(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】CD3およびCD20に対する二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221116BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221116BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221116BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221116BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221116BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221116BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221116BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221116BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20221116BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20221116BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20221116BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20221116BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20221116BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20221116BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
A61P35/02
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
G01N33/53 V
G01N33/531 A
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021038857
(22)【出願日】2021-03-11
(62)【分割の表示】P 2017536356の分割
【原出願日】2016-01-08
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/050276
(32)【優先日】2015-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】エンジェルバーツ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ エステル
(72)【発明者】
【氏名】ラーデメイカー リック
(72)【発明者】
【氏名】アルティンタス イシル
(72)【発明者】
【氏名】サテン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァープローゲン サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ラデルスマ リームケ ファン ダイクハウゼン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリンク エドワード
(72)【発明者】
【氏名】シュールマン ジャニーヌ
(72)【発明者】
【氏名】パレン ポール
【審査官】中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/047231(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/108483(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/145141(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00- 16/46
C12N 15/00- 15/90
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 1/15
C12N 5/10
C12P 21/08
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
A61K 45/00
A61K 39/395
G01N 33/53
G01N 33/531
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性抗体を含む、DLBCLまたはFLである癌を治療するための薬学的組成物であって、該二重特異性抗体が、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)と結合する、第1の重鎖可変配列(VH)と第1の軽鎖可変配列(VL)とを含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、
SEQ ID NO:6に示される第1の重鎖可変配列(VH)および第1のヒトIgG1重鎖定常領域配列(CH)を含む第1の重鎖と、
SEQ ID NO:10に示される第1の軽鎖可変配列(VL)および第1の軽鎖定常配列(CL)を含む第1の軽鎖と
を含む、該第1の結合アーム、ならびに
(ii)ヒトCD20と結合する、第2の重鎖可変配列(VH)と第2の軽鎖可変配列(VL)とを含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、
SEQ ID NO:27に示される第2の重鎖可変配列(VH)および第2のヒトIgG1重鎖定常領域配列(CH)を含む第2の重鎖と、
SEQ ID NO:28に示される第2の軽鎖可変配列(VL)および第2の軽鎖定常配列(CL)を含む第2の軽鎖と
を含む、該第2の結合アーム
を含
み、
該第1のヒトIgG1重鎖定常領域および該第2のヒトIgG1重鎖定常領域それぞれにおいて、SEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置がそれぞれF、E、およびAである、
該
薬学的組成物。
【請求項2】
薬学的に許容される担体
をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
1つまたは複数のさらなる治療
剤と組み合わせて使用
されることを特徴とする、請求項1
または2に記載の
薬学的組成物。
【請求項4】
1つまたは複数のさらなる治療剤
が化学療法剤
である、請求項
3に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、CD3およびCD20に対する二重特異性抗体、ならびにそのような二重特異性抗体の使用、特に、CD20を発現する細胞の特異的ターゲティングおよびT細胞媒介性死滅が望まれる疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD3は長年にわたって知られており、それ故に多くの局面において関心対象となってきた。具体的には、CD3に対して、またはCD3がその一部であるT細胞受容体複合体に対して産生された抗体が知られている。5種類のヒト化OKT3エフェクター機能変異抗体のインビトロ特性決定が記載されている(Xu et al., 2000, Cell Immunol. 200(1):16-26(非特許文献1))。
【0003】
抗CD3モノクローナル抗体hOKT3γ1(Ala-Ala)による治療は、免疫抑制剤の継続を伴わずに、1型糖尿病の発症後、少なくとも2年間にわたってCペプチド応答および臨床的パラメーターの改善をもたらしている(Herold et al., 2005, Diabetes, 54(6):1763-9(非特許文献2))。
【0004】
カニクイザルおよび/またはアカゲザルのCD3に交差反応するCD3抗体が記載されている(WO2012162067号(特許文献1)、WO2008119567号(特許文献2))。
【0005】
標的抗体療法を改良するための有望なアプローチの1つは、抗原発現性の癌細胞に対して特異的な細胞傷害性細胞を送達することによる。腫瘍細胞の効果的な死滅のためにT細胞を用いるというこの考え方は、Staerz, et al., 1985, Nature 314:628-631(非特許文献3))に記載されている。しかし、初期の臨床研究は幾分期待を裏切るものであり、その主な理由は二重特異性抗体の有効性の低さ、重篤な有害作用(サイトカインストーム)および免疫原性であった(Muller and Kontermann, 2010, BioDrugs 24: 89-98(非特許文献4))。二重特異性抗体の設計および適用の改良により、サイトカインストームという初期の障壁はある程度克服され、臨床的有効性が改善され、用量規定毒性も生じなかった(Garber, 2014, Nat. Rev. Drug Discov. 13: 799-801(非特許文献5);Lum and Thakur, 2011, BioDrugs 25: 365-379(非特許文献6))。サイトカインストームという初期の障壁を克服する上で不可欠であったのは、カツマキソマブに関して記載されているように(Berek et al. 2014, Int. J. Gynecol. Cancer 24(9): 1583-1589(非特許文献7);Mau-Sorensen et al. 2015, Cancer Chemother. Pharmacol. 75: 1065-1073(非特許文献8))、Fcドメインの欠如またはサイレンシングであった。
【0006】
CD20分子(ヒトBリンパ球制限分化抗原またはBp35とも呼ばれる)は、プレBリンパ球および成熟Bリンパ球に位置する、分子量がおよそ35kDの疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine et al. (1989) J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287(非特許文献9);およびEinfield et al., (1988) EMBO J. 7(3):711-717(非特許文献10))。CD20は、末梢血またはリンパ器官由来のB細胞の90%超で表面上に認められ、初期プレB細胞発生中に発現されて、形質細胞分化時まで保たれる。CD20は正常B細胞上にも悪性B細胞上にも存在する。特に、CD20はB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%超で発現されるが(Anderson et al. (1984) Blood 63(6):1424-1433(非特許文献11))、造血幹細胞、プロB細胞、正常形質細胞および他の正常組織上では発現されない(Tedder et al. (1985) J. Immunol. 135(2):973-979(非特許文献12))。
【0007】
CD20を標的化することによって癌ならびに自己免疫疾患および免疫疾患を治療するための方法も、当技術分野において公知である。例えば、キメラCD20抗体リツキシマブは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)などの癌の治療のために用いられているか、またはその使用が提案されている。ヒトモノクローナルCD20抗体オファツムマブは、特に、さまざまなCLL適応症、濾胞性リンパ腫(FL)、視神経脊髄炎(NMO)、びまん性多発性硬化症および再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の治療のために用いられているか、またはその使用が提案されている。ヒトモノクローナルCD20抗体オビヌツズマブは、CLLの治療のために用いられているか、またはその使用が提案されている。さらに、ヒト化CD20抗体オクレリズマブがRRMSに対して開発中である。
【0008】
Gallら(2005 Experimental Hematology 33: 452(非特許文献13))は、CD20特異的キメラ抗体リツキシマブ(リツキサン(Rituxan))の抗CD3との化学的ヘテロコンジュゲーションによって生じるCD3xCD20二重特異性CD20bi(OrthocloneOKT-3)を開示している。
【0009】
Stanglmaierら(2008 Int. J. Cancer: 123, 1181(非特許文献14))は、CD20特異的マウスIgG2aとCD3特異的ラットIgG2bとを組み合わせた三機能性二重特異性抗CD3x抗CD20抗体Bi20/FBTA05を記載している。
【0010】
Wuら(2007 Nat Biotechnol. 25: 1290-1297(非特許文献15))およびWO2011014659号(特許文献3)は、二重特異性(CD3およびCD20)の四価免疫グロブリンG(二重可変ドメイン免疫グロブリン、DVD-Ig)を記載している。
【0011】
WO2011090762号(特許文献4)は、CD3xCD20ポリペプチドヘテロ二量体の作製を記載している。
【0012】
WO2011028952号(特許文献5)は、特に、Xencor社のXmAb二重特異性Fcドメイン技術を用いたCD3xCD20二重特異性分子の作製を記載している。
【0013】
WO2014047231号(特許文献6)は、Regeneron Pharmaceuticals社によるFcΔAdp技術を用いて作製されたREGN1979および他のCD3xCD20二重特異性抗体を記載している。
【0014】
Sunら(2015, Science Translational Medicine 7, 287ra70(非特許文献16))は、「ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)」技術を用いた、B細胞を標的とする抗CD20/CD3 T細胞依存性二重特異性抗体構築物を記載している。
【0015】
CD3およびCD20の両方と結合する二重特異性抗体は、CD20を発現する細胞の特異的ターゲティングおよびT細胞媒介性死滅が望まれる治療状況において有用であり、さらに効果的なCD3xCD20二重特異性抗体に対する需要は未だにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】WO2012162067号
【文献】WO2008119567号
【文献】WO2011014659号
【文献】WO2011090762号
【文献】WO2011028952号
【文献】WO2014047231号
【非特許文献】
【0017】
【文献】Xu et al., 2000, Cell Immunol. 200(1):16-26
【文献】Herold et al., 2005, Diabetes, 54(6):1763-9
【文献】Staerz, et al., 1985, Nature 314:628-631
【文献】Muller and Kontermann, 2010, BioDrugs 24: 89-98
【文献】Garber, 2014, Nat. Rev. Drug Discov. 13: 799-801
【文献】Lum and Thakur, 2011, BioDrugs 25: 365-379
【文献】Berek et al. 2014, Int. J. Gynecol. Cancer 24(9): 1583-1589
【文献】Mau-Sorensen et al. 2015, Cancer Chemother. Pharmacol. 75: 1065-1073
【文献】Valentine et al. (1989) J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287
【文献】Einfield et al., (1988) EMBO J. 7(3):711-717
【文献】Anderson et al. (1984) Blood 63(6):1424-1433
【文献】Tedder et al. (1985) J. Immunol. 135(2):973-979
【文献】Gall et al., 2005 Experimental Hematology 33: 452
【文献】Stanglmaier et al., 2008 Int. J. Cancer: 123, 1181
【文献】Wu et al., 2007 Nat Biotechnol. 25: 1290-1297
【文献】Sun et al., 2015, Science Translational Medicine 7, 287ra70
【発明の概要】
【0018】
本発明の1つの目的は、CD3抗体に由来する第1の抗原結合領域およびCD20抗体に由来する第2の抗原結合領域を含む、新規の効果的な二重特異性抗体を提供することである。
【0019】
当該新規CD3xCD20二重特異性抗体は、CD20を発現する細胞の特異的ターゲティングおよびT細胞媒介性死滅が望まれる治療状況において有用である。当該新規CD3xCD20二重特異性抗体は、CD20低コピー数の細胞を含むCD20発現細胞を死滅させるのに非常に効果的であり、動物モデルにおいて腫瘍細胞を根絶させる上で非常に効力が高い。新規CD3xCD20二重特異性抗体には、低用量投与での迅速かつ強力な細胞死滅の誘導による利点がある。当該新規CD3xCD20二重特異性抗体はその上、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の両方による細胞傷害性を誘導することができ、そのため、これらはCD20陽性腫瘍、およびCD20陽性細胞が関わる他の疾患を死滅させるためにT細胞を関与させるのに適している。加えて、当該CD3xCD20二重特異性抗体は、リンパ系構造からB細胞を枯渇させるのに効果的である。したがって、本発明の1つの目的は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の両方による細胞傷害性を誘導することのできる二重特異性CD3xCD20抗体を提供することである。本発明のさらなる目的は、CD20発現細胞(例えばCD20発現性の腫瘍細胞)を死滅させるのに極めて効果的な二重特異性CD3xCD20抗体を提供することである。本発明のさらなる目的は、CD20発現性の癌を死滅させるのに極めて効果的な二重特異性CD3xCD20抗体を提供することである。
【0020】
[本発明1001]
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)と結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、該第1の抗原結合領域が、(a)それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、または(b)それぞれSEQ ID NO:55、56および57に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:58に示される配列、配列DTS、およびSEQ ID NO:59に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、該第1の結合アーム、ならびに
(ii)ヒトCD20と結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アーム、
を含む、二重特異性抗体。
[本発明1002]
ヒトCD3ε(イプシロン)と結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、該第1の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、該第1の結合アームを含む、本発明1001の二重特異性抗体。
[本発明1003]
前記第1の抗原結合領域が第1の重鎖可変配列(VH)および第1の軽鎖可変配列(VL)を含み、前記第2の抗原結合領域が第2の重鎖可変配列(VH)および第2の軽鎖可変配列(VL)を含み、かつ該可変配列が、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3である3つのCDR配列、ならびに、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4である4つのフレームワーク配列をそれぞれ含む、本発明1001または1002の二重特異性抗体。
[本発明1004]
(i)前記第1の結合アームが、第1の重鎖可変配列(VH)および第1の重鎖定常配列(CH)を含む第1の重鎖、ならびに第1の軽鎖可変配列(VL)および第1の軽鎖定常配列(CL)を含む第1の軽鎖を含み、かつ(ii)前記第2の結合アームが、第2の重鎖可変配列(VH)および第2の重鎖定常配列(CH)を含む第2の重鎖、ならびに第2の軽鎖可変配列(VL)および第2の軽鎖定常配列(CL)を含む第2の軽鎖を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1005]
前記第1の抗原結合領域のVH配列が、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列;
b)SEQ ID NO:7に示されるVH配列;
c)SEQ ID NO:8に示されるVH配列;
d)SEQ ID NO:9に示されるVH配列;および
e)SEQ ID NO:17に示されるVH配列;
からなる群より選択されるVH配列に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1006]
前記第1の抗原結合領域のVL配列が、
a)SEQ ID NO:10に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:11に示されるVL配列;
c)SEQ ID NO:12に示されるVL配列;および
d)SEQ ID NO:18に示されるVL配列;
からなる群より選択されるVL配列に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1007]
前記第1の抗原結合領域のVH配列のフレームワーク配列が、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列;
b)SEQ ID NO:7に示されるVH配列;
c)SEQ ID NO:8に示されるVH配列;
d)SEQ ID NO:9に示されるVH配列;および
e)SEQ ID NO:17に示されるVH配列;
からなる群より選択されるVH配列に示されるフレームワークアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1008]
前記第1の抗原結合領域のVL配列のフレームワーク配列が、
a)SEQ ID NO:10に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:11に示されるVL配列;
c)SEQ ID NO:12に示されるVL配列;および
d)SEQ ID NO:18に示されるVL配列;
からなる群より選択されるVL配列に示されるフレームワークアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1009]
前記VH配列およびVL配列のCDR配列が、突然変異してはいないが、表1に示されている通りである、本発明1005~1008のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1010]
前記VH配列およびVL配列が、フレームワーク配列においてのみ差異がある、本発明1005~1007のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1011]
前記第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列の各々のFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、前記VH配列およびVL配列の各々のFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつCDR配列が突然変異していない、本発明1005~1008のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1012]
前記第1の抗原結合領域のVH配列が、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列;
b)SEQ ID NO:7に示されるVH配列;
c)SEQ ID NO:8に示されるVH配列;
d)SEQ ID NO:9に示されるVH配列;
e)SEQ ID NO:17に示されるVH配列;
からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1013]
前記第1の抗原結合領域のVL配列が、
a)SEQ ID NO:10に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:11に示されるVL配列 ;
c)SEQ ID NO:12に示されるVL配列;および
d)SEQ ID NO:18に示されるVL配列;
からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1014]
前記第1の抗原結合領域のVH配列およびVL配列が、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:8に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
c)SEQ ID NO:9に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
d)SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL配列;
e)SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL配列;
f)SEQ ID NO:7に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
g)SEQ ID NO:7に示されるVH配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL配列;
h)SEQ ID NO:7に示されるVH配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL配列;
i)SEQ ID NO:8に示されるVH配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL配列;
j)SEQ ID NO:8に示されるVH配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL配列;
k)SEQ ID NO:9に示されるVH配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL配列;
I)SEQ ID NO:9に示されるVH配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL配列;ならびに
m)SEQ ID NO:17に示されるVH配列およびSEQ ID NO:18に示されるVL配列;
からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1015]
前記第1の抗原結合領域が、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:17に示されるVH配列およびSEQ ID NO:18に示されるVL配列;
からなる群より選択されるVH配列およびVL配列を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1016]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するVL配列を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1017]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1018]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも97%の配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも97%の配列同一性を有するVL配列を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1019]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1020]
前記第1の結合アームがマウス抗体に由来する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1021]
前記第1の結合アームがヒト化抗体に由来する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1022]
前記第1の結合アームが完全長抗体に由来する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1023]
前記第1の結合アームが、完全長IgG1,λ(ラムダ)抗体またはIgG1,κ(カッパ)抗体に由来する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1024]
前記第2の抗原結合領域が、位置170のアミノ酸残基アラニンも位置172のアミノ酸残基プロリンも含まずかつ必要としないヒトCD20上のエピトープと結合する抗体に由来する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1025]
前記第2の抗原結合領域が、位置163のアミノ酸残基アスパラギンおよび位置166のアミノ酸残基アスパラギンをさらに含むかまたは必要とするヒトCD20上のエピトープと結合する抗体に由来する、本発明1021の二重特異性抗体。
[本発明1026]
ヒトCD20と結合する前記第2の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、
(ii)SEQ ID NO:38であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:39であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、
(iii)SEQ ID NO:42であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:43であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:44であるVH CDR3領域、または
(iv)SEQ ID NO:49であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:50であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:51であるVH CDR3領域、
を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1027]
ヒトCD20と結合する前記第2の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、VL CDR2領域DAS、SEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、
(ii)SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、VL CDR2領域DAS、SEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
(iii)SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、VL CDR2領域DAS、SEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1028]
ヒトCD20と結合する前記第2の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、
(ii)SEQ ID NO:38であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:39であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、
(iii)SEQ ID NO:42であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:43であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:44であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
(iv)SEQ ID NO:49であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:50であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:51であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
(v)SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
(vi)SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
(vii)SEQ ID NO:38であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:39であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
(viii)SEQ ID NO:38であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:39であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
(ix)SEQ ID NO:42であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:43であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:44であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、
(x)SEQ ID NO:42であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:43であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:44であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
(xi)SEQ ID NO:49であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:50であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:51であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、または
(xii)SEQ ID NO:49であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:50であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:51であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1029]
ヒトCD20と結合する前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1030]
ヒトCD20と結合する前記第2の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(ii)SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(iii)SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(iv)SEQ ID NO:47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(v)SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(vi)SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(vii)SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(viii)SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(ix)SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(x)SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
(xi)SEQ ID NO:47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(xii)SEQ ID NO:47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、
を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1031]
ヒトCD20と結合する前記第2の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:27であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列、
(ii)SEQ ID NO:37であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列、
(iii)SEQ ID NO:40であるVH配列およびSEQ ID NO:41であるVL配列、
(iv)SEQ ID NO:47であるVH配列およびSEQ ID NO:48であるVL配列、
(v)SEQ ID NO:27であるVH配列およびSEQ ID NO:41であるVL配列、
(vi)SEQ ID NO:27であるVH配列およびSEQ ID NO:48であるVL配列、
(vii)SEQ ID NO:37であるVH配列およびSEQ ID NO:41であるVL配列、
(viii)SEQ ID NO:37であるVH配列およびSEQ ID NO:48であるVL配列、
(ix)SEQ ID NO:40であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列、
(x)SEQ ID NO:40であるVH配列およびSEQ ID NO:48であるVL配列、
(xi)SEQ ID NO:47であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列、または
(xii)SEQ ID NO:47であるVH配列およびSEQ ID NO:41であるVL配列、
を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1032]
ヒトCD20と結合する前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:27であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1033]
前記第2の結合アームがヒト抗体に由来する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1034]
前記第2の結合アームが完全長抗体に由来する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1035]
前記第2の結合アームが、完全長IgG1,κ(カッパ)抗体に由来する、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1036]
(a)前記第1の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつ(b)ヒトCD20と結合する前記第2の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1037]
(a)前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列を含み、かつ(b)前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:27に示されるVH配列およびSEQ ID NO:28に示されるVL配列を含む、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1038]
前記第1の抗原結合領域がIgG1-huCD3-H1L1-FEALに由来する半分子抗体であり、かつ前記第2の抗原結合領域がIgG1-7D8-FEARに由来する半分子抗体である、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1039]
前記第1の結合アームがIgG1-huCD3-H1L1-FEARに由来する半分子抗体であり、かつ前記第2の結合アームがIgG1-7D8-FEALに由来する半分子抗体である、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1040]
前記第1および第2の重鎖のそれぞれが少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み、該第1の重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ該第2の重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ該第1および該第2の重鎖が同じ位置においては置換されていない、本発明1001~1037のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1041]
(i)ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置におけるアミノ酸が前記第1の重鎖においてLであり、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置におけるアミノ酸が前記第2の重鎖においてRであるか、または(ii)ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置におけるアミノ酸が前記第1の重鎖においてRであり、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置におけるアミノ酸が前記第2の重鎖においてLである、本発明1040の二重特異性抗体。
[本発明1042]
前記二重特異性抗体が第1の定常重鎖(HC)および第1の定常軽鎖(LC)を含み、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、SEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置がそれぞれF、E、およびAである、本発明1001~1041のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1043]
前記二重特異性抗体が第1および第2の定常重鎖(HC)ならびに第1および第2の定常軽鎖(LC)を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方において、SEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置がそれぞれFおよびEである、本発明1001~1041のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1044]
前記第1の結合アームがIgG1-huCD3-H1L1-FEALに由来する半分子抗体であり、かつ前記第2の結合アームがIgG1-7D8-FEARに由来する半分子抗体である、本発明1001~1043のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1045]
前記第1の結合アームがIgG1-huCD3-H1L1-FEARに由来する半分子抗体であり、かつ前記第2の結合アームがIgG1-7D8-FEALに由来する半分子抗体である、本発明1001~1043のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1046]
前記二重特異性抗体が第1および第2の定常重鎖(HC)ならびに第1および第2の定常軽鎖(LC)を含み、該第1の定常重鎖および該第2の定常重鎖の両方において、SEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置がそれぞれF、E、およびAであり、かつ該第1の定常重鎖においてSEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ該第2の定常重鎖においてSEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRである、本発明1001~1045のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1047]
前記二重特異性抗体が定常重鎖(HC)および定常軽鎖(LC)を含み、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、SEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置がそれぞれFおよびEであり、かつ該第1の重鎖においてSEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ該第2の重鎖においてSEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRである、本発明1001~1045のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1048]
前記抗体が、該抗体に対するC1qの結合が野生型抗体と比較して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように改変されているFc領域を含み、C1qの結合がELISAにより測定される、前記本発明のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1049]
本発明1001~1048の1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする核酸構築物。
[本発明1050]
本発明1001~1048のいずれかにおいて定義された二重特異性抗体をコードする核酸構築物。
[本発明1051]
(i)本発明1001~1023のいずれかにおいて定義された第1の結合アームの重鎖配列をコードする核酸配列;
(ii)本発明1001~1023のいずれかにおいて定義された第1の結合アームの軽鎖配列をコードする核酸配列;
(iii)本発明1024~1032のいずれかにおいて定義された第2の第1の結合アームの重鎖配列をコードする核酸配列;
(iv)本発明1024~1032のいずれかにおいて定義された第2の第1の結合アームの軽鎖配列をコードする核酸配列;
(v)(i)に示された核酸および(ii)に示された核酸;
(vi)(iii)に示された核酸および(iv)に示された核酸;
(vii)(i)、(ii)、(iii)、および(iv)に示された核酸;
を含む、発現ベクター。
[本発明1052]
本発明1051の発現ベクターを含む、宿主細胞。
[本発明1053]
組換え真核宿主細胞、組換え原核宿主細胞、または組換え微生物宿主細胞である、本発明1052の宿主細胞。
[本発明1054]
本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体を含む、組成物。
[本発明1055]
本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
[本発明1056]
医薬として使用するための、本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体、本発明1054の組成物、または本発明1055の薬学的組成物。
[本発明1057]
疾患の治療において使用するための、本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体、本発明1054の組成物、または本発明1055の薬学的組成物。
[本発明1058]
前記使用が癌を治療するためのものである、本発明1057の使用のための二重特異性抗体。
[本発明1059]
前記使用がB細胞悪性腫瘍を治療するためのものである、本発明1058の使用のための二重特異性抗体。
[本発明1060]
前記使用がNHLまたはB細胞白血病を治療するためのものである、本発明1058または1059の使用のための二重特異性抗体。
[本発明1061]
本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体、本発明1054の組成物、または本発明1055の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、疾患の治療方法。
[本発明1062]
医薬の製造のための、本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体の使用。
[本発明1063]
癌の治療用の医薬の製造のための、本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体の使用。
[本発明1064]
前記使用がB細胞悪性腫瘍を治療するためのものである、本発明1063の使用。
[本発明1065]
前記使用がNHLまたはB細胞白血病を治療するためのものである、本発明1063または1064の使用。
[本発明1066]
前記方法または本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体の使用が、1つまたは複数のさらなる治療剤、例えば化学療法剤と組み合わせて使用される、本発明1056~1065のいずれかの方法または使用。
[本発明1067]
以下の工程を含む、本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体を作製するための方法:
a)本発明1051(v)の発現ベクターを含む宿主細胞を培養して、培養培地から該抗体を精製する工程;
b)本発明1051(vi)の発現ベクターを含む宿主細胞を培養して、培養培地から該抗体を精製する工程;
c)ヒンジ領域内のシステインがジスルフィド結合の異性化を起こすことを可能にするのに十分な還元条件下で、第1の抗体を第2の抗体と共にインキュベートする工程;および
d)該二重特異性抗体を得る工程。
[本発明1068]
本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体を含む、診断用組成物。
[本発明1069]
本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体が投与されると、血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料などの患者に由来する試料において、CD3発現細胞とCD20発現細胞との間の架橋が起こるか否かを検出するための方法であって、
(i)該二重特異性抗体およびCD3発現細胞およびCD20発現細胞の間の複合体の形成を可能にする条件下で、該試料を、本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体と接触させる工程;ならびに
(ii)複合体が形成されたか否かを分析する工程;
を含む、前記方法。
[本発明1070]
血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料などの患者に由来する試料における、CD3発現細胞とCD20発現細胞との間の架橋を検出するためのキットであって、
i)本発明1001~1048のいずれかの二重特異性抗体;および
ii)該キットの使用説明書;
を含む、前記キット。
[本発明1071]
本発明1001~1023のいずれかにおいて定義された第1の抗原結合領域と結合するか、または本発明1024~1032のいずれかにおいて定義された第2の抗原結合領域と結合する、抗イディオタイプ抗体。
本発明のこれらの局面および他の局面について、以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1-1】Daudi細胞(A~F)およびJurkat細胞(G~I)に対する二重特異性CD3xCD20抗体の結合。(A)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARおよびIgG1-7D8の結合、(B)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEARおよびIgG1-2F2の結合、(C)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-RTX-FEARおよびIgG1-RTXの結合、(D)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEARおよびIgG1-11B8の結合、(E)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-GA101-FEARおよびIgG1-GA101の結合、(F)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2C6-FEAR(およびIgG1-7D8)の結合。示されているデータは、2回の代表的実験に関する(A~Eは一方により、Fはもう一方による)、フローサイトメトリーによって測定した、Daudi細胞に対する結合の蛍光強度の幾何平均(geometric mean)(幾何平均(geomean))(A~E)および蛍光強度の中央値(F)である。(G)bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR(huCLB-T3/4x7D8)、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-2F2-FEAR(huCLB-T3/4x2F2)、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-GA101-FEAR(huCLB-T3/4xGA101)、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-11B8-FEAR(huCLB-T3/4x11B8)および単一特異性二価IgG1-7D8-FEARのDaudi細胞に対する結合、(H)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-GA101-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-RTX-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2C6-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARおよび単一特異性二価IgG1-huCD3-H1L1-FEALのJurkat細胞に対する結合、(I)bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-2F2-FEAR、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-GA101-FEAR、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-RTX-FEAR、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-11B8-FEAR、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-2C6-FEAR、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxb12-FEARおよび単一特異性二価IgG1-huCLB-T3/4-FEALのJurkat細胞に対する結合。示されているデータは、1回の代表的実験の、フローサイトメトリーによって測定した蛍光強度の中央値である。
【
図2】bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(CD3xCD20)の、T細胞およびB細胞に対する濃度依存的同時結合。二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(CD3xCD20)の、血液中のB細胞およびT細胞に対する同時結合を、フローサイトメトリーによって分析した。示されているデータは1回の代表的実験による。示されているデータは、CD4/CD19またはCD8/CD19フローサイトメトリードットプロットの右上象限内のイベントの数によって測定した、二重陽性(CD19およびCD4[A]またはCD19およびCD8[B])イベントの数である。塗りつぶし記号および白抜き記号は、異なる健常ドナーによるデータを示している。IgG1-2F2(2F2、CD20特異的)およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEAR(CD3xb12、CD3特異的)を陰性対照抗体として含めた。
【
図3-1】ヒトB細胞リンパ腫およびB細胞白血病の細胞株における、CD3xCD20二重特異性抗体によるインビトロでの細胞傷害性の誘導。(A)Daudi細胞を、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(CD3x7D8)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEAR(CD3x11B8)、単一特異性CD20抗体IgG1-7D8(7D8)、IgG1-7D8-FEAR(7D8-FEAR;不活性Fc領域を有する)、IgG1-11B8-F405L、またはIgG1-11B8-FEAR(11B8-FEAR;不活性Fc領域を有する)、および二重特異性対照抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEAR(CD3xb12)と共にインキュベートし、PBMCをエフェクター細胞として用いた。(B)Daudi細胞を、BsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(CD3x7D8)、単一特異性CD20抗体IgG1-7D8-FEAR(7D8-FEAR;不活性Fc領域を有する)、およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEAR(CD3xb12)と共にインキュベートし、精製T細胞をエフェクター細胞として用いた。(C~F)Daudi細胞を、2種類のCD3アーム(huCD3-H1L1-FEAL FabアームおよびhuCLB-T3/4-FEAL Fabアーム、それぞれ白抜き記号および塗りつぶし記号によって表されている)ならびに4種類のCD20アーム:7D8(BsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARおよびBsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR;[C])、11B8(BsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEARおよびBsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-11B8-FEAR;[D])、GA101(BsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-GA101-FEARおよびBsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-GA101-FEAR;[E])および2F2(BsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEARおよびBsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-2F2-FEAR;[F])を基にしたCD3xCD20二重特異性抗体と共にインキュベートした。(G~M)種々のB細胞株を標的細胞として用い、表記の通りの抗体と共にインキュベートした。CD3xCD20二重特異性抗体は、huCD3-H1L1-FEAL Fabアームおよび種々のCD20 Fabアーム(7D8、11B8、2F2、GA101またはRTX)を表記の通りに含んだ。CD3のみの抗体はIgG1-huCD3-H1L1であった。精製T細胞をエフェクター細胞として用いた。(N)Daudi細胞を、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(CD3x7D8)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2C6-FEAR(CD3x2C6)、およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEAR(CD3xb12)と共にインキュベートし、精製T細胞をエフェクター細胞として用いた。示されているデータは、3つのウェルの特異的溶解率(%)の平均値±S.Dであり、各群に関するデータは1回の代表的実験から得た。
【
図4】精製全T細胞(CD3
+)、CD4
+ T細胞(CD3
+ CD8
-)およびCD8
+ T細胞(CD3
+ CD8
+)をエフェクター細胞として用いた、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARによる、インビトロでの細胞傷害性の用量依存的誘導。Daudi細胞を、表記の通りの種々のT細胞サブセット、ならびにbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARまたは対照抗体IgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARおよびIgG1-7D8-FEAR(データは提示せず)の希釈系列と共にインキュベートした。示されているデータは、3つのウェルの腫瘍細胞溶解率(%)の平均値±S.E.M.である(A、B)。
【
図5】Daudi細胞におけるbsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR依存的細胞傷害作用の動態。Daudi細胞を、2例のドナーから単離した精製T細胞の存在下で、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARと共にインキュベートした(AおよびB)。細胞傷害性を、4、12、24、48および72時間のインキュベーション後(A)、または3、16および24時間のインキュベーション後(B)に評価した。示されているデータは、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARと共に種々のインキュベーション時間にわたってインキュベートした3つのウェルの細胞の細胞死滅率(%)±S.D.である。AおよびBに示されているデータは、2例のドナーから単離した精製T細胞を用いた2回の独立した実験による。
【
図6-1】種々のエフェクター・標的比での、CD3xCD20二重特異性抗体によるインビトロでの細胞傷害性の誘導の有効性。細胞傷害性アッセイを、種々のCD3xCD20二重特異性抗体および種々のE/T比を用いて行った。CD3xCD20二重特異性抗体には、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(A)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEAR(B)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-GA101-FEAR(C)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-RTX-FEAR(D)およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEAR(E)を含めた。陰性対照として、bsIG1-huCLB-T3/4-FEALxb12-FEARを10:1のE/T比で含めた。示されているデータは、1回の代表的実験について、細胞傷害性アッセイで測定した、3つのウェルの平均溶解率(%)±S.D.である。各線は種々のE/T比(表記の通り)を表している。
【
図7-1】NOD-SCIDマウスでのRaji-luc共移植(co-engraftment)モデルにおけるCD3xCD20二重特異性抗体の細胞傷害活性。(A)媒体(PBS)またはbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARを表記の用量で投与したマウスにおける平均腫瘍サイズ。エラーバーはS.E.M.を示している。(B)PBSまたはbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの投与後の個々のマウスにおける、腫瘍接種後21日目の腫瘍サイズ。21日目のデータの統計分析を、Kruskal Wallis検定(事後検定としてのDunn多重比較)によって行った。**p<0.01。(C)腫瘍サイズのカットオフを600mm
3に設定したKaplan-Meierプロット。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR投与群とPBSを投与した対照群との間の生存性の差の統計学的有意性を、Mantel Cox分析によって評価した。*p<0.05、**p<0.01、n.s. 有意でない。(D)媒体(PBS)またはbsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARを表記の用量で投与したマウスにおける平均腫瘍サイズ。エラーバーはS.E.M.を示している。(E)種々の投与群の個々のマウスにおける、腫瘍接種後25日目時点での腫瘍サイズ。統計分析は、Kruskal Wallis検定(事後検定としてのDunn多重比較)を用いて行った。(F)腫瘍サイズのカットオフを500mm
3に設定したKaplan-Meierプロット。投与群と媒体対照群との間の差の統計学的有意性を、Mantel Cox分析によって分析した。*p<0.05、**p<0.01、n.s. 有意でない。(G)媒体(PBS)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARまたはbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEARを表記の用量で投与したマウスにおける平均腫瘍サイズ。エラーバーはS.E.M.を示している。(H)PBSまたはbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARまたはbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEARの投与後の個々のマウスにおける、腫瘍接種後20日目の腫瘍サイズ。20日目のデータの統計分析を、一元配置ANOVA(事後検定としてのTukey多重比較)を用いて行った。*p<0.05、**p<0.01。(I)腫瘍サイズのカットオフを500mm
3に設定したKaplan-Meierプロット。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR投与群とPBSを投与した対照群との間の生存性の差の統計学的有意性を、Mantel Cox分析によって評価した。*p<0.05、**p<0.01、n.s. 有意でない。
【
図8-1】HISマウスでのDaudi-luc異種移植モデルにおけるbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの抗腫瘍活性。(A)PBS(媒体対照)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(mAb2)または対照二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEAR(mAb1)を表記の用量レベルで投与した後の、BRGS-HISマウスでのDaudi-luc異種移植モデルにおける平均腫瘍サイズ。腫瘍量は生物発光画像法によって評価した。エラーバーはS.E.M.を示している。(B)統計分析は21日目に行った(Kruskal Wallis検定に続いてDunn多重比較事後検定)。**p<0.01(C)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARまたは対照二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARの投与後のDaudi-luc異種移植片担持BRGS-HISマウスにおける、9日目にフローサイトメトリーによって判定した末梢血白血球集団の特性決定。hCD45
+細胞の割合(%)は、マウス末梢血における総ヒト白血球の割合(%)を表している。hCD19
+の割合(%)、hCD3
+の割合(%)、およびhCD3
+FSC
hiの割合(%)は、ヒト白血球集団におけるそれぞれB細胞、T細胞、および活性化T細胞の割合(%)を表している。
【
図9-1】カニクイザルにおけるbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの単回投与の効果の試験。種々の用量のbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(0.01、0.1、1、または10mg/kg)を投与されたカニクイザルの末梢血における、経時的なB細胞(CD19
+CD21
+細胞)数(A)およびT細胞(CD4
++CD8
+細胞)数(B)。-18日目および-11日目は、投与前のB細胞数およびT細胞数を示している。種々の用量のbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(0.01、0.1、1、または10mg/kg)を投与したカニクイザル由来のリンパ節試料における、全リンパ球集団に占める経時的な割合(%)としてのB細胞(C)およびT細胞(D)。種々の用量のbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(0.01、0.1、1または10mg/kg)を投与したカニクイザルにおける、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IFN-γ、およびTNF-αの血漿中レベル。(E)投与前および最長70日間にわたる投薬後のさまざまな時点の血液試料におけるbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの薬物動態プロフィール。(F)点線は、k
10(クリアランス定数)0.006h
-1、Vc(血漿量)40mL・kg
-1、および体重3.5kgとした2コンパートメントモデルを用いて、IgG1の予想される薬物動態プロフィールを示している。
【
図10】HEK293F細胞において発現された野生型CD20およびCD20-AxPに対する二重特異性CD3xCD20抗体の結合。HEK293F細胞において発現された野生型CD20(A)およびCD20突然変異型(CD20-AxP)(B)に対する、CD3xCD20二重特異性抗体(bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR[huCD3x7D8]、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR[huCLB-T3/4x7D8]、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEAR[huCD3x2F2]、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-2F2-FEAR[huCLB-T3/4x2F2]、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEAR[huCD3x11B8]、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-11B8-FEAR[huCLB-T3/4x11B8]、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-GA101-FEAR[huCD3xGA101]、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-RTX-FEAR[huCD3xRTX]、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2C6-FEAR[huCD3x2C6])の結合を、フローサイトメトリーによって測定した。示されているデータは、1回の代表的実験の平均蛍光強度である。
【
図11】PBMCとbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARとのインキュベーション後のT細胞活性化。健常ドナーPBMCをbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARまたは陽性対照抗体および陰性対照抗体と共にインキュベートし、T細胞集団(CD28
+細胞)におけるCD69発現を測定することによって、T細胞活性化を評価した。実験は5例の健常ドナーから単離したPBMCを用いて行った。2例の代表的ドナーに関する結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
【0023】
CDR領域のアノテーションはIMGT定義に従って行った。
【0024】
発明の詳細な説明
定義
「ヒトCD3」または「CD3」という用語は、本明細書で用いる場合、T細胞補助受容体タンパク質複合体の一部であり、4つの別個の鎖から構成される、ヒト表面抗原分類3(Cluster of Differentiation 3)タンパク質のことを指す。CD3は他の種にも見いだされ、それ故に「CD3」という用語を本明細書において用いることができ、それは文脈と明らかに食い違う場合を除いてヒトCD3に限定されない。哺乳動物の場合、この複合体は、CD3γ(ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖UniProtKB/Swiss-Prot No P09693、またはカニクイザルCD3γ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI7)、CD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No P04234、またはカニクイザルCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI8)、2つのCD3ε(イプシロン)鎖(ヒトCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No P07766;カニクイザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI5;またはアカゲザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No G7NCB9)、およびCD3ζ(ゼータ)鎖(ヒトCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No P20963、カニクイザルCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No Q09TK0)を含有している。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として公知である分子と会合して、Tリンパ球において活性化シグナルを生じる。TCR分子とCD3分子が一緒になってTCR複合体を構成する。
【0025】
「ヒトCD20」または「CD20」という用語は、ヒトCD20(UniProtKB/Swiss-Prot No P11836)のことを指し、腫瘍細胞を含む細胞によって天然に発現されるか、またはCD20遺伝子もしくはcDNAがトランスフェクトされた細胞上で発現される、CD20のあらゆる変異体、アイソフォームおよび種ホモログを含む。種ホモログには、アカゲザルCD20(macaca mulatta;UniProtKB/Swiss-Prot No H9YXP1)が含まれる。
【0026】
「キメラ抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、可変領域が非ヒト種に由来し(例えば、齧歯動物に由来し)、かつ定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体のことを指す。キメラ抗体は抗体工学によって作製することができる。「抗体工学」とは、抗体のさまざまな種類の改変のために一般的に用いられる用語であり、当業者には周知のプロセスである。特に、キメラ抗体は、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Ch. 15に記載されたような標準的なDNA手法を用いて作製することができる。したがって、キメラ抗体は遺伝的または酵素的に操作された組換え抗体でありうる。キメラ抗体を作製することは当業者の知識の範囲内にあり、それ故に本発明によるキメラ抗体の作製を本明細書に記載された方法以外の方法によって行うこともできる。治療用途のためのキメラモノクローナル抗体は、抗体の免疫原性を低下させるために開発される。それらは典型的には、関心対象の抗原に対して特異的である非ヒト(例えば、マウス)可変領域と、ヒト定常抗体重鎖および軽鎖ドメインとを含有しうる。キメラ抗体に関連して用いられる「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域のことを指す。
【0027】
「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高いレベルの配列相同性を有するように改変された非ヒト可変ドメインとを含有する、遺伝的に操作された非ヒト抗体のことを指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を、相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)に対して接ぎ合わせることによって達成することができる(WO92/22653号およびEP0629240号を参照)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再構成するためには、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)由来のフレームワーク残基を、ヒトフレームワーク領域内に置換導入すること(復帰突然変異)が必要なことがある。構造的相同性モデリングは、抗体の結合特性にとって重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を同定するのに役立ちうる。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、任意で非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を含む主にヒト性のフレームワーク領域、および完全にヒト性の定常領域を含みうる。任意で、親和性および生化学特性などの好ましい特徴を有するヒト化抗体を得るために、必ずしも復帰突然変異ではない、追加のアミノ酸改変を適用してもよい。
【0028】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体のことを指す。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってはコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的な突然変異誘発によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含んでもよい。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に対して接ぎ合わされた抗体は含まないものとする。本発明のヒトモノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション手法などの従来のモノクローナル抗体法を含む、種々の手法によって作製することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいものの、原理的には、モノクローナル抗体を作製するための他の手法、例えば、Bリンパ球のウイルス性もしくは発癌性形質転換、またはヒト抗体遺伝子のライブラリーを用いるファージディスプレイ手法などを使用することもできる。
【0029】
ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための適した動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ作製は、非常によく確立された手順である。免疫処置プロトコール、および免疫処置を受けた融合用の脾細胞の単離のための手法は、当技術分野において公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。
【0030】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を保有するトランスジェニックマウスまたはトランスクロモソーム性マウスを用いて作製することができる。
【0031】
「免疫グロブリン」という用語は、1対の軽(L)低分子量鎖および1対の重(H)鎖という2対のポリペプチド鎖からなり、その4つすべてがジスルフィド結合によって相互接続されている、構造的に類縁性のある糖タンパク質のクラスのことを指す。免疫グロブリンの構造は詳細に特徴づけられている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。手短に述べると、各重鎖は典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHまたはVHと略記)および重鎖定常領域(本明細書ではCHまたはCHと略記)で構成される。重鎖定常領域は典型的には、CH1、CH2およびCH3という3つのドメインで構成される。各軽鎖は典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと略記)および軽鎖定常領域(本明細書ではCLまたはCLと略記)で構成される。軽鎖定常領域は典型的には、CLという1つのドメインで構成される。VH領域およびVL領域を、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域の間に散在する、相補性決定領域(CDR)とも称される超可変性の領域(または超可変領域、これらは構造的に規定されたループの配列および/または形態の点で超可変性でありうる)にさらに細分することもできる。各VHおよびVLは典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901 917 (1987))も参照されたい。別の記述があるか、または文脈と食い違う場合を除き、CDR配列は本明細書において、IMGT規則(Brochet X., Nucl Acids Res. 2008;36:W503-508およびLefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212;また、インターネットのhttpアドレスhttp://www.imgt.org/も参照されたい)に従って同定される。
【0032】
別の記述があるか、または文脈と食い違う場合を除き、本発明における定常領域内のアミノ酸位置は、EU番号付け(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(1):78-85;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 1991 NIH Publication No. 91-3242)による。
【0033】
「抗体」(Ab)という用語は、本発明の文脈において、典型的な生理的条件下で、意味のある期間、例えば少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間もしくはそれ以上、約48時間もしくはそれ以上、約3日、4日、5日、6日、7日もしくはそれ以上の日数など、または任意の他の妥当な機能的に定められた期間(例えば、抗原に対する抗体結合に伴う生理的応答を誘導、促進、強化および/もしくはモジュレートするのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を動因するのに十分な時間)の半減期で抗原と特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそれらのいずれかの誘導体のことを指す。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体(Ab)の定常領域は、免疫系のさまざまな細胞(エフェクター細胞など)および補体系の成分、例えば補体活性化の古典的経路における第一成分であるC1qなどを含む宿主組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介しうる。上述の通り、別の記述があるか、または文脈と明らかに食い違う場合を除き、本明細書における抗体という用語は、抗原結合性断片である、すなわち抗原と特異的に結合する能力を保っている、抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能が完全長抗体の断片によって遂行されうることは示されている。「抗体」という用語の範囲に含まれる抗原結合性断片の例には、(i)Fab'またはFab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片、またはWO007059782号(Genmab)に記載された一価抗体;(ii)F(ab')2断片、ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;ならびに(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインから本質的になるFv断片;(v)dAb断片(Ward et al., Nature 341 , 544-546 (1989))、これはVHドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれる(Holt et al;Trends Biotechnol. 2003 Nov;21(11):484-90);(vi)キャメリド(camelid)またはナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;5(1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらを、VL領域およびVH領域が対合して一価分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)として公知である。例えば、Bird et al., Science 242, 423-426(1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)を参照されたい)を形成する1つのタンパク質鎖として作り出されることを可能にする合成リンカーによって、組換え方法を用いて連結されてもよい。別の記述があるか、または文脈によって明らかに示される場合を除き、そのような単鎖抗体は、抗体という用語の範囲内に含まれる。そのような断片は抗体の意味に一般に含まれるが、それらは集合的およびそれぞれ独立に本発明の特有の特徴であり、異なる生物学的特性および有用性を示す。本発明に関連して、これらおよび他の有用な抗体断片について本明細書においてさらに考察する。抗体という用語は、別に指定する場合を除き、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組換え手法などの任意の公知の技術によってもたらされる、抗原と特異的に結合する能力を保っている抗体断片(抗原結合性断片)も含むことも理解されるべきである。作製される抗体は任意のアイソタイプを有してよい。
【0034】
「二重特異性抗体」という用語は、本発明の文脈において、異なる抗体配列によって定められる2種の異なる抗原結合領域を有する抗体のことを指す。
【0035】
本明細書で用いる場合、文脈と食い違う場合を除き、「Fabアーム」または「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖ペアのことを指し、本明細書において「半分子」と互換的に用いられる。
【0036】
本明細書で用いる場合、文脈と食い違う場合を除き、「Fc領域」という用語は、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む抗体領域のことを指す。
【0037】
本明細書で用いる場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンのクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、もしくはIgM)のことを指す。
【0038】
「一価抗体」という用語は、本発明の文脈において、抗体分子が抗原の単一分子と結合することができ、それ故に抗原架橋を行えないことを意味する。
【0039】
「CD20抗体」または「抗CD20抗体」とは、抗原CD20と特異的に結合する、上記の通りの抗体のことである。
【0040】
「CD3抗体」または「抗CD3抗体」とは、抗原CD3、特にヒトCD3ε(イプシロン)と特異的に結合する、上記の通りの抗体のことである。
【0041】
「CD3xCD20抗体」または「抗CD3xCD20抗体」とは、2種の異なる抗原結合領域を含み、その一方が抗原CD20と特異的に結合し、一方がCD3と特異的に結合する、二重特異性抗体のことである。
【0042】
好ましい態様において、本発明の二重特異性抗体は単離されたものである。「単離された二重特異性抗体」とは、本明細書で用いる場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない二重特異性抗体(例えば、CD20およびCD3と特異的に結合し、CD20またはCD3と特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に含まない、単離された二重特異性抗体)を指すことを意図している。
【0043】
「エピトープ」という用語は、抗体との特異的結合を可能にするタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面原子団からなり、通常、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体構造エピトープおよび非立体構造エピトープは、後者ではなく前者との結合が、変性溶媒の存在下で失われるという点で区別される。エピトープは、結合に直接的に関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性構成要素とも呼ばれる)、および、特定の抗原結合ペプチドによって効果的にブロックまたはカバーされるアミノ酸残基(言い換えると、そのアミノ酸残基は特定の抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)などの、結合に直接的に関与しない他のアミノ酸残基を含みうる。
【0044】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、単分子組成の抗体分子の調製物のことを指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を呈する。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、単一の結合特異性を呈する抗体のことを指す。ヒトモノクローナル抗体は、機能的ヒト抗体を産生するように再編成されたヒト重鎖導入遺伝子レパートリーおよび軽鎖導入遺伝子レパートリーを含むゲノムを有するトランスジェニック性またはトランスクロモソーム性非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を、不死化細胞と融合させたものを含むハイブリドーマによって作製することができる。
【0045】
本明細書で用いる場合、所定の抗原またはエピトープに対する抗体の結合に関連した「結合」という用語は、典型的には、例えば、リガンドとして抗原、分析物として抗体を用いてBIAcore 3000機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって測定した時に、約10-7Mもしくはそれ未満、例えば約10-8Mもしくはそれ未満、例えば約10-9Mもしくはそれ未満、約10-10Mもしくはそれ未満、または約10-11Mもしくはそれ未満のKDに対応する親和性での結合のことを指し、所定の抗原または類縁の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)との結合の親和性の少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性が低くなる量は抗体のKDに依存し、その結果、抗体のKDが非常に小さい(すなわち、抗体が高特異性である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低くなる量は少なくとも10,000倍でありうる。
【0046】
「kd」(sec-1)という用語は、本明細書で用いる場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数のことを指す。前記の値は、koff値とも称される。
【0047】
「KD」(M)という用語は、本明細書で用いる場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数のことを指す。
【0048】
本明細書で用いる場合、「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体タンパク質における第1のCH3領域と第2のCH3領域との間の相互作用のことを指す。
【0049】
本明細書で用いる場合、「第1および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体タンパク質における第1のCH3領域ともう1つの第1のCH3領域との間の相互作用、および第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体タンパク質における第2のCH3領域ともう1つの第2のCH3領域との間の相互作用のことを指す。
【0050】
「還元条件」または「還元性環境」という用語は、ある基質、本明細書では抗体のヒンジ領域内のシステイン残基が、酸化されるよりも還元される可能性が高い、条件または環境のことを指す。
【0051】
本発明はまた、例となる二重特異性抗体のVL領域、VH領域または1つもしくは複数のCDRの機能的変異体を含む二重特異性抗体も提供する。二重特異性抗体に関連して用いられるVL、VHまたはCDRの機能的変異体は、二重特異性抗体の各アームが、親二重特異性抗体の親和性および/または特異性/選択性の少なくとも実質的な割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれより高い割合)を依然として保つことを可能にし、場合によってはそのような二重特異性抗体は、親二重特異性抗体よりも高い親和性、選択性および/または特異性を伴ってもよい。
【0052】
そのような機能的変異体は、典型的には、親二重特異性抗体に対して高度の配列同一性を保っている。2つの配列間の同一性(%)は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した上で、配列が共通に有する同一な位置の数の関数である(すなわち、相同性(%)=同一な位置の数/位置の総数×100)。2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の同一性(%)は、例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17 (1988)のアルゴリズムを用い、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を用いて、決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性(%)を、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453 (1970)のアルゴリズムを用いて決定することもできる。
【0053】
例示的な変異体には、主として保存的置換によって、親二重特異性抗体配列のVHおよび/またはVLおよび/またはCDR領域と異なるもの;例えば、変異体における置換のうちの例えば10個、例えば9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個が保存的なアミノ酸残基の置き換えであるものが含まれる。
【0054】
本発明の文脈において、保存的置換は、以下の表に示されているアミノ酸のクラス内での置換によって定義することができる。
【0055】
【0056】
本発明の文脈においては、別に指示する場合を除き、以下の表記法が、突然変異を記述するために用いられる;i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、K409Rと表記され、これは位置409におけるリジンのアルギニンによる置換を意味する;かつii)特定の変異体に関して、任意のアミノ酸残基を示すために、コードXaaおよびXを含む特定の三文字コードまたは一文字コードが用いられる。したがって、位置409におけるリジンのアルギニンによる置換はK409Rと称され、位置409におけるリジンの任意のアミノ酸残基による置換はK409Xと称される。位置409におけるリジンの欠失の場合には、それはK409*によって示される。
【0057】
「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、本明細書で用いる場合、発現ベクター、例えば本発明の抗体をコードする発現ベクターが導入された細胞を指すことを意図している。組換え宿主細胞には、例えば、トランスフェクトーマ、例えば、CHO細胞、CHO-S細胞、HEK細胞、HEK293細胞、HEK-293F細胞、Expi293F細胞、PER.C6細胞またはNS0細胞、およびリンパ球細胞が含まれる。
【0058】
「治療」という用語は、症状または疾患状態を和らげる、回復させる、停止させる、または根絶する(治癒させる)ことを目的とする、治療活性のある本発明の二重特異性抗体の有効量の投与のことを指す。
【0059】
「有効量」または「治療的有効量」という用語は、必要な投与量および期間で、所望の治療結果を達成するのに有効な量のことを指す。二重特異性抗体の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに二重特異性抗体が個体において所望の応答を誘発する能力などの要因に応じて異なりうる。治療的有効量はまた、抗体または抗体部分のいかなる毒性作用または有害作用よりも治療的に有益な効果が上回る量のことでもある。
【0060】
「抗イディオタイプ抗体」という用語は、抗体の抗原結合部位に一般に付随する特有の決定基を認識する抗体のことを指す。
【0061】
本発明のさらなる局面および態様
上記のように、本発明は、一方がCD3に対する結合特異性を有し、一方がCD20に対する結合特異性を有する、2種の異なる抗原結合領域を有する二重特異性抗体に関する。
【0062】
したがって、本発明は、(i)ヒトCD3ε(イプシロン)と結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記第1の抗原結合領域が、
a)それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3;
b)それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:54に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3;
c)それぞれSEQ ID NO:73、2および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:73のX2はMおよびPから選択される;
d)それぞれSEQ ID NO:74、2および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:74のX3はAである;
e)それぞれSEQ ID NO:1、75および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:75のX4はEである;
f)それぞれSEQ ID NO:1、2および77に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:77のX6はF、G、I、K、LおよびNから選択される;
g)それぞれSEQ ID NO:1、2および78に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:78のX7はPである;
h)それぞれSEQ ID NO:1、2および79に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:79のX8はAおよびGから選択される;
i)それぞれSEQ ID NO:1、2および80に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:80のX8はM、RおよびVから選択される;または
j)それぞれSEQ ID NO:55、56および57に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:58に示される配列、配列DTS、およびSEQ ID NO:59に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3;
を含む、前記第1の結合アームを含み、かつ
(ii)ヒトCD20と結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームを含む、
二重特異性抗体に関する。
【0063】
本明細書によって、CD3イプシロンに対してさまざまな結合親和性を有する二重特異性抗体が提供される。一態様において、CD3に対する結合親和性は、親抗CD3結合アームに対するよりも低いことが好ましい。実験データにより、CD3イプシロンに対する結合親和性を低下させる置換を有する抗CD3結合アームを有する、c)~i)における上記のような二重特異性CD3xCD20抗体は、親二重特異性抗CD3xCD20抗体の腫瘍死滅効力を維持することが示されている。
【0064】
一態様において、本発明は、(i)ヒトCD3ε(イプシロン)と結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記第1の抗原結合領域が、(a)それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3またはSEQ ID NO:54、または(b)それぞれSEQ ID NO:55、56および57に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:58に示される配列、配列DTS、およびSEQ ID NO:59に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む第1の結合アーム、ならびに(ii)ヒトCD20と結合する第2の抗原結合領域を含む第2の結合アーム、を含む二重特異性抗体に関する。
【0065】
一態様において、本発明は、ヒトCD3ε(イプシロン)と結合する第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記第1の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、前記第1の結合アームを含む、二重特異性抗体に関する。
【0066】
「抗原結合領域を含む結合アーム」という用語は、抗原結合領域を含む抗体分子または断片を意味する。したがって、結合アームは、例えば、6つのVHおよびVL CDR領域、VH配列およびVL配列、Fab断片または半分子抗体(すなわち、1つの重鎖および1つの軽鎖を含む)であってよい。
【0067】
一態様において、第1の抗原結合領域は第1の重鎖可変配列(VH)および第1の軽鎖可変配列(VL)を含み、第2の抗原結合領域は第2の重鎖可変配列(VH)および第2の軽鎖可変配列(VL)を含む。
【0068】
一態様において、第1の結合アームは、第1の重鎖可変配列(VH)および第1の重鎖定常配列(CH)を含む第1の重鎖ならびに第1の軽鎖可変配列(VL)および第1の軽鎖定常配列(CL)を含む第1の軽鎖を含み、かつ(ii)第2の結合アームは、第2の重鎖可変配列(VH)および第2の重鎖定常配列(CH)を含む第2の重鎖および第2の軽鎖可変配列(VL)および第2の軽鎖定常配列(CL)を含む第2の軽鎖を含む。
【0069】
一態様において、二重特異性抗体は、完全長抗体、例えば、完全長IgG1抗体、例えば、完全長IgG1,λ(ラムダ)、κ(カッパ)抗体またはIgG1,κ(カッパ)、κ(カッパ)抗体などである。
【0070】
第1の結合アーム
第1の結合アームは、ヒトCD3ε(イプシロン)と結合する第1の抗原結合領域を含み、ここで前記第1の抗原結合領域は、
a)それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3;
b)それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:54に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3;
c)それぞれSEQ ID NO:73、2および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:73のX2はMおよびPから選択される;
d)それぞれSEQ ID NO:74、2および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:74のX3はAである;
e)それぞれSEQ ID NO:1、75および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:75のX4はEである;
f)それぞれSEQ ID NO:1、2および77に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:77のX6はF、G、I、K、LおよびNから選択される;
g)それぞれSEQ ID NO:1、2および78に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:78のX7はPである;
h)それぞれSEQ ID NO:1、2および79に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:79のX8はAおよびGである;
i)それぞれSEQ ID NO:1、2および80に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ここでSEQ ID NO:80のX8はM、RおよびVである;または
j)それぞれSEQ ID NO:55、56および57に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:58に示される配列、配列DTS、およびSEQ ID NO:59に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3;
を含む。
【0071】
一態様において、第1の結合アームはヒトCD3ε(イプシロン)と結合する第1の抗原結合領域を含み、前記第1の抗原結合領域は、(a)それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:54に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、または(b)それぞれSEQ ID NO:55、56および57に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:58に示される配列、配列DTS、およびSEQ ID NO:59に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、を含む。
【0072】
一態様において、第1の結合アームはヒトCD3ε(イプシロン)と結合する第1の抗原結合領域を含み、前記第1の抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0073】
上記の(a)において定義された6つのCDR配列は、SP34と表記されるマウス抗体に由来する。この抗体のヒト化型が作製されており、このヒト化抗体は本明細書においてhuCD3と表記され、さらにWO2015001085号(Genmab)に開示されている。
【0074】
上記の(b)において定義された6つのCDR配列は、huCLB-T3/4に由来する。huCLB-T3/4は、マウスCD3抗体CLB-T3/4のヒト化型である(Parren et al., Res Immunol. 1991, 142(9):749-63, これは配列開示を含め、その全体が参照により組み入れられる)。手短に述べると、Parrenら(1991)に公開されているCLB-T3/4のマウスVH配列およびVL配列のヒトVHおよびVLレパートリーに対するアラインメントを、IMGTのV-QUESTを用いて行う。見いだされた最も近いヒト生殖細胞系は、VH遺伝子についてはIGHV3-21*01であり、VL遺伝子についてはIGKV3-11*01(+IGKJ4*02)であった。マウスVH配列およびVL配列中の異なっていたアミノ酸残基をすべて、CLB-T3/4のCDR領域内のものを除いて、ヒト同等物によって置き換えた。VH配列に関しては関連性のあるJ領域が見いだされなかったため、共通の
配列を重鎖のFR4領域に対して用いた。両方の配列を妥当な発現ベクター中にクローニングし、HEK293F細胞へのコトランスフェクションによって発現させた。huCLB-T3/4は、SEQ ID NO:17に示される配列を含むVH領域(VH huCLB-T3/4)、およびSEQ ID NO:18に示される配列を含むVL領域(VL huCLB-T3/4)を含む。huCLB-T3/4は、それぞれSEQ ID NO:55、56および57に示されるVH CDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに、それぞれSEQ ID NO:58に示される配列、配列DTS、およびSEQ ID NO:59に示される配列であるVL CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0075】
さまざまなヒト化huCD3抗体およびhuCLB-T3/4が、ヒトCD3ε(イプシロン)と結合する。
【0076】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1の重鎖可変配列(VH)を含み、ここで前記VH配列は、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列;
b)SEQ ID NO:7に示されるVH配列;
c)SEQ ID NO:8に示されるVH配列;
d)SEQ ID NO:9に示されるVH配列;および
e)SEQ ID NO:17に示されるVH配列、
からなる群より選択されるVH配列に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0077】
一態様において、第1の抗原結合領域のVH配列は、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列;
b)SEQ ID NO:7に示されるVH配列;
c)SEQ ID NO:8に示されるVH配列;
d)SEQ ID NO:9に示されるVH配列;
e)SEQ ID NO:17に示されるVH配列、
からなる群より選択される。
【0078】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、第1の抗原結合領域の第1のVL配列を含み、ここで前記VL配列は、
a)SEQ ID NO:10に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:11に示されるVL配列;
c)SEQ ID NO:12に示されるVL配列;および
d)SEQ ID NO:18に示されるVL配列、
からなる群より選択されるVL配列に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0079】
一態様において、第1の抗原結合領域のVL配列は、
SEQ ID NO:10に示されるVL配列;
a)SEQ ID NO:11に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:12に示されるVL配列;および
c)SEQ ID NO:18に示されるVL配列、
からなる群より選択される。
【0080】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、第1のVH配列およびVL配列を含み、ここで第1の抗原結合領域の前記VH配列およびVL配列は、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:8に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
c)SEQ ID NO:9に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
d)SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL配列;
e)SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL配列;
f)SEQ ID NO:7に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
g)SEQ ID NO:7に示されるVH配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL配列;
h)SEQ ID NO:7に示されるVH配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL配列;
i)SEQ ID NO:8に示されるVH配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL配列;
j)SEQ ID NO:8に示されるVH配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL配列;
k)SEQ ID NO:9に示されるVH配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL配列;
l)SEQ ID NO:9に示されるVH配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL配列;ならびに
m)SEQ ID NO:17に示されるVH配列およびSEQ ID NO:18に示されるVL配列;
からなる群より選択される。
【0081】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、第1のVH配列およびVL配列を含み、ここで第1の抗原結合領域の前記VH配列およびVL配列は、
a)SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列;
b)SEQ ID NO:17に示されるVH配列およびSEQ ID NO:18に示されるVL配列;
からなる群より選択される。
【0082】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID No:17および18に示される第1のVH配列およびVL配列を含む。
【0083】
一態様において、開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも90%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、第1の抗原結合領域を含む。一態様において、配列の違いはフレームワーク配列中にあり、CDR配列中にはない。したがって、一態様において、本発明は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも90%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む二重特異性抗体に関し、ここでCDR配列は重鎖についてはSEQ ID NO:1、2、および3に示される通りであり、配列GTNについてはSEQ ID NO:4に示される通りであり、軽鎖についてはSEQ ID NO:5に示される通りの配列であり、当該CDR配列は突然変異していない。
【0084】
一態様において、開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも95%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む。一態様において、本発明は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも95%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む二重特異性抗体に関し、ここでCDR配列は重鎖についてはSEQ ID NO:1、2、および3に示される通りであり、配列GTNについてはSEQ ID NO:4に示される通りであり、軽鎖についてはSEQ ID NO:5に示される通りの配列であり、当該CDR配列は突然変異していない。
【0085】
開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様においては、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも97%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも97%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む。一態様において、本発明は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも97%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも97%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む二重特異性抗体に関し、ここでCDR配列は重鎖についてはSEQ ID NO:1、2、および3に示される通りであり、配列GTNについてはSEQ ID NO:4に示される通りであり、軽鎖についてはSEQ ID NO:5に示される通りの配列であり、当該CDR配列は突然変異していない。
【0086】
開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様においては、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも98%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む。一態様において、本発明は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも98%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む二重特異性抗体に関し、ここでCDR配列は重鎖についてはSEQ ID NO:1、2、および3に示される通りであり、配列GTNについてはSEQ ID NO:4に示される通りであり、軽鎖についてはSEQ ID NO:5に示される通りの配列であり、当該CDR配列は突然変異していない。
【0087】
開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様においては、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも99%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む。一態様において、本発明は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列に対して少なくとも99%の配列同一性、およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有する第1の抗原結合領域を含む二重特異性抗体に関し、ここでCDR配列は重鎖についてはSEQ ID NO:1、2、および3に示される通りであり、配列GTNについてはSEQ ID NO:4に示される通りであり、軽鎖についてはSEQ ID NO:5に示される通りの配列であり、当該CDR配列は突然変異していない。
【0088】
本明細書によって本発明の二重特異性抗体が提供され、ここでVH配列およびVL配列は、親配列に対して少なくとも90%の配列同一性の範囲内で異なっていてもよい。変異体は親抗体と同じ特性を有することが好ましい。ある態様において、配列はフレームワーク配列のみに違いがあり、そのためCDR配列は親CDR配列と同一である。
【0089】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列を含む。
【0090】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の第1の結合アームは、マウス抗体に由来する。
【0091】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の第1の結合アームは、ヒト化抗体に由来する。
【0092】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の第1の結合アームは、完全長抗体に由来する。
【0093】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の第1の結合アームは、完全長IgG1,λ(ラムダ)抗体またはIgG1,κ(カッパ)抗体に由来する。
【0094】
第2の結合アーム
本発明による二重特異性抗体における第2の結合アームとして用いるための適したCD20抗体は、位置170のアミノ酸残基アラニンも位置172のプロリンも含まずかつ必要としないが、位置163のアミノ酸残基アスパラギンおよび位置166のアスパラギンを含むかまたは必要とする、ヒトCD20上のエピトープと結合するCD20抗体である。そのような抗体の例は、WO2004035607号(Genmab)に開示された2F2および7D8と表記される抗体、ならびにWO2005103081号(Genmab)に開示された2C6と表記される抗体である。2F2、7D8、および2C6のCDR配列は表1に開示されている。
【0095】
本発明による二重特異性抗体における第2の結合アームとして用いるための、さらなる適したCD20抗体は、位置170のアミノ酸残基アラニンも位置172のプロリンも含まずかつ必要としない、ヒトCD20上のエピトープと結合するCD20抗体である。そのような抗体の一例は、WO2004035607号(Genmab)に開示された11B8である。11B8のCDR配列は表1に開示されている。
【0096】
本発明による二重特異性抗体における第2の抗原結合領域として用いるための、さらなる適したCD20抗体は、機能的オフ速度が低いCD20抗体であり、これは結合後にCD20から緩徐に解離する抗体を意味する。
【0097】
kd解離定数またはkoff速度は、WO2004035607号の実施例5における見出し「抗CD20 F(ab)2断片の解離速度」の下に記載されている方法によって決定することができる。したがって、一態様において、CD20抗体は、上記の方法による決定で、1.0×-4 sec-1以下、例えば、8.0×10-5 sec-1以下、例えば8.0×10-5 sec-1~4.0×10-5 sec-1の範囲内にある解離定数kdを有する。
【0098】
本発明による二重特異性抗体における第2の結合アームとして用いるための、さらなる適したCD20抗体は、WO2004035607号に開示された11B8と表記される抗体の6つのCDR配列を有するCD20抗体である。11B8のCDR配列は表1に開示されている。
【0099】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、ヒトCD20と結合する第2の抗原結合領域を含み、この第2の抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、
(ii)SEQ ID NO:38であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:39であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、
(iii)SEQ ID NO:42であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:43であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:44であるVH CDR3領域、または
(iv)SEQ ID NO:49であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:50であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:51であるVH CDR3領域、
から選択される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0100】
好ましい態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、およびSEQ ID NO:34であるVH CDR3領域を含む第2の抗原結合領域を含む。
【0101】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、ヒトCD20と結合する第2の抗原結合領域を含み、この第2の抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、
(ii)SEQ ID NO:38であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:39であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、
(iii)SEQ ID NO:42であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:43であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:44であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
(iv)SEQ ID NO:49であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:50であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:51であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
(v)SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
(vi)SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
(vii)SEQ ID NO:38であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:39であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
(viii)SEQ ID NO:38であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:39であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
(ix)SEQ ID NO:42であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:43であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:44であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、
(x)SEQ ID NO:42であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:43であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:44であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:52であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:53であるVL CDR3領域、
(xi)SEQ ID NO:49であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:50であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:51であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域、または
(xii)SEQ ID NO:49であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:50であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:51であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:45であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:46であるVL CDR3領域、
から選択される重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖可変(LH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む。
【0102】
好ましい態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域を含む第2の抗原結合領域を含む。
【0103】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0104】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0105】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0106】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0107】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0108】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0109】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0110】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0111】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0112】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0113】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0114】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、SEQ ID NO:47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0115】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、第2のVH配列およびVL配列を含み、ここで第2の抗原結合領域の前記VH配列およびVL配列は、
(i)SEQ ID NO:27であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列、
(ii)SEQ ID NO:37であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列、
(iii)SEQ ID NO:40であるVH配列およびSEQ ID NO:41であるVL配列、
(iv)SEQ ID NO:47であるVH配列およびSEQ ID NO:48であるVL配列、
(v)SEQ ID NO:27であるVH配列およびSEQ ID NO:41であるVL配列、
(vi)SEQ ID NO:27であるVH配列およびSEQ ID NO:48であるVL配列、
(vii)SEQ ID NO:37であるVH配列およびSEQ ID NO:41であるVL配列、
(viii)SEQ ID NO:37であるVH配列およびSEQ ID NO:48であるVL配列、
(ix)SEQ ID NO:40であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列、
(x)SEQ ID NO:40であるVH配列およびSEQ ID NO:48であるVL配列、
(xi)SEQ ID NO:47であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列、または
(xii)SEQ ID NO:47であるVH配列およびSEQ ID NO:41であるVL配列、
からなる群より選択される。
【0116】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:27であるVH配列およびSEQ ID NO:28であるVL配列を含む。
【0117】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の第2の結合アームは、ヒト抗体に由来する。
【0118】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の第2の結合アームは、完全長抗体に由来する。
【0119】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の第2の結合アームは、IgG1,κ(カッパ)抗体に由来する。
【0120】
二重特異性抗体の形式
本発明は、CD20発現性腫瘍細胞のT細胞媒介性死滅を効果的に促進する二重特異性CD3xCD20抗体を提供する。個々の用途に望まれる機能的特性に応じて、特定の抗原結合領域を、本発明によって提供される抗体または抗原結合領域のセットから選択することができる。二重特異性抗体の形式および用途は数多くのさまざまなものが当技術分野において公知であり、最近、Kontermann;Drug Discov Today, 2015 Jul;20(7):838-47および;MAbs, 2012 Mar-Apr;4(2):182-97によって総説が行われている。
【0121】
本発明による二重特異性抗体は、いかなる特定の二重特異性形式にも、それを作製する方法にも限定されない。
【0122】
本発明において用いうる二重特異性抗体分子の例には、以下のものが含まれる:(i)複数の異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有する単一の抗体;(ii)例えば、追加のペプチドリンカーによって縦列に連結された2つのscFvを介して、2種類のエピトープに対する特異性を有する、単鎖抗体;(iii)各軽鎖および重鎖が短いペプチド結合を通じて縦列になった2つの可変ドメインを含有する二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-Ig(商標)) Molecule, In: Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010));(iv)化学的に連結された二重特異性(Fab')2断片;(v)2つの単鎖ダイアボディの融合の結果、標的抗原のそれぞれに対して2つの結合部位を有する四価の二重特異性抗体が生じる、タンダブ(Tandab);(vi)scFvとダイアボディの組み合わせの結果として多価分子が生じる、フレキシボディ(flexibody);(vii)プロテインキナーゼAの中の「二量体化・ドッキングドメイン」に基づく、いわゆる「ドック・アンド・ロック(dock and lock)」分子、これはFabに適用されると、2つの同一のFab断片が1つの異なるFab断片と連結したものからなる三価の二重特異性結合タンパク質を生じうる;(viii)例えば、2つのscFvがヒトFabアームの両端と融合したものを含む、いわゆるスコルピオン(Scorpion)分子;ならびに(ix)ダイアボディ。
【0123】
一態様において、本発明の二重特異性抗体は、ダイアボディ、クロスボディ(cross-body)、または制御下でのFabアーム交換(WO2011131746号(Genmab)に記載されたような)を介して得られる二重特異性抗体である。
【0124】
種々のクラスの二重特異性抗体の例には、以下のものが非限定的に含まれる:(i)ヘテロ二量体化を強制的に行わせる相補的CH3ドメインを有するIgG様分子;(ii)分子の2つの側面がそれぞれ、少なくとも2種の異なる抗体のFab断片またはFab断片の一部を含む、組換えIgG様二重標的指向性分子;(iii)全長IgG抗体が追加のFab断片またはFab断片の一部と融合されたIgG融合分子;(iv)単鎖Fv分子または安定化されたダイアボディが、重鎖定常ドメイン、Fc領域、またはそれらの一部と融合された、Fc融合分子;(v)異なるFab断片が融合して1つになり、重鎖定常ドメイン、Fc領域、またはそれらの一部と融合された、Fab融合分子;および(vi)異なる単鎖Fv分子または異なるダイアボディまたは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が互いに、あるいは重鎖定常ドメイン、Fc領域、もしくはそれらの一部と融合された別のタンパク質もしくは担体分子と融合された、ScFvおよびダイアボディを基にした抗体および重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)。
【0125】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例には、Triomab/Quadroma分子(Trion Pharma/Fresenius Biotech;Roche、WO2011069104号)、いわゆるノブ・イントゥー・ホール(Knobs-into-Holes)分子(Genentech、WO9850431号)、CrossMAb(Roche、WO2011117329号)および静電マッチ(electrostatically-matched)分子(Amgen、EP1870459号およびWO2009089004号;Chugai、US201000155133号; Oncomed、WO2010129304号)、LUZ-Y分子(Genentech、Wranik et al. J. Biol. Chem. 2012, 287(52): 43331-9, doi: 10.1074/jbc.M 112.397869. Epub 2012 Nov 1)、DIG-bodyおよびPIG-body分子(Pharmabcine、WO2010134666号、WO2014081202号)、ストランド交換操作ドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body)(SEEDbody)分子(EMD Serono、WO2007110205号)、Biclonics分子(Merus、WO2013157953号)、FcΔAdp分子(Regeneron、WO201015792号)、二重特異性IgG1およびIgG2分子(Pfizer/Rinat、WO11143545号)、Azymetricスカフォールド分子(Zymeworks/Merck、WO2012058768号)、mAb-Fv分子(Xencor、WO2011028952号)、二価二重特異性抗体(WO2009080254号)ならびにDuoBody(登録商標)分子(Genmab A/S、WO2011131746号)が非限定的に含まれる。
【0126】
組換えIgG様二重標的指向性分子の例には、二重標的指向性(DT)-Ig(Dual Targeting (DT)-Ig)分子(WO2009058383号)、ツー・イン・ワン(Two-in-one)抗体(Genentech;Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614)、架橋Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star、WO2008003116号)、Zybody分子(Zyngenia;LaFleur et al. MAbs. 2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通の軽鎖を用いるアプローチ(Crucell/Merus、US7,262,028号)、KλBodies(NovImmune、WO2012023053号)およびCovX-body(CovX/Pfizer;Doppalapudi, V.R., et al 2007. Bioorg. Med. Chem. Lett. 17,501-506)が非限定的に含まれる。
【0127】
IgG融合分子の例には、二重可変ドメイン(Dual Variable Domain)(DVD)-Ig分子(Abbott、US7,612,181号)、二重ドメイン二重頭部抗体(Unilever;Sanofi Aventis、WO20100226923号)、IgG様二重特異性分子(ImClone/Eli Lilly、Lewis et al. Nat Biotechnol. 2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ;Dimasi et al. J Mol Biol. 2009 Oct 30;393(3):672-92)およびBsAb分子(Zymogenetics、WO2010111625号)、HERCULES分子(Biogen Idec、US007951918号)、scFv融合分子(Novartis)、scFv融合分子(Changzhou Adam Biotech Inc、CN 102250246号)ならびにTvAb分子(Roche、WO2012025525号、WO2012025530号)が非限定的に含まれる。
【0128】
Fc融合分子の例には、ScFv/Fc融合体(Pearce et al., Biochem Mol Biol Int. 1997 Sep;42(6):1179-88)、SCORPION分子(Emergent BioSolutions/Trubion、Blankenship JW, et al. AACR 100 th Annual meeting 2009 (Abstract # 5465);Zymogenetics/BMS、WO2010111625号)、二重親和性リターゲティング技術(Retargeting Technology)(Fc-DART)分子(MacroGenics、WO2008157379号、WO2010080538号)およびDual(ScFv)2-Fab分子(National Research Center for Antibody Medicine‐China)が非限定的に含まれる。
【0129】
Fab融合二重特異性抗体の例には、F(ab)2分子(Medarex/AMGEN;Deo et al J Immunol. 1998 Feb 15;160(4):1677-86)、Dual-Action分子またはBis-Fab分子(Genentech、Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614)、ドック・アンド・ロック(Dock-and-Lock)(DNL)分子(ImmunoMedics、WO2003074569号、WO2005004809号)、二価二重特異性分子(Biotecnol、Schoonjans, J Immunol. 2000 Dec 15;165(12):7050-7)およびFab-Fv分子(UCB-Celltech, WO 2009040562 A1号)が非限定的に含まれる。
【0130】
ScFvに基づく抗体、ダイアボディに基づく抗体、およびドメイン抗体の例には、二重特異性T細胞Engager(BiTE)分子(Micromet、WO2005061547号)、縦列ダイアボディ分子(TandAb)(Affimed)Le Gall et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4):357-66)、二重親和性リターゲティング技術(DART)分子(MacroGenics、WO2008157379号、WO2010080538号)、単鎖ダイアボディ分子(Lawrence, FEBS Lett. 1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack、WO2010059315号)およびCOMBODY分子(Epigen Biotech、Zhu et al. Immunol Cell Biol. 2010 Aug;88(6):667-75)、二重標的指向性ナノボディ(Ablynx、Hmila et al., FASEB J. 2010)ならびに二重標的指向性重鎖単独ドメイン抗体が非限定的に含まれる。
【0131】
一局面において、本発明の二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1のFc領域、および第2のCH3領域を含む第2のFc領域を含む。第1のCH3領域の配列と第2のCH3領域の配列は異なり、その結果、前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用は、前記第1および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれよりも強くなる。これらの相互作用に関するそれ以上の詳細、およびそれらをいかにして達成しうるかについては、WO2011131746号およびWO2013060867号(Genmab)に提供されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0132】
本明細書においてさらに説明するように、CH3領域にごく少数の、極めて保存的である非対称的な突然変異を含有する1つのホモ二量体出発CD20抗体および1つのホモ二量体出発CD3抗体を基にして、特定の方法を用いて、安定した二重特異性CD3xCD20抗体を高収率に得ることができる。非対称的突然変異とは、前記第1および第2のCH3領域の配列が、同一でない位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。
【0133】
一局面において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1および第2の重鎖を含み、ここで前記第1および第2の重鎖のそれぞれは少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み、前記第1の重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2の重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第1および前記第2の重鎖は同じ位置においては置換されていない。
【0134】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1および第2の重鎖を含み、ここで(i)ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置におけるアミノ酸は前記第1の重鎖においてLであり、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置におけるアミノ酸は前記第2の重鎖においてRである、または(ii)ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置におけるアミノ酸は前記第1の重鎖においてRであり、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置におけるアミノ酸は前記第2の重鎖においてLである。
【0135】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は366、368、370、399、405、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、第2のFc領域は366、368、370、399、405、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し:かつ第1および第2のFc領域は同じ位置においては置換されていない。
【0136】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は位置366にアミノ酸置換を有し、前記第2のFc領域は、368、370、399、405、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。一態様において、位置366のアミノ酸はAla、Asp、Glu、His、Asn、ValまたはGlnから選択される。
【0137】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は位置368にアミノ酸置換を有し、前記第2のFc領域は、366、370、399、405、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0138】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は位置370にアミノ酸置換を有し、前記第2のFc領域は、366、368、399、405、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0139】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は位置399にアミノ酸置換を有し、前記第2のFc領域は、366、368、370、405、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0140】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は位置405にアミノ酸置換を有し、前記第2のFc領域は、366、368、370、399、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0141】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は位置407にアミノ酸置換を有し、前記第2のFc領域は、366、368、370、399、405および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0142】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は位置409にアミノ酸置換を有し、前記第2のFc領域は、366、368、370、399、405および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0143】
したがって、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、前記第1および第2のCH3領域の配列は非対称的突然変異を含有し、すなわち、2つのCH3領域において異なる位置に突然変異を、例えば、CH3領域の一方では位置405に突然変異を、もう一方のCH3領域では位置409に突然変異を含有する。
【0144】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は、366、368、370、399、405および407からなる群より選択される選択される位置にアミノ酸置換を有する。1つのそのような態様において、前記第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は位置405にPhe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Cys、LysまたはLeuを有する。このさらなる態様において、前記第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は位置405にPhe、ArgまたはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有する。
【0145】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置405にPheを、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを含み、前記第2のFc領域は位置405にPhe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Leu、MetまたはCysを含み、位置409にLysを含む。このさらなる態様において、前記第1のFc領域は位置405にPheを、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを含み、前記第2のFc領域は位置405にPhe、ArgまたはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを含み、位置409にLysを含む。
【0146】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置405にPheを、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを含み、前記第2のFc領域は位置405にLeuを、位置409にLysを含む。このさらなる態様において、前記第1のFc領域は位置405にPheを、位置409にArgを含み、前記第2のFc領域は位置405にPhe、ArgまたはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Met、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを含み、位置409にLysを含む。別の態様において、前記第1のFc領域は位置405にPheを、位置409にArgを含み、前記第2のFc領域は位置405にLeuを、位置409にLysを含む。
【0147】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体のさらなる態様において、前記第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを含み、前記第2のFc領域は位置409にLysを、位置370にThrを、位置405にLeuを含む。さらなる態様において、前記第1のFc領域は位置409にArgを含み、前記第2のFc領域は位置409にLysを、位置370にThrを、位置405にLeuを含む。
【0148】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体のさらなる別の態様において、前記第1のFc領域は位置370にLysを、位置405にPheを、位置409にArgを含み、前記第2のFc領域は位置409にLysを、位置370にThrを、位置405にLeuを含む。
【0149】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを含み、前記第2のFc領域は位置409にLysを含み、かつ:a)位置350にIleを、位置405にLeuを含むか、またはb)位置370にThrを、位置405にLeuを含む。
【0150】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置409にArgを含み、前記第2のFc領域は位置409にLysを含み、かつ:a)位置350にIleを、位置405にLeuを含むか、またはb)位置370にThrを、位置405にLeuを含む。
【0151】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置350にThrを、位置370にLysを、位置405にPheを、位置409にArgを含み、前記第2のFc領域は位置409にLysを含み、かつ:a)位置350にIleを、位置405にLeuを含むか、またはb)位置370にThrを、位置405にLeuを含む。
【0152】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置350にThrを、位置370にLysを、位置405にPheを、位置409にArgを含み、前記第2のFc領域は位置350にIleを、位置370にThrを、位置405にLeuを、位置409にLysを含む。
【0153】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、前記第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のFc領域は位置405にPhe以外のアミノ酸、例えば位置405にPhe、ArgまたはGly以外のアミノ酸を有する;あるいは前記第1のCH3領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のCH3領域は位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、SerまたはThr以外のアミノ酸を有する。
【0154】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸を有する第1のFc領域、および位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、SerまたはThr以外のアミノ酸を有する第2のFc領域を含む。
【0155】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、位置407にTyrを有し、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸を有する第1のFc領域、および位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、SerまたはThr以外のアミノ酸を有し、位置409にLysを有する第2のFc領域を含む。
【0156】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、位置407にTyrを有し、位置409にArgを有する第1のFc領域、および位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、SerまたはThr以外のアミノ酸を有し、位置409にLysを有する第2のFc領域を含む。
【0157】
別の態様において、前記第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、SerまたはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、TrpまたはCysを有する。別の態様において、前記第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、ValまたはTrpを有する。
【0158】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は位置407にGly、Leu、Met、AsnまたはTrpを有する。
【0159】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置407にTyrを、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、SerまたはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、TrpまたはCysを有し、位置409にLysを有する。
【0160】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置407にTyrを、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、ValまたはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0161】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置407にTyrを、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、前記第2のFc領域は位置407にGly、Leu、Met、AsnまたはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0162】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置407にTyrを、位置409にArgを有し、前記第2のFc領域は位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、SerまたはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、TrpまたはCysを有し、位置409にLysを有する。
【0163】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置407にTyrを、位置409にArgを有し、前記第2のFc領域は位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、ValまたはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0164】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のFc領域は位置407にTyrを、位置409にArgを有し、前記第2のFc領域は位置407にGly、Leu、Met、AsnまたはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0165】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の別の態様において、第1のFc領域は位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrまたはCysを有し、第2のFc領域は、
(i)位置368にPhe、LeuおよびMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、TyrもしくはCys、または
(ii)位置370にTrp、または
(iii)位置399にAsp、Cys、Pro、GluもしくはGln以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asn、Trp、TyrもしくはCys、または
(iv)位置366にLys、Arg、Ser、ThrもしくはTrp以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Ala、Val、Gly、Ile、Asn、His、Asp、Glu、Gln、Pro、TyrもしくはCys、
を有する。
【0166】
一態様において、第1のFc領域は位置409にArg、Ala、HisまたはGlyを有し、第2のFc領域は、
(i)位置368にLys、Gln、Ala、Asp、Glu、Gly、His、Ile、Asn、Arg、Ser、Thr、ValもしくはTrp、または
(ii)位置370にTrp、または
(iii)位置399にAla、Gly、Ile、Leu、Met、Asn、Ser、Thr、Trp、Phe、His、Lys、ArgもしくはTyr、または
(iv)位置366にAla、Asp、Glu、His、Asn、Val、Gln、Phe、Gly、Ile、Leu、MetもしくはTyr、
を有する。
【0167】
一態様において、第1のFc領域は位置409にArgを有し、第2のFc領域は、
(i)位置368にAsp、Glu、Gly、Asn、Arg、Ser、Thr、ValもしくはTrp、または
(ii)位置370にTrp、または
(iii)位置399にPhe、His、Lys、ArgもしくはTyr、または
(iv)位置366にAla、Asp、Glu、His、Asn、Val、Gln、
を有する。
【0168】
上記にて特定されたアミノ酸置換に加えて、前記第1および第2のFc領域が、野生型Fc配列に比してさらなるアミノ酸置換、欠失、または挿入を含んでもよい。
【0169】
さらなる態様において、第1および第2のFc領域を含む前記第1および第2のFabアーム(または重鎖定常ドメイン)は、特定された突然変異を除き、以下のものから独立に選択されるCH3配列を含む:
(IgG1m(a))(SEQ ID NO:60)、(IgG1m(f))(SEQ ID NO:61)、および(IgG1m(ax)(SEQ ID NO:62)。
【0170】
一態様において、前記第1のFc領域も前記第2のFc領域も、(コア)ヒンジ領域内にCys-Pro-Ser-Cys配列を含まない。
【0171】
さらなる態様において、前記第1および前記第2のFc領域は両方とも、(コア)ヒンジ領域内にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。
【0172】
別の具体的な態様において、一方または両方のFabアームは、SEQ ID NO:63、64、65、66、67、68、69、70および71から独立に選択される重鎖定常領域配列を含む(表1参照)。
【0173】
本明細書にて開示される態様のいずれかによる二重特異性抗体の一態様において、(a)それぞれSEQ ID NO:1、2、および3に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、それぞれSEQ ID NO:4に示される配列、配列GTN、およびSEQ ID NO:5に示される配列を有する軽鎖可変(VL)領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む第1の抗原結合領域、ならびに(b)ヒトCD20と結合する第2の抗原結合領域は、それぞれ、SEQ ID NO:32であるVH CDR1領域、SEQ ID NO:33であるVH CDR2領域、SEQ ID NO:34であるVH CDR3領域、SEQ ID NO:35であるVL CDR1領域、DASであるVL CDR2領域、およびSEQ ID NO:36であるVL CDR3領域を含む。
【0174】
本明細書にて開示される態様のいずれかによる二重特異性抗体の一態様において、(a)第1の抗原結合領域はSEQ ID NO:6に示されるVH配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL配列を含み、(b)第2の抗原結合領域はSEQ ID NO:27に示されるVH配列およびSEQ ID NO:28に示されるVL配列を含む。
【0175】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の抗原結合領域はIgG1-huCD3-H1L1-FEALに由来するFabアームであり、第2の抗原結合領域はIgG1-7D8-FEARに由来するFabアームである。
【0176】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の結合アームはIgG1-huCD3-H1L1-FEALに由来する半分子抗体(すなわち、1つの重鎖および1つの軽鎖)であり、第2の結合アームはIgG1-7D8-FEARに由来する半分子抗体である。
【0177】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の結合アームはIgG1-huCD3-H1L1-FEARに由来する半分子抗体であり、第2の結合アームはIgG1-7D8-FEALに由来する半分子抗体である。
【0178】
二重特異性抗体を調製する方法
ハイブリッドハイブリドーマ法および化学的コンジュゲーション法などの従来の方法(Marvin and Zhu (2005) Acta Pharmacol Sin 26:649)を、本発明の二重特異性抗体の調製に用いることができる。異なる重鎖および軽鎖からなる2種の抗体の宿主細胞における共発現により、生じうる抗体産物の混合物が所望の二重特異性抗体に加えて生じ、続いてそれを、例えばアフィニティークロマトグラフィーまたは類似の方法によって単離することができる。
【0179】
複数の異なる抗体構築物の共発現による機能的な二重特異性産物の形成にとって有利な戦略、例えば、Lindhofer et al. (1995 J Immunol 155:219)によって記載された方法を用いることもできる。複数の異なる抗体を産生するラットおよびマウスのハイブリドーマの融合では、種に拘束された選好的な重鎖/軽鎖対合が理由で、限られた数のヘテロ二量体タンパク質しか得られない。ホモ二量体を上回るヘテロ二量体の形成を促進するための別の戦略は、第1の重鎖ポリペプチドに出っ張り(protuberance)を、対応するくぼみ(cavity)を第2の重鎖ポリペプチドに導入し、それにより、これらの2つの重鎖の境界部にあるくぼみの中に出っ張りが位置し、ヘテロ二量体形成を促進してホモ二量体形成を妨げるようにする「ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)」戦略である。「出っ張り」は、第1のポリペプチドの境界部にある小さなアミノ酸側鎖を、それよりも大きい側鎖で置き換えることによって構築される。埋め合わせとなる、出っ張りと同一または類似のサイズの「くぼみ」は、第2のポリペプチドの境界部で大きなアミノ酸側鎖をそれよりも小さいもので置き換えることによって作り出される(米国特許第5,731,168号)。EP1870459号(Chugai)およびWO2009089004号(Amgen)は、宿主細胞における複数の異なる抗体ドメインの共発現によるヘテロ二量体形成のために有利な他の戦略を記載している。これらの方法では、両方のCH3ドメインにおいてCH3-CH3境界部を構成する1つまたは複数の残基を荷電アミノ酸で置き換えて、ホモ二量体形成が静電的に不利でヘテロ二量体化が静電的に有利になるようにする。WO2007110205号(Merck)は、IgAとIgGのCH3ドメインの違いを利用してヘテロ二量体化を助長する、別の戦略を記載している。
【0180】
二重特異性抗体を作製するための別のインビトロ方法は、WO2008119353号(Genmab)に記載されており、この場合には、還元条件下でのインキュベーションによる2つの単一特異性IgG4抗体またはIgG4様抗体の間での「Fabアーム」または「半分子」の交換(1つの重鎖および付属する軽鎖の交換)によって二重特異性抗体が形成される。結果的に生じる産物は、異なる配列を含む可能性のある2つのFabアームを有する二重特異性抗体である。
【0181】
本発明の二重特異性CD3xCD20抗体を調製するための1つの好ましい方法には、WO2011131746号およびWO13060867号(Genmab)に記載された方法が含まれ、それは以下の工程を含む:
a)Fc領域を含む第1の抗体を用意する工程であって、前記Fc領域が第1のCH3領域を含む工程;
b)第2のFc領域を含む第2の抗体を用意する工程であって、前記Fc領域が第2のCH3領域を含む工程、ここで第1の抗体はCD3抗体であって第2の抗体はCD20抗体である、またはその反対である;
ここで前記第1のCH3領域の配列と第2のCH3領域の配列は異なり、その結果、前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用は前記第1および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれよりも強くなる;
c)還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と共にインキュベートする工程;ならびに
d)前記二重特異性CD3xCD20抗体を得る工程。
【0182】
一態様において、前記第1の抗体は前記第2の抗体と共に、ヒンジ領域内のシステインがジスルフィド結合の異性化を起こすことを可能にするのに十分な還元条件下でインキュベートされ、ここで結果として生じるヘテロ二量体性抗体における前記第1の抗体と第2の抗体との間のヘテロ二量体相互作用は、0.5mM GSHにて37℃で24時間後にFabアーム交換が全く起こらないようなものである。
【0183】
理論に拘束されるわけではないが、工程c)において、親抗体のヒンジ領域内の重鎖ジスルフィド結合は還元され、結果として生じるシステインは、別の親抗体分子(異なる特異性を元々有するもの)のシステイン残基と重鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。この方法の一態様において、工程c)における還元条件は、還元剤、例えば、2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システインおよびβ-メルカプトエタノールからなる群より選択される還元剤の添加を含み、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオトレイトールおよびトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群より選択される還元剤の添加を含む。さらなる態様において、工程c)は、例えば脱塩などによる還元剤の除去によって、条件を非還元性またはより低い還元性に戻すことを含む。
【0184】
この方法に対しては、第1および/または第2のFc領域を含む第1および第2のCD3抗体およびCD20抗体を含む、上記のCD3抗体およびCD20抗体のいずれを用いてもよい。そのような第1および第2のFc領域の組み合わせを含む、そのような第1および第2のFc領域の例には、上記のものの任意のものが含まれうる。特定の態様において、第1および第2のCD3抗体およびCD20抗体を選択して、本明細書に記載のような二重特異性抗体を入手することができる。
【0185】
この方法の一態様において、第1および/または第2の抗体は完全長抗体である。
【0186】
第1および前記第2の抗体のFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4を非限定的に含む、任意のアイソタイプのものであってよい。この方法の一態様において、前記第1および前記第2の抗体のFc領域は両方とも、IgG1アイソタイプのものである。別の態様において、前記抗体のFc領域の一方はIgG1アイソタイプのものであり、もう一方はIgG4アイソタイプのものである。後者の態様において、結果として得られる二重特異性抗体はIgG1のFc領域およびIgG4のFc領域を含み、そのため、エフェクター機能の活性化に関連して興味深い中間的特性を有しうる。
【0187】
さらなる態様において、出発抗体タンパク質の一方は、プロテインAと結合せず、それ故に、産物をプロテインAカラムに通過させることによってヘテロ二量体タンパク質を前記ホモ二量体出発タンパク質と分離することが可能なように操作されている。
【0188】
上記のように、ホモ二量体出発抗体の第1のCH3領域の配列と第2のCH3領域の配列は異なり、前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれよりも強いようなものである。これらの相互作用に関するそれ以上の詳細、およびそれらをいかにして達成しうるかについては、WO2011131746号およびWO2013060867号(Genmab)に提供されており、それらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0189】
特に、それぞれCD3およびCD20と結合し、かつCH3領域にごく少数の、極めて保存的である非対称的な突然変異を含有する2つのホモ二量体出発抗体を基にして、本発明の上記の方法を用いて、安定した二重特異性CD3xCD20抗体を高収率に得ることができる。非対称的突然変異とは、前記第1および第2のCH3領域の配列が、同一でない位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。
【0190】
また、本発明の二重特異性抗体を、第1および第2のポリペプチドをコードする構築物の、単一細胞における共発現によって入手することもできる。したがって、さらなる局面において、本発明は、二重特異性抗体を生産するための方法であって、以下の工程:
(a)第1のFc領域と、第1の抗体重鎖の第1の抗原結合領域とを含む第1のポリペプチドをコードする第1の核酸構築物を用意する工程であって、前記第1のFc領域が第1のCH3領域を含む工程;
(b)第2のFc領域と、第2の抗体重鎖の第2の抗原結合領域とを含む第2のポリペプチドをコードする第2の核酸構築物を用意する工程であって、前記第2のFc領域が第2のCH3領域を含み、
ここで前記第1のCH3領域の配列と第2のCH3領域の配列が異なり、その結果、前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれよりも強くなり、かつ前記第1のホモ二量体タンパク質が、位置409にLys、LeuまたはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のホモ二量体タンパク質が、366、368、370、399、405および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、
任意で、前記第1および第2の核酸構築物が前記第1および第2の抗体の軽鎖配列をコードしている、工程;
(c)前記第1および第2の核酸構築物を宿主細胞内で共発現させる工程;ならびに
(d)前記ヘテロ二量体タンパク質を細胞培養物から得る工程;
を含む、前記方法に関する。
【0191】
したがって、本発明はまた、本発明の二重特異性抗体を産生する組換え真核宿主細胞または組換え原核宿主細胞にも関する。
【0192】
本発明の一態様において、二重特異性抗体は、本発明による方法の任意のものによって得られる。
【0193】
プロモーター、エンハンサーなどを含む適した発現ベクター、および抗体の産生のための適した宿主細胞は、当技術分野において周知である。宿主細胞の例には、酵母細胞、細菌細胞および哺乳動物細胞、例えばCHO細胞またはHEK細胞などが含まれる。
【0194】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、特定された突然変異を除き、SEQ ID NO:60(IgG1m(a))の配列を含む、第1および第2のCH3領域を含む。
【0195】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1のFc領域および第2のFc領域を含み、ここで前記第1のFc領域も前記第2のFc領域も、ヒンジ領域内にCys-Pro-Ser-Cys配列を含まない。
【0196】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1のFc領域および第2のFc領域を含み、ここで前記第1および前記第2のFc領域は両方とも、ヒンジ領域内にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。
【0197】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1のFc領域および第2のFc領域を含み、ここで第1および第2のFc領域はヒト抗体Fc領域である。
【0198】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1のFc領域および第2のFc領域を含み、ここで前記第1および第2のFc領域は、特定された突然変異を除き、SEQ ID NO:63、64、65、66、67、68、69、70および71からなる群より独立に選択される配列を含む。
【0199】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1のFc領域および第2のFc領域を含み、ここで第1および第2の抗原結合領域はヒト抗体VH配列を含み、任意でヒト抗体VL配列を含む。
【0200】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1のFc領域および第2のFc領域を含み、ここで第1および第2の抗原結合領域は重鎖抗体由来である。
【0201】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1のFc領域および第2のFc領域を含み、ここで第1および第2の抗原結合領域は第1および第2の軽鎖を含む。
【0202】
さらなる態様において、本発明による共発現方法は、上記のインビトロ方法の項に記載されたさらなる特徴のいずれかを含む。
【0203】
さらなる局面において、本発明は、上記に特定された第1および第2の核酸構築物を含む発現ベクターに関する。さらなる態様において、発現ベクターは、抗体、例えばヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖の両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0204】
本発明の文脈において発現ベクターは、染色体核酸ベクター、非染色体核酸ベクター、および合成核酸ベクター(発現制御エレメントの適したセットを含む核酸配列)を含む任意の適したベクターであってよい。そのようなベクターの例には、SV40、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ならびにウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターの誘導体が含まれる。一態様において、CD20抗体またはCD3抗体をコードする核酸は、例えば直鎖発現エレメントを含む、裸のDNAベクターもしくはRNAベクター(例えば、Sykes and Johnston, Nat Biotech 17, 355-59 (1997)に記載)、圧縮された核酸ベクター(例えば、US 6,077,835号および/もしくはWO00/70087号に記載)、プラスミドベクター、例えばpBR322、pUC19/18、もしくはpUC118/119など、「midge」最小サイズ核酸ベクター(例えば、Schakowski et al., Mol Ther 3, 793-800 (2001)に記載)、または沈殿した核酸ベクター構築物、例えばCaPO4によって沈殿した構築物(例えば、WO200046147号、Benvenisty and Reshef, PNAS USA 83, 9551-55 (1986), Wigler et al., Cell 14, 725 (1978)、およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7, 603 (1981)に記載)の中に含まれる。そのような核酸ベクターおよびその利用は当技術分野において周知である(例えば、US 5,589,466号およびUS 5,973,972号を参照されたい)。
【0205】
一態様において、ベクターは、細菌細胞におけるCD20抗体および/またはCD3抗体の発現に適している。そのようなベクターの例には、発現ベクター、例えばBlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster, J Biol Chem 264, 5503-5509 (1989)、pETベクター(Novagen, Madison WI)など)が含まれる。
【0206】
同様にまたは代替的に、発現ベクターは、酵母系における発現に適したベクターでもよい。酵母系における発現に適した任意のベクターを使用することができる。適切なベクターには、例えば構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えばα因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHを含むベクターが含まれる(F. Ausubel et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley InterScience New York (1987)、およびGrant et al., Methods in Enzymol 153, 516-544 (1987)に概説されている)。
【0207】
同様にまたは代替的に、発現ベクターは、哺乳動物細胞における発現に適したベクター、例えば選択マーカーとしてグルタミン合成酵素を含むベクター、例えば、Bebbington (1992) Biotechnology (NY) 10:169-175に記載されたベクターでもよい。
【0208】
核酸および/またはベクターはまた、ポリペプチド、例えば新生ポリペプチド鎖を、細胞周辺腔にまたは細胞培養培地中に標的化させることができる分泌配列/局在化配列をコードする核酸配列を含んでもよい。そのような配列は当技術分野において公知であり、分泌リーダーペプチドまたはシグナルペプチドを含む。
【0209】
発現ベクターは、任意の適したプロモーター、エンハンサー、および他の発現助長エレメントを含んでもよく、これらと結びついていてもよい。そのようなエレメントの例には、強発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終結配列、大腸菌におけるプラスミド産物用の複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、ならびに/または便利なクローニングサイト(例えば、ポリリンカー)が含まれる。核酸はまた、構成的プロモーターとは対照的に誘導性プロモーター、例えばCMV IEを含んでもよい。
【0210】
一態様において、CD20抗体および/またはCD3抗体をコードする発現ベクターを、ウイルスベクターを介して、宿主細胞または宿主動物の中に配置すること、および/または送達することができる。
【0211】
さらなる別の局面において、本発明は、上記に特定された第1および第2の核酸構築物を含む宿主細胞に関する。
【0212】
したがって、本発明はまた、本発明の二重特異性抗体を産生する組換え真核宿主細胞または原核宿主細胞、例えばトランスフェクトーマにも関する。
【0213】
第1のCD20特異的抗体は、本明細書で定義したような本発明の抗体または本明細書で定義したような本発明の二重特異性抗体を産生する組換え真核宿主細胞または原核宿主細胞、例えばトランスフェクトーマにおいて発現させることができる。CD3特異的抗体も同様に、本明細書で定義したような本発明の抗体または本明細書で定義したような本発明の二重特異性抗体を産生する組換え真核宿主細胞または原核宿主細胞、例えばトランスフェクトーマにおいて発現させることができる。
【0214】
宿主細胞の例には、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞および哺乳動物細胞、例えばCHO細胞、CHO-S細胞、HEK細胞、HEK293細胞、HEK-293F細胞、Expi293F細胞、PER.C6細胞もしくはNSO細胞、またはリンパ性細胞が含まれる。例えば、一態様において、宿主細胞は、細胞ゲノム中に安定的に組み込まれた第1および第2の核酸構築物を含みうる。別の態様において、本発明は、上記に特定されたような第1および第2の核酸構築物を含む、プラスミド、コスミド、ファージミドまたは直鎖状発現エレメントなどの非組み込み型核酸を含む細胞を提供する。
【0215】
さらなる別の局面において、本発明は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の1つまたは2つのセットをコードする核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物または植物であって、本発明の二重特異性抗体を産生する動物または植物に関する。
【0216】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で定義したような本発明の二重特異性抗体において用いるための抗体を産生するハイブリドーマに関する。さらなる別の局面において、本発明は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の1つまたは2つのセットをコードする核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物または植物であって、二重特異性抗体に用いるための抗体または本発明の二重特異性抗体を産生する動物または植物に関する。
【0217】
一局面において、本発明は、表1に呈示されている1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする核酸構築物に関する。
【0218】
一局面において、本発明は、
(i)本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる第1の結合アームの重鎖配列をコードする核酸配列;
(ii)本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる第1の結合アームの軽鎖配列をコードする核酸配列;
(iii)本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる第2の結合アームの重鎖配列をコードする核酸配列;
(iv)本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる第2の結合アームの軽鎖配列をコードする核酸配列;
(v)(i)に示された核酸および(ii)に示された核酸;
(vi)(iii)に示された核酸および(iv)に示された核酸;
(vii)(i)、(ii)、(iii)および(iv)に示された核酸、
を含む発現ベクターに関する。
【0219】
一局面において、本発明は、本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体を作製するための方法であって、
a)本明細書において開示された第1の抗体を発現する本明細書において開示された発現ベクターを含む本明細書において開示された宿主細胞を培養して、培養培地から前記抗体を精製する工程;
b)本明細書において開示された第2の抗体を発現する本明細書において開示された発現ベクターを含む本明細書において開示された宿主細胞を培養して、培養培地から前記抗体を精製する工程;
c)ヒンジ領域内のシステインがジスルフィド結合の異性化を起こすことを可能にするのに十分な還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と共にインキュベートする工程;および
d)前記二重特異性抗体を得る工程;
を含む、前記方法に関する。
【0220】
一局面において、本発明は、上記に定義したような発現ベクターを含む宿主細胞に関する。一態様において、宿主細胞は、組換え真核宿主細胞、組換え原核宿主細胞、または組換え微生物宿主細胞である。
【0221】
Fc領域
本発明の1つの局面において、本発明による二重特異性CD3xCD20抗体は、第1のFc領域および第2のFc領域をさらに含み、それらは、それぞれがさらに上記の第1および第2の抗原結合領域(またはその逆のもの)を含む、第1および第2のFabアームの中に含まれてよい。
【0222】
本発明の別の局面において、二重特異性CD3xCD20抗体は、それぞれが第1および第2の抗原結合領域を含む第1および第2のFabアームを含む。二重特異性CD3xCD20抗体は第1および第2のFc領域をさらに含む。本発明の1つの局面において、二重特異性CD3xCD20抗体は、第1の抗原結合領域および第1のFc領域を含む第1のFabアーム、ならびに第2の抗原結合領域および第2のFc領域を含む第2のFabアームを含む。
【0223】
本発明の別の局面において、二重特異性CD3xCD20抗体は、第2の抗原結合領域および第1のFc領域を含む第2のFabアーム、ならびに第1の抗原結合領域および第2のFc領域を含む第1のFabアームを含む。
【0224】
第1および第2のFc領域はそれぞれ、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を非限定的に含む任意のアイソタイプのものであってよく、1つまたは複数の突然変異または改変を含んでもよい。一態様において、第1および第2のFc領域のそれぞれはIgG4アイソタイプのものであるか、またはそれに由来し、任意で1つまたは複数の突然変異または改変を伴う。一態様において、第1および第2のFc領域のそれぞれはIgG1アイソタイプのものであるか、またはそれに由来し、任意で1つまたは複数の突然変異または改変を伴う。別の態様において、Fc領域の一方はIgG1アイソタイプのものであり、もう一方はIgG4アイソタイプであるかまたはそのような各々のアイソタイプに由来し、任意で1つまたは複数の突然変異または改変を伴う。
【0225】
一態様において、Fc領域の一方または両方は、Asn結合型グリコシル化のアクセプター部位を除去する変異を含むか、またはグリコシル化特性が変化するように他の様式で操作される。例えば、IgG1 Fc領域では、N297Q突然変異を利用してAsn結合型グリコシル化部位を除去することができる。したがって、1つの具体的な態様において、一方または両方のFc領域は、N297Q突然変異を有するIgG1野生型配列(SEQ ID NO:66、表1参照)を含む。
【0226】
一態様において、一方または両方のFc領域はエフェクター機能欠損性である。例えば、Fc領域はIgG4アイソタイプのものであってもよく、または、ADCCなどのエフェクター機能を媒介する能力が低下するかもしくはさらには消失するように突然変異させた非IgG4型、例えばIgG1、IgG2もしくはIgG3のものであってもよい。そのような突然変異は、例えば、Dall'Acqua WF et al., J Immunol. 177(2):1129-1138 (2006)およびHezareh M, J Virol.;75(24):12161-12168 (2001)に記載されている。一態様において、一方または両方のFc領域は、IgG1野生型配列(SEQ ID NO:63、表1参照)を含む。
【0227】
本発明による二重特異性抗体は、Fc領域内に改変を含みうる。二重特異性抗体がそのような改変を含む場合、その抗体は不活性二重特異性抗体または非活性化二重特異性抗体となりうる。本明細書で用いる場合、「不活性であること」、「不活性な」または「非活性化」という用語は、少なくとも、どのFcγ受容体とも結合することができず、FcRのFc媒介性架橋を誘発することもできず、個々の抗体の2つのFc領域を介した標的抗原のFcR媒介性架橋を誘発することもできず、C1qと結合することもできないFc領域のことを指す。ヒト化またはキメラCD3抗体のFc領域が不活性であることは、単一特異性形式の抗体を用いて試験すると好都合である。
【0228】
治療用抗体の開発を目的として、Fcγ受容体およびC1qとの相互作用に関して抗体のFc領域を非活性にするために、いくつかの変異体を構築することができる。そのような変異体の例を本明細書に記載する。
【0229】
したがって、一態様において、抗体は、前記抗体が野生型抗体と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%または100%低下したFc媒介性T細胞増殖を媒介するように改変されたFc領域を含み、ここで前記T細胞増殖は末梢血単核球(PBMC)に基づく機能アッセイにおいて測定される。
【0230】
したがって、C1qおよびFcγ受容体との相互作用に主要な役割を果たすFc領域内のアミノ酸を改変することができる。改変することができるアミノ酸位置の例には、位置L234、L235およびP331が含まれる。それらの組み合わせ、例えばL234F/L235E/P331Sは、ヒトCD64、CD32A、CD16およびC1qに対する結合の大幅な減少を引き起こすことができる。
【0231】
それ故に、一態様において、L234、L235およびP331に対応する少なくとも1つの位置におけるアミノ酸は、それぞれA、AおよびSであってよい(Xu et al., 2000, Cell Immunol. 200(1):16-26;Oganesyan et al., 2008, Acta Cryst. (D64):700-4)。また、L234FおよびL235Eアミノ酸置換は、Fcγ受容体およびC1qとの相互作用が消失したFc領域をもたらすことができる(Canfield et al., 1991, J. Exp. Med. (173):1483-91;Duncan et al., 1988, Nature (332):738-40)。それ故に、一態様において、L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれFおよびEであってよい。D265Aアミノ酸置換は、すべてのFcγ受容体に対する結合を減少させ、ADCCを防止することができる(Shields et al., 2001, J. Biol. Chem. (276):6591-604)。それ故に、一態様において、D265に対応する位置におけるアミノ酸はAであってよい。C1qに対する結合は、位置D270、K322、P329およびP331を突然変異させることによって消失させることができる。これらの位置をD270AまたはK322AまたはP329AまたはP331Aのいずれかに突然変異させることによって、抗体をCDC活性欠損性にすることができる。Idusogie EE, et al., 2000, J Immunol. 164: 4178-84)。それ故に、一態様において、D270、K322、P329およびP331に対応する少なくとも1つの位置におけるアミノ酸は、それぞれA、A、AおよびAであってよい。
【0232】
Fc領域とFcγ受容体およびC1qとの相互作用を最小限に抑えるための代替的なアプローチは、抗体のグリコシル化部位の除去による。位置N297を、例えばQ、AまたはEに突然変異させることによって、IgG-Fcγ受容体相互作用にとって決定的に重要なグリコシル化部位が除去される。それ故に、一態様において、N297に対応する位置におけるアミノ酸は、G、Q、AまたはEであってよい。Leabman et al., 2013, MAbs;5(6): 896-903)。Fc領域とFcγ受容体との相互作用を最小限に抑えるための別の代替的アプローチは、以下の突然変異によって得ることができる:P238A、A327Q、P329AまたはE233P/L234V/L235A/G236del(Shields et al., 2001, J. Biol. Chem. (276): 6591-604)。
【0233】
または、ヒトIgG2およびIgG4サブクラスは、C1qおよびFcγ受容体との相互作用が元々損なわれていると考えられているが、Fcγ受容体との相互作用も報告されている(Parren et al., 1992, J. Clin Invest. 90: 1537-1546;Bruhns et al., 2009, Blood 113: 3716-3725)。この両方のアイソタイプにおいてこれらの残存性相互作用を消失させる突然変異を作製して、FcR結合に伴う不要な副作用の低下をもたらすことができる。IgG2の場合、それらにはL234AおよびG237Aが含まれ、IgG4の場合はL235Eが含まれる。それ故に、一態様において、ヒトIgG2重鎖におけるL234およびG237に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれAおよびAであってよい。一態様において、ヒトIgG4重鎖におけるL235に対応する位置におけるアミノ酸は、Eであってよい。
【0234】
IgG2抗体においてFcγ受容体およびC1qとの相互作用をさらに最小限に抑えるための他のアプローチには、WO2011066501号およびLightle, S., et al., 2010, Protein Science (19):753-62に記載されたものが含まれる。
【0235】
抗体のヒンジ領域も、Fcγ受容体および補体との相互作用に関して重要でありうる(Brekke et al., 2006, J Immunol 177:1129-1138;Dall'Acqua WF, et al., 2006, J Immunol 177:1129-1138)。したがって、ヒンジ領域における突然変異またはヒンジ領域の欠失は、抗体のエフェクター機能に影響を及ぼすことができる。
【0236】
「架橋」という用語は、本明細書で用いる場合、抗体Fc領域との結合を介した、FcR担持細胞による、標的抗原と結合した抗体Fabアーム(一価または二価)の間接的橋かけのことを指す。したがって、標的抗原担持細胞上にあるその標的抗原と結合する抗体は、FcRを発現する別の細胞と架橋しうる。
【0237】
「非特異的死滅」という用語は、本明細書で用いる場合、T細胞または他のエフェクター細胞の細胞傷害機能による細胞の死滅であって、前記細胞の腫瘍標的抗原非依存的な活性化によるもののことを指す。したがって、非特異的死滅とは、例えば、抗体のCD3およびFcγRとの結合によって、腫瘍標的結合とは非依存的に、エフェクター細胞、例えば細胞傷害性T細胞が活性化されて、細胞傷害性を誘導することを意味する。
【0238】
したがって、一態様において、二重特異性抗体は第1および第2の免疫グロブリン重鎖を含み、ここで前記第1および第2の免疫グロブリン重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297およびP331に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、NおよびPではない。
【0239】
一態様において、第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297およびP331に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、NおよびPではない。
【0240】
別の態様において、第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、LおよびDではなく、ヒトIgG1重鎖におけるN297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0241】
「位置に対応するアミノ酸」という用語は、本明細書で用いる場合、ヒトIgG1重鎖におけるアミノ酸位置番号のことを指す。他の免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアラインメントによって見いだすことができる。別の言及があるかまたは文脈と食い違う場合を除き、定常領域配列のアミノ酸は、本明細書において、EU番号付けインデックス(Kabat, E.A. et al., 1991, Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition - US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662, 680, 689に記載)に従って番号付けされる。したがって、別の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」、ある配列中のアミノ酸またはセグメントとは、ALIGN、ClustalWまたは類似のものなどの標準的な配列アラインメントプログラムを典型的にはデフォルト設定で用いて他のアミノ酸またはセグメントとのアラインメントが行われ、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するもののことである。配列または配列中のセグメントのアラインメントを行い、それによって本発明のアミノ酸位置に対応する配列中の位置を決定する方法は、当技術分野において周知であると考えられる。
【0242】
本発明の文脈において、アミノ酸は上記のように定義することができる。
【0243】
「アミノ酸が~ではない」という用語または類似の表現は、重鎖中のアミノ酸に言及している場合、言及された特定のアミノ酸以外の他の任意のアミノ酸であることを意味すると解釈される。例えば、ヒトIgG1重鎖中のL234に対応する位置におけるアミノ酸がLではないとは、そのアミノ酸が、L以外の他の天然アミノ酸または非天然アミノ酸のいずれかであってよいことを意味する。
【0244】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、Dではない。
【0245】
一態様において、第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるD265に対応する位置におけるアミノ酸はDではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0246】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0247】
「疎水性」という用語は、アミノ酸残基に関連して本明細書で用いる場合、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなる群より選択されるアミノ酸残基のことを指す。したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群より選択される。
【0248】
「極性」という用語は、アミノ酸残基に関連して本明細書で用いる場合、C、D、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなる群より選択される任意のアミノ酸残基のことを指す。したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒト重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなる群より選択される。
【0249】
別の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0250】
「脂肪族非荷電性」という用語は、アミノ酸残基に関連して本明細書で用いる場合、A、G、I、LおよびVからなる群より選択される任意のアミノ酸残基のことを指す。したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、G、I、LおよびVからなる群より選択される。
【0251】
「芳香族性」と言う用語は、アミノ酸残基に関連して本明細書で用いる場合、F、TおよびWからなる群より選択される任意のアミノ酸残基のことを指す。したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、F、TおよびWからなる群より選択される。
【0252】
「酸性」という用語は、アミノ酸残基に関連して本明細書で用いる場合、DおよびEからなる群より選択される任意のアミノ酸残基のことを指す。したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、DおよびEからなる群より選択される。
【0253】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、VおよびWからなる群より選択される。
【0254】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、Dではない。
【0255】
一態様において、第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるD265に対応する位置におけるアミノ酸はDではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0256】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0257】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群より選択される。
【0258】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒト重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなる群より選択される。一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群より選択される。
【0259】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒト重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなる群より選択される。
【0260】
別の態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族性アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0261】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、G、I、LおよびVからなる群より選択される。
【0262】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、F、TおよびWからなる群より選択される。
【0263】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、DおよびEからなる群より選択される。
【0264】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、VおよびWからなる群より選択される。
【0265】
さらなる態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置N297に対応する位置におけるアミノ酸は、Nではない。
【0266】
一態様において、第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるN297に対応する位置におけるアミノ酸はNではなく、ヒトIgG1重鎖における位置P331に対応する位置におけるアミノ酸はPである。
【0267】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置N297に対応する位置におけるアミノ酸は、Nではない。
【0268】
一態様において、第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるN297に対応する位置におけるアミノ酸はNではなく、ヒトIgG1重鎖における位置P331に対応する位置におけるアミノ酸はPである。
【0269】
さらなる態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれLおよびLではない。
【0270】
一態様において、第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれLおよびLではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0271】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応するアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、Y、Vからなる群より選択される。
【0272】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0273】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、WおよびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0274】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、C、D、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなるアミノ酸の群よりそれぞれ選択される。
【0275】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0276】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれLおよびLではない。
【0277】
一態様において、第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸はそれぞれLおよびLではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0278】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0279】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、WおよびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0280】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、C、D、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなるアミノ酸の群よりそれぞれ選択される。
【0281】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0282】
別の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0283】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、G、IおよびVからなる群よりそれぞれ選択される。
【0284】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、F、TおよびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0285】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、DおよびEからなる群よりそれぞれ選択される。
【0286】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、D、E、F、G、I、T、VおよびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0287】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれFおよびE;またはAおよびAから選択される。
【0288】
一態様において、第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸はそれぞれFおよびE;またはAおよびAであり、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0289】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれFおよびE;またはAおよびAである。
【0290】
一態様において、第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸はそれぞれFおよびE;またはAおよびAであり、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0291】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれFおよびEである。
【0292】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれFおよびEである。
【0293】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、少なくともヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれAおよびAである。
【0294】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、少なくともヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれAおよびAである。
【0295】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、LおよびDではない。
【0296】
一態様において、第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、LおよびDではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0297】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応するアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、Y、VおよびWからなる群より選択され、位置D265に対応するアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、Y、VおよびWからなる群より選択される。
【0298】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0299】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群より選択され、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、WおよびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0300】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、C、D、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなるアミノ酸の群よりそれぞれ選択され、ヒト重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなる群より選択される。
【0301】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群よりそれぞれ選択され、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群より選択される。
【0302】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0303】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群より選択され、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、WおよびYからなる群よりそれぞれ選択される。
【0304】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、C、D、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなるアミノ酸の群よりそれぞれ選択され、ヒト重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、C、E、H、K、N、Q、R、SおよびTからなる群より選択される。
【0305】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群よりそれぞれ選択され、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群より選択される。
【0306】
別の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0307】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、G、I、LおよびVからなる群より選択され、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、G、IおよびVからなる群よりそれぞれ選択される。
【0308】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、F、TおよびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0309】
したがって、一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、DおよびEからなる群よりそれぞれ選択される。
【0310】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、VおよびWからなる群より選択され、L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、D、E、F、G、I、T、VおよびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0311】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、LおよびDではない。
【0312】
一態様において、第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、LおよびDではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0313】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0314】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、G、I、LおよびVからなる群より選択され、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、G、IおよびVからなる群よりそれぞれ選択される。
【0315】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、DおよびEからなる群よりそれぞれ選択される。
【0316】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置におけるアミノ酸は、A、E、F、G、I、L、T、VおよびWからなる群より選択され、L234およびL235に対応する位置におけるアミノ酸は、A、D、E、F、G、I、T、VおよびWからなる群よりそれぞれ選択される。
【0317】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびA;またはA、AおよびAである。
【0318】
一態様において、第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびA;またはA、AおよびAであり、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0319】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびA;またはA、AおよびAである。
【0320】
一態様において、第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびA;またはA、AおよびAであり、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれNおよびPではない。
【0321】
特定の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0322】
特定の好ましい態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0323】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれA、AおよびAである。
【0324】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれA、AおよびAである。
【0325】
別の態様において、前記第1および第2の重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、A、QおよびSである。
【0326】
一態様において、前記第1および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297およびP331に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、A、QおよびSである。
【0327】
特定の態様において、本発明による抗体は、SEQ ID NO:8に示されるVH配列、SEQ ID NO:10に示されるVL配列を含み、重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0328】
別の態様において、本発明による抗体は、SEQ ID NO:8に示されるVH配列、SEQ ID NO:12に示されるVL配列を含み、重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0329】
別の態様において、本発明による抗体は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列、SEQ ID NO:10に示されるVL配列を含み、重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0330】
別の態様において、本発明による抗体は、SEQ ID NO:6に示されるVH配列、SEQ ID NO:12に示されるVL配列を含み、重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0331】
別の態様において、本発明による抗体は、SEQ ID NO:9に示されるVH配列、SEQ ID NO:10に示されるVL配列を含み、重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0332】
別の態様において、本発明による抗体は、SEQ ID NO:9に示されるVH配列、SEQ ID NO:12に示されるVL配列を含み、重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0333】
一局面において、本発明による二重特異性抗体は、SEQ ID NO:29のヒトIgLC2/IgLC3定常ドメインλ軽鎖を含む。
【0334】
Fc領域内に1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体をいくつか作製した。非活性化Fc領域は、抗体が単球などの血液細胞上に存在するFc受容体と相互作用するのを防止し、または抗体がC1qと相互作用して古典的補体経路を活性化するのを防止する。Fc領域内にアミノ酸置換の異なる組み合わせを含有する抗体変異体においてFc活性の低下を調べた。最大5個のアミノ酸置換を導入したが、これには変異N297Q、L234A、L235A、L234F、L235E、D265AおよびP331Sが含まれる。これら5つのアミノ酸位置の1つまたは複数における置換を、K409Rおよび/またはF405L IgG1骨格に導入した。huCLB-T3/4抗体の以下のFc領域変異体を作製した:N297Q(N297Q置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-N297Qと名付けた)、LFLE(L234F/L235E置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-LFLEと名付けた)、LALA(L234A/L235A置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-LALAと名付けた)、LFLENQ(L234F/L235E/N297Q置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-LFLENQと名付けた)、LFLEDA(L234F/L235E/D265A置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-LFLEDAと名付けた)、DA(D265A置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-DAと名付けた)、DAPS(D265A/P331S置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-DAPSと名付けた)、DANQ(D265A/N297Q置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-DANQと名付けた)、LFLEPS(L234F/L235E/P331S置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-LFLEPSと名付けた)およびLFLEDANQPS(L234F/L235E/D265A/N297Q/P331S置換のことを指す。IgG1-huCLB-T3/4-LFLEDANQPSと名付けた)。
【0335】
特に、IgG1-huCD3抗体変異体において、突然変異L234F、L235EおよびD265Aを含み、LFLEDAまたはFEAと称される3つのアミノ酸置換の組み合わせを、K409RおよびF405L IgG1骨格に導入することによって、非活性化Fc領域を有する抗体を作製した。結果として生じた非活性化抗体変異体は、接尾語「FEAR」または「FEAL」をつけて名付けられる。
【0336】
一局面において、本発明による二重特異性抗体は、発現レベルおよび/または生産収率を高めるために軽鎖および/または重鎖において改変されうる。一態様において、本発明による抗体は軽鎖において改変されうる。そのような改変は当技術分野において公知であり、例えば、Zheng, L, Goddard, J. -P., Baumann, U., & Reymond, J.-L. (2004). Expression improvement and mechanistic study of the retro-Diels-Alderase catalytic antibody 10F11 by site-directed mutagenesis. Journal of Molecular Biology, 341(3), 807-14に記載された方法に従って行うことができる。
【0337】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は第1の重鎖および第1の軽鎖を含み、ここで第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置T41に対応する位置におけるアミノ酸は、Tではない。
【0338】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置T41に対応する位置におけるアミノ酸は、H、I、K、L、Q、RおよびVから選択される。
【0339】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置T41に対応する位置におけるアミノ酸は、H、KまたはRである。
【0340】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置T41に対応する位置におけるアミノ酸は、Kである。
【0341】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はFではなく、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置T41、K55およびL97に対応するアミノ酸位置の1つまたは複数は、それぞれT、KおよびLではない。
【0342】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、T41、K55およびL97に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、T、KおよびLではない。
【0343】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、T41、K55およびL97に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、K、NおよびHである。
【0344】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置R23およびA35に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれRおよびAではない。
【0345】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置R23およびA35に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれAおよびPである。
【0346】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、R23、A35、R47、D71、A82、D83、S86、I87およびF89に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、R、A、R、D、A、D、S、IおよびFではない。
【0347】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、R23、A35、R47、D71、A82、D83、S86、I87およびF89に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、A、P、T、G、P、E、A、EおよびYである。
【0348】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、
(i)第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はFではない、または
(ii)第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置K55に対応する位置におけるアミノ酸はKではない、または
(iii)第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はFではなく、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置K55に対応する位置におけるアミノ酸はKではない。
【0349】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、
(i)第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はLである、または
(ii)第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置K55に対応する位置におけるアミノ酸はNである、または
(iii)第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はLであり、第1の軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置K55に対応する位置におけるアミノ酸はNである。
【0350】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は第1の軽鎖を含み、ここで位置T41に対応する位置におけるアミノ酸はH、I、K、L、Q、RまたはVから選択され、例えばH、KおよびRなどから、例えばKなどから選択される。一態様において、本発明による二重特異性抗体は、SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、T41、K55およびL97に対応する位置にそれぞれアミノ酸L、K、NおよびHを有する第1の軽鎖を含む。一態様において、本発明による二重特異性抗体は第1の軽鎖を含み、ここで位置R23に対応する位置におけるアミノ酸はA、G、H、K、Q、SおよびTから、例えばAおよびGなどから選択され、A35に対応する位置におけるアミノ酸は、I、L、M、P、V、G、FおよびWから、例えばI、L、M、PおよびVなどから選択される。
【0351】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は第1の軽鎖を含み、ここで位置R23に対応する位置におけるアミノ酸はAまたはG、例えばAであり、位置A35に対応する位置におけるアミノ酸はPである。
【0352】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は第1の軽鎖を含み、ここでSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、R23、A35、R47、D71、A82、D83、S86、I87およびF89に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、R、A、R、D、A、D、S、IおよびFではない。
【0353】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は第1の軽鎖を含み、ここで位置R23に対応する位置におけるアミノ酸は、A、G、H、K、Q、SおよびTから、例えばAおよびGなどから選択され、A35に対応する位置におけるアミノ酸は、I、L、M、P、V、G、FおよびWから、例えばI、L、M、Pなどから選択され、SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、R47、D71、A82、D83、S86、I87およびF89に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、T、G、P、E、A、EおよびYである。
【0354】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は第1の軽鎖を含み、ここで位置R23に対応する位置におけるアミノ酸はAまたはGであり、SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、A35、R47、D71、A82、D83、S86、I87およびF89に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、P、T、G、P、E、A、EおよびYである。
【0355】
一局面において、本発明による二重特異性抗体は、抗体の親和性を高めるために、第1および/または第2の軽鎖において改変されうる。
【0356】
一局面において、本発明による二重特異性抗体は、抗体の親和性を低下させるために、第1および/または第2の結合アームの軽鎖において改変されうる。これは、いくつかの設定において有利であり、有効性の増加につながりうる。特に第1の結合アームの低親和性(ヒトCD3ε(イプシロン)に対する結合)は、循環中および腫瘍部位でのT細胞の運動性に影響を及ぼし、それ故にT細胞の腫瘍細胞とのより優れた係合につながりうる。Molhoj et al., Molecular Immunology 44 (2007)を参照されたい。特に、これはCD3抗体が結合アームの1つとして用いられる二重特異性形式において有用でありうる。抗体親和性の低下につながる改変は当技術分野において公知であり、例えば、Webster et al. Int J Cancer Suppl. 1988;3:13-6を参照されたい。
【0357】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は第1の軽鎖を含み、ここで
(i)SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はFではない、または
(ii)SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置K55に対応する位置におけるアミノ酸はKではない、または
(iii)SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はFではなく、SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置K55に対応する位置におけるアミノ酸はKではない。
【0358】
一態様において、本発明による抗体は定常軽鎖(LC)を含み、ここで
(i)SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はLである、または
(ii)SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置K55に対応する位置におけるアミノ酸はNである、または
(iii)SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10に対応する位置におけるアミノ酸はLであり、SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置K55に対応する位置におけるアミノ酸はNである。
【0359】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は軽鎖を含み、SEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、T41、K55およびL97に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれF、T、KおよびLではない。そのような改変は発現レベルを高めることおよび親和性を低下させることの両方に役立つ。
【0360】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は第1の軽鎖を含み、ここでSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、T41、K55およびL97に対応する位置におけるアミノ酸は、それぞれL、K、NおよびHである。そのような改変は発現レベルを高めることおよび親和性を低下させることの両方に役立つ。
【0361】
本発明のさらなる局面において、huCD3のCDR領域における突然変異は、CD3結合アームの結合親和性を最適化するために、例えばCD3アームの結合親和性を低下させるために作製されている。
【0362】
したがって、一態様において、本発明による二重特異性抗体のCD3結合アームは、以下の表2に示されているCDR配列から選択される6つのCDR配列を含む。
【0363】
【0364】
一態様において、6つのCDR配列を、それぞれhuCD3 VHおよびVLフレームワーク配列VH1、VH2、VH3およびVH4、ならびにVL1、VL2およびVL3のいずれか1つに挿入して、huCD3のCDR配列を置き換える。一態様において、6つのCDR配列はhuCD3フレームワーク配列VH1およびVL1に挿入される。
【0365】
さらなる態様において、CD3結合アームは、表2から選択される6つのCDR配列を含み、ここで
SEQ ID NO:72のX1は、V、H、F、T、P、L、Q、D、K、W、G、A、CおよびRから選択され;
SEQ ID NO:73のX2は、N、A、H、Q、P、F、M、Y、L、W、D、EおよびCから選択され;
SEQ ID NO:75のX4は、Y、Q、W、L、A、I、M、D、T、K、R、G、F、E、V、CおよびPから選択され;
SEQ ID NO:76のX5は、N、L、Y、W、H、M、G、F、K、S、V、R、Q、D、C、EおよびPから選択され;
SEQ ID NO:81のX10は、A、G、R、V、F、E、M、H、N、Y、P、Q、D、KおよびLから選択され;
SEQ ID NO:83のX12は、D、K、Q、G、V、E、T、N、Y、S、P、W、FおよびMから選択される。
【0366】
そのようなhuCD3 CDR変異体配列は、huCD3野生型CDR配列と比較して結合親和性が低下している。6つのCDR配列を、それぞれhuCD3 VHおよびVLフレームワーク配列VH1、VH2、VH3およびVH4、ならびにVL1、VL2およびVL3のいずれかに挿入して、huCD3のCDR配列を置き換えることができる。一態様においては、6つのCDR配列をhuCD3フレームワーク配列VH1およびVL1に挿入する。さらなる態様において、6つのCDR配列はhuCD3フレームワーク配列VH1およびVL1に挿入されており、ここでVL1(SEQ ID NO:10)の位置41におけるアミノ酸TはKに突然変異している。
【0367】
さらなる態様において、CD3結合アーム表2から選択される6つのCDR配列を含み、ここで
SEQ ID NO:72のX1は、L、P、Q、D、K、W、S、G、A、CおよびRから選択され;
SEQ ID NO:73のX2は、S、N、G、A、K、V、R、H、Q、P、I、F、M、Y、L、W、D、EおよびCから選択され;
SEQ ID NO:74のX3は、M、W、G、Q、V、T、S、L、P、I、A、K、RおよびCから選択され;
SEQ ID NO:75のX4は、W、L、A、I、M、D、T、K、R、G、F、E、V、CおよびPから選択され;
SEQ ID NO:76のX5は、C、E、PおよびTから選択され;
SEQ ID NO:77のX6は A、S、V、N、K、L、T、I、P、Q、C、G、Y、W、FおよびRから選択され;
SEQ ID NO:78のX7は、P、C、SおよびTから選択され;
SEQ ID NO:79のX8は、A、T、G、L、N、C、P、F、Q、H、R、K、E、WおよびYから選択され;
SEQ ID NO:80のX9は、P、L、T、C、A、I、L、Q、V、E、M、K、R、GおよびPから選択され;
SEQ ID NO:81のX10は、E、H、I、M、N、Y、P、Q、D、KおよびLから選択され;
SEQ ID NO:82のX11は、F、Y、I、T、V、M、A、S、N、G、W、E、K、P、RおよびDから選択され;かつ
SEQ ID NO:83のX12は、G、Y、V、N、T、S、H、E、P、W、FおよびMから選択される。
【0368】
そのようなHuCD3 CDR変異体配列は、huCD3野生型CDR配列と比較して結合親和性が低下している。6つのCDR配列を、それぞれhuCD3 VHおよびVLフレームワーク配列VH1、VH2、VH3およびVH4、ならびにVL1、VL2およびVL3のいずれか1つに挿入して、huCD3のCDR配列を置き換える。一態様において、6つのCDR配列をhuCD3フレームワーク配列VH1およびVL1に挿入する。さらなる態様において、6つのCDR配列はhuCD3フレームワーク配列VH1およびVL1に挿入されており、ここでVL1(SEQ ID NO:10)の位置41におけるアミノ酸TはKに突然変異している。
【0369】
さらなる態様において、CD3結合アームは、以下の表3に示されているCDR配列から選択される6つのCDR配列を含み、ここで
SEQ ID NO:73のX2は、MおよびPから選択され;
SEQ ID NO:74のX3は、Aであり;
SEQ ID NO:75のX4は、Eであり;
SEQ ID NO:77のX6は、F、G、I、K、LおよびNから選択され;
SEQ ID NO:78のX7は、Pであり;
SEQ ID NO:79のX8は、AおよびGから選択され;かつ
SEQ ID NO:80のX9は、M、RおよびVから選択される。
【0370】
【0371】
そのようなHuCD3 CDR変異体配列は、huCD3野生型CDR配列と比較して結合親和性が低下している。6つのCDR配列を、それぞれhuCD3 VHおよびVLフレームワーク配列VH1、VH2、VH3およびVH4、ならびにVL1、VL2およびVL3のいずれかに挿入して、huCD3のCDR配列を置き換えることができる。一態様において、6つのCDR配列をhuCD3フレームワーク配列VH1およびVL1に挿入する。さらなる態様において、6つのCDR配列はhuCD3フレームワーク配列VH1およびVL1に挿入されており、ここでVL1(SEQ ID NO:10)の位置41におけるアミノ酸TはKに突然変異している。
【0372】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体のさらなる態様において、第1の結合アームは、Bio-Layerインターフェロメトリーによる測定で3.4×10-8 Mよりも高い、例えば、Bio-Layerインターフェロメトリーによる測定で3.5×10-8 M~9.9×10-8 M、または1.0×10-7 M~9.9×10-7 Mである、ヒトCD3イプシロンに対する結合親和性値(KD)を有するCD3抗体に由来する。
【0373】
本発明のさらなる態様において、二重特異性抗体の一部を形成する抗体の一方または両方は、二重特異性抗体の血清中半減期を操作する目的で、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合性が低下するかまたは増大するように操作されている。血清中半減期を増大または低下させるための手法は、当技術分野において周知である。例えば、Dall'Acqua et al. 2006, J. Biol. Chem., 281:23514-24;Hinton et al. 2006,J. Immunol., 176:346-56;およびZalevsky et al. 2010 Nat. Biotechnol., 28:157-9を参照されたい。
【0374】
一局面において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、第1の定常重鎖(HC)および第1の定常軽鎖(LC)を含み、ここで該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方において、SEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAである。
【0375】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、第1および第2の定常重鎖(HC)ならびに第1および第2の定常軽鎖(LC)を含み、ここで該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方において、SEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置は、それぞれFおよびEである。
【0376】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の結合アームはIgG1-huCD3-H1L1-FEARに由来するFabアームであり、第2の結合アームはIgG1-7D8-FEALに由来するFabアームである。
【0377】
本明細書において、huCD3-H1L1とは、表1にSEQ ID No:6および10として示されているVH1およびVL1を有するヒト化SP34抗CD3抗体のことである。FEALは抗体の定常領域におけるL234F、L235EおよびD265AおよびF405L突然変異のことを指し、一方、FEARは抗体の定常領域におけるL234F、L235EおよびD265AおよびK409R突然変異のことを指し、ここでアミノ酸位置はヒトIgG1のアミノ酸位置に対応する。「IgG1」は、抗体定常領域が特定された突然変異の外側でヒトIgG1に由来することを指す。7D8とは、表1にSEQ ID No:27および28として示されているVH配列およびVL配列を有する抗CD20抗体のことを指す。
【0378】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の結合アームはIgG1-huCD3-H1L1-FEARに由来する半分子抗体であり、第2の結合アームはIgG1-7D8-FEALに由来する半分子抗体である。
【0379】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の結合アームはIgG1-huCD3-H1L1-FEALに由来するFabアームであり、第2の結合アームはIgG1-7D8-FEARに由来するFabアームである。
【0380】
本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体の一態様において、第1の結合アームはIgG1-huCD3-H1L1-FEALに由来する半分子抗体(すなわち、1つの重鎖および1つの軽鎖を含む)であり、第2の結合アームはIgG1-7D8-FEARに由来する半分子抗体(FabアームおよびFcアーム)である。
【0381】
一態様において、本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性抗体は、第1および第2の定常重鎖(HC)ならびに第1および第2の定常軽鎖(LC)を含み、ここで第1の定常重鎖および第2の定常重鎖の両方でSEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、それぞれF、E、およびAであり、第1の定常重鎖においてSEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置はLであり、第2の定常重鎖においてSEQ ID NO:15であるヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置はRであり、かつ(i)第1の定常軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置F10、T41、K55およびL97に対応する位置は、それぞれL、K、NおよびHである、または(ii)第1の定常軽鎖のSEQ ID NO:10のλ軽鎖における位置T41に対応する位置は、Kである。
【0382】
二重特異性抗体のさらなる態様
本発明の二重特異性抗体はいかなるアイソタイプでもよい。アイソタイプの選択は、典型的には、ADCC誘導などの所望のエフェクター機能によって導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域であるκまたはλのいずれかを用いることができる。本発明の抗体のエフェクター機能は、さまざまな治療用途に合わせて、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体へのアイソタイプスイッチによって変えることができる。一態様において、本発明の抗体の両方のFc領域は、IgG1アイソタイプ、例えば、IgG1,κである。一態様において、二重特異性抗体の2つのFc領域は、それぞれIgG1およびIgG4アイソタイプである。任意で、Fc領域は、本明細書の他の箇所で述べたように、ヒンジ領域および/またはCH3領域において改変されていてもよい。
【0383】
一態様において、本発明の二重特異性抗体は、完全長抗体であり、好ましくはIgG1抗体、特にIgG1,κ抗体またはそれらの変異体である。別の態様において、本発明の二重特異性抗体は抗体断片または単鎖抗体を含む。抗体断片は、例えば、従来の技法を用いた断片化によって得ることができ、この断片は、抗体全体について本明細書で説明されたものと同じやり方で有用性についてスクリーニングすることができる。例えば、F(ab')2断片は、抗体をペプシンで処理することによって作製することができる。ジスルフィド架橋が少なくなるように、得られたF(ab')2断片をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して、Fab'断片を作製することができる。Fab断片は抗体をパパインで処理することによって得ることができる。F(ab')2断片はまた、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を介してFab' 断片を結合させることによって作製することもできる。抗体断片はまた、組換え細胞において、そのような断片をコードする核酸を発現させることによって作製することもできる(例えば、Evans et al., J. Immunol. Meth. 184, 123-38 (1995)を参照されたい)。そのような短縮型抗体断片分子を生じるために、F(ab')2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列の後に翻訳停止コドンを含んでもよい。
【0384】
また、本発明のCD3xCD20二重特異性抗体を、単鎖抗体から調製することもできる。単鎖抗体は、重鎖および軽鎖Fv領域が接続されているペプチドである。一態様において、本発明の二重特異性抗体は、1本のペプチド鎖において本発明のCD20抗体のFvの重鎖および軽鎖が可動性ペプチドリンカー(典型的には、約10個、12個、15個、またはそれより多くのアミノ酸残基からなる)でつながっている、単鎖Fv(scFv)を含む。そのような抗体を作製する方法は、例えばUS 4,946,778号、Pluckthun in 'The Pharmacology of Monoclonal Antibodies', vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994), Bird et al., Science 242, 423-426 (1988), Huston et al., PNAS USA 85, 5879-5883 (1988)およびMcCafferty et al., Nature 348, 552-554 (1990)に記載されている。そして、二重特異性抗体は、単鎖CD20抗体および単鎖CD3抗体に由来する2つのVH鎖およびVL鎖から形成することができ、または3つ以上のVH鎖およびVL鎖から形成された多価抗体であってもよい。
【0385】
一態様において、本発明の二重特異性抗体のCD3モノクローナル抗体およびCD20モノクローナル抗体のFc領域の一方または両方はエフェクター機能が欠損している。
【0386】
コンジュゲート
さらなる局面において、本発明は、1つまたは複数の治療モイエティー、例えば、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激分子および/または放射性同位体と連結またはコンジュゲーションされた二重特異性CD3xCD20抗体を提供する。そのようなコンジュゲートは本明細書において「イムノコンジュゲート」または「薬物コンジュゲート」と称される。1種類または複数種の細胞毒を含むイムノコンジュゲートは「免疫毒素」と呼ばれる。
【0387】
一態様において、第1および/または第2のFc領域は、薬物もしくはプロドラッグとコンジュゲーションされているか、またはそれに対するアクセプター基を含む。そのようなアクセプター基は、例えば、非天然アミノ酸であってよい。
【0388】
組成物
さらなる局面において、本発明は、本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体を含む組成物に関する。
【0389】
さらなる局面において、本発明は、
‐本明細書にて開示される態様のいずれかにおいて定義される二重特異性CD3xCD20抗体と、
‐薬学的に許容される担体、
とを含む薬学的組成物に関する。
【0390】
本発明の薬学的組成物は、本発明の1つの二重特異性抗体、または本発明の複数の異なる二重特異性抗体の組み合わせを含有することができる。
【0391】
薬学的組成物は、従来の技法、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示された手法に従って製剤化することができる。本発明の薬学的組成物は、例えば、希釈剤、増量剤、塩、緩衝剤、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えばTween-20もしくはTween-80)、安定化剤(例えば、糖もしくはタンパク質非含有アミノ酸)、保存料、組織固定液、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料を含んでもよい。
【0392】
薬学的に許容される担体には、本発明の二重特異性抗体と生理学的に適合する、任意およびすべての適した溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが含まれる。本発明の薬学的組成物において使用することができる適した水性および非水性の担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適したその混合物、植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチル、ならびに/またはさまざまな緩衝液が含まれる。薬学的に許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。適切な流動性は、例えばコーティング材料、例えばレシチンを用いることによって、分散液の場合、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を用いることによって維持することができる。
【0393】
本発明の薬学的二重特異性抗体はまた、薬学的に許容される酸化防止剤、例えば、(1)水溶性の酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性の酸化防止剤、例えばアスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含んでもよい。
【0394】
本発明の薬学的二重特異性抗体はまた、組成物中に、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0395】
本発明の薬学的二重特異性抗体はまた、薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を強化することができる、選択された投与経路に適した1種または複数種の添加剤、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝剤を含んでもよい。本発明の二重特異性抗体は、急速に放出されないように二重特異性抗体を保護する担体、例えば移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセルに封入した送達系を含む徐放製剤を用いて調製されてもよい。そのような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、生分解性生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のみもしくはポリ乳酸と蝋、または当技術分野において周知の他の材料を含んでもよい。そのような製剤の調製のための方法は一般的に当業者に公知である。
【0396】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、例えば前記で列挙された成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込んだ後に、滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒、および必要とされる他の成分、例えば前記で列挙されたものを含有する滅菌媒体中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の散剤をそれらのあらかじめ濾過滅菌した溶液から生じさせる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0397】
薬学的組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性なしに、特定の患者、組成物、および投与方法について望ましい治療応答を実現するのに有効な活性成分量を得るように変えることができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物またはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、身体全体の健康、および前病歴、ならびに医学分野において周知の同様の要因を含むさまざまな薬物動態要因に依存する。
【0398】
薬学的組成物は、任意の適した経路および方法によって投与することができる。一態様において、本発明の薬学的組成物は非経口的に投与される。「非経口投与される」とは、本明細書で用いる場合、経腸投与および局所投与以外の投与方法、通常、注射による投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、および胸骨内への注射および注入を含む。
【0399】
一態様において、薬学的組成物は、静脈内または皮下への注射または注入によって投与される。
【0400】
使用
一局面において、本発明は、医薬として使用するための、本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体、本明細書において開示された組成物、または本明細書において開示された薬学的組成物に関する。
【0401】
一局面において、本発明は、疾患の治療において使用するための、本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体、本明細書において開示された組成物、または本明細書において開示された薬学的組成物に関する。
【0402】
一局面において、本発明は、本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体、本明細書において開示された組成物、または本明細書において開示された薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、疾患の治療の方法に関する。
【0403】
一態様において、疾患は成熟B細胞悪性腫瘍である。
【0404】
一態様において、疾患は癌、例えばNHLまたはB細胞白血病などである。
【0405】
本発明の二重特異性抗体は、数多くの目的に使用することができる。特に、本発明の二重特異性抗体は、転移性癌および不応性癌を含む、さまざまな形態の癌の治療のために使用することができる。
【0406】
特に、本発明による二重特異性抗体は、CD20を発現する細胞の特異的ターゲティングおよびT細胞媒介性死滅が望まれる治療状況で有用な可能性があり、それらはある種のそのような適応症および状況において、通常のCD20抗体と比較してより効果的であると考えられる。
【0407】
本発明の二重特異性抗体はまた、種々のCD20関連疾患の治療法および診断においてもさらなる有用性を有する。例えば、二重特異性抗体を用いて、以下の生物学的活性の1つまたは複数をインビボまたはインビトロで誘発することができる:CD20を発現する細胞の増殖および/または分化を阻害すること;CD20を発現する細胞を死滅させること;ヒトエフェクター細胞の存在下で、CD20を発現する細胞の食作用またはADCCを媒介すること;補体の存在下で、CD20を発現する細胞のCDCを媒介すること;CD20を発現する細胞のアポトーシスを媒介すること;および/またはCD20との結合後に脂質ラフトへの移行を誘導すること。
【0408】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は、T細胞媒介性免疫応答、炎症および微小環境リモデリングを生じさせるために使用することができる。
【0409】
特定の態様において、二重特異性抗体は、種々のCD20関連疾患を治療、予防または診断するためにインビボで用いられる。CD20関連疾患の例には、中でも、B細胞リンパ腫、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞白血病、および免疫疾患、例えば、自己免疫疾患、例えば以下に列記するものなどが含まれる。
【0410】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は、NHLまたはB細胞白血病の治療のために用いられる。
【0411】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は、CD20抗体抵抗性のNHLまたはB細胞白血病、例えばリツキシマブ抵抗性またはオファツムマブ抵抗性のNHLまたはB細胞白血病、例えば、リツキシマブ抵抗性低悪性度B細胞リンパ腫などの治療のために用いられる。
【0412】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、例えば再発性または不応性ALLなどの治療のために用いられる。
【0413】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は、CLL、例えば再発性または不応性CLLなどの治療のために用いられる。
【0414】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は、FL、例えば再発性または不応性FLなどの治療のために用いられる。
【0415】
一態様において、本発明による二重特異性抗体は、以下の治療のために用いられる:成人グレードIIIリンパ腫様肉芽腫症;成人鼻型節外性NK/T細胞リンパ腫;未分化型大細胞型リンパ腫;血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;連続ステージII成人バーキットリンパ腫;連続ステージII成人びまん性大細胞型リンパ腫;連続ステージII成人びまん性混合細胞型リンパ腫;連続ステージII成人びまん性小切れ込み核細胞型リンパ腫;連続ステージII成人免疫芽球性大細胞型リンパ腫;連続ステージII成人リンパ芽球性リンパ腫;連続ステージIIグレード1濾胞性リンパ腫;連続ステージIIグレード2濾胞性リンパ腫;連続ステージIIグレード3濾胞性リンパ腫;連続ステージIIマントル細胞リンパ腫;連続ステージII周辺帯リンパ腫;連続ステージII小リンパ球性リンパ腫;皮膚B細胞非ホジキンリンパ腫;エプスタイン-バーウイルス感染;粘膜関連リンパ組織の節外性周辺帯B細胞リンパ腫;肝脾T細胞リンパ腫;眼内リンパ腫;リンパ節周辺帯B細胞リンパ腫;非連続ステージII成人バーキットリンパ腫;非連続ステージII成人びまん性大細胞型リンパ腫;非連続ステージII成人びまん性混合細胞型リンパ腫;非連続ステージII成人びまん性小切れ込み核細胞型リンパ腫;非連続ステージII成人免疫芽球性大細胞型リンパ腫;非連続ステージII成人リンパ芽球性リンパ腫;非連続ステージIIグレード1濾胞性リンパ腫;非連続ステージIIグレード2濾胞性リンパ腫;非連続ステージIIグレード3濾胞性リンパ腫;非連続ステージIIマントル細胞リンパ腫;非連続ステージII周辺帯リンパ腫;非連続ステージII小リンパ球性リンパ腫;非皮膚節外性リンパ腫;末梢T細胞リンパ腫;移植後リンパ増殖性障害;進行性ヘアリーセル白血病、初期治療;再発性成人バーキットリンパ腫;再発性成人びまん性混合細胞型リンパ腫;再発性成人びまん性小切れ込み核細胞型リンパ腫;再発性成人グレードIIIリンパ腫様肉芽腫症;再発性成人ホジキンリンパ腫;再発性成人免疫芽球性大細胞型リンパ腫;再発性成人リンパ芽球性リンパ腫;再発性成人T細胞白血病/リンパ腫;再発性皮膚T細胞非ホジキンリンパ腫;再発性グレード1濾胞性リンパ腫;再発性グレード2濾胞性リンパ腫;再発性グレード3濾胞性リンパ腫;再発性マントル細胞リンパ腫;再発性周辺帯リンパ腫;再発性菌状息肉症/セザリー症候群;再発性小リンパ球性リンパ腫;不応性ヘアリーセル白血病;小腸リンパ腫;脾臓周辺帯リンパ腫;ステージI成人バーキットリンパ腫;ステージI成人びまん性大細胞型リンパ腫;ステージI成人びまん性混合細胞型リンパ腫;ステージI成人びまん性小切れ込み核細胞型リンパ腫;ステージI成人ホジキンリンパ腫;ステージI成人免疫芽球性大細胞型リンパ腫;ステージI成人リンパ芽球性リンパ腫;ステージI成人T細胞白血病/リンパ腫;ステージI皮膚T細胞非ホジキンリンパ腫;ステージIグレード1濾胞性リンパ腫;ステージIグレード2濾胞性リンパ腫;ステージIグレード3濾胞性リンパ腫;ステージIマントル細胞リンパ腫;ステージI周辺帯リンパ腫;ステージI小リンパ球性リンパ腫;ステージIA菌状息肉症/セザリー症候群;ステージIB菌状息肉症/セザリー症候群;ステージII成人ホジキンリンパ腫;ステージII成人T細胞白血病/リンパ腫;ステージII皮膚T細胞非ホジキンリンパ腫;ステージIIA菌状息肉症/セザリー症候群;ステージIIB菌状息肉症/セザリー症候群;ステージIII成人バーキットリンパ腫;ステージIII成人びまん性大細胞型リンパ腫;ステージIII成人びまん性混合細胞型リンパ腫;ステージIII成人びまん性小切れ込み核細胞型リンパ腫;ステージIII成人ホジキンリンパ腫;ステージIII成人免疫芽球性大細胞型リンパ腫;ステージIII成人リンパ芽球性リンパ腫;ステージIII成人T細胞白血病/リンパ腫;ステージIII皮膚T細胞非ホジキンリンパ腫;ステージIIIグレード1濾胞性リンパ腫;ステージIIIグレード2濾胞性リンパ腫;ステージIIIグレード3濾胞性リンパ腫;ステージIIIマントル細胞リンパ腫;ステージIII周辺帯リンパ腫;ステージIII小リンパ球性リンパ腫;ステージIIIA菌状息肉症/セザリー症候群;ステージIIIB菌状息肉症/セザリー症候群;ステージIV成人バーキットリンパ腫;ステージIV成人びまん性大細胞型リンパ腫;ステージIV成人びまん性混合細胞型リンパ腫;ステージIV成人びまん性小切れ込み核細胞型リンパ腫;ステージIV成人ホジキンリンパ腫;ステージIV成人免疫芽球性大細胞型リンパ腫;ステージIV成人リンパ芽球性リンパ腫;ステージIV成人T細胞白血病/リンパ腫;ステージIV皮膚T細胞非ホジキンリンパ腫;ステージIVグレード1濾胞性リンパ腫;ステージIVグレード2濾胞性リンパ腫;ステージIVグレード3濾胞性リンパ腫;ステージIVマントル細胞リンパ腫;ステージIV周辺帯リンパ腫;ステージIV小リンパ球性リンパ腫;ステージIVA菌状息肉症/セザリー症候群;ステージIVB菌状息肉症/セザリー症候群;T細胞大型顆粒リンパ球白血病;精巣リンパ腫;未治療のヘアリーセル白血病;またはワルデンストレームマクログロブリン血症。
【0416】
特定の態様において、本発明の抗体はNHLを治療または予防するために用いられるが、これはこの抗体がCD20担持腫瘍細胞を枯渇させるためである。
【0417】
NHLは、B細胞リンパ腫の一種である。B細胞リンパ腫などのリンパ腫は、リンパ球(血球)が悪性になったときに生じる一群の関連する癌である。リンパ球の正常な機能は、侵入物:病原菌、ウイルス、真菌、さらには癌から身体を防御することである。リンパ球には数多くのサブタイプおよび成熟段階があり、それ故に多種のリンパ腫がある。正常細胞と同様に、悪性のリンパ球は身体の数多くの部分に移動することができる。典型的には、リンパ腫はリンパ系:骨髄、リンパ節、脾臓、および血液中で腫瘍を形成する。しかし、これらの細胞は他の器官に遊走する場合がある。ある特定の種類のリンパ腫は、正常型の細胞が常在する位置で成長する傾向がある。例えば、濾胞性NHL腫瘍はリンパ節でよく発達する。
【0418】
CD20は通常、NHLに関連する新生物(すなわち、腫瘍原性)B細胞上に高レベルで発現する。したがって、本発明のCD20結合性抗体を用いて、NHLにつながるCD20担持腫瘍細胞を枯渇させることができ、このため、この疾患を予防または治療するために使用することができる。
【0419】
また、本発明の二重特異性抗体を、CD20の他の効果をブロックまたは阻害するために使用することもできる。例えば、CD20は、Bリンパ球上に発現し、これらの細胞の増殖および/または分化に関与していることが知られている。Bリンパ球は免疫モジュレーターとして機能することから、CD20は、自己免疫障害に関与するBリンパ球を標的とする、例えば、Bリンパ球を不活性化するかまたは死滅させるための抗体媒介治療法の重要な標的である。そのような自己免疫障害には、例えば上に列記した疾患がある。
【0420】
同様に、本発明は、腫瘍CD20を発現する細胞を死滅させるための方法であって、それを必要とする個体に対する本発明の二重特異性抗体の有効量の投与を含む方法にも関する。
【0421】
本発明はまた、CD20を発現する1つまたは複数の腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害するための方法であって、それを必要とする個体に対する本発明の二重特異性抗体の投与を含む方法にも関する。
【0422】
本発明はまた、癌を治療するための方法であって、
(a)CD20を発現する腫瘍細胞を含む癌に罹患した対象を選択する工程;および
(b)本発明の二重特異性抗体または本発明の薬学的組成物を対象に投与する工程;
を含む、前記方法に関する。
【0423】
また、本発明は、癌、例えば、本明細書において言及した特定の癌適応症の1つなどの治療用の医薬の調製のための、ヒトCD3およびヒトCD20と結合する二重特異性抗体の使用にも関する。
【0424】
本発明は、さらに、癌、例えば、本明細書において言及した特定の癌適応症の1つなどの治療において使用するための二重特異性抗体にも関する。
【0425】
一態様において、二重特異性抗体は、成熟B細胞悪性腫瘍の治療において使用するためのものである。一態様において、二重特異性抗体はCD20を発現する腫瘍の治療において使用するためのものである。一態様において、二重特異性抗体は、B細胞リンパ腫の治療において使用するためのものである。一態様において、二重特異性抗体は、NHLなどのB細胞リンパ腫の治療において使用するためのものである。一態様において、二重特異性抗体は、前駆B細胞リンパ芽球性白血病の治療において使用するためのものである。一態様において、二重特異性抗体は、B細胞慢性リンパ球性(lymhocytic)白血病(CLL)の治療において使用するためのものである。一態様において、二重特異性抗体は、小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療において使用するためのものである。
【0426】
一態様において、二重特異性抗体は、B細胞前リンパ球性白血病の治療において使用するためのものである。
【0427】
一態様において、二重特異性抗体は、リンパ形質細胞性リンパ腫の治療において使用するためのものである。
【0428】
一態様において、二重特異性抗体は、マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療において使用するためのものである。
【0429】
一態様において、二重特異性抗体は、低悪性度、中悪性度および高悪性度FLを含む、濾胞性リンパ腫(FL)の治療において使用するためのものである。
【0430】
一態様において、二重特異性抗体は、B細胞ホジキンリンパ腫の治療において使用するためのものである。
【0431】
一態様において、二重特異性抗体は、CD20を発現するB細胞が関与する免疫障害の治療において使用するためのものである。
【0432】
一態様において、二重特異性抗体は、乾癬の治療において使用するためのものである。
【0433】
一態様において、二重特異性抗体は、硬化症の治療において使用するためのものである。
【0434】
一態様において、二重特異性抗体は、炎症性腸疾患の治療において使用するためのものである。
【0435】
以上に言及した使用に関して、抗体はbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARであることが好ましいが、それは本明細書において開示された二重特異性CD3xCD20抗体のいずれであってもよい。
【0436】
本発明の二重特異性抗体は、CD20を発現する細胞が関与する障害の診断および治療を含む、数多くのインビトロおよびインビボでの診断上および治療上の有用性を有する。例えば、種々の障害を治療、予防および診断するために、例えばインビトロもしくはエクスビボで、培養下にある細胞に対して、または例えばインビボで、ヒト対象に対して、抗体を投与することができる。本明細書で用いる場合、「対象」という用語は、CD3およびCD20に対する二重特異性抗体に応答するヒトおよび非ヒト動物を含むことを意図している。好ましい対象には、B細胞(正常または悪性)を阻害または制御することによって是正するかまたは回復させることのできる障害を有するヒト患者が含まれる。
【0437】
一局面において、本発明は、本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体を含む診断用組成物に関する。
【0438】
一態様において、診断用組成物は、二重特異性抗体による治療によって恩恵が得られると考えられる患者をスクリーニングして選択するために用いられるコンパニオン診断薬である。
【0439】
一態様において、本発明の二重特異性抗体は、例えばB細胞リンパ腫、例えばNHLを含む、CD20を発現する腫瘍細胞の存在を特徴とする障害などの腫瘍形成性障害を有する対象を治療するために使用することができる。治療および/または予防することができる腫瘍形成性疾患の例には、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫を含むNHLなどのB細胞リンパ腫および成熟B細胞新生物、例えばB細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、低悪性度、中悪性度および高悪性度FLを含む濾胞性リンパ腫(FL)、皮膚濾胞中心リンパ腫、周辺帯B細胞リンパ腫(MALT型、結節型および脾臓型)、ヘアリーセル白血病、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、悪性黒色腫および未分化大細胞リンパ腫(ALCL)などが含まれる。
【0440】
B細胞非ホジキンリンパ腫のさらなる例には、リンパ腫様肉芽腫症、原発性体液性リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、重鎖疾患(γ、μおよびα疾患を含む)、免疫抑制剤による治療で誘発されるリンパ腫、例えば、シクロスポリン誘発性リンパ腫、およびメトトレキサート誘発性リンパ腫がある。
【0441】
さらなる態様において、本発明の二重特異性抗体は、B細胞ホジキンリンパ腫を治療するために使用することができる。
【0442】
治療および/または予防することができる、CD20を発現するB細胞が関与する免疫障害の例には、免疫障害、例えば乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎、全身性強皮症および硬化症、炎症性腸疾患 (IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎(慢性疲労症候群/筋痛性脳炎(CFS/ME)および慢性疲労症候群/筋痛性脳炎(CFS/ME)を含む)、ブドウ膜炎、腎炎、湿疹、喘息、アテローム性硬化症、白血球接着不全、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年発症性糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体腎炎、IgAニューロパチー、IgM多発性神経炎、免疫媒介血小板減少症、例えば、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎(RA)、アトピー性皮膚炎、天疱瘡、グレーブズ病、橋本甲状腺炎、ウェグナー肉芽腫症、オーメン症候群、慢性腎不全、急性感染性単核細胞症、HIV、および疱疹ウイルス関連疾患などが含まれる。さらなる例には、重症急性呼吸窮迫症候群および舞踏病網膜炎がある。さらに、他の疾患および障害には、エプスタイン-バーウイルス(EBV)などのウイルスへのB細胞の感染によって引き起こされるかまたは媒介されるものが含まれる。
【0443】
自己抗体および/または過剰なBリンパ球活性が顕著であり、治療および/または予防することができる炎症性、免疫性および/または自己免疫性障害のさらなる例には、以下のものが含まれる:
脈管炎および他の血管障害、例えば顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ-ストラウス症候群、および他のANCA関連脈管炎、結節性多発性動脈炎、本態性クリオグロブリン血性脈管炎、白血球破壊性血管炎、川崎病、高安動脈炎、巨細胞性関節炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、原発性または孤立性脳血管炎、結節性紅斑、閉塞性血栓動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病(溶血性尿毒症症候群を含む)、および(B型肝炎、C型肝炎、ワルデンストレームマクログロブリン血症、B細胞新形成、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、または全身性エリテマトーデスに続発する)皮膚白血球性血管炎を含む続発性脈管炎;さらなる例には、結節性紅斑、アレルギー性脈管炎、皮下脂肪組織炎、ウェーバー-クリスチャン病、高グロブリン血性紫斑病、およびバージャー病がある;
皮膚障害、例えば、接触性皮膚炎、線形IgA皮膚病、白斑、壊疽性膿皮症、後天性表皮水疱症、尋常性天疱瘡(瘢痕性類天疱瘡および水疱性類天疱瘡を含む)、円形脱毛症(全身性脱毛症および完全脱毛症を含む)、疱疹状皮膚炎、多形性紅斑、および慢性自己免疫蕁麻疹(血管運動神経性浮腫および蕁麻疹性脈管炎を含む);
免疫媒介性血球減少症、例えば自己免疫血球減少症、および赤血球糸無形成症;
結合組織障害、例えば、CNSルーパス、円板状エリテマトーデス、CREST症候群、混合型結合組織病、多発性筋炎/皮膚筋炎、封入体筋炎、続発性アミロイド症、I型およびII型クリオグロブリン血症、結合組織炎、リン脂質抗体症候群、続発性血友病、再発性多発性軟骨炎、サルコイドーシス、スティッフマン症候群、およびリウマチ熱;さらなる例には、酸親和性筋膜炎がある;
関節炎疹、例えば、強直性脊髄炎、若年性慢性関節炎、成人スティル病、およびSAPHO症候群;さらなる例には、仙腸骨炎、反応性関節炎、スティル病、および痛風がある;
血液障害、例えば、再生不良性貧血、原発性溶血性貧血(寒冷凝集素症候群を含む)、CLLまたは全身性エリテマトーデスに続発する溶血性貧血;POEMS症候群、悪性貧血、およびワルデンストレームマクログロブリン血症性紫斑病;さらなる例には、無顆粒球症、自己免疫性好中球減少症、フランクリン病、セリグマン病、μ鎖病、胸腺腫およびリンパ腫に続発するパラネオプラスチック症候群、およびVIII因子阻害物質形成がある;
内分泌障害、例えば、多発性内分泌障害、およびアジソン病;さらなる例には、自己免疫性低血糖症、自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性インスリン症候群、ドゥ・ケルヴァン甲状腺炎、およびインスリン受容体抗体媒介性インスリン抵抗性がある;
肝-胃腸管障害、例えば、セリアック病、ウィップル病、原発性胆汁性肝硬変、慢性進行性肝炎、および原発性硬化性胆管炎;さらなる例には、自己免疫性胃炎がある;
ネフロパチー、例えば、急速進行性腎炎、後連鎖球菌腎炎、グッドパスチャー症候群、膜性糸球体腎炎、およびクリオグロブリン性腎炎;さらなる例には、微小変化疾患がある;
神経障害、例えば自己免疫性ニューロパチー、多発性単神経炎、ランバート-イートン筋無力症候群、シドナム舞踏病、脊髄癆、およびギラン-バレー症候群;さらなる例には、ミエロパチー/熱帯痙攣性麻痺、重症筋無力症、急性炎症性脱髄性多発性神経炎、および慢性炎症性脱髄性多発性神経炎がある;
心臓および肺の障害、例えば、線維化性肺胞隔炎、閉塞性細気管支炎、アレルギー性アスペルギルス症、嚢胞性線維症、レフレル症候群、心筋炎、および心膜炎;さらなる例には、過敏性肺炎、および肺癌に続発するパラネオプラスチック症候群がある;
アレルギー性障害、例えば、気管支喘息および高IgE症候群など;さらなる例には、一過性黒内障がある;
眼科系障害、例えば、特発性脈絡網膜炎など;
感染性疾患、例えば、パルボウイルスB感染など(ハンズ・アンド・ソックス症候群を含む);ならびに
婦人科系-産科系障害、例えば、再発性流産、再発性胎児消失、および子宮内成長遅延など;さらなる例には、婦人科系新生物に続発する経産婦新生物障害がある;
男性生殖器障害、例えば、精巣新生物に続発する腫瘍随伴性症候群など;ならびに
移植由来の障害、例えば、同種異系移植片および異種移植片拒絶、ならびに移植片対宿主疾患(慢性移植片対宿主疾患を含む)など。
【0444】
一態様において、疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病、若年発症性糖尿病、多発性硬化症、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少紫斑病および慢性特発性血小板減少紫斑病、溶血性貧血(自己免疫溶血性貧血)、筋無力症、全身性硬化症、および尋常性天疱瘡から選択される、炎症性、免疫性および/または自己免疫性障害である。
【0445】
本発明の治療の方法のさらなる局面において、治療の有効性は、治療中に、例えば、所定の時点で、腫瘍量または該当する腫瘍細胞上でのCD20発現レベルを決定することによってモニターされる。
【0446】
上記の治療方法および使用における投薬レジメンは、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)をもたらすように調節される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割量を、ある期間にわたって投与してもよく、その用量は、治療状況の必要性によって示されるように比例して減少または増加してもよい。投与の容易さおよび投薬の均一性のために非経口組成物を単位剤形として製剤化してもよい。
【0447】
二重特異性抗体の効果的な用法用量および投薬レジメンは、治療しようとする疾患または病状に依存し、それは当業者によって決定されうる。本発明の化合物の治療的有効量に関する例示的で非限定的な範囲は、約0.001~10mg/kg、例えば約0.001~5mg/kg、例えば約0.001~2mg/kg、例えば約0.001~1mg/kg、例えば約0.001、約0.01、約0.1、約1または約10mg/kgである。本発明の二重特異性抗体の治療的有効量に関する別の例示的で非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kg、例えば約0.1~20mg/kg、例えば約0.1~10mg/kg、例えば約0.5、例えば約0.3、約1、約3、約5または約8mg/kgである。
【0448】
当技術分野において通常の知識を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定して処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物に使用される二重特異性抗体の用量を、所望の治療効果を達成する目的に必要とされる用量よりも低いレベルで開始して、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増やすことができる。一般に、本発明の二重特異性抗体の適した一日量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量である化合物の量である。投与は、例えば、非経口投与、例えば静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与であってよい。一態様において、二重特異性抗体を、mg/m2単位で計算した毎週投与量での注入によって投与してもよい。そのような投与量は、以下に従った、上記に提示したmg/kg投与量に基づきうる:用量(mg/kg)×70:1.8。そのような投与を、例えば1~8回、例えば3~5回などにわたって繰り返してよい。投与を、2~24時間、例えば2~12時間といった期間にわたる連続注入によって行ってもよい。一態様において、毒性副作用を減少させる目的で、二重特異性抗体を、例えば24時間を上回るような長期間にわたる緩徐な連続注入によって投与してもよい。
【0449】
一態様において、二重特異性抗体は、週1回与える場合、固定用量として計算した毎週投与量で最大8回まで、例えば4~6回などにわたって投与することができる。そのようなレジメンを、例えば6カ月後または12カ月後に、必要に応じて1回または複数回繰り返してもよい。そのような固定投与量は、例えば、体重推定値を70kgとする、上記に提示したmg/kg投与量に基づくことができる。例えば、生物試料を採取して、本発明の二重特異性抗体のCD20抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を用いることにより、投与時の血液中の本発明の二重特異性抗体の量を測定することによって、投与量を決定または調節することができる。
【0450】
一態様において、二重特異性抗体は、維持療法によって、例えば、6カ月またはそれ以上にわたって1週間に1回、投与することができる。
【0451】
また、二重特異性抗体を、癌を発症するリスクを下げるために、癌進行におけるイベントの発生の開始を遅らせるために、および/または癌が寛解期にある時の再発のリスクを下げるために予防的に投与することもできる。
【0452】
また、本発明の二重特異性抗体を、併用療法として、すなわち、治療しようとする疾患または病状に対して妥当な他の治療剤と組み合わせて投与することもできる。したがって、一態様において、二重特異性抗体を含有する医薬は、1種類または複数種のさらなる治療剤、例えば細胞傷害剤、化学療法剤、または抗血管新生剤と併用するためのものである。
【0453】
そのような併用投与は同時に行われてもよく、別々に行われてもよく、逐次的に行われてもよい。同時投与の場合、薬剤は、適宜、1つの組成物として投与されてもよく、別々の組成物として投与されてもよい。したがって、本発明はまた、上記のようにCD20を発現する細胞が関与する障害を治療するための方法を提供し、本方法は、下記の1種類または複数種のさらなる治療剤と組み合わせて本発明の二重特異性抗体を投与する工程を含む。
【0454】
一態様において、本発明は、対象において、CD20を発現する細胞が関与する障害を治療するための方法を提供し、本方法は、治療的有効量の本発明の二重特異性抗体、および任意で少なくとも1種類のさらなる化学療法剤、または前記抗体とは異なるCD20エピトープと結合する抗体を、障害の治療を必要とする対象に投与する工程を含む。
【0455】
一態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法を提供し、本方法は、本発明の二重特異性抗体の治療的有効量および少なくとも1種類のさらなる化学療法剤を、癌の治療または予防を必要とする対象に投与する工程を含む。
【0456】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えば、イマチニブ(グリベック(Glivec)、Gleevec STI571)、イブルチニブ(PCI-32765、Imbruvica)またはラパチニブ(PTK787/ZK222584)から選択することができる。
【0457】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、Brutonチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、例えばイブルチニブから選択することができる。
【0458】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、プロテアソーム阻害剤(PI)、例えばカルフィルゾミブから選択することができる。
【0459】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、免疫調節剤(IMID)、例えばポマリドミド、サリドマイド、またはレナリドミドから選択することができる。
【0460】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、例えばイデラリシブまたはデュベリシブから選択することができる。
【0461】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、オーロラAキナーゼ阻害剤、例えばアリセルチブから選択することができる。
【0462】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、B細胞リンパ腫-2(Bcl-2)阻害剤、例えばベネトクラクスから選択することができる。
【0463】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばパノビノスタットから選択することができる。
【0464】
また、本発明の薬学的組成物を、併用療法として、すなわち、他の治療剤と組み合わせて投与することもできる。一態様において、そのような治療剤には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、または白金類似体のクラスからの、1つまたは複数の化学療法剤が含まれる。そのような化学療法剤の例には、ドキソルビシン(Adriamycin)、シスプラチン(Platinol)、ブレオマイシン(Blenoxane)、カルムスチン(Gliadel)、シクロホスファミド(Cytoxan、Procytox、Neosar)、ベンダムスチンおよび、クロラムブシル(Leukeran)がある。
【0465】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は、クロラムブシル;CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、オンコビン、プレドニゾンまたはプレドニゾロン);シクロホスファミドおよびプレドニゾロン;シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン;シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびプレドニゾン;フルダラビンおよびアルキル化剤;用量が調整されたEPOCH(エトポシド、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミドおよびドキソルビシン);GemOx(ゲムシタビンおよびオキサリプラチン);GDP(ゲムシタビン、デキサメタゾンおよびシスプラチン)と組み合わせて、または、例えば、Non-Hodgkin's Lymphomas: Making sense of Diagnosis, Treatment, and Options, Lorraine Johnston, 1999, O'Reilly and Associates, Incに開示されている、NHLに対する他の一般的な多剤レジメンと組み合わせて投与することができる。
【0466】
一態様において、そのようなさらなる治療剤は、代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン(decarbazine)、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビンまたはクラドリビンから選択することができる。
【0467】
別の態様において、そのようなさらなる治療剤は、アルキル化剤、例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)、クロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体、例えば、カルボプラチンから選択することができる。
【0468】
別の態様において、そのようなさらなる治療剤は、有糸分裂阻害剤、例えば、タキサン、例えばドセタキセル、およびパクリタキセル、ならびにビンカアルカロイド、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンから選択することができる。
【0469】
別の態様において、そのようなさらなる治療剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、例えばトポテカンもしくはイリノテカン、または細胞分裂停止剤、例えばエトポシドおよびテニポシドから選択することができる。
【0470】
別の態様において、本発明は、対象におけるCD20を発現する細胞が関与する障害を治療するための方法を提供し、本方法は、本発明の二重特異性抗体の治療的有効量と、血管新生、新血管新生および/または他の血管新生化の少なくとも1つの阻害剤との、それを必要とする対象に対する投与を含む。
【0471】
そのような血管新生阻害剤の例には、ウロキナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えば、マリマスタット、ネオバスタット(neovastat)、BAY12-9566、AG 3340、BMS-275291、および類似の薬剤)、内皮細胞の遊走および増殖の阻害剤(例えば、TNP-470、スクアラミン、2-メトキシエストラジオール、コンブレタスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、ペニシラミン、SCH66336(Schering-Plough Corp, Madison, NJ)、R115777(Janssen Pharmaceutica, Inc, Titusville, NJ)および類似の薬剤)、血管新生成長因子のアンタゴニスト(例えば、ZD6474、SU6668、血管新生物質および/またはその受容体(例えば、VEGF(例えば、ベバシズマブ)、bFGF、およびアンジオポエチン-1)に対する抗体、サリドマイド、サリドマイド類似体(例えば、CC-5013)、Sugen 5416、SU5402、抗血管新生リボザイム(例えば、アンギオザイム(angiozyme))、インターフェロンα(例えば、インターフェロンα2a)、スラミンおよび類似の薬剤)、VEGF-Rキナーゼ阻害剤および他の抗血管新生性チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、SUO11248)、内皮特異的インテグリン/生存シグナル伝達の阻害剤(例えば、ビタキシン(vitaxin)および類似の薬剤)、銅アンタゴニスト/キレート剤(例えば、テトラチオモリブデート(tetrathiomolybdate)、カプトプリルおよび類似の薬剤)、カルボキシアミド-トリアゾール(CAI)、ABT-627、CM101、インターロイキン-12(IL-12)、IM862、PNU145156E、ならびに血管形成を阻害するヌクレオチド分子(例えば、アンチセンス-VEGF-cDNA、アンギオスタチンをコードするcDNA、p53をコードするcDNA、および欠損性VEGF受容体-2をコードするcDNA)がある。
【0472】
血管形成、新血管新生および/または他の血管新生化のそのような阻害剤の他の例には、抗血管新生性ヘパリン誘導体(例えば、ヘペリナーゼ(heperinase)III)、テモゾロミド、NK4、マクロファージ遊走阻害因子、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、低酸素誘導性因子1の阻害剤、抗血管新生性のダイズイソフラボン、オルチプラズ、フマギリンおよびその類似体、ソマトスタチン類似体、多流酸ペントサン、テコガランナトリウム、ダルテパリン、タムスタチン、トロンボスポンジン、NM-3、コンブレスタチン(combrestatin)、カンスタチン(canstatin)、アバスタチン(avastatin)、他の標的に対する抗体、例えば抗αv/β3インテグリンおよび抗キニノスタチン抗体がある。
【0473】
一態様において、上記の障害を治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤は、抗癌免疫原、例えば癌抗原/腫瘍関連抗原(例えば、上皮細胞接着分子(EpCAM/TACSTD1)、ムチン1(MUC1)、癌胎児抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質72(タグ-72)、gp100、Melan-A、MART-1、KDR、RCAS1、MDA7、癌関連ウイルスワクチン(例えば、ヒトパピローマウイルスワクチン)、または腫瘍由来熱ショックタンパク質であってもよい。
【0474】
一態様において、上記の障害を治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤は、抗癌性サイトカイン、ケモカイン、またはそれらの組み合わせであってもよい。適したサイトカインおよび増殖因子の例には、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα(例えば、INFα2b)、IFNβ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム、およびTNFαが含まれる。適したケモカインには、Glu-Leu-Arg(ELR)陰性ケモカイン、例えば、ヒトCXCおよびC-Cケモカインファミリー由来のIP-10、MCP-3、MIG、およびSDF-1αが含まれうる。適したサイトカインには、サイトカイン誘導体、サイトカイン変異体、サイトカイン断片、およびサイトカイン融合タンパク質が含まれる。
【0475】
一態様において、上記の障害を治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤は、細胞周期制御/アポトーシス調節因子(または「調節剤」)であってもよい。細胞周期制御/アポトーシス調節因子には、細胞周期制御/アポトーシス調節因子を標的としてモジュレートする分子、例えば、(i)cdc-25(例えば、NSC663284)、(ii)細胞周期を過度に刺激するサイクリン依存性キナーゼ(例えば、フラボピリドール(L868275、HMR1275)、7-ヒドロキシスタウロスポリン(UCN-01、KW-2401)、およびロスコビチン(R-ロスコビチン、CYC202))、ならびに(iii)テロメラーゼモジュレーター(例えば、BIBR1532、SOT-095、GRN163、ならびに例えば、US 6,440,735号およびUS 6,713,055号に記載された組成物)が含まれうる。アポトーシス経路に干渉する分子の非限定的な例には、TNF関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)/アポトーシス-2リガンド(Apo-2L)、TRAIL受容体を活性化する抗体、インターフェロン-γ(IFN-γ)およびアンチセンスBcl-2が含まれる。
【0476】
一態様において、上記の障害を治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤は、ホルモン調節剤、例えば抗アンドロゲン療法および抗エストロゲン療法のために有用な薬剤であってもよい。そのようなホルモン調節剤の例には、タモキシフェン、イドキシフェン、フルベストラント、ドロロキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/エスチニル(estinyl)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミンド(flutaminde)/エルレキシン(eulexin))、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシ-プロゲステロン/プロベラ、酢酸メゲストロール/メゲース)、副腎皮質ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(およびその類似体、ならびに他のLHRHアゴニスト、例えばブセレリンおよびゴセレリン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストラゾール(anastrazole)/アリミデックス、アミノグルテチミド/シトラデン(cytraden)、エキセメスタン)、またはホルモン阻害剤(例えば、オクトレオチド/サンドスタチン)がある。
【0477】
一態様において、上記の障害を治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、CTLA-4の活性をブロックする分子、例えば、イピリムマブ、PD-1、例えば、ペムブロリズマブ、PD-L1、TIM3、TIGIT、BTLA、VISTAまたはLAG-3であってもよい。
【0478】
一態様において、上記の障害を治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤は、抗癌性核酸または抗癌性抑制性RNA分子でもよい。
【0479】
上記の障害を治療するために本発明による二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤として妥当な可能性のある他の抗癌剤の例には、分化誘導剤、レチノイン酸類似体(例えば、オールトランスレチノイン酸、13-cisレチノイン酸および類似の薬剤)、ビタミンD類似体(例えば、セオカルシトール(seocalcitol)および類似の薬剤)、ErbB3、ErbB4、IGF-IR、インスリン受容体、PDGFRa、PDGFRβ、Flk2、Flt4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、TRKA、TRKC、RON(例えば、抗RON抗体)、Sea、Tie、Tie2、Eph、Ret、Ros、Alk、LTK、PTK7の阻害剤および類似の薬剤がある。
【0480】
上記の障害を治療するために本発明による二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤として妥当な可能性のある他の抗癌剤の例には、エストラムスチンおよびエピルビシンがある。
【0481】
上記の障害を治療するために本発明による二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤として妥当な可能性のある他の抗癌剤の例には、HSP90阻害剤、例えば17-アリルアミノゲルダナマイシン、腫瘍抗原、例えばPSA、CA125、KSAなどに対する抗体、インテグリン、例えばインテグリンβ1、またはVCAM阻害剤がある。
【0482】
上記の障害を治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するための治療剤として妥当な可能性のある他の抗癌剤の例には、カルシニューリン阻害剤(例えば、バルスポダール(valspodar)、PSC833および他のMDR-1またはp-糖タンパク質阻害剤)、TOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムスおよびラパミン(rapamcyin))、ならびに「リンパ球ホーミング」機構の阻害剤(例えば、FTY720)、ならびに細胞シグナル伝達に作用する薬剤、例えば接着分子阻害剤(例えば、抗LFAなど)がある。
【0483】
さらに別の態様において、二重特異性抗体を、放射線療法および/または自己もしくは同種の末梢幹細胞または骨髄移植と組み合わせて投与することもできる。
【0484】
なお別の態様において、二重特異性抗体は、抗CD25抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体(例えば、オファツムマブまたはリツキシマブ)、抗CD21抗体、抗CD22抗体、抗CD37抗体、抗CD38抗体、抗IL6R抗体、抗IL8抗体、抗IL15抗体、抗IL15R抗体、抗CD4抗体、抗CD11a抗体(例えば、エファリズマブ)、抗α-4/β-1インテグリン(VLA4)抗体(例えば、ナタリズマブ)、およびCTLA4-Igから選択される、1種類または複数種の複数の抗体と組み合わせて投与することができる。
【0485】
さらなる態様において、二重特異性抗体は、免疫チェックポイントをブロックする1種類または複数種の抗体、例えば、抗CTLA-4(CD152)抗体、抗PD-1(CD279)抗体、抗PD-L1(CD274)抗体、抗LAG-3(CD223)抗体、抗TIM3抗体、抗CEACAM1(CD66a)抗体、抗VISTA抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA(CD272)抗体と組み合わせて投与することができる。
【0486】
さらなる態様において、二重特異性抗体は、免疫細胞上の共刺激受容体に対して特異的な1種類または複数種のアゴニスト抗体、例えば抗4-1BB(CD137)抗体(例えば、ウレルマブ)、抗OX40(CD134)抗体、抗CD40抗体、抗CD27抗体と組み合わせて投与することができる。
【0487】
さらなる態様において、二重特異性抗体は、1種類または複数種のII型マクロファージ枯渇化抗体または極性化抗体、例えば抗CSF-1R(CD115)抗体と組み合わせて投与することができる。
【0488】
さらなる態様において、二重特異性抗体は、自然免疫系の調節に関与する分子と結合する1種類または複数種の抗体、例えば、抗CD47抗体、抗CD200抗体、抗CD200R抗体、キラー細胞抑制性受容体(KIR)に対する抗体、CD94/NKG2受容体に対する抗体、抗CD305(LAIR1)と組み合わせて投与することができる。
【0489】
別の特定の態様において、二重特異性抗体は、悪性疾患の治療のために、抗CD19抗体、抗CD21抗体、抗CD22抗体、抗CD37抗体および抗CD38抗体から選択される1種類または複数種の抗体と組み合わせて投与される。
【0490】
別の特定の態様において、二重特異性抗体は、オファツムマブなどの抗CD20抗体と組み合わせて投与される。
【0491】
なお別の特定の態様において、二重特異性抗体は、炎症疾患の治療のために、抗IL6R抗体、抗IL8抗体、抗IL15抗体、抗IL15R抗体、抗CD4抗体、抗CD11a抗体(例えば、エファリズマブ)、抗α4/β1インテグリン(VLA4)抗体(例えば、ナタリズマブ)およびCTLA4-Igから選択される1種類または複数種の抗体と組み合わせて投与される。
【0492】
一態様において、本発明の二重特異性抗体は、1種類または複数種の他の治療用抗体、例えば、ザノリムマブ、ダラツムマブ(Darzalex)、ラニブツマブ、ニモツブマブ、パニツムマブ、hu806、ダクリズマブ(Zenapax)、バシリキシマブ(Simulect)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、ナタリズマブ(Tysabri)、オマリズマブ(Xolair)、および/またはエファリズマブ(Raptiva)と組み合わせて使用するためのものである。
【0493】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は、1種類または複数種の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、例えばブレンツキシマブ - ベドチン(Adcetris)、イノツズマブ - オゾガマイシン(CMC-544)、ポラツズマブ - ベドチン(RG7593)、コルツキシマブ - ラブタンジン(coltuximab ravtansine)(SAR3419)、インダツキシマブ - ラブタンジン(indatuximab ravtansine)(BT-062)、イノツズマブ - オゾガマイシン(CMC-544)、デニンツズマブ - マフォドチン(denintuzumab mafodotin)(SGN-CD19)、ポラツズマブ - ベドチン(RG7596)またはCD37特異的抗体薬物コンジュゲート(例えば、IMGN529またはAGS67E)と組み合わせて使用するためのものである。
【0494】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は、抗炎症剤または免疫抑制剤と組み合わせて使用することができる。例えば、併用療法は、本発明の組成物と、少なくとも1種類の抗炎症剤または少なくとも1種類の免疫抑制剤とを含みうる。一態様において、そのような治療剤には、1種類または複数種の抗炎症剤、例えば、ステロイド剤またはNSAID(非ステロイド性抗炎症剤)が含まれる。好ましい薬剤には、例えば、アスピリンおよび他のサリチル酸塩、Cox-2阻害剤、例えばセレコキシブ(Celebrex)、NSAID、例えばイブプロフェン(Motrin、Advil)、フェノプロフェン(Nalfon)、ナプロキセン(Naprosyn)、スリンダク(Clinoril)、ジクロフェナク(Voltaren)、ピロキシカム(Feldene)、ケトプロフェン(Orudis)、ジフルニサール(Dolobid)、ナブメトン(Relafen)、エトドラック(Lodine)、オキサプロジン(Daypro)、およびインドメタシン(Indocin)が含まれる。
【0495】
別の態様において、そのような治療剤には、1種類または複数種のDMARD、例えばメトトレキサート(Rheumatrex)、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)、スルファサラジン(Asulfidine)、ピリミジン合成阻害剤、例えばレフルノミド(Arava)、IL-1受容体遮断剤、例えばアナキンラ(Kineret)、およびTNF-α遮断剤、例えばエタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)およびアダリムマブが含まれる。
【0496】
別の態様において、そのような治療剤には、シクロスポリン(Sandimmune、Neoral)およびアザチオプリン(Imural)などの1種類または複数種の免疫抑制剤が含まれる。
【0497】
特定の態様において、二重特異性抗体は、例えば、移植片対宿主病を有する患者における、水疱性類天疱瘡の治療のために、抗CD25抗体と組み合わせて投与される。
【0498】
放射線療法‐外科手術
一態様において、本発明は、対象におけるCD20を発現する細胞が関与する障害を治療するための方法を提供し、本方法は、本発明のCD3xCD20二重特異性抗体の治療的有効量および放射線療法の、それを必要とする対象に対する投与を含む。
【0499】
一態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法を提供し、本方法は、本発明のCD3xCD20二重特異性抗体の治療的有効量および放射線療法の、それを必要とする対象に対する投与を含む。
【0500】
一態様において、本発明は、放射線療法と組み合わせて投与される、癌を治療するための薬学的組成物を調製するための、本発明の二重特異性抗体の使用を提供する。
【0501】
放射線療法は放射線で構成されることもあれば、患者に対する放射性医薬の投与を伴うこともある。放射線源は、治療を受ける患者の外部にあってもよく、内部にあってもよい(放射線治療は、例えば、外部ビーム放射線療法(EBRT)または近接照射療法(BT)の形をとってもよい)。そのような方法の実施において用いうる放射性元素には、例えば、ラジウム、セシウム-137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅-67、テクネチウム-99、ヨウ素-123、ヨウ素-131、およびインジウム-111が含まれる。
【0502】
さらなる態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする対象に対する、本発明の二重特異性抗体の治療的有効量の、外科手術と組み合わせた投与を含む。
【0503】
診断用途
したがって、1つの局面において、本発明は、本明細書で定義したような二重特異性CD3xCD20抗体を含む診断用組成物、およびその使用に関する。
【0504】
別の局面において、本発明は、血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料などの患者に由来する試料における、CD3発現細胞とCD20発現細胞との間の架橋を検出するためのキットであって、
i)本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体;および
ii)前記キットの使用説明書;
を含む、前記キットに関する。
【0505】
一態様において、本発明は、二重特異性CD3xCD20抗体、ならびにCD20発現細胞およびCD3発現細胞の架橋を検出するための1つまたは複数の試薬を含む容器を含む、癌の診断のためのキットを提供する。試薬には、例えば、蛍光タグ、酵素タグまたは他の検出可能なタグが含まれうる。試薬はまた、二次もしくは三次抗体、または可視化しうる産物が酵素反応によって生成されるような酵素反応のための試薬を含むこともできる。
【0506】
さらなる局面において、本発明は、本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体が投与されると、血液試料、リンパ節試料、または骨髄試料などの患者に由来する試料において、CD3発現細胞とCD20発現細胞との間の架橋が起こるか否かを検出するための方法であって、
(i)前記二重特異性抗体およびCD3発現細胞およびCD20発現細胞の間の複合体の形成を可能にする条件下で、試料を、本明細書にて開示される態様のいずれか1つによる二重特異性抗体と接触させる工程;ならびに
(ii)複合体が形成されたか否かを分析する工程;
を含む、前記方法に関する。
【0507】
複合体の検出は、当技術分野において公知の方法、例えば実施例5に開示された方法などによって行うことができる。
【0508】
さらなる局面において、本発明は、本明細書にて開示される態様のいずれか1つにおいて定義される第1の抗原結合領域と結合するか、または本明細書にて開示される態様のいずれか1つにおいて定義される第2の抗原結合領域と結合する、抗イディオタイプ抗体に関する。
【0509】
本発明を以下の実施例によってさらに例示するが、それらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0510】
実施例1‐ヒト化CD3抗体および非活性化抗体変異体の作製
CD3抗体のヒト化
マウスCD3抗体SP34(US8236,308号、本明細書ではIgG1-CD3と記載)のヒト化は、Antitope(Cambridge、UK)により、彼らの改良版生殖細胞系ヒト化(CDR移植)技術(EP0629240号)を用いて行われた。この技術を用いて、4種類のVH鎖(SEQ ID NO:6、7、8および9)および3種類のVL鎖(SEQ ID NO:10、11および12)が設計された。これらの4種のVH鎖を3種のVL鎖と組み合わせることによって、12種類の抗体を作製した。これらのヒト化変異体を本明細書ではhuCD3と記載する。したがって、本発明によるVHおよびVLを含むヒト化変異体は、例えばIgG1-huCD3-H1L1と記載され、これは前記の具体的変異体がIgG1アイソタイプのもので、ヒト化SP34 CD3特異的抗体であり、かつ、「H1」と名付けられてSEQ ID NO:6によって定義されるVHアミノ酸配列と、「L1」と名付けられてSEQ ID NO:10によって定義されるVLアミノ酸配列とを含むことを意味する。このように、H1は可変重鎖領域VH1のことを指し、L1は可変軽鎖領域VL1のことを指し、他も同様である。
【0511】
特に、変異体IgG1-huCD3-H1L1(SEQ ID NO:6に示されるVH1配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL1配列を含むヒト化CD3)、IgG1-huCD3-H1L2(SEQ ID NO:6に示されるVH1配列およびSEQ ID NO:11に示されるVL2配列を含むヒト化CD3)、IgG1-huCD3-H1L3(SEQ ID NO:6に示されるVH1配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL3配列を含むヒト化CD3)、IgG1-huCD3-H3L3(SEQ ID NO:8に示されるVH3配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL3配列を含むヒト化CD3)、IgG1-huCD3-H4L1(SEQ ID NO:9に示されるVH4配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL1配列を含むヒト化CD3)、IgG1-huCD3-H3L1(SEQ ID NO:8に示されるVH3配列およびSEQ ID NO:10に示されるVL1配列を含むヒト化CD3)、IgG1-huCD3-H3L3(SEQ ID NO:8に示されるVH3配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL3配列を含むヒト化CD3)およびIgG1-huCD3-H4L3(SEQ ID NO:9に示されるVH4配列およびSEQ ID NO:12に示されるVL3配列を含むヒト化CD3)を、本発明による二重特異性抗体の第1の抗原結合領域として用いた。本明細書において、「IgG1-huCD3」は、さらに定義している場合を除き、IgG1-huCD3-H1L1のことを指す。
【0512】
いくつかの実施例では、huCLB-T3/4の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列(それぞれSEQ ID NO:17および18)を含むCD3抗体を、本発明による二重特異性抗体の第1の抗原結合領域として用いた。huCLB-T3/4はマウスCD3抗体CLB-T3/4のヒト化型である(Parren et al., Res Immunol. 1991, 142(9):749-63)。両方の配列(SEQ ID NO:17および18)を適切なpcDNA3.3(Invitrogen)発現ベクター中にクローニングして、HEK293F細胞におけるコトランスフェクションによって発現させた。結果として生じたCD3抗体をIgG1-huCLB-T3/4と記載する。
【0513】
これらのヒト化CD3抗体は、WO2015001085号にさらに記載されている。
【0514】
CD20抗体
本二重特異性抗体の第2の結合アームとして用いられるCD20抗体は、WO2004035607号(Genmab)およびWO2005103081号(Genmab)にさらに開示されている。
【0515】
対照抗体
以下の抗体を実施例において対照抗体として用いた。
【0516】
CD3抗体
IgG1-CD3(それぞれSEQ ID NO:25およびSEQ ID NO:26に示されるVH配列およびVL配列を有する親CD3抗体SP34)
IgG1-huCD3(H1L1)(それぞれSEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:10に示されるVH配列およびVL配列を有する)
IgG1-huCLB-T3/4
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEAR(gp120特異的抗体である抗体b12を第2のアームとして用いた二重特異性抗体(Barbas, CF. J Mol Biol. 1993 Apr 5;230(3):812-23)
IgG1-huCD3-H1L1-FEAL
IgG1-huCLB-T3/4-FEAL
【0517】
CD20抗体
IgG1-7D8(それぞれSEQ ID NO:27およびSEQ ID NO:28に示されるVH配列およびVL配列を有する)
IgG1-11B8(それぞれSEQ ID NO:40およびSEQ ID NO:41に示されるVH配列およびVL配列を有する)
IgG1-2F2(それぞれSEQ ID NO:37およびSEQ ID NO:28に示されるVH配列およびVL配列を有する)
IgG1-RTX(リツキシマブのVH配列およびVL配列を有する)
IgG1-GA101(オビヌツズマブ、CHEMBL1743048、US8883980号のVH配列およびVL配列を有し、野生型ヒトIgG1 Fcドメインを伴う)
IgG1-2C6(それぞれSEQ ID NO:47およびSEQ ID NO:48に示されるVH配列およびVL配列を有する)
IgG1-7D8-FEAR
IgG1-11B8-FEAR
IgG1-2F2-FEAR
IgG1-GA101-FEAR
IgG1-2C6-FEAR
【0518】
(表4)種々のB細胞株に対する7D8 CD20抗体結合の定量
実施例に用いた種々のヒトB細胞株に対する7D8 CD20抗体の結合を、CD20発現の指標として定量するために、定量的フローサイトメトリー(QIFIKIT(登録商標)、Dako;カタログ番号K0078)を、記載された通りに行った(Poncelet and Carayon, 1985, J. Immunol. Meth. 85: 65-74)。これを目的として、ヒトB細胞株を飽和濃度の7D8と共にインキュベートし、結合した7D8分子の数を定量的フローサイトメトリーを用いて決定した。
マウスFcドメインを発現するように操作された抗ヒトCD20抗体7D8(10μg/mL、mmIgG1-7D8(Overdijk et al. 2012, J. Immunol. 189: 3430-3438)をこのアッセイに用いた。B-ALL:B細胞急性リンパ芽球性白血病、ABC-DLBCL:活性化B細胞びまん性大B細胞リンパ腫、GC-DLBCL:胚中心びまん性大B細胞リンパ腫、FL:濾胞性リンパ腫。
*ABC:抗体結合能
【0519】
実施例2‐2-MEA誘導性Fabアーム交換による二重特異性抗体の作製
二重特異性抗体を生成させるためのインビトロ方法は、WO 2008119353号(Genmab)に記載され、van der Neut-Kolfschotenら(Science. 2007 Sep 14;317(5844):1554-7)によって報告されている。本明細書では、穏やかな還元条件下でのインキュベーションによる2つの単一特異性IgG4抗体またはIgG4様抗体の間の「Fabアーム」または「半分子」交換(1つの重鎖および付随軽鎖のスワッピング)によって、二重特異性抗体を形成させた。理論に限定されるわけではないが、このFabアーム交換反応は、単一特異性抗体のヒンジ領域内の重鎖間ジスルフィド結合が還元されて、結果として生じる遊離システインが、異なる特異性を有する別の抗体分子のシステイン残基と新たな重鎖間ジスルフィド結合を形成するというジスルフィド結合の異性化反応の結果であった。その結果生じた生成物は、異なる配列を有する2つのFabアームを有する二重特異性抗体であった。
【0520】
この自然なIgG4 Fabアーム交換に関する知見を応用して、IgG1を基にした安定な二重特異性抗体を生成させるための方法を作り出した(WO2011131746号(Genmab))。下記のこの方法によって作製された二重特異性抗体産物は、IgG4 Fabアーム交換にはもはや関与しない。この方法の基盤は、特定のアッセイ条件下でヘテロ二量体の形成を促進する、相補的(complimentary)CH3ドメインを用いることにあった。この方法による二重特異性抗体の生成を可能にするために、CH3ドメイン内に特定の突然変異:親IgG1抗体の一方にT350I、K370TおよびF405L突然変異(または最低でもF405L)、もう一方の親IgG1抗体にK409R突然変異を保有するIgG1分子を作製した。
【0521】
二重特異性抗体を作製するために、これらの2つの親抗体を、各抗体の最終濃度0.5mg/mL(等モル濃度)として、25mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)と共に、合計容積100μLのTris-EDTA(TE)中にて37℃で90分間インキュベートした。還元反応は、スピンカラム(Microcon遠心濾過機、30k、Millipore)を製造元のプロトコールに従って用いることによって還元剤2-MEAが除去されると停止する。
【0522】
実施例3-ヒト化CD3抗体の生成を最適化するための突然変異体の作製
huCD3-L1突然変異体プラスミドの作製
L1軽鎖中に突然変異を有するいくつかのIgG1-huCD3-H1L1変異体を、一過性トランスフェクションアッセイにおけるIgG1-huCD3-H1L1の発現レベルを向上させる目的で作製した。表5参照。残基の選択は、生殖細胞系配列との比較、または相同抗体の結晶構造と組み合わせたhuCD3-L1配列中の希少残基の存在に関するスクリーニングを基にした。選択した配列は、GeneArt(Life Technologies, Germany)で合成された。p33Lは、SEQ ID NO:29のヒトIgLC2/IgLC3λ軽鎖の定常ドメインをコードする。p33G1fは、SEQ ID NO:15のIgG1m(f)重鎖定常領域をコードする。
【0523】
【0524】
Expi293F細胞における一過性発現
単一抗体について、重鎖(HC)および軽鎖(LC)をコードするプラスミドを、ExpiFectamine 293(Life Technologies)を用いてFreestyle Expi293F細胞(Life Technologies, USA)に一過性にトランスフェクトした。計1.5μgのHCをコードするプラスミドおよび1.5μgのLCをコードするプラスミド(表5)を、150μLのOpti-MEM(Gibco, USA)中に希釈した。トランスフェクション混合物を調製するために、8μLのExpiFectamine 293を150μLのOpti-MEM中に希釈して、室温で5分間インキュベートした。次に、DNA/Opti-MEMとExpiFectamine 293/Opti-MEM溶液を混合し、室温で20分間インキュベートして、7.5×106個のExpi293F細胞および50U/mLのPen-Strepを含有する2.55mLのExpi293 Expression Mediumに加えた。細胞を37℃、8% CO2中でインキュベートし、200rpmで振盪した。発現を強化するために、トランスフェクションの21時間後に、15μLのenhancer mix 1および150μLのenhancer mix 2を添加した。細胞を4日間インキュベートし、その後に上清を採取した。続いて上清を3,000×gで遠心し、フィルターを通して0.2μmフィルターを通して濾過滅菌した。IgG発現レベルを、抗ヒトIgGセンサー(ForteBio, USA)を用いてOctet RED(ForteBio, US)で測定した。
【0525】
IgG濃度分析
IgG1-huCD3-H1L1抗体は72μg/mLで発現された。IgG発現の4倍への増加が、IgG1-huCD3-H1L1-LT41K突然変異型について観察された(295μg/mL)。同程度の発現レベルが、突然変異の中でも特にT41K突然変異を含むIgG1-huCD3-H1L1-LLKNH突然変異体に関して観察された(311μg/mL)。これらの構築物における他の突然変異は、個別に試験した場合に、IgG1-huCD3-H1L1と比較して発現強化を示さなかった(IgG1-huCD3-H1L1-LF10L、IgG1-huCD3-H1L1-LK55N、IgG1-huCD3-H1L1-LL97H)。
【0526】
発現を強化する突然変異の第2のセットが、R23AおよびA35Pの組み合わせに関して観察された。R23AおよびA35Pを欠くIgG1-huCD3-H1L1-LLTGPEAEY変異体は発現強化を示さず(83μg/mL)、追加のR23AおよびA35P突然変異を含有するIgG1-huCD3-H1L1-LLAPTGPEAEYは、発現の3倍の増加を示した(237μg/mL)。個別には、R23AまたはA35Pは、発現レベルの強化を示さなかった(それぞれ56および81μg/mL)。
【0527】
実施例4‐Daudi細胞およびJurkat細胞に対する二重特異性CD3xCD20抗体の結合
ヒトCD3陰性CD20陽性Daudi細胞株(American Type Culture Collection, ATCC(登録商標)CCL-213(商標)、ヒトバーキットリンパ腫に由来)およびヒトCD3陽性CD20陰性Jurkat細胞株(Deutsche Sammlung von Mikroorgansimen und Zellkulturen, DSMZ(登録商標)ACC 282(商標)、急性T細胞白血病に由来)に対するbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの結合を、フローサイトメトリーによって分析した。この二重特異性抗体は、非活性化突然変異L234F、L235E、D265Aを両方のアームに含有することに加えて、一方のアームにF405L突然変異、もう一方のアームにK409R突然変異を含有した。
【0528】
細胞(1×105個/ウェル)を、ポリスチレン製96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one、カタログ番号650101)中で、抗体の系列希釈物(3倍希釈ステップで0.041~30μg/mLの範囲[A~E]、4倍希釈ステップで0.00061~10μg/mLの範囲[F~I])と共に、100μLのPBS/0.1% BSA/0.02%アジド(本明細書中、以下では染色緩衝液と称する)中で、4℃で30分間インキュベートした。
【0529】
染色緩衝液中で2回洗浄した後に、細胞を50μL中の二次抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。二次抗体としては、R-フィコエリトリン(PE)結合ヤギ抗ヒトIgG F(ab')
2(カタログ番号109-116-098、Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West Grove, PA)を染色緩衝液中に1:200希釈したものを、すべての実験に用いた。次に、細胞を染色緩衝液中で2回洗浄し、30μLの染色緩衝液中に再懸濁させて、iQue screener(Intellicyt Corporation, USA)で分析するか(
図1A~Eの場合)、または100μLの染色緩衝液中に再懸濁させて、FACS CANTOII(BD Biosciences)で分析した(
図1F~I)。結合曲線は、GraphPad Prism V75.04ソフトウエア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、非線形回帰(可変勾配によるシグモイド用量反応)を用いて分析した。
【0530】
図1A~Fは、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEARが、Daudi細胞に対して用量依存的な結合を示し、最大結合が単一特異性の二価CD20抗体IgG1-7D8およびIgG1-2F2よりも高度であったことを示している。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-RTX-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-GA101-FEARについては、最大結合は二価の単一特異性CD20抗体IgG1-11B8、IgG1-RTXおよびIgG1-GA101と同程度であった。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-RTX-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-GA101-FEARの最大結合、および二価の単一特異性CD20抗体IgG1-11B8、IgG1-RTXおよびIgG1-GA101の最大結合は、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEARならびに二価の単一特異性CD20抗体IgG1-7D8およびIgG1-2F2よりも弱かった。huCD3-H1L1-FEALxCD20-2C6-FEARの最大結合は、単一特異性CD20抗体IgG1-7D8のものと同等であった。
【0531】
図1Gは、CD3特異的huCLB-T3/4 Fabアームを含有するCD3xCD20二重特異性抗体のDaudi細胞に対する結合を示している。bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-2F2-FEARは、単一特異性CD20抗体IgG1-7D8と同等の結合を示した。CD3特異的huCD3-H1L1 Fabアームを含有するCD3xCD20二重特異性抗体に関して、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-11B8-FEARおよびbsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-GA101-FEARの結合は単一特異性CD20抗体IgG1-7D8、およびCD20特異的7D8または2F2-Fabアームを含有するCD3xCD20二重特異性抗体よりも弱かった。
【0532】
図1HおよびIは、それぞれCD3特異的huCD3-H1L1-またはhuCLB-T3/4-Fabアームを含有するCD3xCD20二重特異性抗体のJurkat細胞に対する結合を示している。IgG1-huCD3-H1L1-FEALに由来するCD3特異的Fabアームを有するCD3xCD20二重特異性抗体はすべて、CD20特異的Fabアームの出所にかかわらず、Jurkat細胞に対して同等の結合を示した(
図1H)。同様に、IgG1-huCLB-T3/4-FEALから得られたCD3 Fabアームを有するCD3xCD20二重特異性抗体もすべて、同等の結合を示した(
図1G)。単一特異性の二価親CD3特異的抗体であるIgG1-huCD3-H1L1およびIgG1-huCLB-T3/4は、CD3xCD20二重特異性抗体よりも低いEC
50値でJurkat細胞と結合した。
【0533】
実施例5‐T細胞およびB細胞に対するbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの濃度依存的な同時結合
ヒトB細胞は表面抗原CD20を発現するが、CD3の発現は欠いている。対照的に、ヒトT細胞は表面抗原CD3を発現するが、CD20の発現は欠いている。二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARはCD3およびCD20の両方を認識し、それ故にヒトB細胞およびT細胞の両方と結合することができる。B細胞およびT細胞に対する二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの同時結合は、健常ドナー由来の100μLのヘパリン添加全血を、ある濃度範囲の抗体(10倍希釈ステップで0.001~100μg/mLの範囲、種々の容積の非希釈抗体を血液試料に添加することによって得た)の存在下で37℃で2時間インキュベートすることによって示された。それぞれCD20またはCD3のみを認識し、それ故にB細胞およびT細胞と同時に結合することができないCD20抗体2F2およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARを、陰性対照抗体として用いた。細胞を染色緩衝液中で2回洗浄して(1200RPM、3分間)、CD4に対して特異的な抗体(CD4-PE;Becton Dickinson、カタログ番号555347)またはCD8に対して特異的な抗体(CD8-PE;Miltenyi、カタログ番号BW135/80)(種々のT細胞サブセットを同定するため)およびCD19に対して特異的な抗体(CD19-APC;DAKO、カタログ番号C7224)(B細胞を同定するため)と共に、4℃で30分間インキュベートした。分析の前に、100μLの赤血球溶解緩衝液(10mM KHCO3/0.01mM EDTA/155mM NH4ClをdH2O中に希釈)(KHCO3:Sigma、カタログ番号P9144;EDTA:FLUKA、カタログ番号036;NH4Cl:Sigma、カタログ番号A-5666)の添加によって赤血球を溶解させた。試料は、自動プレートローダー(Becton Dickinson)を装着したFACS CANTOIIを用いて、フローサイトメトリーによって分析した。ヒトT細胞およびB細胞に対するbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの同時結合を示す、CD4+CD19+またはCD8+CD19+二重陽性イベントの数を、CD4/CD19およびCD8/CD19象限分析によって計測した。
【0534】
図2Aおよび2Bは、CD3xCD20二重特異性抗体の存在下でのみ、T細胞-B細胞ダブレットを表すCD4
+CD19
+およびCD8
+CD19
+二重陽性イベントの集団が観察されたことを示しており、このことはこれらの二重特異性抗体が2種の細胞型と同時に結合しうることを示している。ダブレットの出現は、CD4
+ T細胞(A)およびCD8
+ T細胞(B)のいずれに関しても抗体濃度依存的であった。
【0535】
実施例6‐CD3xCD20二重特異性抗体によるインビトロでの細胞傷害性の誘導
種々のCD3xCD20二重特異性抗体を、腫瘍細胞株を標的細胞として用い、末梢血単核細胞(PBMC)または精製T細胞をエフェクター細胞として用いるインビトロ細胞傷害性アッセイにおいて検討した。
【0536】
標的細胞:以下の腫瘍細胞株を用いた:DaudiおよびRaji(前記)、OCI-Ly7(DSMZ;カタログ番号ACC 688;DLBCLに由来)、SU-DH L-4(DSMZ;カタログ番号ACC 495;DLBCLに由来)、RI-1(DSMZ;カタログ番号ACC 585、DLBCLに由来])、NALM-16(DSMZ;カタログ番号ACC 680;B-ALLに由来)およびWSU-NHL(DSMZ、カタログ番号ACC 58;NHLに由来)。細胞は、RPMI++(RPMI-1640[25mM HEPESおよびL-グルタミン;Lonza、カタログ番号BE12-115F]を有し、10%ウシ血清[Gibco;カタログ番号10371-029]および25,000単位のペニシリン/25,000μgのストレプトマイシン[Lonza;カタログ番号17-603E]を加えたもの)中に収集し(5×106個)、遠心処理で沈降させ(1,200RPM、5分間)、1mLのRPMI++中に再懸濁させて、100μCiの51Cr(クロム-51;Perkin Elmer、カタログ番号N EZ030002MC)を添加して、インキュベートした(37℃水浴、振盪;1時間)。細胞をPBS中で洗浄した後に(1,200RPM、5分間)、細胞をRPMI++中に再懸濁させて、トリパンブルー排除によって計測した。1×105個/mLの細胞懸濁液を調製した。
【0537】
エフェクター細胞:新鮮なPBMCを、Ficoll勾配(Lonza;リンパ球分離培地、カタログ番号17-829E)を製造元の指示に従って用いて、40mLのバフィーコート(Sanquin)から単離した。細胞のRPMI++中への再懸濁後に、細胞を赤血球を除外するためにTurk溶液を用いて計測し、10×106個/mLの濃度に調整した。精製T細胞は、バフィーコートから、RosetteSep(商標)ヒトT細胞Enrichment Cocktail(Stemcell Technologies、カタログ番号15061)を用いて、またはPBMCから、Dynabeads(登録商標)Untouched(商標)H uman T細胞単離キット(Invitrogen;カタログ番号11344D)を製造元の指示に従って用いて得た。細胞をPBS中で2回洗浄し、Turk溶液を用いて計測し、1×106個/mLの濃度に調整した。
【0538】
細胞傷害性アッセイ:50μLの51Cr標識標的細胞を96ウェル丸底プレートに添加した。RPMI++中の50μLの抗体(最終濃度10pg/mL~10μg/mLの範囲)を添加した後に、細胞を室温で10分間インキュベートした。
【0539】
50μLのエフェクター細胞(エフェクター・標的比は指定の通り)、Triton-X-100(最終濃度1.7%;最大溶解を決定するため)またはRPMI++(バックグラウンド溶解を決定するため)を添加した。細胞を37℃、5% CO2にて24~48時間インキュベートした。細胞を遠心処理で沈降させた後に(1,200RPM、3分間)、75μLの上清を1.4mLのチューブ内に採取し(Micronic;カタログ番号MP226RN)、γカウンター(Perkin Elmer)にて計測した。特異的溶解率(%)は以下の通りに計算した:
特異的溶解率(%)=(試料cpm-標的細胞のみのcpm)/(最大溶解cpm-標的細胞のみのcpm)×100。Cpm=1分間当たりのカウント。
【0540】
図3は、CD3特異的Fabアーム(半分子)(IgG1-huCD3-H1L1-FEALまたはIgG1-huCLB-T3/4-FEALに由来)およびCD20特異的Fabアーム(すなわち、半分子)(IgG1-CD20-7D8-FEAR、IgG1-CD20-11B8-FEAR、IgG1-CD20-2F2-FEAR、IgG1-CD20-RTX-FEAR、IgG1-CD20-2C6-FEARまたはIgG1-CD20-GA101-FEARに由来)を含有する二重特異性抗体がすべて、PBMC(
図3A、3M)および精製T細胞(
図3B~3L、3N)のいずれをエフェクター細胞として用いた場合にも、試験したB細胞株において細胞傷害性を誘導したことを示している。不活性Fcドメインを有する単一特異性二価抗体(IgG1-7D8-FEAR、IgG1-11B8-FEAR、IgG1-huCD3-H1L1-FEAL、IgG1-huCLB-T3/4-FEAL)は、B細胞株におけるT細胞媒介性細胞傷害性もPBMC媒介性細胞傷害性も誘導することができなかった。このことは、CD3xCD20二重特異性抗体に関して、細胞傷害性が二重特異性抗体によるCD3およびCD20の両方の結合に依存したことを示している。以前に開示されているように、活性Fcを有する単一特異性二価CD20抗体(IgG1-7D8およびIgG1-11B8-F405L)は、Daudi細胞におけるPBMCによる抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性を誘導することができた(
図3A、3M)。この場合には、主たるエフェクター細胞はナチュラルキラー(NK)細胞であった。CD3xC20二重特異性抗体は、単一特異性二価CD20抗体よりも低濃度で活性があった。
図3C~3Fは、IgG1-huCLB-T3/4およびIgG1-huCD3-H1L1のいずれに由来するCD3アームも、同程度の有効性で細胞傷害性を誘導したことを示している。
図3G~3Mはさらに、広範囲にわたるB細胞株から得られた腫瘍細胞株を用いても同様の結果が得られたことを示している。これらの細胞株は、表4に表記されているように種々のB細胞腫瘍に由来した。この表はまた、これらの細胞株上のCD20発現レベルも示している。
【0541】
実施例7‐精製ヒト末梢血CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞をエフェクター細胞として用いた、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARによるインビトロでの細胞傷害性の誘導
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARがCD4 T細胞およびCD8 T細胞の両方で細胞傷害活性を誘導しうるか否かを明らかにするために、種々のT細胞サブセットをエフェクター細胞として用いる細胞傷害性アッセイを行った。前記のようにDaudi細胞を標的細胞として調製した。
【0542】
PBMCは、前記のように、リンパ球分離培地を用いて健常ドナー由来のバフィーコートから単離した。
【0543】
T細胞(全T細胞集団、CD4+またはCD8+ T細胞集団)は、Dynabeads(登録商標)Untouched(商標)ヒトT細胞、Dynabeads(登録商標)Untouched(商標)ヒトCD4 T細胞またはDynabeads(登録商標)Untouched(商標)ヒトCD8 T細胞単離キット(Invitrogen、それぞれカタログ番号11344D、11352Dおよび11348D)を用いて、PBMCから単離した。単離後に、各画分の純度をフローサイトメトリーによって決定した。種々のT細胞サブセットを同定するために、細胞をCD3抗体(CD3-PER-CP;Becton Dickinson、カタログ番号345766)およびCD8抗体(CD8-APC;Becton Dickinson、カタログ番号555369)と共に4℃で30分間インキュベートした。試料は、自動プレートローダー(Becton Dickinson)を装着したFACS CANTOIIを用いて、フローサイトメトリーによって分析した。CD3+イベント(全T細胞集団)、CD3+CD8+二重陽性イベント(CD8+ T細胞集団)およびCD3+CD8-イベント(CD4+ T細胞集団)の頻度を定量するために、CD3/CD8象限分析を行った。
【0544】
Daudi細胞に対して、全T細胞を10:1のエフェクター・標的比で添加し、CD4
+ T細胞を8:1のエフェクター・標的比で、CD8
+ T細胞を4:1または8:1のエフェクター-標的(E/T)比で添加し(表記の通り)(
図4A)、細胞傷害性アッセイを前記のように行った。CD4
+ T細胞が、エフェクター細胞として添加された場合にCD8
+ T細胞の活性を阻害するか否かを検証するために、CD8
+ T細胞のみ(E/T比4:1)を、またはCD8
+ T細胞(E/T比4:1)をCD4
+ T細胞(E/T比8:1)と共にエフェクター細胞として用いる細胞傷害性アッセイを行った(
図4B)。
【0545】
図4Aは、全T細胞、CD4
+ T細胞またはCD8
+ T細胞をエフェクター細胞として用いて、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARがDaudi細胞におけるT細胞依存性細胞傷害性を誘導したことを示している。ここで陰性対照として用いた抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARおよびIgG1-7D8-FEARは、Daudi細胞に対する細胞傷害性を誘導せず(データは提示せず)、このことは細胞傷害性が二重特異性分子によるCD3およびCD20の両方の認識に依存することを示している。
図4Bは、エフェクター細胞としての、CD4
+ T細胞に対するCD8
+ T細胞の添加が、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの有効性を低下させなかったことを示している。
【0546】
表6は、単離された細胞画分の純度がほぼ90%またはそれを上回ったことを示している。
【0547】
(表6)フローサイトメトリーによって決定したT細胞サブセットの純度
【0548】
実施例8‐精製T細胞をエフェクター細胞として用いた、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARによるインビトロでの細胞傷害性誘導の動態
インビトロでのbsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR誘導性の細胞傷害性の動態を明らかにするために、精製T細胞の存在下でDaudi細胞をbsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARと共にインキュベートして、細胞傷害性を種々の時点で評価した。細胞傷害性アッセイは、上清を24時間のインキュベーション後だけではなく、3~24時間後の範囲にわたる種々の時点で採取した点を除き、前記のように行った。
【0549】
図5は、2例のドナーに由来する精製T細胞を用いた、2回の独立した実験の結果を示している。第1のドナー由来の精製T細胞を用いたところ、用量依存的な細胞傷害性が12時間後に観察され、細胞傷害性は48~72時間後にさらにより効果的であった(
図5A)。第2のドナー由来の精製T細胞の存在下では、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARは3時間のインキュベーション後から早くも細胞傷害性を誘導することができ、16~24時間のインキュベーション後には効率が増大した(
図5B)。
【0550】
実施例9‐種々のエフェクター・標的比での、CD3xCD20二重特異性抗体によるインビトロでの細胞傷害性の誘導の有効性
種々のCD20抗体に由来するCD20 Fabアームを含有するCD3xCD20二重特異性抗体による細胞傷害性誘導の効率を明らかにするために、種々のエフェクター・標的比を用いて、細胞傷害性アッセイを前記のように行った。PBMCをエフェクター細胞として用い、Daudi細胞を標的細胞として用いた。
図6に示されているように、10:1~25:1のE/T比であっても、細胞死滅はCD3xCD20二重特異性抗体に関して観察された。
【0551】
実施例10‐NOD-SCIDマウスでのRaji-luc共移植モデルにおけるCD3xCD20二重特異性抗体の細胞傷害性
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEARおよびbsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARのインビボ抗腫瘍有効性を、皮下Raji-luc共移植モデルにおいて評価した。このモデルでは、Brischweinら(Mol. Immunol. 43 (2006), 1129-1143)によって記載されたモデルと似たように、ヒトT細胞の供給源としてのヒト非刺激PBMCを腫瘍細胞と同時接種する。0日目に、200μLのPBS/0.1% BSA中に5×10
6個のPBMCおよび5×10
6個のRaji-luc細胞を含有する混合物を、各マウス(雌性NOD-SCIDマウス;NOD.C. B-17-Prkdcscid/J、Charles-River、6~11週齢)の右側腹部に皮下(s.c.)接種した。注射から1時間以内に、マウスを複数の投与群(投与群当たりマウス4~5匹[
図7A~Fに示された実験]または投与群当たりマウス10匹[
図7G~Iに示された実験])に選別し、各群に対して、PBS中の100~150μLの(二重特異性)抗体の単回投与により、静脈内(i.v.)注射を行った。投与群は、表7(
図7A、B、Cに示された実験に関して)、表8(
図7D、E、Fに示された実験に関して)および表8.1(
図7G、H、Iに示された実験に関して)に示されている。腫瘍体積は少なくとも週2回ずつ測定した。腫瘍体積(mm
3)は、キャリパー(PLEXX)測定値から以下のように計算した:0.52×(長さ)×(幅)
2。
【0552】
Raji-luc細胞は、gWIZルシフェラーゼ(GTS, San Diego, USA)をトランスフェクトすることによって作製した。細胞を解凍させて、10%ドナーウシ血清を鉄(Gibco、カタログ番号10371-029)、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびピルビン酸ナトリウムおよび1μg/mLピューロマイシン(Sigma, Zwijndrecht, Netherlands;カタログ番号P-8833)と共に加えたRPMI(Lonza、BE12-115F)中で培養した。細胞を対数期にある時点で採取し、トリパンブルー排除によって計測した。
【0553】
各試験について、ヒトPBMCを前記のように健常ドナーのバフィーコートから単離し、凍結させて、使用前に解凍させた。すべての細胞をPBS/0.1% BSA中で洗浄し、細胞ストレーナーを通して濾過して、PBS/0.1% BSA中に50×106個/mLの濃度で再懸濁させた。
【0554】
結果は
図7に示されている。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARは、0.05および0.5mg/kgの投与量でRaji-luc腫瘍サイズを効果的に減少させた。0.005mg/kgでは、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARは腫瘍増殖に影響を及ぼさなかった(
図7A)。腫瘍接種後の21日目に(すべての投与群が揃っていた最終日)、0.5mg/kgのbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARを投与されたマウスにおける平均腫瘍サイズは、媒体対照PBSを投与されたマウスにおけるよりも有意に小さかった(
図7B)(p<0.01、Kruskal Wallis検定に続いてDunn多重比較事後検定)。Kaplan-Meier分析により、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(0.5および0.05mg/kg)の投与後の無腫瘍生存率は、PBSの投与後よりも有意に優れることが実証された(0.5および0.05mg/kg投与群についてそれぞれp<0.01およびp<0.05、Mantel Cox分析)(
図7C)。
【0555】
同様に、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARの投与も、0.05および0.5mg/kgの用量で腫瘍増殖を有意に阻害した(
図7D)。腫瘍接種後の25日目に(すべての投与群が揃っていた最終日)、0.05および0.5mg/kgのbsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEARを投与されたマウスにおける平均腫瘍サイズは、媒体対照(PBS)を投与されたマウスにおけるよりも有意に小さかった(p<0.05、Kruskal Wallis検定に続いてDunn多重比較事後検定)(
図7E)。Kaplan-Meier分析により、bsIgG1-huCLB-T3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR(0.5および0.05mg/kg)投与後の無腫瘍生存率は、媒体対照(PBS)の投与後よりも有意に優れることが実証された(p<0.01、Mantel Cox分析)(
図7F)。
【0556】
図7Gは、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(試験したすべての用量)およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEAR(0.05mg/kg)が両方とも、腫瘍増殖の遅延を誘導したことを示している。腫瘍接種後の20日目に(すべての投与群が揃っていた最終日)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(0.005、0.05および0.5mg/kg)を投与されたマウス、および0.05mg/kgのbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEARを投与されたマウスにおける平均腫瘍サイズは、媒体対照(PBS)を投与されたマウスにおけるよりも有意に小さかった(bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR 0.005μg/kg群でp<0.01であったのを除き、他のすべての群でp<0.05;一元配置ANOVAに続いてTukey多重比較事後検定)(
図7H)。Kaplan-Meier分析により、0.005mg/kgのbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARを除き、すべての投与群における無腫瘍生存率が、媒体対照(PBS)を投与されたマウスにおけるよりも有意に優れることが実証された(p<0.05、Mantel Cox分析)(
図7I)。
【0557】
【0558】
【0559】
【0560】
実施例11‐ヒト化免疫系マウス異種移植モデルにおけるbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの抗腫瘍活性
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARのインビボ抗腫瘍有効性を、ヒトDaudi-luc腫瘍細胞を接種したヒト化免疫系(HIS)マウス(BRGS-HIS-Daudi-luc)において評価した(実験はAxenis, Paris, Franceにて実施)。このモデルでは、Legrandら(PNAS. 108 (2011), 13224-13229)に記載されたように、ヒト造血CD34+始原細胞(ほぼ1×105個)を臍帯血から入手して、新生BALB/c Rag2tm1FwaIL-2Rγc tm1Cgn SIRPαNOD(BRGS)マウスに肝内注射する。14週後に、BRGSマウスのヒト化をフローサイトメトリーによって確かめた。その後に、ヒトCD45+集団におけるヒトCD3+ T細胞の割合(%)に基づいて(PBS投与群、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEAR投与群およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR投与群についてそれぞれ29.5±7.5、28.4±9.4および28.3±11.6)、マウスを3群に分けた(各群当たりマウス7匹)。第15週に、100μLのPBS中にある5×106個のDaudi-luc細胞をBRGS-HISマウスに静脈内注射し(i.v.)、これを試験の0日目として示した。3日目および7日目に、Daudi-luc細胞を有するBRGS-HISマウスに1mg/kgの(二重特異性)抗体を静脈内注射した。投与群は表9に示されている。生物発光画像法(BLI)により、腫瘍増殖を毎週評価した(2日目以降)。マウスに100μLのホタルD-ルシフェリン(30mg/mL;Caliper LifeSciences)を腹腔内注射して(i.p)、生物発光をBiospace Bioluminescence Imaging System(PerkinElmer)を用いて測定した。加えて、血液試料をそれぞれの個々のマウスから9日目に採取し、種々の白血球集団の割合(%)を測定するためにフローサイトメトリーも行った(全ヒト白血球:hCD45+mCD45-集団;B細胞:hCD3-hCD19+集団;T細胞:hCD3+hCD19-集団および活性化T細胞:hCD3+hCD19-FSChi集団。以下の抗体を染色用に用いた:Alexa Fluor(登録商標)700で標識した抗hCD45クローンHI30(BioLegend、カタログ番号304023;最終希釈1:50;アロフィコシアニン(APC)-eFluor(登録商標)780で標識した抗mCD45クローン30-F11(eBioscience、カタログ番号47-0451-80;最終希釈1:200);eFluor(登録商標)450で標識した抗hCD3クローンUCHT1(eBioscience、カタログ番号48-0038-80;最終希釈1:50)、フィコエリトリン(PE)で標識した抗hCD19クローンHIB19(Becton Dickinson、カタログ番号561741;最終希釈1:25)。
【0561】
結果は
図8に示されている。
図8Aから見てとれるように、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARは用量1mg/kgで腫瘍量を効果的に減少させた。対照二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARは腫瘍増殖を阻害しなかった。21日目の腫瘍量の統計学的比較(Kruskal Wallis検定に続いてDunn多重比較事後検定)により、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR投与群における腫瘍量は、媒体(PBS)投与動物におけるよりも有意に小さいことが実証された(p<0.01)。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEAR投与群と媒体投与群との間の差は有意でなかった(
図8B)。
【0562】
図8Cには、フローサイトメトリーによって決定した種々のヒト白血球集団の割合(%)を示している。流血中ヒト白血球(hCD45
+細胞)の割合(%)は、すべての群において同等であった。しかし、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARを投与されたマウスにおけるヒトB細胞の割合(%)は大きく低下した(p=0.0012、媒体対照群との比較、Mann Whitney検定による)。対照二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARの投与は、ヒトB細胞の割合(%)に影響を及ぼさなかった。活性化T細胞(hCD3
+FSC
hi集団)の割合(%)は、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARを投与されたマウスにおいて上昇していた(p=0.0093、媒体対照群との比較、Mann Whitney検定による)。対照二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARの投与は、活性化T細胞の数を有意に変化させなかった。このことは、CD3xCD20二重特異性抗体の投与後のT細胞活性化がCD3およびCD20の両方の結合に依存し、CD3結合のみには依存しないことを示している。
【0563】
【0564】
実施例12‐カニクイザルにおけるCD3xCD20二重特異性抗体の薬理作用および薬物動態を決定するためのパイロット試験
本発明によるCD3xCD20二重特異性抗体の1つであるbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARによる、カニクイザルにおけるB細胞枯渇の安全性プロフィール、薬物動態および誘導について、以下に述べる試験によって検討した。
【0565】
この試験の目的は、尾静脈を介した単回静脈内注入後の雌性カニクイザル(Macaca fascicularis、生地モーリシャス、およそ2~3歳;体重範囲2.5~3kg)における、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの薬物動態特性、毒性作用および薬理作用を明らかにすることであった。本試験はCharles River Laboratories、Tranent、UKで実施された。二重特異性分子を作製するために操作した親IgG1抗体であるIgG1-huCD3-H1L1およびIgG1-7D8は、それぞれカニクイザルCD3およびCD20と交差反応することが示されている。8頭の雌性カニクイザルを、10mL/kgという一定の投薬容積中に0.01、0.1、1または10mg/kgの用量でbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARで投与を受ける4つの用量群に割り当てた。各用量群の動物1頭は投薬28日後に屠殺し、一方、各用量群の2頭目の動物はその個体におけるB細胞数が、フローサイトメトリーによる評価で投与前の値と同等のレベルに回復した時点で屠殺した(回復個体)。この試験中に採用した手法および手順は、英国保健社会保障省(United Kingdom Department of Health)によって定められたOECD Principles of Good Laboratory Practiceに準拠した。
【0566】
末梢血中のB細胞およびT細胞集団を、投薬後のさまざまな時点でフローサイトメトリーによって分析した。B細胞は細胞表面マーカーCD19およびCD21を用いて同定した(CD19
+CD21
+細胞);全T細胞はCD4
+細胞とCD8
+細胞の合計として評価した。
図9Aに示されているように、用量レベル1mg/kgおよび10mg/kgでのbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの投与は、測定した第1の時点(投薬後1日目)までに、流血中B細胞の検出不能レベルへの枯渇をもたらした。0.01mg/kgおよび0.1mg/kgの用量レベルは、部分的な枯渇のみを示すか、または枯渇を示さなかった。B細胞枯渇は、1mg/kg用量群では投薬後に4週~6週(28~42日間)まで続き、その後にB細胞レベルは回復して、投薬後9週(63日)の時点で投与前レベルに達した。10mg/kg用量群では、B細胞レベルの回復は投薬後第9~10週(70日)にようやく始まった。すべての用量群で、投薬後1日目に流血中T細胞数の一過性の減少が観察された(
図9B)。T細胞レベルは3日目の次の測定では投与前レベルに復帰し、実験終了時まで一定に保たれた。
【0567】
投薬後のさまざまな時点で、すべての動物の表在性リンパ節(左右の鼠径リンパ節および腋窩リンパ節)から、生検試料(およそ20mg)を採取した。生検試料をホモジネート化し、前方散乱-側方散乱(FSC-SSC)に基づいて同定した、全リンパ球集団に占める割合(%)としてのB細胞およびT細胞の頻度を、フローサイトメトリーによって評価した。B細胞は細胞表面マーカーCD19およびCD21を用いて同定した(CD19
+CD21
+細胞);全T細胞はCD4
+細胞とCD8
+細胞の合計として評価した。
図9Cに示されているように、用量レベル1mg/kgおよび10mg/kgでのbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの投与は、測定した第1の時点(投薬後7日目)には、B細胞の検出不能レベルへの枯渇をもたらした。B細胞枯渇はこれらの用量群では投薬後に7週まで維持され、その後にB細胞レベルは回復したが、投薬後13~14週(84~95日)の時点で未だに完全ではなかった。用量レベル0.01mg/kgおよび0.1mg/kgでは、投薬後16日目で最大のB細胞枯渇が誘導され、投薬後28日目に完全な回復が観察されるか(0.01mg/kg)、または投薬後第14週(95日)に部分的な回復が観察された(0.1mg/kg)。T細胞頻度の大きな変化は、リンパ節においてどの用量レベルでも観察されなかった(
図9D)。
【0568】
標準的な分析方法を用いて、血漿試料をサイトカインレベル(IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IFN-γおよびTNF-α)に関して分析した。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの投与は、血漿中サイトカインレベルの一過性の上昇を誘導し、それは用量依存的であるように思われた(
図9E)。投薬後24時間の時点で、すべてのサイトカインレベルが投与前レベルに復帰した。
【0569】
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの薬物動態プロフィールを、投与前および投薬後最長70日までのさまざまな時点で入手した血漿試料を分析することによって評価した。二重特異性抗体の総濃度はimmune PCRによって決定した。薬物動態パラメーターは、ノンコンパートメント分析(Phoenix WinNonLin)によって算出した。結果は表10に示されている。用量に関して正規化したAUC
0-∞値(AUC
0-∞/用量)は、血漿中曝露の非線形的な増加を示している。これらのAUC
0-∞値の比例を上回る増加は、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの標的媒介性クリアランスを示している。加えて、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの薬物動態プロフィールは、カニクイザルに投与された典型的なIgG1型モノクローナル抗体と比較して、より迅速な初期分布およびクリアランスを示している(
図9F)。
【0570】
さらに、カニクイザル血清における、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARに対する抗薬物抗体(ADA)応答も測定した(データは提示せず)。ADA応答は、10mg/kg群の動物で15日目以後に観察されたことを除き、すべての動物で観察された。
【0571】
(表10)カニクイザルにおけるbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARの薬物動態特性
用量群毎の各サルに関するデータは、別々に示されている(列の上にサルの番号を示している)。
【0572】
実施例13‐CD3xCD20二重特異性抗体の結合に関与するCD20アミノ酸の同定
以前の諸研究により、CD20の細胞外ループ内にある位置170のアラニン残基(A170)および特に位置172のプロリン残基(P172)が、リツキシマブによるCD20認識のために必須であることが示されている(Polyak et al.2002, Blood 99: 3256-3262;Perosa et al. 2005, Blood 107: 1070-1077)。リツキシマブは、CD20細胞外ドメインへのA170SおよびP172S突然変異(「AxP突然変異」)の導入によって、HEK293Fにおいて発現されたCD20に対する結合を完全に失った。マウスmAb B1もAxP突然変異体に対する結合の著しい低下を示したが、残存性結合も観察された。対照的に、IgG1-2F2、IgG1-7D8およびIgG1-2C6のCD20に対する結合はAxP突然変異によって影響を受けなかった。しかし、位置163または166のアスパラギン残基をアスパラギン酸に変更することにより(それぞれN163DまたはN166D)、IgG1-2C6の結合は完全に消失し、IgG1-2F2およびIgG1-7D8の結合は最大で75%減少した。N163DおよびN166D突然変異に加えて、位置159でのトレオニンのリジンへの突然変異(T159K)も有する三重突然変異体(T159K/N163D/N166D、「KDD突然変異」)は、2F2、7D8および2C6の結合を消失させた。KDD突然変異は、リツキシマブおよびB1の結合に対してはわずかな影響しか及ぼさなかった(Teeling et al. 2006, The Journal of Immunology 177: 362-371)。
【0573】
野生型(wt)CD20、AxP突然変異体およびKDD突然変異体に対するCD3xCD20二重特異性抗体の結合を検討するために、制限部位および最適な発現のための理想的なKozak配列を導入する適したプライマーを用いてCD20コード配列を増幅させることによって、CD20発現ベクターを構築した。増幅された断片を消化し、発現ベクターpEE12.4中にライゲートした(Lonza, Slough, UK)。大腸菌(E. coli)への形質転換後に、コロニーをインサートに関してスクリーニングし、2つのクローンを選択して、シークエンシングによって配列の正しさを確かめた。この構築物をpEE12.4CD20HS-GAと命名した。ヒトCD20の細胞外ループ領域内にAxPまたはKDD突然変異を導入するために突然変異誘発を行った。制限酵素消化およびシークエンシングによって突然変異誘発の検査を行った。この構築物をHEK293F細胞において一過性に発現させ、トランスフェクションから24時間後にフローサイトメトリーを用いて分析した。
【0574】
オリゴヌクレオチドPCRプライマー:オリゴヌクレオチドプライマーは、Isogen BV(Maarssen, Netherlands)によって合成され、定量された。プライマーを水中に100pmol/μLの濃度で再構成し、使用時まで-20℃で保存した。PCRプライマーおよびシークエンシングプライマーの概要は表11に示されている。
【0575】
核酸の光学濃度測定:光学濃度は、Ultrospec 2100 pro Classic(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を、製造元の指示に従って用いて測定した。DNA濃度は、OD260nmの1単位=50μg/mLとして、OD260nmの分析によって測定した。参照基準溶液は、核酸を溶解するために用いた溶液と同一とした。
【0576】
大腸菌培養物からのプラスミドDNAの単離:Qiagen社(Westburg BV, Leusden, Netherlands)のキットを製造元の指示に従って用いて、大腸菌培養物からプラスミドDNAを単離した。「バルク」プラスミド調製のためには、Hi-Speed plasmid MaxiキットまたはHi-Speed plasmid Midiキットのいずれかを用いた(Qiagen)。小規模プラスミド調製(すなわち、2mLの大腸菌培養物)のためには、Qiaprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)を用い、50μLのTE(Tris-HCl 10mM pH 8.0、EDTA 1mM)中にDNAを溶出させた。
【0577】
PCR増幅:PCR反応は、Pfu-Turbo(著作権)Hotstart DNAポリメラーゼ(Stratagene, Amsterdam, Netherlands)に対する製造元の指示に従って行った。各20mLの反応液には、1×PCR反応緩衝液、200mMの混合dNTP、6.7pmolの各順方向および逆方向プライマー、ならびにおよそ1ngのテンプレートDNAおよび1単位のPfu-Turbo(著作権)Hotstart DNAポリメラーゼを含めた。PCR反応は、T-gradient Thermocycler 96(Biometra GmbH, Goettingen, Germany)にて、30サイクルのプログラムを用いて行った:+95℃で2分間、その後に以下を30サイクル:+95℃を30秒間;アニーリング:45~65℃の勾配を30秒間および伸長:+72℃を2分間、さらにその後に最終伸長工程を72℃を10分間行い、その後に4℃で保存する。反応の完了についてアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0578】
アガロースゲル電気泳動:アガロースゲル電気泳動は、Sambrook(Molecular Cloning Laboratory Manual, 3rd edition)に従い、1×Tris/酢酸/EDTA(TAE)緩衝液中にて50mLのゲルを用いて行った。ゲルに臭化エチジウムを含めることによってDNAを可視化し、UV光の下での観察を行った。ゲルの画像を、CCDカメラおよび画像解析システム(GeneGnome;Syngene, Cambridge, UK)によって記録した。
【0579】
制限酵素消化:制限酵素は、New England Biolabs(Beverly, MA)による供給を受け、供給元の推奨に従って用いた。全般的には、最終容積10mLで、適切な緩衝液中において、100ngを5単位の酵素によって消化した。反応容積の規模は適宜拡大した。消化物は製造元の推奨温度で最低60分間インキュベートした。
【0580】
不適合性の緩衝液または温度の要件を有する制限酵素による二重消化を必要とする断片については、各酵素の好ましい条件が順々に与えられるように、消化を逐次的に行った。
【0581】
アルカリホスファターゼ処理:エビのアルカリホスファターゼ(USB, Cleveland, OH)を供給元の推奨に従って用いた。アルカリホスファターゼは、DNA断片の末端から5'-リン酸基を除去し、それによって自己連結を妨げる。これはDNA断片の自己再連結によって複製能を有するベクターが生じうる場合には特に意義がある。酵素はほとんどの制限酵素緩衝液中で活性があり、適宜添加された。消化後に、温度を70℃に15分間上昇させることによって酵素を失活させた。
【0582】
PCR産物および制限酵素反応生成物の精製:精製は、mini-elute PCR Purificationキット(Qiagenにより供給)を製造元の指示に従って用いて実施した。手短に述べると、DNA試料を5倍容積の結合緩衝液I(Qiagen)で希釈し、Eppendorf遠心管内のmini-eluteカラム上にローディングした。この集合物を卓上微量遠心機で遠心処理した。カラムを緩衝液II(Qiagen)で2回洗浄した:緩衝液適用後に、集合物を遠心処理し、フロースルーは廃棄した。緩衝液を添加せずに遠心処理を行うことによってカラムを乾燥させた。溶出緩衝液をカラムに添加することによってDNAを溶出させ、溶出液を遠心処理によって収集した。単離されたDNAをUV分光法によって定量し、質についてはアガロースゲル電気泳動によって評価した。
【0583】
アガロースゲルからのDNA断片の単離:必要に応じて(すなわち、複数の断片が存在する場合)、消化したDNA試料をゲル電気泳動によって分離し、所望の断片をゲルから切り出して、QIAEX IIゲル抽出キット(Qiagen)を製造元の指示に従って用いて回収した。手短に述べると、DNAバンドをアガロースゲルから切り出し、適切な緩衝液中で+55℃にて融解させた。QIAEX II樹脂を添加して5分間インキュベートした。QIAEX II樹脂を短時間の遠心処理工程(1分間、14000g、室温)によってペレット化して、500μLの洗浄緩衝液PE(カタログ番号19065、Qiagen)で2回洗浄した。最終的なペレットをフード内で乾燥させて、DNAを、適切な容積のTEにより、適切な温度(DNAのサイズによる)で溶出させた。
【0584】
DNA断片のライゲーション:ライゲーションは、Quick Ligation Kit(New England Biolabs)を製造元の指示に従って用いて行った。各ライゲーションについて、ベクターDNAをおよそ3倍モル過剰量のインサートDNAと混合し、その結果、DNAの総量が10μL中に200ng未満となるようにし、適宜、水で容積を調整した。これに対して、10μLの2×Quickライゲーション緩衝液および1μLのQuick T4 DNAリガーゼを添加し、ライゲーション混合物を室温で5~30分間インキュベートした。
【0585】
細菌へのDNAの形質転換:DNAの試料を用いて、One Shot DH5α-T1Rコンピテント大腸菌細胞(Invitrogen, Breda, Netherlands)に、ヒートショック法を製造元の指示に従って用いて形質転換を行った。手短に述べると、1~5μLのDNA溶液(典型的には2μLのDNAライゲーション混合物)を形質転換コンピテント細菌細胞のアリコートに添加し、混合物を氷上で30分間インキュベートした。続いて、42℃の水浴に30秒間移し、その後に氷上でのインキュベーションをさらに5分間行うことによって、細胞にヒートショックを施した。細胞をそのまま置き、非選択的培地(SOC)中で撹拌しながら37℃で1時間のインキュベーションを行い、その後に適切な選択物質(50μg/mlのアンピシリン)を含有する寒天プレート上に広げることによって回収することとした。プレートを+37℃で16~18時間、または細菌のコロニーが明らかになるまでインキュベートした。
【0586】
PCRによる細菌コロニーのスクリーニング:PCRコロニースクリーニング手法を用いて、所望の配列を含有するベクターの存在に関して細菌コロニーをスクリーニングした。0.5倍容積のHotStarTaq Master Mix(Qiagen)、4pmolの順方向および逆方向プライマー含有し、水で完成させた20μLのPCR反応混合液を、PCRチューブに加えた。コロニーに20μLピペットチップで軽く触れ、培養物チューブ内の2mL LBに一度接触させた後に(対応するプラスミドを含有する細菌を増殖させるため)、20μLのPCR混合液中に再懸濁させた。PCRを、Tgradient Thermocycler 96(Biometra)にて、35サイクルのプログラムを用いて行った:+95℃で15分間、その後に以下を35サイクル:+94℃を30秒間;アニーリング:55℃を30秒間および伸長:+72℃を2分間、さらにその後に最終伸長工程を72℃を10分間行い、その後に4℃で保存する。反応の完了についてアガロースゲル電気泳動によって分析した。コロニーPCRのために用いたプライマー対の詳細については表11を参照されたい。
【0587】
DNAシークエンシング:プラスミドDNA試料を、配列分析のためにAGOWA(Berlin, Germany)に送った。配列は、VectorNTIソフトウエアパッケージ(Informax, Frederick, MD, USA)を用いて解析した。
【0588】
【0589】
突然変異誘発:突然変異誘発は、QuikChange(登録商標)XL Site-Directed Mutagenesisキット(Cat 200517-5、Lot 1120630、Stratagene Europe)を製造元の指示に従って用いて行った。
【0590】
突然変異誘発反応物を、エタノール沈降を用いて濃縮し、oneshot DH5α-TIRコンピテント大腸菌細胞に形質転換するか、またはElectroTen-Blue(登録商標)Electroporation-Competent Cellへのエレクトロポレーションを行った。トランスフェクションの前に、コロニーをコロニーPCRおよび制限消化によって検査した。
【0591】
HEK293F細胞のトランスフェクション:HEK293F細胞をInvitrogenから入手し、製造元の指示に従って、293fectinを用いてトランスフェクションを行った。
【0592】
抗CD20抗体の結合:HEK293F細胞を染色緩衝液(0.1% BSAおよび0.02% NaN3を加えたPBS)中に取り出して、丸底プレート(1~3×105個/ウェル、100μL中)に添加した。続いて、50μLのCD3xCD20二重特異性抗体を、系列希釈(0.0015~10μg/mL、三倍希釈物)として添加した(4℃、30分間)。
【0593】
染色緩衝液中で2回洗浄した後に、細胞を50μLの二次抗体中にて4℃で30分間インキュベートした。二次抗体としては、前記のように、R-フィコエリトリン(PE)結合ヤギ抗ヒトIgG F(ab')2を用いた。次に、細胞を染色緩衝液中で1回洗浄し、150μLの染色緩衝液中に再懸濁させて、フローサイトメーター(FACSCanto-720, Becton Dickinson, San Diego, CA, USA)にて分析し、試料当たり10,000件のイベントを高流速で取得した。結合曲線は、GraphPad Prism V75.04ソフトウエア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、非線形回帰(可変勾配によるシグモイド用量反応)を用いて分析した。
【0594】
すべてのCD3xCD20二重特異性抗体が、WT CD20を発現するHEK293F細胞に対して効果的に結合した(
図10A)。
図10Bおよび表12に示されているように、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2C6-FEARは、AxP突然変異体に対して効果的に結合した。同様に、bsIgG1-huCLB-3/4-FEALxCD20-7D8-FEAR、bsIgG1-huCLB-3/4-FEALxCD20-2F2-FEARおよびbsIgG1-huCLB-3/4-FEALxCD20-11B8-FEARは、CD20-AxPに対する効果的な結合を示した。予想された通り、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-RTX-FEARは、親抗体IgG1-RTXに関して以前に示されていた通り、AxP突然変異体に対する結合を完全に失っていた。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-GA101-FEARは、CD20-AxPに対する結合の大きな低下を示した。
【0595】
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2F2-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-2C6-FEAR、ならびにbsIgG1-huCLB-3/4-FEALxCD20-7D8-FEARおよびbsIgG1-huCLB-3/4-FEALxCD20-2F2-FEARは、KDD突然変異の導入によってCD20に対する結合を失い(表12)、このことから、CD20と一価性に結合するこれらの二重特異性抗体が、親抗体であるそれぞれIgG1-7D8、IgG1-2F2およびIgG1-2C6と同等の結合特性を示すことが確かめられた。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-11B8-FEARおよびbsIgG1-huCLB-3/4-FEALxCD20-11B8-FEARは、KDD突然変異が存在する場合にCD20に対する結合を部分的に失った。
【0596】
(表12)CD20突然変異体に対するCD3xCD20二重特異性抗体の結合。
HEK293F細胞において発現されたCD20突然変異体に対するCD3xCD20二重特異性抗体の結合をフローサイトメトリーによって測定した。数字は、10μg/mLでの、野生型CD20に対する結合と対比した、CD20突然変異体に対する結合率(%)を示している。結合率(%)は以下の式によって計算した:(CD20突然変異体に対するMFI結合)/(CD20 wtに対するMFI結合)×100%
【0597】
実施例14‐Bio-Layerインターフェロメトリーを用いたCD3結合親和性の測定
CD3に対するCD3xCD20二重特異性抗体の親和性を測定するために、ForteBio Octet HTXにてBio-Layerインターフェロメトリーを行った。抗ヒトFc Capture(AHC)バイオセンサー(ForteBio, Portsmouth, UK;カタログ番号18-5060)を、1nmのローディング応答を目標として、CD3xCD20二重特異性抗体(1μg/mL)と共に600sにわたりローディングした。ベースライン(200s)の後に、可溶性CD3ε27-GSKaの会合(1000s)および解離(2000s)を、1nM~1000nMの範囲にわたる濃度を用いて決定した。CD3ε27-GSKaタンパク質は、κLCのN末端と融合したヒトCD3εペプチド(aa1-27)からなる(SEQ ID NO:402)。計算のために、アミノ酸配列に基づくCD3ε27-GSKaの理論的分子質量、すなわち27.1kDaを用いた。実験は30℃での振盪条件下(1000rpm)で行った。
【0598】
データは、ForteBio Data Analysis Software v8.1により、1:1モデル、ならびに1000sの会合時間および200sの解離時間を用いた全体的に十分な適合を用いて分析した。データ軌跡を、参照曲線(CD3ε27-GSKaを有しないCD3xCD20二重特異性抗体)を差し引くことによって補正した。Y軸をベースラインの最終10sに対して整列させ、ステップ間補正ならびにSavitzky-Golayフィルター処理を適用した。応答が0.05nmを下回るデータ軌跡は分析から除外した。
【0599】
CD3xCD20二重特異性抗体の平衡解離定数(KD)はすべて、親IgG1-huCD3-H1L1-FEAL分子のKDの2倍以内の範囲にあった。
【0600】
(表13)選択されたCD3xCD20二重特異性抗体に関する平衡解離定数(K
D)、会合速度(k
on)および解離速度(k
dis)
【0601】
実施例15‐bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARは、B細胞の存在下でT細胞活性化を誘導する
B細胞の存在下でT細胞の活性化を誘導するCD3xCD20二重特異性抗体の能力を、PBMCをbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARと共にインキュベートすることによって検討した。T細胞活性化はCD69発現を測定することによって評価した。
【0602】
前記のように健常ドナーから単離したPBMCを、96ウェル丸底培養物プレート(Greiner bio-one、cat 650180;100,000個/ウェル)に添加し、RPMI++中に希釈したbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEAR(最終抗体濃度0.1~1000ng/mL)と共にインキュベートした。各ウェルにおける最終容積は100μLとした。両方とも不活性Fcドメインを有する二価CD3特異的IgG1抗体であるIgG1-huCD3-H1L1-FEALおよびIgG1-huCLB-T3/4-FEAL、ならびにアイソタイプ対照抗体IgG1-b12-FEALを、陰性対照抗体として含めた。T細胞の活性化を誘導することが知られている二価CD3特異的IgE抗体であるIgE-huCLB-T3/4、および活性Fcドメインを有する二価CD3特異的IgG1抗体であるIgG1-huCLB-T3/4-F405Lを、陽性対照抗体として含めた。PBMCを抗体(37℃、5% CO2)と共に16~24時間インキュベートした。
【0603】
T細胞活性化を評価するために、PBMCを染色緩衝液中で2回洗浄して、APC-標識マウス抗ヒトCD69抗体(BD Pharmingen、cat 340560;最終希釈1:100)およびPE-標識マウス抗ヒトCD28抗体(Milteny Biotech、cat 130-092-921;最終希釈1:40)を含有する染色緩衝液(最終容積50μL)中に再懸濁させた。4℃で30分後に、細胞を2回洗浄した。細胞を150μLの染色緩衝液中に再懸濁させて、FACS CantoII(BD)を用いて分析した。APC(CD69)の蛍光強度の中央値を、CD28陽性細胞の集団において評価した。CD28を、T細胞を同定するためのマーカーとして用いた。
【0604】
図11に示されているように、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxCD20-7D8-FEARは、末梢血T細胞におけるCD69発現の増加によって示されているように、T細胞の用量依存的活性化を誘導した。T細胞活性化は、陽性対照抗体IgE-huCLB-T3/4およびIgG1-hu-CLB3/4-F405Lとのインキュベーション後にも観察された。対照的に、陰性対照抗体IgG1-huCD3-H1L1-FEAL、IgG1-huCLB-T3/4-FEALおよびIgG1-b12-FEALはCD69発現を誘導しなかった。
【配列表】