(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20221116BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/06 E
(21)【出願番号】P 2018127106
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】大谷 純一
(72)【発明者】
【氏名】船戸 学
(72)【発明者】
【氏名】廣田 竜也
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-033951(JP,A)
【文献】特開2000-042954(JP,A)
【文献】特開平09-323276(JP,A)
【文献】特開2006-231454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一長さの一対の第1リンクの基端部が第1リンク台に回転可能に連結されていると共に、当該一対の第1リンクの先端部が中間リンク台に回転可能に連結され
、前記一対の第1リンクの何れかが駆動手段により回転駆動される第1平行四節リンク機構と、
同一長さの一対の第2リンクの基端部が前記中間リンク台に回転可能に連結されていると共に、当該一対の第2リンクの先端部が第2リンク台に回転可能に連結された第2平行四節リンク機構と、
前記中間リンク台に配置され、前記一対の第1リンクのそれぞれに連結された一対の第1プーリと、前記一対の第2リンクの一方に連結された第2プーリと、
前記第2プーリの両側に前記一対の第1プーリが配置されるように張設されたベルトとを有し、前記第1リンクと前記第2リンクとが互いに反対方向に回転するように回転駆動力を伝達するベルト伝動機構とを備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記ベルト伝動機構は、前記ベルトの張力を調節する張力調節手段を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記張力調節手段は、前記ベルトに対する押圧力が変化するように前記中間リンク台に対して移動可能に構成された押圧部材を有することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記張力調節手段は、前記押圧部材を1つだけ有することを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記ベルトの移動にともなって回転可能に構成された従動ローラであることを特徴とする請求項3または4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ベルト伝動機構は、前記中間リンク台に対して前記一対の第2リンクの他方が回転可能な範囲を制限する回転制限手段を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置や液晶基板製造装置等において、被加工物を搬送するための搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置や液晶基板製造装置等においては、例えば被搬送物のウエハを載置するためのハンド部材をアームにより水平方向に直線的に移動させる搬送用ロボット装置が知られている。
【0003】
従来の搬送用ロボット装置としては、特許文献1の
図1及び
図2に図示されるように、旋回台11と外側の第2リンク14とが一対の第1の中間リンク12,13で連結されて第1の平行四節リンク15が形成され、第2リンク14とハンド用リンク18とが一対の第2の中間リンク16,17で連結されて第2の平行四節リンク19が形成される。第1の中間リンク12,13と第2の中間リンク16,17とは同一のリンク長さに形成され、旋回台11と第1の中間リンク12,13とは、Y方向に離間する第1支点O1及び第2支点O2廻りに枢支されている。第1の中間リンク12,13と第2リンク14とは、第3支点O3廻りに枢支され、第2の中間リンク16,17と第2リンク14とは、第4支点O4廻りに枢支されている。第1及び第2の中間リンク間には、回転伝達機構20が配設される。
【0004】
したがって、第1の回転軸2及び第1の中間リンク13が、第1支点O1を中心として時計方向に回転されると、第1の平行四節リンク15は第1支点O1及び第2支点O2を支点としてY1方向に平行に移動する。この場合、第1の中間リンク13は第2リンク14に対して第3支点O3を中心として時計方向に回転された状態となる。これにより、回転伝達機構20を介して第2の中間リンク16が、第2リンク14に対して第4支点O4を中心として反時計方向に回転されて、第2の平行四節リンク19が第4の支点O4を支点としてY1方向に平行に移動する。
【0005】
特許文献1の
図10に図示されるように、搬送用ロボット装置において、回転伝達機構20は、第1の中間リンク12と第2の中間リンク17との間に配置されると共に、第1の中間リンク13と第2の中間リンク16との間に配置される。即ち、第1の中間リンク12の第3支点O3と同軸に固定されたプーリ20Dと、第2の中間リンク17の第4支点O4と同軸に固定されたプーリ20Cとの間には、ベルト20Eが張設される。また、第1の中間リンク13の第3支点O3と同軸に固定されたプーリ20Dと、第2の中間リンク16の第4支点O4と同軸に固定されたプーリ20Cとの間には、ベルト20Eが張設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の搬送用ロボット装置では、第2の平行四節リンク19の第2の中間リンク16,17に連結されたプーリ20Cが解放状態のため、ベルト20Eが緩む方向に回転し、ベルト20Eの張力(テンション)が低下してしまう。また、特許文献1の搬送用ロボット装置では、第2リンク14に対して回転伝達機構20を組み付ける際、ベルト20Eのテンション調整とアームの軌道調整とを同時にしながら、プーリ20C等の取り付け作業を行う必要がある。そのため、組み立てや調整が困難であり、生産性が非常に悪い。また、ベルト20Eのテンション調整とアームの軌道調整とを同時にしながら取り付け作業を行ったとしても、ベルトテンションの安定性やアーム平行度の精度が悪く、品質を安定させるためにプーリ等の組み付け作業の改善が必要であった。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、ベルトテンションの安定性やアーム平行度の精度向上を可能とした搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を講じたものである。
すなわち、本発明に係る搬送装置は、同一長さの一対の第1リンクの基端部が第1リンク台に回転可能に連結されていると共に、当該一対の第1リンクの先端部が中間リンク台に回転可能に連結され、前記一対の第1リンクの何れかが駆動手段により回転駆動される第1平行四節リンク機構と、同一長さの一対の第2リンクの基端部が前記中間リンク台に回転可能に連結されていると共に、当該一対の第2リンクの先端部が第2リンク台に回転可能に連結された第2平行四節リンク機構と、前記中間リンク台に配置され、前記一対の第1リンクのそれぞれに連結された一対の第1プーリと、前記一対の第2リンクの一方に連結された第2プーリと、前記第2プーリの両側に前記一対の第1プーリが配置されるように張設されたベルトとを有し、前記第1リンクと前記第2リンクとが互いに反対方向に回転するように回転駆動力を伝達するベルト伝動機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、本発明に係る搬送装置では、一対の第2プーリの一方の両側に一対の第1プーリが配置されるようにベルトを張設することにより、一対の第2プーリの一方が解放状態となる場合であっても、ベルトを一対の第1プーリに固定することでベルトの回転が規制される。したがって、解放状態の一対の第2プーリの一方が緩む方向に回転してベルトの張力が低下するのが防止され、ベルトテンションの安定性が向上する。
【0011】
本発明に係る搬送装置において、前記ベルト伝動機構は、前記ベルトの張力を調節する張力調節手段を有することを特徴とする。
【0012】
これにより、本発明に係る搬送装置では、中間リンク台に対してベルト伝動機構を組み付ける際、ベルトのテンション調整とアームの軌道調整とを個別に行うことが可能となり、プーリ等の取り付け作業が容易になり生産性が向上すると共に、ベルトテンションの安定性やアーム平行度の精度が向上する。
【0013】
本発明に係る搬送装置において、前記張力調節手段は、前記ベルトに対する押圧力が変化するように前記中間リンク台に対して移動可能に構成された押圧部材を有することを特徴とする。
【0014】
これにより、本発明に係る搬送装置では、張力調節手段を簡易に構成できる。
【0015】
本発明に係る搬送装置において、前記張力調節手段は、前記押圧部材を1つだけ有することを特徴とする。
【0016】
これにより、本発明に係る搬送装置では、ベルトを1箇所だけ押圧することにより、ベルトの張力を調節可能である。
【0017】
本発明に係る搬送装置において、前記押圧部材は、前記ベルトの移動にともなって回転可能に構成された従動ローラであることを特徴とする。
【0018】
これにより、本発明に係る搬送装置では、押圧部材がベルトの移動にともなって回転する従動ローラであることにより、押圧部材が固定された状態でベルトを押圧する場合と比べて、ベルトとの摩擦が低減すると共に、ベルトの張力が押圧部材の両側において均一化される。
【0019】
本発明に係る搬送装置において、前記ベルト伝動機構は、前記中間リンク台に対して前記一対の第2リンクの他方が回転可能な範囲を制限する回転制限手段を有することを特徴とする。
【0020】
これにより、本発明に係る搬送装置では、中間リンク台に対して一対の第2リンクの他方が回転可能な範囲を制限することにより、ベルトの破断を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によれば、ベルトテンションの安定性やアーム平行度の精度向上を可能とした搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る搬送装置の斜視図である。
【
図4】
図1の搬送装置において直線搬送した状態を示す平面図である。
【
図5】
図1の搬送装置のベルト伝動機構を示す平面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る搬送装置のベルト伝動機構を示す平面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る搬送装置のベルト伝動機構を示す平面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る搬送装置のベルト伝動機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1-
図4に示されるように、搬送装置1は、基本構成が同一の2基の搬送ユニット11a、11bを有した2アーム方式の搬送装置であり、搬送ユニット11a、11bは、固定台Aの両側において例えば被搬送物のウェハを直線搬送する構成である。よって、以下の説明では、搬送ユニット11aについてのみ説明し、搬送ユニット11bについては説明を省略する。
【0025】
搬送ユニット11aは、本発明の第1平行四節リンク機構としての第1リンク機構LD1と、本発明の第2平行四節リンク機構としての第2リンク機構LD2とが、ベルト伝動機構Dを介して連結された構成である。第1リンク機構LD1は、同一長さの一対の第1リンクL1a,L1bの基端部が一対の第1連結軸S1a,S1bを介して固定台Aに回転可能に連結され、一対の第1リンクL1a,L1bの先端部が一対の中間連結軸S3a,S3bを介して中間リンク台Eに回転可能に連結された構成である。
【0026】
第1連結軸S1aは、固定台Aに回転可能に支持され、第1連結軸S1aと第1リンクL1aとは一体に連結されている。第1連結軸S1bは、図示しない駆動手段により駆動される駆動軸S0を兼用し、駆動軸S0(第1連結軸S1b)は固定台Aに回転可能に支持され、駆動軸S0(第1連結軸S1b)と第1リンクL1bとは一体に連結されている。第3連結軸S3aは、中間リンク台Eに回転可能に支持され、第3連結軸S3aと第1リンクL1aとは一体に連結されている。第3連結軸S3bは、中間リンク台Eに回転可能に支持され、第3連結軸S3bと第1リンクL1bとは一体に連結されている。第1連結軸S1aは、第1連結軸S1bと同軸に配置された図示しない回転軸S1cに接続されている。回転軸S1cが回転すると、第1連結軸S1aが回転軸S1c(第1連結軸S1b)を中心として回転し、固定台Aが回転する。したがって、アームを伸縮するときは、回転軸S1cを固定して、第1連結軸S1bのみを回転駆動する。一方、第1連結軸S1bと回転軸S1cとを同期させて同時に回転すると、固定台Aが回転し、アームの伸縮方向が変化する。このように、搬送装置1では、アームの伸縮動作のみが可能であると共に、固定台Aの旋回動作とアームの伸縮動作とを並行して行うことが可能である。
【0027】
第2リンク機構LD2は、同一長さの一対の第2リンクL2a,L2bの基端部が一対の中間連結軸S4a,S4bを介して中間リンク台Eに回転可能に連結され、一対の第2リンクL2a,L2bの先端部が一対の第2連結軸S2a,S2bを介して先端リンク板Cに回転可能に連結された構成である。先端リンク板Cの上面にウェハ載置台C1が設けられている。
【0028】
中間連結軸S4aは、中間リンク台Eに回転可能に支持され、中間連結軸S4aと第2リンクL2aとは一体に連結されている。中間連結軸S4bは、中間リンク台Eに回転可能に支持され、中間連結軸S4bと第2リンクL2bとは一体に連結されている。第2連結軸S2aは、先端リンク板Cに回転可能に支持され、第2連結軸S2aと第2リンクL2aとは一体に連結されている。第2連結軸S2bは、先端リンク板Cに回転可能に支持され、第2連結軸S2bと第2リンクL2bとは一体に連結されている。
【0029】
次に、駆動軸S0である第1連結軸S1bの回転駆動により第1リンク機構LD1が平行リンク運動を行う際に、第2リンク機構LD2を作動させるベルト伝動機構Dについて説明する。
【0030】
ベルト伝動機構Dは、
図5に示すように、中間リンク台Eの内部に組み込まれた構成であって、プーリ体P1a、P1b、P2aと、張力調整手段DTとしての押圧部材P3と、ベルトTとを有している。プーリ体P1aは、第1リンクL1aの先端部に連結された第3連結軸S3aに一体に連結され、プーリ体P1bは、第1リンクL1bの先端部に連結された第3連結軸S3bに一体に連結され、プーリ体P2aは、第2リンクL2aの先端部に連結された第4連結軸S4aに一体に連結されている。
【0031】
中間リンク台Eの一対の中間連結軸S3a,S3bの間隔は、固定台Aの一対の第1連結軸S1a,S1bの間隔と同一であり、中間リンク台Eの一対の中間連結軸S4a,S4bの間隔は、先端リンク板Cの一対の第2連結軸S2a,S2bの間隔と同一である。
【0032】
ベルト伝動機構Dにおいて、プーリ体P1a、P2a、P1bの外周面には、ベルトTが張設される。ベルトTは、例えばスチールベルトであり、
図5において、プーリ体P1aの外周面の下側に沿った後、プーリ体P2aの外周面の上側に沿うように張設される。その後、ベルトTは、押圧部材P3の外周面に沿った後、プーリ体P1bの外周面の下側に沿うように張設される。ベルトTの両端部は、プーリ体P1a及びプーリ体P1bの外周部に図示しない複数本のボルトを介してそれぞれ固定される。
【0033】
押圧部材P3は、中間リンク台Eに回転可能に支持された軸S5aに一体に連結され、ベルトTの移動にともなって回転可能な従動ローラで構成される。押圧部材P3は、
図5において、ベルトTを左下斜め方向に向かって押圧し、プーリ体P2aとプーリ体P1bとの間においてベルトTの張力(テンション)を調節する。したがって、押圧部材P3は、軸S5aと共に中間リンク台Eに対して移動可能であり、且つ、ベルトTを押圧した状態で軸S5aと共に中間リンク台Eに固定可能に構成される。このように、押圧部材P3は、ベルトTに対する押圧力が変化するように中間リンク台Eに対して移動することにより、プーリ体P1a、P1b、P2aに張設されたベルトTの張力を調節する張力調節手段DTとして構成される。本実施形態では、張力調節手段DTは、押圧部材P3を1つだけ有している。
【0034】
したがって、ベルト伝動機構Dにおいて、駆動軸S0(第1連結軸S1b)と第1リンクL1bを介して連結されたプーリ体P1bが回転すると、張力調節手段DT(押圧部材P3)によって張力が調節されたベルトTを介して、プーリ体P1bの回転力が、プーリ体P2a、P1aに伝達される。
【0035】
例えばプーリ体P1bが平面視で反時計方向に回転すると、プーリ体P2aが平面視で時計方向に回転し、プーリ体P1aが平面視で反時計方向に回転する。即ち、第1リンク機構LD1の第1リンクL1aが連結されたプーリ体P1aと、第2リンク機構LD2の第2リンクL2aが連結されたプーリ体P2aとは、互いに反対方向に回転する。
【0036】
したがって、プーリ体P1bが回転すると、プーリ体P1a、P1bが所定方向に回転し、第1リンクL1a,L1bが中間リンク台Eに対して回転する。それにともなって、プーリ体P2aが所定方向と反対方向に回転し、第2リンクL2a,L2bが中間リンク台Eに対して回転する。即ち、ベルトTは、第1リンク機構LD1の第1リンクL1a,L1bを中間リンク台Eに対して所定方向に回転させると共に、第2リンク機構LD2の一対の第2リンクL2a,L2bを中間リンク台Eに対して所定方向と反対方向に回転させる。
【0037】
本実施形態において、駆動軸S0を回転駆動すると(回転軸S1cを固定して、第1連結軸S1bのみを駆動する場合)、固定台Aにおいて駆動軸S0である第1連結軸S1bが回転駆動され、
図4に示すように、第1リンク機構LD1の第1リンクL1bが、固定台Aに対して平面視で反時計方向に回転すると、プーリ体P1bの反時計方向の回転力がベルトTによりプーリ体P2a、P1aに伝達されて、プーリ体P2aが時計方向に回転すると共にプーリ体P1aが反時計方向に回転する。したがって、第1リンク機構LD1の第1リンクL1a、L1bが、中間リンク台Eに対して平面視で反時計方向に回転し、第2リンク機構LD2の第2リンクL2a,L2bが中間リンク台Eに対して平面視で時計方向に回転する。逆に、第1リンク機構LD1の第1リンクL1aが、固定台Aに対して平面視で時計方向に回転すると、プーリ体P1bの時計方向の回転力がベルトTによりプーリ体P2a、P1aに伝達されて、プーリ体P2aが反時計方向に回転すると共にプーリ体P1aが時計方向に回転する。したがって、第1リンク機構LD1の第1リンクL1a、L1bが、中間リンク台Eに対して平面視で時計方向に回転し、第2リンク機構LD2の第2リンクL2a,L2bが中間リンク台Eに対して平面視で反時計方向に回転する。
【0038】
即ち、本実施形態の搬送装置1は、同一長さの一対の第1リンクL1a, L1bの基端部が固定台Aに回転可能に連結されていると共に、一対の第1リンクL1a, L1bの先端部が中間リンク台Eに回転可能に連結された第1平行四節リンク機構LD1と、同一長さの一対の第2リンクL2a,L2bの基端部が中間リンク台Eに回転可能に連結されていると共に、一対の第2リンクL2a,L2bの先端部が先端リンク板Cに回転可能に連結された第2平行四節リンク機構LD2と、中間リンク台Eに配置され、一対の第1リンクL1a,L1bのそれぞれに連結されたプーリ体P1a、P1bと、第2リンクL2aに連結されたプーリ体P2aと、プーリ体P1a、P1bとプーリ体P2aとに張設されたベルトTとを有し、第1リンクL1a,L1bと第2リンクL2a,L2bとが互いに反対方向に回転するように回転駆動力を伝達するベルト伝動機構Dとを備える。
【0039】
このように構成すると、本実施形態の搬送装置1では、プーリ体P2aの両側にプーリ体P1a、P1bが配置されるようにベルトTを張設することにより、プーリ体P2aが解放状態となる場合であっても、ベルトTをプーリ体P1a、P1bに固定することでベルトTの回転が規制される。したがって、解放状態のプーリ体P2aが緩む方向に回転してベルトTの張力が低下するのが防止され、ベルトテンションの安定性が向上する。
【0040】
本実施形態の搬送装置1において、ベルト伝動機構Dは、ベルトTの張力を調節する張力調節手段DTを有する。
【0041】
このように構成すると、本実施形態の搬送装置1では、中間リンク台Eに対してベルト伝動機構Dを組み付ける際、ベルトTのテンション調整とアームの軌道調整とを個別に行うことが可能となり、プーリ等の取り付け作業が容易になり生産性が向上すると共に、ベルトテンションの安定性やアーム平行度の精度が向上する。本実施形態では、例えば、中間リンク台Eに対してベルト伝動機構Dを組み付けて、ベルトTのテンションを調整した後に、第2リンク機構LD2の第2リンクL2a,L2bをプーリ体P2aに対して平行度を合わせながら、中間リンク台Eに組み付けることが可能となる。
【0042】
本実施形態の搬送装置1において、張力調節手段DTは、ベルトTに対する押圧力が変化するように中間リンク台Eに対して移動可能に構成された押圧部材P3である。
【0043】
このように構成すると、本実施形態の搬送装置1では、ベルトTの張力を調節する張力調節手段DTを簡易に構成できる。
【0044】
本実施形態の搬送装置1において、張力調節手段DTは、押圧部材P3を1つだけ有する。
【0045】
これにより、本実施形態の搬送装置1では、ベルトTを1箇所だけ押圧することにより、ベルトTの張力を調節可能である。
【0046】
本実施形態の搬送装置1において、押圧部材P3は、ベルトTの移動にともなって回転可能に構成された従動ローラである。
【0047】
これにより、本実施形態の搬送装置1では、押圧部材P3がベルトTの移動にともなって回転する従動ローラであることにより、押圧部材P3が固定された状態でベルトTを押圧する場合と比べて、ベルトTとの摩擦が低減すると共に、ベルトTの張力が押圧部材P3の両側において均一化される。
【0048】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る搬送装置について説明する。本実施形態の搬送装置が第1実施形態の搬送装置と主に異なる点は、ベルト伝動機構Dの構成である。したがって、本実施形態の搬送装置の構成が第1実施形態の搬送装置と同一の構成については説明を省略する。
【0049】
ベルト伝動機構Dは、
図6に示すように、中間リンク台Eの内部に組み込まれた構成であって、プーリ体P1a、P1b、P2aと、押圧部材P3と、ベルトTとを有している。
【0050】
中間連結軸S4bは、回転板P2bを支持し、回転板P2bの外周面には、径方向外側に向かって突出した突出部N1が形成される。また、中間リンク台Eの内部において、回転板P2bの両側には、回転板P2bが回転した際に、突出部N1が当接する一対の規制部N2が形成される。したがって、中間リンク台Eに対して、回転板P2b及び中間連結軸S4bが回転可能な範囲が制限される。本実施形態では、突出部N1及び一対の規制部N2が、本発明の回転制限手段を構成する。即ち、本実施形態のベルト伝動機構Dは、回転制限手段を有する点で、第1実施形態のベルト伝動機構Dと異なる。
【0051】
図6において、回転板P2bが中間リンク台Eに対して時計方向に回転する際、突出部N1が
図6の右側の規制部N2に当接するまで回転可能であると共に、回転板P2bが中間リンク台Eに対して反時計方向に回転する際、突出部N1が
図6の左側の規制部N2に当接するまで回転可能である。よって、中間リンク台Eに対して、中間連結軸S4bに連結された第2リンクL2bが回転可能な範囲が制限される。
【0052】
即ち、本実施形態の搬送装置1において、ベルト伝動機構Dは、中間リンク台Eに対して第2リンクL2bが回転可能な範囲を制限する回転制限手段を有する。
【0053】
これにより、本実施形態の搬送装置1では、中間リンク台Eに対して第2リンクL2bが回転可能な範囲を制限することにより、ベルトTの破断を防止できる。
【0054】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る搬送装置について説明する。本実施形態の搬送装置が第1実施形態の搬送装置と主に異なる点は、ベルト伝動機構Dの構成である。したがって、本実施形態の搬送装置の構成が第1実施形態の搬送装置と同一の構成については説明を省略する。
【0055】
ベルト伝動機構Dは、
図7に示すように、中間リンク台Eの内部に組み込まれた構成であって、プーリ体P1a、P1b、P2aと、ベルトTとを有している。即ち、本実施形態のベルト伝動機構Dは、押圧部材P3を有してない点で第1実施形態のベルト伝動機構Dと異なる。
【0056】
ベルト伝動機構Dにおいて、プーリ体P1a、P2a、P1bの外周面には、ベルトTが張設される。ベルトTは、例えばスチールベルトであり、プーリ体P1aの外周面の下側に沿った後、プーリ体P2aの外周面の上側に沿うように張設され、その後、プーリ体P1bの外周面の下側に沿うように張設される。ベルトTの両端部は、プーリ体P1a及びプーリ体P1bの外周部に図示しない複数本のボルトを介してそれぞれ固定される。
【0057】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る搬送装置について説明する。本実施形態の搬送装置が第1実施形態の搬送装置と主に異なる点は、ベルト伝動機構Dの構成である。したがって、本実施形態の搬送装置の構成が第1実施形態の搬送装置と同一の構成については説明を省略する。
【0058】
ベルト伝動機構Dは、
図8に示すように、中間リンク台Eの内部に組み込まれた構成であって、プーリ体P1a、P1b、P2aと、押圧部材P3と、ベルトTとを有している。
【0059】
押圧部材P3は、中間リンク台Eに回転可能に支持された軸S5aに支持され、ベルトTの移動にともなって回転可能な従動ローラで構成される。押圧部材P3は、ベルトTを右上斜め方向に向かって押圧し、プーリ体P2aとプーリ体P1bとの間においてベルトTの張力を調節する。即ち、本実施形態のベルト伝動機構Dは、押圧部材P3がベルトTを押圧する方向が第1実施形態のベルト伝動機構Dと異なる。したがって、押圧部材P3は、ベルトTに対する押圧力が変化するように中間リンク台Eに対して移動することにより、プーリ体P1a、P2a、P1bに張設されたベルトTの張力を調節する張力調節手段DTとして構成される。
【0060】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0061】
上記実施形態では、搬送ユニット11a、11bを有した2アーム方式の搬送装置について説明したが、搬送ユニット11a、11bのいずれかを有した1アーム方式の搬送装置であってよい。
【0062】
上記実施形態では、ベルト伝動機構Dにおいて、ベルトTが、第1リンクL1aに連結されたプーリ体P1aと、第2リンクL2aに連結されたプーリ体P2aと、第1リンクL1bに連結されたプーリ体P1bとの外周面に張設され、ベルトTの両端部が、プーリ体P1a及びプーリ体P1bの外周部に固定されているが、ベルト伝動機構Dが、第2リンクL2bに連結されたプーリ体P2bを有し、ベルトTが、第1リンクL1aに連結されたプーリ体P1aと、第2リンクL2bに連結されたプーリ体P2bと、第1リンクL1bに連結されたプーリ体P1bとの外周面に張設され、ベルトTの両端部が、プーリ体P1a及びプーリ体P1bの外周部に固定されたものであってよい。したがって、プーリ体P2bの両側にプーリ体P1a、P1bが配置されるようにベルトTを張設することにより、プーリ体P2bが解放状態となる場合であっても、ベルトTをプーリ体P1a、P1bに固定することでベルトTの回転が規制され、解放状態のプーリ体P2bが緩む方向に回転してベルトTの張力が低下するのが防止される。
【0063】
上記実施形態では、第1リンク台としての固定台Aと中間リンク台Eとを連結する第1リンク機構LD1を本発明の第1平行四節リンク機構とし、中間リンク台Eと第2リンク台としての先端リンク板Cとを連結する第2リンク機構LD2を本発明の第2平行四節リンク機構とした場合を説明したが、第1リンク台としての先端リンク板Cと中間リンク台Eとを連結する第2リンク機構LD2を本発明の第1平行四節リンク機構とし、中間リンク台Eと第2リンク台としての固定台Aとを連結する第1リンク機構LD1を本発明の第2平行四節リンク機構としてよい。
【0064】
この場合、ベルト伝動機構Dが、第2リンクL2bに連結されたプーリ体P2bを有し、ベルトTが、第2リンクL2aに連結されたプーリ体P2aと、第1リンクL1aに連結されたプーリ体P1aと、第2リンクL2bに連結されたプーリ体P2bとの外周面に張設され、ベルトTの両端部が、プーリ体P2a及びプーリ体P2bの外周部に固定されたものであってよい。また、ベルト伝動機構Dが、第2リンクL2bに連結されたプーリ体P2bを有し、ベルトTが、第2リンクL2aに連結されたプーリ体P2aと、第1リンクL1bに連結されたプーリ体P1bと、第2リンクL2bに連結されたプーリ体P2bとの外周面に張設され、ベルトTの両端部が、プーリ体P2a及びプーリ体P2bの外周部に固定されたものであってよい。
【0065】
上記実施形態では、ベルト伝動機構Dにおいて、第3連結軸S3aと一体に連結されたプーリ体P1aと、第4連結軸S4aと一体に連結されたプーリ体P2aと、第3連結軸S3bと一体に連結されたプーリ体P1bと、プーリ体P1a、P2a、P1bに張設されたベルトTとにより、第3連結軸S3aの回転駆動力が第4連結軸S4a及び第3連結軸S3bに伝達されるが、第3連結軸S3aと一体に連結されたギアと、第4連結軸S4aと一体に連結されたギアと、第3連結軸S3bと一体に連結されたギアとが噛合することにより、第3連結軸S3aの回転駆動力が第4連結軸S4a及び第3連結軸S3bに伝達されてよい。
【符号の説明】
【0066】
A 固定台(第1リンク台)
C 先端リンク板(第2リンク台)
E 中間リンク台
D ベルト伝動機構
DT 張力調節手段
LD1 第1リンク機構(第1平行四節リンク機構)
L1a,L1b 第1リンク
LD2 第2リンク機構(第2平行四節リンク機構)
L2a,L2b 第2リンク
P1a、P1b プーリ体(第1プーリ)
P2a プーリ体(第2プーリ)
P3 押圧部材
N1 突出部(回転制限手段)
N2 規制部(回転制限手段)
T ベルト