(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】金属管の製造方法と装置
(51)【国際特許分類】
B21C 37/08 20060101AFI20221115BHJP
B21D 5/12 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B21C37/08 D
B21D5/12 M
B21C37/08 C
(21)【出願番号】P 2022539620
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2021028412
(87)【国際公開番号】W WO2022025272
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2020130667
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000150419
【氏名又は名称】株式会社中田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123467
【氏名又は名称】柳舘 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 智康
(72)【発明者】
【氏名】西井 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛之
(72)【発明者】
【氏名】尹 紀龍
(72)【発明者】
【氏名】王 飛舟
(72)【発明者】
【氏名】春山 俊一
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-185560(JP,A)
【文献】特開平08-187516(JP,A)
【文献】特開平07-275954(JP,A)
【文献】特開2000-084619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/08
B21D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ロールカリバーにインボリュート曲線の一部を採用し、被成形素材を上下ロールで挟むピンチポイントから素材幅方向の外側または内側の領域を上ロールに沿わせて曲げる沿い曲げ成形を行う成形ロールを用い、口径比が数倍の範囲でロールを兼用するロールフラワー設計を行った兼用成形ロールを複数スタンドに用いて、素材両端部からエッジベンド成形方式により曲げ成形するブレークダウン工程に用いる成形ミルであり、
曲げ成形専用の無駆動型ブレークダウンロールBDを複数スタンドに配置し、各BDスタンドの前後段に駆動専用のドライブロールDRスタンドを配置し、ドライブロールDRは
上下ロールにて素材中央部
を挟み駆動して推力を付与する構成からなり、複数段のドライブロールDR全体で前記工程の通過に必要な推力を付与し制御するための推力制御手段と駆動回転数制御手段を有する溶接管の製造装置。
【請求項2】
請求項1において、
推力制御手段は、ドライブロールの上ロールに荷重を付加する流体圧装置を備え、荷重制御手段を有する溶接管の製造装置。
【請求項3】
請求項1~
2の何れかにおいて、
上述のブレークダウンミルの下流側に、サーキュラーベンド成形方式にて素管下部の成形を担う無駆動型の複数段の4方又は3方の兼用クラスターロールスタンドを有するクラスターミルが配置され、さらにその下流側にスクイズ工程に備えて略円形状に成形する駆動型の複数段のフィンパスロールスタンドを有し、フィンパスロールをスタンド内で位置制御を行う位置制御手段と、フィンパスロールの駆動回転数制御手段を有したフィンパスミルが配置されたパイプミルとなし、
被成形素材が丸管へと
連続して成形される
上記の各工程の通過に必要な
全ての推力を、ブレークダウンミルの複数段のドライブロール群とフィンパスミルの複数段のフィンパスロール群に配分して、ドライブロールとフィンパスロールが被成形素管に推力を付与し制御するための推力配分制御手段を有する溶接管の製造装置。
【請求項4】
請求項
3において、
推力配分制御手段は、ドライブロール群の推力制御手段と駆動回転数制御手段、フィンパスロールをスタンド内で位置制御を行う位置制御手段とフィンパスロールの駆動回転数制御手段をそれぞれ推力の配分情報に従い操作する演算手段である溶接管の製造装置。
【請求項5】
上ロールカリバーにインボリュート曲線の一部を採用し、被成形素材を上下ロールで挟むピンチポイントから素材幅方向の外側または内側の領域を上ロールに沿わせて曲げる沿い曲げ成形を行う成形ロールを用い、口径比が数倍の範囲でロールを兼用するロールフラワー設計を行った兼用成形ロールを複数スタンドに用いて、素材両端部からエッジベンド成形方式により曲げ成形するブレークダウン工程において、
曲げ成形専用の無駆動型ブレークダウンロールBDを複数スタンドに配置し、各BDスタンドの前後段に駆動専用のドライブロールDRスタンドを配置し、ドライブロールDRは
上下ロールにて素材中央部
を挟み駆動して推力を付与する構成からなり、複数段のドライブロールDR全体で前記工程の通過に必要な推力を付与し制御するための推力制御手段と駆動回転数制御手段を有するブレークダウンミルを用い、
上記成形ロールスタンドの構成とその操作手順が特定されたブレークダウンミルを想定して被成形素材から半円形管へと成形されて行く成形プロセスを、兼用範囲の品種、寸法違いに応じて成形シミュレーション解析した結果から、被成形素材に応じたブレークダウン工程のエッジベンド成形に必要な推力情報を得て、前記ドライブロールDR全体で被成形素板に推力を付与する溶接管の製造方法。
【請求項6】
上ロールカリバーにインボリュート曲線の一部を採用し、被成形素材を上下ロールで挟むピンチポイントから素材幅方向の外側または内側の領域を上ロールに沿わせて曲げる沿い曲げ成形を行う成形ロールを用い、口径比が数倍の範囲でロールを兼用するロールフラワー設計を行った兼用成形ロールを複数スタンドに用いて、素材両端部からエッジベンド成形方式により曲げ成形するブレークダウン工程、その後センターベンドを行い円筒状へ曲げ成形するサーキュラーベンド成形工程、素管の突合せ予定のエッジ部の端面形状を整えて所要の円形形状に成形するフィンパスロール成形工程において、
曲げ成形専用の無駆動型ブレークダウンロールBDを複数スタンドに配置し、各BDスタンドの前後段に駆動専用のドライブロールDRスタンドを配置し、ドライブロールDRは上下フラットロールにて素材中央部に推力を付与する構成からなり、複数段のドライブロールDR全体で前記工程の通過に必要な推力を付与し制御するための推力制御手段と駆動回転数制御手段を有するブレークダウンミルと、
その下流側にサーキュラーベンド成形方式にて素管下部の成形を担う無駆動型の複数段の4方又は3方の兼用クラスターロールスタンドを有するクラスターミルが配置され、さらにその下流側にスクイズ工程に備えて略円形状に成形する駆動型の複数段のフィンパスロールスタンドを有し、フィンパスロールをスタンド内で位置制御を行う位置制御手段と、フィンパスロールの駆動回転数制御手段を有したフィンパスミルが配置されたパイプミルを用い、
上記成形ロールスタンドの構成とその操作手順が特定されたパイプミルを想定して被成形素材から円形管へと
連続して成形されて行く成形プロセスを、兼用範囲の品種、寸法違いに応じて成形シミュレーション解析した結果から、被成形素材に応じた
前記パイプミルにて連続して成形される際の各成形工程の成形に必要な推力情報を得て、
前記パイプミルによる成形通過に必要な全推力を前記ドライブロールDRスタンド群とフィンパスロールFPスタンド群
に配分して被成形素管に推力を付与する溶接管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、口径比が数倍の範囲でロールを兼用できる成形ロールを用いて、金属帯を連続的に板から半円形状、円形状へと成形し、金属帯の両端部を突き合わせ溶接して溶接管にするロール成形に関し、製品寸法違いや金属種違いに応じて成形に必要な被成形素材への推力を確実に付与でき、成形ロールスタンド間で材料のライン方向への押し引が発生せずに、高効率、高精度な成形が可能となる溶接管の製造装置と製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは先に金属管を製造するパイプミルを用いた自動操業を可能にする金属管の製造方法についてPCT出願(PCT/JP2021/014863)を行ない、被成形素材の初期通板やいわゆるサイズ替えで金属帯の寸法を変更した際などの製造条件を変更した際に、パイプミルのスタンド内に配置する成形工具の位置を自動的に所定位置に移動させて所望の成形が実現できる製造方法(スマートミル)を提案した。
【0003】
ある範囲の口径違いで成形ロールを兼用できるようにスタンド内での位置調整を必要とする兼用ロールを用いたパイプミルにおいて、上記の初期通板などの自動化を実現するために、例えば、兼用の成形ロールを用いたパイプミル全体で、エッジベンド成形し、その後サーキュラーベンド成形を行うロールフラワー設計を行い、全ての成形ロールの構成が特定されたパイプミルを想定した。
そのパイプミルの成形ロールを用いた成形工程を、ある理想的な性状を有する被成形素材の板から丸管になるまでの全ての理想的に成形されて行くプロセスを、例えば3次元弾塑性変形有限要素法にて成形シミュレーション解析した結果を理想モデルの成形プロセスとして、これについてエントリーガイドスタンドEGからタークスヘッドスタンドTHまでの連続している帯材料全体の変形形態値(例えば材料断面形状)とエントリーガイドスタンドEGからタークスヘッドスタンドTHまでの全ての成形ロールスタンドの各ロール位置情報との相関関係として捉えた。
【0004】
このようにある品種・寸法・製造履歴を有する金属帯の成形シミュレーション解析から得た板状から管状までの一体物としての成形プロセスに、さらに寸法の違いによる材料断面形状とロール位置の相関関係を加味し、これをパイプミルでのある測定位置における被成形材料の変形形態値(例えば断面形状としてエッジ位置、幅寸法、高さ寸法)として評価すると、想定している兼用範囲内の操業において、かかる相関関係から測定位置前後のロールスタンドでの成形ロールが取るべき理想のロール位置が求められる。
【0005】
品種・寸法の違いに加えさらには、被成形材料の個性、すなわち用いる金属帯の寸法誤差、熱延履歴、材質の違いやそのライン方向におけるばらつきなどの金属帯固有の個性に伴い、所定の構成からなるパイプミルで成形する際の実際の成形プロセスは、パイプミルの個性も考慮して理想の金属帯の成形プロセスを想定した理想モデルのものとは異なることが想定できる。
そこで、実操業時と理想モデルとの差異を成形中の金属帯の変形形態値として測定することで、理想モデルとの成形プロセスの違いから成形ロールの位置の調整が必要になることを予測する比較・予測の操作を行うことで、操業中の金属帯固有の成形プロセスを実現するために、修正を必要とする成形ロールの選定とその位置調整を行うことができる。
【0006】
上述のスマートミルの開発に際して、ロール交換なしで、外径比1:3 で大径から小径までの金属管を製造可能となる出願人のFFXミル(特許文献1)を対象に種々実験を行なった。このFFXミルは、ブレークダウンBDロールを含めた全てのロールを兼用するため、曲率が連続的に変化するインボリュートロールカリバーを採用し、上ロールに沿わせて曲げる沿い曲げを用いて、様々な製品外径や肉厚に対し、理想的なロール孔型を形成することを特徴とする。
上下の成形ロールは、板幅に合わせて拡縮するように水平移動したり肉厚やパスラインに合わせて上下移動したりし、ブレークダウン第1段目の上ロールは素板に対して接触面を変化させるために揺動するよう構成し、様々な製品外径や肉厚に対し、ロール位置調整を行う構成を採用する。
【0007】
自動制御操業を可能にするスマートミルの製造方法は、様々な製品外径や肉厚に対し、ロール位置調整を行う構成を採用するFFXミルには不可欠と言えるほどマッチングが良いものであった。初期通板の自動操業も可能になり、被成形材料の個性に対しても容易に対応して自動化が実現した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したスマートミルにおいて、エッジベンドの形状性(成形領域や成形曲率)や精度の向上、それに伴うシームの突き合わせ精度、溶接品質の向上などの高品質化への成形性の向上を目指して、3次元弾塑性変形有限要素法にて成形プロセスの解析を検討しているうちに、インボリュートロールカリバーを採用し、上ロールに沿わせて曲げる沿い曲げを行う兼用ロールで、素材の曲げ成形と送り駆動を行なっているが故の新たな問題点を見出した。
【0010】
ブレークダウンBD成形セクションにおいて、沿い曲げ成形によるエッジベンド成形(形状性やその精度)が確実に完了しなければ、次工程であるクラスターロールCL成形セクションでのサーキュラーベンド成形による半円形から略円形への成形が完成しても、エッジ部同士の突合せ形状不良などに起因する、溶接欠陥を生じることになる。
詳述すると、ブレークダウン1段目では、エッジ部近傍に上下ロールによるピンチポイントを設定し、素材を上ロールの特定部位に沿わせて曲げ成形を行う。
ブレークダウン2段~4段では、先に曲げたエッジ部をサイドロールにて支えながら、上下ロールによる前段で成形した部位よりさらに内側にピンチポイントを設定し、素材をインナーロールの特定部位に沿わせて曲げ成形を行う。ここでは、サイドロールが沿わせる範囲を調整する重要な機能を有するため、スタンド内でのサイドロールの位置調整は極めて重要になる。さらに、サイドロールに発生する成形荷重が必要かつ十分でないと成形を完了できない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ロール成形に要する荷重(成形反力)を計算するための統一的な手法や数式は未だ確立されておらず、いくつかの特定条件下の簡易式が1980年代に提案されているに過ぎない。実機において、例えば上下水平ロール軸軸受にロードセルを配置するなどの方法で成形荷重を測定することができるが、サイドロールの場合はこれが困難である。しかし、成形プロセスのシミュレーション解析では、成形ロールに発生する成形荷重と成形ロールから受ける素材の進入抵抗を精度良く把握することができる。
【0012】
前記の新たな問題点は、成形ロールは兼用であり、製品サイズによって素材を成形ロールがピンチする部位が変わること、成形ロールが受ける成形反力はピンチポイントが一番大きく、素材の進行速度とロール周速が一致する送り径もピンチポイント付近にあること、駆動のモーターや減速機の設計に使うロール基準径と、造管条件によって変わる送り径とは必ずしも一致せず、送り径の方が小さい場合はブレーキとなり得ることである。
【0013】
換言すると、成形と推力の両方をBDスタンドで負担させると、推力の安定が犠牲になる。すなわち、製品サイズによって変わる送り径によるBDスタンド間の推力の押し引き、ロール位置管理を行うことによる操業中に発生する成形反力(=推力の変化)がみられることを知見した。
推力の不安定は成形にも影響する。例えば推力不足に対処するためコイル材の最薄部に合わせた強圧下、スタンド間での材料の綱引きによる蛇行やスリップ痕などが発生することになる。
【0014】
また、被成形金属帯(コイル材)はトップからボトムまで常に均一な厚みであるとは限らず、BDロールは位置制御管理を行なっているため、コイルの厚みが変わると、ロール位置は追従しないため、成形反力も変わり、推力も変化することになる。ところが、BDロールはコイルの幅方向の左右端部をピンチするため、ロールが圧力制御を行なっている場合、コイル材の左右の厚みの差があると、上ロールユニットが若干ながらも傾くことになるので、位置管理しか選択できなくなる。
【0015】
要するに、自動操業するために、成形プロセスのシミュレーション結果と成形素材の位置情報の比較に応じて、修正予測して自在に正確にロールの位置制御を行なっても、成形プロセスの解析には素材の進行速度は一定であることが前提であり、駆動されるブレークダウンBD1からBD4との間で、素材の押し引き現象が生じると、必要な推力が確保されずに沿い曲げ成形が阻害される場合があり得ることを知見した。
【0016】
かかる知見に基づいて、成形プロセスのシミュレーション結果の再現性について、沿い曲げ成形方法とその成形装置の両方について鋭意検討した。
ブレークダウンBDセクションで、上下ロールによるピンチポイントの設定が正確になりかつ沿い曲げの成形が確実に行われるためには、成形ロールが素材への推力発生に関与しないで、素材が一定の速度と推力を得ながら複数段のBDを通過できることが重要であることに着目し、駆動方法を検討すると、ブレークダウンロールBDの前後でBDの通過に十分な推力が付与されている必要があることに着目した。
【0017】
そこで、駆動専用のドライブロールスタンドの設置を検討したところ、ドライブロールDRにはロール基準径が明確な上下フラットロールを採用することで、ブレークダウンロールBDの前後段に配置されるドライブロールDRにて安定かつ必要な推力のもとでブレークダウンロールBDの成形孔型を通過させることが可能であることを知見した。
さらに、スタンドの配置方法について検討したところ、ブレークダウンロールBDの前後段にドライブロールDRを配置してこれを駆動専用とし、BDロールスタンドを無駆動の成形専用とすることで、DRスタンドでのフラットロールで材料中央部に圧力制御にて推力を付与すると、ロール基準径が明確で素材が一定の速度と推力で送られ、成形プロセスのシミュレーション結果のとおり様々な製品外径や肉厚に対して必要な推力を確保することが可能で、BDロールスタンドでの正確なロール位置制御により、必要とするロール孔型内を素材が正確に通過でき、ピンチポイントと沿い曲げの成形が確実に行われて、BDロールスタンド群での成形性が向上することを知見し、この発明を完成した。
【0018】
この発明は、
上ロールカリバーにインボリュート曲線の一部を採用し、被成形素材を上下ロールで挟むピンチポイントから素材幅方向の外側または内側の領域を上ロールに沿わせて曲げる沿い曲げ成形を行う成形ロールを用い、口径比が数倍の範囲でロールを兼用するロールフラワー設計を行った兼用成形ロールを複数スタンドに用いて、素材両端部からエッジベンド成形方式により曲げ成形するブレークダウン工程に用いる成形ミルであり、
曲げ成形専用の無駆動型ブレークダウンロールBDを複数スタンドに配置し、各BDスタンドの前後段に駆動専用のドライブロールDRスタンドを配置し、ドライブロールDRは上下ロールにて素材中央部を挟み駆動して推力を付与する構成からなり、複数段のドライブロールDR全体で前記工程の通過に必要な推力を付与し制御するための推力制御手段と駆動回転数制御手段を有する溶接管の製造装置である。
【0019】
またこの発明は、上記のブレークダウンミルにおいて、
推力制御手段は、各ドライブロールの上ロールに荷重を付加する流体圧装置を備え、荷重制御手段を有する。
【0020】
またこの発明は、上記のブレークダウンミルにおいて、
ドライブロールの上下ロールが、被成形素材の中央部の形状に合致する形状を有している。
【0021】
さらにこの発明は、
上述のブレークダウン工程に用いる成形ミルの下流側に、サーキュラーベンド成形方式にて素管下部の成形を担う無駆動型の複数段の4方又は3方の兼用クラスターロールスタンドを有するクラスターミルが配置され、さらにその下流側にスクイズ工程に備えて略円形状に成形する駆動型の複数段のフィンパスロールスタンドを有するフィンパスミルが配置されたパイプミルとなし、
被成形素材が丸管へと連続して成形される上記の各工程の通過に必要な全ての推力を、ブレークダウンミルの複数段のドライブロール群とフィンパスミルの複数段のフィンパスロール群に配分して、ドライブロールとフィンパスロールが被成形素管に推力を付与し制御するための推力配分制御手段を有する溶接管の製造装置である。
【0022】
また、この発明は、上述のパイプミルにおいて、
推力配分制御手段は、ドライブロール群の推力制御手段と駆動回転数制御手段、フィンパスロールをスタンド内で位置制御を行う位置制御手段とフィンパスロールの駆動回転数制御手段をそれぞれ推力の配分情報に従い操作する演算手段である、溶接管の製造装置である。
【0023】
この発明は、
上ロールカリバーにインボリュート曲線の一部を採用し、被成形素材を上下ロールで挟むピンチポイントから素材幅方向の外側または内側の領域を上ロールに沿わせて曲げる沿い曲げ成形を行う成形ロールを用い、口径比が数倍の範囲でロールを兼用するロールフラワー設計を行った兼用成形ロールを複数スタンドに用いて、素材両端部からエッジベンド成形方式により曲げ成形するブレークダウン工程において、
曲げ成形専用の無駆動型ブレークダウンロールBDを複数スタンドに配置し、各BDスタンドの前後段に駆動専用のドライブロールDRスタンドを配置し、ドライブロールDRは上下ロールにて素材中央部を挟み駆動して推力を付与する構成からなり、複数段のドライブロールDR全体で前記工程の通過に必要な推力を付与し制御するための推力制御手段と駆動回転数制御手段を有するブレークダウンミルを用い、
上記成形ロールスタンドの構成とその操作手順が特定されたブレークダウンミルを想定して被成形素材から半円形管へと成形されて行く成形プロセスを、兼用範囲の品種、寸法違いに応じて成形シミュレーション解析した結果から、被成形素材に応じたブレークダウン工程のエッジベンド成形に必要な推力情報を得て、前記ドライブロールDR全体で被成形素板に推力を付与する溶接管の製造方法である。
【0024】
さらにこの発明は、
上ロールカリバーにインボリュート曲線の一部を採用し、被成形素材を上下ロールで挟むピンチポイントから素材幅方向の外側または内側の領域を上ロールに沿わせて曲げる沿い曲げ成形を行う成形ロールを用い、口径比が数倍の範囲でロールを兼用するロールフラワー設計を行った兼用成形ロールを複数スタンドに用いて、素材両端部からエッジベンド成形方式により曲げ成形するブレークダウン工程、その後センターベンドを行い円筒状へ曲げ成形するサーキュラーベンド成形工程、素管の突合せ予定のエッジ部の端面形状を整えて所要の円形形状に成形するフィンパスロール成形工程において、
曲げ成形専用の無駆動型ブレークダウンロールBDを複数スタンドに配置し、各BDスタンドの前後段に駆動専用のドライブロールDRスタンドを配置し、ドライブロールDRは上下ロールにて素材中央部を挟み駆動して推力を付与する構成からなり、複数段のドライブロールDR全体で前記工程の通過に必要な推力を付与し制御するための推力制御手段と駆動回転数制御手段を有するブレークダウンミルと、
その下流側に、サーキュラーベンド成形方式にて素管下部の成形を担う無駆動型の複数段の4方又は3方の兼用クラスターロールスタンドを有するクラスターミルが配置され、さらにその下流側にスクイズ工程に備えて略円形状に成形する駆動型の複数段のフィンパスロールスタンドを有し、フィンパスロールをスタンド内で位置制御を行う位置制御手段と、フィンパスロールの駆動回転数制御手段を有したフィンパスミルが配置されたパイプミルを用い、
上記成形ロールスタンドの構成とその操作手順が特定されたパイプミルを想定して被成形素材から円形管へと成形されて行く成形プロセスを、兼用範囲の品種、寸法違いに応じて成形シミュレーション解析した結果から、被成形素材に応じた前記パイプミルにて連続して成形される際の各成形工程の成形に必要な推力情報を得て、前記パイプミルによる成形通過に必要な全推力を前記ドライブロールDRスタンド群とフィンパスロールFPスタンド群に配分して被成形素管に推力を付与する溶接管の製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
上述の成形プロセスの解析から、ブレークダウンミルで必要な推力とフィンパスミルで必要な推力が判明し、各ドライブロールと各フィンパスロールに割り振られる駆動力が決定される。
【0026】
ブレークダウン成形セクションでは、成形ロールは自身で発生させる駆動力を考慮する必要がなく、駆動のためのロール基準径を無視したより成形に特化した外径やロールカリバーを採用することができる。また、そのようにした成形ロールによる孔型を通過する際の素材が受ける進入抵抗を解析できるため、実成形時に必要とする推力を事前に把握できる。
【0027】
こうして得た成形、造管に必要な推力情報は、ドライブロールがフラットな上下ロールで被成形素板の中央部を挟み駆動して推力を与えるため、有効に活用できることになる。
ドライブロールは、上下ロールで素材を挟み成形しないロール表面がほぼフラットなロールで接触領域が広いため推力を得やすく、ロール基準径が明確であり、かつすべてのドライブロールスタンドで統一でき、速度の同期を取りやすくなる。例えば、ロールは油圧シリンダによる荷重(圧力)制御を行い、被成形素材の厚みが変動しても一定の推力を発生させることができる。
装置としては、ドライブロールのロール径が小さく、駆動トルクも減速比も小さくでき、減速機の仕様を統一できるため、保守性が向上し、維持コストも削減できる。
【0028】
ブレークダウンスタンドには、駆動主軸がなくなることで成形スタンドの設計自由度が大きくなり、かつロール径を小さくできるため、スタンド間隔が短くなり、よって、被成形素板の通板性が向上する利点が生まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】沿い曲げ成形を示す説明図であり、ロール表面にインボリュートカリバーを採用し、被成形素板を上下ロールで挟むピンチポイントを示す。そのピンチポイントから素材幅方向の外側または内側の上ロールに沿わせて曲げることでエッジベンド成形を行う。
【
図2A】成形ロールを兼用してエッジベンドを行うブレークダウンBD1~BD4工程を示す兼用ロールの説明図であり、被成形素材幅に対してロール間隔を拡大縮小したりロール位置を昇降することを示している。
【
図2B】成形ロールを兼用してエッジベンドを行うブレークダウンBD1~BD4工程の後に、半円形から略円形状へと成形するサーキュラーベンドCL1~CL4工程を示す兼用ロールの説明図であり、被成形素材幅に対してロール間隔を拡大縮小したりロール位置を昇降することを示している。
【
図3】
図4から
図15に示す実施例のブレークダウンミル、クラスターロールミルと同様のロールスタンド配置のミルとフィンパスミル、スクイズミルを対象に成形プロセスのシミュレーション解析を行った結果から、被成形素板と成形ロールとの位置相関関係として、パスライン方向に俯瞰して見るイメージ斜視説明図である。
【
図4】この発明の実施例のブレークダウンミル、クラスターロールミルを操作側W.S.から見た正面説明図である。被成形素板は図の左側から右側へ通過する。
【
図5】
図4の上流側からブレークダウンロールスタンドBD1までを見た左側面説明図である。
【
図6】
図4の下流側からクラスターロールスタンドCL1を見た右側面説明図である。
【
図7】ドライブロールスタンドを示す斜視説明図である。
【
図9】ブレークダウンロールスタンドから上下ロールを収納した上下ロールユニットを操作側に横抜きするための引き出しレール台を配置した状態を示すミルの斜視説明図である。
【
図10】ブレークダウンロールスタンドから上下ロールを収納した上下ロールユニットの全てを引き出した状態を、操作側に横抜きするための引き出しレール台を配置し状態で示すミルの斜視説明図である。
【
図11A】ブレークダウンロールスタンドBD1の上下ロールユニットを示す斜視説明図である。
【
図11B】ブレークダウンロールスタンドBD1の上下ロールを示す斜視説明図である。
【
図12】ブレークダウンロールスタンドBD4の上下ロールユニットを示す斜視説明図である。
【
図13】ブレークダウンロールスタンドBD2の上ロールを収納した上枠体の斜視説明図である。
【
図14】ブレークダウンロールスタンドBD2の下ロールを収納した下枠体の斜視説明図である。
【
図15】ブレークダウンロールスタンドBD4の下ロールを収納した下枠体の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施例のブレークダウンミルと同じロールスタンド配置を有したパイプミルを対象にシミュレーション解析を行った結果から、被成形素板と成形ロールとの位置相関関係として、パスライン方向に俯瞰して見る
図3のイメージ斜視説明図に基づいて、板状から丸管への成形プロセスとロール構成を説明する。
【0031】
エッジベンド成形するセクションのブレークダウンミルは、成形専用の4段のブレークダウンロールBD1~BD4で構成され、その4段のブレークダウンロールの前後に駆動専用の5段のドライブロールDR1~DR5が配置されて、DR1,BD1,DR2,BD2,DR3,BD3,DR4,BD4,DR5の順にスタンドが並ぶミルである。
ブレークダウンミルは、口径比が数倍の兼用化を図った無駆動型の成形専用ロール群からなるが、基本的に上下フラットロールにて被成形素板の中央部を挟み推力を付与する駆動型のドライブロール群を内蔵した構成と言える。
【0032】
次の半円状へ成形するサーキュラーベンド成形するセクションのクラスターミルは、4段のクラスターロールCL1~CL4が配置されている。クラスターロールは兼用化を図った無駆動型の成形専用ロール群からなる。
【0033】
さらに円形状に成形するためのフィンパスロールセクションは、ここでは駆動型の3段の4方のフィンパスロール FP1~FP3が配置されたフィンパスロールミルから構成される。
フィンパスロールスタンドFPI,FP2,FP3は、それぞれ素材の突合せ予定のエッジ部の端面形状を整えるためのフィンロールを有する上ロールと、所要の丸管形状にするためのサイドロールと下ロールとで構成されている。ここでは曲げと絞り成形が混在するセクションである。
なお、2方のフィンパスロールの場合は、2分割の上下ロールであり、上ロールはフィンロールを有する。
【0034】
最後のスクイズセクションは、無駆動の1段のスクイズロールSQスタンドで構成され、エッジ端面同士を付き合わせて溶接する。
【0035】
予め設定したロールフラワーに基づいた弾塑性変形のシミュレーション解析により、上述した構成のパイプミルにおける所定の成形ロールを用いた際の金属帯から金属管への成形プロセスを解析する。
図4のシミュレーション解析結果のイメージ斜視説明図に示す如く、ある寸法、材質の金属帯を対象に、エントリーガイドEGやドライブロールDRを除くパイプミルの全ての成形ロールを用いて金属帯から金属管への素材の変形形態状態と、素材に接触している成形ロールのポジショニングとの相関関係として成形プロセスを解析する。
3次元CADデータ及び3次元弾塑性FEM解析法を用いた解析に際して、ロールは回転駆動されずに被成形素材自体が一定速度で移動していると想定し、被成形素材が種々の成形ロール同士で構成される孔型内に進入して進入抵抗を受けるなど、被成形素材が弾塑性変形していく成形プロセスにおいて、全ての成形ロールが受ける成形反力、進入抵抗を把握することができる。
従って、かかる解析でブレークダウン成形セクションでは、ドライブロールDR1~DR5の存在は無視され、フィンパス成形セクションではフィンパスロール FP1~FP3は回転駆動されず、いずれの成形セクションでも被成形素材が弾塑性変形する際の成形に関わるロールが受ける成形反力、孔型への進入抵抗を把握するものである。
【0036】
その結果から、成形ロールスタンド毎の成形荷重や必要とする推力が判明し、成形セクション毎の通過に必要な推力も算出することができる。さらに、製品寸法、材質などの違い毎に、成形プロセスの解析を行うことで、各種の被成形素材に付与すべき推力を算出することができる。
【0037】
被成形素材の進行方向に俯瞰して見る斜視説明図おいて、板状から丸管への成形プロセスで、被成形素管に推力を付与するのは、5段のドライブロールDR1~DR5と3段のフィンパスロールFP1~FP3である。
上述の成形プロセスの解析から、スクイズ工程で溶接されて丸管となるまでの全ての工程を通過するのに必要な推力が把握され、ブレークダウンミルとフィンパスミルで必要な推力が判明し、各ドライブロールと各フィンパスロールに割り振られる駆動力を決定することができる。
【0038】
ブレークダウン成形セクションでは、成形ロールは自身で発生させる駆動力を考慮する必要がなく、駆動のためのロール基準径を無視してより成形に特化した外径やロールカリバーを採用して構成した成形ロールによる孔型を通過する際の素材が受ける進入抵抗を解析できるため、実成形時に必要とする推力を事前に把握できる。
【0039】
こうして得た成形、造管に必要な推力情報は、ドライブロールがフラットな上下ロールで被成形素板の幅方向中央部を挟み駆動して推力を与えるため、有効に活用できることになる。
【0040】
ドライブロールは、
ロール表面がほぼフラット
なロールで接触領域が広いため推力を得やすく、ロール基準径が明確であり、かつ全てのドライブスタンドで統一できるため、速度の同期を取りやすくなる。例えば、ロールは油圧シリンダによる荷重(圧力)制御を行い、被成形素材の厚みが変動したとしても一定の推力を発生させることができる。
ドライブロールは基本的にフラット
なロールを使用する。
図2Aに示すブレークダウンロールに挟まれる被成形素材の幅方向中央部が
BD下ロールで僅かに押し上げられているが、これは素材の両エッジ部近傍の沿い曲げを促進させるためである。そこで、ドライブロールDR2~DR4の
上下ロールは、
上記の被成形素材の中央部
がBD下ロールで僅かに押し上げられている形状に合致するような
ロール表面形状にすることができる。この場合も上述の作用効果は同一である。
【0041】
装置としては、ドライブロールのロール径が小さく、駆動トルクも減速比も小さくでき、減速機の仕様を統一できるため、保守性が向上し、維持コストも削減できる。
【0042】
ブレークダウンスタンドには、駆動主軸がなくなることで成形スタンドの設計自由度が大きくなり、かつロール径を小さくできるため、スタンド間隔が短くなり、よって、被成形素板の通板性が向上する利点が生まれる。
【0043】
複数段のドライブロールDR全体でブレークダウン工程の通過に必要な推力を付与し制御するための推力制御手段には、金属帯をロールで搬送する公知のいずれの方法も採用できる。例えば、駆動に電動機を用いた場合、電動機の駆動回転数制御手段を用いて所要の回転数を指示し、その後上下のロールの位置調整による推力制御する方法、下ロールの位置を調整後、上ロールの位置調整を適宜行い、推力を調整する方法が採用できる。上下ロールの位置調整には公知の機械機構が採用できる。
また、上下のドライブロールの位置調整後、上ロールに荷重を付加する流体圧装置、空気圧、油圧シリンダなどを備え、各流体圧装置に所要の圧力を発生するようバルブ操作を行うことができ、同操作を指示するPLC、マイコンやコンピュータを使用することができる。
【0044】
この発明の製造装置と方法は、金属管の製造に際し、被成形素材が板状から丸管へと成形される各工程の成形プロセスの解析結果より成形に必要な推力情報を得て、各工程の通過に必要な推力を、ブレークダウンミルの複数段のドライブロール群とフィンパスミルの複数段のフィンパスロール群に配分して、ドライブロールとフィンパスロールが被成形素材に推力を付与し制御することを特徴とする。
【0045】
そこで、推力配分制御手段は、ドライブロール群の推力制御手段と、駆動回転数制御手段、フィンパスロールをスタンド内で位置制御を行う位置制御手段と、フィンパスロールの駆動回転数制御手段を備えている必要がある。
【0046】
特に、上述の3段のフィンパスロール FP1~FP3は、兼用でなくフィンロールを含む上ロール、サイドロール、下ロールの4方ロールは製品寸法に応じたロールに交換されるため、被成形素管の全周と接触することから推力付与には最適であり、各ロールの位置調整制御とロールの駆動力の調整、例えば駆動回転数の制御が、成形性と推力の付与制御に重要となる。
すなわち、製品寸法に応じたロールに交換され、突合せ予定のエッジ部の端面形状を整えて所要の丸管形状に成形するので、例えばロール軸支部に接続するジャッキなどの位置調整機構にて、スタンド内でのロール位置調整を行って所定の圧下力を与えて推力設定を行い、ロールの駆動モーターに所定の回転数を維持させて3段のフィンパスロールに所定の推力を発生するように制御することができる。
【0047】
造管に必要な推力情報により、各工程の通過に必要な推力をドライブロール群とフィンパスロール群に配分設定するのをスタンド毎のジャッキや電動機を制御するPLCやマイコンを操作して行うことができるが、製品寸法違い、品種違いで配分方法に違いがある場合、操業を容易にするため、あるいは自動化するために、スタンド毎のPLC、マイコンの全てまたは成形セクション毎に制御する演算装置を用いた推力配分制御を行うことが望ましい。
【0048】
例えば、演算装置を用いた推力配分制御としては、ドライブロール群とフィンパスロール群への推力の配分を演算記憶する記憶コア部、各ドライブロールの駆動回転数制御コア部、ドライブロールの上ロールに荷重を付加する流体圧装置に所要の荷重を発生するよう指示する指示コア部、各スタンド内のフィンパスロールの位置制御を行う位置制御コア部、フィンパスロールの駆動回転数を制御する動力制御コア部を有した演算装置が利用できる。
【0049】
パイプミルの自動操業を行うためには、以下の操作を事前に行う。
【0050】
当該ミルで想定される、成形ロールの兼用範囲内の種々寸法(板幅、肉厚)の金属帯、あるいはさらにその寸法と金属帯の材質・用途や仕様などの品種違いに基づいた種々の寸法・品質が異なる各種の金属帯について、それぞれの成形プロセスを解析する。
【0051】
ロールフラワーによる成形プロセスは成形ロール直下の素管の状態を想定している。しかし、成形ロール直下の素管の変形形態値は測定することができない。素管の変形形態値は、外周面形状、内周面形状、垂直断面形状、外周長、成形ロールスタンド列の各スタンドにおける成形荷重のうち少なくとも1つである。
【0052】
前記、種々の成形プロセスの解析結果より、全ての成形ロールスタンドにおける各スタンド近傍、例えばスタンドの直近の上流側あるいは下流側における素管の変形形態値、あるいは各スタンド内の成形孔型などの成形工具の近傍における素管の変形形態値と、各々のスタンド内の成形ロールの位置情報とを得ることができる。
【0053】
これらの種々の成形プロセスの解析結果を、上記に想定したある寸法・品質を有する金属帯毎、すなわち、ある種の金属帯、ある理想モデルによる素管の変形形態値と成形ロール位置との相関関係値のデータであると想定することができる。
または、パイプミルのパスライン上のある範囲や特定位置の成形ロールスタンドにおけるスタンド近傍あるいは成形ロールの近傍における素管の変形形態値と前記特定のスタンド内の成形工具の位置情報との相関関係値のデータとすることもできる。
【0054】
ある金属帯をある成形ロールにて金属管に成形する過程の成形プロセスの解析方法としては、設計時に想定採用するロールフラワーとロールサーフェス形状設計に基づいて、公知の種々解析法を用いて行うシミュレーション解析が採用できる。例えば機械設計にはCAE解析が用いられ、有限要素法が不可欠であり、そのモデルの準備と形状の簡素化が必要となり、3次元CADを利用して形状データと種々の解析法を適宜組み合わせる解析法も採用でき、さらに3次元弾塑性FEM解析を加えてかかる解析を行うこともできる。解析は成形ロースタンド毎、成形セクション毎に行うことも可能である。
【0055】
かかるシミュレーション解析によって、多種多様の成形プロセスの解析結果を、多種多様の素管の変形形態値と成形工具位置との相関関係値のデータとして得ることができる。
【0056】
単に数値データとしてさらに解析利用することもできるが、例えば、あるパイプミルでのある理想モデルによるかかる相関関係値データと、当該ミルでの実操業モデルの測定による相関関係値データとの比較を行うに際して、人あるいは人工知能に認知できるよう、特定の座標上の位置情報などへの変換さらには2次元化又は3次元画像化が可能なように相関関係値のデータを可視化データ化するプログラムを定めて採用することが望ましい。
【0057】
実装業におけるパイプミルで計測センサーによる計測が可能な素管形態を考慮して、素管の変形形態値は、例えば外周面形状、内周面形状、垂直断面形状、外周長、成形ロールスタンド列の各スタンドにおける成形荷重のいずれか、あるいは前記要素を種々の組み合わせにより、可視化データ化することが考えられる。
【0058】
例えば、素管の変形形態値としては、予め設定した素管の進行方向であるパスラインを含む垂直面のラインセンター面に水平に直交する方向にある両エッジ位置と素管の幅寸法、ラインセンター面に現れる素管の高さとで得られる外周面形状、内周面形状、垂直断面形状のいずれかあるいはその全てを、数値化、座標上や仮想空間に可視化あるいは画像化して用いることができる。
【0059】
造管、溶接、定型などの各行程中に、成形途中の素管の変形形態値の測定を可能にする計測センサーとしては、種々の接触子・近接子による機械的計測や磁気計測、さらにはレーザー光線やカメラなどを組み合わせた非接触式の光学的スキャニング、非接触式の磁気的スキャニングなどの公知の計測方法が適宜採用できる。
【0060】
前述の予め設定した素管の進行方向であるパスラインを含む垂直面のラインセンター面に水平に直交する方向にある両エッジ位置と素管の幅寸法、ラインセンター面に現れる素管の高さを測定する方法として、前述の公知のいずれの方法も採用できる。また、各スタンドでの成形荷重の測定には、例えば、ロール軸への荷重を測定するロードセルなどの公知のいずれの荷重センサーが利用できる。
【0061】
造管には、熱延鋼などのように、曲げによりはく離したスケールによる傷や汚れの防止のために、水溶性潤滑剤が使用され、所要のロールスタンドで素管やロールに対してこれを噴射、噴霧することが行われている。従って、かかる溶剤を大量に噴射・噴霧する雰囲気により、素管が水溶性潤滑剤などで覆われ、濡れているなど、素管の変形形態値の測定が不能、困難な場合がある。
【0062】
そこで例えば、オフラインで酸洗などのケミカルデスケーリング処理や機械的デスケーリング処理にて予めデスケーリング処理された金属帯を使用することができる。さらには、成形前の素材金属帯の全面あるいは外周予定面、内周予定面のいずれか又はその一部分に機械的なデスケーリング処理を施した後に造管を開始することができる。
【0063】
その造管工程中は、水溶性潤滑剤を使用することなく、必要に応じて金属帯又は成形工具へ非水溶性潤滑剤の少量を所要部に噴霧する部分的潤滑を行うことが望ましい。
【0064】
この発明のパイプミルを用いて、自動操業を行うことも可能である。上述した解析対象の行程中に計測センサーにて成形途中の素管の変形形態値の測定を行う工程により、被成形素材の寸法あるいは品種の情報とともに測定した成形途中の素管の変形形態値に基づいて、記憶手段のデータと比較、素管の成形プロセスの予測を行う演算手段を用いて、解析対象の行程中の素管に固有の成形プロセスを想定してその成形プロセスを行うに必要な成形ロール位置情報を選択し、調整を必要とするスタンド内の成形ロールの位置情報を出力する方法を採用する。
【実施例】
【0065】
図4に示すパイプミルは、入り側のエントリーガイドEGから4段のブレークダウンロールスタンドBD1~BD4と4段のクラスターロールスタンドCL1~CL4までが、全て連結されて一体化した構成からなる。全てのスタンドは共通の基台B上に載置されて相互に接続されている。
図の左側から右側へ被成形素材が進行するライン方向の手前側を操作側W.Sと呼び、奥側を駆動側D.S と呼ぶ。
【0066】
ブレークダウンロールスタンドは、一対の立柱の頭部をビーム部材で接続した門型フレーム1をライン方向に操作側と駆動側に立設配置してあり、昇降用ジャッキ2を載置したビーム部材は同位置の操作側と駆動側間がクロスビーム3で接続され、門型フレーム1下部の操作側と駆動側間には下側ロールの昇降を行う箱型の昇降用スクリュージャッキユニット4が固定配置されている。
さらに、一対の上ロールを素材幅方向に拡縮移動可能に内蔵する上枠体5aと、センター下ロールを挟み一対の下ロールを拡縮移動可能に内蔵する下枠体5bを段積みした箱型の上下ロールユニット5が操作側から駆動側へ水平方向に挿入出可能に配置され、上下ロールユニット5が門型フレーム1内に挿入するとフレームトップの昇降ジャッキ2が上枠体5aと接続され、下枠体5bが昇降用スクリュージャッキユニット4上に載置固定される。
【0067】
ドライブロールスタンドは独立したスタンドではなく、上流側のドライブロールスタンドDR1は、立柱10とブレークダウンロールスタンドBD1の門型フレーム1と上下ロール11,12のロールチョック11a,12aを挟み支持する構成である。立柱10とBD1スタンドの門型フレーム1のトップ間に油圧ユニット13を垂下したブリッジ部材14が接続されて上ロールチョック11aは昇降可能であり、下ロールチョック12aは昇降用ウエッジユニット15に載置固定される。
【0068】
ドライブロールスタンドDR2,DR3,DR4は、その上流と下流側に位置する門型フレーム1を共用してハウジング化する構成で、門型フレーム1と
上下ロール11,12のロールチョック11a,12aを挟み支持し、
上ロールチョック11aを昇降する油圧ユニット13を垂下したブリッジ部材14が、門型フレーム1のトップに固定される。
下流側のドライブロールスタンドDR5は、上流側のドライブロールDR1スタンドと同様にBD4スタンドとクラスターロールCL1スタンドの立柱フレーム6を共用してハウジング化する構成である。
昇降用ウエッジユニット15は、
図7で構成を説明すると、ビーム部材15a上にトラベリングナット機構にて、中央側に上昇する傾斜面を有する一対の楔状部材15b,15bを近接離反移動させることで傾斜面に乗り上げる昇降部材15c,15c上にロールチョック12a(BDでは下枠体5b)を載置固定する構成である。
【0069】
図11Bに示す如く、1段目のブレークダウンロールスタンドBD1の上下ロール20は、素板に当接する箇所を変える揺動ロール機能を有する一対の上ロール21,22(トップロール)、上ロール21,22と素板の両エッジ部近傍をピンチして沿い曲げ成形を行う下ロール23,24(サイドロール)、一対の下ロール23,24間に配置されて素板中央部を押し上げる下中央ロール25(センターロール)とで構成される。素板中央部を押し上げるのは、素板の両エッジ部近傍の沿い曲げを促進させるためである。
図11Aは内部を図示しないが、上枠体5a内には、ライン直角方向にスライド可能な一対の拡縮ヨークを収納し、上ロールの軸受箱を揺動ヨークに内蔵して前記拡縮ヨークに揺動可能に保持させ、拡縮ヨークは駆動側から操作されるネジ軸5cにて素材幅方向に拡縮移動し、揺動座のウォームホイールは駆動側から操作されるウォーム軸に噛合して揺動する構成である。
下枠体内5bには、中央部にセンター下ロールを内蔵し、その両側に被成形素材の幅方向にスライド可能な一対のブラケットを収納し、拡縮ヨーク内に下ロールを傾斜させて軸支してあり、駆動側から操作されるネジ軸5cにてライン直角方向に拡縮移動する。
【0070】
図13,14に示す如く、2段目のブレークダウンロールスタンドBD2は、BD1で成形した両エッジ部よりさらに内側を成形するための一対の上ロール31,32、この上ロール31,32とで素板を挟むための一対の下ロール33,34と、一対の下ロール33,34間に配置されて素板中央部を押し上げる下中央ロール35とで構成される。これらの上下ロールを収納する上下枠体の構成は1段目と同様である。
【0071】
3段目と4段目のブレークダウンロールスタンドBD3、BD4は、前2段で縁曲げされた部位を当接支持しながら、先のエッジ部よりさらに内側を成形するための上ロール51,52への沿い曲げを制御する機能を有する一対のサイドロール53,54、上ロール53,54とで素板を挟むための幅広の下中央ロール55を備えている。
上枠体5aには、トラベリングナット機構にて一対の上ロール51,52を駆動側から操作されるネジ軸にて素材幅方向に双方が近接離反する拡縮移動する。ネジ軸5cに同軸配置されるナット部材に上ロール51,52が軸支される。
図15に示すように、下枠体5bもトラベリングナット機構にて一対のサイドロール53,54を駆動側から操作されるネジ軸にて素材幅方向に双方が近接離反(拡縮移動)する。下ロール55は下枠体中央部に軸支されてネジ軸5cを内蔵し、ネジ軸5cに同軸配置されるナット部材にサイドロール53,54の軸支ブラケット56が載置される。
【0072】
ブレークダウンBDセクション後は、中間成形のサーキュラーベンドセクションであり、4段のクラスターロールスタンドCL1~CL4から構成される。
1段目のクラスターロールスタンドCL1は、素板の端曲げ部とその内側湾曲部に当接する一対のクラスターサイドロール61,62と、素板の中央部を湾曲(センターベンド)させるための上下のセンターベンドロール63,64を内蔵している。
2段目のクラスターロールスタンドCL2は素板の縁曲げ部とその内側湾曲部に当接してさらに素管下部の曲げ成形を進行させるための一対のサイドロール71,72から構成される。
3段目と4段目のクラスターロールスタンドCL3、CL4は、素板中央部側を丸曲げ成形するための一対のサイドロール81,82,91,92と下ロール83,93とから構成され、4段目でほぼ丸管らしく成形される。
図4、
図8に示すごとく、4段のクラスターロールスタンドの構成は、操作側と駆動側間に立設する門型フレーム6に、4段分のクロスビームスタンド7が前側スタンドに対して昇降自在に支え合う構造である。
各スタンドの操作側と駆動側間に渡すクロスビームスタンド7の中央部に下ロール64を昇降自在に内蔵し、下ロール64の両側にクラスターサイドロール61,62を軸支するブラケット部材8,8がクロスビームスタンド7上にスライド自在に載置され、トラベリングナット機構にて一対のサイドロール61,62を駆動側から操作されるネジ軸にて素材幅方向に双方が近接離反(拡縮移動)する。
各クロスビームスタンド7はその下方のベースB上に載置された一対のジャッキ9,9にて昇降位置決めされ、下ロール64は別のジャッキ9aにて個別に昇降位置決めされる。
1段目のクラスターロールスタンドCL1は、門型フレーム6内に、上ロール62の軸チョックを油圧シリンダで昇降自在にしたユニットを内蔵している。
【0073】
上述の初期成形部と中間成形部は、予定されている口径範囲内で常に兼用されて交換されることがない。
図2A,Bに示す如く、素板に対して、上ロールの揺動、板幅方向の水平移動、上下方向の垂直移動、下ロールのライン直角方向の水平移動、サイドロールのライン直角方向の水平移動、中央ロールの上下方向の垂直移動によって、素板との接触が行われ成形を可能にしている。
従って、各成形ロールの位置はスタンド内で種々移動することになる。
図2Aは、予定されている口径範囲で最大径(板幅が最大)の成形時の各成形ロール位置を示し、
図2Bは最小径(板幅が最小)の成形時のロール位置を示す。
なお、図示のブレークダウロールは、駆動を前提にした従来のものを示しているが、駆動をしない実施例のロールは全体的に小径化し、さらに上ロールの小径化のために下ロールやサイドロールは傾斜させている。
【0074】
前述の製品寸法の違いに伴う兼用成形ロールの位置の違いを示す
図2において、例えば、外径寸法違いが13種、板厚み寸法違いが12種とすれば156種のサイズ違いがある。極端な小径厚肉、大径薄肉は成形できないので除外しても、成形ロールポジションは少なくとも百数十種あることになる。
【0075】
後期成形セクションは、3段のフィンパスロールスタンドFP1,FP2,FP3とスクイズロールスタンドSQから構成される。
【0076】
フィンパスロールスタンドFP1,FP2,FP3は、それぞれ素管の突合せ予定のエッジ部の端面形状を整えるためのフィンロールを含む上ロールと、所要の丸管形状にするためのサイドロールと下ロールとで構成されている。ここでは曲げと絞り成形が混在し、素管の断面形状やエッジ端面形状を整え、溶接に適した状態に形状仕上げを行う。従って、製品寸法が異なる成形を行う場合は、製品寸法に応じた成形ロールに交換される。
【0077】
実施例のスタンド構成は、図示しないが、ロール構成は
図3に示すものを用い、ブレークダウンロールスタンドと同様構成で、上ロール、サイドロール、下ロールが枠体内に配置されており、枠体を段積みすることで操作側に横抜きできる。
フインパスロールスタンドフレームには、上ロールを昇降するジャッキ、サイドロールを水平に移動させるジャッキ、下ロールを昇降するジャッキが配置されている。
【0078】
以上の成形ロール構成を有するパイプミルを対象に、3次元CADデータ及び3次元弾塑性FEM解析法を用い、当該成形ロールを用いた際の金属帯から金属管への成形プロセスを解析する。すなわち、予め設定したロールフラワーに基づいた成形ロールの配置、計画した孔型形状を用いた場合の金属帯の3次元弾塑性変形のシミュレーション解析法、ここでは公知の3次元弾塑性変形解析手法を基に発明者らが開発した3次元弾塑性変形解析ソフトウエアに、さらに発明者らの独自の種々の解析手法ソフトウエアを加えたシミュレーション解析法により、12段の各スタンド内の成形ロールを用いた際、金属帯から金属管への段階的かつ連続した成形プロセスを、前述の成形工程毎に解析し、板から管となる連続した一体物の弾塑性変形の成形プロセスとして解析し、パイプミル全ての成形ロールを用いて金属帯から金属管への素管の変形形態状態と、素管に接触している成形ロールのポジショニングとの相関関係として成形プロセスを解析した。
【0079】
解析結果から、各成形ロールにかかる成形荷重、材料が受ける進入抵抗値、成形セクション毎の通過に必要な推力を算出し、製品寸法、鋼種などの違い毎に、成形プロセスの解析を行い、各種の被成形素板に付与すべき推力を算出した。
よって、ブレークダウンミルで必要な推力とフィンパスミルで必要な推力が判明し、各ドライブロールと各フィンパスロールに割り振られる駆動力を決定した。
各ドライブロールは、昇降用の油圧シリンダによる荷重(圧力)制御を行い、それぞれ一定の推力を発生させることができた。
【0080】
このブレークダウンミルは、ドライブロールは外径が統一されかつ小径化してあり、成形専用ロールのBDロールも小径化してあり、かつ各スタンドはフレームがパスライン方向並びにその横断方向にロールを内蔵するユニットで接続一体化する構成であるため、剛性に優れ、小型・軽量化が最適に行われている。
【0081】
従来の成形ロールが駆動ロールを兼ねる構成と比較して、ドライブロールを内蔵したブレークダウンロールミルは、製品口径が42.7mm~127mmの5インチミルの場合、ライン方向長さが19%、幅方向が23%、高さ方向が14%、ロールを含まないスタンド全重量が42%、それぞれ減少した。
【0082】
ブレークダウンロールが駆動されないことで、上下ロールの小径化が可能になり、下ロールやサイドロールを傾斜配置することも可能になり、上下各種のロールを、上部のロールは上枠体内に、下部のロールは下枠体内に内蔵配置でき、上下の枠体を段積みして水平方向に横抜き構造にできた。ロール交換や芯出しなどのメンテナンス期間を短縮でき、 ロールや機械の清掃が簡単になり、さらに、兼用範囲の違うロールユニットを準備しそれと交換することにより、製造範囲を拡大できる。
【0083】
ブレークダウンロールの上下のロールがそれぞれ枠体内に配置されて、ロールの拡縮移動機構にネジ軸を使用することで荷重が内部応力になる。この枠体全体に発生した成形荷重の垂直成分をロードセルなどで測定すると、ブレークダウンロールスタンドで発生した成形荷重の評価の新しいパラメータとして使用できる。
【0084】
上記の製造装置は、事前に、被成形素材が板状から丸管へと成形される各工程の成形プロセスの解析結果より成形に必要な推力情報を得て、各工程の通過に必要な推力を、ブレークダウンミルの複数段のドライブロール群とフィンパスミルの複数段のフィンパスロール群に配分する。兼用範囲内の内、薄肉小径管の場合は、ドライブロール群とフィンパスロール群に均等に配分することがあり、厚肉大径管の場合は、ドライブロール群とフィンパスロール群に3:7の配分を行うことがある。従って、用いる電動機は可変出力範囲がかかる配分範囲に合致するように設定した。
【0085】
3段のフィンパスロール FP1~FP3スタンドでは、ジャッキによるロール位置調整機構を使用して、スタンド内でのロール位置調整を行って所定の圧下力を与えて推力設定を行い、ロールの駆動モーターにインバーターモーターを使用し、所定の回転数を維持させる設定を行い、3段のフィンパスロール群に安定的に推力が発生するように制御した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
この発明による溶接管の製造方法は、口径比が数倍の範囲でロールを兼用できる成形ロールを用い、金属帯を連続的に板から半円形状に成形するブレークダウン成形に際し、被成形素材へ付与する推力に着目して、成形を担うブレークダウンロールと推力付与するドライブロールとに分けて機能別に設定したことにより、製品寸法違いや金属種違いに応じて成形に必要な被成形素材への推力を確実に付与でき、成形ロールスタンド間で材料のライン方向への押し引が発生せずに、高効率、高精度な成形が可能となる溶接管の製造装置を提供できる。
【符号の説明】
【0087】
EG エントリーガイド
BD1~BD4 ブレークダウンロールスタンド
CL1~CL4 クラスターロールスタンド
B 基台
W.S 操作側
D.S 駆動側
1 門型フレーム
2 昇降用ジャッキ
3 クロスビーム
4 昇降用スクリュージャッキユニット
5 上下ロールユニット
5a 上枠体
5b 下枠体
5c ネジ軸
6 立柱フレーム
7 クロスビームスタンド
10 立柱
11,12 上下ロール
11a,12a ロールチョック
13 油圧ユニット
14 ブリッジ部材
15 昇降用ウエッジユニット
15a ビーム部材
15b 楔状部材
15c 昇降部材
20 上下ロール
21,22,31,32,51,52 上ロール
23,24 下ロール
25,55 下中央ロール
53,54 サイドロール
61,62,71,72,81,82,91,92 クラスターサイドロール
63,64 センターベンドロール