明の範囲内に含まれる。
【0195】
本発明の油圧システム
本発明は、少なくとも1つのフルオロポリマーシールと、シールと接触する本明細書で定義される本発明の油圧流体とを含む、油圧システムを提供する。
【0196】
油圧システムはまた、好ましくは、銅、真鍮、または青銅などの黄色金属を含む、1つ以上の構成要素も含み、該流体は、黄色金属と接触する。特に、油圧システムが銅を含む1つ以上の構成要素を含むことが好ましく、該流体は、銅と接触する。黄色金属(典型的には銅)は、例えば、油圧システム内の1つ以上のバルブに存在し得る。
【0197】
本明細書で使用される場合、フルオロポリマーという用語は、フッ素含有エラストマーを意味することを意図しており、また、フルオロエラストマーとも称され得る。好ましくは、フルオロポリマーは、ASTM D1418に従ってFKM、FFKM、またはFEPMとして分類されるものであり、より好ましくは、フルオロポリマーは、ASTM D1418に従ってFKMとして分類されるものであり、すなわち、より好ましくは、フルオロポリマーは、75 FKM 595などのFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0198】
一実施形態では、フルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のコポリマーである。この点に関して、フルオロポリマーは、好ましくは、(a)少なくとも62重量%、少なくとも64重量%、もしくは少なくとも65重量%である、および/または(b)最大72重量%、70重量%、最大68重量%、もしくは最大67重量%である、フッ素含有量を有する。典型的には、フッ素含有量は、約66重量%である。したがって、フルオロポリマーは、1型FKMフルオロポリマーであり得る。1型FKMフルオロポリマーは、良好な全体的性能を示し得る。
【0199】
別の実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のターポリマーである。この点に関して、フルオロポリマーは、好ましくは、(a)少なくとも62重量%、少なくとも64重量%、少なくとも66重量%、もしくは少なくとも67重量%である、および/または(b)最大74重量%、最大72重量%、最大71重量%、もしくは最大70重量%である、フッ素含有量を有する。典型的には、フッ素含有量は、約68~69重量%である。したがって、フルオロポリマーは、2型FKMフルオロポリマーであり得る。2型FKMフルオロポリマーは、耐薬品性および耐熱性に関して比較的良好な性能を可能にし得るが、圧縮永久歪みおよび低温柔軟性がより弱い。
【0200】
別の実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ素化ビニルエーテル(PMVE)、およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のターポリマーである。この点に関して、フルオロポリマーは、好ましくは、(a)少なくとも60重量%、もしくは少なくとも61重量%である、および/または(b)最大74重量%、最大72重量%、70重量%、または最大69重量%のフッ素含有量を有する。典型的には、フッ素含有量は、約62~68重量%である。したがって、フルオロポリマーは、3型FKMフルオロポリマーであり得る。3型FKMフルオロポリマーは、低温柔軟性に関して比較的良好な性能を提供し得る。
【0201】
別の実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、プロピレン(P)、およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のターポリマーである。この点に関して、フフルオロポリマーは、好ましくは、(a)少なくとも63重量%、少なくとも65重量%、もしくは少なくとも66重量%である、および/または(b)最大73重量%、最大71重量%、最大69重量%、もしくは最大68重量%であるフッ素含有量を有する。典型的には、フッ素含有量は、約67重量%である。したがって、フルオロポリマーは、4型FKMフルオロポリマーであり得る。4型FKMルオロポリマーは、耐塩基性の増加を提供し得るが、特に炭化水素では、膨張特性に関してあまり望ましくない性能を提供し得る。
【0202】
別の実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、エチレン(E)、フッ素化ビニルエーテル(PMVE)、およびフッ化ビニリデン(VF2/VDF)のペンタポリマーである。したがって、フルオロポリマーは、5型FKMフルオロポリマーであり得る。5型FKMフルオロポリマーは、耐塩基性および耐高温硫化水素性に関して良好な性能を可能にし得る。
【0203】
別の実施形態では、フルオロポリマーは、パーフルオロエラストマーであり、ポリマー骨格は、(実質的に)完全にフッ素化されている。特に、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)のコポリマーであり得る。(この点に関して、コポリマーはまた、硬化部位モノマー(CSM)、すなわち、フリーラジカルに向かって反応性の部位を含有するモノマーに由来する単位を含有し得、そのような硬化部位モノマーの例は、4-ブロモ-3,3,4,4-テトラフルオロブテン(BTFB)である)。したがって、パーフルオロエラストマー内のポリマー骨格上のすべての置換基は、好ましくは、フルオロ、パーフルオロアルキル、またはパーフルオロアルコキシであり、フルオロポリマーは、ポリメタクリレート型であり得る。この実施形態の特定の態様では、フルオロポリマーは、FFKMフルオロポリマーであり得る。
【0204】
別の実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)およびプロピレン(P)のコポリマーである。したがって、フルオロポリマーは、FEPMフルオロポリマーであり得る。
【0205】
腐食防止剤の使用に関する好ましい態様
上記で説明され、実施例において下記で実証されるように、本発明は、特定のタイプの腐食防止剤が、特に、特定の他の添加剤と組み合わせられると、非常に低い濃度で強力な腐食防止を提供することができ、これの利益は、向上したフルオロポリマーシール適合性およびフルオロポリマーシール適合性流体の機能特性の向上を含むという発見に基づく。
【0206】
本発明は、フルオロポリマーシール適合性を向上させるために、油圧流体中の窒素含有量に関して40~200重量ppmの本明細書で定義される腐食防止剤の使用を提供する。
【0207】
本発明は、油圧流体と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するために、該油圧流体中の窒素含有量に関して40~200重量ppmの本明細書で定義される腐食防止剤の使用を提供する。
【0208】
本発明は、フルオロポリマーシール適合性も向上させながら腐食を抑制するために、油圧流体中の窒素含有量に関して40~200重量ppmの式(I)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩の使用を提供する。
【0209】
本発明は、油圧流体と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性も維持しながら腐食を抑制するために、該油圧流体中の窒素含有量に関して40~200重量ppmの式(I)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩の使用を提供する。
【0210】
上記に記述される本発明の使用では、油圧流体は、好ましくは、本明細書で一般的に定義される通りであり、すなわち、上記に記載される油圧流体およびその成分の好ましい態様は、上記に記述される本発明の使用にも適用される。
【0211】
当業者に容易に明白となるように、フルオロポリマー適合性の向上または1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性の維持についての上記の言及は、窒素含有量に関して40~200重量ppmの特定の薬剤が、通常の処理速度で別様に採用され得る他の腐食防止剤(Irgamet(登録商標)など)よりも低い速度でフルオロポリマーシールを劣化させるという事実を指す。
【0212】
そのような効果を決定するための方法は、当業者に公知である。例えば、フルオロポリマー材料のサンプルは、使用中の条件を模倣するために、特定の成分を含む油圧流体中に高温で長時間浸漬されることができる。次いで、サンプルは、機械的試験および/または物理的測定を受け、(対照として)1つ以上の他の流体に曝露された、および/または流体に曝露されていないサンプルと比較される。関連する技術的効果は、他の流体と比較して、引張強度の増加、破断点伸びの増加、または体積、重量、および/もしくは硬度の変化の低減であり得る。
【0213】
したがって、本発明の文脈において、フルオロポリマーシール適合性を向上させるため、またはフルオロポリマーシールの完全性を維持するための使用は、好ましくは、(i)フルオロポリマーの引張強度の損失率を低減するため、(ii)フルオロポリマーの破断点伸びの減少率を低減するため、(iii)フルオロポリマーの体積の変化率を低減するため、(iv)フルオロポリマーの重量の変化率を低減するため、および/または(v)フルオロポリマーの硬度の変化率を低減するための使用を意味し得る。
【0214】
フルオロポリマーシール適合性、特に、上記に記述される具体的な特性(すなわち、引張強度、破断点伸び、ならびに体積、重量、および/または硬度の変化)のうちのいずれかすべて、すなわち、体積の変化、重量の変化、硬度の変化、引張強度の変化、および/または破断点伸びの変化は、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRに従って決定可能であり得る。この点に関して好ましくは、シールは、75 FKM 595などのFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0215】
本発明の上記の使用に関して、腐食の抑制の言及は、好ましくは、黄色金属、より好ましくは、銅の腐食を指す。
【0216】
例えば、腐食の抑制の言及は、好ましくは、上記で論じられる標準試験、例えば、ASTM D130、ASTM D2619、ASTM D664、ASTM D2272、ASTM D4310および/またはASTM D665のうちのいずれかに従って決定可能な腐食の抑制を指し得る。
【0217】
したがって、腐食の抑制への言及は、上記に記述される(腐食抑制に関する)本発明の油圧流体のための好ましい性能特性のうちのいずれかの提供を指し得る。例えば、それらは、(i)100°Cの温度で3時間の期間にわたって実行される試験でASTM D130に従って決定可能である、少なくとも1B、より好ましくは1Aの等級、(ii)121°Cの温度で3時間の期間にわたって実行される試験でASTM D130に従って決定可能である、少なくとも1B、より好ましくは少なくとも1Aの等級、(iii)ASTM D2619に従って決定可能である、0.15未満、より好ましくは0.10未満の銅重量減少、(iv)ASTM D2619に従って決定可能である、少なくとも2B、より好ましくは少なくとも1Bの銅等級、(v)ASTM D664に従って決定可能である、ゼロのH2O TANスコア、(vi)ASTM D2272に従って決定可能である、少なくとも300分、より好ましくは少なくとも350分のRPVOTスコア、(vii)ASTM D665試験の合格、および/または(viii)ASTM D4310に従って決定可能である、15mg以下、好ましくは13mg以下の銅重量、ならびに/もしくは1.0mg以下、好ましくは0.7mg以下の鉄重量の提供を指し得る。
【0218】
本発明の上記の使用に関して、フルオロポリマーシール適合性の向上またはフルオロポリマーシールの完全性の維持の言及は、好ましくは、体積の変化、重量の変化、硬度の変化、引張強度の変化、および/または破断点伸びの変化のうちの1つ以上などのRFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRに従って決定可能な1つ以上の特性を指す。この点に関して好ましくは、使用されるシールは、75 FKM 595などのFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0219】
好ましい態様では、本発明は、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRに従って決定可能な以下の特性、すなわち、体積の変化、重量の変化、硬度の変化、引張強度の変化、および/または破断点伸びの変化のうちの1つ以上(好ましくはすべて)に関して、油圧流体が、合格スコア、すなわち、許容限界内(より好ましくは理想的限界内)のスコアを提供するような速度で流体と接触する、1つ以上のフルオロポリマーシールを(も)劣化させながら、上記に記述される異なる点のうちのいずれか1つに関して腐食を抑制するために、式(I)の化合物またはその摩擦学的に許容される塩の使用を提供する。この点に関して好ましくは、使用されるシールは、75 FKM 595などのFKMフルオロポリマー(またはFKMフルオロエラストマー)である。
【0220】
本明細書に記載される本発明の油圧流体および油圧システムの上記の態様のすべては、本発明の上記の使用の文脈に適用される。したがって、上記の使用の文脈において、油圧流体は、好ましくは、本明細書で定義される本発明の油圧流体である。また、油圧流体およびフルオロポリマーシールは、好ましくは、本明細書で定義される本発明の油圧システムに含まれる。
【実施例】
【0221】
式(I)のいくつかの化合物は、既知であり、市販されている。いずれの場合も、化合物は、一般に、(i)そのベンゼン環(R
1基に対応する)上に1つ以上の置換基を持つベンゾトリアゾール、(ii)R
2C(=O)R
3、および(iii)(R
4の同一性に応じて)式HNR
5R
6のアミンまたは式HOR
7のアルコールであるR
4-Hの間のマンニッヒ反応などによって、既知の方法によって調製され得る。
【化14】
【0222】
例えば、R1がメチルであり、xが1であり、R2およびR3が水素であり、R4が-NR5R6であり、R5およびR6が両方とも4-オクチルフェニル(すなわち、化合物1-[ジ(4-オクチルフェニル)アミノメチル]トリルトリアゾール)である、式(I)の好ましい化合物は、トリルトリアゾール、ホルムアルデヒド、およびジ(4-オクチルフェニル)アミンを反応させることによって作製され得(例えば、US4880551を参照)、R1がメチルであり、xが1であり、R2が水素であり、R3がオクチルであり、R4がOR7であり、R7がブチルである、式(I)の好ましい化合物は、トリルトリアゾール、ノナナール、およびブタノールを反応させることによって調製され得る(以下の実施例1を参照)ことが公知である。
【0223】
実施例1-化合物1-1-[1-(ブチルオキシ)オクチル]トリルトリアゾールの合成
【化15】
44.3967グラム(0.33モル)のトリルトリアゾール(異性体の混合物)に、137mL(1.5モル、過剰)のn-ブタノールが溶媒および試薬の両方として添加された。トリルトリアゾールは、任意の有意な程度に溶解しなかった。この反応混合物に、46.94グラム(56.76mL、0.33モル)のノナナールが一度に注がれた。即時の発熱が、19.6℃から31.6℃まで認められた。溶液が、加熱還流され、水が、ディーンスタークトラップ内のn-ブタノールとの共沸混合物から収集された(理論上5.94mL、実際は記録されていない)。過剰なn-ブタノールが、回転蒸発、続いて、完全ポンプ真空によって除去された。粗収量は、122.8gであった。発見%Nは、11.4、計算値は、12.8であった。次いで、反応生成物は、GC-MS(表1、
図1)およびFT-IR(
図2)によって特性評価された。
【表2】
【0224】
実施例2-化合物1対Irgamet(登録商標)39のフルオロポリマーシール適合性試験
【化16】
化合物1(1-[1-(ブチルオキシ)オクチル]トリルトリアゾール)およびIrgamet 39(いずれの希釈剤も伴わずに上記に描写される化合物を含有する)が、他の添加剤の不在下で比較された。
【0225】
したがって、基油中の単一成分系化合物1(0.189重量%)の第1のサンプル溶液が調製され、次いで、化合物1の代わりにIrgamet(登録商標)39(0.20重量%)を含有するという点のみで第1溶液と異なる第2溶液も調製された(添加剤のそれぞれの比較的高い濃度の使用は、シールへの悪影響が誇張され、個別の効果がより明確に相互と区別されることを可能にすることを意味した)。各溶液は、ビスフェノールAF硬化型II型エラストマーである、SAE J2643 FKM-1に対して実施されるフルオロポリマーシール適合性試験を受けた(FKMフルオロポリマー材料のサンプルは、定義された期間にわたって具体的な温度で溶液に浸漬された)。次いで、各サンプルからのシールが分析され、それらの特性が比較された。特に、サンプルの硬度、伸び、および引張応力の変化が、3、7、および14日後に測定された。フルオロポリマーシール適合性試験の結果が、以下の表2に記載される。
【表3】
【0226】
図3aおよび3bは、それぞれ、0.20重量%のIrgamet(登録商標)39および0.89重量%の化合物1の効果を示す(新しいエラストマーに対して異なるタイプの破損を実証する(ここでは参照目的で提供される)表4の14日間の応力・ひずみ曲線を参照)。Irgamett(登録商標)39では、3日以内に、引張強度および伸びの両方である引張特性の有意な損失、ならびに硬度の有意な増加が見られた。硬度の有意な増加は、架橋機構を示す。しかしながら、化合物1では、7日以内に伸びの損失がほとんど生じず、14日に伸びの軽微な損失のみが生じたことが分かる。硬度は、任意の有意な量まで増加せず、架橋機構が遮断されたことを示す。
【0227】
実施例3-化合物1対Irgamet(登録商標)39のフルオロポリマーシール適合性試験
【化17】
化合物1(1-[1-(ブチルオキシ)オクチル]トリルトリアゾール)およびIrgamet(登録商標)39が、完全に配合された油圧流体をシミュレートするために他の添加剤の存在下で比較された(流体1~3を参照)。
【0228】
したがって、表3に挙げられる組成を伴う、以下で流体1~3と称される3つの油圧流体が調製された。流体1および2が、唯一の腐食防止剤として化合物1を(異なる量で)含有した一方で、流体3は、唯一の腐食防止剤(その%Nは流体2中のトリアゾール化合物と同等である)としてIrgamet(登録商標)39を含有した。流体1~3のそれぞれはまた、(下記の表3で識別される成分に加えて)6%の粘度調整剤、0.3%の流動点降下剤、0.2%のフェノール系酸化防止剤およびアミン酸化防止剤の組み合わせ、少量(それぞれ≦0.1%)のスルホン酸防錆剤、可溶化剤、Caフェネート洗浄剤、解乳化剤、あるC
8-アルコール溶媒、および消泡剤(同じ添加剤が各場合に使用される)を含み、残りは基油であった。
【表4】
【0229】
分散剤1=約950の数平均分子量を有するPIBから作製されたPIBスクシンイミド
【0230】
AW1:無灰アルキルジチオリン酸:(iBuO)2P(=S)S-CH2-CH(CH3)-CO2H
【0231】
AW2:無灰アルキルジチオリン酸エステル:R=C2-5である、(iPrO)2P(=S)S-CH2-CH2-CO2R
【0232】
流体1~3のそれぞれは、フルオロポリマーシール適合性試験を受けた。FKMフルオロポリマー材料のサンプルが、定義された期間にわたって具体的な温度で油圧流体に浸漬された。次いで、サンプルが分析された。フルオロポリマーシール適合性の向上は、引張強度の増加、破断点伸びの増加、または硬度の変化の低減のうちの1つ以上によって証明され得る。結果が、以下の表4に記載される。
【0233】
表4-75 FKM 595シールを使用した、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRにおける流体1~3のFKMシール適合性スコア。
【表5】
【0234】
比較的少量でIrgamet(登録商標)39を含有した流体3は、FKMシール適合性試験で不合格であった(流体3の破断伸びおよび引張強度の結果を参照)。これらの結果は、試験の侵襲的な性質(130℃で1008H)を反映し、これは順に、シール適合性に関して現代の油圧システムで要求されるますます高い基準を反映する。様々な量で化合物1を含有する流体は、FKMシール適合性試験を満たすための基準を満たした(1つの不合格パラメーターが許容される)。両方とも、同等の重量%Nを伴うものさえも含み、FKMシール適合性試験に合格した。
【0235】
実施例4-化合物2対Irgamet(登録商標)39のフルオロポリマーシール適合性試験
【化18】
化合物2(1-[ジ(4-オクチルフェニル)アミノメチル]トリルトリアゾール)およびIrgamet(登録商標)39が、完全に配合された油圧流体をシミュレートするために他の添加剤の存在下で(流体1~4を参照)、また、他の添加剤の不在下で(流体5~10を参照)比較された。
【0236】
したがって、最初に、表5に挙げられる組成を伴う、以下で流体1~4と称される4つの油圧流体が調製された。流体1~3が、唯一の腐食防止剤として化合物2を(異なる量で)含有した一方で、流体4は、唯一の腐食防止剤としてIrgamet(登録商標)39を(流体1および2中のトリアゾール化合物のモル量の間にあるモル量で)含有した。流体1~4のそれぞれはまた、(下記の表4で識別される成分に加えて)6%の粘度調整剤、0.3%の流動点降下剤、0.2%のフェノール系酸化防止剤およびアミン酸化防止剤の組み合わせ、少量(それぞれ≦0.1%)のスルホン酸防錆剤、可溶化剤、Caフェネート洗浄剤、解乳化剤、あるC
8-アルコール溶媒、および消泡剤(同じ添加剤が各場合に使用される)を含み、残りは基油であった。
【表6】
【0237】
分散剤1=約950の数平均分子量を有するPIBから作られたPIBスクシンイミド
【0238】
AW1:無灰アルキルジチオリン酸:(iBuO)2P(=S)S-CH2-CH(CH3)-CO2H
【0239】
AW2:無灰アルキルジチオリン酸エステル:R=C2-5である、(iPrO)2P(=S)S-CH2-CH2-CO2R
【0240】
次いで、第2に、6つのさらなる流体(流体5~10と標識された)が、基油中の化合物2またはIrgamet(登録商標)39の単一成分系の溶液として調製された。組成物が、以下の表6に記載される。
【表7】
【0241】
流体1~10のそれぞれは、フルオロポリマーシール適合性試験を受けた。FKMフルオロポリマー材料のサンプルが、定義された期間にわたって具体的な温度で油圧流体に浸漬された。次いで、サンプルが分析された。フルオロポリマーシール適合性の増加は、引張強度の増加、破断点伸びの増加、または硬度の変化の低減のうちの1つ以上によって証明され得る。結果が、以下の表7および8に記載される。
【0242】
表7-75 FKM 595シールを使用した、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRにおける流体1~4のFKMシール適合性スコア。
流体1~3については、スコアが、2回のテスト実行の平均として報告される。流体4については、スコアが、3回のテスト実行の平均として報告される。
【表8】
【0243】
表8-75 FKM 595シールを使用した、RFT-EC-Rexroth-Fluid-Test-Elastomer-Compatibility HLP/HVLP/HEPRにおける流体5~10のFKMシール適合性スコア。
【表9】
【0244】
比較的少量でIrgamet(登録商標)39を含有した流体4および10は、FKMシール適合性試験で不合格であった(流体4の破断伸び結果および流体10の引張強度の結果を参照)。これらの結果は、試験の侵襲的な性質(130℃で1008H)を反映し、これは順に、シール適合性に関して現代の油圧システムで要求されるますます高い基準を反映する。様々な量で化合物2を含有する流体は、より多くのモル量のトリアゾール化合物を有したものさえも含み、すべてFKMシール適合性試験に合格した。
【0245】
実施例5-化合物1対Irgamet(登録商標)39の銅不動態化試験
上記の表3に記載の流体1~3が、以下に記載される標準試験に従って試験された。銅腐食試験の結果が、表9でその下に記載される。
(a)ASTM D130:銅ストリップ試験による石油製品からの銅に対する腐食性についての標準試験方法。
(b)ASTM D2619:油圧流体の加水分解安定性についての標準試験方法。
(c)ASTM D2272:回転圧力容器による蒸気タービン油の酸化安定性についての標準試験方法。
(d)ASTM D665:水の存在下での抑制鉱物油の防錆特性についての標準試験方法。
(e)ASTM D4310:抑制鉱油のスラッジングおよび腐食傾向の判定のための標準試験方法。
【表10】
【0246】
スコアは流体1~3について変化するが、すべてのスコアは、銅腐食試験に合格している。比較的少量でIrgamet(登録商標)39を含有する流体3は、満足のいく腐食防止を提供することができるが、(実施例3で上述のように)FKMシール適合性試験に不合格であった。流体1および2は、唯一の腐食防止剤として様々な量の化合物1を含有する。流体1および2のそれぞれは、腐食抑制(例えば、Irgamet(登録商標)39を含有する流体3について0.09mgと比較して、それぞれ、わずか0.02mg、0.01mg、および0.01mgのASTM D2619銅重量損失を比較する)およびシール適合性(上記の実施例3を参照)の両方に関して、強力な性能を提供した。
【0247】
流体2が、とりわけ、洗浄剤、分散剤、リン酸摩耗防止および酸化防止添加剤(さらなる特性を流体に付与する)を含む、一連のさらなる添加剤を含有する流体との関連で、強力な腐食抑制および良好なシール適合性の両方を達成することが可能であることは、注目に値する。これは、本発明の腐食防止剤の驚くべき有効性が、望ましい特性の有利なバランスを提供するフルオロポリマーシール適合性流体の配合をどのように可能にするかを例証する。
【0248】
実施例6-化合物2対Irgamet(登録商標)39の銅不動態化試験
上記の表5に記載の流体1~4が、以下に記載される標準試験に従って試験された。銅腐食試験の結果が、表10でその下に記載される。
(a)ASTM D130:銅ストリップ試験による石油製品からの銅に対する腐食性についての標準試験方法。
(b)ASTM D2619:油圧流体の加水分解安定性についての標準試験方法。
(c)ASTM D2272:回転圧力容器による蒸気タービン油の酸化安定性についての標準試験方法。
(d)ASTM D665:水の存在下での抑制鉱物油の防錆特性についての標準試験方法。
(e)ASTM D4310:抑制鉱油のスラッジングおよび腐食傾向の判定のための標準試験方法。
【表11】
【0249】
流体1~4はすべて、銅腐食試験に合格している。比較的少量でIrgamet(登録商標)39を含有する流体4は、満足のいく腐食防止を提供することができるが、(実施例4で上述のように)FKMシール適合性試験に不合格であった。流体1~3は、唯一の腐食防止剤として様々な量の化合物2を含有する。流体1~3のそれぞれは、腐食抑制(例えば、Irgamet(登録商標)39を含有する流体4について0.09mgと比較して、それぞれ、わずか0mg、0.01mg、および0.01mgのASTM D2619銅重量損失を比較する)およびシール適合性(上記の実施例4を参照)の両方に関して、強力な性能を提供した。
【0250】
流体2が、とりわけ、洗浄剤、分散剤、リン酸摩耗防止および酸化防止添加剤(さらなる特性を流体に付与する)を含む、一連のさらなる添加剤を含有する流体との関連で、強力な腐食抑制および良好なシール適合性の両方を達成することが可能であることは、注目に値する。これは、本発明の腐食防止剤の驚くべき有効性が、望ましい特性の有利なバランスを提供するフルオロポリマーシール適合性流体の配合をどのように可能にするかを例証する。
【0251】
上記の結果から、化合物1または化合物2を使用することにより、良好な機能性(良好な腐食防止など)および良好なフルオロポリマーシール適合性という潜在的に競合する目標に関すると、驚くほど向上した特性のバランスを得ることが分かる。
【0252】
ここで、本発明の好ましい実施形態を定義する一連の番号付き条項[1]~[28]が以下に提供される。これらの番号付き条項は、請求項ではない(請求項は、「特許請求の範囲」と題された別個の節において、さらに以下に表出する)。
[1]油圧流体であって、
(a)式(I)の1つ以上の化合物、
【化19】
および/またはその摩擦学的に許容される塩である、窒素含有量に関して40~2000重量ppmの腐食防止剤であって、式(I)中、
-各R
1が、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xが、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれが、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
4が、-NR
5R
6または-OR
7であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、1~20個の炭素原子を含む1つ以上のヒドロカルビル基で任意に置換される、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、
-R
7が、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖が、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得る、腐食防止剤と、
(b)0.1~1重量%の無灰窒素含有分散剤と、
(c)多量の基油とを含む、油圧流体。
[2]R
4が、-NR
5R
6であり、該式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩の量が、窒素含有量に関して50~200重量ppmである、[1]に記載の油圧流体。
[3]
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、好ましくは、メチルであり、
-xが、0または1であり、
-R
2が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、好ましくは、水素であり、
-R
3が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、好ましくは、水素であり、
-R
4が、-NR
5R
6であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基で置換されたフェニル基である、[1]または[2]に記載の油圧流体。
[4]R
4が、-OR
7であり、該式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩の量が、窒素含有量に関して40~150重量ppmである、[1]に記載の油圧流体。
[5]
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、好ましくは、メチルであり、
-xが、0または1であり、
-R
2が、4~12個の炭素原子、好ましくは、6~10個の炭素原子を含む、直鎖または分枝アルキル基であり、
-R
3が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、好ましくは、水素であり、
-R
4が、-OR
7であり、
-R
7が、2~8個の炭素原子、好ましくは、3~6個の炭素原子を含む、直鎖または分枝アルキル基である、[1]または[4]に記載の油圧流体。
[6]無灰分散剤が、1500~4000重量ppmの量で存在し、窒素含有無灰分散剤であり、好ましくは、スクシンイミドである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の油圧流体。
[7]1つ以上のリン酸摩耗防止剤をさらに含み、該1つ以上のリン酸摩耗防止剤の総量が、100~3000重量ppmであり、好ましくは、該1つ以上のリン酸摩耗防止剤が、亜鉛を含まない、[1]~[6]のいずれか1つに記載の油圧流体。
[8]フェネート洗浄剤、置換ベンゼンスルホン酸洗浄剤、およびサリチル酸洗浄剤から選択される1つ以上のアルカリ土類金属洗浄剤をさらに含み、該1つ以上のアルカリ土類金属洗浄剤の総量が、50~2000重量ppmである、[1]~[7]のいずれか1つに記載の油圧流体。
[9]1つ以上の酸化防止剤、好ましくは、フェノール系酸化防止剤および/またはアミン酸化防止剤をさらに含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の油圧流体。
[10]100~2000ppmの量で防錆剤をさらに含み、好ましくは、該防錆剤が、アリールスルホン酸塩である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の油圧流体。
[11]解乳化剤、好ましくは、ヒドロキシル基で終端するブロックコポリマーなどの非イオン性界面活性剤をさらに含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載の油圧流体。
[12]粘度調整剤および/または流動点降下剤をさらに含む、[1]~[11]のいずれか1つに記載の油圧流体。
[13]添加剤濃縮物であって、
(a)式(I)の1つ以上の化合物、
【化20】
および/またはその摩擦学的に許容される塩である、2.0~20重量%の腐食防止剤であって、式(I)中、
-各R
1が、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xが、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれが、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
4が、-NR
5R
6または-OR
7であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、1~20個の炭素原子を含む1つ以上のヒドロカルビル基で任意に置換される、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、
-R
7が、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖が、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得る、腐食防止剤と、
(b)11~50重量%の無灰窒素含有分散剤と、任意に、
(c)希釈剤とを含む、添加剤濃縮物。
[14]R
4が、-NR
5R
6であり、該式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩の量が、3.0~14重量%である、[13]に記載の添加剤濃縮物。
[15]
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、好ましくは、メチルであり、
-xが、0または1であり、
-R
2が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、好ましくは、水素であり、
-R
3が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、好ましくは、水素であり、
-R
4が、-NR
5R
6であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、6~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基で置換されたフェニル基である、[13]または[14]に記載の添加剤濃縮物。
[16]R
4が、-OR
7であり、該式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩の量が、2.0~9.0重量%である、[13]に記載の添加剤濃縮物。
[17]
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、好ましくは、メチルであり、
-xが、0または1であり、
-R
2が、4~12個の炭素原子、好ましくは、6~10個の炭素原子を含む、直鎖または分枝アルキル基であり、
-R
3が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、好ましくは、水素であり、
-R
4が、-OR
7であり、
-R
7が、2~8個の炭素原子、好ましくは、3~6個の炭素原子を含む、直鎖または分枝アルキル基である、[13]または[16]に記載の添加剤濃縮物。
[18]無灰窒素含有分散剤が、(a)アミノ化合物と、(b)少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換されたコハク酸および/または無水コハク酸との反応から取得可能である生成物であり、該反応が、少なくとも1つのイミド、アミド、アミジン、および/またはアシロキシアンモニウム結合の形成を伴い、生成物が、少なくとも300、好ましくは900~1200の数平均分子量を有するヒドロカルビル基によって置換される、[13]~[17]のいずれか1つに記載の添加剤濃縮物。
[19]腐食防止剤が、2.3~9.0重量%の量で存在し、および/または分散剤が、13~45重量%の量で存在する、[13]~[18]のいずれか1つに記載の添加剤濃縮物。
[20]
(i)0.7~8.0重量%の量における1つ以上の金属洗浄剤、
(ii)0.7~23重量%の量における1つ以上のリン酸摩耗防止剤、
(iii)3.7~37重量%の量における1つ以上の酸化防止剤、
(iv)0.07~15重量%の量における1つ以上の防錆剤、および/または
(v)0.007~3.7重量%の量における解乳化剤をさらに含む、[13]~[19]のいずれか1つに記載の添加剤濃縮物。
[21]式(II)の化合物、
【化21】
またはその摩擦学的に許容される塩であって、式(II)中、
-各R
1が、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xが、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれが、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
7が、1~20個の炭素原子を含む基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖が、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得るが、
但し、
(a)それらの間で、R
2およびR
3が少なくとも7個の炭素原子を有し、R
7が少なくとも2個の炭素原子を有するか、
(b)それらの間で、R
2およびR
3が少なくとも5個の炭素原子を有し、R
7が少なくとも2個の炭素原子を有し、シクロアルキル基ではないか、
(c)R
2およびR
3のいずれもHではなく、それらの間でR
2およびR
3が少なくとも3個の炭素原子を有するか、
(d)xが1~4であり、R
1が少なくとも2個の炭素原子を有し、(i)R
7が少なくとも2個の炭素原子を有するか、(ii)R
2およびR
3のいずれもHではないか、もしくは(iii)それらの間でR
2およびR
3が少なくとも3個の炭素原子を有するか、または
(e)xが2~4であることを条件とする、化合物またはその塩。
[22]
-各R
1が、独立して、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル基であり、好ましくは、メチルであり、
-xが、0または1であり、
-R
2が、5~12個の炭素原子、好ましくは、6~10個の炭素原子を含む、直鎖または分枝アルキル基であり、
-R
3が、水素、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝アルキル基であり、好ましくは、水素であり、
-R
7が、2~8個の炭素原子、好ましくは、3~6個の炭素原子を含む、直鎖または分枝アルキル基である、[21]に記載の化合物または塩。
[23][21]または[22]に記載の化合物または塩を含む、油圧流体であって、好ましくは、油圧流体は、[1]~[12]のいずれか1つに定義される通りである、油圧流体。
[24]少なくとも1つのフルオロポリマーシールと、シールと接触する油圧流体とを含む、油圧システムであって、油圧流体は、[1]~[12]または[23]のいずれか1つに定義される通りである、油圧システム。
[25]動力伝達流体としての[1]~[12]または[23]のいずれか1つに記載の油圧流体の使用。
[26]油圧流体における使用であって、フルオロポリマーシール適合性を向上させるため、または該油圧流体と接触する1つ以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素に関して40~200重量ppmの、
-[1]~[12]のいずれか1つで定義される腐食防止剤、または
-[21]もしくは[22]で定義される化合物または塩の使用。
[27]油圧流体における使用であって、腐食を防止しながら、また、(a)フルオロポリマーシール適合性を向上させるか、または(b)該油圧流体と接触する1つまたは以上のフルオロポリマーシールの完全性を維持するための、窒素に関して40~200重量ppmの、
-[1]~[12]のいずれか1つで定義される式(I)の1つ以上の化合物および/またはその摩擦学的に許容される塩、または
-[21]もしくは[22]で定義される化合物または塩の使用。
[28]該油圧流体が、[1]~[12]のいずれか1つで定義される通りである、[26]または[27]に記載の使用。
【要約】
【解決手段】 本発明は、
(a)式(I)の1つ以上の化合物、
【化1】
および/またはその摩擦学的に許容される塩である、窒素含有量に関して40~2000重量ppmの腐食防止剤であって、式(I)中、
-各R
1が、独立して、1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-xが、0~4であり、
-R
2およびR
3のそれぞれが、独立して、水素、または1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-R
4が、-NR
5R
6または-OR
7であり、
-R
5およびR
6のそれぞれが、独立して、1~20個の炭素原子を含む1つ以上のヒドロカルビル基で任意に置換される、6~14個の炭素原子を含むアリール基であり、
-R
7が、1~20個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
-2つ以上の炭素原子を含有する該ヒドロカルビル基のそれぞれでは、炭素鎖が、独立して、任意に1つ以上のエーテル基によって中断され得る、腐食防止剤と、
(b)0.1~1重量%の無灰分散剤と、
(c)多量の基油とを含む、油圧流体を提供する。
【選択図】
図1