IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社椿本チエインの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】チェーンテンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
F16H7/08 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018195251
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2020063767
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】近能 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】下坂 晃一
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-185894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0252167(US,A1)
【文献】特開2015-007467(JP,A)
【文献】特開2017-166601(JP,A)
【文献】特開2017-115952(JP,A)
【文献】特開平08-004861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャ収容穴を有するテンショナボディと、該プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、前記テンショナボディに設けられたアーム部と、前記プランジャに押圧されるとともに前記アーム部に揺動可能に支持された走行案内レバーとを備えたチェーンテンショナであって、
前記アーム部の先端には揺動軸部を有し、
前記走行案内レバーが、前記揺動軸部に軸支される軸承部を有し、
前記テンショナボディは、前記プランジャとは重ならない位置でストッパピンが貫通可能なボディ固定ピン孔を有し、
前記走行案内レバーが、所定の揺動位置で前記ボディ固定ピン孔と同一軸位置となる走行案内レバー固定ピン孔を有し、
前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔は、前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔の各々の内周面と前記ストッパピンの外周面との間に隙間が形成されるように構成され、前記ストッパピンが前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔に遊挿されることを特徴とするチェーンテンショナ。
【請求項2】
前記ボディ固定ピン孔が、前記テンショナボディの前記アーム部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のチェーンテンショナ。
【請求項3】
前記ボディ固定ピン孔が、前記テンショナボディの前記プランジャ収容穴に対して前記アーム部の反対側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のチェーンテンショナ。
【請求項4】
前記走行案内レバー固定ピン孔が、前記走行案内レバーの前記軸承部に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項5】
前記ボディ固定ピン孔が、前記テンショナボディの前記揺動軸部に設けられたことを特徴とする請求項4に記載のチェーンテンショナ。
【請求項6】
前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔の少なくとも一方が、同一軸位置で他方の両側を挟むように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
【請求項7】
プランジャが摺動自在に挿入されるプランジャ収容穴を有するテンショナボディであって、
前記テンショナボディが、先端に走行案内レバーの軸承部を軸支可能な揺動軸部を有するアーム部を備え、
前記プランジャとは重ならない位置に、ストッパピンが貫通可能なボディ固定ピン孔を有し、
前記ボディ固定ピン孔は、前記ボディ固定ピン孔の内周面と前記ストッパピンの外周面との間に隙間が形成され前記ストッパピンが前記ボディ固定ピン孔に遊挿されるように構成されていることを特徴とするテンショナボディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャ収容穴を有するテンショナボディと、該プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、前記テンショナボディに設けられたアーム部と、前記プランジャに押圧されるとともに前記アーム部に揺動可能に支持された走行案内レバーとを備えたチェーンテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーンの張力を適正に保持するチェーンテンショナを用いることは慣用されている。例えば、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸、クランク軸と補機駆動軸等の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンを走行案内レバーによって摺動案内を行うチェーンガイド機構において、張力を適正に保持するためにチェーンテンショナによって走行案内レバーを有する揺動チェーンガイドを付勢するものが公知である。
このようなチェーンガイド機構において、軸間距離が短い場所(例えば、クランク軸と補機駆動軸とは軸間距離が短く設計されることが多い)や周辺スペースの小さな場所にチェーンの張力を適正に保持する機構を設置しなければならない場合がある。
【0003】
そのために、テンショナボディにアーム部を設け、シューを有する走行案内レバーをアーム部に直接揺動可能に軸支することで、コンパクトに一体化したチェーンテンショナが公知である。
走行案内レバーをアーム部に直接揺動可能に軸支する構造としては、一般的には、走行案内レバーおよびアーム部に貫通孔を設け、該貫通孔に軸部材を貫通させることが一般的に考えられる。しかしながら、このような構造では、部品点数が増加するとともに、組立時に貫通孔の位置合わせ、軸部材の挿入、その抜け止め等の多くの工程を必要とする。
そこで、部品点数を減らし、組立工程を簡略化するために、アーム部または走行案内レバーの一方に揺動軸部を形成し、他方に形成された軸承部と嵌合することで、独立した軸部材を用いない構造が提案されている(特許文献1、2等参照。)。
また、アーム部の揺動軸部と走行案内レバーの軸承部の構造を工夫することで、部品点数を減らし、組立工程を簡略化するとともに、変位やガタが生じずチェーン走行を安定化し、摩耗や破損等の発生を低減し耐久性を向上した構造が提案されている(特許文献3等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-107021号公報
【文献】特開2006-132761号公報
【文献】特開2015-7467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した公知のチェーンテンショナは、組立後、エンジン等の使用箇所に固定し、実際にチェーン等にテンションを与えてよい状態になるまでは、プランジャを圧縮状態で固定しておく必要がある。
特許文献1、2においては、プランジャの固定に関する記載はないが、一般的には、ストッパピン等をプランジャボディの側面から挿入してプランジャに係止することで、プランジャの突出方向の固定を行う。
また、特許文献3に記載されたテンショナでは、プランジャを固定するストッパピンを利用して、走行案内レバーの揺動も固定している。
【0006】
しかしながら、プランジャのみを固定したのでは、走行案内レバーがテンショナボディに対して揺動可能な状態であることから、輸送時に走行案内レバーがプランジャに対する衝突を繰り返し、変形や破損が発生する懸念がある。また、エンジンに組み付ける際、走行案内レバーが大きく開口した状態で誤って組み付けられると、チェーンの走行を妨げるなど、正常な働きをしない懸念があった。
【0007】
一方、プランジャおよび走行案内レバーの両者を共に固定することにより、上述の走行案内レバーの衝突による変形や破損あるいはエンジンへの誤組み付けなどの問題が生ずることは回避される。
しかしながら、プランジャが圧縮状態で固定されるため、ストッパピンには大きな曲げ応力が作用することとなる。このため、ストッパピンの抜き方向には大きな摩擦抵抗を生じ、ストッパピンを抜く際に大きな負担が掛かるという問題があった。同様にストッパピンを抜く際、プランジャの表面に傷を付けてしまうという問題があった。
さらにまた、ストッパピンの剛性が不足すると、プランジャの突出力に負け、ストッパピンが曲り、抜けなくなる問題もあった。
【0008】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、走行案内レバーとテンショナボディとが一体化されたチェーンテンショナにおいて、輸送時や保管時におけるテンショナ構成部材の破損や変形を防止するとともに、誤組み付けを回避することができ、設計自由度を高めることが可能なチェーンテンショナを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本請求項1に係る発明は、プランジャ収容穴を有するテンショナボディと、該プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、前記テンショナボディに設けられたアーム部と、前記プランジャに押圧されるとともに前記アーム部に揺動可能に支持された走行案内レバーとを備えたチェーンテンショナであって、前記アーム部の先端には揺動軸部を有し、前記走行案内レバーが、前記揺動軸部に軸支される軸承部を有し、前記テンショナボディは、前記プランジャとは重ならない位置でストッパピンが貫通可能なボディ固定ピン孔を有し、前記走行案内レバーが、所定の揺動位置で前記ボディ固定ピン孔と同一軸位置となる走行案内レバー固定ピン孔を有し、前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔は、前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔の各々の内周面と前記ストッパピンの外周面との間に隙間が形成されるように構成され、前記ストパピンが前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔に遊挿されることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係るチェーンテンショナおよび本請求項7に係るテンショナボディによれば、走行案内レバーはストッパピンによりテンショナボディに係止され、当該走行案内レバーによってプランジャが圧縮状態で押さえられる。このため、輸送時に走行案内レバーがプランジャに対する衝突を繰り返して走行案内レバーやプランジャが変形したり破損したりすることを確実に防止することができる。
また、走行案内レバーおよびプランジャの両者がテンショナボディに対して固定された状態において組み付け作業を行うことができるため、チェーンテンショナの誤組み付けを回避することができる。
さらにまた、プランジャをストッパピンにより直接的に固定する必要がないため、エンジンのスペースなどの制約条件などに応じて最適な位置にピン穴を形成することが可能となり高い設計の自由度を得ることができる。しかも、ストッパピンがプランジャに接することがないため、プランジャを損傷させることがなく、チェーンテンショナ本来の機能を確実に発揮することができる。
【0011】
本請求項2乃至本請求項5に係る構成によれば、上述の効果に加えて、チェーンテンショナの組立容易性を確保しながら、ボディ固定ピン孔および走行案内レバー固定ピン孔の少なくとも一方が他方を挟み込むように配置される係止構造を形成することが容易となる。このような係止構造においては、ストッパピンが2以上の部材を貫通することとなるため、輸送時にプランジャの突出力で走行案内レバーがねじれるなどの変形を確実に防ぐことができる。また、ボディ固定ピン孔に対する走行案内レバー固定ピン孔の位置合わせが容易となり、ストッパピンの挿抜を容易に行うことができる。
【0012】
本請求項6に係る構成によれば、走行案内レバーのスラスト方向(走行するチェーンに対して垂直方向)の動きを規制することができるため、チェーンの走行を安定支持でき、走行面の偏摩耗等を防止することができる。また、輸送中にプランジャの突出力で走行案内レバーがねじれるなどの変形を防ぐことができる。
さらにまた、テンショナボディにおけるアーム部の剛性を向上することができ、チェーンテンショナを負荷が高いエンジンにも適応するものとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るチェーンテンショナの正面側から見た斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係るチェーンテンショナの背面側から見た斜視図。
図3】本発明の第1実施形態に係るチェーンテンショナの正面図。
図4】本発明の第1実施形態に係るチェーンテンショナの側面図。
図5図3におけるA-A線断面斜視図。
図6】本発明の第1実施形態に係るテンショナボディの斜視図。
図7】本発明の第1実施形態に係る走行案内レバーの斜視図。
図8】本発明の第2実施形態に係るチェーンテンショナの正面側から見た斜視図。
図9】本発明の第2実施形態に係るチェーンテンショナの一部を示す断面斜視図。
図10】本発明の第2実施形態に係るテンショナボディの斜視図。
図11】本発明の第2実施形態に係る走行案内レバーの斜視図。
図12】本発明の第3実施形態に係るチェーンテンショナの背面側から見た斜視図。
図13】本発明の第3実施形態に係るチェーンテンショナの一部を示す断面斜視図。
図14】本発明の第3実施形態に係るテンショナボディの斜視図。
図15】本発明の第3実施形態に係る走行案内レバーの斜視図。
図16】本発明の第4実施形態に係るチェーンテンショナの背面側から見た斜視図。
図17】本発明の第4実施形態に係るチェーンテンショナの一部を示す断面斜視図。
図18】本発明の第4実施形態に係るテンショナボディの斜視図。
図19】本発明の第4実施形態に係る走行案内レバーの斜視図。
図20】本発明の第5実施形態に係るチェーンテンショナの背面側から見た斜視図。
図21】本発明の第5実施形態に係るチェーンテンショナの一部を示す断面斜視図。
図22】本発明の第5実施形態に係るテンショナボディの斜視図。
図23】本発明の第5実施形態に係る走行案内レバーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のチェーンテンショナは、プランジャ収容穴を有するテンショナボディと、該プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、前記テンショナボディに設けられたアーム部と、前記プランジャに押圧されるとともに前記アーム部に揺動可能に支持された走行案内レバーとを備えたチェーンテンショナであって、前記アーム部の先端には揺動軸部を有し、前記走行案内レバーが、前記揺動軸部に軸支される軸承部を有し、前記テンショナボディは、前記プランジャとは重ならない位置でストッパピンが貫通可能なボディ固定ピン孔を有し、前記走行案内レバーが、所定の揺動位置で前記ボディ固定ピン孔と同一軸位置となる走行案内レバー固定ピン孔を有し、前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔は、前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔の各々の内周面と前記ストッパピンの外周面との間に隙間が形成されるように構成され、前記ストパピンが前記ボディ固定ピン孔および前記走行案内レバー固定ピン孔に遊挿される構成とされていれば、その他の具体的な構成はいかなるものであってもよい。
【実施例1】
【0015】
本発明の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100は、図1乃至図7に示すように、プランジャ収容穴111を有するテンショナボディ110と、該プランジャ収容穴111に摺動自在に挿入されるプランジャ112と、テンショナボディ110に設けられたアーム部120と、プランジャ112に押圧されるとともにアーム部120に揺動可能に支持された走行案内レバー130とを備えている。
【0016】
テンショナボディ110は、図6にも示すように、エンジンルーム内等に取り付けるためにボルト等が挿通される取付孔113,114を有しており、一方の取付孔113からさらに側方に延びるようにアーム部120が設けられている。
アーム部120の先端には揺動軸部121を有している。
揺動軸部121は、アーム部120の先端からチェーン幅方向の一方の側方に延びる第1軸部122と、他の側方に延びる第2軸部123とを有している。
【0017】
走行案内レバー130は、表面に走行するチェーンをガイド長手方向に沿って摺動案内するチェーン走行案内面132を有する。
走行案内レバー130の裏面には、図7にも示すように、凸面状のプランジャ当接面134を有するプランジャ当接部133と、テンショナボディ110の揺動軸部121に軸支される軸承部140とを有する。
軸承部140は、アーム部120の平板状の係止板部125の両側を挟むように互いに対向配置された一対のガイド板部分141,145を有し、一方のガイド板部分141の端部に、揺動軸部121の第1軸部122に嵌合する嵌合孔142を有する。また、他方のガイド板部分145には、嵌合孔142に対向する位置に、第2軸部123の一部に案内されるガイド部146が設けられている。ガイド部146は、第2軸部123に直接当接して摺動案内される半円弧状のガイド面147を有している。
【0018】
本実施形態のチェーンテンショナ100においては、テンショナボディ110のアーム部120におけるプランジャ収容穴111と揺動軸部121との間に位置される係止板部125に、ストッパピンPを貫通可能なボディ固定ピン孔115が設けられている。また、走行案内レバー130には、一対のガイド板部分141,145の各々に、所定の揺動位置でボディ固定ピン孔115と同一軸位置となる走行案内レバー固定ピン孔131,131が設けられている。
従って、本実施形態のチェーンテンショナ100は、図1乃至図5に示すように、組立時や保管時、輸送時等に該ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131,131にストッパピンPが挿入されることで、プランジャ112および走行案内レバー130の両者をテンショナボディ110に固定することが可能に構成されている。具体的には、ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131,131にストッパピンPが挿入されることで、走行案内レバー130がストッパピンPによりテンショナボディ110に係止され、走行案内レバー130によってプランジャ112が圧縮状態で固定される。
【0019】
ボディ固定ピン孔115の孔径および走行案内レバー固定ピン孔131の孔径は、いずれもストッパピンPのピン部材の外径より大きく、従って、ストッパピンPにおけるピン部材は、ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131に遊挿される。
【0020】
以上のように構成された、本発明の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100は、ガイド部146がアーム部120と干渉しない角度位置で、第1軸部122の側方から嵌合孔142を嵌め込み、走行案内レバー130をプランジャ112側に回動させることで、容易に組み立てることができる。
そして、走行案内レバー130のプランジャ当接面134がプランジャ112と当接する動作位置では、アーム部120が走行案内レバー130の一対のガイド板141,145間に位置され走行案内レバー130の幅方向への移動が規制されることで、走行案内レバー130の脱落を防止することができる。
【実施例2】
【0021】
本発明の第2実施形態に係るチェーンテンショナは、ストッパピンによる走行案内レバーの固定位置が相違することの他は、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100と実質的に同様の構成を有するものである。
第2実施形態に係るチェーンテンショナ100aにおいては、図8および図9に示すように、ストッパピンPによる走行案内レバー130aの固定位置が、テンショナボディ110aのプランジャ収容穴111に対してアーム部120の反対側に設けられている。
【0022】
テンショナボディ110aは、図10に示すように、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100のテンショナボディ110の構成に加えて、プランジャ収容穴111に対してアーム部120の反対側の位置に係止板部125aを有する。
【0023】
走行案内レバー130aは、図11にも示すように、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100の走行案内レバー130の構成に加えて、プランジャ当接部133に対して軸承部140の反対側の位置に、テンショナボディ110aにおける係止板部125aが介挿される係止板部受容部150が設けられている。
係止板部受容部150は、係止板部125の両側を挟むように互いに対向配置された一対のガイド板部分151,151を有する。
【0024】
本実施形態のチェーンテンショナ100aにおいては、テンショナボディ110aの係止板部125aに、ストッパピンPを貫通可能なボディ固定ピン孔115が設けられるとともに、走行案内レバー130aにおける一対のガイド板部分151,151の各々に、所定の揺動位置でボディ固定ピン孔115と同一軸位置となる走行案内レバー固定ピン孔131,131が設けられている。
従って、本実施形態のチェーンテンショナ100aは、図8および図9に示すように、組立時や保管時、輸送時等に該ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131,131にストッパピンPが挿入されることで、プランジャ112および走行案内レバー130aの両者をテンショナボディ110aに固定することが可能に構成されている。
【0025】
具体的には、本発明の第2実施形態に係るチェーンテンショナ100aは、ガイド部146がアーム部120と干渉しない角度位置で、嵌合孔142を揺動軸部121の第1軸部122の側方から嵌め込み、ガイド部146における円弧状のガイド面147を揺動軸部121の第2軸部123に当接させた状態で、走行案内レバー130aをテンショナボディ110aに装着する。そして、走行案内レバー130aをプランジャ112側に回動させ一対のガイド板部分151,151を係止板部125aの両側を挟むように位置させるとともに、走行案内レバー固定ピン孔131,131をボディ固定ピン孔115と同一軸位置に位置合わせする。この状態で、ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131,131にストッパピンPを挿入することで、走行案内レバー130aがストッパピンPによりテンショナボディ110aに係止され、走行案内レバー130aによってプランジャ112が圧縮状態で固定される。
【実施例3】
【0026】
本発明の第3実施形態に係るチェーンテンショナは、ストッパピンによる走行案内レバーの固定位置が相違することの他は、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100と実質的に同様の構成を有するものである。
第3実施形態に係るチェーンテンショナ100bにおいては、図12および図13に示すように、ストッパピンPによる走行案内レバー130bの固定位置が、アーム部120における揺動軸部121の近傍に設けられている。
【0027】
テンショナボディ110bは、図14に示すように、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100のテンショナボディ110の構成に加えて、揺動軸部121の下方側に、外方に突出する半円板状の係止板部125bを有する。
【0028】
走行案内レバー130bは、図15に示すように、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100の走行案内レバー130の構成に加えて、軸承部140を構成する他方のガイド板部分145に設けられたガイド部146に連続して下方側方に向かって延びる突出片部148を有する。
【0029】
本実施形態のチェーンテンショナ100bにおいては、テンショナボディ110bの係止板部125bに、ストッパピンPを貫通可能なボディ固定ピン孔115が設けられている。また、走行案内レバー130bには、他方のガイド板部分145における突出片部148および一方のガイド板部分141における嵌合孔142の下方側端部に、所定の揺動位置でボディ固定ピン孔115と同一軸位置となる走行案内レバー固定ピン孔131,131が設けられている。すなわち、走行案内レバー固定ピン孔131は、走行案内レバー130bの軸承部140に設けられている。
従って、本実施形態のチェーンテンショナ100bは、図12および図13に示すように、組立時や保管時、輸送時等に該ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131,131にストッパピンPが挿入されることで、プランジャ112および走行案内レバー130bの両者をテンショナボディ110bに固定することが可能に構成されている。
【0030】
具体的には、本発明の第3実施形態に係るチェーンテンショナ100bは、ガイド部146および突出片部148がアーム部120と干渉しない角度位置で、嵌合孔142を揺動軸部121の第1軸部122の側方から嵌め込み、ガイド部146のガイド面147を揺動軸部121の第2軸部123に当接させた状態で、走行案内レバー130bをテンショナボディ110bに装着する。そして、走行案内レバー130bをプランジャ112側に回動させ一方のガイド板部分141の下方側端部および他方のガイド板部分145の突出片部148を係止板部125bの両側を挟むように位置させるとともに、走行案内レバー固定ピン孔131,131をボディ固定ピン孔115と同一軸位置に位置合わせする。この状態で、ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131,131にストッパピンPを挿入することで、走行案内レバー130bがストッパピンPによりテンショナボディ110bに係止され、走行案内レバー130bによってプランジャ112が圧縮状態で固定される。
【実施例4】
【0031】
本発明の第4実施形態に係るチェーンテンショナは、ストッパピンによる走行案内レバーの固定位置が相違することの他は、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100と実質的に同様の構成を有するものである。
第4実施形態に係るチェーンテンショナ100cにおいては、図16および図17に示すように、ストッパピンPによる走行案内レバー130cの固定位置が、アーム部120における揺動軸部121に対応する位置に設けられている。
【0032】
テンショナボディ110cは、図18に示すように、揺動軸部121が第2軸部を有さないことの他は、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100のテンショナボディ110と同様の構成を有する。
【0033】
走行案内レバー130cは、図19に示すように、軸承部140を構成する一方のガイド板部分141に、揺動軸部121の第1軸部122の一部に案内されるガイド部146が設けられている。ガイド部146は、第1軸部123に直接当接して摺動案内される半円弧状のガイド面147を有しており、下方が開放されている。そして、一方のガイド板141の外面には、ガイド部146の開口を塞ぐ円板状の閉塞部155が設けられている。閉塞部155の内面には、第1軸部123の端部を受容するザグリ孔156が形成されており、第1軸部123が回転自在に支持されるように構成されている。
【0034】
本実施形態のチェーンテンショナ100cにおいては、テンショナボディ110cにおける揺動軸部121の揺動中心に対して偏位した位置に、ストッパピンPを貫通可能なボディ固定ピン孔115が設けられている。また、走行案内レバー130cには、閉塞部155および他方のガイド板部分145に、所定の揺動位置でボディ固定ピン孔115と同一軸位置となる走行案内レバー固定ピン孔131,131が設けられている。
従って、本実施形態のチェーンテンショナ100cは、図16および図17に示すように、組立時や保管時、輸送時等に該ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131,131にストッパピンPが挿入されることで、プランジャ112および走行案内レバー130cの両者をテンショナボディ110cに固定することが可能に構成されている。
【0035】
具体的には、本発明の第4実施形態に係るチェーンテンショナ100cは、他方のガイド板部分141がアーム部120と干渉しない角度位置で、ガイド部146を揺動軸部121の第1軸部122の上方から嵌め込み、第1軸部122を閉塞部155のザグリ孔156によって支持させた状態で、走行案内レバー130cをテンショナボディ110cに装着する。そして、走行案内レバー130cをプランジャ112側に回動させ他方のガイド板部分145と閉塞部155とで揺動軸部121の両側を挟むように位置させるとともに、走行案内レバー固定ピン孔131,131をボディ固定ピン孔115と同一軸位置に位置合わせする。この状態で、ボディ固定ピン孔115および走行案内レバー固定ピン孔131,131にストッパピンPを挿入することで、走行案内レバー130cがストッパピンPによりテンショナボディ110cに係止され、走行案内レバー130cによってプランジャ112が圧縮状態で固定される。
【実施例5】
【0036】
本発明の第5実施形態に係るチェーンテンショナは、ストッパピンによる走行案内レバーの固定方法が相違することの他は、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100と実質的に同様の構成を有するものである。
第5実施形態に係るチェーンテンショナ100dは、図20および図21に示すように、テンショナボディ110dに設けられたボディ固定ピン孔115,115が、走行案内レバー130dに設けられた走行案内レバー固定ピン孔131を挟み込むように配置され、ボディ固定ピン孔115,115および走行案内レバー固定ピン孔131にストッパピンPを挿入することで、プランジャ112および走行案内レバー130dの両者をテンショナボディ110dに固定することが可能に構成されている。
【0037】
テンショナボディ110dは、図22に示すように、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100のテンショナボディ110の構成に加えて、プランジャ収容穴111と揺動軸部121との間の位置においてアーム部120の両側に一対のガイド板部126,126が互いに対向して設けられている。ガイド板部126は例えば半円板状に構成されている。
【0038】
走行案内レバー130dは、図23にも示すように、前述の第1実施形態に係るチェーンテンショナ100の走行案内レバー130の構成に加えて、正面および裏面の各々にガイド板部126の形状に応じた空間形状を有するガイド板部収容凹所135,135が設けられ、2つのガイド板収容凹所135,135を区画する隔壁によって構成され一対のガイド板部126,126間に介挿される係止板部136を有する。
【0039】
本実施形態のチェーンテンショナ100dにおいては、テンショナボディ110dのガイド板部126の各々に、ストッパピンPを貫通可能なボディ固定ピン孔115,115が設けられるとともに、走行案内レバー130dにおける係止板部136に、所定の揺動位置でボディ固定ピン孔115,115と同一軸位置となる走行案内レバー固定ピン孔131が設けられている。
【0040】
本発明の第5実施形態に係るチェーンテンショナ100dは、ガイド部146がアーム部120と干渉しない角度位置で、嵌合孔142を揺動軸部121の第1軸部122の側方から嵌め込み、ガイド部146における円弧状のガイド面147を揺動軸部121の第2軸部123に当接させた状態で、走行案内レバー130dをテンショナボディ110dに装着する。そして、走行案内レバー130dをプランジャ112側に回動させ一対のガイド板部分126,126を係止板部136の両側を挟むように位置させるとともに、走行案内レバー固定ピン孔131をボディ固定ピン孔115,115と同一軸位置に位置合わせする。この状態で、ボディ固定ピン孔115,115および走行案内レバー固定ピン孔131にストッパピンPを挿入することで、走行案内レバー130dがストッパピンPによりテンショナボディ110dに係止され、走行案内レバー130dによってプランジャ112が圧縮状態で固定される。
【0041】
以上説明した各実施形態は、本発明に係るチェーンテンショナの具体例であるが、本発明に係るチェーンテンショナがこれらに限定されるものではなく、各構成部材の形状、位置、寸法、配置関係等、様々な変形が可能である。
また、本発明のチェーンテンショナは、エンジンルーム内に設けたスプロケット間に無端懸回したチェーンの張力を適正に保持するチェーンガイド機構に適用するのに好適であるが、他のいかなる用途に用いてもよい。
さらに、チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
100,100a,100b,100c,100d・・・ チェーンテンショナ
110,110a,110b,110c,110d・・・ テンショナボディ
111 ・・・ プランジャ収容穴
112 ・・・ プランジャ
113 ・・・ 取付孔
114 ・・・ 取付孔
115 ・・・ ボディ固定ピン孔
120 ・・・ アーム部
121 ・・・ 揺動軸部
122 ・・・ 第1軸部
123 ・・・ 第2軸部
125,125a,125b ・・・ 係止板部
126 ・・・ ガイド板部
130,130a,130b,130c,130d・・・ 走行案内レバー
131 ・・・ 走行案内レバー固定ピン孔
132 ・・・ チェーン走行案内面
133 ・・・ プランジャ当接部
134 ・・・ プランジャ当接面
135 ・・・ ガイド板部収容凹所
136 ・・・ 係止板部
140 ・・・ 軸承部
141 ・・・ 一方のガイド板部分
142 ・・・ 嵌合孔
145 ・・・ 他方のガイド板部分
146 ・・・ ガイド部
147 ・・・ ガイド面
148 ・・・ 突出片部
150 ・・・ 係止板部受容部
151 ・・・ ガイド板部分
155 ・・・ 閉塞部
156 ・・・ ザグリ孔
P ・・・ ストッパピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23