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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ベルト荷締機
(51)【国際特許分類】
   B65D 63/14 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
B65D63/14 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018130739
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020001821
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2018118068
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501359412
【氏名又は名称】株式会社リンテック21
(74)【代理人】
【識別番号】100144277
【弁理士】
【氏名又は名称】乙部 孝
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 悦朗
(72)【発明者】
【氏名】富田 真次
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039348(JP,A)
【文献】特開2011-207461(JP,A)
【文献】特開2010-112537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車に積まれた荷物の荷崩れを防止するベルト荷締機であって、台車へ取り付けるための取付部と、前記荷物に掛けられて荷崩れを防ぐベルトと、該ベルトを巻き取る方向へ付勢する巻取リールと、前記ベルトを緩める方向への動きを規制するラチェット機構と、前記ラチェット機構に接続されて前記ベルトを巻き取るベルト締付部を備え、前記ベルト締付部を操作して前記ベルトを締め付けると同時に前記ベルトのロックがおこなわれるように構成され、
前記ベルト締付部が前記ベルト荷締機の筐体に固定される外円部と該外円部の中で回転する内円部と、を備え、前記外円部は前記巻取リールから出た前記ベルトが通過する第1通過部と、前記第1通過部に対向する位置に前記ベルトの外部との通路となる第2通過部を有し、前記内円部がその中心を通る前記ベルトの通過するベルト通路を有し、前記ベルトが前記第1通過部、前記ベルト通路、前記第2通過部を経由して前記巻取リールと前記筐体の外部との間を往来し、初期状態において、前記第1通過部、前記ベルト通路、前記第2通過部で構成される前記ベルトの通路がほぼ直線状になり、前記内円部の外周付近の前記ベルト通路の端部が略直角、鋭角又は鋸歯状に成形されおり、前記ベルト締付部の前記ベルトを締め付ける操作に伴う前記内円部の回転の角度を初期状態から360度以下に抑える制止部が設けられるとともに前記回転に伴い巻かれる渦巻ばねが前記筐体と前記内円部の間に設けられることを特徴とするベルト荷締機。
【請求項2】
前記内円部の外周に滑り止め部材が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のベルト荷締機。
【請求項3】
前記ラチェット機構が前記内円部と同軸に結合されるラチェット歯車とその歯車に向けて付勢される歯止めで構成され、その歯止めを前記ラチェット歯車から離して歯車が自由に回転できる状態にする解除機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト荷締機。
【請求項4】
前記解除機構が解除状態を維持する解除保持部を有することを特徴とする請求項3に記載のベルト荷締機。
【請求項5】
前記取付部が前記台車の一端に備えられた第1固定部の下端へ当たる固定取付部と、前記第1固定部の上端へ当たる可動取付部と、該可動取付部を前記固定取付部へ向けて付勢する弾性体を備えることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のベルト荷締機。
【請求項6】
前記第1固定部が、前記台車の荷台に立設された手押しハンドルの背板又は前記台車の荷台に固定された荷台付加具であることを特徴とする請求項5に記載のベルト荷締機。
【請求項7】
前記荷台付加具が前記台車の荷台を挟むことで固定されるように構成されるとともに前記ベルト荷締機を固定するL字部材を有することを特徴とする請求項6に記載のベルト荷締機。
【請求項8】
前記荷台付加具の前記台車の荷台への固定が前記L字部材の前記荷台の下へ挿入される延長部材と前記荷台の上へ降りる抑え部材により行われることを特徴とする請求項7に記載のベルト荷締機。
【請求項9】
前記抑え部材がL字部材に沿って移動し前記抑え部材に開けられた長穴を通してL字部材へねじ止めされることを特徴とする請求項8に記載のベルト荷締機。
【請求項10】
前記抑え部材がL字部材に沿って移動し前記延長部材との間を狭くするように付勢されることを特徴とする請求8に記載のベルト荷締機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車に載せた荷物の荷崩れを防止するベルト荷締機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台車へ乗せた荷物の荷崩れを防止する装置が種々提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示されている荷崩れ防止ベルトとして台車の上段の荷物の外周面に沿って簡単に巻装する荷崩れ防止用ベルトが開示されている。
【0004】
特許文献2には荷物群の周囲に巻回されるベルト状又はシート状の帯部材と疎の端部を連結させ連結部材を備えた荷崩れ防止用締め具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-122322
【文献】特開2003-54625
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1及び2に開示された発明はともに荷物の周囲を巻回するもので荷物の周囲へ回り込む必要があるという問題点がある。また、荷物の周囲長が高さにより変化する場合は複数のベルトなどを用意する必要があった。
【0007】
この発明の目的は、上述した事情に鑑みて台車に積み上げられた荷物の運搬中での荷崩れを防止する簡便なベルト荷締機を提供することである。
【0008】
また、市販されている台車の上の荷物群の上に掛ベルトを掛けてベルトを締める荷崩れ防止装置は繰り出したベルトを荷崩れ防止装置へロックしてからベルトを締めるという2段階の操作が必要だった。そこで、この発明の別の目的は、ベルト荷締機の操作ハンドルを回すとロックを開始して同時にベルトの締付けが行えるベルト荷締機提を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のベルト荷締機は、台車に積まれた荷物の荷崩れを防止するベルト荷締機であって、台車へ取り付けるための取付部と、前記荷物に掛けられて荷崩れを防ぐベルトと、該ベルトを巻き取る方向へ付勢する巻取リールと、前記ベルトを緩める方向への動きを規制するラチェット機構と、前記ラチェット機構に接続されて前記ベルトを巻き取るベルト締付部を備え、前記ベルト締付部を操作して前記ベルトを締め付けると同時に前記ベルトのロックがおこなわれるように構成され、
前記ベルト締付部が前記ベルト荷締機の筐体に固定される外円部と該外円部の中で回転する内円部と、を備え、前記外円部は前記巻取リールから出た前記ベルトが通過する第1通過部と、前記第1通過部に対向する位置に前記ベルトの外部との通路となる第2通過部を有し、前記内円部がその中心を通る前記ベルトの通過するベルト通路を有し、前記ベルトが前記第1通過部、前記ベルト通路、前記第2通過部を経由して前記巻取リールと前記筐体の外部との間を往来し、初期状態において、前記第1通過部、前記ベルト通路、前記第2通過部で構成される前記ベルトの通路がほぼ直線状になり、前記内円部の外周付近の前記ベルト通路の端部が略直角、鋭角又は鋸歯状に成形されおり、前記ベルト締付部の前記ベルトを締め付ける操作に伴う前記内円部の回転の角度を初期状態から360度以下に抑える制止部が設けられるとともに前記回転に伴い巻かれる渦巻ばねが前記筐体と前記内円部の間に設けられることを特徴とするベルト荷締機である。
【0010】
台車へベルト締付機を取り付けてベルトを台車の上の荷物へ掛け渡してベルトの端を台車の端へ金具などを用いて接続し、ベルト締付部を操作してベルトを締めつけて荷物の荷崩れを防止する。その際に、従来はベルトのロック操作の後でベルトの締付けを行っていたが本発明によれば締付動作により自動的にベルトのロックが行われる。また、内円部の回転が360度以下に抑えられるので初期状態の設定が容易になりベルト荷締機の大きさの小型化が図れる。また、渦巻ばねが前記外円部と前記内円部の間に設けられるので内円部のラチェット機構が開放されると自動的に初期状態へ戻ろうとする。
【0019】
本発明のベルト荷締機は、内円部の外周に滑り止め部材が備えられていることを特徴とする。
【0020】
内円部の外周に滑り止め部材が備えられているので内円部が回転してベルトが内円部の外周へ掛かるようになると滑り止め部材によりベルトが内円部へほぼ固定される。
【0021】
本発明のベルト荷締機は、ラチェット機構が内円部と同軸に結合されるラチェット歯車とその歯車に向けて付勢される歯止めで構成され、その歯止めを前記ラチェット歯車から離して歯車が自由に回転できる状態にする解除機構を有することを特徴とする。
【0022】
内円部の回転方向を規制するためにラチェット歯車が前記内円部と同軸に結合される。そのラチェット歯車は歯止めがラチェット歯車へ喰い込むことで歯車の回転が規制される。そして、解除機構が歯止めを歯車から離して歯車の自由な回転を許し解除機構を操作することで荷物を締付けているベルトを容易に外すことができる。
【0023】
また本発明のベルト荷締機は、解除機構が解除状態を維持する解除保持部を有することを特徴とする。
【0024】
解除機構の解除状態を保持する解除保持部が有るので歯車へ向けて付勢されている解除機構を解除レバーから手を離したまま解除状態を維持することができる。
【0025】
本発明のベルト荷締機は、取付部が前記台車の後部に有る中間帯材の下端へ当たる固定取付部と、前記中間帯材の上端から当たる可動取付部と、該可動取付部を前記固定取付部へ向けて付勢する弾性体を備えることを特徴とする。
【0026】
取付部が前記台車の後部に有る中間帯材の下端へ当たる固定取付部と、前記中間帯材の上端から当たる可動取付部と、該可動取付部を前記固定取付部へ向けて付勢する弾性体を備えるので台車への取付が容易である。
【0027】
本発明のベルト荷締機は、第1固定部が、台車の荷台に立設された手押しハンドルの背板又は台車の荷台に固定された荷台付加具であることを特徴とする。
【0028】
ベルト荷締機は、台車の台1固定部すなわち、手押しハンドルの背板や適宜な幅を持った荷台付加具へ簡便に取り付けることができる。
【0029】
本発明のベルト荷締機は、荷台付加具が前記台車の荷台を挟むことで固定されるように構成されるとともに前記ベルト荷締機を固定するL字部材を有することを特徴とする。
【0030】
荷台付加具が台車の荷台を挟むことで固定されるように構成されるとともに前記ベルト荷締機を固定するL字部材を有するので、荷台付加具は背板を持つ手押しハンドルを有さない平台車へもベルト荷締機を取り付けることができる。
【0031】
本発明のベルト荷締機は、荷台付加具の台車の荷台への固定がL字部材の荷台の下へ挿入される延長部材と荷台の上から降りる抑え部材により行われることを特徴とする。
【0032】
荷台付加具の台車の荷台への固定がL字部材の荷台の下へ挿入される延長部材と荷台の上へ降りる抑え部材により行われるので様々な形態の荷台へ取り付けることができる。
【0033】
本発明のベルト荷締機は、抑え部材がL字部材に沿って移動し長穴を介してL字部材へねじ止めされることを特徴とする。
【0034】
抑え部材がL字部材に沿って移動し抑え部材に開けられた長穴を通してL字部材へねじ止めされるので、抑え部材を上下に移動して様々な厚みの荷台へ取り付けることができる。
【0035】
本発明のベルト荷締機は、抑え部材がL字部材に沿って移動し前記延長部材との間を狭くするように付勢されることを特徴とする。
【0036】
抑え部材がL字部材に沿って移動し前記延長部材との間を狭くするように付勢されることを特徴とするので、抑え部材を持ち上げて荷台の端へ取付、手を離すと様々な厚みの荷台へ取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明のベルト荷締機を取付部側から見た斜視図である。
図2A】巻取リールからベルト締付部を通るベルトの経路を説明する断面図である。
図2B】ベルト締付部を回転してベルトを締付ける際のベルトの経路を説明する断面図である。
図3】回転した内円部とベルトの関係の説明図である。
図4】ラチェット機構と自動戻り機構の説明図である。
図5A】初期状態の解除保持部の説明図である。
図5B】ラチェット歯車の上を滑っている解除保持部の説明図である。
図5C】ラチェット歯車の外側を滑っている解除保持部の説明図である。
図6】本発明のベルト荷締機をラチェット解除レバー側から見た斜視図である。
図7A】本発明のベルト荷締機を背板を有する手押しハンドルを備える台車に固定する説明図である。
図7B】本発明のベルト荷締機を平台車へ荷台付加具を用いて固定する説明図である。
図8A】荷台付加具をベルト荷締機を取り付ける側から見た説明図である。
図8B】荷台付加具を荷台側から見た説明図である。
図9】抑え板を下方へ付勢する仕組みの説明図である。
図10】荷台付加具へベルト荷締機を取り付ける様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明のベルト荷締機の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るベルト荷締機10の外観図である。図1の右手にあるベルト荷締機10本体の取付部3,4は台車の後部のハンドルの中間部に有る中間帯材51へベルト荷締機を取り付ける際に用いられる。使用に際しては取付部の可動取付部4を中間帯材51の上端へ掛けてベルト荷締機を下へ押し下げ固定取付部3を中間帯材の下端へ掛けて固定する。可動取付部4はコイルバネ5などの弾性体により固定取付部3へ向けて付勢されているので荷締機10は弾性体の弾性力により可動取付部4と固定取付部3で中間帯材を挟んで固定される。
【0039】
荷締機10を台車へ固定した後に台車に乗せられた荷物の上を覆うようにベルト7を引き伸ばしベルトの先端の取付具8を台車の前方の所定の位置へ固定する。ベルト7は後述するベルト荷締機に内蔵される渦巻バネによりベルトが緩まないように巻取方向へ付勢されているが荷崩れを防ぐほどには渦巻バネによる付勢力は大きくなく。
【0040】
そこで、ベルトを締付けて荷崩れを防ぐためにベルトを締付けるにはベルトを締付ける器具へベルトを固定(ロック)する必要がある。従来はベルトを締付け器具へ固定してから、締付け器具を操作してベルトの締付けを行っていた。本発明に係るベルト荷締機10は後述する仕組みによりベルトの締付けを開始する同時にベルト荷締機10によるベルト荷締機10へのベルトの固定が自動的に行われる。
【0041】
ベルトの締付けは巻取ハンドル6を回すことで行う。所期の締付力になった段階で巻取ハンドル6から手を離しても、後述する内蔵されているラチェット機構によりベルトが戻って緩むことはない。
【0042】
図2Aは初期状態で巻いたベルトを保持している巻取リール11とベルトを締付けるベルト締付部を構成する内円部13と外円部14を示す断面図である。巻取リール11は内蔵される渦巻バネによりベルトを巻き取る方向へ付勢される。巻取リールから出たベルト7はベルト締付部を構成する外円部14に形成される第1通過部15を通り、内円部13の中心を通るガイド溝として形成されるベルト通路17を通り、外円部14に形成される第2通過部16を通ってベルト荷締機の外へ出る。図2Aに示すように第1通過部15と第2通過部16は内円部に形成されるベルト通路17を挟んで対向する位置に設けられるので初期状態ではベルトは巻取リールと外部との間のほぼ直線状の経路を経由して往来する。
【0043】
巻取リール11を出たベルト7がほぼ直線状の経路を通過して外部へ出るように経路が形成される初期状態では、ベルト7は巻取リール11から外部へ巻取リールの渦巻バネによる巻き戻しの付勢を受けながらも大きな抵抗なく引き出すことができる。
【0044】
図2Bを用いてベルト締付の説明を行う。ベルトを引き出して荷物に掛けてベルトの端を台車へ取り付けてからベルトを締めつけるときはベルト締付部の内円部13を図の矢印に示す方向へ回してベルトの締付けを行う。ここで矢印に示す方向へ回す際にベルトが内円部へロックされていないと内円部は空回りすることになる。本発明においては内円部の外周付近のベルト通路の入り口と出口のベルトの当たる角の部分は略直角に成形(成形)されており内円部13が回転するとベルトが折り曲がるのでこの角の部分でベルトは大きな摩擦力を受け、ベルト7が内円部13へ固定(ロック)されて内円部13の回転とともに台車の上の荷物に掛けられたベルト7が締付けられる。
【0045】
図3は内円部とベルトの固定についてさらに工夫を凝らした場合の説明図である。ベルト通路の外円部に近いベルト通路17の端部18、19はベルトが接する部分を鋭角にベルトに当たるように成形している。例えば鋸歯状に成形することでベルトがベルト通路の端部で折り曲げられて歯がベルトへ食い込むのでベルト7が内円部13へ容易に固定される。つまり内円部が回転してベルトの締付が開始されると同時に締付部とベルトが固定(ロック)されることになる。
【0046】
さらにベルトが接する内円部の外周へ滑り止め部材131を設けることでベルト7の内円部13への固定が促進される。滑り止め部材としてゴム、ポリウレタン、シリコンなどのシートを貼りつけることが好適である。滑り止め部材として粘着剤を塗布しても良い。
【0047】
図4を用いてラチェット機構の説明をする。内円部13と同軸になったラチェット機構はラチェット歯車20とこれを係止する歯止めとなる爪部25を有する爪部本体21とこれをラチェット歯車20へ向けて付勢するU字型バネ22を有する。爪部25はラチェット機能を解除する爪部本体21の部材と一体化されており、図4に示す爪部本体21は左側の端部を回動可能に軸支されU字型バネ22によりラチェット歯車20へ向けて付勢されている。爪部本体21の右側の端部はベルト締付機10の筐体の外部へ突出する解除レバー12に接続される。
【0048】
内円部13には内円部を初期状態へ戻すように付勢する筐体へ一端を固定された渦巻きバネ27が内蔵されラチェット歯車20の係止が開放されると渦巻きバネ27により内円部は初期状態へ自動的に戻ろうとする。ここで内円部の溝へ突出したストッパー26により内円部13の回転の始点と終点が決められ内円部の回転角は360度以下に抑えられている。
【0049】
ストッパー(制止部)26を設けることでベルト7がスムースに通行できるようにベルトの通路をほぼ直線的に形成する内円部13の初期位置を明確に定めることができる。また、内円部の回転を1回転以下に抑えることで締めつけて引き込んだベルトが巻き付いた内円部13と外円部14の間の隙間を厳密に決めることができ内円部13及び外円部14の周辺機構を小型にできる。
【0050】
具体的には内円部13の直径を30mm~50mmとすることが好適である。内円部13の直径を30mm~50mmとする場合の最大引き締め量は90mm~150mmであり試作機は40mmを用いたが引締め量としては十分なことを確認した。
【0051】
図5A図5B図5Cを用いて解除機構を構成する解除レバーの解除状態を保持する解除保持部の説明をする。爪部本体21に重なるように板バネによる保持部32が爪部本体21へ取り付けられる。図5Aに示す初期状態では保持部32の先端部34は、ラチェット歯車20の切り欠け部分へ入り込んでいて爪部25はラチェット歯車20を係止可能な状態である。
【0052】
図5Bに示すようにベルト7を締付ける様に内円部13を巻取りハンドル6により図5Bの矢印方向へ回転させると先端部34はラチェット歯車の一部へ設けられた傾斜部35へ乗り上げてラチェット歯車20の上を滑る。この状態では爪部25がラチェット歯車20へ向けての付勢力FLによりラチェット歯車20を係止することができるのでラチェット機構が機能する。
【0053】
ここで図5Cに示す矢印方向へ解除レバー12を外部から力FRで駆動すると先端部34はラチェット歯車20の規制から離れて板バネの保持部32は爪本体部21へ重なるように動きU字バネ22による付勢力FLによりラチェット歯車の外周へ乗る状態になる。そうすると爪部25はラチェット歯車20へ触れない状態になりラチェット歯車は自由に回転可能になりラチェットの解除状態が保持される。
【0054】
図6は初期状態の本発明に係るベルト締付機10を後方から見た斜視図である。図6に見られる解除レバー12を操作してラチェットの爪部本体21をラチェット歯車から離す方向へ作動させる。解除レバー12に接続される爪部本体21はU字型バネ22によりラチェット歯車方向へ付勢されているので解除レバー12から手を離すとラチェット歯車が再度係止されるが保持部32により解除状態が維持される。
【0055】
ベルト荷締機10は取付部4,3により簡便に台車へ取り付けることができ、台車の荷物へベルトを掛けた後に巻取ハンドル6を回転させてベルトの締付けを行う。ベルト7を外す際は、ベルト7の先端部の取付具8を台車から外して解除レバー12を操作することでベルト7及び巻取ハンドル6が元へ戻る。
【0056】
図7は本発明に係るベルト荷締機を台車の上の荷物に適用した場合である。ベルト荷締機10を台車の一端の第1固定部へ取り付ける。図7Aはベルト荷締機10が第1固定部となる台車の手押しハンドル50の背板51へ取り付けられる様子を示す。ベルト荷締機から出たベルト7を伸ばして先端の取付具8を台車の所定の場所へ掛ける。巻取ハンドル6を回転させることで簡便にベルトの締付けができて台車での荷物の運搬中に荷物の荷崩れを防止することができる。
【0057】
図7Bは手押しハンドルを有しない平台車への適用例として第1固定部となる後述する荷台付加具100へベルト荷締機10を取付けて荷崩れを防止する様子をしめす。ベルト荷締機10荷台付加具100から出たベルト7を伸ばして先端の取付具8を台車の所定の場所へ掛ける。巻取ハンドル6を回転させることで簡便にベルトの締付けができて台車での荷物の運搬中に荷物の荷崩れを防止することができる。
【0058】
図8Aは荷台付加具100をベルト荷締機10が取り付けられる側から見た図である。L字部材102の上端は折り曲げられてベルト荷締機10の可動取付部4を取り付ける上端固定部1022となっている。また、L字部材102の下端部にはベルト荷締機10の固定取付部3を取り付ける下端固定部となる棒材104が設けられる。L字部材102の下方に開けられた四角穴は抑え部材101の上下の動きを制限している。
【0059】
L字部材102の中間部にはネジ穴が用意され固定ネジ103が挿入される。L字部材の下端は荷台側へ向けて二本の延長部材が設けられ延長部材は荷台の下へ挿入されて抑え部材101の抑え板1011とともに荷台を上下に挟む。
【0060】
図8Bは荷台付加具100を台車の荷台側から見た図である。荷台を上から挟む抑え部材101の左右の中央部には上下に長穴1012が設けられて固定ネジ103が挿入される。固定ネジはL字部材102のネジ穴105で固定される。固定ネジ103の操作部は手で回しやすい大きさに作られ固定ネジ103を十分なトルクでL字部材102のネジ穴105へ締め付けることができる。
【0061】
図9に抑え板1011を延長部材1021へ向けて付勢する別の実施例を示す。弾性体107をL字部材102から荷台側へ突き出したバネ抑え板106と抑え部材101の抑え板1011間へ挿入してL字部材の延長部材1021と抑え部材の抑え板1011の間隔を狭くするように付勢する。弾性体は圧縮コイルバネが好適であるが他の物でもよい。また、抑え板1011と延長部材2021の間隔を狭くするように付勢するために引っ張りバネを抑え板1011と延長部材1021の間へ挿入しても良い。その場合は抑え板1011と延長部材1021にそれぞれ引っ張りバネを装着する部材を用意する。
【0062】
図9に荷台付加具を使ってベルト締付機10を荷台60へ固定する様子を示す。荷台60は荷台60の下へ挿入されたL字部材102の延長部材2021と抑え部材101の抑え板1011で挟まれ荷台付加具100が固定された状態で固定ネジ103を締めて荷台付加具100を荷台60へ確実に固定する。固定された荷台付加具100の上部受け部1022へベルト荷締機10の可動取付部4を掛けてベルト荷締機10を下へ降ろし、棒材104へベルト荷締機10の固定取付部3を取り付ける。
【0063】
ベルト7を外す際は、ベルト7の先端部の取付具8を台車から外して解除レバー12を操作することでベルト7及び巻取ハンドル6が自動的に元へ戻る。
【0064】
上記に説明した実施例は本願発明の一部であって本願発明の技術思想を含む実施の態様は本願発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 筐体カバーA
2 筐体カバーB
3 固定取付部
4 可動取付部
5 弾性体(コイルバネ)
6 巻取ハンドル
7 ベルト
8 取付具
10 ベルト荷締機
11 巻取リール
12 解除レバー
13 内円部
14 外円部
15 第1通過部
16 第2通過部
17 ベルト通路
18、19 鋸歯状端部
20 ラチェット歯車
21 爪部本体
22 U字型バネ
25 爪部
26 ストッパー(制止部)
27 巻きバネ
32 解除保持部
34 先端部
35 傾斜部
50 手押しハンドル
51 背板
60 荷台
100 荷台付加具
101 抑え部材
105 ネジ穴
106 バネ抑え
107 バネ
1011 抑え板
1012 長穴
102 L字部材
1021 延長部材
1022 上端固定部
103 固定ネジ
104 下端固定部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10