(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】防音材、及び、防音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/168 20060101AFI20221116BHJP
E01B 19/00 20060101ALI20221116BHJP
E01F 8/00 20060101ALI20221116BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20221116BHJP
B29C 44/06 20060101ALI20221116BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221116BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20221116BHJP
B60R 13/08 20060101ALN20221116BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
G10K11/168
E01B19/00 B
E01F8/00
B29C44/00 C
B29C44/06
B32B27/40
G10K11/16 120
B60R13/08
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2018222665
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑介
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159646(WO,A1)
【文献】特開2017-222873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/168
E01B 19/00
E01F 8/00
B29C 44/00
B29C 44/06
B32B 27/40
G10K 11/16
B60R 13/08
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームからなる、第1層と、
前記第1層の第1側の面に積層され、ポリウレタン以外の材料から構成されたシート状部材からなる、第2層と、
前記第2層の前記第1側の面に積層され、ポリウレタンフォームからなり、前記第1層の少なくとも一部の密度よりも高い密度を全体にわたって有する、第3層と、
を備
え、
前記第2層は、不織布からなる、防音材。
【請求項2】
前記第3層は、熱圧縮ポリウレタンフォームからなる、請求項
1に記載の防音材。
【請求項3】
前記第3層を構成する前記熱圧縮ポリウレタンフォームは、熱圧縮されていないポリウレタンフォームを、体積が0.1~0.3倍になるまで熱圧縮したものである、請求項
2に記載の防音材。
【請求項4】
前記第1層の少なくとも一部の厚さは、前記第3層の厚さの最大値よりも大きい、請求項1~
3のいずれか一項に記載の防音材。
【請求項5】
前記第1層の少なくとも一部の厚さは、前記第3層の厚さの最大値の10~50倍である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の防音材。
【請求項6】
最も前記第1側に位置し、不織布からなる、前記第1側の表層を、さらに備えた、請求項1~
5のいずれか一項に記載の防音材。
【請求項7】
ポリウレタンフォームからなる第1層を得る、第1層製造ステップと、
ポリウレタン以外の材料から構成されたシート状部材からなる第2層を準備する、第2層準備ステップと、
熱圧縮されていないポリウレタンフォームを熱圧縮することにより、前記第1層製造ステップで得られた前記第1層のいずれの部分の密度よりも高い密度を全体にわたって有する第3層を得る、第3層製造ステップと、
前記第1層製造ステップで得られた前記第1層の第1側の面に、前記第2層準備ステップで準備された前記第2層を積層し、当該第2層の前記第1側の面に、前記第3層製造ステップで得られた前記第3層を積層し、それにより、積層体を得る、積層ステップと、
を含
み、
前記第2層は、不織布からなる、防音材の製造方法。
【請求項8】
前記第1層製造ステップでは、液状ハロゲン化オレフィンを含有するポリウレタンフォーム製造用組成物を反応及び発泡させることにより、前記第1層を得る、請求項
7に記載の防音材の製造方法。
【請求項9】
前記積層ステップで得られた前記積層体を熱圧縮成形する、積層体成形ステップを、さらに含み、
前記積層体成形ステップの後の前記積層体において、前記第3層は、前記第1層の少なくとも一部の密度よりも高い密度を全体にわたって有する、請求項
7又は
8に記載の防音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音材、及び、防音材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防音材として、ポリウレタンフォームの単層構造からなるものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防音材においては、防音性能に関し、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、防音性能を向上できる防音材、及び、防音性能を向上できる防音材を得ることができる、防音材の製造方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防音材は、
ポリウレタンフォームからなる、第1層と、
前記第1層の第1側の面に積層され、ポリウレタン以外の材料から構成されたシート状部材からなる、第2層と、
前記第2層の前記第1側の面に積層され、ポリウレタンフォームからなり、前記第1層の少なくとも一部の密度よりも高い密度を全体にわたって有する、第3層と、
を備えている。
本発明の防音材によれば、防音性能を向上できる。
【0007】
本発明の防音材において、
前記第2層は、不織布からなると、好適である。
これにより、防音性能をさらに向上できる。
【0008】
本発明の防音材において、
前記第3層は、熱圧縮ポリウレタンフォームからなると、好適である。
これにより、防音性能をさらに向上できる。
【0009】
本発明の防音材において、
前記第3層を構成する前記熱圧縮ポリウレタンフォームは、熱圧縮されていないポリウレタンフォームを、体積が0.1~0.3倍になるまで熱圧縮したものであると、好適である。
これにより、防音性能をさらに向上できる。
【0010】
本発明の防音材において、
前記第1層の少なくとも一部の厚さは、前記第3層の厚さの最大値よりも大きいと、好適である。
これにより、防音材の重量の増大を抑制しつつ、防音性能をさらに向上できる。
【0011】
本発明の防音材において、
前記第1層の少なくとも一部の厚さは、前記第3層の厚さの最大値の10~50倍であると、好適である。
これにより、防音材の重量の増大を抑制しつつ、防音性能をさらに向上できる。
【0012】
本発明の防音材において、
最も前記第1側に位置し、不織布からなる、前記第1側の表層を、さらに備えていると、好適である。
これにより、耐油性や耐熱性を向上できる。
【0013】
本発明の防音材の製造方法は、
ポリウレタンフォームからなる第1層を得る、第1層製造ステップと、
ポリウレタン以外の材料から構成されたシート状部材からなる第2層を準備する、第2層準備ステップと、
熱圧縮されていないポリウレタンフォームを熱圧縮することにより、前記第1層製造ステップで得られた前記第1層のいずれの部分の密度よりも高い密度を全体にわたって有する第3層を得る、第3層製造ステップと、
前記第1層製造ステップで得られた前記第1層の第1側の面に、前記第2層準備ステップで準備された前記第2層を積層し、当該第2層の前記第1側の面に、前記第3層製造ステップで得られた前記第3層を積層し、それにより、積層体を得る、積層ステップと、
を含む。
本発明の防音材の製造方法によれば、防音性能を向上できる防音材を得ることができる。
【0014】
本発明の防音材においては、
前記第1層製造ステップでは、液状ハロゲン化オレフィンを含有するポリウレタンフォーム製造用組成物を反応及び発泡させることにより、前記第1層を得ると、好適である。
これにより、第1層の吸音効果の向上や軽量化が可能になる。
【0015】
本発明の防音材においては、
前記積層ステップで得られた前記積層体を熱圧縮成形する、積層体成形ステップを、さらに含み、
前記積層体成形ステップの後の前記積層体において、前記第3層は、前記第1層の少なくとも一部の密度よりも高い密度を全体にわたって有するようにしてもよい。
この場合、防音材を所望の形状に成形しつつ、防音性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防音性能を向上できる防音材、及び、防音性能を向上できる防音材を得ることができる、防音材の製造方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る防音材を概略的に示す、断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る防音材の製造方法における第3層製造ステップを説明するための図面である。
【
図3】
図1の防音材の作用効果を説明するための図面である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る防音材を概略的に示す、断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る防音材の製造方法における積層体成形ステップを説明するための図面である。
【
図6】本発明の防音材の実施例1、比較例1における音圧試験の結果を示す図面である。
【
図7】
図6の音圧試験に用いた比較例1に係る防音材を概略的に示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の防音材は、任意の場所や物に用いられてよいが、車両に用いられると好適なものである。
以下、本発明に係る防音材、及び、防音材の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1~
図3は、本発明の第1実施形態に係る防音材1及びその製造方法を説明するための図面である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る防音材1の断面を示している。本実施形態の防音材1は、複数(具体的に本例では、4つ)の層が積層されてなる積層構造からなるものである。
本明細書では、便宜のため、防音材1の積層方向(防音材1の厚さ方向でもある。)における一方側(
図1の上側)を「第1側(S1)」といい、積層方向における他方側(
図1の下側)を「第2側(S2)」という。
図1の例では、使用時において、防音材1の積層方向が鉛直方向であり、第1側S1が鉛直方向における上側であり、第2側S2が鉛直方向における下側である。ただし、使用時において、防音材1の積層方向、第1側S1、第2側S2の方向及び向きは、それぞれ
図1の例とは異なっていてもよい。
図1の例のように、防音材1は、使用時において、その第2側S2の表面が、音発生源Gに対向するように配置される。防音材1は、このように配置された状態で、音発生源Gから発せられる音が、防音材1よりも第1側S1へ伝わるのを抑制するように、構成されている。本明細書では、防音材1により発揮される、音発生源Gからの音が防音材1よりも第1側S1へ伝わるのを抑制する性能を、「防音性能」という。
防音性能を向上させる観点から、防音材1は、
図1の例のように、使用時において、その第2側S2の表面が、音発生源Gに接触するように配置されると、好適である。
音発生源Gとしては、任意の物でよいが、車両を構成する部品であると好適である。本例において、音発生源Gは、車両のエンジンルーム内に配置されている。また、本例において、防音材1は、音発生源Gの上に接触状態で載置されている。
【0020】
本実施形態の防音材1は、最も第2側S2に位置する表層である第1層10と、第1層10の第1側S1の面に積層された第2層20と、第2層20の第1側S1の面に積層された第3層30と、第3層30の第1側S1の面に積層され、最も第1側S1に位置する表層である、第4層40と、を備えている。
図1の例において、第1層10、第2層20、第3層30、第4層40は、それぞれ、平板状に構成されており、言い換えれば、それぞれ、全体にわたって厚さが略一定であるとともに平坦状である。これに伴い、防音材1の第2側S2の面(第1層10の第2側S2の面)は、平坦状である。このような構成は、
図1の例のように、音発生源Gにおける防音材1側(第1側S1)の面(
図1の上面)が平坦状である場合に、防音材1と音発生源Gとの接触面積を増大でき、ひいては防音性能を向上できるので、特に好適である。
【0021】
第1層10、第2層20、第3層30、第4層40は、各層間で、少なくとも一部分(例えば、各層の外周端部のみ)において互いに固着(接着又は溶着等)されていると、好適である。これにより、防音材1の搬送時や使用時等において、防音材1の各層10~40どうしが互いから分離するのを防止できる。
ただし、第1層10~第4層40どうしは、互いに固着されていなくてもよい。
【0022】
第1層10は、ポリウレタンフォームからなる。本明細書では、第1層10を構成するポリウレタンフォームを「第1ポリウレタンフォーム」という。
本実施形態において、第1層10は、全体にわたって密度(kg/m3)がほぼ均一である。
第1層10を構成する第1ポリウレタンフォームは、熱圧縮されていない通常のポリウレタンフォームである。
第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、多数の(潰れていない)セルが配列された構造を有しているため、中に入ってくる音を吸収する性能(以下、「吸音性能」という。)が高い。
【0023】
第3層30は、ポリウレタンフォームからなる。本明細書では、第3層30を構成するポリウレタンフォームを「第3ポリウレタンフォーム」という。
本実施形態において、第3層30は、全体にわたって密度(kg/m
3)がほぼ均一である。第3層30は、第1層10のいずれの部分よりも、高い密度(kg/m
3)を、全体にわたって有している。
本例において、第3層30(第3ポリウレタンフォーム)は、熱圧縮ポリウレタンフォーム(熱圧縮されたポリウレタンフォーム)からなる。すなわち、第3層30は、
図2に概略的に示すように、熱圧縮されていない通常のポリウレタンフォームからなるブロック130を、熱圧縮することにより得られたものである。以下、このブロック130を構成する熱圧縮されていないポリウレタンフォームを、「第4ポリウレタンフォーム」という。本例において、第3層30は、その厚さ方向で、熱圧縮されたものである。
上述のとおり、第3層30(ひいては、第3ポリウレタンフォーム)は、第1層10よりも密度(kg/m
3)が高い。このため、第3層30は、同じ体積で比較したときに、第1層10に比べ、内部に有する空隙の量が少なく、そのため、吸音性能が低いが、中に入ろうとする音を跳ね返す性能(以下、「遮音性能」という。)が高い。特に、本例において、第3層30は、熱圧縮ポリウレタンフォームからなるため、セルが潰れており、内部に空隙をほとんど又は全く有しないことから、吸音性能はほとんど有しないが、遮音性能が高い。また、第3層30は、第1層10に比べ、振動を減衰させる性能が高い。
【0024】
第2層20は、ポリウレタン以外の材料から構成され、シート状に構成された、シート状部材からなる。
第2層20は、ポリウレタン以外の材料から構成されており、すなわち、第1層10及び第3層30とは異なる材料から構成されているので、仮に、第1層10と第3層30との間に第2層20が無く、第1層10と第3層30とが直接接触している場合に比べて、防音材1の防音性能を向上できる。より具体的に説明すると、本発明の発明者は、第1層10と第3層30との間に第2層20が無い場合は、音発生源Gから特定の周波数の音が防音材1に入力されたときに、それ以外の周波数の音が入力されたときに比べて、防音性能が低下する場合があることに、新たに着目した。これは、当該特定の周波数の音に対し、第1層10及び第3層30を構成するポリウレタンフォーム(第1ポリウレタンフォーム、第3ポリウレタンフォーム)が共振し、音を増幅させていることによるものと考えられる。そして、本発明の発明者は、第1層10と第3層30との間に、ポリウレタン以外の材料からなる第2層20を設けることによって、上記特定の周波数の音が入力されたときに、防音性能を向上できることを、新たに見出した。これは、第1層10と第3層30との間に第2層20が介在することにより、当該特定の周波数の音が入力されたときに、第1層10及び第3層30を構成するポリウレタンフォーム(第1ポリウレタンフォーム、第3ポリウレタンフォーム)の共振が抑制されることによるものと考えられる。
第2層20(ひいては、シート状部材)を構成する材料としては、防音性能向上の観点から、例えば、ポリウレタン以外の樹脂(例えば、ポリエステル等の合成樹脂)、植物繊維(例えば、綿)、ゴム、又は、金属等が好適であり、さらに軽量化の観点からは、ポリウレタン以外の樹脂(例えば、ポリエステル等の合成樹脂)、植物繊維(例えば、綿)、又は、ゴムが、特に好適である。また、第2層20(ひいては、シート状部材)の構造としては、シート状であれば任意でよく、例えば、布(織物、編物、又は、不織布)、多数の貫通孔を有するメッシュ状のシート、あるいは、貫通孔を有しない一続きのシート等が好適であり、不織布であると特に好適である。
図の例において、第2層20は、ポリエステル製の不織布からなる。
【0025】
第4層40は、不織布からなる。不織布を構成する材料としては、任意でよいが、例えばポリエステルが挙げられる。
第4層40を構成する不織布は、ポリウレタンフォームからなる第1層10及び第3層30に比べ、耐油性及び耐熱性が高い。
【0026】
ここで、本実施形態の作用効果について説明する。
まず、上述のように、本実施形態では、吸音性能の高い第1層10よりも第1側S1に、遮音性能の高い第3層30が配置されている。そして、本例において、本実施形態の防音材1は、防音材1の第2側S2の表面が、音発生源Gに対向(より具体的には接触)して配置されている。これにより、
図3に概略的に示すように、音発生源Gから第1側S1へ防音材1に垂直に(すなわち積層方向に)入ってくる音は、その一部が第1層10によって吸収されるとともに、第1層10によって吸収しきれなかった音は、第3層30によって遮音される(第2側S2へ跳ね返される)。これにより、音発生源Gから発せられる音が、防音材1よりも第1側S1へ伝わるのを、効果的に抑制できる。
なお、一般的に、防音材は、重量が高いほど遮音性能ひいては防音性能が高くなる傾向がある。本実施形態において、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、第3層30(ひいては、第3ポリウレタンフォーム)よりも、密度(kg/m
3)が低い。そのため、一般的にいえば、仮に同じ体積で比較すると、第1層10は、第3層30よりも、重量が軽いという利点を有する一方、防音性能が低いという不利点を有する。よって、仮に、第1層10と第3層30との合計厚さ分を、全て第1層10(ひいては第1ポリウレタンフォーム)で構成した場合、防音材1を軽量化できる一方、音発生源Gからの音が防音材1よりも第1側S1に伝わるのを十分に抑制できない(すなわち、十分な防音性能が得られない)おそれがある。一方、仮に、第1層10と第3層30との合計厚さ分を、全て第3層30(ひいては第3ポリウレタンフォーム)で構成した場合、音発生源Gからの音を効果的に遮音する(跳ね返す)ことができ、音発生源Gからの音が防音材1よりも第1側S1に伝わるのを効果的に抑制できる(高い防音性能が得られる)一方、防音材1の重量が大幅に増大するおそれがある。特に、本例のように防音材1が車両に用いられる場合、低燃費の観点から、防音材1の重量は軽いほうが好ましい。本実施形態の防音材1は、吸音性能の高い第1層10と遮音性能の高い第3層30とを兼ね備えているので、防音材1の重量の増大を抑制しつつ、良好な防音性能を得ることができるのである。
また、本実施形態の防音材1は、第3ポリウレタンフォームからなる第3層30が、高い振動減衰性能を有するので、音発生源Gから発せられる振動を効果的に減衰させることもできる。
また、本例において、本実施形態の防音材1は、第3ポリウレタンフォームからなる第3層30が、第1ポリウレタンフォームからなる第1層10に対して第1側S1に配置されているので、仮にその逆の場合、すなわち、第1ポリウレタンフォームからなる第1層10が、第3ポリウレタンフォームからなる第3層30に対して第1側S1に配置されている場合に比べて、音発生源Gから発せられる音のうち、より多くの部分が、第1層10に垂直に(積層方向に)入って、そこで吸音されるので、第1層10による吸音性能をより効果的に発揮させることができ、ひいては、防音材1の防音性能を向上できる。
【0027】
また、上述のように、本実施形態の防音材1においては、第1層10と第3層30との間に、ポリウレタン以外の材料からなる第2層20を設けている。これにより、仮に第1層10と第3層30との間に第2層20が無い場合に比べて、音発生源Gから特定の周波数の音が入力されたときに、第1層10及び第3層30の共振を抑制し、防音性能を向上することができる。よって、本実施形態の防音材1によれば、より幅広い周波数の音に対して、高い防音性能を得ることができる。
また、第2層20は、シート状部材からなるので、防音材1の厚さや重量が増大するのを抑制できる。
なお、第2層20による防音性能向上の機能は、本例のように第2層20が不織布からなる場合に、特に良好に発揮される。
【0028】
また、本実施形態の防音材1は、最も第1側S1に位置する表層を、耐油性及び耐熱性の高い不織布からなる第4層40で構成しているので、第4層40によって、防音材1のうち、第4層40よりも第2側S2の各層(第1層10、第2層20、第3層30)を、油や高熱から効果的に保護することができる。これにより、防音材1の耐油性や耐熱性を向上できる。この構成は、特に、防音材1が、本例のように車両のエンジンルーム内部などの、防音材1が油及び/又は高熱に晒される可能性が高い場所に配置される場合に、特に好適である。
ただし、防音材1は、少なくとも上述の第1層10~第3層30を備えている限り、
図1の例とは異なる任意の構成を有してよい。例えば、防音材1は、第4層40を備えていなくてもよく、第3層30を最も第1側S1の表層としてもよい。あるいは、防音材1は、第4層40として、不織布以外の材料からなるものを備えていてもよい。
【0029】
つぎに、本発明の第1実施形態に係る防音材の製造方法について説明する。本実施形態に係る防音材の製造方法は、上述した第1実施形態に係る防音材1を製造するために使用されると好適なものである。以下では、上述した
図1の例の防音材1を製造する場合について、説明する。
まず、第1層10、第2層20、第3層30、第4層40を、それぞれ得る(それぞれ、第1層製造ステップ、第2層準備ステップ、第3層製造ステップ、第4層準備ステップ)。
第1層製造ステップにおいては、まず、第1ポリウレタンフォームを製造し、その後、得られた第1ポリウレタンフォームを所定の形状及び寸法に裁断することにより、第1層10を得る。第1層製造ステップで得られた第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、その全体にわたって、密度が略均一である。
第2層準備ステップにおいては、予め製造された、ポリウレタン以外の材料から構成されたシート状部材(
図1の例では、ポリエステル製の不織布)を、所定の形状及び寸法に裁断することにより、第2層20を準備する。
第3層製造ステップにおいては、まず、熱圧縮されていない第4ポリウレタンフォームを製造する。その後、得られた第4ポリウレタンフォームを、所定の形状及び寸法に裁断することにより、第4ポリウレタンフォームからなるブロック130を得る。つぎに、ブロック130を一方向に熱圧縮して薄くし、第3ポリウレタンフォームからなる第3層30を得る(
図2)。第3層製造ステップで得られた第3層30(ひいては、第3ポリウレタンフォーム)は、その全体にわたって、密度が略均一であり、また、第1層製造ステップで得られた第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)のいずれの部分よりも、高い密度を全体にわたって有するものである。
第4層準備ステップにおいては、予め製造された不織布を、所定の形状及び寸法に裁断することにより、第4層40を準備する。
第1層製造ステップ、第2層準備ステップ、第3層製造ステップ、第4層準備ステップが完了した後、第1層製造ステップで得られた第1層10の第1側S1の面に、第2層準備ステップで準備された第2層20を積層し、当該第2層20の第1側S1の面に、第3層製造ステップで得られた第3層30を積層し、当該第3層30の第1側S1の面に、第4層準備ステップで準備された第4層40を積層し、それにより、第1層10~第4層40の積層体からなる防音材1を得る(積層ステップ)。ここで、積層ステップでは、第1層10、第2層20、第3層30、第4層40の各層間を、少なくとも一部分(例えば、各層の外周端部のみ)において、固着(接着又は溶着等)すると、好適である。第1層10~第4層40どうしを溶着させる場合は、第2層20及び第4層40が、それぞれ熱溶着可能(すなわち、熱によって溶解又は軟化して、隣接する層と接着可能)な材質で構成されていると、好適である。これにより、接着剤等の他の部材を用いることなく、第1層10~第4層40どうしを溶着させることが可能である。ただし、積層ステップにおいて、第1層10~第4層40どうしを固着しなくてもよい。
なお、防音材1は、上記の製造方法とは異なる方法で製造されてもよい。
【0030】
以上、
図1の例の防音材1について説明したが、第1実施形態に係る防音材1は、
図1の例に限られない。例えば、第1実施形態において、第1層10~第4層40は、それぞれ、厚さが非均一でもよい。すなわち、第1層10~第4層40は、それぞれ、非平坦状であってもよい。
【0031】
〔第2実施形態〕
図4及び
図5は、本発明の第2実施形態に係る防音材1及びその製造方法を説明するための図面である。
図4は、本発明の第2実施形態に係る防音材1の断面を示している。本実施形態の防音材1は、上述した第1実施形態に係る防音材1に対して、熱圧縮成形(
図5)を行うことにより得られたものに相当する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る防音材の製造方法における積層体成形ステップを説明するための図面である。
図5に示すように、本発明の第2実施形態に係る防音材の製造方法においては、上述の積層ステップまでは第1実施形態と同様に行うことができる。
図5の例において、積層ステップで得られた積層体(防音材1)は、
図1の構成を有するものである。
そして、本実施形態に係る防音材の製造方法では、積層ステップの後の積層体成形ステップにおいて、積層ステップで得られた積層体(防音材1)を、熱圧縮成形するものである。熱圧縮成形は、例えば、積層体(防音材1)の第1側S1の面を成形するように構成された成形面を有する第1金型部分P1と、積層体(防音材1)の第2側S2の面を成形するように構成された成形面を有する第2金型部分P2と、を備えたプレス金型Pを用いて、積層体(防音材1)を、加熱しながら、第1金型部分P1と第2金型部分P2との間で圧縮すると、よい。これにより、第1層10が、少なくとも一部分で、熱圧縮されて、厚さが減少するとともに密度が高くなる。第2層20~第4層40については、それぞれ熱圧縮されて厚さが減少し得るが、その度合いは、第1層10に比べれば僅かである。
【0032】
積層体成形ステップの後の積層体(防音材1、
図4)において、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、上述のように、少なくとも一部が、熱圧縮された状態となっており、第1層10の厚さ及び密度は、非均一である。ただし、本実施形態では、積層体成形ステップの後において、第3層30が、第1層10の少なくとも一部(好適には、全部)の密度よりも高い密度を、全体にわたって有するものとする。言い換えれば、積層体成形ステップの後において、第1層10は、第3層30の密度(より具体的には、密度の最小値)よりも低い密度を有する部分を、有するものとする。これにより、第1層製造ステップで得られた第1層10に備えられた吸音性能が、その後の積層成形ステップによって低減するのを、抑制できる。
同様の観点から、積層体成形ステップの後の積層体(防音材1)において、第1層10の平均密度は、第3層30の平均密度よりも低いと、好適である。
また、同様の観点から、積層体成形ステップの後の積層体(防音材1)において、第1層10は、熱圧縮されていない部分を有すると、好適である。
【0033】
第2実施形態によれば、積層体成形ステップにおいて、積層体(防音材1)の熱圧縮成形を行うことにより、防音材1(積層体)を所望の形状に成形することができる。したがって、例えば、
図4に示すように、音発生源Gの防音材1側(第1側S1)の面が、非平坦状(凹凸のある形状)である場合に、防音材1(積層体)の第2側S2の面の形状を、音発生源Gの防音材1側(第1側S1)の面の形状に沿うように成形すれば、防音材1と音発生源Gとの接触面積を増大できる。これにより、防音材1の防音性能を向上できる。また、防音材1を、より安定的に、音発生源G上に設置できる。
また、積層体成形ステップの後の積層体(第2実施形態の防音材1)において、第3層30が、第1層10の少なくとも一部(好適には、全部)の密度よりも高い密度を全体にわたって有するようにすることにより、程度の差はあり得るものの、第1実施形態と同様に、防音材1の防音性能を向上することができる。
【0034】
なお、第2実施形態に係る製造方法において、積層ステップでは、第1層10~第4層40どうしを固着(接着又は溶着)せず、その後の積層体成形ステップにおいて、第1層10~第4層40どうしを、熱圧縮成形時の熱によって、少なくとも一部分で、溶着すると、好適である。これにより、熱圧縮成形と、各層どうしの溶着とを、1つの工程で行うことができるので、製造性を向上できる。
第1層10~第4層40どうしを溶着させる場合は、第2層20及び第4層40が、それぞれ熱溶着可能(すなわち、熱によって溶解又は軟化して、隣接する層と接着可能)な材質で構成されていると、好適である。これにより、接着剤等の他の部材を用いることなく、第1層10~第4層40どうしを溶着させることが可能である。
なお、第1層10~第4層40どうしを溶着させる場合、溶着させる部分では、積層体(防音材1)を大きく圧縮させて厚さを小さくしたほうが、熱が各層10~40に伝わり易く、溶着させ易くなるが、その分、主に第1層10が熱圧縮により厚さが減少し、第1層10の吸音性能、ひいては、防音材1の防音性能が、低下するおそれがある。よって、第1層10~第4層40どうしの溶着は、各層の一部分のみ(例えば、各層の外周端部のみ)で行うと、より好適である。これにより、防音材1において、第1層10~第4層40どうしが溶着されない部分を確保することができ、その分、第1層10が熱圧縮される量を低減でき、第1層10の吸音性能、ひいては、防音材1の防音性能を向上できる。
【0035】
以下に、第1及び第2実施形態において上述した防音材1の各層の寸法や物性の好適な数値範囲を説明する。これらの数値範囲は、防音材1が本例のように車両に用いられる場合に、特に好適なものである。
【0036】
上述した各例において、防音材1の厚さT1(
図1、
図4)の最大値は、防音性能を向上させる観点から、10mm以上であると好適であり、15mm以上であるとより好適である。
一方、防音材1の重量や厚さの増大を抑制する観点からは、防音材1の厚さT1の最大値は、30mm以下であると好適であり、25mm以下であるとより好適である。
【0037】
上述した各例において、防音材1の重量の増大を抑制しつつ、防音性能を向上させる観点から、第1ポリウレタンフォームからなる第1層10の少なくとも一部(好適には、全部)の厚さT10(
図1、
図4)は、第3ポリウレタンフォームからなる第3層30の厚さT30(
図1、
図4)の最大値よりも大きいと、好適である。
同様の観点から、第1層10の少なくとも一部(好適には、全部)の厚さT10は、第3層30の厚さT30の最大値の10~50倍であると、好適である。
【0038】
上述した各例において、第1層10の吸音性能を向上させ、ひいては防音材1の防音性能を向上させる観点から、第1層10の少なくとも一部(好適には、全部)の厚さT10(
図1、
図4)は、防音材1の厚さT1(
図1、
図4)の最大値の0.50倍以上が好適であり、0.70倍以上がより好適である。同様の観点から、第1層10の少なくとも一部(好適には、全部)の厚さT10は、8mm以上が好適であり、12mm以上がより好適である。
一方、第1層10ひいては防音材1の重量や厚さの増大を抑制する観点から、第1層10の厚さT10の最大値は、防音材1の厚さT1の最大値の0.90倍以下が好適であり、防音材1の厚さT1の最大値の0.86倍以下がより好適である。同様の観点から、第1層10の厚さT10の最大値は、25mm以下が好適であり、20mm以下がより好適である。
【0039】
上述した各例において、第3層30の遮音性能を向上させ、ひいては防音材1の防音性能を向上させる観点から、第3層30の厚さT30(
図1、
図4)の最小値は、防音材1の厚さT1(
図1、
図4)の最大値の0.025倍以上が好適であり、防音材1の厚さT1の最大値の0.045倍以上がより好適である。同様の観点から、第3層30の厚さT30の最小値は、0.5mm以上が好適であり、0.8mm以上がより好適である。
一方、第3層30ひいては防音材1の重量や厚さの増大を抑制する観点から、第3層30の厚さT30の最大値は、防音材1の厚さT1の最大値の0.15倍以下が好適であり、防音材1の厚さT1の最大値の0.075倍以下がより好適である。同様の軽量化の観点から、第3層30の厚さT20の最大値は、5mm以下が好適であり、3mm以下がより好適であり、1.5mm以下がさらに好適である。
【0040】
図1及び
図4の各例のように、防音材1が、不織布からなる第4層40(第1側S1の表層)を備える場合、第4層40ひいては防音材1の耐油性及び耐熱性を向上させる観点から、第4層40の厚さT40は、0.5mm以上が好適であり、1mm以上がより好適である。
一方、第4層40ひいては防音材1の重量や厚さの増大を抑制する観点から、第4層40の厚さT40は、5mm以下が好適であり、3mm以下がより好適である。
【0041】
上述した各例において、第1層10の吸音性能の向上や軽量化の観点から、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、少なくとも一部(好適には、全部)において、密度が、20kg/m3以下であると好適であり、15kg/m3以下であるとより好適である。なお、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、少なくとも一部(好適には、全部)において、密度が20kg/m3以下である場合、約5000~10000Hzの高周波の音に対する吸音性能が高くなる。このことは、特に、防音材1が車両に用いられる場合に好適である。
一方、第1層10の製造し易さの観点から、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、全部において、密度が、6kg/m3以上であると好適であり、10kg/m3以上であるとより好適である。
本明細書において、ポリウレタンフォームの「密度」は、JIS K 6400-1:2004に準拠して測定される密度(見掛け密度)を指す。
第1層10の吸音性能の向上や軽量化の観点から、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、セルどうしが連通する連続気泡構造を有する、軟質ポリウレタンフォームからなると好適である。
上述した各例において、第1層10の吸音性能の向上や軽量化の観点から、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)は、少なくとも一部(好適には、全部)において、通気性が、0.1~40ml/cm2/secであると好適であり、5~30ml/cm2/secであるとより好適である。
本明細書において、ポリウレタンフォームの「通気性」(通気量)は、JIS K 6400-7:2012に準拠して、フラジール型により、厚さ10mmにて測定されるものとする。
【0042】
図1及び
図4の例において、第3層製造ステップで第3層30が熱圧縮される前のブロック130(
図2)を構成する第4ポリウレタンフォームは、第1層製造ステップで得られた第1層10を構成する第1ポリウレタンフォームと、組成(ひいては密度や通気性)が異なる。しかし、第4ポリウレタンフォームは、第1層製造ステップで得られた第1層10を構成する第1ポリウレタンフォームと、組成(ひいては密度や通気性)が同じでもよい。
上述した各例において、第3層30の遮音性能を向上させる観点から、第4ポリウレタンフォームは、密度が、6kg/m
3以上であると好適であり、10kg/m
3以上であるとより好適である。また、同様の観点から、第4ポリウレタンフォームの密度は、第1層製造ステップで得られた第1層10を構成する第1ポリウレタンフォームの密度よりも高いと、好適である。
一方、第3層30の重量の増大を抑制する観点から、第4ポリウレタンフォームは、密度が、100kg/m
3以下であると好適であり、90kg/m
3以下であるとより好適である。
上述した各例において、第3層30の遮音性能の向上や軽量化の観点から、第4ポリウレタンフォームの通気性は、第1層製造ステップで得られた第1層10を構成する第1ポリウレタンフォームの通気性よりも低いと、好適である。また、同様の観点から、第4ポリウレタンフォームは、通気性が、0.05~30ml/cm
2/secであると好適であり、3~20ml/cm
2/secであるとより好適である。
第4ポリウレタンフォームは、セルどうしが連通する連続気泡構造を有する、軟質ポリウレタンフォームであってもよいし、セルどうしが連通せずに独立した独立気泡構造を有する、硬質ポリウレタンフォームであってもよい。
【0043】
上述した各例において、第3層30の遮音性能を向上させる観点から、第3層30を構成する第3ポリウレタンフォームは、熱圧縮されていない第4ポリウレタンフォームからなるブロック130(
図2)を、体積が、0.3倍以下になるまで熱圧縮したものであると好適であり、0.15倍以下になるまで熱圧縮したものであるとより好適である。
一方、第3層30の熱圧縮作業に掛かる時間やコストの観点から、第3層30を構成する第3ポリウレタンフォームは、第4ポリウレタンフォームからなるブロック130(
図2)を、体積が、0.05倍以上になるまで熱圧縮したものであると好適であり、0.10倍以上になるまで熱圧縮したものであるとより好適である。
上述した各例において、第3層30の遮音性能を向上させる観点から、第3層30(ひいては、第3ポリウレタンフォーム)は、密度の最小値(密度が最小になる部分の密度。以下同じ。)が、100kg/m
3以上であると好適であり、300kg/m
3以上であるとより好適である。また、同様の観点から、第3層30(ひいては、第3ポリウレタンフォーム)の密度の最小値は、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)の密度の最小値の8倍以上であると好適であり、17倍以上であるとより好適である。
一方、第3層30の重量の増大を抑制する観点から、第3層30(ひいては、第3ポリウレタンフォーム)は、密度の最大値(密度が最大になる部分の密度。以下同じ。)が、1000kg/m
3以下であると好適であり、500kg/m
3以下であるとより好適である。同様の観点から、第3層30を構成する第3ポリウレタンフォームの密度の最大値は、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)の密度の最小値の50倍以下であると好適であり、33倍以下であるとより好適である。
第3層30を構成する第3ポリウレタンフォームが以上の数値範囲を満たす場合、第3層30の遮音性能と軽量化とを好適に両立できる。
上述した各例において、第3層30の遮音性能を向上させる観点から、第3層30(ひいては、第3ポリウレタンフォーム)の通気性は、第1層10(ひいては、第1ポリウレタンフォーム)の少なくとも一部の通気性よりも低いと、好適である。また、同様の観点から、第3層30(ひいては、第3ポリウレタンフォーム)は、通気性がほとんど又は全く無いのが好適である。
なお、第3層30を構成する第3ポリウレタンフォームは、熱圧縮されていない通常のポリウレタンフォームでもよいが、熱圧縮ポリウレタンフォームであるほうが、製造時において第3ポリウレタンフォームの密度を簡単かつ確実に高くすることができるので良い。
【0044】
第1層10を構成する第1ポリウレタンフォームは、第1層製造ステップにおいて、液状ハロゲン化オレフィンを含有するポリウレタンフォーム製造用組成物を反応及び発泡させてなるものであると、好適である。これにより、第1層10の吸音効果の向上や軽量化が可能になる。
また、第3層製造ステップにおいて、第3層30が熱圧縮される前の第4ポリウレタンフォームを、液状ハロゲン化オレフィンを含有するポリウレタンフォーム製造用組成物を反応及び発泡させてなるものとしてもよい。
以下、上記ポリウレタンフォーム製造用組成物について、より詳しく説明する。
【0045】
〔ポリウレタンフォーム製造用組成物〕
上記ポリウレタンフォーム製造用組成物は、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤、及び補助発泡剤を含有し、発泡剤として水を含有し、前記水の含有量が前記ポリオール100質量部に対して4~11質量部であり、前記補助発泡剤として液状ハロゲン化オレフィンを含有し、前記液状ハロゲン化オレフィンの含有量が前記ポリオール100質量部に対して10~30質量部であるもの(以下、「ポリウレタンフォーム製造用組成物A」という。)が好ましい。
【0046】
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aによれば、密度が低く、軽量でありながら、高い吸音性を有するポリウレタンフォームが提供され、更に、製造適正にも優れる。
効果の発現の機構は不明であるが、一部は以下のように推定される。すなわち、発泡剤として水を特定量含有することにより、発泡性に優れ、密度が低く、軽量であるポリウレタンフォームが得られたと推定される。また、発泡助剤として液状ハロゲン化オレフィンを特定量含有することにより、高い吸音性が得られたものと推定される。
【0047】
<ポリオール>
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aは、ポリオールを含有する。ポリオールとしては、1分子内に水酸基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されない。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が用いられる。それらのうち、ポリエーテルポリオールは、吸音性を向上させることができる点で好ましい。更に、ポリエーテルポリオールは、ポリイソシアネートとの反応性に優れ、ポリエステルポリオールのように加水分解をしないという利点をも有している。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、多価アルコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオール、それらの変性体等が用いられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとして具体的には、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させ、更にエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させ、更にエチレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。
【0048】
ポリエーテルポリオールにはポリエーテルエステルポリオールが含まれる。係るポリエーテルエステルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールに、ポリカルボン酸無水物と環状エーテル基を有する化合物とを反応させることにより得られる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。ポリカルボン酸無水物としては、コハク酸、アジピン酸、フタル酸等の無水物が挙げられる。環状エーテル基を有する化合物(アルキレンオキシド)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。
【0049】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリオール等が用いられる。これらのポリオールは、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、水酸基の官能基数や水酸基価を変えることができる。
【0050】
これらの中でも、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールが好ましく、特に、高アルコールにプロピレンオキシド基を付加することで製造される、ポリプロピレングリコール系のポリエーテルポリオールであることが好ましい。ポリプロピレングリコール系のポリエーテルポリオールは、数平均分子量が、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは2,000以上であり、そして、好ましくは15,000以下、より好ましくは8,000以下、更に好ましくは4,000以下である。
なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定され、標準ポリスチレン換算により求められる。
【0051】
<ポリイソシアネート>
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aは、ポリイソシアネートを含有する。ポリイソシアネートは、一分子内にイソシアナト基(イソシアネート基ともいう。)を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。
具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、これらの変性物、例えば、アダクト体、イソシアヌレート体、ビュレット体等が用いられる。
これらの中でも、ポリイソシアネートが、トリレンジイソシアネート化合物をポリイソシアネート全体の70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することが更に好ましく、ポリイソシアネートの全量がトリレンジイソシアネート化合物であることが特に好ましい。
なお、トリレンジイソシアネート化合物は、2,4-トリレンジイソシアネートであっても、2,6-トリレンジイソシアネートでも、両者の混合物であってもよい。また、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのアダクト体(例えば、3官能化した化合物)であってもよいが、トリレンジイソシアネート化合物は、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、又はそれらの混合物であることが特に好ましい。
【0052】
ポリイソシアネートのイソシアネート指数(イソシアネートインデックス)は100以下又は100を超えてもよいが、好ましくは80以上であり、そして、好ましくは130以下、より好ましくは110以下である。イソシアネート指数が80以上であると、得られる発泡体の硬さが適切であり、圧縮残留ひずみ等の機械的物性に優れる。一方、130以下であると、発泡体の製造時の発熱が抑制され、発泡体の着色が抑制されるので好ましい。ここで、イソシアネート指数は、ポリオール、発泡剤としての水等のもつ活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。従って、イソシアネート指数が100を超えるということは、ポリイソシアネートがポリオール等より過剰であることを意味する。
【0053】
<触媒>
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aは、触媒を含有する。触媒はポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応、発泡剤としての水とポリイソシアネートとの泡化反応などを促進するためのものであり、従来公知の化合物から、適宜選択すればよい。
具体的には、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物(金属触媒)、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。
【0054】
この触媒としては、その効果を高めるためにアミン触媒と金属触媒とを組合せて用いることが好ましい。アミン触媒の含有量は、ポリオール100質量部当たり、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。アミン触媒の含有量が上記範囲内であると、ウレタン化反応及び泡化反応を十分にかつバランスよく促進させることができる。
また、金属触媒の含有量は、ポリオール100質量部当たり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下である。金属触媒の含有量が上記範囲内であると、ウレタン化反応と泡化反応とのバランスがよく、発泡を良好に行うことができ、発泡体のひずみ特性に優れる。
【0055】
<発泡剤>
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aは、発泡剤を含有し、発泡剤として水を含有する。発泡剤は、ポリウレタン樹脂を発泡させて、ポリウレタンフォームとするためのものである。
水の含有量は、ポリオール100質量部に対して、4~11質量部である。水の含有量がポリオール100質量部に対して4質量部未満であると、泡化反応により発泡が不足し、発泡体の密度が高くなる。一方、水の含有量がポリオール100質量部に対して11質量部を超えると、水とポリイソシアネートとの反応熱が高くなり、発泡時の温度が高くなり、制御が難しく、また、発泡体内部のやけ(スコーチ)が発生しやすくなる。
水の含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは4.5質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、更に好ましくは5.5質量部以上であり、そして、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは9.0質量部以下、更に好ましくは8.0質量部以下である。
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aは、水以外の発泡剤を含有していてもよいが、発泡剤として水のみを含有することが好ましい。なお、水以外の発泡剤を含有する場合、水以外の発泡剤の含有量は、水の含有量の50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、水以外の発泡剤を含有していないことが特に好ましい。
【0056】
<整泡剤>
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aは、整泡剤を含有する。整泡剤は、発泡剤によって行われる発泡を円滑に進行させるために用いられる。そのような整泡剤としては、軟質ポリウレタン発泡体を製造する際に通常使用されるものを用いることができる。整泡剤として具体的には、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。
この整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部当たり、好ましくは1.0~8.0質量部である。この含有量が1.0質量部以上であると、発泡体原料の発泡時における整泡作用が十分に発現され、良好な発泡体を得ることできる。一方、8.0質量部以下であると、整泡作用が適当であり、セルの連通性が適切な範囲に保持される。
【0057】
整泡剤として、非反応性シリコーン及び反応性シリコーンを含有することが好ましい。両者を併用することにより、優れた発泡性が得られる。ここで、反応性シリコーンとは、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を、主鎖末端又は側鎖に有するシリコーン化合物(ポリシロキサン化合物)をいう。
反応性シリコーンは、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、又はメチルハイドロジェンシリコーン等のシリコーン化合物の側鎖又は主鎖末端に、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される反応性基、又は前記反応性基を有する基を導入した化合物である。これらの中で、反応性基として水酸基又はカルボキシ基を有する反応性シリコーンが好ましく、カルボキシ基を有する反応性シリコーンがより好ましい。
反応性シリコーンとしては、市販されている製品を使用してもよく、信越シリコーン(株)、東レダウコーニング社、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社などの各社製の各種反応性シリコーンが例示され、具体的には、カルボキシ基を有する反応性シリコーンとしては、CF1218(東レダウコーニング社製)、X22-3701(信越シリコーン(株)製)が例示される。また、水酸基を有する反応性シリコーンとしては、SF 8427、BY 16-201、SF 8428(以上、東レダウコーニング社製)、X-22-4039、X-22-4015(以上、信越シリコーン(株)製)が例示される。
非反応性シリコーンは、反応性基を有していない限り特に限定はなく、ポリエーテル変性、アラルキル変性、長鎖アルキル変性等の変性非反応性シリコーンであってもよい。非反応性シリコーンとしては、市販されている製品を使用してもよく、信越シリコーン(株)、東レダウコーニング社、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社などから市販されている各種製品から適宜選択すればよい。
【0058】
非反応性シリコーンの含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは2.0質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは3.0質量部以上、より更に好ましくは3.5質量部以上であり、そして、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下である。非反応性シリコーンの含有量が上記範囲内であると、吸音性に優れるポリウレタンフォームが得られるので好ましい。
また、反応性シリコーンの含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上であり、そして、好ましくは3.0質量部以下である。反応性シリコーンの含有量が上記範囲内であると、吸音性に優れるポリウレタンフォームが得られるので好ましい。
【0059】
<補助発泡剤>
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aは、補助発泡剤を含有する。補助発泡剤とは、発泡助剤とも呼ばれ、発泡剤による発泡を補助し、発泡体の密度を調整するためのものである。補助発泡剤として、ポリウレタンフォーム製造用組成物Aでは、液状ハロゲン化オレフィンを含有する。
ここで、「液状ハロゲン化オレフィン」とは、10℃において液状である、すなわち、沸点が10℃を超えるハロゲン化オレフィンを意味する。ハロゲン化されるオレフィンとしては、炭素数2~10のα-オレフィンであることが好ましく、炭素数2~6のα-オレフィンであることがより好ましく、炭素数3~5のα-オレフィンであることが更に好ましく、炭素数3又は4のα-オレフィンであることが特に好ましく、プロペンであることが最も好ましい。
液状ハロゲン化オレフィンは、下記式1で表される化合物であることが好ましい。
【0060】
【化1】
(式1中、Xはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、gは0~5の整数を表し、hは1~6の整数を表し、iは0~5の整数を表し、g+h+i=6を満たす。)
【0061】
式1中、Xはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
gは0~5の整数を表し、1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。hは1~6の整数を表し、2~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。iは0~5の整数を表し、0~4であることが好ましく、0~2であることがより好ましい。
【0062】
式1で表される化合物は、特に限定されず、これらはシス体又はトランス体であってよく、また、混合物であってもよい。具体的には、例えば、3-クロロペンタフルオロプロペン、2-クロロペンタフルオロプロペン、1-クロロペンタフルオロプロペン、1,1-ジクロロテトラフルオロプロペン、1,2-ジクロロテトラフルオロプロペン、1,3-ジクロロテトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2-トリフルオロプロペン、及び以下に例示するビニレン基を有するハロゲン化プロペンである。
【0063】
式1で表される化合物は、ビニレン基(-CH=CH-)を有する化合物であることが好ましい。具体的には、3,3,3-トリフルオロプロペン、3-ブロモ-3,3-ジフルオロプロペン、3-クロロ-3,3-ジフルオロプロペン、3-フルオロプロペン、又は下に例示する当該化合物である。
具体的には、フッ素以外のハロゲンが塩素であるCF3-mClmCH=CY(mは0~3の整数、Yはフッ素原子又は塩素原子を表す。)で表される化合物であることが好ましく、その際、フッ素化プロパンとしてはCF3-nClnCH2CFYHn(nは0~3の整数、Yはフッ素原子又は塩素原子を表す。)で表されるメチレン基(-CH2-)を有するものが得られる。
【0064】
式1で表される化合物としては、R1-CH=CH-R2(式中、R1はトリハロメチル基、R2はハロゲンを表す。)で表されるフッ素化プロペンであることがより好ましい。具体的には、3,3,3-トリクロロ-1-フルオロプロペン、1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロペン、3,3-ジクロロ-1,3-ジフルオロプロペン、1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペン、3-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン、3-ブロモ-1,3,3-トリフルオロプロペン、1-ヨード-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンなどが例示できる。上記のフッ素化プロペンのうち、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス体又はシス体)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス体又はシス体)が好ましく、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス体又はシス体)がより好ましく、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(沸点19℃)が更に好ましい。
【0065】
上記液状ハロゲン化オレフィンは、市販されている製品を使用してもよく、例えば、Solstice LBA(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、ハネウェル社製)が例示される。また、公知の方法に従って合成してもよく、例えば、特開2000-7591号公報等に記載の方法が例示される。
【0066】
液状ハロゲン化オレフィンの含有量は、ポリオール100質量部に対して、10~30質量部である。液状ハロゲン化オレフィンの含有量が、ポリオール100質量部に対して10質量部未満であると、補助発泡剤の効果が十分に発揮されず、発泡体の見掛け密度が高くなると共に、得られるポリウレタンフォームが硬くなる。一方、30質量部を超えると、過剰な発泡により発泡体の見掛け密度が低くなりすぎ、また、樹脂骨格の強度が低下し、発泡体の機械的強度が低下する。
液状ハロゲン化オレフィンの含有量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは11質量部以上、より好ましくは12質量部以上、更に好ましくは13質量部以上であり、そして、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは18質量部以下である。
液状ハロゲン化オレフィンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用する場合には、液状ハロゲン化オレフィンの総量を上記範囲とすることが好ましい。
【0067】
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aは、液状ハロゲン化オレフィン以外の補助発泡剤を含有していてもよい。液状ハロゲン化オレフィン以外の補助発泡剤としては、液化炭酸ガス、ハロゲン化アルキル等が挙げられ、ハロゲン化アルキルとしては、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン等が例示される。
補助発泡剤中の液状ハロゲン化オレフィンの含有量は、補助発泡剤全体の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、補助発泡剤として液状ハロゲン化オレフィンのみを含有することが最も好ましい。
【0068】
<その他の原料成分>
ポリウレタンフォーム製造用組成物Aにはその他必要に応じて、架橋剤、難燃剤、充填剤、安定剤、着色剤、可塑剤等が常法に従って配合される。架橋剤としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類などが挙げられる。難燃剤としては、トリス-ジクロロプロピルホスフェート、トリス-クロロエチルホスフェート、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール等が挙げられる。
【0069】
〔ポリウレタンフォーム製造用組成物Aを用いたポリウレタンフォームの製造〕
前記ポリウレタンフォーム製造用組成物Aの各成分(原料)を常法に従って反応及び発泡させることによりポリウレタンフォーム(第1ポリウレタンフォーム、第3ポリウレタンフォーム)が製造される。ポリウレタンフォームを製造する場合には、ポリオールとポリイソシアネートとを直接反応させるワンショット法、又はポリオールとポリイソシアネートとを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオールを反応させるプレポリマー法のいずれも採用される。また、常温大気圧下に反応及び発泡させるスラブ発泡法及び成形型内にポリウレタン発泡体の原料(反応混合液)を注入、型締めして型内で反応及び発泡させるモールド発泡法のいずれの方法であってもよいが、スラブ発泡法のほうが、ポリウレタンフォームの軽量化を実現しやすいので好ましい。
【0070】
ポリウレタンフォームの原料の反応は複雑であり、主体としては、ポリオールとポリイソシアネートとの付加重合によるウレタン化反応、その反応生成物等とポリイソシアネート類との架橋反応及びポリイソシアネート類と発泡剤としての水との泡化反応である。
【実施例】
【0071】
本発明の防音材の比較例1、実施例1を、実験により評価したので、
図6~
図7を参照しつつ、以下に説明する。
【0072】
実施例1の防音材1は、
図1の例と同じ4層の積層構造からなるものである。より具体的に、実施例1の防音材1は、第1層10~第4層40がいずれも平板状をなしている。第1層10は、熱圧縮されていないポリウレタンフォームからなり、密度が12kg/m
3である。第2層20と第4層40とは、それぞれ、ポリエステル製の不織布からなるものである。第3層30は、密度が35kg/m
3の熱圧縮されていないポリウレタンフォームのブロックを、厚さ(ひいては体積)が0.1倍になるまで厚さ方向に熱圧縮したものであり、密度が350kg/m
3である。実施例1の防音材1は、全体の厚さT1が22mmである。
一方、比較例1の防音材1’は、
図7に示す4層の積層構造からなるものである。より具体的に、比較例1の防音材1’は、第1層10’~第4層40’がいずれも平板状をなしている。第1層10’と第3層30’とは、それぞれ、熱圧縮されていないポリウレタンフォームからなり、密度が12kg/m
3である。第2層20’は、密度が35kg/m
3の熱圧縮されていないポリウレタンフォームのブロックを、厚さ(ひいては体積)が0.1倍になるまで厚さ方向に熱圧縮したものであり、密度が350kg/m
3である。第4層40’は、ポリエステル製の不織布からなるものである。比較例1の防音材1’は、全体の厚さが22mmである。
実施例1、比較例1を用いて、音圧試験を行った。
音圧試験は、無響室において試験装置を用いて実施した。試験装置は、アルミボックスの中で音を発生させるように構成されており、アルミボックスの上側に離間してマイクが配置されたものであった。各例の防音材1、1’の音圧試験にあたっては、アルミボックスの上部に防音材1、1’を配置した状態で、アルミボックスの中で音を発生させ、マイクにより音圧(dB)を測定した。
音圧試験の結果を
図6に示す。
図6において、横軸は周波数(Hz)、縦軸は音圧(dB)である。音圧は、防音材の吸音性能及び遮音性能を合わせた防音性能を表す指標である。音圧は、値が低いほど、防音材の吸音性能及び遮音性能を合わせた防音性能が高いことを表している。
図6の結果から判るように、実施例1は、比較例1に比べ、幅広い周波数範囲において、音圧が低くなり、ひいては、高い防音性能を発揮した。なお、比較例1は、1600Hz付近の音に対し、音圧が高くなった。これは、比較例1における第1層10’~第3層30’を構成するポリウレタンフォームが共振し、音が増幅されたことによるものと考えられる。一方、実施例1は、1600Hz付近の音に対しても、比較例1に比べて音圧が低かった。これは、第1層10と第3層30との間に配置された、ポリエステル製の不織布からなる第2層20によって、第1層10及び第3層30を構成するポリウレタンフォームの共振が抑制されたことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の防音材は、任意の場所や物に用いられてよいが、車両に用いられると好適なものである。
【符号の説明】
【0074】
1、1’:防音材、 10、10’:第1層(第2側の表層)、 20、20’:第2層、 30、30’:第3層、 40、40’:第4層(第1側の表層)、 130:第4ポリウレタンフォームからなるブロック、
P:プレス金型、 P1:第1金型部分、 P2:第2金型部分