(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】高電圧機器用インターロック装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20221116BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20221116BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20221116BHJP
【FI】
B60L3/00 L
B60L1/00 L
B60L3/00 H
G01R31/34 B
(21)【出願番号】P 2019040760
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩
(72)【発明者】
【氏名】金 云海
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-51790(JP,A)
【文献】特開2009-77627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/292982(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/106171(US,A1)
【文献】特開平11-337609(JP,A)
【文献】特開2016-173221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 1/00
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された高電圧機器用のインターロック装置であって、
前記高電圧機器を高電圧電源に接続するためのHVコネクタに併設されたインターロックループと、
L/H信号を出力する検出用信号出力部と、
制御電極が前記インターロックループの一方の接続ラインに接続された第1のスイッチング素子と、
前記インターロックループの他方の接続ラインに接続され、前記インターロックループが閉状態のときに、前記検出用信号出力部の出力に応じて前記第1のスイッチング素子の制御電極に印加する電圧を切り換える制御用電圧切換回路と、
制御電極が前記インターロックループの他方の接続ラインに接続されると共に、主回路が前記インターロックループの前記一方の接続ラインに接続され、前記インターロックループが開状態のときに、前記第1のスイッチング素子のON/OFF状態が、前記インターロックループが閉状態のときと反転するように前記制御用電圧切換回路の出力を前記第1のスイッチング素子の制御電極に印加する第2のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子の状態に応じてL/H信号を出力する判定用信号出力回路と、
該判定用信号出力回路の出力に基づいて前記インターロックループの状態を診断する故障診断部を備え、
該故障診断部は、前記検出用信号出力部の出力と前記判定用信号出力回路の出力の組み合わせから、前記インターロックループの状態を診断することを特徴とする高電圧機器用インターロック装置。
【請求項2】
前記故障診断部は、少なくとも前記HVコネクタの接続、非接続、及び、前記インターロックループの故障を含むインターロック装置自体の故障を診断することを特徴とする請求項1に記載の高電圧機器用インターロック装置。
【請求項3】
前記制御用電圧切換回路は、電源に接続された抵抗回路と、該抵抗回路と前記検出用信号出力部の間に接続された絶縁性信号伝達素子から構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高電圧機器用インターロック装置。
【請求項4】
前記判定用信号出力回路は、前記第1のスイッチング素子と前記故障診断部の間に接続された絶縁性信号伝達素子から構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の高電圧機器用インターロック装置。
【請求項5】
前記高電圧機器内に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の高電圧機器用インターロック装置。
【請求項6】
前記高電圧機器は、前記車両に搭載された電動コンプレッサであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の高電圧機器用インターロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載される電動コンプレッサ等の高電圧機器を高電圧電源に接続するコネクタの外れを検出するためのインターロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両の空気調和装置を構成する電動コンプレッサはコネクタ(HVコネクタ)により高電圧電源(HVバッテリ)に接続されている。このコネクタが外れると感電等の事故が発生する危険性があるため、従来より当該コネクタには、コネクタの外れを検出するために、インターロック装置のインターロックループが併設されている。
【0003】
そして、コネクタの接続、非接続(外れ)により、インターロックループも閉状態(閉回路)、開状態(開回路)となる。このインターロックループにはコントローラから一定レベルの信号が出力されており、インターロックループが開状態となってコントローラへの信号レベルが反転することで、コネクタの非接続(外れ)を検出するように構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のインターロック装置は、コネクタの外れを検出できるものであったが、インターロックループが電源短絡や接地短絡した場合やインターロック装置自体が故障した場合には、コネクタ外れを的確に検出できなくなると云う問題があった。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、インターロック装置正常時のコネクタの接続、非接続の状態診断を可能にするのみならず、インターロックループの故障を含めたインターロック装置自体の故障も検出することができる高電圧機器用インターロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の高電圧機器用インターロック装置は、車両に搭載された高電圧機器を高電圧電源に接続するためのHVコネクタに併設されたインターロックループと、L/H信号を出力する検出用信号出力部と、制御電極がインターロックループの一方の接続ラインに接続された第1のスイッチング素子と、インターロックループの他方の接続ラインに接続され、インターロックループが閉状態のときに、検出用信号出力部の出力に応じて第1のスイッチング素子の制御電極に印加する電圧を切り換える制御用電圧切換回路と、制御電極がインターロックループの他方の接続ラインに接続されると共に、主回路がインターロックループの一方の接続ラインに接続され、インターロックループが開状態のときに、第1のスイッチング素子のON/OFF状態が、インターロックループが閉状態のときと反転するように制御用電圧切換回路の出力を第1のスイッチング素子の制御電極に印加する第2のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子の状態に応じてL/H信号を出力する判定用信号出力回路と、この判定用信号出力回路の出力に基づいてインターロックループの状態を診断する故障診断部を備え、この故障診断部は、検出用信号出力部の出力と判定用信号出力回路の出力の組み合わせから、インターロックループの状態を診断することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の高電圧機器用インターロック装置は、上記発明において故障診断部が、少なくともHVコネクタの接続、非接続、及び、インターロックループの故障を含むインターロック装置自体の故障を診断することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の高電圧機器用インターロック装置は、上記各発明において制御用電圧切換回路が、電源に接続された抵抗回路と、この抵抗回路と検出用信号出力部の間に接続された絶縁性信号伝達素子から構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の高電圧機器用インターロック装置は、上記各発明において判定用信号出力回路が、第1のスイッチング素子と故障診断部の間に接続された絶縁性信号伝達素子から構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の高電圧機器用インターロック装置は、上記各発明において高電圧機器内に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の高電圧機器用インターロック装置は、上記各発明において高電圧機器は、車両に搭載された電動コンプレッサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高電圧機器用インターロック装置は、車両に搭載された高電圧機器を高電圧電源に接続するためのHVコネクタに併設されたインターロックループと、L/H信号を出力する検出用信号出力部と、制御電極がインターロックループの一方の接続ラインに接続された第1のスイッチング素子と、インターロックループの他方の接続ラインに接続され、インターロックループが閉状態のときに、検出用信号出力部の出力に応じて第1のスイッチング素子の制御電極に印加する電圧を切り換える制御用電圧切換回路と、制御電極がインターロックループの他方の接続ラインに接続されると共に、主回路がインターロックループの一方の接続ラインに接続され、インターロックループが開状態のときに、第1のスイッチング素子のON/OFF状態が、インターロックループが閉状態のときと反転するように制御用電圧切換回路の出力を第1のスイッチング素子の制御電極に印加する第2のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子の状態に応じてL/H信号を出力する判定用信号出力回路を備えているので、検出用信号出力部が同じ出力であっても、インターロックループが閉状態にあるときと、開状態にあるときとで、第1のスイッチング素子の制御電極に印加される電圧が変化し、当該第1のスイッチング素子の状態が変化して判定用信号出力回路の出力も変化することになる。
【0014】
また、例えばインターロックループの電源短絡や接地短絡が発生した場合にも、第1のスイッチング素子の制御電極に印加される電圧が変化し、判定用信号出力回路の出力が変化する。更に、第1のスイッチング素子や判定用信号出力回路自体が故障した場合にも、結果として判定用信号出力回路の出力は変化することになる。
【0015】
そして、本発明ではこの判定用信号出力回路の出力に基づいてインターロックループの状態を診断する故障診断部を備えており、この故障診断部が、検出用信号出力部の出力と判定用信号出力回路の出力の組み合わせから、インターロックループの状態を診断するようにしたので、この故障診断部により、請求項2の発明に示す如きHVコネクタの接続、非接続、及び、インターロックループの故障(上記電源短絡や接地短絡)を含むインターロック装置自体の故障診断を行うことができるようになる。
【0016】
これにより、インターロックループの故障を含む高電圧機器用インターロック装置自体の故障時にも、コネクタ外れを非安全状態(コネクタ非接続、故障等)として、的確に診断する(コネクタが接続状態にある等の誤診断をしない)ことが可能となる。
【0017】
特に、本発明によれば第1及び第2のスイッチング素子を用いて上記のような故障診断のための出力を故障診断部に出力することができるようになるので、汎用的な部品を用いて、比較的少ない部品点数で低コストの回路を構成することが可能となる。
【0018】
また、請求項3の発明の如く制御用電圧切換回路を、電源に接続された抵抗回路と、この抵抗回路と検出用信号出力部の間に接続された絶縁性信号伝達素子から構成し、請求項4の発明の如く判定用信号出力回路を、第1のスイッチング素子と故障診断部の間に接続された絶縁性信号伝達素子から構成することで、装置を高電圧側と低電圧側に安全に絶縁することが可能となる。
【0019】
特に、請求項5の発明の如く高電圧機器用インターロック装置を、高電圧機器内に設けるようにすることで、例えば車両に搭載される高電圧機器の場合の如く、車両のコントローラにインターロックループを接続すること無く、高電圧機器側で故障診断を行うことができるようになる。
【0020】
そして、以上の高電圧機器用インターロック装置は、請求項6の発明の如き車両に搭載された高電圧機器としての電動コンプレッサに適用されるときに極めて有効なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した高電圧機器の実施例としての電動コンプレッサ用インバータ1の機能ブロックである。
【
図2】
図1中の状態検出判定回路17の電気回路の一実施例を示す図である。
【
図3】
図2のインターロックループの状態と各点の電圧レベル、及び、各素子の動作/状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明を適用する高電圧機器としての車両の空気調和装置を構成する電動コンプレッサ用インバータ1の機能ブロックを示している。
図1において、2は電動コンプレッサを駆動するモータであり、インバータ出力回路3により駆動される。4は高電圧検出センサ、6はフィルタ/キャパシタであり、これらはHVコネクタ7を介して車両に搭載された高電圧電源としてのHVバッテリ8に接続されている。
【0023】
また、9はマイクロコンピュータから構成されたコントローラであり、このコントローラ9により電動コンプレッサのモータ2が駆動制御される。コントローラ9は双方向デジタルアイソレータ11、光学カプラ12を介してLINトランシーバ13に接続されており、このLINトランシーバ13はコネクタ(LVコネクタ)14、車両通信バス15を介して図示しない車両側のコントローラ(ECU)に接続されている。そして、コントローラ9はインバータ出力回路3に接続され、LINトランシーバ13からもたらされる車両側のコントローラからの指示情報に基づき、ドライブ信号を出力してインバータ出力回路3を制御する。
【0024】
更に、16はインターロックループであり、HVコネクタ7に併設されている。このインターロックループ16は、一方の接続ライン16Aと、他方の接続ライン16Bと、これら接続ライン16A、16B間を繋ぐ連結ライン16Cから成り、HVコネクタ7が接続されると、連結ライン16Cが接続ライン16A、16B間を繋ぎ、ループが閉じられ(閉状態)、HVコネクタ7が非接続(外れ)の状態では、連結ライン16Cが接続ライン16A、16Bから外れ、ループが開放(開状態)される構成とされている。このインターロックループ16の接続ライン16A、16Bは状態検出判定回路17に接続され、この状態検出判定回路17はコントローラ9に接続されている。
【0025】
インバータ1に接続される低電圧電源LV+/LV-は、12V電源/LVGNDとしてインバータ内回路に供給される。更にまた、18はインバータ内に引き込まれた12V電源から15V電源21や5V電源(HV側)22を生成するDC-DCコンバータであり、15V電源21はインバータ出力回路3に接続され、5V電源(HV側)22はコントローラ9や状態検出判定回路17に接続されている。また、5V電源(LV側)23は状態検出判定回路17に接続されている。
【0026】
上記コントローラ9の検出用信号出力部と故障診断部、インターロックループ16、及び、状態検出判定回路17が本発明の高電圧機器用インターロック装置を構成する。そして、本発明の高電圧機器用インターロック装置は電動コンプレッサ(高電圧機器)内に設けられており、図中HV側で示す範囲が高電圧側、LV側で示す範囲が低電圧側を意味する。
【0027】
次に、
図2は
図1の状態検出判定回路17の電気回路の実施例を示している。実施例の状態検出判定回路17は、NPNトランジスタから構成された第1のスイッチング素子28と、PNPトランジスタから構成された第2のスイッチング素子29と、本発明の制御用電圧切換回路を構成する抵抗31(プルアップ抵抗)、第3のスイッチング素子32(NPNトランジスタから構成)、抵抗33、絶縁性信号伝達素子としての光学カプラ34、抵抗36(プルアップ抵抗)、抵抗37、ダイオード38、及び、抵抗39と、本発明の判定用信号出力回路を構成する絶縁性信号伝達素子としての光学カプラ41、抵抗42、及び、抵抗43(プルアップ抵抗)等から構成されている。尚、抵抗37は、制限抵抗であり、電源短絡時の光学カプラ34の出力保護のために設けることが好ましい。また、ダイオード38は第1のスイッチング素子28の入力ON電圧レベル調整のために設けることが好ましい。
【0028】
この場合、抵抗31の一端が5V電源22(HV側)に接続され、抵抗31の他端が第3のスイッチング素子32のベース(制御電極)に接続されている。そして、この抵抗31と第3のスイッチング素子32のベースとの接続点に、コントローラ9の出力ポート46(OUTPUT)が接続されている。第3のスイッチング素子32の主回路を構成するコレクタは抵抗33と光学カプラ34を介して5V電源22(HV側)に接続され、同じく第3のスイッチング素子32の主回路を構成するエミッタはHVGNDに接続されている。
【0029】
抵抗36の一端は5V電源23(LV側)に接続され、この抵抗36の他端とLVGND間に光学カプラ34の出力47が接続されている。抵抗36の他端は抵抗37を介してインターロックループ16の他方の接続ライン16Bに接続されており、インターロックループ16の一方の接続ライン16Aはダイオード38と抵抗39を介して第1のスイッチング素子28のベース(制御電極)に接続されている。即ち、光学カプラ34はこれら複数の抵抗36、37、39から成る抵抗回路と、コントローラ9の出力ポート46(検出用信号出力部を構成する)の間に接続されることになる。
【0030】
第1のスイッチング素子28の主回路を構成するエミッタはLVGNDに接続される。同じく第1のスイッチング素子28の主回路を構成するコレクタは抵抗42と光学カプラ41を介して5V電源23(LV側)に接続されている。抵抗43の一端は5V電源22(HV側)に接続されており、この抵抗43の他端とHVGND間に光学カプラ41の出力48が接続される。そして、この抵抗43と光学カプラ41の出力48との接続点が、コントローラ9の入力ポート49(INPUT)が接続されている。
【0031】
また、第2のスイッチング素子29のベース(制御電極)は、抵抗51を介して抵抗37とインターロックループ16の他方の接続ライン16Bとの接続点に接続されている。この第2のスイッチング素子29の主回路を構成するエミッタは5V電源23(LV側)に接続されており、同じく主回路を構成するコレクタは抵抗52を介してダイオード38とインターロックループ16の一方の接続ライン16Aとの接続点に接続されている。実施例では前述した抵抗51、52は、本発明における第2のスイッチング素子の一部を構成する。尚、ダイオード38は抵抗39側が順方向とされている。
【0032】
前述した如くコントローラ9が本発明における故障診断部及び検出用信号出力部を構成する。そして、コントローラ9は出力ポート46から出力したL/H信号(検出用出力信号)に対して、入力ポート49から入力されるL/H信号(判定用入力信号)の組み合わせを基に以下に説明する故障診断を行うことになる。
【0033】
以上の構成で、次に
図2、
図3を参照しながら実施例の高電圧機器用インターロック装置の動作を説明する。尚、
図3はインターロックループ16の状態等と、コントローラ9の出力ポート46及び入力ポート49の信号レベルと、
図2中の各素子の動作、それらに基づくコントローラ9の診断結果を示している。先ず、コントローラ9は、実施例では所定の周期で出力ポート46から「L」レベルの信号と「H」レベルの信号を交互に出力するものとする。
【0034】
(1)HVコネクタ7が接続された状態で高電圧機器用インターロック装置が正常時
今、HVコネクタ7が接続されており、インターロックループ16の連結ライン16Cが各接続ライン16Aと16Bを繋ぎ、ループも閉じられていて(閉状態)、高電圧機器用インターロック装置の当該インターロックループ16と状態検出判定回路17に故障がないものとする。
【0035】
この状態で、出力ポート46から出力される信号が「L」レベルのときは、第3のスイッチング素子32のベース電位がONレベルであるVin(ON)に達しないので、第3のスイッチング素子32はOFFする。それにより、光学カプラ34もOFFするので出力47は開状態となる。この状態では、5V電源23(LV側)、抵抗37、インターロックループ16の接続ライン16B、連結ライン16C、接続ライン16A、ダイオード38、抵抗39の経路で第1のスイッチング素子28のベースに電圧が印加されるので、ベース電位がONレベルであるVin(ON)より高くなり、第1のスイッチング素子28がONする。第1のスイッチング素子28がONすることで、光学カプラ41がONするので、出力48は閉状態となり、コントローラ9の入力ポート49の信号は「L」レベルとなる。尚、第2のスイッチング素子29のベース電位はONレベルであるVin(ON)より低くなるので、第2のスイッチング素子29はONしている。
【0036】
一方、出力ポートから出力される信号が「H」レベルのときは、第3のスイッチング素子32のベース電位がONレベルであるVin(ON)に達するので、第3のスイッチング素子32はONする。それにより、光学カプラ34もONするので出力47は閉状態となる。この状態では、抵抗36と抵抗37の接続点の電位はLVGNDレベルに低下するので、第1のスイッチング素子28のベース電位はONレベルであるVin(ON)に達しない。これにより、第1のスイッチング素子28はOFFする。尚、第2のスイッチング素子29のベース電位はONレベルであるVin(ON)より低くなるので、第2のスイッチング素子29はONするが、抵抗52と抵抗39の接続点の電位は第1のスイッチング素子28のONレベルであるVin(ON)に達しない。第1のスイッチング素子28がOFFすることで、光学カプラ41がOFFするので、出力48は開状態となり、コントローラ9の入力ポート49の信号は「H」レベルとなる。
【0037】
コントローラ9は、出力ポート46から「L」レベルの信号を出力したときに入力ポート49の信号が「L」レベルとなり、「H」レベルの信号を出力したときに入力ポート49の信号が「H」レベルとなったときは、HVコネクタ7が接続状態にあると診断する。
【0038】
(2)HVコネクタ7が非接続(外れ)で高電圧機器用インターロック装置が正常時
次に、HVコネクタ7が非接続となり、インターロックループ16の連結ライン16Cが各接続ライン16A、16Bから外れ、ループが開放されて(開状態)、高電圧機器用インターロック装置の当該インターロックループ16と状態検出判定回路17に故障がない場合について説明する。
【0039】
この状態で、出力ポート46から出力される信号が「L」レベルのときは、第3のスイッチング素子32のベース電位がONレベルであるVin(ON)に達しないので、第3のスイッチング素子32はOFFする。それにより、光学カプラ34もOFFするので出力47は開状態となる。しかしながら、インターロック16の接続ライン16Bと接続ライン16Aは繋がっていないので、前述した如き、5V電源23(LV側)、抵抗37、インターロックループ16の接続ライン16B、連結ライン16C、接続ライン16A、ダイオード38、抵抗39の経路は無くなり、第1のスイッチング素子28のベースに電圧は印加されず、ベース電位はONレベルであるVin(ON)より低くなるので第1のスイッチング素子28がOFFする。尚、第2のスイッチング素子29のベース電位はONレベルであるVin(ON)より高くなるので第2のスイッチング素子29もOFFである。第1のスイッチング素子28がOFFすることで、光学カプラ41もOFFするので、出力48は開状態となり、コントローラ9の入力ポート49の信号は「H」レベルとなる。
【0040】
一方、出力ポートから出力される信号が「H」レベルのときは、第3のスイッチング素子32のベース電位がONレベルであるVin(ON)に達するので、第3のスイッチング素子32はONする。それにより、光学カプラ34もONするので出力47は閉状態となる。これにより、第2のスイッチング素子29のベース電位が、ONレベルであるVin(ON)より低くなるので第2のスイッチング素子29はONする。このとき、インターロックループ16の接続ライン16B、16Aは繋がっていないので、第2のスイッチング素子29がONすることで、5V電源23(LV側)、第2のスイッチング素子29の主回路、抵抗52、ダイオード38、抵抗39の経路で第1のスイッチング素子28のベースに電圧が印加され、ベース電位がONレベルであるVin(ON)より高くなるので第1のスイッチング素子28がONする。第1のスイッチング素子28がONすることで、光学カプラ41がONするので、出力48は閉状態となり、コントローラ9の入力ポート49の信号は「L」レベルとなる。
【0041】
即ち、第2のスイッチング素子29は、インターロックループ16が開状態のときには、抵抗37、インターロックループ16の接続ライン16B、連結ライン16C、接続ライン16A、ダイオード38、抵抗39の経路で第1のスイッチング素子28のベースに電圧が印加されるインターロックループ16が閉状態のときとは、第1のスイッチング素子28のON/OFF状態が反転する電圧を、制御用電圧切換回路を構成するダイオード38、及び、抵抗39を介して(即ち、制御用電圧切換回路の出力として)、第1のスイッチング素子28のベースに印加するように作用する。
【0042】
コントローラ9は、出力ポート46から「L」レベルの信号を出力したときに入力ポート49の信号が「H」レベルとなり、「H」レベルの信号を出力したときに入力ポート49の信号が「L」レベルとなったときは、HVコネクタ7が非接続の状態と診断する。
【0043】
(3)インターロックループ16の電源短絡状態
次に、インターロックループ16のループが閉状態で、当該インターロックループ16が5V電源23(LV側)に短絡した場合について説明する。インターロックループ16が5V電源23(LV側)に短絡すると、コントローラ9の出力ポート46から出力される信号が「L」レベルであるか「H」レベルであるかに関わらず、第1のスイッチング素子28と第2のスイッチング素子29のベースには5V電源23(LV)が供給されるので、第2のスイッチング素子29はOFF、第1のスイッチング素子28はONする。第1のスイッチング素子28がONすることで、光学カプラ41がONするので、出力48は閉状態となり、コントローラ9の入力ポート49の信号は「L」レベルとなる。
【0044】
コントローラ9は、出力ポート46から「L」レベルの信号を出力したときに入力ポート49の信号が「L」レベルとなり、「H」レベルの信号を出力したときにも入力ポート49の信号が「L」レベルとなったときは、故障状態と診断する(この場合は、インターロックループ16の電源短絡故障)。
【0045】
(4)インターロックループ16の接地短絡状態
次に、インターロックループ16が接地(LVGND)に短絡した場合について説明する。インターロックループ16が接地短絡すると、コントローラ9の出力ポート46から出力される信号が「L」レベルであるか「H」レベルであるかに関わらず、第1のスイッチング素子28と第2のスイッチング素子29のベース電位も接地(LVGND)レベルとなるので、第2のスイッチング素子29はON、第1のスイッチング素子28はOFFする。第1のスイッチング素子28がOFFすることで、光学カプラ41がOFFするので、出力48は開状態となり、コントローラ9の入力ポート49の信号は「H」レベルとなる。
【0046】
コントローラ9は、上述した如く出力ポート46から「L」レベルの信号を出力したときに入力ポート49の信号が「H」レベルとなり、「H」レベルの信号を出力したときにも入力ポート49の信号が「H」レベルとなったときは、故障状態と診断する(この場合は、インターロックループ16の接地短絡故障)。
【0047】
(5)第1のスイッチング素子28の出力短絡状態(主回路が短絡)
次に、他の故障例として、第1のスイッチング素子28の主回路が短絡した場合について説明する。第1のスイッチング素子28の主回路が短絡すると、コントローラ9の出力ポート46から出力される信号が「L」レベルであるか「H」レベルであるかに関わらず、第1のスイッチング素子28はON状態となるので、光学カプラ41がONし、出力48は閉状態となり、コントローラ9の入力ポート49の信号は「L」レベルとなる。
【0048】
コントローラ9は、上述した如く出力ポート46から「L」レベルの信号を出力したときに入力ポート49の信号が「L」レベルとなり、「H」レベルの信号を出力したときにも入力ポート49の信号が「L」レベルとなったときは、故障状態と診断する(この場合は、第1のスイッチング素子28の出力短絡故障)。
【0049】
(6)光学カプラ41の出力開放状態
次に、もう一つの他の故障例として、光学カプラ41の出力48が閉じなくなった場合(開放したままになった場合)について説明する。光学カプラ41の出力48は開放状態となると、コントローラ9の出力ポート46から出力される信号が「L」レベルであるか「H」レベルであるかに関わらず、コントローラ9の入力ポート49の信号は「H」レベルとなる。
【0050】
コントローラ9は、上述した如く出力ポート46から「L」レベルの信号を出力したときに入力ポート49の信号が「H」レベルとなり、「H」レベルの信号を出力したときにも入力ポート49の信号が「H」レベルとなったときは、故障状態と診断する(この場合は、光学カプラ41の出力48の開放故障)。
【0051】
以上詳述した如く、本発明の高電圧機器用インターロック装置は、車両に搭載された電動コンプレッサ(高電圧機器)をHVバッテリ8(高電圧電源)に接続するためのHVコネクタ7に併設されたインターロックループ16と、L/H信号を出力する検出用信号出力部と、ベースがインターロックループ16の一方の接続ライン16Aに接続された第1のスイッチング素子28と、インターロックループ16の他方の接続ライン16Bに接続され、インターロックループ16が閉状態のときに、検出用信号出力部の出力に応じて第1のスイッチング素子28のベースに印加する電圧を切り換える制御用電圧切換回路と、ベースがインターロックループ16の他方の接続ライン16Bに接続されると共に、主回路がインターロックループ16の一方の接続ライン16Aに接続され、インターロックループ16が開状態のときに、第1のスイッチング素子28のON/OFF状態が、インターロックループ16が閉状態のときと反転するように制御用電圧切換回路の出力を第1のスイッチング素子28のベースに印加する第2のスイッチング素子29と、第1のスイッチング素子28の状態に応じてL/H信号を出力する判定用信号出力回路を備えているので、検出用信号出力部(マイコン9の出力ポート46)が同じ出力であっても、インターロックループ16が閉状態にあるときと、開状態にあるときとで、第1のスイッチング素子28のベースに印加される電圧が変化し、当該第1のスイッチング素子28の状態が変化して判定用信号出力回路の出力も変化することになる。
【0052】
また、インターロックループ16の電源短絡や接地短絡が発生した場合にも、第1のスイッチング素子28のベースに印加される電圧が変化し、判定用信号出力回路の出力が変化する。更に、第1のスイッチング素子28や判定用信号出力回路(光学カプラ41)自体が故障した場合にも、結果として判定用信号出力回路の出力は変化することになる。
【0053】
そして、本発明ではこの判定用信号出力回路の出力に基づいてインターロックループ16の状態を診断する故障診断部(マイコン9)を備えており、この故障診断部が、検出用信号出力部の出力(出力ポート46)と判定用信号出力回路の出力(入力ポート49)の組み合わせから、インターロックループ16の状態を診断するようにしたので、この故障診断部により、HVコネクタ7の接続、非接続、及び、インターロックループ16の故障(上記電源短絡や接地短絡)を含むインターロック装置自体の故障診断を行うことができるようになる。
【0054】
これにより、インターロックループ16の故障を含む高電圧機器用インターロック装置自体の故障時にも、HVコネクタ7の外れを非安全状態(コネクタ非接続、故障等)として、的確に診断する(コネクタが接続状態にある等の誤診断をしない)ことが可能となる。
【0055】
特に、本発明によれば第1及び第2のスイッチング素子28、29を用いて上記のような故障診断のための出力を故障診断部に出力することができるようになるので、汎用的な部品を用いて、比較的少ない部品点数で低コストの回路を構成することが可能となる。
【0056】
また、実施例の如く制御用電圧切換回路を、5V電源23(LV側)に接続された抵抗36、37、39から成る抵抗回路と、この抵抗回路と検出用信号出力部(出力ポート46)の間に接続された光学カプラ34から構成し、判定用信号出力回路を、第1のスイッチング素子28と故障診断部(コントローラ9)の間に接続された光学カプラ41から構成することで、装置を高電圧側(HV側)と低電圧側(LV側)に安全に絶縁することが可能となる。
【0057】
特に、実施例の如く高電圧機器用インターロック装置を、電動コンプレッサ(高電圧機器)に設けることで、車両のコントローラにインターロックループ16を接続すること無く、電動コンプレッサ側で故障診断を行うことができるようになる。
【0058】
尚、実施例では車両に搭載された高電圧機器としての電動コンプレッサに高電圧機器用インターロック装置を適用したが、それに限らず、車両に搭載される各種高電圧機器に本発明は有効である。
【0059】
また、実施例では状態検出判定回路17の故障として第1のスイッチング素子28や光学カプラ41の故障を採り上げたが、他の素子の故障診断も同様に可能である。更に、実施例では第1のスイッチング素子28をNPNトランジスタから構成し、第2のスイッチング素子29をPNPトランジスタにて構成したが、それらに限られるものでは無く、他の半導体スイッチング素子、例えば、MOS-FET等で構成してもよい。
【0060】
更にまた、実施例では光学カプラ34、41を絶縁性信号伝達素子として採用したが、それに限らず、デジタルアイソレータ等で構成してもよい。また、実施例では低電圧側(LV側)の電源電圧を5Vとしたが、それに限らず、インバータで規定されるLV+電源入力電圧範囲内であれば、本インターロック装置が正常に機能するものとして許容されるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 電動コンプレッサ用インバータ
2 モータ
3 インバータ出力回路
7 HVコネクタ
8 HVバッテリ(高電圧電源)
9 コントローラ(故障診断部、検出用信号出力部)
16 インターロックループ
16A、16B 接続ライン
17 状態検出判定回路
28 第1のスイッチング素子
29 第2のスイッチング素子
34 光学カプラ(絶縁性信号伝達素子、制御用電圧切換回路)
36、37、39 抵抗(制御用電圧切換回路)
41 光学カプラ(絶縁性信号伝達素子、判定用信号出力回路)
46 入力ポート
49 出力ポート