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特許7177319磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221116BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/055 366
G01N24/00 510F
G01N24/00 510Y
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018023699
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019136374
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129849
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克法
(72)【発明者】
【氏名】山根 康弘
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-291281(JP,A)
【文献】特開2012-200407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0109314(US,A1)
【文献】登録実用新案第3151723(JP,U)
【文献】特開平01-268553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置における筒状の高周波コイルの径方向内側に配置され、動物である被検体が載置される中空の保温マットと、
前記保温マットの内部に供給する温風を発生する温風発生部と、
前記温風発生部からの温風を前記保温マットへ送る導入用ダクトと、
前記被検体の体温を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出値が所定範囲内を保つように前記温風発生部の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記動物は、動物病院で診療可能な、犬および猫を含む小動物であり、
前記保温マットは、硬質樹脂製であり、全体として円弧面を呈していることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置。
【請求項2】
前記温度検出手段の検出値を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置。
【請求項3】
前記高周波コイルの径方向内側に配置される載置台を備え、
前記保温マットは、前記載置台の上に着脱可能に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置。
【請求項4】
前記高周波コイルの径方向内側に配置される載置台を備え、
前記保温マットは、前記載置台の上面部に一体に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置。
【請求項5】
前記保温マットは、
前記導入用ダクトが接続される入口と、
前記入口から流入する温風が流出する出口と、
前記保温マットの内部に形成され、前記入口と前記出口とを連通させる通路と、を有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置。
【請求項6】
前記通路は、前記保温マットの内部を仕切るように設けられた仕切壁によって、保温マット71の内部で前記入口と前記出口とを連通させることを特徴とする請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置。
【請求項7】
前記温風発生部は、前記磁気共鳴イメージング装置による撮像が行われる撮像室の外部に配置されており、
前記導入用ダクトは、前記入口と前記温風発生部とを接続していることを特徴とする請求項または請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置。
【請求項8】
前記出口と前記磁気共鳴イメージング装置による撮像が行われる撮像室の外部とを接続する放出用ダクトを備えることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動物である被検体を撮像する磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」ともいう)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなMRI装置において動物を撮像する際には、一般に、撮像中に動物が動かないようにするために全身麻酔が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-205148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動物は、全身麻酔が施されると、体温が低下することは避けられない。特にMRI装置では検査時間が長いために、動物の体温低下状態が長引く結果、死亡や合併症の発生などのリスクが増す。
従来では、MRI装置による撮像が終わった後、動物の全身麻酔からの覚醒時に、即座に湯たんぽなどを用いて動物の体温の回復を補助するなどの対応が取られていた。
【0005】
しかしながら、従来のMRI装置では、動物は全身麻酔覚醒時の体温回復が補助されるだけであって、撮像中における体温低下については特に対策が取られていなかった。このため、撮像中に全身麻酔によって動物の体温が低下して死亡や合併症の発生などを招くリスクは依然として低減できていない。
【0006】
そこで、本発明は、MRI装置による撮像中における全身麻酔によって生じる動物の体温低下を抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置は、動物である被検体が載置される中空の保温マットを備える。保温マットは、磁気共鳴イメージング装置における筒状の高周波コイルの径方向内側に配置されている。また、前記磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置は、前記保温マットの内部に供給する温風を発生する温風発生部と、前記温風発生部からの温風を前記保温マットへ送る導入用ダクトと、前記被検体の体温を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出値が所定範囲内を保つように前記温風発生部の動作を制御する制御手段と、を備える。前記動物は、動物病院で診療可能な、犬および猫を含む小動物である。前記保温マットは、硬質樹脂製であり、全体として円弧面を呈している。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、MRI装置による撮像中における全身麻酔によって生じる動物の体温低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置が搭載された磁気共鳴イメージング装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示される磁気共鳴イメージング装置の左側面図である。
図3図1に示される高周波コイル、載置台、および保温マットを示す斜視図である。
図4図4(a)は、保温マットの平面展開断面図であり、図4(b)のB-B線に沿う断面図である。図4(b)は、保温マットの右側面図である。
図5図5(a)は、変形例に係る保温マット81の平面展開断面図である。図5(b)は、図5(a)のC-C線に沿う断面図である。
図6】断熱材で覆った導入用ダクトを示す模式図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る保温マットを、高周波コイルおよび載置台とともに示す斜視図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態に係る保温マットの平面展開断面図である。
図9】本発明のさらに他の実施形態に係る保温マットを左方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置用被検体保温装置(以下、単に「被検体保温装置」ともいう)7が搭載されたMRI装置100の概略構成を示す図である。図2は、図1に示されるMRI装置100の左側面図である。
本実施形態では、動物である被検体Aを撮像するためのMRI装置100に用いられる被検体保温装置7について説明する。ここでいう動物は、動物病院で診療可能な犬や猫などの小動物である。
【0012】
図1に示すように、MRI装置100は、ガントリー1と、高周波コイル3と、制御ユニット5と、コンソール6とを備えている。ガントリー1には、前方および左右側方に開口した開口部11が形成されている。高周波コイル3は、ガントリー1の開口部11内に配設されるものであり、筒状を呈している。制御ユニット5は、ガントリー1の動作を制御する。コンソール6は、コンピュータ61と表示部62とを有している。コンピュータ61は、撮像条件を設定し、磁気共鳴画像を再構成する。表示部62は、撮像条件の設定操作画面や磁気共鳴画像などを表示する。
【0013】
ガントリー1は、傾斜磁場発生コイル12と、例えば永久磁石である静磁場発生磁石13とを備えている。静磁場発生磁石13によって、開口部11内に静磁場が生じ、傾斜磁場発生コイル12によって、開口部11内に傾斜磁場が生じる。傾斜磁場発生コイル12は、ノイズフィルタ(図示せず)を経て、ケーブル集合体14を通じて制御ユニット5に接続されている。
【0014】
高周波コイル3は、被検体Aに高周波パルスを照射し、被検体Aからの核磁気共鳴信号(以下、「NMR信号」ともいう)を検出する。高周波コイル3は、ノイズフィルタ(図示せず)を経て、ケーブル集合体14を通じて制御ユニット5に接続されている。ケーブル集合体14は、静磁場発生用電源ケーブル、高周波パルス照射用ケーブル、および高周波信号検出用ケーブルを備えている。
【0015】
図2に示すように、高周波コイル3は、被検体Aの形状等に応じて、種々の形態をなして構成することができる。ここでは、高周波コイル3の一例として、円筒状の形状のものが使用されている。すなわち、高周波コイル3には、左右方向に貫通する円形断面の穴部31が形成されている。高周波コイル3の穴部31内には、被検体Aが挿通される。そして、MRI装置100は、高周波コイル3内に配置されている部位の画像を撮影することができる。なお、高周波コイル3は、円筒状の形状を半円に割って半割にしたものを上下に向かい合わせて組み立て・分離できるように構成されてもよい。
【0016】
図1に示すように、MRI装置100は、高周波コイル3によって被検体Aから検出したNMR信号をプリアンプ(図示せず)で増幅し、さらに制御ユニット5で増幅・AD変換してからコンピュータ61に転送する。コンピュータ61は、制御ユニット5によって増幅・AD変換されたデータに対してフーリエ変換などの処理を行って被検体Aの画像を再構成し、表示部62に表示させる。
【0017】
MRI装置100は、コンピュータ61によってグラフィカルユーザインタフェース画面(GUI画面)を表示部62に表示する。コンピュータ61は、操作者(図示せず)が設定した撮像条件にしたがった命令を制御ユニット5に送る。制御ユニット5は、コンピュータ61の命令にしたがって傾斜磁場発生コイル12と高周波コイル3とを駆動する。
【0018】
MRI装置100には、被検体保温装置7が搭載されている。被検体保温装置7は、保温マット71と、温風発生部90と、導入用ダクト95とを備えている。
【0019】
保温マット71は、MRI装置100における筒状の高周波コイル3の径方向内側に配置されている中空のマットである。保温マット71上には、動物である被検体Aが載置される。温風発生部90は、保温マット71の内部に供給する温風を発生する。導入用ダクト95は、温風発生部90からの温風を保温マット71へ送る。
【0020】
本実施形態では、被検体保温装置7は、高周波コイル3の径方向内側に配置される載置台4を備えている。保温マット71は、載置台4の上に着脱可能に配置されている。つまり、載置台4は、被検体Aを保温マット71を介して載置するための台である。載置台4は、テーブル2の天板21の上面21a上で移動自在に配置されている。
【0021】
テーブル2の天板21の上面21aには、高周波コイル3が配置されている。高周波コイル3は、テーブル2の天板21の上面21aに着脱自在に取り付けられている。なお、穴部31の大きさが異なる複数の高周波コイル3が用意されており、被検体Aの大きさに合わせて、高周波コイル3を選択するように構成されている。
【0022】
テーブル2は、長方形の天板21と、天板21を支持している前後左右の脚部22とを備えている。前後左右の脚部22の下端部には、それぞれ車輪23が取り付けられている。これにより、テーブル2は、前後方向に移動自在となっている。そして、MRI装置100の前方に配置したテーブル2を、後方に向けて移動させることで、天板21の左右方向の中央部を開口部11内に入れることができる。
【0023】
載置台4は、左右方向に延びている寝台部41と、寝台部41を支持している前後左右の脚部42とを備えている。寝台部41の上面41aは、軸直角断面が略半円形状となるように凹形状に窪んでいる。なお、寝台部41の形状や大きさが異なる複数の載置台4が用意されており、被検体Aの大きさに合わせて、載置台4を選択するように構成されている。
【0024】
前後左右の脚部42の下端部には、それぞれ車輪43が取り付けられている。これにより、載置台4は、操作者が手で押し引きすることで、左右方向に移動自在となっている。載置台4は、高周波コイル3の穴部31に左右方向に挿通されている。載置台4の寝台部41の外面が、高周波コイル3の穴部31の内周面に接触しないように、脚部42の高さおよび寝台部41の外径が設定されている。載置台4は、高周波コイル3の穴部31に挿通されている状態で、左右方向に移動自在である。
【0025】
図3は、図1に示される高周波コイル3、載置台4、および保温マット71を示す斜視図である。図4(a)は、保温マット71の平面展開断面図であり、図4(b)のB-B線に沿う断面図である。図4(b)は、保温マット71の右側面図である。
【0026】
図3図4に示すように、保温マット71の下面71aは、軸直角断面が略半円形状となるように形成されており、寝台部41の上面41aとほぼ同じ径の円弧面を呈している。これにより、保温マット71を載置台4の寝台部41の上面41a上にガタなく安定して置くことができる。また、保温マット71の上面71bも軸直角断面が略半円形状となるように形成されている。すなわち、保温マット71は、全体として概ね円弧面を呈している。このように保温マット71の上面71bを凹状に形成したことで、保温マット71の上面71bに被検体Aを安定して載置することができる。
【0027】
保温マット71の内部には、温風が通過する通路72が形成されている。保温マット71の厚み方向における通路72の厚さ寸法(空気層の厚み)は、保温マット71の占有スペースを抑えつつ保温作用を確保する観点から、1~2cm程度が好ましい。
【0028】
保温マット71は、導入用ダクト95が接続される入口73と、入口73から流入する温風が流出する出口74とを有している。また、保温マット71の内部には、保温マット71の長手方向に延伸する仕切壁75が形成されている。仕切壁75を設けることによって、保温マット71の内部に形成されている通路72は、入口73と出口74とを蛇行して連通させている。
【0029】
なお、仕切壁75の設置個数、および通路72の蛇行回数(左右方向の往復回数)は任意に設定可能である。また、入口73と出口74とは、ここでは保温マット71の長手方向(左右方向)の一端に両方とも設けられているが、長手方向の両端にそれぞれ設けられていてもよい。また、仕切壁75は、ここでは長手方向に沿って設置されているが、これに限定されるものではなく、例えば長手方向に直交する方向に沿って設置されていてもよい。あるいは、保温マット71において所定の剛性が確保できれば、仕切壁75の設置は省略され得る。
【0030】
図5(a)は、変形例に係る保温マット81の平面展開断面図である。図5(b)は、図5(a)のC-C線に沿う断面図である。
図4(a)(b)に示す上記の例では、保温マット71の内部の通路72は蛇行して入口73と出口74とを連通させたが、図5(a)(b)に示すように、保温マット81を構成してもよい。すなわち、保温マット81の内部の通路72は直行して入口73と出口74とを連通させてもよい。この場合、入口73と出口74とは、保温マット71の長手方向の両端にそれぞれ設けられている。また、保温マット81の内部を入口73から出口74へと温風が直行するように仕切壁75が形成されている。このように温風をストレートに(直行に)流す単純な流れとなるため、温風を効率よく流すことができ、保温マットの温度を高温に保つことが可能となる。
【0031】
保温マット71は、被検体Aが載置された場合に、例えば温風の風圧変化などによって被検体Aが撮像中に動かないように、柔らかいものではなく、アクリルやポリエチレンなどの硬質樹脂製の中空のマットとされている。硬質樹脂の硬度は、例えばロックウェル硬さで55~125(HRM)である。
【0032】
また、図1に示すように、被検体保温装置7は、被検体Aの体温を検出する温度検出手段91を有している。温度検出手段91は、ここではサーミスタを利用した体温計であり、例えば被検体Aの肛門に挿入されて使用される。ただし、温度検出手段91は、これに限定されるものではなく、例えば被検体Aから放射される赤外線を検出することで被検体Aの体温を検出するものであってもよい。また、温度検出手段91は、被検体Aの体温ではなく、被検体Aに接する保温マット71の温度を検出するものであってもよい。温度検出手段91は、コンピュータ61に接続されており、温度検出手段91の検出値がコンピュータ61に送られるようになっている。温度検出手段91の検出値は、コンソール6の表示部62に表示されるように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えばスマートフォンやノート型パソコン等の携帯端末の表示部に表示されてもよい。
【0033】
温風発生部90は、ここでは電気ヒータおよび送風ファンを備えて構成されている。ただし、温風発生部90は、これに限定されるものではなく、例えばヒートポンプ装置を備えるものであってもよい。温風発生部90には、導入用ダクト95の、保温マット71とは反対側の端部が接続される。温風発生部90は、MRI装置100による撮像が行われる撮像室(シールドルーム)の外部に配置されることが好ましい。これにより、ノイズ等の影響を極力抑えることができる。また、熱源を撮像室から離すことで撮像室内の温度の変動を抑えることができる。
【0034】
導入用ダクト95としては、例えば樹脂製の蛇腹ホースが使用され得る。図6に示すように、例えば導入用ダクト95の周囲に断熱材97を巻くことによって、断熱材97で導入用ダクト95を覆ってもよい。このようにすれば、導入用ダクト95からの放熱を抑制することができる。なお、導入用ダクト95自体が放熱しにくい素材で構成されていてもよい。
【0035】
コンピュータ(制御手段)61は、温度検出手段91の検出値が所定範囲内を保つように温風発生部90の動作を制御する。具体的には、温度検出手段91の検出値が予め決められた下限値よりも小さくなった場合、コンピュータ61は、温風発生部90の出力を増大させる。また、温度検出手段91の検出値が予め決められた上限値よりも大きくなった場合、コンピュータ61は、温風発生部90の出力を減少させる。なお、温度を所定範囲内に保つ制御方法としては、PID制御等のフィードバック制御が用いられてもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係る被検体保温装置7が搭載されたMRI装置100によって、被検体Aを撮像する手順について説明する。
【0037】
まず、図2に示すガントリー1の前方に、テーブル2が配置される。テーブル2の上には、高周波コイル3が固定して配置されており、載置台4が左右方向に移動自在に配置されている。ここで、載置台4は、図3に示すように、高周波コイル3の径方向内側に配置されている。また、載置台4の上に、保温マット71が配置されている。
【0038】
続いて、コンピュータ61は、温風発生部90を所定の初期出力で運転開始する。温風発生部90で発生した温風は、導入用ダクト95を経て、保温マット71の内部に送られる。そして、全身麻酔が施された被検体Aが、保温マット71の上面71bに、例えば仰向けに寝かせた状態で載置される。これにより、被検体Aは高周波コイル3に挿通された状態となる。
【0039】
続いて、テーブル2を後方に向けて移動させ、被検体Aおよび高周波コイル3をMRI装置100の開口部11内に配置する。このとき、高周波コイル3を静磁場の中央に配置する。そして、被検体Aの撮像領域を高周波コイル3の穴部31内に配置して、MRI装置100による撮像が行われる。MRI装置100による撮像中において、温風発生部90の動作が制御され、温度検出手段91の検出値が所定範囲内に保たれる。また、高周波コイル3の穴部31内で載置台4を左右方向に移動させることによって、被検体Aの撮像領域を変えることができる。
【0040】
前記したように、MRI装置100に搭載される被検体保温装置7は、MRI装置100における筒状の高周波コイル3の径方向内側に配置され、動物である被検体Aが載置される中空の保温マット71を備える。また、被検体保温装置7は、保温マット71の内部に供給する温風を発生する温風発生部90と、温風発生部90からの温風を保温マット71へ送る導入用ダクト95とを備える。
【0041】
この構成では、MRI装置100による撮像中に、動物である被検体Aが載置される保温マット71の内部に温風を供給することができる。これにより、動物には、保温マット71を介して温風による熱が伝えられる。
したがって、本実施形態に係る被検体保温装置7は、MRI装置100による撮像中における全身麻酔によって生じる動物の体温低下を抑えることができる。このため、撮像中に全身麻酔によって動物の体温が低下して死亡や合併症の発生などを招くリスクが低減される。
また、保温マット71の内部に、仮に温水を供給するとその水分がMRI画像に写り込んでしまうが、本実施形態では温風を供給する構成としたので、温風に起因してMRI画像に写り込むものはない。つまり、MRI画像に不要な物体が写り込んでアーチファクトになることはない。
【0042】
また、本実施形態では、保温マット71は硬質樹脂製であるため、保温マット71の上に動物が載置されても、保温マット71に凹みなどの変形が殆ど生じない。これにより、例えば温風の風圧変化などによって動物である被検体Aが撮像中に動くことを抑制でき、精度の良い撮像が可能となる。また、保温マット71は、樹脂製であることから磁場を乱すことがないため、金属アーチファクトになることもない。
【0043】
また、本実施形態では、被検体Aの体温を検出する温度検出手段91の検出値が所定範囲内を保つように温風発生部90の動作が制御される。これにより、動物の体温低下を効率良く、かつ確実に抑えることができる。また、MRI装置100による撮像が行われる撮像室内の温度が保温マット71の熱によって変動することをも抑えることができる。これにより、より精度の良い撮像が可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、保温マット71の温度を検出する温度検出手段91の検出値が所定範囲内を保つように温風発生部90の動作が制御されてもよい。動物の体温として検出するまでに時間がかかる場合には、むしろ保温マット71の温度変化を監視して制御した方が、安定して動物の体温を保持することが可能となる。これにより、動物の体温低下を効率良く、かつ確実に抑えることができる。また、MRI装置100による撮像が行われる撮像室内の温度が保温マット71の熱によって変動することをも抑えることができる。これにより、より精度の良い撮像が可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、温度検出手段91の検出値が表示部62に表示される。これにより、操作者は動物の体温を目視で確認することができる。
【0046】
また、本実施形態は、高周波コイル3の内側に配置される載置台4を備え、保温マット71は、この載置台4の上に着脱可能に配置されている。これにより、保温マット71を高周波コイル3の径方向内側に、簡易な構成で確実に配置させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、保温マット71は、導入用ダクト95が接続される入口73と、入口73から流入する温風が流出する出口74と、入口73と出口74とを連通させる通路72とを有している。この構成では、温風が保温マット71の内部を通路72を経て流れるため、温風による熱を、保温マット71を介して効率良く動物に伝えることができる。
【0048】
また、本実施形態では、通路72は、保温マット71の内部を仕切るように設けられた仕切壁75によって、保温マット71の内部で入口73と出口74とを連通させる。この仕切壁75の形成によって、保温マット71の剛性が向上するため、動物である被検体Aが撮像中に動くことをより抑制できる。
【0049】
図7は、本発明の他の実施形態に係る保温マット85を、高周波コイル3および載置台4とともに示す斜視図である。この実施形態は、保温マット85が図1図4に示す前記した実施形態と相違している。
【0050】
図7に示す保温マット85は、載置台4の上面部に一体に設けられている点で、載置台4の上に着脱可能に配置されている図3に示す保温マット71と相違している。その他の構成は、前記した実施形態と同様である。保温マット85は、例えば、載置台4と一体成形された樹脂製品であってもよい。このように構成すれば、部品点数を削減できるとともに、保温マットを載置台4にセットする手間を省くことができ、効率の良い撮像が可能となる。
【0051】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る保温マット71,85の平面展開断面図である。この実施形態は、保温マット71,85の出口74とMRI装置100による撮像が行われる撮像室の外部とを接続する放出用ダクト96を備える点で、図1図7に示す前記した実施形態と相違している。その他の構成は、前記した実施形態と同様である。このように構成すれば、MRI装置100による撮像が行われる撮像室内の温度が、保温マット71から放出される温風の熱によって変動することを抑えることができる。これにより、より精度の良い撮像が可能となる。
【0052】
なお、前記した実施形態では保温マット71は硬質樹脂製であるが、図9に示すように、保温マット82は、ポリ塩化ビニル等の軟質樹脂製であってもよい。中空の保温マット82の内部には、波形に形成された波板83が該保温マット82の上壁と下壁との間に設けられている。このような保温マット82は、波板83によって剛性を向上させることができ、動物である被検体Aを保温マット82に載せても潰れることはない。この場合、保温マット82の内部の波板83以外の空間は、全て温風の通り道となる。図9の例では、温風は、例えば手前側から奥行き方向に、保温マット82の長手方向に沿って流れる。
【0053】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではない。本発明は、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、前記実施形態の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0054】
例えば、前記実施形態では、保温マット71は、全体として概ね円弧面を呈するように形成されているが、これに限定されるものではない。保温マット71の形状は、動物である被検体Aを載置できる形状であればよく、適宜変更可能である。
【0055】
また、前記実施形態では、保温マット71は樹脂製であるが、これに限定されるものではない。保温マット71は、撮像中における動物の動きを十分抑制できる剛性を有し、アーチファクトが生じることの無い材質であればよく、例えば非磁性体のステンレス合金であってもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、載置台4は、テーブル2の天板21の上面21a上に、手動によって移動自在に配置されているが、これに限定されるものではなく、駆動装置によって移動自在に配置されていてもよい。あるいは、載置台4がテーブル2の天板21の上面21a上に固定されていて、載置台4がテーブル2と一緒に移動自在に構成されていてもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、例えば被検体Aの体温を検出する温度検出手段91の検出値が所定範囲内を保つように温風発生部90の動作が自動的に制御されるが、これに限定されるものではない。例えば、操作者が表示部62に表示された例えば動物の体温を目視で確認しつつ、手動によって温風発生部90の出力を調整してもよい。
【符号の説明】
【0058】
3 高周波コイル
4 載置台
6 コンソール
61 コンピュータ(制御手段)
62 表示部
7 被検体保温装置
71,81,82,85 保温マット
72 通路
73 入口
74 出口
90 温風発生部
91 温度検出手段
95 導入用ダクト
96 放出用ダクト
100 MRI装置
A 被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9