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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】避妊用組成物および避妊方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/585 20060101AFI20221116BHJP
   A61K 31/567 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 15/18 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61K31/585
A61K31/567
A61P15/18
A61P9/10
A61P43/00 121
A61K31/57
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019103937
(22)【出願日】2019-06-03
(62)【分割の表示】P 2017152175の分割
【原出願日】2017-08-07
(65)【公開番号】P2019163318
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】16183025.2
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】P 2017529086
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年5月3日発行のContraception(2016年)94(4)巻366頁-373頁に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年9月1日発行のContraception(2017年)95巻140頁-147頁に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年5月5日開催の「第14回避妊およびリプロダクティブ・ヘルス(ESC)の欧州学会」および「第2回グローバル会議」にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年5月5日開催の「第14回避妊およびリプロダクティブ・ヘルス(ESC)の欧州学会」および「第2回グローバル会議」にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】517186503
【氏名又は名称】エステトラ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ジョス モード
(72)【発明者】
【氏名】ロージン グルヴァディ
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】The European Journal of Contraception and Reprodutive Health Care,Vol.20,2015年,p.463-475
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
避妊方法に使用するための、ドロスピレノン及びエステトロールまたはエステトロール一水和物を含む組成物であり、かつ静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクの同様の効力の他の避妊治療と比較した低減に使用するための組成物であって、前記組成物が1日量として15mg~25mgのエステトロールまたはエステトロール一水和物を含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、1日量として0.5mg~10mg、好ましくは1mg~4mg、より好ましくは約3mgのドロスピレノンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、1日量として15mgから20mg、好ましくは約15mgのエステトロールまたはエステトロール一水和物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、1日量として約15mgのエステトロールを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、1日量として約3mgのドロスピレノンを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
VTEリスクが、VTEの数、頻度および重症度で評価され、かつ同様の効力の他の避妊治療と比較して低減されている、請求項1からのいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
VTEリスクが、代理VTEマーカー、好ましくはD-ダイマー、性ホルモンー結合グロブリン(SHBH)、プロテインC活性またはプロテインS活性、より好ましくはSHBGによって評価される、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物がさらにプロゲストゲン成分を含み、前記プロゲストゲン成分がプロゲステロン(progesterone)、デソゲストレル(desogestrel)、ゲストデン(gestodene)、ジエノゲスト(dienogest)、レボノルゲストレル(levonorgestrel)、ノルゲスチメート(norgestimate)、ノルエチステロン(norethisterone)、トリメゲストン(trimegestone)、ジドロゲステロン(dydrogesterone)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、約7日の無投与間隔、好ましくは約4日の無投与間隔との組み合わせた投与方法で使用される、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、経口投与単位として処方され、好ましくは投与単位が1日投与単位に対応するように処方される、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
避妊方法に使用するための及び静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクの同様の効力の他の避妊治療と比較した低減に使用するための医薬の製造のための、ドロスピレノン及び1日量として15mg~25mgのエステトロールまたはエステトロール一水和物を含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトにおいて月経困難症の症状を軽減する方法であって、前記ヒトに、有効量のエストロゲン成分を投与することを含む方法に関する。より詳しくは、エストロゲン成分は、本明細書においてさらに定義されるようなエステトロール成分であり、方法は、現在利用可能な方法と比較して、都合よい副作用プロフィールを享受する。
【背景技術】
【0002】
月経困難症は、月経の際に起こる再発性の痙攣性の下腹部痛の存在を特徴とする医学的状態である。ほとんどの女性は、青年期の間、普通、最初の月経期の4~5年以内に月経困難症を患い始める。有痛性期間は、女性が加齢するにつれ、あまり見られなくなる。臨床目的で、月経困難症は、2つの広いカテゴリー、原発性および続発性月経困難症にわけられる。
【0003】
原発性月経困難症とは、これらの症状を説明できる実証可能な疾患の不在下で、月経の際に生じる再発性の痙攣性下腹部痛の存在を指す。
【0004】
続発性月経困難症は、同一の臨床特徴を有するが、子宮内膜症、子宮腺筋症または子宮筋腫などの、その症状を説明できる障害を有する女性において生じる。
【0005】
原発性月経困難症
生殖可能年齢の女性の50~90パーセントは、有痛性の月経期間の経験を述べることが知られている。これらの女性の大部分は、若く、原発性月経困難症を有する。原発性月経困難症の有病率は、年齢が進むにつれ減少する(非特許文献1)。
【0006】
原発性月経困難症は、プロスタグランジン合成および代謝の変更と関連していた。月経の開始時の子宮内膜脱落から放出されるプロスタグランジンが、収縮の誘導において主要な役割を果たす(非特許文献2)。
【0007】
疼痛は、月経出血の発生の1から2日前に、またはそれとともに始まり、次いで、12~72時間にわたって徐々に減少する。月経周期のすべてではない場合も、ほとんどにおいて再発性に起こる。疼痛は、普通、痙攣性で、断続的に強いが、持続的な鈍痛である場合もある。普通、下腹部および恥骨上領域に限定される。疼痛は、普通、正中線上で最も強いが、一部の女性は、重度の背痛および/または大腿痛も有する。
【0008】
疼痛の重症度は、軽度から重度に及ぶ(以下の表1)(非特許文献3)。
【0009】
本明細書において、「月経困難症症状グレード」は、表1に提示された評価を適用することによって得られたスコアに対応する。
【0010】
【表1】
【0011】
原発性月経困難症と関連する身体所見がないこと、および原発性月経困難症は画像化研究での任意の検査上の異常または異常な所見と関連しないことを注記することは重要である。したがって、診断は、患者が、疼痛を説明し得るその他の障害のエビデンスを全く有さないことを確認しなければならない。特に、中でも子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、卵巣嚢胞などの障害は、続発性月経困難症と関連していた。
【0012】
原発性月経困難症のための治療選択肢
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が、療法の第一選択と考えられる(非特許文献4-非特許文献5-非特許文献6)。
【0013】
NSAIDは、月経の開始時に開始され、月経周期の最初の1から2日間または痙攣性疼痛の通常の期間の間継続されなければならない。重度の症状を有する患者は、月経の開始の1から2日前にNSAIDの摂取を開始しなければならない。
【0014】
NSAIDに応答できないまたは許容できない患者に、混合型経口避妊薬(combined oral contraceptive pill)(COC)が与えられる場合もある(非特許文献7)。COCは、排卵を抑制し、それによって、子宮プロスタグランジンレベルを低下させることによって月経痛を防ぐ。さらなる機序は、使用の数ヶ月後の月経流量の低減に起因し得る。
【0015】
性的に活発な女性では、COCは、二重の目的:妊娠および月経困難症の両方の予防に役立つので、療法の第一選択に考えられ得る。
【0016】
原発性月経困難症の治療のためのエストロゲン-プロゲスチン避妊薬の無作為化試験の系統的総説は、治療の有意な利益を報告した(2.99のプールされたOR、95% CI 1.76~5.07)(非特許文献8)。
【0017】
2、3の試験は、原発性月経困難症の治療のための種々の用量のエストロゲンを比較し;概説は、疼痛軽減が、低(≦35mcg)および中程度(>35mcg)エストロゲン用量については同様であり、種々の丸剤調製物の間で効力に明確な相違はなかったと結論付けた。
【0018】
しかし、観察研究およびその他の無作為化試験から得られたさらなるデータは、月経困難症の治療のための極めて低用量のエストロゲン丸剤の効力を実証した(非特許文献9-非特許文献10-非特許文献11-非特許文献12-非特許文献13)。
【0019】
しかし、すべてのこれらのアプローチは、エチニルエストラジオール(EE)などの合成エストロゲンを使用するCOCに頼るものであった。このような場合には、血栓塞栓症、体液貯留、悪心、腹部膨満、胆石症、頭痛および胸部疼痛などの望ましくない副作用の(用量依存性の)リスクがある。
【0020】
エストロゲンが、アンジオテンシノーゲン、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)、セルロプラスミン、副腎皮質ステロイド結合グロブリン(CBG)、一部の血液凝固因子、血液凝固阻害剤または線維素溶解マーカーなどの肝臓における種々のタンパク質の合成の調節に関与するという事実は、特に重要である。EEなどの強力なエストロゲンの影響下にあるこれらの止血マーカーの変化は、血液凝固促進および抗血液凝固因子間の不均衡を作り出すように集合的に寄与し得、これは静脈血栓塞栓症(VTE)事象のリスクを増強し得る。
【0021】
SHBG血漿レベルは、肝臓細胞によるこれらのタンパク質の合成に対するエストロゲンの影響の信頼できるマーカーである。これは、特定のCOCによって誘導されるSHBGのレベルと、そのCOCと関連するVTEのリスク間に相関が存在し得ることを意味する(非特許文献14)。
【0022】
十分な数の対象で実施されたコホート研究が、特定のCOCを用いた場合のVTEのリスクを評価することが必要とされるが、種々の止血性マーカーおよびキャリヤータンパク質(SHBGなど)が、限定された数の対象で、このリスクを推定するために測定され得る。
【0023】
したがって、一方では、可能な限り少ない副作用しか有さないが、他方では、月経困難症の管理において極めて効率的であるとわかる治療アプローチの必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【文献】Sundell G.ら、Br J Obstet Gynaecol 1990年;第97巻:588頁
【文献】Ylikorkala O、Dawood MY.; Am J Obstet Gynecol 1978年;第130巻:833頁
【文献】Andersch B、Milsom I.; Am J Obstet Gynecol 1982年;第144巻:655頁
【文献】Proctor M、Farquhar C; Clin Evid 2003年;1994頁
【文献】Zhang WY、Li Wan Po A.; Br J Obstet Gynaecol 1998年;第105巻:780頁
【文献】French L.;Am Fam Physician 2005年;第71巻:285頁
【文献】Davis ARら;Obstet Gynecol 2005年;第106巻:97頁
【文献】Wong CLら;Cochrane Database Syst Rev 2009年;CD002120
【文献】Davis ARら;Obstet Gynecol 2005年;第106巻:97頁
【文献】Callejo Jら;Contraception 2003年;第68巻:183頁
【文献】Winkler UHら;Contraception 2004年;第69巻:469頁
【文献】Endrikat Jら;Contraception 1995年;第52巻:229頁
【文献】Hendrix SL、Alexander NJ;Contraception 2002年;第66巻:393頁
【文献】Odlind Vら;Acta Obstet Gynecol Scand 2002年;第81巻:482頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、ヒトにおいて月経困難症の症状を軽減する方法であって、前記ヒトに、有効量のエストロゲン成分を投与することを含む方法に関する。より詳しくは、エストロゲン成分は、本明細書においてさらに定義されるようなエステトロール成分であり、方法は、現在利用可能な方法と比較して、都合よい副作用プロフィールを享受する。
【0026】
本発明の一態様では、治療に関連する副作用の数、頻度および重症度のうち1つまたは複数が、同様の効力の他の月経困難症治療と比較して低減される。
【0027】
本発明の一実施形態では、VTE事象の数、頻度および/または重症度が、同様の効力の他の月経困難症治療と比較して低減される。
【0028】
本発明の別の実施形態では、本明細書においてさらに定義されるような、通常の範囲の境界を超える止血性変化は、本発明の組成物の投与の際に起こらない。
【0029】
本発明のさらなる実施形態では、頭痛の数、頻度および/または重症度が、同様の効力の他の月経困難症治療と比較して低減される。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態では、胸部疼痛事象の数、頻度および/または重症度が、同様の効力の他の月経困難症治療と比較して低減される。
【0031】
本発明の一実施形態では、方法は、有効量のエストロゲン成分の、およびプロゲストーゲン(progestogenic)成分の投与を含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、エストロゲンおよびプロゲストーゲン(progestogenic)成分が、単一投与単位中に含まれる。さらなる実施形態では、投与単位は、1日投与単位である。
【0033】
さらなる実施形態では、プロゲストーゲン(progestogenic)成分は、ドロスピレノンであり、その成分は、0.5mg~10mgの1日用量で、好ましくは、1mg~4mgの1日用量で使用される。
【0034】
なおさらなる実施形態では、エストロゲン成分は、1mg~40mgの1日用量で、好ましくは、5mg~25mgの1日用量で、さらにより好ましくは、10mg~20mgの1日用量で使用される。特定の実施形態では、エストロゲン成分は、エステトロール一水和物である。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、エストロゲン成分は、約15mgの1日用量のエステトロール一水和物であり、プロゲストーゲン(progestogenic)成分は、約3mgの1日用量のドロスピレノンである。
【0036】
本方法は、天然エストロゲン(すなわち、自然界で見られる)および生体エストロゲン(すなわち、ヒト身体において天然に生じる)であるエストロゲン成分を使用する。
【0037】
生体エストロゲンは、胎児および女性の身体中に天然に存在するので、特に、このようなエストロゲンの外因性投与に起因する血清レベルが、天然に存在する濃度を実質的に超えない場合には、良好な耐容性および安全性プロフィールが観察される。この良好な耐容性の直接的結果は、本発明の方法を用いた場合に得られる、他の方法と比較して都合よい副作用プロフィールである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
本文書を通じて使用される、用語「エストロゲン成分」は、in vivoでエストロゲン反応を引き起こすことが可能である物質、ならびに本発明に従って使用される場合にin vivoでこのようなエストロゲン成分を遊離させることが可能である前駆体を包含する。エストロゲン成分がこのような反応を引き起こすには、それらは、普通、エストロゲン受容体と結合しなければならず、受容体は、哺乳類身体内の種々の組織において見られる。
【0039】
本発明のエストロゲン成分は、好ましくは、エステトロール成分である。本文書を通じて使用される、用語「エステトロール成分」は、エステトロール;ヒドロキシル基の少なくとも1つの水素原子が、1~25個の炭素の炭化水素カルボン酸、スルホン酸またはスルファミン酸のアシルラジカルによって置換されているエステトロールのエステル;およびそれらの組合せからなる群から選択される物質を包含する。さらにより好ましくは、エステトロール成分は、エステトロール (エステトロール水和物を含む)である。最も好ましくは、投与単位中に含有されるエステトロール成分は、エステトロール一水和物である。
【0040】
用語「プロゲストーゲン(progestogenic)成分」は、in vivoでプロゲストーゲン(progestogenic)反応を引き起こすことが可能である物質またはin vivoでこのような物質を遊離させることが可能である前駆体として定義される。通常、プロゲストーゲン(progestogenic)成分は、プロゲストーゲン受容体と結合可能である。
【0041】
パラメータ、量、時間的な期間などといった測定可能な値に言及する「約」とは、本明細書において、開示される本発明においてこのような変数が実施するのに適当である限り、特定の値の、および特定の値から+/-10%またはそれ未満の、より好ましくは、+/-5%またはそれ未満の、さらにより好ましくは、+/-1%またはそれ未満の変数を包含するものとする。しかし、修飾語句「約」が言及する値は、それ自体も具体的に開示されることは理解されなければならない。
【0042】
用語「有効量」とは、生理学的効果を得るのに必要な量を指す。生理学的効果は、1用量によってまたは反復用量によって達成され得る。特に、「有効量」とは、月経困難症の症状を低減、排除、治療または制御するのに有効である量を指す。用語「制御すること」は、月経困難症の進行の減速、妨害、停止または中断があり得るすべてのプロセスを指すものとするが、必ずしも、月経困難症の完全排除を示さず、予防的処置および慢性使用を含むものとする。
【0043】
実施例5に示されるように、月経困難症の症状を軽減する本方法は、使用される低い1日投与量にもかかわらず、驚くほど有効であるとわかった。理論に捉われようとは思わないが、本発明者らは、本方法の優位性は、幾分かは、実施例1に提示される臨床結果において示されるような、月経困難症を自然に緩和することが可能であるエステトロール成分の驚くべき効果によると考えている。
【0044】
実際、エストロゲンの低用量の投与は、月経随伴性片頭痛を低減すると知られているが、月経困難症については、このような効果はこれまで報告されていないということは事実である。エステトロール成分は月経困難症の症状を軽減することが可能であるという本知見の特有性は、エステトロール成分が本発明の方法に従って単独で投与された場合に、それらの症状を低減することを可能にする。方法の1つの特定の実施形態では、エステトロール成分は、以下にさらに記載されるように、本発明の治療の方法のプロゲスチン不含間隔の間に単独で投与される。
【0045】
相当な数の科学刊行物が、エステトロールを弱いエストロゲンと特性決定したことは、一層予期しないことであり、したがって、実施例において報告される臨床治験において使用された用量では、月経困難症症状の管理に対してこのような正の効果が観察されると予見されなかった。
【0046】
やはり、理論に捉われようとは思わないが、本発明者らは、本方法の優位性はまた、特に、多数のCOCにおいて使用されるエストロゲンであるエチニルエストラジオールのより強い刺激効果と比較して、子宮内膜に対してエステトロール成分が有する軽度の刺激効果によると考えている。結果として、子宮内膜の厚みが、本発明の組成物の投与の際に強く減少することがわかった。薄い子宮内膜は、相対的に少量のアラキドン酸、ほとんどのプロスタグランジン合成の基質を含有する。子宮内膜におけるこれらの変化の結果として、本発明の組成物は、月経時の月経流量および子宮収縮の両方を減少させ、それによって、月経困難症を低減する。
【0047】
さらに、本発明の方法は、患者の100%において排卵を抑制するとわかり、排卵の抑制は、子宮プロスタグランジンレベルを低下させていく。
【0048】
比較研究において、驚くべきことに、エステトロールの、プロゲストーゲン(progestogenic)成分としてのドロスピレノンとの組合せは、月経困難症の症状の管理で、エステトロールの、プロゲストーゲン(progestogenic)成分としてのレボノルゲストレルとの組合せよりも有効であるとわかった。これは、実施例2において報告される臨床治験の結果によって示される。
【0049】
本エステトロール成分の別の重要な利益は、その他の薬物との相互作用(薬物間相互作用)に対して相対的に非感受性であることに由来する。特定の薬物が、エチニルエストラジオールなどのエストロゲンの効力を低下させ得ること、およびその他の薬物がそれらの活性を増強し、副作用の増大の可能性をもたらし得ることは周知である。同様に、エストロゲンは、その他の薬物の代謝を干渉し得る。一般に、エストロゲンに対するその他の薬物の効果は、これらのエストロゲンの吸収、代謝または排出への干渉によるが、その他の薬物に対するエストロゲンの効果は、代謝経路についての競合による。
【0050】
エストロゲン-薬物相互作用の臨床上最も重要な群は、エストロゲン血漿レベルを治療レベル未満に低下させ得る肝臓ミクロソーム酵素を誘導し得る薬物(例えば、抗痙攣剤;フェニトイン、プリミドン、バルビツール酸、カルバマゼピン、エトスクシミドおよびメトスクシミド;リファンピンなどの抗結核剤;グリセオフルビンなどの抗真菌剤)を用いた場合に生じる。本エストロゲン物質は、ミクロソーム肝臓酵素(例えば、P450類)の上方制御および下方制御に左右されず、また、その他のP450基質との競合に対して感受性ではない。同様に、それらは、その他の薬物の代謝において大幅に干渉しない。
【0051】
特に、10μmol/l用量の高濃度のエステトロールは、エストラジオールとは異なり、主要なシトクロムP450酵素(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6およびCYP3A4)を阻害しない(10%未満)。実際、エストラジオールは、それぞれ、63%および19%のCYP2C19およびCYP1A2に対する実質的な阻害効果を発揮する。同様に、多数のCOCにおいて使用されるエストロゲンであるエチニルエストラジオールは、それぞれ、82%および45%のCYP2C19およびCYP3A4に対する実質的な阻害効果を発揮する。
【0052】
上記の観察結果は、本発明のエステトロール成分が薬物間相互作用をほとんど受けない理由を説明するのに役立ち、従って、極めて一貫性のある、すなわち予測通りの影響をもたらす。したがって、本発明のエストロゲン物質の効力は、高度に信頼できる。
【0053】
さらに、天然に存在するエストロゲンの終末相半減期は、2~14時間の範囲であり、エステトロールは、31.7時間の終末相半減期を特徴とする。結果として、本発明の方法におけるエステトロールの使用は、治療による受容体の24時間超の被覆を可能にする。この薬物動態特性は、ユーザーによる低い治療コンプライアンスの場合でさえ製品の効力を増強する。
【0054】
エステトロール(E4)に、3mgのドロスピレノン(DRSP)または150μgのレボノルゲストレル(LNG)が伴われる場合には、出血プロフィールおよび周期制御が、生理学的エストロゲン、すなわち、吉草酸エストラジオール(E2V)またはエストラジオール(E2)を使用するその他の混合型経口避妊薬と比較して、改善されることは留意されなければならない。
【0055】
E2Vおよびデソゲストレル(DSG)を含有する市販の四相性の混合型経口避妊薬と比較して、種々のE4/DRSPまたはE4/LNG組合せの出血パターンおよび周期制御を評価する研究では、15mgのE4/DRSPの組合せおよび20mgのE4/LNGの組合せは、両方とも予定外の出血/斑点の日の、比較物(comparator)よりも低い発生率と関連していた。さらに、E4含有調製物を用いた場合には、特に、E4にDRSPが伴われる場合には、消退出血がないこと(無月経とも呼ばれる)は、比較物を用いた場合よりもかなり少なかった。最後に、周期による予定外の出血/斑点のあった日の平均数も、E2V/DNG調製物を用いた場合と比較して15mgのE4/DRSPの組合せを用いた場合にかなり少なかった。これはまた、酢酸ノメゲストロール(NOMAC)を伴う、エストロゲンとしてE2を含有する市販の混合型経口避妊薬で公的に入手されたデータと比較した場合も同様であった。
【0056】
さらに、現在市販されているエストロゲン(エチニルエストラジオール(EE)、E2、E2V、コンジュゲート型ウマエストロゲン)の毎日使用は、トリグリセリドレベルの用量比例性増大を伴う。ヒト身体における、血流中の高レベルのトリグリセリドは、アテローム性動脈硬化症と、さらに進めると、心疾患および卒中のリスクと関連づけられている。現在入手可能なエストロゲンとは反対に、E4は、より高い投与量でさえトリグリセリドレベルを最小にしか増大しない。
【0057】
最後に、混合型避妊薬の使用は、静脈血栓塞栓症事象(VTE)のリスクの増大を伴ってきた。非使用者と比較して、第2世代のCOCの使用は、VTEのリスクを2倍にし、第3および第4のCOCの使用は、リスクを4倍にする。特定の混合型避妊薬の使用と関連しているVTEの絶対リスクは、極めて大きな疫学的治験の際にのみ評価され得る。しかし、欧州医薬品庁(European Medicinal Agency)によって要望されるように、VTEリスクのいくつかの代理マーカーが、リスクを推定するためのより小さい臨床設定において測定され得る。
【0058】
実施例4において示されるように、E4およびDRSPまたはLNGの組合せを用いて得られた臨床結果から、VTEの代理マーカーの変化は、Yaz(登録商標)(20μg EEおよび3mg DRSPの組合せ)を用いた場合に観察された変化と比較して最小であった。DRSPは、合成エストロゲンEEと組み合わされる場合にVTEの最高のリスクを伴う第4世代プロゲスチンである。したがって、EEおよびDRSPの組合せを用いた場合に見られるVTEの代理マーカーの変化は、相当である。比較すると、E4組合せを用いた場合に観察された変化は、DRSPにエストロゲンが伴われる場合でさえ最小である。例えば、E4に3mgのDRSPが伴われた場合に観察されたSHBG血漿レベルの変化は、20μgのEEおよび3mgのDRSPの組合せを用いた場合に観察されたSHBG増大(治療周期3でのYaz(登録商標)の306.3%の平均変化パーセンテージ)よりも相当に少なかった(治療周期3で5mgのE4/3mgのDRSP群の7.9%および10mgのE4/3mgのDRSP群の44.5%の平均変化パーセンテージ)。変化の同様の正のパターンが、この治験において測定されたVTEの14種のさらなる代理マーカーを用いた場合に観察された。
【0059】
治療の方法
本方法は、普通、少なくとも10日の、好ましくは、少なくとも20日の期間の間、エストロゲン成分およびプロゲストーゲン(progestogenic)成分の途切れない経口投与を使用する。
【0060】
本明細書において、用語「途切れない」とは、成分が、相対的に定期的な間隔で投与され、(治療上)有意な中断がないことを意味する。当然、本方法の全体的な有効性に影響を及ぼさない小さな中断は、起こり得、実際、このような逸脱は、本発明によって包含される。好ましい実施形態では、より算術的に、2回のその後の投与の間の最大間隔が、平均間隔と同じくらいの3.5倍以下である場合には、投与計画は、持続的であると思われる。さらにより好ましくは、前記の最長間隔は、平均間隔と同じくらいの2.5倍以下、最も好ましくは、1.5倍以下である。
【0061】
本方法では、エストロゲンおよびプロゲストーゲン(progestogenic)成分は、別個の投与単位で投与され得る。しかしまた、これら2種の成分を単一投与単位に配合することは可能であり、実際に、極めて好都合である。
【0062】
本発明の方法では、プロゲストーゲン(progestogenic)およびエストロゲン成分の組合せは、少なくとも10日間の間、適宜、途切れなく投与される。
【0063】
本発明はまた、当業者に公知である種々の投与法の形態で実施するために適宜減少され得る。これらの方法の中に、いわゆる「併用」法がある。併用法は、一定量のエストロゲンおよびプロゲストーゲンを有する投与単位を含有する単相調製物、またはほとんどの場合において、周期を通じて相対的に一定レベルのエストロゲンおよびプロゲストーゲンの段階的増大からなる変動するレベルのエストロゲンおよびプロゲストーゲンを有する二相性もしくは三相性調製物を使用する。併用法は、それらは、約7日の投与のない間隔を含み、それによって、自然な月経をシミュレートする消退出血が起こる治療計画に基づいているという共通点がある。したがって、ホルモン投与の21日間隔と、ホルモンが投与されない7日が交互に起こる。
【0064】
本発明の方法の好ましい実施形態では、約4日の投与のない間隔が使用される。この実施形態では、ホルモン投与の24日間隔と、ホルモンが投与されない4日が交互に起こる。
【0065】
本発明の方法のさらに別の好ましい実施形態では、エストロゲン成分およびプロゲストーゲン(progestogenic)成分が投与されるホルモン投与の24日間隔と、エストロゲン成分のみが投与される4日(25日目から28日目)が交互に起こる。
【0066】
上記の併用法の代替法として、いわゆる「連続」法が提案されている。連続法に特有であるのは、2つの継続相、すなわち、エストロゲンが投与され、プロゲストーゲンが投与されない1つの相と、エストロゲンおよびプロゲストーゲンの組合せが投与される別の相を含むことである。上記の併用法のような第1の連続法は、約7日の投与のない間隔を利用する。より最近は、投与のない(またはプラセボ)期を含まない、全周期を通じてエストロゲンが投与されることおよびその周期の一部のみの期間、プロゲストーゲンが同時投与されることを意味する連続法が、提案されている。WO95/17895(Ehrlichら)には、このような途切れない連続法が記載されている。
【0067】
本発明によって包含される方法のさらに別の実施例として、長期間、例えば、50日を超える間のプロゲストーゲン(progestogenic)およびエストロゲン成分の途切れない併用投与を使用する併用法の特別版である、いわゆる「持続的併用(continuous combined)」法がある。通常の併用法および連続法とは対照的に、示された量でのプロゲストーゲンの持続的投与が無月経を誘導するので、持続的併用法では定期的な月経が起こらない。
【0068】
持続的併用法と関連する本発明の一実施形態では、本方法は、少なくとも28日、好ましくは、少なくとも60日の期間の間の、エストロゲン成分およびプロゲストーゲン(progestogenic)成分の組合せの途切れない経口投与を含む。本発明による連続的な組み合わせ方法の1つの特定の実施形態では、エストロゲン成分とプロゲストーゲン成分との組み合わせを含む1つの錠剤を、最初に、少なくとも約24日間連続して毎日服用する。続いて、例えば、25~120日の間に、患者は、約4日間の錠剤なしの休薬をとることができる。いずれにしても、錠剤を連続して約120日間投与した後、約4日間の錠剤なしの休薬を取らなければならない。各錠剤フリー休薬の後、新しい周期は、最低約24日間および最大約120日間の連続投与で開始する。
【0069】
相当な投与のない間隔を使用する連続法および併用法に関連する本発明の別の実施形態では、本発明の方法は、プロゲストーゲン(progestogenic)成分およびエストロゲン成分が投与されず、結果として生じるプロゲストーゲン(progestogenic)成分およびエストロゲン成分の血清濃度の低下が月経を誘導する、少なくとも2日、好ましくは、3~9日、最も好ましくは、5~8日の間隔を含む。
【0070】
相当な休止を含まない連続法に関する本発明のさらに別の実施形態は、少なくとも28日、好ましくは、少なくとも60日の期間の間のエストロゲン成分の途切れない経口投与を含むこと、ならびにエストロゲン成分およびプロゲストーゲン(progestogenic)成分の併用投与後に、3~18連続日の間、好ましくは、5~16連続日の間エストロゲン成分が投与され、プロゲストーゲン(progestogenic)成分が投与されず、結果として生じるプロゲストーゲン(progestogenic)成分の血清濃度の低下が、通常、月経を誘導するのに十分であるはずであることを特徴とする。
【0071】
本発明によれば、月経困難症の症状を軽減する方法において使用するための組成物は、VTE、頭痛、胸部疼痛などを含めた、好ましくは、VTE、頭痛および胸部疼痛を含めた、より好ましくは、VTEおよび頭痛を含めた、最も好ましくは、VTEを含めた有害な副作用の数、頻度および/または重症度を低減することが可能である。本発明の組成物は、相当に低い頻度および重症度でVTEの副作用を低減しながら、月経困難症の症状の有効な治療にとって特に有用である。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、方法は、正常範囲の境界を超える止血性変化を引き起こさない。本明細書において、「止血性変化」は、本発明の組成物の投与の際の、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)、遊離組織因子経路阻害剤(遊離TFPI)、遊離および総プロテインS、プロテインS活性、副腎皮質ステロイド結合グロブリン(CBG)、セルロプラスミン、抗トロンビンIII、活性化プロテインC(APC)抵抗性(例えば、APTTベースのAPCrまたはETPベースのAPCr)、プロテインC活性、D-二量体、プロトロンビン、プロトロンビン断片1+2、第VII因子、第VIII因子、フォンウィルブランド因子、第II因子、PAI-1、組織型プラスミノゲン(t-PA)、プラスミノゲン、E-セレクチンおよびフィブリノゲンから選択される1種または複数のマーカーの血漿レベルの変動と定義される。
【0073】
上記で列挙されたマーカーは、当業者に周知であり、そのレベルを調べるための方法は、当業者の通常の一般知識内にある。
【0074】
本明細書において、止血性マーカーのレベルを指す場合には「正常範囲」とは、集団の95%が入る予測区間を指す。
【0075】
本発明の一実施形態では、方法は、治療の1周期後に正常範囲の境界を超える止血性変化を引き起こさない、好ましくは、方法は、治療の2周期後に正常範囲の境界を超える止血性変化を引き起こさない、さらにより好ましくは、方法は、治療の3周期後に正常範囲の境界を超える止血性変化を引き起こさない。
【0076】
本発明の別の特定の実施形態では、方法は、正常範囲の境界を超えるプロテインSのレベルの変化を引き起こさない。
本発明の別の特定の実施形態では、方法は、正常範囲の境界を超える遊離TFPIのレベルの変化を引き起こさない。
【0077】
組成物
本発明のエストロゲン成分は、好ましくは、エステトロール成分であり、これは、エステトロール;ヒドロキシル基の少なくとも1つの水素原子が、1~25個の炭素原子の炭化水素カルボン酸、スルホン酸またはスルファミン酸のアシルラジカルによって置換されているエステトロールのエステルおよびそれらの組合せからなる群から選択される物質を包含する。好ましくは、エステトロール成分は、エステトロール(エステトロール水和物を含む)である。最も好ましくは、投与単位中に含有されるエステトロール成分は、エステトロール一水和物である。
【0078】
本発明のエステトロール成分は、0.1mg~100mgの1日用量で使用され得る。好ましくは、本発明のエステトロール成分は、1mg~40mgの1日用量で使用される。さらにより好ましくは、本発明のエステトロール成分は、5mg~25mgの1日用量で使用される。一層より好ましくは、本発明のエステトロール成分は、10mg~20mgの1日用量で使用される。
【0079】
最も好ましい実施形態では、本発明のエステトロール成分は、約15mgの1日用量で使用される。
【0080】
その他の実施形態では、投与量は、周期を通じて可変性であり得る(二相性、三相性または四相性投与)。
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、毎日の投与のために設計されており、すなわち、1日の投与単位を表す。
経口投与の場合、本発明による経口投与単位は、好ましくは、錠剤、カプセル、カシェ剤、ペレット剤、丸剤、散剤および顆粒のような固体または半固体剤形である。
「固体または半固体剤形」という用語はまた、本エステトロール成分が溶解または分散されている油のような液体を含むカプセルを包含する。錠剤および同等の固体および半固体剤形は、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のセルロース材料およびデンプン)、希釈剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、デンプン、リン酸二カルシウムおよびセルロース材料)崩壊剤(例えば、澱粉ポリマーおよびセルロース材料)および潤滑剤(例えば、ステアレートおよびタルク)のような物質を好適には含むことができる。これらの錠剤および同等の固体および半固体剤形は、例えば、水溶液または有機溶液を使用した湿式造粒、ならびに直接圧縮によって調製することができる。
【0081】
本発明に従って適宜使用され得るプロゲストーゲン(progestogenic)成分の例として、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、ジドロゲステロン、ドロスピレノン、3-β-ヒドロキシデソゲストレル、3-ケトデソゲストレル、17-デアセチルノルゲスチメート、19-ノルプロゲステロン、アセトキシプレグネノロン、アリルエストレノール、アムゲストン(amgestone)、クロルマジノン、シプロテロン、デメゲストン、デソゲストレル、ジエノゲスト、ジヒドロゲステロン、ジメチステロン、エチステロン、二酢酸エチノジオール、酢酸フルロゲストン、ガストリノン(gastrinone)、ゲストデン、ゲストリノン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、リネストレノール、メシロゲストン(mecirogestone)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メレ,ゲストロール(mele,gestrol)、ノメゲストロール、ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル(d-ノルゲストレルおよびジ-ノルゲストレルを含む)、ノルゲストリエノン、ノルメチステロン、プロゲステロン、キンゲスタノール、(17α)-17-ヒドロキシ-11-メチレン-19-ノルプレグナ-4、15-ジエン-20-イン-3-オン、チボロン、トリメゲストン(trimegestone)、アルゲストン-アセトフェニド、ネストロン(nestorone)、プロメゲストン、17-ヒドロキシプロゲステロンエステル、19-ノル-17ヒドロキシプロゲステロン、17α-エチニルテストステロン、17α-エチニル-19-ノルテストステロン、d-17β-アセトキシ-13β-エチル-17α-エチニルゴン-4-エン-3-オンオキシム、6β,7β;15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-17-プレグナ-4,9(11)-ジエン-21、17β-カルボラクトンまたはタナプロゲット(tanaproget)および本方法において使用された場合にin vivoでこれらのプロゲストーゲンを遊離することが可能であるこれらの化合物の前駆体が挙げられる。
【0082】
好ましくは、本方法において使用されるプロゲストーゲン(progestogenic)成分は、プロゲステロン、デソゲストレル、ゲストデン、ジエノゲスト、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、ドロスピレノン、トリメゲストン(trimegestone)、ジドロゲステロン、これらのプロゲストーゲンの前駆体およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0083】
本発明のプロゲストーゲン(progestogenic)成分が、ドロスピレノンである場合には、好ましくは、0.5mg~10mgの、さらにより好ましくは、1mg~4mgの1日用量で使用される。最も好ましい実施形態では、本発明のプロゲストーゲン(progestogenic)成分は、ドロスピレノンであり、約3mgの1日用量で使用される。
【0084】
異なるプロゲストーゲン(progestogenic)成分が使用される場合には、1日用量は、ドロスピレノンの0.5mg~10mgの用量と同一薬理効果をもたらすように、好ましくは、ドロスピレノンの1mg~4mgの用量と同一薬理効果をもたらすように調整される。
【0085】
本発明の好ましい実施形態では、組成物は、5mg~25mgの1日用量のエステトロールを、0.5mg~10mgの1日用量のドロスピレノンと組み合わせる。本発明のより好ましい実施形態では、組成物は、10mg~20mgの1日用量のエステトロールを、1mg~4mgの1日用量のドロスピレノンと組み合わせる。本発明のさらにより好ましい実施形態では、組成物は、約15mgの1日用量のエステトロールを、約3mgの1日用量のドロスピレノンと組み合わせる。
本発明の特定の実施形態では、組成物はいかなる追加の亜鉛塩も含有しない。これらの実施形態では、いかなる生体適合性(biocompatible)の亜鉛塩は、本発明の組成物の調製のために使用されない。
【0086】
本発明を、いくつかの例示的実施形態を参照して上記に記載してきた。いくつかの部分または要素の改変および代替実施が可能であり、添付の特許請求の範囲に定義されるような保護の範囲に含まれる。
【実施例
【0087】
実施例1
その研究の間に、健常な女性対象を、10もしくは20mg E4単独(n=10および11、それぞれ)のいずれかを用いて、またはE4と、プロゲステロン(P)もしくはデソゲストレル(DSG)のいずれかの組合せ(n=15または16、それぞれ)を用いて1回の28日周期の間治療した。
【0088】
ベースラインで、11人の対象(21.2%)によって時折の月経困難症が報告され、19人の対象(36.5%)によって頻繁な月経困難症が報告された。月経困難症の分布は、以下の表2に示されている。全体的に、月経困難症は、この治験に含まれる対象の25%~53.3%によって報告された。
【0089】
【表2】
【0090】
以下の治療下で発現した有害事象(TE-AE)の表3に示されるように、治療相の間の月経困難症の報告は、ベースラインで記録された罹患率と比較して少なかった。興味深いことに、E4単独は、用量関連比例を全く伴わずに月経困難症の罹患率に対して正の影響を有すると思われた。
【0091】
【表3】
【0092】
実施例2
本発明に従うエストロゲン成分およびプロゲストーゲン(progestogenic)成分の異なる用量および異なる組合せを比較するこの臨床研究では、全体的に、ベースラインで、対象の68.9%がこれまでに月経困難症を経験し、対象の40.4%において時折、対象の28.5%において頻繁であった。
【0093】
任意の治療群中の少なくとも2人の対象によって報告された治療下で発現した有害事象(TE-AE)から抽出された以下の表4に示されるように、月経困難症は、プロゲストーゲン(progestogenic)成分がドロスピレノンであった場合に、レボノルゲストレルであった場合よりも稀に報告された。
【0094】
さらに、実に驚くべきことに、エストロゲン成分の最少用量(15mg毎日)が、より高い用量(20mg毎日)よりも、TE-AEとしての月経困難症のより少ない報告につながることが表4においても見られる。
【0095】
【表4】
【0096】
最後に、中断につながる月経困難症TE-AEが、20mg E4群の各々において1回生じた(1.3%)が、15mg E4群のいずれでも生じなかった(0%)。
【0097】
実施例3
本発明のエストロゲン成分およびプロゲストーゲン(progestogenic)成分の組合せを、同様に天然エストロゲン(Bayer HealthCare、GermanyによってQlaira(登録商標)として市販される、0、2または3mgの用量のジエノゲストとともの、1、2または3mg用量の吉草酸エストラジオール)を使用する市販の避妊薬治療と比較するこの臨床研究では、薬物関連有害事象(任意の治療群中の少なくとも2人の対象によって報告された治療下で発現した有害事象(TE-AE))の数およびSHBGマーカーのレベルをモニタリングした。
【0098】
以下の表5に示されるように、13人の対象(16.7%に相当する)が、吉草酸エストラジオールおよびジエノゲストをベースとする市販用製品を用いた場合に、治療アームにおいて頭痛と関連するTE-AEを報告し、15mgのエステトロールおよび3mgのドロスピレノンの組合せを用いて治療された群では6人の対象(7.6%に相当する)のみがそうした。したがって、頭痛と関連する事象の数は、本発明の治療についてはかなり少ないと示された。
【0099】
さらに、胸部疼痛と関連する有害事象の数は、同様であり、2種の治療について極めて少なかった(1.3%のみの出現)。
【0100】
【表5】
【0101】
この研究に加えて、SHBG濃度の変化を、ベースラインで、ならびに混合型避妊薬(combined contraception)を開始した女性(「スターター」と呼ばれる患者の群)へのE4/DRSPおよびE2V/DNGの組合せの投与の周期4および周期6の間に逐次評価した。女性は、無作為化前の3ヶ月においてホルモン避妊薬を使用しなかった場合にスターターと定義した。この「洗い出し」期間によって、そのSHBGレベルが、使用したこれまでのCOCによって影響を受けた患者を排除することが可能となった。
【0102】
ベースラインからの変化の点での結果が、以下の表6に示されている。
【0103】
【表6】
【0104】
表6から明らかであるように、本発明の方法は、同様に天然エストロゲンを使用する市販のCOCと比較して、ベースラインから周期4および周期6の両方でのSHBGレベル変化を最小化することを可能にする。
【0105】
実施例4
本発明のエストロゲン成分およびプロゲストーゲン(progestogenic)成分の2種の組合せを、市販の避妊薬治療(Bayer HealthCare、GermanyによってYaz(登録商標)として市販される、3mgのドロスピレノンとともに20μgのエチニルエストラジオールを使用する)と比較するこの臨床研究では、いくつかの止血マーカーならびにキャリヤータンパク質を測定し、これらのパラメータにおけるベースラインから周期3の最後までの変化を、表7において以下に提示する。
【0106】
【表7】
【0107】
20μg EEを含有するDRSP組合せと5または10mg E4を用いるものの間で大きな相違が観察された:プロコアグラントマーカープロトロンビン断片1+2血漿レベルは、種々のE4/DRSP組合せを用いた場合には低下したが、EE/DRSPを用いた場合には増大した(ベースラインから3ヶ月の使用で+63%)。これらの反対の結果は、血栓症マーカープロトロンビン断片1+2の増大は、エストロゲンの種類(ここでは、EE対E4)(および用量)と結びついていることを示す。さらに、天然抗凝固剤は、E4を含有する組合せによって変更されない(抗トロンビンIII、プロテインS活性)か、またはわずかに低減され(遊離TFPI)、通常、EE/DRSPによって低減される。従来どおり、すべての調製物を用いた場合に、APCに対する活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)関連感受性は、ほとんど変更されず、正規化されたAPC感受性割合は、E4組合せを用いた場合に変更されなかったが、プロテインCに対する抵抗性は、EE/DRSP組合せによって強力に増大された。E4およびDRSPの組合せを使用した場合のプロコアグラントマーカーの増大なしと同時に、tPAおよびD-二量体レベルなどの線維素溶解パラメータのわずかな低減があった。
【0108】
EE/DRSP組合せを用いた場合には、SHBGの増大は、重要であった(+306%)。 E4(5、10mg)とDRSPとのすべての組合せは、SHBGの中程度の増大を示した。SHBGは、肝臓代謝に対するCOCのエストロゲンの影響の最も関連するバイオマーカーと考えられることは留意されたい(Odlind V.ら;Acta Obstet Gynecol Scand 2002年;第81巻:482頁)。
【0109】
CBGおよびセルロプラスミンは、エストロゲンの影響下で本質的に合成され、プロゲスチンのアンドロゲン作用に対してかなり感受性が低い。E4およびDRSP群では、エストロゲンの用量を増大することは、CBGおよびセルロプラスミンについてベースラインからのわずかな増大をもたらした。しかし、E4治療群と比較して、EE/DRSP群においてベースラインからのはるかに最大の変化が観察された。
【0110】
実施例5
月経困難症の愁訴の軽減に対する本発明の方法の利益を評価するための多施設プラセボ対照無作為化研究を実施した。
【0111】
研究集団は、原発性月経困難症(発症<初経後3年)を有する、境界も含めて12から35歳(スクリーニングの時点で)の健常な女性の対象からなっていた。
【0112】
本発明の方法の製品は、持続的または24/4日治療計画(すなわち、活性錠剤の24日と、それに続く、プラセボ錠剤の4日)で1日1回経口投与されるエステトロール(15mg)およびドロスピレノン(3mg)を含む配合錠であった。プラセボアームに加えて、補足アームに、エステトロールのその他の用量を含めた。
【0113】
本発明の方法の効力は、主に、月経困難症疼痛のあった日数におけるベースライン評価期間と治療評価期間の間の変化を追跡調査することによって実証した。
【0114】
月経困難症疼痛は、月経/消退出血エピソードおよびこのエピソードの前2日の間の骨盤痛と定義した。
【0115】
第2に、効力は、以下のスケールによる月経困難症疼痛の毎日のスコアリングによって追跡調査した。
0-疼痛なし;
1-軽度の疼痛、鎮痛剤の必要なし;
2-中程度の疼痛、鎮痛剤の必要あり;
3-重度の疼痛、鎮痛剤の必要あり。
【0116】
さらなる効力評価は、以下のように行った:
1.膣出血の発生と独立した、骨盤痛のあった日数におけるベースライン評価期間および治療評価期間の最後の間の変化、
2.予定外の出血の間の骨盤痛のあった日数におけるベースライン評価期間および治療評価期間の間の変化、
3.レスキュー薬物使用(Rescue medication Use)におけるベースライン評価期間および治療評価期間の間の変化。レスキュー薬物使用(Rescue medication Use)は、200mgのイブプロフェン錠の標準化された摂取となる。
4.仕事/学校および社会またはその他の活動への月経困難症疼痛の干渉のあった参加者のパーセンテージ、
5.ベースライン、3ヶ月目および最終検査(6ヶ月目の後)での、月経困難症疼痛によって仕事から失われた時間の参加者のパーセンテージおよび時間/日、
6.研究治療で満足した参加者のパーセンテージ、
7.資源利用質問書(Resource Use Questionnaire)の完了によって評価される、月経困難症疼痛の治療ごとの理学療法、代替医療、鍼治療、オステオパシー、医療カウンセリング、マッサージ、ハーブ系サプリメント/茶の自己費用(ユーロに変換される)、
8.研究者によって完了される、臨床全般印象尺度(CGI)の通りの、研究の過程の間の患者の改善、
9.臨床全般印象における参加者の評価 参加者によって完了されるような臨床全般印象尺度(CGI)および研究の過程の間のその改善の評点、
10.SF-36自己記入質問書を使用して、ベースライン、3ヶ月目および最終検査での全身の健康および幸福質問書(General Health and Well-being Questionnaire)SF-36によって評価されるような、全身の健康、身体疼痛、身体機能および社会的機能、メンタルヘルスおよび活力、患者集団を評価するために、また異なる集団にわたって健康状態を比較するために使用される全身の健康状態の尺度。
【0117】
臨床研究は、本発明の方法の製品が、月経困難症の症状の改善において有効であることを実証する。
【0118】
実施例6
多施設のプラセボ対照試験を、研究集団は16歳以上の月経困難症患者(原発性月経困難症患者、および、続発性月経困難症患者)を対象とし、
共同無作為割付二重盲検比較によって実施した。
【0119】
治験薬は、エステトロール(15mg)およびドロスピレノン(3mg)を含む配合錠であり、投与方法は2種類存在する。
・周期的投与方法として、治験薬を、1日1錠を毎日一定の時刻に、24日間投与しその後4日間休薬とすることからなるサイクルで、経口投与した。
・持続的投与方法として、治験薬を、1日1錠を毎日一定の時刻に休薬なしで連日投与した。
【0120】
主要評価項目は、16週(4周期)において、以下の表8の評価スケールにしたがって、ベースラインからの変化をスコアした。
【0121】
【表8】
【0122】
さらなる効力評価は、以下のように行った。;
【0123】
1.月経困難症疼痛の評価として、VASスケール及び骨盤痛スコアを用いてベースラインからの疼痛の変化により評価、
2.不正出血の発現頻度の評価、
3.月経前症候群の改善は、自己記入質問書を用いたベースラインからの変化の観察により評価された。
4.治験薬の静脈血栓塞栓症(VTE)事象の潜在的リスクは、VTEの代用マーカー(たとえば、D-二量体、SHBG,プロテインC活性、およびプロテインS活性)を用いて評価した、
5.月経時の下腹部痛、腰痛、頭痛、嘔吐、嘔気の重症度の推移 、
6.子宮内膜厚のベースラインからの変化 、
7.血清CA125濃度及び血清C反応性タンパク濃度 、
8.血清エストラジオール濃度及び血清プロゲステロン濃度 、
9.安全性の項目、
・有害事象
臨床検査値(内分泌検査を含む)、バイタルサイン
子宮の大きさ
【0124】
臨床研究は、本発明の方法の製品が、月経困難症の症状の改善において有効であることを実証する。